(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131765
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】医療用クリップシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 17/122 20060101AFI20230914BHJP
【FI】
A61B17/122
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022036708
(22)【出願日】2022-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】劉 嘉穎
(72)【発明者】
【氏名】前久保 尚武
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160DD19
4C160DD29
(57)【要約】
【課題】線状物を医療用クリップに容易に連結でき、線状物と医療用クリップの連結状態を安定に保つことのできる医療用クリップシステムを提供する。
【解決手段】互いに対向している第1部11と第2部12とを有し生体組織を把持する医療用クリップ10と、リング30と、医療用クリップ10に連結される連結部22を備えた線状物20と、を有する医療用クリップシステム1であって、医療用クリップ10は、連結部22を受け入れる空間Sが縮小している縮小区間S
1を有しており、ブリッジ13は基端10bよりも先端10a側であって第1腕部11a及び第2腕部12aよりも基端10b側に位置しており、縮小区間S
1はブリッジ13の基端10b側の端13bよりも先端10a側に位置している医療用クリップシステム1。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向している第1部と第2部とを有し生体組織を把持する医療用クリップと、前記医療用クリップが挿入される内腔を有するリングと、前記医療用クリップに連結される連結部を備えた線状物と、を有する医療用クリップシステムであって、
前記医療用クリップは、基端と先端とを有し、開閉方向と、前記基端から前記先端に向かう軸方向と、前記開閉方向及び前記軸方向に垂直な幅方向とを有しており、
前記第1部は、前記生体組織を把持する第1腕部と前記第1腕部よりも前記基端側に位置している第1基部とを有しており、前記第2部は、前記生体組織を把持する第2腕部と前記第2腕部よりも前記基端側に位置している第2基部とを有しており、
前記医療用クリップは、前記幅方向に第1端側と第2端側とを有し、前記第1端側に前記第1基部と前記第2基部とを接続するブリッジを有しており、
前記医療用クリップは、前記開閉方向における前記第1基部と前記第2基部との間の距離が前記基端から前記先端に向かって減少している区間を有することで前記連結部を受け入れる空間が前記基端から前記先端にかけて縮小している縮小区間を有しており、
前記軸方向において、前記ブリッジは前記基端よりも前記先端側であって前記第1腕部及び前記第2腕部よりも前記基端側に位置しており、
前記軸方向において、前記縮小区間は前記ブリッジの前記基端側の端よりも前記先端側に位置しており、
前記第1基部と前記第2基部は前記ブリッジを介して以外接続されておらず、
前記リングの軸方向の長さは、前記医療用クリップの前記基端から前記ブリッジの前記先端側の端までの前記軸方向における長さよりも短い医療用クリップシステム。
【請求項2】
前記軸方向において、前記開閉方向における前記第1基部と前記第2基部との間の距離が最短となる地点Pは、前記ブリッジの前記先端側の端よりも前記先端側に位置している請求項1に記載の医療用クリップシステム。
【請求項3】
前記連結部を前記幅方向の第2端側から前記第1基部と前記第2基部との間に嵌めることにより、前記医療用クリップと前記線状物とが連結される請求項1又は2に記載の医療用クリップシステム。
【請求項4】
前記医療用クリップと前記線状物とが連結されているとき、前記軸方向において、前記連結部の前記先端側の端は、前記ブリッジの前記基端側の端よりも前記先端側に位置している請求項1~3のいずれか一項に記載の医療用クリップシステム。
【請求項5】
前記連結部は、前記医療用クリップの前記基端に接する接触部を有している請求項1~4のいずれか一項に記載の医療用クリップシステム。
【請求項6】
前記医療用クリップは、前記第1基部の基端に前記第2基部へ向かって突出する第1爪部と、前記第2基部の基端に前記第1基部へ向かって突出する第2爪部と、をさらに有している請求項1~5のいずれか一項に記載の医療用クリップシステム。
【請求項7】
前記第1爪部と前記第2爪部は、前記線状物の外周に沿う切り欠きを有している請求項6に記載の医療用クリップシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡を用いた手術において、止血等の処置を目的として使用される医療用クリップシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)や内視鏡的粘膜切除術(EMR)等の内視鏡を用いた処置では、手技の途中で出血を伴うことがある。このような出血や、消化管等の体腔内の病変による出血を止血する方法として、医療用クリップが取り付けられている内視鏡処置具を用い、出血箇所に医療用クリップを留置して圧迫止血を行うクリップ法が挙げられる。
【0003】
クリップ法では、線状物の先端側に医療用クリップが取り付けられたクリップシステムを内視鏡の鉗子口から鉗子チャンネルに挿入し、医療用クリップを処置対象部位まで搬送する。医療用クリップは、一回の施術で複数個用いられることが多く、1つのクリップによるクリッピングが終了する度にクリップシステムに新たなクリップが取り付けられる必要がある。
【0004】
例えば特許文献1には、球根状の近位端を有するクリップが制御ワイヤに取り払い可能に連結される組織クリッピング装置が開示されている。また、特許文献2には、クリップの2本の脚を連結する後端クロスピースによってクリップが引張りケーブルに連結され、止血クリップの複数設置を可能とする装置が、特許文献3には、操作ワイヤが前方に押し込まれることにより、先端連結部がクリップの筒状のスリーブに対して相対的に前進し、先端連結部とクリップの係止部とが連結された連結状態となるクリップカートリッジが開示されている。特許文献4には、クリップ連結部を医療用クリップの幅方向の第2端側から医療用クリップの第1基部と第2基部との間に嵌めることにより、医療用クリップをクリップ連結部に取り付けることで、クリップ取り付けの簡便化を図ったクリップシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-202335号公報
【特許文献2】特開2011-143262号公報
【特許文献3】特開2017-148182号公報
【特許文献4】国際公開第2021/100378号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び2のような医療用クリップシステムは、クリップの2本のアームが基端部で繋がっており、この繋がった部分にワイヤ等の線状物を引っ掛けて連結する構成を有している。このような構成では、線状物の連結が簡便に行えない課題があった。また、特許文献3の医療用クリップシステムではクリップの基端側からワイヤが押し込まれ、特許文献4の医療用クリップシステムではクリップの第2端側からクリップ連結部を嵌め込んでいるが、これらの医療用クリップシステムにおいても、医療用クリップに線状物を簡便に取り付け、線状物をクリップに取り付けた状態を安定して保つことには改善の余地があった。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、線状物を医療用クリップに容易に連結でき、線状物と医療用クリップの連結状態を安定に保つことのできる医療用クリップシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決できた本発明の医療用クリップシステムの一実施態様は、互いに対向している第1部と第2部とを有し生体組織を把持する医療用クリップと、前記医療用クリップが挿入される内腔を有するリングと、前記医療用クリップに連結される連結部を備えた線状物と、を有する医療用クリップシステムであって、前記医療用クリップは、基端と先端とを有し、開閉方向と、前記基端から前記先端に向かう軸方向と、前記開閉方向及び前記軸方向に垂直な幅方向とを有しており、前記第1部は、前記生体組織を把持する第1腕部と前記第1腕部よりも前記基端側に位置している第1基部とを有しており、前記第2部は、前記生体組織を把持する第2腕部と前記第2腕部よりも前記基端側に位置している第2基部とを有しており、前記医療用クリップは、前記幅方向に第1端側及び第2端側を有し、前記第1端側に前記第1基部と前記第2基部とを接続するブリッジを有しており、前記医療用クリップは、前記開閉方向における前記第1基部と前記第2基部との間の距離が前記基端から前記先端に向かって減少している区間を有することで前記連結部を受け入れる空間が前記基端から前記先端にかけて縮小している縮小区間を有しており、前記軸方向において、前記ブリッジは前記基端よりも前記先端側であって前記第1腕部及び前記第2腕部よりも前記基端側に位置しており、前記軸方向において、前記縮小区間は前記ブリッジの前記基端側の端よりも前記先端側に位置しており、前記第1基部と前記第2基部は前記ブリッジを介して以外接続されておらず、前記リングの軸方向の長さは、前記医療用クリップの前記基端から前記ブリッジの前記先端側の端までの前記軸方向における長さよりも短い。
【0009】
上記医療用クリップシステムでは、医療用クリップが幅方向の第1端側に第1基部と第2基部とを接続するブリッジを有しており、ブリッジは基端よりも先端側であって第1腕部及び第2腕部よりも基端側に位置しており、第1基部と第2基部とはブリッジを介して以外は接続されておらず、リングの軸方向の長さは医療用クリップの基端からブリッジの先端側の端までの軸方向における長さよりも短いことで、線状物の連結部を医療用クリップに容易に安定して連結することが可能となる。また、開閉方向における第1基部と第2基部との間の距離が基端から先端に向かって減少している区間を有することで連結部を受け入れる空間が基端から先端にかけて縮小している縮小区間を有しており、該縮小区間がブリッジの基端側の端よりも先端側に位置していることで、連結された線状物の連結部がクリップの基端部に安定して拘束されるため、線状物の連結部の先端側がクリップから外れて首折れ状態となることを防止できる。首折れ状態とは、クリップが線状物の先端にぶら下がりクリップと線状物とが同じ軸状に存在できない状態である。このような状態では処置対象部位へのクリップの搬送やクリッピングが行えなくなるが、上記構成を有する医療用クリップシステムであれば、このような不具合の防止が可能である。さらに、連結部を拘束するのは縮小区間であることから、クリップを線状物から外す際に、線状物を軸方向の近位側に引くことによりクリップと連結部との連結を解除することが容易となる。このように、上記医療用クリップシステムによれば、クリップと線状物とを容易に安定して連結させることができ、クリップと線状物との連結状態において線状物の連結部の先端側がクリップから外れて首折れ状態となることを防止できるとともに、クリップと線状物との連結の解除も容易となるものである。
【0010】
前記軸方向において、前記開閉方向における前記第1基部と前記第2基部との間の距離が最短となる地点Pは、前記ブリッジの前記先端側の端よりも前記先端側に位置していることが好ましい。
【0011】
前記連結部を前記幅方向の第2端側から前記第1基部と前記第2基部との間に嵌めることにより、前記医療用クリップと前記線状物とが連結されることが好ましい。
【0012】
前記医療用クリップと前記線状物とが連結されているとき、前記軸方向において、前記連結部の前記先端側の端は、前記ブリッジの前記基端側の端よりも前記先端側に位置していることが好ましい。
【0013】
前記連結部は、前記医療用クリップの前記基端に接する接触部を有していることが好ましい。
【0014】
前記医療用クリップは、前記第1基部の基端に前記第2基部へ向かって突出する第1爪部と、前記第2基部の基端に前記第1基部へ向かって突出する第2爪部と、をさらに有していることが好ましい。この場合、前記第1爪部と前記第2爪部は、前記線状物の外周に沿う切り欠きを有していることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
上記医療用クリップシステムによれば、クリップと線状物とを容易に安定して連結させることができ、クリップと線状物との連結状態において線状物の連結部の先端側がクリップから外れて首折れ状態となることを防止できる。首折れ状態とは、クリップが線状物の先端にぶら下がりクリップと線状物とが同じ軸状に存在できない状態である。このような状態では処置対象部位へのクリップの搬送やクリッピングが行えなくなるが、上記構成を有する医療用クリップシステムであれば、このような不具合の防止が可能である。さらに、上記医療用クリップシステムによれば、クリップと連結部との連結の解除も容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る医療用クリップシステムの平面図を表す。
【
図2】
図1に示した医療用クリップシステムのII-II断面図を表す。
【
図3】本発明の一実施形態において、医療用クリップと線状物とが連結されたときの医療用クリップシステムの平面図を表す。
【
図4】本発明の他の実施形態において、医療用クリップと線状物とが連結されたときの医療用クリップシステムの平面図を表す。
【
図5】
図4に示した医療用クリップシステムのV-V断面図を表す。
【
図6】
図4に示した線状物の遠位側の平面図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施の形態に基づき本発明を説明するが、本発明はもとより下記実施の形態によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、各図面において、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、明細書や他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法は、本発明の特徴の理解に資することを優先しているため、実際の寸法とは異なる場合がある。
【0018】
図1~
図6を参照しつつ、本発明の医療用クリップシステムの実施形態について説明する。ただし、本発明は図面に示された実施形態に限定されるものではない。
図1は、本発明の一実施形態に係る医療用クリップシステム1の平面図を表し、医療用クリップ10と線状物20とが連結されていない状態を表している。なお、
図1において、内筒25及び線状物20の一部は外筒26内に配置されているため、点線で表示している。
図2は、
図1のII-II断面図、すなわち医療用クリップ10にブリッジ13が配置されている箇所における軸方向xに垂直な断面図を表す。
図3及び
図4は、それぞれ別の実施形態において、医療用クリップ10と線状物20とが連結されているときの医療用クリップシステム1の平面図を表す。なお、
図3及び
図4において、ブリッジ13、内筒25、及び線状物20の一部については他部材の下に配置されているため、点線で表示している。
図5は、
図4に示した医療用クリップシステム1のV-V断面図を表し、クリップ基端10bに備えられる第1爪部110と第2爪部120の断面図を表している。
図6は、
図4に示した線状物20の遠位側の平面図を表す。
【0019】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る医療用クリップシステム1は、互いに対向している第1部11と第2部12とを有し生体組織を把持する医療用クリップ10と、医療用クリップ10が挿入される内腔を有するリング30と、医療用クリップ10に連結される連結部22を備えた線状物20と、を有している。
【0020】
医療用クリップ10は、基端10bと先端10aとを有し、開閉方向yと、基端10bから先端10aに向かう軸方向xと、開閉方向y及び軸方向xに垂直な幅方向zとを有している。本明細書においては、医療用クリップ10以外の部材や部分についても、医療用クリップ10と同じ軸方向x、開閉方向y、及び幅方向zを有しているとして説明する。また、軸方向xにおける先端10a側を遠位側、その反対側を近位側として説明することがある。
図1において、図の左側が遠位側であり、図の右側が近位側である。近位側は、線状物20の延在方向、すなわち軸方向xにおいて使用者の手元側であり、遠位側は近位側の反対側、すなわち処置対象物側である。
【0021】
本明細書において、医療用クリップシステム1を単にクリップシステム1、医療用クリップ10を単にクリップ10ということもある。また、医療用クリップ10の基端10bをクリップ基端10b、医療用クリップ10の先端10aをクリップ先端10aということもある。
【0022】
医療用クリップ10に線状物20を連結する際は、線状物20の連結部22が遠位側となるように線状物20を配置することにより、線状物20の連結部22を医療用クリップ10の基端部10B(以降、クリップ基端部10Bということもある。)に連結することができる。ここで、クリップ基端部10Bとは、クリップ基端10bを含む部分を指す。線状物20の遠位側に医療用クリップ10を連結した医療用クリップシステム1を内視鏡の鉗子チャンネル内に通し、医療用クリップ10を処置対象部位まで搬送することにより、患者の体内でクリップ10によるクリッピングを行うことができる。
【0023】
線状物20は、軸方向xに延在する部材であり、一又は複数の部材から構成されることができる。線状物20は、中実状であってもよいし、軸方向xに沿って延在する内腔を有している中空状であってもよいが、中実状であることが好ましい。線状物20が中実状であることにより、線状物20の外径を大きくすることなく線状物20の剛性を高めることができる。その結果、医療用クリップシステム1の挿通性を高めることができる。線状物20は、単線であっても、単線を撚り合わせた撚り線であってもよい。線状物20が単線であれば、製造が容易となる。線状物20が撚り線であれば、線状物20の強度を高められるため、手元側の操作を医療用クリップ10及び連結部22を含む医療用クリップシステム1の遠位部に伝えやすくなる。線状物20の断面の形状は、例えば、円形状、楕円形状、多角形状、又はこれらを組み合わせた形状とすることができる。
【0024】
線状物20を構成する材料としては、例えば、SUS301、SUS303、SUS304、SUS631等のステンレス鋼、炭素鋼等の金属;ナイロン等のポリアミド系樹脂;PP、PE等のポリオレフィン系樹脂;PET等のポリエステル系樹脂、PEEK等の芳香族ポリエーテルケトン系樹脂;ポリイミド樹脂;PTFE、PFA、ETFE等のフッ素系樹脂等の合成樹脂繊維等が挙げられる。中でも、線状物20を構成する材料は、ステンレス鋼であることが好ましい。線状物20がステンレス鋼により構成されていることで、線状物20の強度を確保しつつ生体適合性を高めることができる。
【0025】
図示していないが、線状物20は表面にコーティング層を有していてもよい。コーティング層としては、例えば、PTFE、PFA、ETFE、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP)等のフッ素系樹脂が挙げられる。線状物20がコーティング層を有していることにより、線状物20の表面の摩擦を低減して摺動性を高めることや、線状物20の強度を高めることが可能となる。
【0026】
線状物20へのコーティング層の形成方法としては、コーティング層を形成する材料が線状物20の表面を被覆するようにできればよく、例えば、浸漬法、スプレー法、流動床法、ニーダーコーター法等を用いることができる。
【0027】
線状物20の軸方向xの長さは、内視鏡の鉗子口から処置対象部位までの距離等を考慮して適切な長さを選択することができ、例えば、1000mm以上3000mm以下とすることができる。
【0028】
線状物20の外径は、100μm以上が好ましく、200μm以上がより好ましく、300μm以上がさらに好ましい。線状物20の外径の下限値が上記範囲であることで、線状物20の剛性を高めることができる。また、線状物20の外径は、900μm以下が好ましく、800μm以下がより好ましく、700μm以下がさらに好ましい。線状物20の外径の上限値が上記範囲であることで、クリップシステム1の挿通性を向上させることができる。
【0029】
線状物20の外径は、軸方向xの全長にわたって同じでもよく異なっていてもよい。例えば、線状物20の近位側の部分を補強のために太くすることが可能である。線状物20を補強する方法としては、例えば、線状物20の外側面にチューブ状の部品を配置すること等が挙げられる。
【0030】
図1に示すように、線状物20は、遠位側に医療用クリップ10に連結する連結部22を備えている。医療用クリップ10と連結部22とを連結することで、線状物20に医療用クリップ10を取り付けることができる。線状物20は、連結部22以外の部分よりも連結部22の外径が大きい構成を有していることが好ましい。これにより、連結部22と医療用クリップ10との連結を安定化することができる。連結部22は線状物20と一体的に形成されていてもよいし、線状物20が線状物本体21と別部材の連結部22とから構成され、連結部22が線状物本体21の遠位側に取り付けられていてもよい。
【0031】
連結部22の形状は、クリップ基端部10Bに連結できる限り特に制限されないが、連結部22の軸方向xに垂直な断面の形状は、例えば、円形状、楕円形状、多角形状、又はこれらを組み合わせた形状とすることができる。
【0032】
連結部22が別部材として線状物本体21に取り付けられている場合、線状物本体21及び連結部22を構成する材料については、線状物20を構成する材料についての上記説明を参照することができる。連結部22が別部材として線状物本体21に取り付けられている場合であっても、連結部22の材料は線状物本体21の材料と同じであることが好ましい。連結部22の材料と線状物本体21の材料が同じであることにより、連結部22と線状物本体21との接合を強固とすることができるため、線状物本体21から連結部22を外れにくくすることができる。その結果、医療用クリップシステム1の耐久性を高めることが可能となる。
【0033】
連結部22が別部材である場合、連結部22と線状物本体21とを固定する方法は、例えば、ねじ、かしめ、嵌合、圧入等の機械的な固定;融着;溶接;接着剤、テープ等による接着等を用いることができる。中でも、連結部22は、線状物本体21に溶接により固定されていることが好ましい。これにより、連結部22と線状物本体21との接合強度を高めることができる。
【0034】
図1に示すように、線状物20は、その少なくとも一部が内筒25内に配置されていることが好ましい。すなわち、医療用クリップシステム1はさらに内筒25を有し、内筒25の内腔に線状物20が配置されていることが好ましい。線状物20にクリップ10を連結した状態で、線状物20を内筒25の軸方向xに対して近位側又は遠位側に移動させることでクリップ10の開閉を調整することができる。例えば、線状物20を内筒25に対して近位側に移動させるとリング30の近位端と内筒25の遠位端とが接触し、リング30をクリップ先端10a側に移動させることでクリップ10を閉じることができる。
【0035】
内筒25は、体腔内の形状に沿って屈曲できる可撓性と、処置対象部位まで確実に到達できる剛性の両方を兼ね備えていることが好ましい。内筒25は、金属や合成樹脂によって形成されたコイル体、短筒状の関節駒を軸方向に複数連結して回動可能にした筒体、合成樹脂から形成された筒体、又はこれらの組み合わせから構成することができる。金属や合成樹脂の種類については、線状物20を構成する材料についての上記説明を参照できる。
【0036】
医療用クリップシステム1は、さらに外筒26を有していてもよい。その場合、内筒25が外筒26の内腔に配置される。線状物20にクリップ10を連結した状態で、クリップ10は外筒26に出し入れ自在に構成されていることが好ましい。外筒26内にクリップ10を収めることにより、クリップ10を露出させない状態とすることができる。これにより、クリップ10を処置対象部位まで搬送する間に、クリップ10が鉗子チャンネルや病変以外の体内組織を傷つけることを抑制できる。なお、処置の際には、外筒26からクリップ10とリング30を露出させて使用する。
【0037】
外筒26は、内筒25と同様に可撓性と剛性を備えていることが望ましい。外筒26は、合成樹脂から形成された筒体や、金属や合成樹脂によって形成されたコイル体、短筒状の関節駒を軸方向に複数連結して回動可能にした筒体、又はこれらの組み合わせから構成することができる。中でも、外筒26には合成樹脂から形成された筒体が好ましく用いられる。合成樹脂の種類については、線状物20を構成する材料についての上記説明を参照できる。外筒26と内筒25との位置関係を確認しやすくするために、外筒26は透明又は半透明の材料から構成してもよい。
【0038】
医療用クリップ10の第1部11は、生体組織を把持する第1腕部11aと、第1腕部11aよりもクリップ基端10b側に位置している第1基部11bとを有しており、医療用クリップ10の第2部12は、生体組織を把持する第2腕部12aと、第2腕部12aよりもクリップ基端10b側に位置している第2基部12bとを有している。例えば、
図1に示すように、医療用クリップ10の軸方向xの長さの中点Mよりクリップ先端10a側を腕部、中点Mよりクリップ基端10b側を基部とすることができる。クリップ10の自然状態において、開閉方向yにおける第1腕部11aと第2腕部12aとの間の距離は、クリップ基端10b側からクリップ先端10a側に向かって広がっていることが好ましい。これにより、第1腕部11aと第2腕部12aとの間に生体組織を配置することができる。
【0039】
医療用クリップ10の第1部11及び第2部12を構成する材料としては、例えば、Ni-Ti合金;SUS301、SUS303、SUS304、SUS601等のステンレス鋼等が挙げられる。中でも、医療用クリップ10を構成する材料は、ステンレス鋼であることが好ましい。医療用クリップ10がステンレス鋼から構成されていれば、医療用クリップ10が高弾性なものとなり、また、医療用クリップ10の生体適合性を高めることができる。
【0040】
図1及び
図2に示すように、医療用クリップ10は、幅方向zに第1端側と第2端側とを有し、第1端側に第1基部11bと第2基部12bとを接続するブリッジ13を有している。ブリッジ13は、クリップ基端10bよりもクリップ先端10a側であって、第1腕部11a及び第2腕部12aよりもクリップ基端10b側に位置している。ブリッジ13がクリップ基端10bよりもクリップ先端10a側に位置するとは、連続した一部材として形成されている第1部11と第2部12とがクリップ基端10bにおいて屈曲して2本の腕部を形成するのではなく、クリップ基端10bよりもクリップ先端10a側において、それぞれ互いに独立した第1部11と第2部12とがブリッジ13により接続されていることを意味する。また、ブリッジ13が第1腕部11a及び第2腕部12aよりもクリップ基端10b側に位置していることにより、ブリッジ13により第1基部11bと第2基部12bとが直接接続されることができる。これにより、第1腕部11a及び第2腕部12aによる生体組織の把持をブリッジ13が妨げない構成とすることができる。さらに、第1基部11bと第2基部12bは、ブリッジ13を介して以外は接続されていない。すなわち、第1部11と第2部12は、ブリッジ13を介して以外は接続されておらず、クリップ基端10bにおいて第1部11と第2部12との間には隙間が形成されている。このような構成を可能とするブリッジ13の一例は、
図2に示すように、第1基部11bと第2基部12bとを直接接続する橋梁状の構成を含む。幅方向zにおいてブリッジ13が設けられている第1端側の反対側の第2端側は開放されていることが好ましい。
【0041】
ブリッジ13が上記構成を有していることにより、連結部22をクリップ基端部10B、すなわち第1基部11bと第2基部12bとの間に連結する際に、連結部22とブリッジ13とが接することができるため、連結部22をクリップ10に容易に安定して連結することが可能となる。さらに、クリップ基端部10bにおいて第1部11と第2部12との間には隙間が形成されていることにより、連結部22のクリップ基端部10Bへの連結が容易となる。
【0042】
医療用クリップ10は、例えば、第1部11、第2部12、及びブリッジ13を含む1枚の金属板を折り曲げることによって形成されていてもよい。また或いは、医療用クリップ10は、第1部11を含む部品、第2部12を含む部品、及びブリッジ13を含む部品を接合することによって形成されていてもよい。中でも、医療用クリップ10は、第1部11、第2部12、及びブリッジ13を含む1枚の金属板を折り曲げることによって形成されていることが好ましい。医療用クリップ10が1枚の金属板により形成されていることにより、医療用クリップ10の製造時において製造物の品質のばらつきが抑えられ、製造効率を高めることができる。
【0043】
医療用クリップ10が、第1部11を含む部品、第2部12を含む部品、及びブリッジ13を含む部品を互いに接合することによって形成されている場合、ブリッジ13を含む部品を構成する材料については、第1部11及び第2部12を構成する材料についての上記説明を参照することができる。ブリッジ13を含む部品を構成する材料は、第1部11を含む部品及び第2部12を含む部品を構成する材料と同じであっても異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。ブリッジ13を含む部品と、第1部11を含む部品及び第2部12を含む部品とを接合する方法は、例えば、ねじ、かしめ、嵌合、圧入等の機械的な固定;融着;溶接;接着剤、テープ等による接着等を用いることができる。中でも、ブリッジ13を含む部品と、第1部11を含む部品及び第2部12を含む部品とを接合する方法は、溶接であることが好ましい。これにより、各部品の接合強度を高めることができる。
【0044】
医療用クリップ10は、第1基部11bと第2基部12bとの間に線状物20の連結部22を受け入れる空間Sを有している。以降、連結部22を受け入れる空間Sを受入空間Sということがある。受入空間Sは、第1基部11bと第2基部12bとブリッジ13により画定される空間ということができる。
【0045】
連結部22が受入空間Sに受け入れられることにより、連結部22がクリップ基端部10Bに嵌められた状態となり、クリップ10と線状物20とが連結されることができる。反対に、連結部22が受入空間Sの外に出てクリップ基端部10Bから外れることにより、クリップ10と線状物20との連結が解除されることができる。このとき、線状物20を近位側に引くことにより連結部22を近位側に移動させて、連結部22を受入区間Sから外してもよい。
【0046】
医療用クリップ10が生体組織を把持していない状態において、リング30をリング30の可動域の最遠位位置に配置し、連結部22を近位側へ移動させた際に、連結部22がクリップ基端部10Bから外れるのに必要な力は、クリップ10の用途などによって適切に設定できるが、例えば20N以上であることが好ましい。これにより、クリップ基端部10Bと連結部22との連結を解除するためには所定以上の力を加える必要があるため、クリップシステム1の使用中に意図せずクリップ10と連結部22との連結が解除してクリップ10が線状物20から外れてしまう不具合を防止でき、処置を円滑に行うことが可能となる。また、この力が大きすぎると、クリップ10と連結部22との連結解除が困難となるため好ましくない。この力の上限は、例えば50Nであってもよい。このように、医療用クリップシステム1であれば、連結部22を近位側へ移動させた際に連結部22がクリップ基端部10Bから外れるのに必要な力を適切に設定することが可能となり、出血箇所等の対象部位をクリップ10が把持した後にクリップ10と連結部22との連結を解除しやすくなり、医療用クリップシステム1を用いた処置を円滑に実施することができる。
【0047】
医療用クリップ10は、開閉方向yにおける第1基部11bと第2基部12bとの間の距離がクリップ基端10bからクリップ先端10aに向かって減少している区間を有することで連結部22を受け入れる空間Sがクリップ基端10bからクリップ先端10aにかけて縮小している縮小区間S1を有している。受入空間Sは、軸方向xに沿って断面積が縮小しない非縮小区間S0と、縮小区間S1で構成されていることが好ましい。軸方向xにおいて、縮小区間S1は非縮小区間S0よりもクリップ先端10a側に位置していることが好ましく、縮小区間S1はブリッジ13の基端10b側の端13b(以降、ブリッジ基端13bということもある。)よりもクリップ先端10a側に位置している。このような構成により、受入空間Sが連結部22を受け入れる際に、連結部22の近位側を容易に受け入れつつ、連結部22の遠位側を縮小区間S1に受け入れて拘束することができるため、クリップ10と線状物20とを容易に安定して連結させることができ、クリップ10と線状物20との連結状態において線状物20の連結部22の遠位側がクリップ10から外れて首折れ状態となることを防止できる。首折れ状態とは、クリップ10が線状物20の先端にぶら下がりクリップ10と線状物20とが同じ軸状に存在できない状態である。このような状態では処置対象部位へのクリップ10の搬送やクリッピングが行えなくなるが、上記構成を有する医療用クリップシステム1であれば、このような不具合の防止が可能である。
【0048】
縮小区間S1は、受入空間Sを画定する第1基部11bと第2基部12bとの間の開閉方向yの距離が短くなることにより形成されていることが好ましい。非縮小区間S0においては、第1基部11bと第2基部12bとの間の開閉方向yの距離は、近位側から遠位側に向かって増加していてもよいし同じであってよいが、同じであることが好ましい。非縮小区間S0における第1基部11bと第2基部12bとの間の開閉方向yの距離が同じであることで、非縮小区間S0に連結部22を容易に受け入れつつ、連結部22の近位側がクリップ基端部10Bから外れることを防止できる。
【0049】
非縮小区間S0における第1基部11bと第2基部12bとの間の開閉方向yの距離に対する、縮小区間S1における第1基部11bと第2基部12bとの間の開閉方向yの距離の比は、0.2以上が好ましく、0.3以上がより好ましく、0.4以上がさらに好ましく、また、0.95以下が好ましく、0.9以下がより好ましく、0.8以下がさらに好ましい。縮小区間S1における第1基部11bと第2基部12bとの間の開閉方向yの距離は、軸方向xに沿って一定であってもよく、上記範囲であれば一定でなくてもよい。
【0050】
縮小区間S1における第1基部11bと第2基部12bとの間の開閉方向yの距離は、縮小区間S1の近位側から遠位側にかけて漸減していてもよい。これにより、連結部22の先端部を縮小区間S1により拘束することが容易となり、連結部22の遠位側がクリップ基端部10Bから外れて首折れ状態となることをより容易に防止できる。
【0051】
軸方向xにおいて、縮小区間S1の長さは、受入区間Sの長さの10%以上が好ましく、15%以上がより好ましく、20%以上がさらに好ましく、また、90%以下が好ましく、80%以下がより好ましく、70%以下がさらに好ましい。軸方向xにおいて、縮小区間S1は1つ設けられていてもよいし、複数設けられていてもよい。縮小区間S1が複数設けられている場合は、軸方向xの長さは全ての縮小区間S1の和が上記範囲であればよい。
【0052】
縮小区間S1が複数設けられている場合、2つの縮小区間S1の間の非縮小区間S0において、第1基部11bと第2基部12bとの間の開閉方向yの距離は近位側から遠位側にかけて増加していないことが好ましい。このような構成であれば、クリップ10と線状物20の連結時には縮小区間S1により連結部22を安定して拘束しつつ、クリップ10と線状物20の連結を解除する際には連結部22をクリップ基端部10Bから外すことが容易となる。
【0053】
縮小区間S1における第1基部11bと第2基部12bとの間の開閉方向yの距離や軸方向xのける長さが上記範囲であれば、線状物20の連結部22をクリップ基端部10Bに容易に連結でき、線状物20とクリップ10の連結状態を安定して維持できるため、線状物20の連結部22の遠位側がクリップ基端部10Bから外れて首折れ状態となることを防止できる。
【0054】
図3及び
図4に示すように、縮小区間S
1において、第1基部11b及び第2基部12bの内壁は、連結部22に当接していることが好ましい。縮小区間S
1において第1基部11b及び第2基部12bの内壁が連結部22に当接していることにより、連結部22が縮小区間S
1に安定して拘束されることで、連結部22の遠位側がクリップ基端部10Bから外れて首折れ状態となることをより容易に防止できる。
【0055】
軸方向xにおいて、ブリッジ基端13bからブリッジ13の先端10a側の端13a(以降、ブリッジ先端13aということもある。)までの長さは、第1基部11bの幅方向zの長さ及び第2基部12bの幅方向zの長さの少なくとも一方より大きいことが好ましい。これにより、ブリッジ13による第1基部11bと第2基部12bとの接続を安定化でき、開閉方向yにおける第1基部11bと第2基部12bとの間の距離が変化しにくくなる。その結果、受入空間Sが広くなりすぎることを防止でき、例えば、クリップ基端部10Bに連結部22を嵌める際に連結部22がクリップ10から外れてしまう不具合を防止できる。
【0056】
図1に示すように、線状物20の連結部22は、近位端側の外径に比べて遠位端側の外径が小さくなるように構成されていてもよい。これにより、連結部22の外径が小さい部分が縮小区間S
1に嵌まりやすくなり、線状物20とクリップ10との連結が容易となる。或いは、図示していないが、線状物20の連結部22は、軸方向xに沿って実質的に同じ外径を有していてもよい。これにより、連結部22が受入区間Sに嵌められた後、縮小区間S
1により連結部22が拘束されやすくなり、連結部22の遠位側がクリップ基端部10Bから外れて首折れ状態となることを防止できる。
【0057】
図1に示すように、医療用クリップシステム1は、医療用クリップ10が挿入される内腔を有するリング30を有している。リング30は、その内腔にクリップ10が配置された状態でクリップ10に対して軸方向xに移動可能である。リング30は、クリップ10が生体組織を把持する前にはクリップ10の第1腕部11a及び第2腕部12aよりもクリップ基端10b側に位置している。リング30が、その内腔に第1腕部11a及び第2腕部12aを配置するように軸方向xのクリップ先端10a側に移動することにより、第1腕部11a及び第2腕部12aが開閉方向yの閉じる方向に移動し、第1腕部11aと第2腕部12aとの間に生体組織が把持される。
【0058】
リング30の軸方向xの長さは、クリップ基端10bからブリッジ先端13aまでの軸方向xの長さよりも短い。リング30の軸方向xの長さがクリップ基端10bからブリッジ先端13aまでの軸方向xの長さよりも短いことにより、クリップ基端部10Bに線状物20の連結部22を連結する際にリング30が障害となりにくく、線状物20とクリップ10との連結が容易となる。
【0059】
リング30の内径は、内筒25の外径よりも小さいことが好ましい。これにより、線状物20を内筒25に対して近位側に移動させることにより、リング30の近位端と内筒25の遠位端とが接触してリング30がクリップ先端10a側に移動し、クリップ10を閉じることができる。また、リング30の外径は、外筒26の内径よりも小さいことが好ましい。これにより、外筒26の内腔にクリップ10とリング30とを収めることができる。
【0060】
リング30を軸方向xに移動させるために必要な力は、連結部22がクリップ10から外れるのに必要な力よりも小さく設定されることが好ましい。これにより、リング30を軸方向xに移動させる際にクリップ10と連結部22との連結が意図せず解除してしまうことを防止できる。
【0061】
リング30の軸方向xに垂直な断面の形状は特に限定されないが、例えば、円形状、長円形状、多角形状であってもよい。または、リング30の軸方向xに垂直な断面の形状は、切れ込みが入ったC字状であってもよく、リング30自体が線材がらせん状に巻回されて形成されたコイルであってもよい。
【0062】
リング30を形成する材料としては、医療用クリップ10と同じ材料が挙げられ、例えば、Ni-Ti合金や、SUS301、SUS303、SUS304、SUS631等のステンレス鋼等の金属が挙げられる。中でも、リング30の材料はステンレス鋼を含むことが好ましい。
【0063】
図1に示すように、軸方向xにおいて、開閉方向yにおける第1基部11bと第2基部12bとの間の距離が最短となる地点Pは、ブリッジ13の先端10a側の端13aよりもクリップ先端10a側に位置していることが好ましい。開閉方向yにおける第1基部11bと第2基部12bとの間の距離が最短となる地点Pは、縮小区間S
1において連結部22を拘束する効果を最も発揮できる部分であるため、地点Pがブリッジ先端13aよりもクリップ先端10a側に位置していることにより、連結部22の遠位側を拘束することが容易となり、連結部22の遠位側がクリップ基端部10Bから外れて首折れ状態となることをより容易に防止できる。
【0064】
連結部22を幅方向zの第2端側から第1基部11bと第2基部12bとの間に嵌めることにより、医療用クリップ10と線状物20とが連結されることが好ましい。このような連結方法であれば、幅方向zの第2端側から嵌められた連結部22が幅方向zの第1端側に備わるブリッジ13により受け止められることができ、クリップ10と線状物20とが容易に安定して連結されることができる。また、従来のクリップシステムのようにクリップ基端10bから軸方向xに線状物20を移動させてクリップ基端部10Bに連結部22を差し込む操作を行わなくてよいため、連結効率を向上し連結不良を防ぐことができる。
【0065】
連結部22をクリップ10の幅方向zの第2端側から第1基部11bと第2基部12bとの間に嵌めるのに必要な力は、0.05N以上であることが好ましい。連結部22をブリッジ13が配されていない幅方向zの第2端側から第1基部1bと第2基部12bとの間に嵌めるのに必要な力の下限を上記範囲とすることにより、連結部22をクリップ10に押し込んで嵌めた際の触感によって、クリップ10と連結部22とが連結したかどうかを確認することができる。これにより、クリップ10と連結部22とが正常に連結していない状態にて医療用クリップシステム1を処置に用いてしまい、クリップ10が意図しない場面で脱落してしまうことを防止することができる。連結部22をクリップ10の幅方向zの第2端側から第1基部11bと第2基部12bとの間に嵌めるのに必要な力の上限は、例えば、10N以下とすることができる。
【0066】
或いは、医療用クリップ10は、連結部22をクリップ10の幅方向zの第2端側から第1基部11bと第2基部12bとの間に嵌める際に力が生じない態様であってもよい。ここで、力が生じないとは、連結部22をクリップ10の幅方向zの第2端側から第1基部11bと第2基部12bとの間に嵌めるのに必要な力が0.05N未満であることを含む。このような態様であっても、本発明の実施形態に係るクリップシステム1は、所定位置に位置するブリッジ13及び縮小区間S1を有しているため、連結部22を容易にクリップ10に連結でき、また、連結部22のクリップ10への連結状態を安定に保って連結部22の遠位側がクリップ基端部10Bから外れる首折れ状態となることを防止できる。
【0067】
医療用クリップ10と線状物20とを連結する際に、連結部22を幅方向zの第2端側から第1基部11bと第2基部12bとの間に嵌めた後、線状物20を軸方向xの先端10a側に押し込む操作をさらに行うことが好ましい。これにより、連結部22の遠位部を縮小区間S1に拘束することがさらに容易となり、連結部22の遠位側がクリップ基端部10Bから外れて首折れ状態となることをより容易に防止できる。
【0068】
図3に示すように、医療用クリップ10と線状物20とが連結されているとき、軸方向xにおいて、連結部22のクリップ先端10a側の端、すなわち遠位端22aは、ブリッジ13のクリップ基端10b側の端13bよりもクリップ先端10a側に位置していることが好ましい。このようにクリップ10と線状物20とが連結されることにより、ブリッジ13により線状物20の連結部22を支えることができ、縮小区間S
1による連結部22の拘束とともに連結部22を安定して維持することが容易となるため、クリップ10と線状物20とをより容易に安定して連結することができる。
【0069】
医療用クリップ10と線状物20とが連結されているとき、軸方向xにおいて、連結部22の遠位端22aはブリッジ基端13bよりもクリップ先端10a側に位置しており、連結部22の近位端22bはブリッジ基端13bよりもクリップ基端10b側に位置していることがより好ましい。これにより、ブリッジ13と連結部22とが接する面積を大きくすることができ、ブリッジ13と連結部22との間に生じる摩擦力を増大させて、クリップ10と線状物20とをさらに容易に安定して連結することが可能となる。
【0070】
図4及び
図5に示すように、線状物20の連結部22は、医療用クリップ10の基端10bに接する接触部23を有していることが好ましい。接触部23がクリップ基端10bに接触することによって線状物20の軸方向xへの移動を妨げ、意図しない状況においてクリップ10と連結部22との連結が解除してしまうことを防止できる。
【0071】
図4に示すように、医療用クリップ10は、第1基部11bの基端10bに第2基部12bへ向かって突出する第1爪部110と、第2基部12bの基端10bに第1基部11bへ向かって突出する第2爪部120とをさらに有していることが好ましい。クリップ10が第1爪部110と第2爪部120とを有している場合であっても、第1爪部110と第2爪部120とは互いに当接しておらず、第1部11と第2部12とはブリッジ13を介して以外接続されていない。すなわち、第1爪部110と第2爪部120との間には隙間が形成されている。この隙間を有する構成により、クリップ10が第1爪部110と第2爪部120とを有する場合であっても、クリップ10と線状物20を連結する際に、線状物20が当該隙間を通ることによりクリップ10と線状物20との連結が容易となる。
【0072】
クリップ10が第1爪部110と第2爪部120とを有していることにより、線状物20がクリップ10に対して近位側に移動することを防止できる。また、第1爪部110及び第2爪部120により連結部22を拘束できるため、縮小区間S1による連結部22の拘束とともに、線状物20とクリップ10の安定した連結状態を保つことがより容易となる。
【0073】
なお、医療用クリップ10による生体組織の把持が完了し、クリップ10を留置するために線状物20からクリップ10を外す際には、連結部22が第1爪部110及び第2爪部120を遠位側から近位側に向かって押して変形させ、連結部22が第1爪部110と第2爪部120との間の隙間を通過するように、連結部22を近位側に移動させてクリップ10を線状物20から外すことが好ましい。このような構成により、第1爪部110及び第2爪部120が変形する以上の力で連結部22を近位側に移動させなければ連結部22がクリップ10から外れないため、意図しないクリップ10の線状物20からの脱落を防止できる。
【0074】
第1爪部110は、第1基部11bの近位端部を折り曲げることによって形成されていてもよく、第1基部11bの近位端に第1爪部110を構成する部品(以下、「第1爪部部品」ということがある。)を接合することによって形成されていてもよい。第2爪部120も同じく、第2基部12bの近位端部を折り曲げることによって形成されていてもよく、第2基部12bの近位端に第2爪部120を構成する部品(以下、「第2爪部部品」ということがある。)を接合することによって形成されていてもよい。中でも、第1爪部110は第1基部11bの近位端部を折り曲げることにより形成されており、第2爪部120は第2基部12bの近位端部を折り曲げることにより形成されていることが好ましい。このように形成されることで、第1爪部110が第1基部11bから外れること、及び第2爪部120が第2基部12bから外れることが防止でき、クリップ10と線状物20とを連結する際や連結を解除する際等に第1爪部110及び第2爪部120に荷重が加わっても、第1爪部110及び第2爪部120が破損しにくくなる。
【0075】
第1爪部110が第1基部11bに第1爪部部品を接合して形成されており、第2爪部120が第2基部21bに第2爪部部品を接合して形成されている場合、第1爪部部品と第2爪部部品を第1基部11b及び第2基部12bにそれぞれ接合する方法は、例えば、ねじ、かしめ、嵌合、圧入等の接続部材による機械的な固定;融着;溶接;接着剤、テープ等による接着等を用いることができる。中でも、第1爪部部品及び第2爪部部品は、溶接により第1基部11b及び第2基部12bにそれぞれ接合されていることが好ましい。これにより接合強度を高めることができる。
【0076】
図5に示すように、第1爪部110と第2爪部120は、線状物20の外周に沿う切り欠き111、121を有していることが好ましい。切り欠き111、121は、線状物本体21の外周に沿うように設けられていてもよいし、連結部22の外周に沿うように設けられていてもよい。これにより、クリップ10と線状物20とを連結する際、第1爪部110と第2爪部120との間の隙間に線状物20を配置したときに第1爪部110及び第2爪部120と線状物20との間に過度の遊びが生じない構成とすることができ、第1爪部110及び第2爪部120による線状物20の拘束がより容易となる。
【0077】
図6に示すように、連結部22は、連結部22の周方向に凹状の溝部24を有しており、溝部24の遠位側側面24aは第1爪部110及び第2爪部120の遠位側側面に接しており、溝部24の近位側側面24bは第1爪部110及び第2爪部120の近位側側面に接していることが好ましい。このような構成により、連結部22の溝部24にクリップ10の近位端部が嵌め込まれるため、クリップ10と連結部22が確実に連結され、意図しないクリップ10と線状物20との連結の解除が起こりにくくなる。
【0078】
溝部24の軸方向xの長さは、第1爪部110及び第2爪部120の軸方向xの厚みよりも長いことが好ましく、第1爪部110及び第2爪部120の軸方向xの厚みの2倍以下であることが好ましい。これにより、連結部22を幅方向zの第2端側から第1基部11bと第2基部12bとの間に嵌めやすくなり、線状物20とクリップ10との連結が容易となる。
【0079】
クリップ10と線状物20が連結した状態において、
図3に示すように、連結部22はクリップ基端10bよりも遠位側に位置していてもよいし、或いは、
図4に示すように、連結部22の一部がクリップ基端10bよりも遠位側に位置し、残りの部分がクリップ基端10bよりも近位側に位置していてもよい。この場合、連結部22が溝部24を有しており、溝部24の近位側側面24bよりも近位側の部分が第1爪部110及び第2爪部120の近位側側面よりも近位側に位置していてもよい。
【0080】
図示していないが、医療用クリップシステム1は、線状物20の近位端部に接続されているハンドルを有していることが好ましい。ハンドルは、医療用クリップシステム1を作動させる際に使用者が把持する部材である。医療用クリップシステム1がハンドルを備えていることにより、医療用クリップシステムの操作が容易となる。
【符号の説明】
【0081】
1:医療用クリップシステム
10:医療用クリップ
10a:クリップ先端
10b:クリップ基端
10B:クリップ基端部
11:第1部
11a:第1腕部
11b:第1基部
12:第2部
12a:第2腕部
12b:第2基部
13:ブリッジ
13a:ブリッジ先端
13b:ブリッジ基端
20:線状物
21:線状物本体
22:連結部
22a:連結部の遠位端
22b:連結部の近位端
23:接触部
24:溝部
24a:溝部の遠位側側面
24b:溝部の近位側側面
25:内筒
26:外筒
30:リング
110:第1爪部
120:第2爪部
111、121:切り欠き
M:医療用クリップの軸方向の長さの中点
P:第1基部と第2基部との最短地点
S:受入区間
S0:非縮小区間
S1:縮小区間
x:軸方向
y:開閉方向
z:幅方向