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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131755
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】ボルト
(51)【国際特許分類】
   F16B 35/00 20060101AFI20230914BHJP
【FI】
F16B35/00 M
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022036694
(22)【出願日】2022-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】392027254
【氏名又は名称】株式会社佐賀鉄工所
(74)【代理人】
【識別番号】110001564
【氏名又は名称】フェリシテ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】橋口 悟
(72)【発明者】
【氏名】野田 周作
(72)【発明者】
【氏名】毛利 啓己
(72)【発明者】
【氏名】笠原 孝平
(72)【発明者】
【氏名】笠原 嘉太
(57)【要約】
【課題】雌ねじに挿入された後に容易に姿勢を矯正することを可能としつつ、焼付きの発生する可能性を低減すること。
【解決手段】本発明に係るボルト1は、所定ピッチPで配置されている完全な形状の複数のねじ山10と、ねじ山10の終端部10Eからボルトの先端T側に延びるねじ移行部20と、ねじ移行部20の終端部20Eからボルト1の先端T側に延びる先付部30とを備える。先付部30の外径φdpは、ねじ山10の山径φd1よりも小さく、先付部30は、ボルト1の長手方向Lに沿って延びる側面30Aと、ボルト1の先端Tに配置されている先端面30Bとを備え、側面30A及び先端面30Bは、曲面Fで繋がっている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボルトであって、
所定ピッチで配置されている完全な形状の複数のねじ山と、
前記ねじ山の終端部から前記ボルトの先端側に延びるねじ移行部と、
前記ねじ移行部の終端部から前記ボルトの先端側に延びる先付部と、を備え、
前記先付部は、
前記ボルトの長手方向に沿って延びる側面と、
前記ボルトの先端に配置されている先端面と、を備え、
前記側面及び前記先端面は、曲面で繋がっている、ボルト。
【請求項2】
前記曲面は、曲率半径の異なる複数の曲面を含む、請求項1に記載のボルト。
【請求項3】
前記ボルトの長手方向における前記ねじ移行部の長さは、前記所定ピッチの1.0~2.5倍である、請求項1に記載のボルト。
【請求項4】
前記先付部の外径は、前記ねじ山の谷径よりも大きい、請求項1に記載のボルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボルトに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ボルトをナット等の雌ねじに締め付ける際に、ボルトが斜めに組み込まれてしまうことによって焼付きが発生する場合があるという問題点が知られている。
【0003】
かかる問題点を解決するため、様々な形状の先端部分を有するボルトが提案されている(例えば、特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6929564号
【特許文献2】特開2004-360896号公報
【特許文献3】特許第4450357号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に係るボルト1によれば、雌ねじ2に締め付けられる完全な形状のねじ部13の溝部14の径よりも大きい径の案内部12が設けられているため、案内部12よりも先端側にテーパ部11が設けられているものの必然的に先端部分の径が大きくなり、雌ねじへの案内性の観点から好ましくないという問題点があった。
【0006】
また、特許文献1に係るボルト1によれば、案内部12の径と比べて、案内部12に隣接するねじ部13の山頂(ねじ山13A)の径が急激に大きくなっているため、姿勢を矯正することが可能な傾きが大きい反面、雌ねじに挿入された際の傾きを修正して雌ねじを捉えられる(空転しない)傾きになった後、自ら姿勢を矯正する際に雌ねじとの干渉が急激に強くなり焼付きが発生する可能性があるという問題点があった。
【0007】
また、特許文献2に係るボルトによれば、最も先端側に不完全な形状のねじ山が設けられているため(特許文献2の図2参照)、雌ねじに締め付け可能な(空転しない)傾きの状態において自ら姿勢を矯正する際に、かかる不完全な形状のねじ山と雌ねじのねじ山とが互いに干渉(乗り上げ)して焼付きが発生してしまう可能性があるという問題点があった。
【0008】
さらに、特許文献3に係るボルトによれば、特許文献2に係るボルトと同様に、雌ねじに締め付け可能な(空転しない)傾きの状態において自ら姿勢を矯正する際に、不完全な形状のねじ山を有する不完全ねじ部20bと雌ねじのねじ山とが互いに干渉(乗り上げ)して焼付きが発生してしまう可能性があるという問題点があった。
【0009】
そこで、本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、雌ねじに挿入された後に容易に姿勢を矯正することを可能としつつ、焼付きの発生する可能性を低減することができるボルトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の特徴は、ボルトであって、所定ピッチで配置されている完全な形状の複数のねじ山と、前記ねじ山の終端部から前記ボルトの先端側に延びるねじ移行部と、前記ねじ移行部の終端部から前記ボルトの先端側に延びる先付部と、を備え、前記先付部の外径は、前記ねじ山の山径よりも小さく、前記先付部は、前記ボルトの長手方向に沿って延びる側面と、前記ボルトの先端に配置されている先端面と、を備え、前記側面及び前記先端面は、曲面で繋がっていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、雌ねじに挿入された後に容易に姿勢を矯正することを可能としつつ、焼付きの発生する可能性を低減することができるボルトを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、一実施形態に係るボルト1のねじ部分の左側面図である。
図2図2は、図1における領域Aの拡大図である。
図3図3は、一実施形態に係るボルト1を雌ねじ50に挿入する様子の一例を示す図である。
図4図4は、一実施形態に係るボルト1を雌ねじ50に挿入する様子の一例を示す図である。
図5図5は、一実施形態に係るボルト1を雌ねじ50に挿入する様子の一例を示す図である。
図6図6は、一実施形態に係るボルト1を雌ねじ50に挿入する様子の一例を示す図である。
図7図7は、一実施形態に係るボルト1を雌ねじ50に挿入する様子の一例を示す図である。
図8図8は、一実施形態に係るボルト1を雌ねじ50に挿入する様子の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態における構成要素は、適宜、既存の構成要素等との置き換えが可能であり、また、他の既存の構成要素との組み合わせを含む様々なバリエーションが可能である。したがって、以下の実施形態の記載をもって、特許請求の範囲に記載された発明の内容を限定するものではない。
【0014】
(第1実施形態)
以下、図1図8を参照して、本発明の第1実施形態に係るボルト1について説明する。図1は、本実施形態に係るボルト1のねじ部分の左側面図であり、図2は、図1における領域Aの拡大図であり、図3図8は、本実施形態に係るボルト1を雌ねじ50に挿入する様子の一例を示す図である。
【0015】
図1に示すように、本実施形態に係るボルト1は、複数のねじ山10と、ねじ山移行部20と、先付部30とを備えている。ここで、本実施形態において、図1に示す参照符号Tは、ボルト1の先端を示す。
【0016】
図1に示すように、複数のねじ山10は、所定ピッチPで配置されており、複数のねじ山10の各々は、完全な形状のねじ山である。
【0017】
本実施形態において、完全な形状のねじ山とは、図1に示すように、ねじ山の山頂10A及び谷底10Bの形状が共に完全な山形になっているものを示す。例えば、図1に示すように、完全な形状のねじ山の山頂10Aの頂角は、約60°となっていることが好ましい。
【0018】
ねじ山移行部20は、図1に示すように、ねじ山10の終端部10Eからボルト1の先端T側に延びるように設けられている。
【0019】
ねじ山移行部20の山頂20Aは、ねじ山10の終端部10Eからねじ山移行部20の終端部20Eにかけて、ねじ山10の山径(すなわち、ねじ山10の山頂10Aにおける外径)φd1からねじ山移行部20の終端部20Eにおけるパイロット部31の外径φdpに収束するように縮径している。
【0020】
また、ねじ山移行部20の谷部20Bの形状は、ねじ山移行部20の終端部20Eにおけるパイロット部31の外径φdpにテーパ形状で繋がっている。
【0021】
なお、ねじ山移行部20を構成するねじ山は、完全な形状のねじ山である。
【0022】
ここで、ボルト1の長手方向Lにおけるねじ移行部20の長さL1は、所定ピッチPの1.5~2.5倍である。
【0023】
先付部30は、図1に示すように、ねじ移行部20の終端部20Eからボルト1の先端T側に延びるように設けられている。
【0024】
図1に示すように、先付部30は、上述のパイロット部31と、先端部32とによって構成されている。
【0025】
パイロット部31は、上述のように、ねじ移行部20の終端部20Eからボルト1の先端T側に延びる部分である。
【0026】
ここで、図1に示すように、パイロット部31の外径φdpは、ねじ山10の山径φd1よりも小さくなるように構成されている。すなわち、パイロット部31の外径φdpは、ボルト1が挿入される雌ねじ50(図4参照)の内径φd3よりも小さくなるように構成されている。
【0027】
また、図1に示すように、パイロット部31の外径φdpは、ねじ山10の谷径(すなわち、ねじ山10の谷底10Bにおける外径)φd2よりも大きくなるように構成されている。
【0028】
ここで、ボルト1の長手方向Lにおけるパイロット部31の長さL2は、ねじ山10の山径φd1の0.5倍以上であることが好ましいが、ねじ山10の山径φd1の0.5倍以下であってもよい。
【0029】
先端部32は、パイロット部31の終端部31Eからボルト1の先端T側に延びる部分である。先端部32は、ボルト1の先端T側に向かうに連れて、後述の曲面Fに沿って縮径するように構成されている。
【0030】
ここで、先端部32の外径φdは、ねじ山10の山径φd1の0.5~0.75倍であってもよい。
【0031】
また、ボルト1の長手方向Lにおける先端部32の長さL3は、ねじ山10の山径φd1の0.1~0.3倍であることが好ましい。
【0032】
また、先付部30は、図1に示すように、ボルト1の長手方向Lに沿って延びる側面30Aと、ボルト1の先端Tに配置されている先端面30Bとを備えている。
【0033】
図1及び図2に示すように、先付部30において側面30A及び先端面30Bは、曲面Fで繋がっている。かかる曲面Fは、上述の先端部32に設けられている。
【0034】
ここで、図2に示すように、先付部30における曲面Fは、曲率半径の異なる複数の曲面F1/F2を含むように構成されていてもよい。
【0035】
本実施形態では、曲面Fが曲面F1/F2という2つの曲面によって構成されているケースについて説明するが、本発明は、かかるケースに限定されることはなく、曲面Fが2以外の数の曲面によって構成されているケースにも適用可能である。
【0036】
図2に示すように、曲面F1は、位置X1から位置X2に渡る曲面であり、曲面F1の曲率半径は、R1である。また、図2に示すように、曲面F2は、位置X2から位置X3に渡る局面であり、曲面F2の曲率半径は、R2である。曲率半径R1は、曲率半径R2よりも大きい。
【0037】
図2に示すように、位置X2において曲面F1と曲面F2とが接線連続で繋がっており、位置X1において側面30Aと曲面F1とが接線連続で繋がっており、位置X3において先端面30Bと曲面F2とが接線連続で繋がっている。
【0038】
以下、図3図8を参照して、本実施形態に係るボルト1を雌ねじ50に挿入する際の様子の一例について説明する。
【0039】
第1に、雌ねじ50の中心線から20°傾いた状態で、ボルト1を雌ねじ50に挿入しようとしても、図3に示すように、ボルト1を雌ねじ50に挿入できないが、後述のように、先端部32(曲面F)の効果でスムーズに雌ねじ50へ案内されていく。
【0040】
第2に、図4に示すように、ボルト1が雌ねじ50へ挿入されていく際、パイロット部31と雌ねじ50とが接触して、ボルト1が雌ねじ50に挿入されていくほど強制的にボルト1の軸と雌ねじ50(ナット)の軸との傾きが小さくなっていく。
【0041】
第3に、図5に示すように、ボルト1の軸と雌ねじ50の軸との傾きが8°になった時点でも、未だ、ボルト1と雌ねじ50は嵌合できない。
【0042】
第4に、図6に示すように、ボルト1の軸と雌ねじ50の軸との傾きが4°になった時点でも、未だ、ボルト1と雌ねじ50は嵌合できない。
【0043】
第5に、図7に示すように、ボルト1の軸と雌ねじ50の軸との傾きが2°程度になると、ボルト1が雌ねじ50に挿入でき、パイロット部31からねじ移行部20のねじ山となるように軸径が徐々に大きくなっていき、ボルト1と雌ねじ50との干渉が避けられつつ両者が嵌合し、図8に示すように、ボルト1が雌ねじ50にスムーズに挿入きる。
【0044】
本実施形態に係るボルト1によれば、先端部32の外径φdを、ねじ山10の山径φd1の0.5~0.75倍と設定することで、ボルト1の雌ねじ50への案内性を向上させることができる。
【0045】
また、本実施形態に係るボルト1によれば、先端面30Bと曲面F2(小さい曲率半径R2)が接線連続し、曲面F2と曲面F1(大きい曲率半径R1)とが接線連続しているため、先端部32の雌ねじ50への挿入性や、先端部32が雌ねじ50に挿入され始めてからボルトが切り上がりねじ山10が雌ねじ50に達するまでの挿入性を向上させることができる。
【0046】
また、本実施形態に係るボルト1によれば、パイロット部31の外径φdpを雌ねじ50の内径φd3よりも小さくねじ山10の谷径φd2よりも大きくなるように設定しており、パイロット部32と雌ねじ50との間のクリアランスが小さいため、ボルト1を雌ねじ50挿入していくと自然とボルト1の軸と雌ねじ50の軸との傾きが小さい状態とすることができる。
【0047】
また、本実施形態に係るボルト1によれば、ボルト1の長手方向Lにおけるねじ移行部20の長さL1を、所定ピッチPの1.5~2.5倍に設定しており、且つ、ねじ移行部20を完全な形状のねじ山としており、パイロット部32の外径φdpからねじ山10の山径φd1に向けて徐々にねじ山の外径が大きくなっていくため、ボルト1と雌ねじ50とが嵌合する際に、両者のリード角の不揃いから生じるねじ山同士の干渉を抑制し、焼付きの発生を抑制することができる。
【符号の説明】
【0048】
1…ボルト
10…ねじ山
10A…ねじ山の山頂
10B…ねじ山の谷底
10E…ねじ山の終端部
20…ねじ移行部
20A…ねじ移行部の山頂
20B…ねじ移行部の谷底
20E…ねじ移行部の終端部
30…先付部
30A…先付部の側面
30B…先付部の先端面
31…パイロット部
31E…パイロット部の終端部
32…先端部
50…雌ねじ
T…ボルトの先端
P…所定ピッチ
φd…先端部の外径
φdp…パイロット部の外径
φd1…ねじ山の山径
φd2…ねじ山の谷径
φd3…雌ねじの内径
F、F1、F2…曲面
R1、R2…曲率半径
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8