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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131742
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】外壁の補修方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/02 20060101AFI20230914BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20230914BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20230914BHJP
   B05D 1/36 20060101ALI20230914BHJP
   B05D 3/12 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
E04G23/02 B
B05D7/00 L
B05D7/00 K
B05D3/00 D
B05D1/36 Z
B05D3/12 C
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022036653
(22)【出願日】2022-03-09
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】522095137
【氏名又は名称】株式会社満天
(74)【代理人】
【識別番号】100134050
【弁理士】
【氏名又は名称】岩崎 博孝
(72)【発明者】
【氏名】満永 仁
【テーマコード(参考)】
2E176
4D075
【Fターム(参考)】
2E176AA02
2E176BB15
4D075AE03
4D075AE05
4D075BB05Z
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA27
4D075DB11
4D075DC02
4D075EA05
4D075EB03
4D075EB51
(57)【要約】
【課題】
補修跡が目立たず周囲の外壁に馴染む自然な仕上がりの外壁の補修方法を提供する。
【解決手段】
表面に凹凸模様を有する外壁の補修方法であって、凍害等により生じた欠損部に対して主に道路工事で使用されるひび割れ含浸性を有する樹脂系塗料を下地処理材として塗布する第1工程と、欠損部に、凹凸模様の凹部よりも高い位置にまで乾燥すると硬化する補填材を盛る第2工程と、欠損部以外の部分の凹凸模様を型取り材に写し取る第3工程と、補填材が乾燥して硬化する前に、凹凸模様を写し取った型取り材を押し付けて補填材の表面に凹凸模様を転写する第4工程と、補填材が硬化した後に、上塗り層を形成する第5工程と、を経て外壁を補修する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に凹凸模様を有する外壁の補修方法であって、
凍害等により生じた欠損部に対して主に道路工事で使用されるひび割れ含浸性を有する樹脂系塗料を下地処理材として塗布する第1工程と、
前記欠損部に、少なくとも前記凹凸模様の凹部よりも高い位置にまで乾燥すると硬化する補填材を盛る第2工程と、
前記外壁表面における前記欠損部以外の部分の凹凸模様を型取り材に写し取る第3工程と、
前記補填材が乾燥して硬化する前に、前記凹凸模様を写し取った前記型取り材を押し付けて当該補填材の表面に前記凹凸模様を転写する第4工程と、
前記補填材が硬化した後に、上塗り層を形成する第5工程と、を含む
ことを特徴とする外壁の補修方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記第4工程と前記第5工程の間に、前記第1工程で使用した下地処理材を再度塗布する工程を経る
ことを特徴とする外壁の補修方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記補填材は、モルタルである
ことを特徴とする外壁の補修方法。
【請求項4】
請求項3において、
前記モルタルは、カチオン系ポリマーセメントモルタルである
ことを特徴とする外壁の補修方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかにおいて、
前記型取り材は、油粘土である
ことを特徴とする外壁の補修方法。
【請求項6】
請求項1~4のいずれかにおいて、
前記型取り材は、シリコンである
ことを特徴とする外壁の補修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外壁の補修、特に窯業系外壁材の凍害による損傷を補修する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、凍害を受けた外壁を補修する方法は存在する。例えば特許文献1においては、劣化部を除去して下地処理を行った後、繊維質強化プラスチック構造体のマトリクス樹脂とガラス繊維集束繊維からなる樹脂塗料で欠損部分を補填した上で、最後に塗装して補修するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-41353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、施工後の見た目の仕上がりに問題があった。特に外壁表面に凹凸のデザインが施されている場合には、当該補修部分のみ凹凸模様が無くなってしまい上塗り塗装をして色目を揃えたとしても、補修部分が明らかに目立ってしまうという問題があった。
【0005】
そこで本発明は、こういった問題点を解決するべくなされたものであって、補修跡が目立たず周囲の外壁に馴染む自然な仕上がりの外壁の補修方法を提供する事をその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するべく、本願発明は、表面に凹凸模様を有する外壁の補修方法であって、凍害等により生じた欠損部に対して主に道路工事で使用されるひび割れ含浸性を有する樹脂系塗料を下地処理材として塗布する第1工程と、前記欠損部に、少なくとも前記凹凸模様の凹部よりも高い位置にまで乾燥すると硬化する補填材を盛る第2工程と、前記外壁表面における前記欠損部以外の部分の凹凸模様を型取り材に写し取る第3工程と、前記補填材が乾燥して硬化する前に、前記凹凸模様を写し取った前記型取り材を押し付けて当該補填材の表面に前記凹凸模様を転写する第4工程と、前記補填材が硬化した後に、上塗り層を形成する第5工程と、を含むことを特徴とする。
【0007】
このような工程で補修することによって、補修跡が目立たず周囲の外壁に馴染む自然な仕上がりの外壁として補修することができる。最も重要なポイントは、型取り材を用いて欠損していない部分の外壁の凹凸模様乃至凹凸形状を転写している点である。これによって、補修した部分とそうでない部分との違いが目立たなくなり、補修後の外壁の美感性乃至審美性が向上する。更に、第1工程において、ひび割れ含浸性を有する樹脂系塗料を下地処理材として塗布しているので、補填材が外壁に生じたひびの中に流れ込んで補填材の密度が低下することを防止し、補修部分の十分な強度が確保可能となっている。
【0008】
更に、前記第4工程と前記第5工程の間に、前記第1工程で使用した下地処理材を再度塗布する工程を経るのが望ましい。
【0009】
このような工程で補修することによって、上塗り層をより強く固着させることができる。
【0010】
また、前記補填材は、モルタル、特にカチオン系ポリマーセメントモルタルを利用するのが好適である。
【0011】
このような材料を選択することによって、扱い易く、硬化後は十分な強度を発揮させることができる。一方で、硬化前は柔軟に形を変えることが可能で複雑な凹凸模様を再現しやすいという利点がある。
【0012】
また、外壁表面の劣化が比較的少ない場合や転写する凹凸が浅い場合には、型取り材として油粘土を利用することで、手間を掛けずに転写を実現することができる。
【0013】
また、外壁表面の劣化が激しい場合や、転写する凹凸が深い場合には、前記型取り材は、シリコン(常温で硬化し、温めると柔かくなる性質を備えたシリコン材)を利用することで、油粘土より少し手間がかかるものの、外壁表面の凹凸形状をより正確に再現することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明を適用することで、補修跡が目立たず周囲の外壁に馴染む自然な仕上がりの外壁補修方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】凍害により欠損部が生じた外壁の断面図である。
図2図1における欠損部の拡大断面図である。
図3】第1工程を経た欠損部の拡大断面図である。
図4】第2工程を経た欠損部の拡大断面図である。
図5】第3工程を概略的に示した図である。
図6】第4工程を概略的に示した図である。
図7】第4工程と第5工程の間に、第1工程で使用した下地処理材を再度塗布する工程を経た状態を示した欠損部の拡大断面図である。
図8】第5工程を経た欠損部の状態を示した欠損部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の実施形態の一例である外壁の補修方法について説明を加える。なお、図面理解容易の為、各部の大きさや寸法を誇張して表現している部分があり、実際の補修と必ずしも一致しない部分があることを付記しておく。また各図面は符号の向きに見るものとし、当該向きを基本に上下左右、手前、奥と表現する。
【0017】
〈補修の手順〉
先ずは図1及び図2のように凍害等によって生じた外壁100の欠損部102を把握して補修する部分を特定する。
【0018】
続いて、図3に示しているように、欠損部の表面(もしくは必要に応じてその周辺)に
下地処理材を塗布して第1下地処理塗装110を形成する(第1工程)。この第1下地処理塗装110は、壁用のプライマー塗料ではなく、主に道路工事で使用されるひび割れ含浸性を有する樹脂系塗料(樹脂系接着材)を利用する。このようにひび割れ含浸性を有する樹脂系塗料(樹脂系接着材)を利用するのは、特に凍害により生じた欠損部の周辺には、凍害によって細かな亀裂(ひび割れ)が発生しているケースが多くこのひび割れに入り込んで亀裂の拡大を効果的に防止する機能を発揮させることができるからである。
【0019】
なお、下地処理材110を塗布する前に、必要に応じて欠損部102の表面をある程度削る等の作業を加えてもよい。
【0020】
続いて、図4に示しているように、欠損部102に補填材112を充填する(第2工程)。ここでは充填剤としてモルタル、より具体的にはカチオン系ポリマーセメントモルタルが利用される。このとき、図5に示しているように、凹凸模様の凹部の高さ(深さ)αよりも高い位置にまで補填材112を充填する。
【0021】
続いて、図5に示しているように、外壁100の欠損部102以外の部分に型取り材130を押し付けて、型取り材130に凹凸模様132を写し取る(第3工程)。
【0022】
続いて、図6に示しているように、補填材112が乾燥して硬化する前に、凹凸模様を写し取った型取り材130を押し付けて補填材112の表面に凹凸模様を転写する(第4工程)。
【0023】
なお、型取り材130としては、補修箇所の欠損具合等によって「油粘土」や「シリコン」を使い分けて利用する。例えば、外壁表面の劣化が比較的少ない場合や転写する凹凸が浅い場合には、型取り材として油粘土を利用することで、手間を掛けずに転写を実現することができる。一方、外壁表面の劣化が激しい場合や、転写する凹凸が深い場合には、前記型取り材は、シリコン(常温で硬化し、温めると柔かくなる性質を備えたシリコン材)を利用することで、油粘土より少し手間がかかるものの、外壁表面の凹凸形状をより正確に再現することが可能となる。
【0024】
続いて、補填材112の表面及び必要に応じてその周辺の領域にまで、再度、第1工程で使用した下地処理材を塗布する(第2下地処理塗装114)。
【0025】
最後に、外壁110全体の表面に、上塗りを行って上塗り層116を形成し、外壁110の補修は完了する。
【0026】
上記の通り本願発明は、表面に凹凸模様を有する外壁100の補修方法であって、凍害等により生じた欠損部102に対して主に道路工事で使用されるひび割れ含浸性を有する樹脂系塗料を下地処理材(第1下地処理塗装110)として塗布する第1工程と、前記欠損部102に、少なくとも前記凹凸模様の凹部よりも高い位置にまで乾燥すると硬化する補填材112を盛る第2工程と、前記外壁110表面における前記欠損部102以外の部分の凹凸模様を型取り材130に写し取る第3工程と、前記補填材112が乾燥して硬化する前に、前記凹凸模様を写し取った前記型取り材130を押し付けて当該補填材112の表面に前記凹凸模様を転写する第4工程と、前記補填材112が硬化した後に、上塗り層116を形成する第5工程と、を含むことを特徴とする。
【0027】
このような工程で補修することによって、補修跡が目立たず周囲の外壁に馴染む自然な仕上がりの外壁として補修することができる。最も重要なポイントは、型取り材130を用いて欠損していない部分の外壁の凹凸模様乃至凹凸形状を転写している点である。これによって、補修した部分とそうでない部分との違いが目立たなくなり、補修後の外壁の美感性乃至審美性が向上する。更に、第1工程において、ひび割れ含浸性を有する樹脂系塗料を下地処理材(第1下地処理塗装110)として塗布しているので、補填材112が外壁110に生じたひびの中に流れ込んで補填材112の密度が低下することを防止し、補修部分の十分な強度が確保可能となっている。
【0028】
〈その他の構成例〉
上記では、凍害による外壁の損傷を前提に説明しているが、凍害以外の原因によって損傷した外壁を補修する際にももちろん適用可能である。
【符号の説明】
【0029】
100・・・外壁材(断面)
102・・・欠損部
104・・・凹凸模様
110・・・第1下地処理塗装
112・・・補填材
114・・・第2下地処理塗装
116・・・上塗り層
130・・・型取り材
134・・・型跡
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2022-04-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
表面に凹凸模様を有する外壁の補修方法であって、
凍害等により生じた欠損部に対してひび割れ含浸性を有してひび割れに入り込んで亀裂の拡大を防止する機能を備えた樹脂系塗料を下地処理材として塗布する第1工程と、
前記欠損部に、少なくとも前記凹凸模様の凹部よりも高い位置にまで乾燥すると硬化する補填材を盛る第2工程と、
前記外壁表面における前記欠損部以外の部分の凹凸模様を型取り材に写し取る第3工程と、
前記補填材が乾燥して硬化する前に、前記凹凸模様を写し取った前記型取り材を押し付けて当該補填材の表面に前記凹凸模様を転写する第4工程と、
前記補填材が硬化した後に、前記凹凸模様の凹凸がそのまま表面に残るように上塗り層を形成する第5工程と、を含む
ことを特徴とする外壁の補修方法。