(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131763
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】内視鏡処置具
(51)【国際特許分類】
A61B 17/128 20060101AFI20230914BHJP
A61B 17/122 20060101ALI20230914BHJP
A61B 1/018 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
A61B17/128
A61B17/122
A61B1/018 515
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022036706
(22)【出願日】2022-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】劉 嘉穎
(72)【発明者】
【氏名】前久保 尚武
【テーマコード(参考)】
4C160
4C161
【Fターム(参考)】
4C160DD02
4C160DD16
4C160DD26
4C160DD64
4C160NN04
4C160NN09
4C160NN11
4C161AA00
4C161BB01
4C161FF43
4C161HH21
(57)【要約】
【課題】クリップに取り付けられる線状物の連結部の長手軸方向における位置を各操作に応じて確実に制御できる内視鏡処置具を提供する。
【解決手段】筒体と、連結部を備えた線状物20と、ハンドル40とを有しており、ハンドル40はハンドル本体50とスライダー60とを有しており、ハンドル本体50は互いに対向している第1部51と第2部52とを有しており、下記(1)及び/又は(2)を満たす内視鏡処置具。
(1)第1部51は内側に突出した第1肉厚部51aを有しており、第1肉厚部51aとスライダー60の第1内側支持部61とが当接することによりスライダー60が圧入抵抗を受ける。
(2)第2部52は内側に突出した第2肉厚部52aを有しており、第2肉厚部52aとスライダー60の第2内側支持部62とが当接することによりスライダー60が圧入抵抗を受ける。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手軸方向に遠位側と近位側とを有しており、
筒体と、前記筒体の内腔に配置され医療用クリップに連結される連結部を備えた線状物と、前記筒体と前記線状物の近位側に設けられているハンドルとを有している内視鏡処置具であって、
前記ハンドルは、前記筒体の近位端部に接続されているハンドル本体と、前記線状物の近位端部が接続されており前記ハンドル本体に対して前記長手軸方向に移動可能なスライダーとを有しており、前記スライダーを遠位側から近位側に向かって牽引することにより前記連結部を前記筒体内に収容可能であり、
前記ハンドル本体は、前記長手軸方向に延在し互いに対向している第1部と第2部とを有しており、
下記(1)及び(2)の少なくとも1つを満たす内視鏡処置具。
(1)前記第1部は内側に突出した第1肉厚部を有しており、前記スライダーは前記第1部の内側に面する第1内側支持部を有しており、前記スライダーを前記ハンドル本体に対して前記長手軸方向に移動させたとき前記第1肉厚部と前記第1内側支持部とが当接することにより前記スライダーが圧入抵抗を受ける。
(2)前記第2部は内側に突出した第2肉厚部を有しており、前記スライダーは前記第2部の内側に面する第2内側支持部を有しており、前記スライダーを前記ハンドル本体に対して前記長手軸方向に移動させたとき前記第2肉厚部と前記第2内側支持部とが当接することにより前記スライダーが圧入抵抗を受ける。
【請求項2】
下記(3)及び(4)の少なくとも1つを満たす請求項1に記載の内視鏡処置具。
(3)上記(1)を満たす場合、前記第1肉厚部と前記第1内側支持部とが当接しているとき前記連結部の遠位端は前記筒体内に収容されていない。
(4)上記(2)を満たす場合、前記第2肉厚部と前記第2内側支持部とが当接しているとき前記連結部の遠位端は前記筒体内に収容されていない。
【請求項3】
下記(5)及び(6)の少なくとも1つを満たす請求項1に記載の内視鏡処置具。
(5)上記(1)を満たす場合、前記第1肉厚部と前記第1内側支持部とが当接しているとき前記連結部の少なくとも一部は前記筒体内に収容されている。
(6)上記(2)を満たす場合、前記第2肉厚部と前記第2内側支持部とが当接しているとき前記連結部の少なくとも一部は前記筒体内に収容されている。
【請求項4】
前記ハンドル本体は、前記スライダーの少なくとも一部がハンドル本体の外面の少なくとも一部に当接して前記スライダーの近位方向への移動が停止される停止部を有しており、
前記スライダーが前記停止部により移動を停止されているとき前記連結部の全部が前記筒体内に収容されており、
下記(7)及び(8)の少なくとも1つを満たす請求項1~3のいずれか一項に記載の内視鏡処置具。
(7)上記(1)を満たす場合、前記長手軸方向において、前記第1肉厚部の長さは前記停止部の長さよりも長い。
(8)上記(2)を満たす場合、前記長手軸方向において、前記第2肉厚部の長さは前記停止部の長さよりも長い。
【請求項5】
前記停止部は、前記第1部及び/又は前記第2部の外面に設けられた凸部である請求項4に記載の内視鏡処置具。
【請求項6】
前記停止部は、前記第1部及び/又は前記第2部の外面に設けられた凹部である請求項4に記載の内視鏡処置具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡下で病変部等の処置対象物を把持するのに用いられる内視鏡処置具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)や内視鏡的粘膜切除術(EMR)等の内視鏡を用いた処置では、手技の途中で出血を伴うことがある。このような出血や、消化管等の体腔内の病変による出血を止血する方法として、クリップで出血箇所を結紮して圧迫止血を行う方法が挙げられる。このとき、クリップは内視鏡処置具の遠位側に取り付けられ、クリップの開閉は内視鏡処置具の近位側に配置されたハンドルの操作によって制御される。
【0003】
このような内視鏡処置具として、例えば特許文献1には、ハンドルの押し込み、リターンにより、クリップを操作するものが開示されている。また、特許文献2には、ハンドル本体にスライダーの係止部を設けて、スライダーをハンドル本体に対して軸方向に移動させた際に、スライダーが係止部に係止される位置を制御できる内視鏡処置具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2004/082488号
【特許文献2】国際公開第2020/105253号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
内視鏡処置具では、手元側のハンドルを操作することにより、内視鏡処置具の先端にクリップを取り付けたり、先端に取り付けたクリップを筒体から出し入れしたり、クリップの開閉を制御して処置対象物を把持したり、把持後のクリップを内視鏡処置具から離脱させたりすることができる。このような操作には、クリップに取り付けられる線状物の連結部の長手軸方向の位置を各操作に応じて術者が適切に制御することが求められる。しかし、従来の内視鏡処置具では、確実なハンドル操作を行うことが困難な場合があった。
【0006】
そこで本発明は、手元側のハンドル操作において、線状物に連結されたスライダーを必要に応じて長手軸方向に緩やかに移動させることにより、クリップに取り付けられる線状物の連結部の長手軸方向における位置を各操作に応じて確実に制御できる内視鏡処置具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決できた本発明の内視鏡処置具の一実施態様は、長手軸方向に遠位側と近位側とを有しており、筒体と、前記筒体の内腔に配置され医療用クリップに連結される連結部を備えた線状物と、前記筒体と前記線状物の近位側に設けられているハンドルとを有している内視鏡処置具であって、前記ハンドルは、前記筒体の近位端部に接続されているハンドル本体と、前記線状物の近位端部が接続されており前記ハンドル本体に対して前記長手軸方向に移動可能なスライダーとを有しており、前記スライダーを遠位側から近位側に向かって牽引することにより前記連結部を前記筒体内に収容可能であり、前記ハンドル本体は、前記長手軸方向に延在し互いに対向している第1部と第2部とを有しており、下記(1)及び(2)の少なくとも1つを満たす。
(1)前記第1部は内側に突出した第1肉厚部を有しており、前記スライダーは前記第1部の内側に面する第1内側支持部を有しており、前記スライダーを前記ハンドル本体に対して前記長手軸方向に移動させたとき前記第1肉厚部と前記第1内側支持部とが当接することにより前記スライダーが圧入抵抗を受ける。
(2)前記第2部は内側に突出した第2肉厚部を有しており、前記スライダーは前記第2部の内側に面する第2内側支持部を有しており、前記スライダーを前記ハンドル本体に対して前記長手軸方向に移動させたとき前記第2肉厚部と前記第2内側支持部とが当接することにより前記スライダーが圧入抵抗を受ける。
【0008】
上記内視鏡処置具では、上記(1)及び/又は(2)を満たしているため、スライダーをハンドル本体に対して長手軸方向に移動させることにより、線状物を緩やかに移動させることができる。これにより、内視鏡処置具の先端にクリップを取り付けたり、クリップを取り付けた状態の連結部の筒体に対する位置を制御したり、クリップの開閉を制御して処置対象物を把持したり、把持後のクリップを内視鏡処置具から離脱させたりする等の操作を容易に確実に行うことが可能となる。また、肉厚部が第1部及び/又は第2部の内側に設けられていることにより、内視鏡処置具の外径に影響を与えることなく、ハンドルの操作性を向上させることができる。
【0009】
上記内視鏡処置具は、下記(3)及び(4)の少なくとも1つを満たすことが好ましい。
(3)上記(1)を満たす場合、前記第1肉厚部と前記第1内側支持部とが当接しているとき前記連結部の遠位端は前記筒体内に収容されていない。
(4)上記(2)を満たす場合、前記第2肉厚部と前記第2内側支持部とが当接しているとき前記連結部の遠位端は前記筒体内に収容されていない。
【0010】
上記内視鏡処置具は、下記(5)及び(6)の少なくとも1つを満たすことが好ましい。
(5)上記(1)を満たす場合、前記第1肉厚部と前記第1内側支持部とが当接しているとき前記連結部の少なくとも一部は前記筒体内に収容されている。
(6)上記(2)を満たす場合、前記第2肉厚部と前記第2内側支持部とが当接しているとき前記連結部の少なくとも一部は前記筒体内に収容されている。
【0011】
前記ハンドル本体は、前記スライダーの少なくとも一部がハンドル本体の外面の少なくとも一部に当接して前記スライダーの近位方向への移動が停止される停止部を有しており、前記スライダーが前記停止部により移動を停止されているとき前記連結部の全部が前記筒体内に収容されており、前記内視鏡処置具は下記(7)及び(8)の少なくとも1つを満たすことが好ましい。
(7)上記(1)を満たす場合、前記長手軸方向において、前記第1肉厚部の長さは前記停止部の長さよりも長い。
(8)上記(2)を満たす場合、前記長手軸方向において、前記第2肉厚部の長さは前記停止部の長さよりも長い。
このとき、前記停止部は、前記第1部及び/又は第2部の外面に設けられた凸部であることが好ましい。或いは、前記停止部は、前記第1部及び/又は第2部の外面に設けられた凹部であってもよい。
【発明の効果】
【0012】
上記内視鏡処置具によれば、手元側のハンドル操作において、線状物に連結されたスライダーを必要に応じて長手軸方向に緩やかに移動させることができ、クリップに取り付けられる線状物の連結部の長手軸方向の位置を各操作に応じて確実に制御することができる。これにより、手元側のハンドル操作によって、内視鏡処置具の先端にクリップを取り付けたり、クリップを取り付けた状態の連結部の筒体に対する位置を制御したり、クリップの開閉を制御して処置対象物を把持したり、把持後のクリップを内視鏡処置具から離脱させたりする等の操作を容易に確実に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る内視鏡処置具の全体図の一例を表す。
【
図2】本発明の一実施形態に係る内視鏡処置具の全体図の別の例を表す。
【
図3】本発明の一実施形態に係る線状物の遠位端部とクリップの平面図を表す。
【
図4】
図1に示した内視鏡処置具のハンドル部分の長手軸方向の断面図を表す。
【
図6】本発明の一実施形態において、クリップを取り付けた際の内視鏡処置具の遠位端部の側面図の一例を表す。
【
図7】本発明の一実施形態において、クリップの待機状態における内視鏡処置具の遠位端部の側面図の一例を表す。
【
図8】本発明の一実施形態において、クリップの把持操作可能状態における内視鏡処置具の遠位端部の側面図の一例を表す。
【
図9】本発明の他の実施形態における内視鏡処置具のハンドル部分の長手軸方向の断面図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施の形態に基づき本発明を説明するが、本発明はもとより下記実施の形態によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合しうる範囲で適切に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、各図面において、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、明細書や他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法は、本発明の特徴の理解に資することを優先しているため、実際の寸法とは異なる場合がある。
【0015】
図1~
図5を参照しつつ本発明の内視鏡処置具の実施形態について説明する。ただし、本発明は図面に示された実施形態に限定されるものではない。
図1は、本発明の一実施形態に係る内視鏡処置具の全体図の一例を表し、クリップを取り付けた線状物の連結部が筒体の遠位端から露出した状態を表す。
図2は、本発明の一実施形態に係る内視鏡処置具の全体図の別の例を表し、クリップが取り外された線状物の連結部が筒体内に配置されている状態を表す。
図3は、本発明の一実施形態に係る線状物の遠位端部とクリップの平面図を表す。
図4は、
図1に示した内視鏡処置具のハンドル部分の長手軸方向の断面図を表し、紙面と平行な面の断面図を表す。
図5は、
図4に示した断面図の別の例を表し、
図4とは異なる位置に肉厚部が設けられる場合の例を表す。
【0016】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る内視鏡処置具1は、長手軸方向xに遠位側と近位側とを有しており、筒体10と、筒体10の内腔に配置され医療用クリップ30に連結される連結部22を備えた線状物20と、筒体10と線状物20の近位側に設けられているハンドル40とを有している。本発明において、長手軸方向xとは筒体10や線状物20の延在する方向である。長手軸方向xにおいて近位側とは内視鏡処置具1を使用する術者の手元側であり、ハンドル40が配置されている側である。長手軸方向xにおいて遠位側とは、近位側の反対側、すなわち処置対象物側である。
図1及び
図2において、図の左側が遠位側であり、図の右側が近位側である。本明細書において、医療用クリップ30を単にクリップ30ということがある。
【0017】
内視鏡処置具1による施術を行う際は、線状物20の遠位端部に設けられた連結部22にクリップ30を接続し、線状物20を筒体10の内腔に配置した状態の内視鏡処置具1を内視鏡の鉗子チャンネルに挿入する。内視鏡処置具1を鉗子チャンネルに挿入する際には、クリップ30はクリッピングできない状態であることが好ましい。クリップ30を接続した線状物20を鉗子チャンネルを通して処置対象物の近くまで搬送し、その後、手元側のハンドル40を操作してクリップ30の開閉を制御することにより、処置対象物をクリップ30で把持することができる。
【0018】
図3に示すように、医療用クリップ30は、クリップ本体31とリング32から構成されていることが好ましい。クリップ本体31は、近位端部に両腕部を接続する接続部を有しており、近位端部を支点として遠位側が開閉可能に構成されていることが好ましい。クリップ30が開いた状態においては、リング32はクリップ本体31の近位端部の周囲に配置されており、リング32をクリップ本体31の遠位側に移動させることによりクリップ30を閉じることができる。このとき、線状物20の連結部22にクリップ30を接続し、線状物20を筒体10に対して近位側に移動させることにより、リング32が筒体10と接触して遠位側に押され、リング32がクリップ本体31の遠位側に移動してクリップ30が閉じるような構成とすることができる。これにより、クリップ30が処置対象物を把持することができる。クリップ30が処置対象物を把持した後、線状物20をさらに近位側に引くことにより、線状物20の連結部22をクリップ30から外し、処置対象物を把持した状態のクリップ30を体内に留置することが可能である。
【0019】
クリップ30の大きさは、クリップ30が連結する連結部22の大きさや筒体10の内径を考慮の上、目的に応じて適宜設定すればよい。クリップ本体31は、クリップ30が閉じた状態において、例えば、長手軸方向xの長さが7.0mm以上20mm以下であることが好ましい。クリップ本体31は、クリップ30が閉じた状態で少なくとも一部が筒体10に収容可能に形成されていることが好ましい。
【0020】
クリップ本体31は、例えば、互いに対向して配置される2つの部材を接続することにより形成される。或いは、クリップ本体31は、1つの部材を折り曲げることにより形成されてもよい。クリップ本体31を構成する材料としては、例えば、Ni-Ti合金;SUS301、SUS303、SUS304、SUS601等のステンレス鋼等が挙げられる。中でも、クリップ本体31を構成する材料は、ステンレス鋼であることが好ましい。これにより、生体適合性及び高弾性を有するクリップ本体31とすることができる。
【0021】
リング32の長手軸方向xに垂直な断面の形状は特に限定されないが、例えば、円形状、長円形状、多角形状であってもよい。或いは、リング32の長手軸方向xに垂直な断面の形状は、切れ込みが入ったC字状であってもよく、リング32自体が線材がらせん状に巻回されて形成されたコイルであってもよい。
【0022】
リング32は、例えば、長手軸方向xの長さが0.5mm以上3.0mm以下であることが好ましい。、リング32の外径は筒体10の内径よりも大きいことが好ましく、リング32の内径は筒体10の外径よりも小さいことが好ましい。
【0023】
リング32を形成する材料としては、クリップ本体31と同じ材料が挙げられる。中でも、リング32の材料はステンレス鋼を含むことが好ましい。
【0024】
線状物20は、クリップ30と連結するための連結部22を遠位端部に有しており、線状物20の近位端部がハンドル40のスライダー60に接続されることが好ましい。線状物20は、一又は複数の部材から構成されることができる。線状物20は、中実状であってもよいし、長手軸方向xに沿って延在する内腔を有している中空状であってもよいが、中実状であることが好ましい。線状物20が中実状であることにより、線状物20の外径を大きくすることなく線状物20の剛性を高めることができる。これにより、内視鏡処置具1の挿通性を高めることができる。線状物20は、単線であっても、単線を撚り合わせた撚り線であってもよい。線状物20が単線であれば製造が容易となり、線状物20が撚り線であれば線状物20の強度を高められるため、手元側の操作をクリップ30及び連結部22を含む内視鏡処置具1の遠位部に伝えやすくなる。線状物20の長手軸方向xに垂直な断面の形状は、例えば、円形状、楕円形状、多角形状、又はこれらを組み合わせた形状とすることができる。
【0025】
線状物20を構成する材料としては、例えば、SUS301、SUS303、SUS304、SUS631等のステンレス鋼、炭素鋼等の金属;ナイロン等のポリアミド系樹脂;PP、PE等のポリオレフィン系樹脂;PET等のポリエステル系樹脂、PEEK等の芳香族ポリエーテルケトン系樹脂;ポリイミド系樹脂;PTFE、PFA、ETFE等のフッ素系樹脂等の合成樹脂等が挙げられる。中でも、線状物20を構成する材料は、ステンレス鋼であることが好ましい。線状物20がステンレス鋼により構成されていることで、線状物20の強度を確保しつつ生体適合性を高めることができる。
【0026】
図示していないが、線状物20は表面にコーティング層を有していてもよい。コーティング層としては、例えば、PTFE、PFA、ETFE、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP)等のフッ素系樹脂が挙げられる。線状物20がコーティング層を有していることにより、線状物20の表面の摩擦を低減して摺動性を高めることや、線状物20の強度を高めることが可能となる。
【0027】
線状物20へのコーティング層の形成方法としては、コーティング層を形成する材料が線状物20の表面を被覆するようにすればよく、例えば、浸漬法、スプレー法、流動床法、ニーダーコーター法等を用いることができる。
【0028】
線状物20の長手軸方向xの長さは、内視鏡の鉗子口から処置対象部位までの距離等を考慮して適切な長さを選択することができ、例えば、1000mm以上3000mm以下とすることができる。
【0029】
線状物20の外径は、100μm以上が好ましく、200μm以上がより好ましく、300μm以上がさらに好ましい。線状物20の外径の下限値が上記範囲であることで、線状物20の剛性を高めることができる。また、線状物20の外径は、900μm以下が好ましく、800μm以下がより好ましく、700μm以下がさらに好ましい。線状物20の外径の上限値が上記範囲であることで、内視鏡処置具1の挿通性を向上させることができる。
【0030】
図3に示すように、線状物20は、遠位側に医療用クリップ30に連結する連結部22を備えている。医療用クリップ30と連結部22とを連結することで、線状物20に医療用クリップ30を取り付けることができる。線状物20は、連結部22以外の部分よりも連結部22の外径が大きい構成を有していることが好ましい。これにより、連結部22と医療用クリップ30との連結を安定化することができる。連結部22は線状物20と一体的に形成されていてもよいし、線状物20が線状物本体21と別部材の連結部22とから構成され、連結部22が線状物本体21の遠位側に取り付けられていてもよい。
【0031】
連結部22の形状は、クリップ30に連結できる限り特に制限されないが、連結部22の長手軸方向xに垂直な断面の形状は、例えば、円形状、楕円形状、多角形状、又はこれらを組み合わせた形状とすることができる。
【0032】
連結部22が別部材として線状物本体21に取り付けられている場合、線状物本体21及び連結部22を構成する材料については、線状物20を構成する材料についての上記説明を参照することができる。連結部22が別部材として線状物本体21に取り付けられている場合であっても、連結部22の材料は線状物本体21の材料と同じであることが好ましい。連結部22の材料と線状物本体21の材料が同じであることにより、連結部22と線状物本体21との接合を強固とすることができるため、線状物本体21から連結部22を外れにくくすることができる。その結果、内視鏡処置具1の耐久性を高めることが可能となる。
【0033】
連結部22が別部材である場合、連結部22と線状物本体21とを固定する方法は、例えば、ねじ、かしめ、嵌合、圧入等の機械的な固定;融着;溶接;接着剤、テープ等による接着等を用いることができる。中でも、連結部22は、線状物本体21に溶接により固定されていることが好ましい。これにより、連結部22と線状物本体21との接合強度を高めることができる。
【0034】
図1及び
図2に示すように、線状物20は、筒体10内に配置されている。線状物20の一部は筒体10の遠位端又は近位端から露出していてもよい。筒体10の近位端部はハンドル40のハンドル本体50に接続されていることが好ましい。筒体10とハンドル本体50とは、互いに動かないように接続されてもよく、回転可能に接続されてもよい。筒体10は、体腔内の形状に沿って屈曲する可撓性と、処置対象部位まで確実に到達できる剛性の両方をバランスよく兼ね備えていることが好ましい。筒体10は、生体適合性を有する材料から構成されていることが好ましい。筒体10は、金属や合成樹脂によって形成されたコイル体、短筒状の関節駒を軸方向に複数連結して回動可能にした筒体、合成樹脂から形成された筒体、又はこれらの組み合わせから構成することができる。金属や合成樹脂の種類については、線状物20を構成する材料についての上記説明を参照できる。
【0035】
図1及び
図2に示すように、内視鏡処置具1は、さらに外筒70を有していることが好ましい。外筒70の内腔には筒体10が配置され、外筒70が筒体10に対して特定範囲で摺動可能に形成されていることが好ましい。具体的には、外筒70は、外筒70の遠位端が筒体10の遠位端よりも遠位側にある位置と筒体10の遠位端よりも近位側にある位置との間を、長手軸方向xに移動可能に形成されていることが好ましい。このような移動操作を内視鏡処置具1の近位側でできるようにするため、外筒70が内視鏡処置具1の近位部まで延在していることが好ましい。このとき、外筒70の近位端部がアウターグリップ71として形成されていてもよい。外筒70の近位端部がアウターグリップ71として形成されていれば、アウターグリップ71を操作することにより外筒70を長手軸方向xに移動させることができる。外筒70とアウターグリップ71は、一体形成されていてもよいし、外筒70の近位端部がアウターグリップ71と接続される構成を有していてもよい。
【0036】
例えば、アウターグリップ71を近位側から遠位側に向かって押すことにより、外筒70を筒体10に対して遠位側に移動させることができる。これにより、筒体10の遠位端を外筒70内に収容できる。このとき、筒体10内に配置されている線状物20の連結部22にクリップ30が連結されていれば、筒体10の遠位端部に位置している連結部22が外筒70内に収容され、クリップ30の近位端部が外筒70内に収容されることができる。さらにアウターグリップ71を近位側から遠位側に向かって押すことにより、筒体10の遠位端よりも遠位側に位置しているクリップ30の遠位部も外筒70内に収容することができ、クリップ30全体を外筒70内に収容した状態とすることができる。このような状態で内視鏡処置具1を処置対象部位まで搬送すれば、搬送中にクリップ30が鉗子チャンネルや病変以外の体内組織を傷つけることを抑制できる。処置対象部位まで搬送した後、アウターグリップ71を遠位側から近位側に向かって牽引すれば、外筒70が筒体10に対して近位側に移動し、これによりクリップ30を外筒70から露出させることができ、把持操作に移ることができる。
【0037】
外筒70は、体腔内の形状に沿って屈曲する可撓性と、処置対象部位まで確実に到達できる剛性の両方をバランスよく兼ね備えていることが好ましい。外筒70を構成する材料は、上記筒体10を構成する材料の説明を参照できる。中でも、外筒70としては、合成樹脂から形成された筒体が好ましく用いられ、また、外筒70と筒体10との位置関係を使用者が目視で確認できるように、外筒70は透明又は半透明な材料から形成されていることが好ましい。滑り性の観点から、筒体10と外筒70を形成する合成樹脂は、互いに異なる材料であることが好ましい。
【0038】
アウターグリップ71は、1又は複数の部材から構成することができる。アウターグリップ71を構成する材料としては、例えば、PP、PE等のポリオレフィン系樹脂、PET等のポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ABS樹脂、ポリウレタン系樹脂等の合成樹脂を用いることができる。
【0039】
ハンドル40は、筒体10の近位端部に接続されているハンドル本体50と、線状物20の近位端部が接続されておりハンドル本体50に対して長手軸方向xに移動可能なスライダー60とを有している。スライダー60がハンドル本体50に対して長手軸方向xに移動可能とは、スライダー60とハンドル本体50との長手軸方向xにおける相対的な位置関係を変化させることができることを含む。スライダー60は、ハンドル本体50に対して長手軸方向xに摺動可能であることが好ましい。
【0040】
筒体10の近位端部とハンドル本体50とは、直接接続されていてもよいし、間接的に接続されていてもよい。また、線状物20の近位端部とスライダー60とは、直接接続されていてもよいし、間接的に接続されていてもよい。
【0041】
連結部22にクリップ30が連結されていないとき、スライダー60をハンドル本体50に対して遠位側から近位側に向かって牽引することにより、
図2に示すように連結部22を筒体10内に収容可能である。すなわち、連結部22が筒体10から露出している状態のとき、スライダー60を遠位側から近位側に向かって牽引することにより、スライダー60に接続された線状物20が筒体10に対して遠位側から近位側に向かって移動し、その結果、線状物20の連結部22が筒体10に対して近位側に移動することにより、連結部22が筒体10内に収容された状態となることができる。
【0042】
反対に、筒体10内に連結部22が収容されている状態のとき、スライダー60をハンドル本体50に対して近位側から遠位側に向かって押すことにより、スライダー60に接続された線状物20が筒体10に対して近位側から遠位側に向かって移動し、その結果、線状物20の連結部22が筒体10に対して遠位側に移動することにより、連結部22が筒体10内から一部又は全部露出した状態となることができる。この状態のときに連結部22にクリップ30を連結させることができ、クリップ30を筒体10の遠位端部近傍に配置することが可能となる。
【0043】
スライダー60は、1又は複数の部材から構成されることができる。スライダー60を構成する材料としては、上記アウターグリップ71を構成する材料に関する説明を参照できる。
【0044】
図1、
図2、
図4、及び
図5に示すように、ハンドル本体50は、長手軸方向xに延在し互いに対向している第1部51と第2部52とを有しており、内視鏡処置具1は下記(1)及び(2)の少なくとも1つを満たす。
(1)第1部51は内側に突出した第1肉厚部51aを有しており、スライダー60は第1部51の内側に面する第1内側支持部61を有しており、スライダー60をハンドル本体50に対して長手軸方向xに移動させたとき第1肉厚部51aと第1内側支持部61とが当接することによりスライダー60が圧入抵抗を受ける。
(2)第2部52は内側に突出した第2肉厚部52aを有しており、スライダー60は第2部52の内側に面する第2内側支持部62を有しており、スライダー60をハンドル本体50に対して長手軸方向xに移動させたとき第2肉厚部52aと第2内側支持部62とが当接することによりスライダー60が圧入抵抗を受ける。
【0045】
スライダー60は、その少なくとも一部がハンドル本体50の外側に配置されていることが好ましい。これにより、スライダー60の操作が容易となる。且つ、スライダー60の第1内側支持部61及び/又は第2内側支持部62は、互いに対向する第1部51と第2部52の内側に配置されていることが好ましい。
【0046】
ハンドル本体50は、第1部51と第2部52とが互いに対向する別々の部材、例えば板状の部材として構成されていてもよいし、或いは、例えば、第1部51と第2部52は筒状部材の互いに対向している部分であってもよい。当該筒状の形状は、円柱、四角柱、多角柱等任意の形状であってよい。いずれの形状であっても、内視鏡処置具1は、スライダー60の少なくとも一部がハンドル本体50の外側に形成されており、且つ、第1部51の内側に第1内側支持部61が面する構成、及び/又は第2部52の内側に第2内側支持部62が面する構成を有している。第1部51と第2部52が筒状部材の互いに対向している部分である場合、第1部51と第2部52は当該筒状部材の周方向に連続していないことが好ましい。これにより、内視鏡処置具1を上記構成とすることが容易となる。
【0047】
ここで、第1部51の内側とは、第1部51の第2部52に面する側であり、第2部52の内側とは、第2部52の第1部51に面する側である。また、第1部51の外側とは上記第1部51の内側の反対側であり、第2部52の外側とは上記第2部52の内側の反対側であり、ハンドル本体50の外側とは第1部51の外側及び/又は第2部52の外側である。
【0048】
図4及び
図5に示すように、第1部51が第1肉厚部51aを有しており、且つ、第2部52が第2肉厚部52aを有していてもよい。この場合、第1肉厚部51aと第2肉厚部52aは長手軸方向xの同じ位置に配されていることが好ましい。第1部51が第1肉厚部51aを有しており、且つ、第2部52が第2肉厚部52aを有しているとき、長手軸方向xに垂直な断面において、第1肉厚部51aと第2肉厚部52aが配されている位置における第1部51と第2部52との間の距離は、第1肉厚部51aと第2肉厚部52a以外の位置における第1部51と第2部52との間の距離の0.95倍以下が好ましく、0.9倍以下がより好ましく、0.85倍以下がさらに好ましく、0.8倍以下であってもよく、また、0.4倍以上が好ましく、0.5倍以上がより好ましく、0.6倍以上がさらに好ましい。第1肉厚部51a及び第2肉厚部52aにおけるそれぞれ第1部51及び第2部52の厚みが、第1肉厚部51a及び第2肉厚部52a以外の位置におけるそれぞれ第1部51及び第2部52の厚みよりも厚いことにより、第1肉厚部51aと第2肉厚部52aにおける第1部51と第2部52との間の距離を上記範囲とすることができる。第1肉厚部51a及び第2肉厚部52aにおけるそれぞれ第1部51及び第2部52の厚みは、長手軸方向xに沿って異なっていてもよいし同じであってもよい。
【0049】
図示していないが、第1部51のみが内側に突出した第1肉厚部51aを有していてもよい。この場合、長手軸方向xに垂直な断面において、第1肉厚部51aにおける第1部51と第2部52との間の距離は、第1肉厚部51a以外の位置における第1部51と第2部52との間の距離の0.98倍以下が好ましく、0.95倍以下がより好ましく、0.90倍以下がさらに好ましく、0.85倍以下であってもよく、また、0.4倍以上が好ましく、0.5倍以上がより好ましく、0.6倍以上がさらに好ましい。第1肉厚部51aにおける第1部51の厚みが、第1肉厚部51a以外の位置における第1部51の厚みよりも厚いことにより、第1肉厚部51aにおける第1部51と第2部52との間の距離を上記範囲とすることができる。第1肉厚部51aにおける第1部51の厚みは、長手軸方向xに沿って異なっていてもよいし同じであってもよい。
【0050】
図示していないが、第2部52のみが内側に突出した第2肉厚部52aを有していてもよい。この場合、長手軸方向xに垂直な断面において、第2肉厚部52aにおける第1部51と第2部52との間の距離は、第2肉厚部52a以外の位置における第1部51と第2部52との間の距離の0.98倍以下が好ましく、0.95倍以下がより好ましく、0.90倍以下がさらに好ましく、0.85倍以下であってもよく、また、0.4倍以上が好ましく、0.5倍以上がより好ましく、0.6倍以上がさらに好ましい。第2肉厚部52aにおける第2部52の厚みが、第2肉厚部52a以外の位置における第2部52の厚みよりも厚いことにより、第2肉厚部52aにおける第1部51と第2部52との間の距離を上記範囲とすることができる。第2肉厚部52aにおける第2部52の厚みは、長手軸方向xに沿って異なっていてもよいし同じであってもよい。
【0051】
第1肉厚部51a及び第2肉厚部52aの長手軸方向xの長さは、クリップ30の長手軸方向xの長さや形状に応じて適宜設定すればよく、例えば、それぞれ第1部51及び第2部52の長さの3%以上が好ましく、5%以上がより好ましく、10%以上がさらに好ましく、また、50%以下が好ましく、40%以下がより好ましく、30%以下がさらに好ましい。
【0052】
このように、内視鏡処置具1が第1肉厚部51a及び/又は第2肉厚部52aを有することにより、スライダー60をハンドル本体50に対して長手軸方向xに移動させたとき、第1肉厚部51aと第1内側支持部61が当接するか、及び/又は第2肉厚部52aと第2内側支持部62が当接することにより、スライダー60が圧入抵抗を受ける。これにより、スライダー60をハンドル本体50に対して長手軸方向xに移動させた際、スライダー60に接続された線状物20を長手軸方向xに緩やかに移動させることができる。その結果、スライダー60の操作により、クリップ30の線状物20への連結やクリップ30の操作を容易に確実に行うことが可能となる。
【0053】
第1肉厚部51a及び/又は第2肉厚部52aが設けられる位置を長手軸方向xのどこにするかにより、どの操作においてスライダー60が圧入抵抗を受けるかを決めることができる。例えば、線状物20の連結部22を筒体10の遠位端から露出させてクリップ30に連結する際の操作を確実に行うためには、
図4に示すように第1肉厚部51a及び/又は第2肉厚部52aをそれぞれ第1部51及び/又は第2部52の遠位部に設ければよい。また、把持対象物を把持する前にクリップ30を取り付けた状態の連結部22の筒体10に対する位置を確実に制御するためには、
図5に示すように第1肉厚部51a及び/又は第2肉厚部52aをそれぞれ第1部51及び/又は第2部52の中央部付近に設ければよい。或いは、クリップ30の開閉を制御して処置対象物を把持したり、把持後のクリップ30を連結部22から離脱させたりする際の操作を確実に行うためには、図示していないが第1肉厚部51a及び/又は第2肉厚部52aをそれぞれ第1部51及び/又は第2部52の近位部に設ければよい。
【0054】
そのため、第1肉厚部51a及び/又は第2肉厚部52aは、長手軸方向xに1つだけ設けられていてもよいが、離隔して複数設けられていることが好ましい。第1肉厚部51aが長手軸方向xに離隔して複数設けられている場合、その数は2以上が好ましく、3以上がより好ましく、また、5以下が好ましく、4以下がより好ましい。第2肉厚部52aが長手軸方向xに離隔して複数設けられている場合、その数は2以上が好ましく、3以上がより好ましく、また、5以下が好ましく、4以下がより好ましい。第1肉厚部51aと第2肉厚部52aの両方がそれぞれ長手軸方向xに離隔して設けられている場合、それぞれの数は同じであってもよいし異なっていてもよい。
【0055】
第1内側支持部61と第2内側支持部62は、弾性を有する材料から構成されていてもよい。これにより、第1肉厚部51aや第2肉厚部52aが存在してもスライダー60を長手軸方向xに移動させることが容易となり、圧入抵抗を受けやすくすることができる。
【0056】
第1肉厚部51aは第1部51の内側に突出しており、第2肉厚部52aは第2部52の内側に突出していることにより、ハンドル本体50の外径には影響を与えることなく上記効果を奏することができる。これにより、内視鏡処置具1の挿通性を向上できる。
【0057】
内視鏡処置具1は、下記(3)及び(4)の少なくとも1つを満たすことが好ましい。
(3)上記(1)を満たす場合、第1肉厚部51aと第1内側支持部61とが当接しているとき連結部22の遠位端22dが筒体10内に収容されていない。
(4)上記(2)を満たす場合、第2肉厚部52aと第2内側支持部62とが当接しているとき連結部22の遠位端22dが筒体10内に収容されていない。
【0058】
上記について
図6を参照して説明する。
図6は、スライダー60がハンドル本体50の遠位部に位置しているときの連結部22と筒体10との位置関係をクリップ30とともに示している。スライダー60がハンドル本体50の遠位部に位置することにより、
図6に示すように、連結部22の遠位端22dが筒体10内に収容されず、連結部22は筒体10の遠位端よりも遠位側に存在している。この状態において、連結部22とクリップ30とを連結することができる。このとき、上記(3)及び/又は(4)を満たすことにより、スライダー60はハンドル本体50の遠位部において圧入抵抗を受けることができる。その結果、ハンドル本体50の遠位部においてスライダー60の長手軸方向xにおける移動を緩やかとすることができ、連結部22とクリップ30とを確実に連結することが容易となる。
【0059】
内視鏡処置具1は、下記(5)及び(6)の少なくとも1つを満たすことが好ましい。
(5)上記(1)を満たす場合、第1肉厚部51aと第1内側支持部61とが当接しているとき連結部22の少なくとも一部が筒体10内に収容されている。
(6)上記(2)を満たす場合、第2肉厚部52aと第2内側支持部62とが当接しているとき連結部22の少なくとも一部が筒体10内に収容されている。
【0060】
上記について
図7及び
図8を参照して説明する。
図7及び
図8は、スライダー60がハンドル本体50の中央部付近に位置しているときの連結部22と筒体10との位置関係をクリップ30とともに示している。
【0061】
スライダー60がハンドル本体50の中央部付近に位置することにより、
図7に示すように、連結部22の近位端22pが筒体10内に収容され、連結部22と連結したクリップ30が筒体10の遠位端部近傍に存在することができる。このような状態は、クリップ30が把持前の待機状態に適した状態であるということができる。待機状態とは、クリップ30による把持操作をすぐに行うことができる状態である。このとき、連結部22の遠位端22dは筒体10から露出していてもよい。
【0062】
スライダー60がハンドル本体50の中央部付近に位置することにより、
図8に示すように、連結部22の遠位端22dが筒体10内に収容されている、すなわち連結部22の全体が筒体10内に収容されていてもよい。このとき、クリップ30がクリップ本体31とリング32とから構成されている場合、リング32の近位端が筒体10の遠位端と当接していることが好ましい。これにより、クリップ30が把持操作を開始できる状態となることができる。
【0063】
内視鏡処置具1による施術を行う際は、クリップ30を待機状態として内視鏡処置具1を内視鏡の鉗子チャンネルに挿入して、クリップ30を処置対象物の近傍まで搬送することが好ましい。搬送後、スライダー60をハンドル本体50に対して長手軸方向xの近位側にわずかに牽引することで、クリップ30を待機状態から把持操作を開始できる状態とすることができる。このとき、上記(5)及び/又は(6)を満たすことにより、スライダー60は圧入抵抗を受けるため、スライダー60をハンドル本体50に対して長手軸方向xの近位側にわずかに牽引する際の移動を緩やかとすることができ、操作を確実に行うことが容易となる。
【0064】
図7に示す状態から
図8に示す状態となるようにスライダー60をハンドル本体50に対して近位側に移動させる過程全体において、内視鏡処置具1は上記(1)及び/又は(2)を満たしていてもよい。すなわち、待機状態から把持操作を開始できる状態とするまでスライダー60をハンドル本体50に対して近位側に長手軸方向xに移動させる区間全体に第1肉厚部51a及び/又は第2肉厚部52aが設けられていてもよい。これにより、待機状態から把持操作を開始できる状態とするまでの過程でスライダー60の移動を緩やかとすることがより容易となる。
【0065】
ハンドル本体50は、スライダー60の少なくとも一部がハンドル本体50の外面の少なくとも一部に当接してスライダー60の近位方向への移動が停止される停止部500を有しており、スライダー60が停止部500により移動を停止されているとき連結部22の全部が筒体内に収容されており、内視鏡処置具1は下記(7)及び(8)の少なくとも1つを満たすことが好ましい。
(7)上記(1)を満たす場合、長手軸方向xにおいて、第1肉厚部51aの長さLaは停止部500の長さLよりも長い。
(8)上記(2)を満たす場合、長手軸方向xにおいて、第2肉厚部52aの長さLaは停止部500の長さLよりも長い。
【0066】
上記について、
図9を参照しつつ説明する。
図9は、本発明の他の実施形態に係る内視鏡処置具1のハンドル40の長手軸方向xの断面図を表す。
図9に示すように、ハンドル本体50は、スライダー60の少なくとも一部がハンドル本体50の外面の少なくとも一部に当接してスライダー60の近位方向への移動が停止される停止部500を有していることが好ましい。
【0067】
スライダー60を停止部500よりも遠位側から近位側に牽引したとき、スライダー60はその少なくとも一部が停止部500と当接することにより停止箇所Pにおいて停止され、さらにスライダー60に所定以上の牽引力を付加することにより停止が解かれてスライダー60が近位方向に移動できる。
図9には、停止部500にスライダー60が当接して、停止箇所Pにおいて停止されている状態を示している。
【0068】
スライダー60が停止部500により移動を停止されているときは、連結部22の全部が筒体10内に収容されている状態であることが好ましい。すなわち、連結部22及びクリップ30と筒体10との位置関係が
図8に示すようなクリップ30が把持操作を開始できる状態であることが好ましい。
【0069】
上記の構成により、使用者は、クリップ30が把持操作を開始できる状態にあることを、スライダー60の一部が停止部500に当接する感触で感知することができる。
【0070】
上記態様において、内視鏡処置具1は、さらに第1肉厚部51a及び/又は第2肉厚部52aを有している。このとき、第1肉厚部51a及び/又は第2肉厚部52aはハンドル本体50の中央部付近に設けられていることが好ましい。これにより、スライダー60の長手軸方向xへの移動を緩やかとして、クリップ30の待機状態から把持操作を開始できる状態への移行を確実に行える。
【0071】
上記(1)を満たす場合、長手軸方向xにおいて、第1肉厚部51aの長さLaは停止部500の長さLよりも長いことが好ましい。また、上記(2)を満たす場合、長手軸方向xにおいて、第2肉厚部52aの長さLaは停止部500の長さLよりも長いことが好ましい。このような構成により、停止部500によりスライダー60が停止されることで使用者が受ける感触と、第1肉厚部51aや第2肉厚部52aによりスライダー60が圧入抵抗を受けることで使用者が受ける感触が区別しやすくなり、クリップ30の状態をより正確に把握することが容易となる。
【0072】
第1肉厚部51a及び/又は第2肉厚部52aの長さLaは、それぞれ、停止部500の長さL1の1.2倍以上が好ましく、1.5倍以上がより好ましく、2倍以上がさらに好ましく、3倍以上が特に好ましく、また、20倍以下が好ましく、15倍以下がより好ましく、10倍以下がさらに好ましい。
【0073】
第1肉厚部51a及び/又は第2肉厚部52aの長さLaが上記範囲であることにより、クリップ30の待機状態から把持操作可能な状態までのスライダー60の移動をより効果的に緩やかとすることができる。
【0074】
停止部500は、第1部51及び/又は第2部52の外面に設けられた凸部500aであることが好ましい。このとき、スライダー60の第1部51及び/又は第2部52の外面に面する面にも凸部を設け、当該凸部と凸部500aとが当接することで、スライダー60が停止部500により停止してもよい。或いは、スライダー60の第1部51及び/又は第2部52の外面に面する面に凹部を設け、当該凹部と凸部500aとが当接することで、スライダー60が停止部500により停止してもよい。
【0075】
図9に示すように、停止部500は、第1部51の外面にのみ設けられてもよい。或いは、図示していないが、停止部500は第2部52の外面にのみ設けられてもよいし、第1部51の外面と第2部52の外面の両方に設けられてもよい。いずれの場合であっても停止部500が設けられた第1部51及び/又は第2部52に対向するスライダー60の面に、停止部500と当接できる凸部又は凹部を設ければよい。
【0076】
或いは図示していないが、停止部500は、第1部51及び/又は第2部52の外面に設けられた凹部であってもよい。このとき、スライダー60の第1部51及び/又は第2部52の外面に面する面に凸部を設け、当該凸部と停止部500として設けられた凹部とが当接することで、スライダー60が停止部500により停止してもよい。
【0077】
内視鏡処置具1が外筒70を備える場合、外筒70を筒体10に対して遠位側に移動させることにより外筒70内にクリップ30を配置でき、外筒70を筒体10に対して近位側に移動させることにより外筒70の遠位端からクリップ30が露出するように構成されていることが好ましい。また、スライダー60が停止部500により停止されているときに、このようにクリップ30が筒体10から出し入れ可能となっていることが好ましい。外筒70の筒体10に対する移動は、例えば外筒70の近位端に接続されたアウターグリップ71を手元で長手軸方向xに移動させることにより行ってもよい。
【符号の説明】
【0078】
1:内視鏡処置具
10:筒体
20:線状物
21:線状物本体
22:連結部
22d:連結部の遠位端
22p:連結部の近位端
30:クリップ
31:クリップ本体
32:リング
40:ハンドル
50:ハンドル本体
51:第1部
51a:第1肉厚部
52:第2部
52a:第2肉厚部
60:スライダー
61:第1内側支持部
62:第2内側支持部
70:外筒
71:アウターグリップ
500:停止部
500a:凸部
La:第1肉厚部及び/又は第2肉厚部の長さ
L:停止部の長さ
P:停止箇所