(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131776
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】絶縁膜形成方法、金属製構造体、及び絶縁膜形成用塗料
(51)【国際特許分類】
B05D 5/12 20060101AFI20230914BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20230914BHJP
C09D 175/02 20060101ALI20230914BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20230914BHJP
E01B 5/02 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
B05D5/12 D
B05D7/24 302T
C09D175/02
C09D5/00 D
E01B5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022036727
(22)【出願日】2022-03-10
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】500258905
【氏名又は名称】株式会社レクスポート
(74)【代理人】
【識別番号】100174805
【弁理士】
【氏名又は名称】亀山 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】高田 通孝
【テーマコード(参考)】
4D075
4J038
【Fターム(参考)】
4D075AE05
4D075AE16
4D075BB02X
4D075BB24Z
4D075BB92Y
4D075BB95Z
4D075CA22
4D075CA23
4D075DA10
4D075DA31
4D075DB01
4D075DC05
4D075EA41
4D075EB38
4D075EB45
4J038CE011
4J038DG261
4J038JA20
4J038JA31
4J038JA36
4J038JB01
4J038KA03
4J038MA06
4J038MA09
4J038NA21
4J038PA07
4J038PB07
4J038PC02
(57)【要約】
【課題】絶縁膜形成方法、金属製構造体、及び絶縁膜形成用塗料を提供する。
【解決手段】絶縁膜形成方法2は、対象物TGにプライマーを塗布して、プライマー塗膜PMを形成するプライマー塗布工程S10と、プライマー塗膜PMの乾燥を行うプライマー乾燥工程S20と、対象物TGに対し絶縁膜形成用塗料を塗布して、絶縁膜を形成する絶縁膜形成用塗布工程S30と、絶縁膜を乾燥する絶縁膜乾燥工程S40と、を備える。絶縁膜形成用塗布工程S30では、プライマー塗膜PMに対し絶縁膜形成用塗料を塗布する。絶縁性塗膜PRは、硬化乾燥となった状態において、透光性を有することが好ましい。これにより、絶縁性塗膜PRの形成後、対象物TGの表面状態を目視観察することができるためである。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に対し絶縁膜を形成する絶縁膜形成方法であり、
前記絶縁膜は、膜厚が1mm以下であり、
前記対象物に対し絶縁膜形成用塗料を塗布する絶縁膜形成用塗布工程と、
前記絶縁膜形成用塗料の塗膜を乾燥する絶縁膜乾燥工程と、を備え、
前記絶縁膜形成用塗料は、
イソシアネート成分を含む主剤と、
アミン化合物を含む硬化剤と、を含むポリウレア形成用塗料であり、
前記絶縁膜形成用塗料の指触乾燥時間が30分以上であることを特徴とする絶縁膜形成方法。
【請求項2】
前記絶縁膜乾燥工程の後に行われ、前記絶縁膜形成用塗料の塗膜に対し、前記絶縁膜形成用塗料を塗布する重ね塗り工程と、
前記重ね塗り工程の後に行われ、前記絶縁膜形成用塗布工程及び前記重ね塗り工程によって形成された塗膜の乾燥を行う全体乾燥工程と、を備え、
前記絶縁膜乾燥工程では、前記絶縁膜形成用塗料の塗膜の指触乾燥を行い、
前記重ね塗り工程では、前記指触乾燥状態の前記塗膜に対して、前記絶縁膜形成用塗料を塗布することを特徴とする請求項1記載の絶縁膜形成方法。
【請求項3】
前記対象物に対しプライマーを塗布するプライマー塗布工程と、
前記プライマー塗布工程によって形成されたプライマー塗膜の乾燥を行うプライマー乾燥工程と、を備え、
前記絶縁膜用塗布工程では、前記プライマー塗膜に対し前記絶縁膜形成用塗料を塗布することを特徴とする請求項1または2記載の絶縁膜形成方法。
【請求項4】
前記対象物は、導電性を有するレールであることを特徴とする請求項1ないし3のうちいずれか1項記載の絶縁膜形成方法。
【請求項5】
前記絶縁膜形成用塗布工程の前に行われるケレン工程と、
前記ケレン工程及び前記絶縁膜形成用塗布工程の間に行われる脱脂工程と、
を備えることを特徴とする請求項1ないし4のうちいずれか1項記載の絶縁膜形成方法。
【請求項6】
金属製の対象物と、
前記対象物に形成された絶縁膜と、を備え、
前記絶縁膜は、厚みが1mm以下のポリウレア樹脂であることを特徴とする金属製構造体。
【請求項7】
前記対象物は、レールであり、
前記レールは、使用状態において、枕木の上に載置される載置部と、
前記載置部から上方に延びる延設部と、
前記延設部に設けられ、車輪が転動する転動部と、を備えるものと定義した際、
前記絶縁膜は、少なくとも前記載置部に形成されることを特徴とする請求項6記載の金属製構造体。
【請求項8】
前記絶縁膜は、前記載置部及び前記延設部に形成されることを特徴とする請求項6または7記載の金属製構造体。
【請求項9】
絶縁膜を形成するための絶縁膜形成用塗料であり、
イソシアネート成分を含む主剤と、
アミン化合物を含む硬化剤と、を含むポリウレア形成用塗料であり、
指触乾燥時間が30分以上であることを特徴とする絶縁膜形成用塗料。
【請求項10】
添加剤がさらに含まれ、
前記添加剤は、ホルムアルデヒドと酢酸とのうち少なくとも1つが含まれることを特徴とする請求項9記載の絶縁膜形成用塗料。
【請求項11】
前記イソシアネート成分は、62重量%以下であり、
前記アミン化合物は、32重量%以下である
ことを特徴とする請求項9または10記載の絶縁膜形成用塗料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁膜形成方法、備えた金属製構造体、及び絶縁膜形成用塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道軌道用レール(以下、単にレールという)を木製の枕木上に直接締着すると、レールは基板である木枕木に対して非弾性的に締結される。したがって、温度による伸縮や列車荷重による振動などにより、レールに垂直あるいは横方向の外力が作用すると、犬釘の緩みや抜き上がりが生じ易い。このため、このような外力が作用してもレールの押え力を維持できるようにするために、例えば、レール締結装置を用いて、レールRを、いわゆるスラブ軌道であるコンクリート道床(以下、単にコンクリート道床という)3に弾性的に支持する方法が採用されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、レールを実際に使用していると、経時により、レールが破断する事象が発生した。鋭意検討の結果、レールを流れる電流の一部が大地に漏れることによって発生する電食によって、レールの破断が誘発されることを突き止めた。しかしながら、レールのうち大地と接触する部分は、レール締結装置や枕木に当接する部分であるため、厚い絶縁部材を設けることができない。
【0005】
そこで、本発明は、上記課題を鑑み、絶縁膜形成方法、備えた金属製構造体、及び絶縁膜形成用塗料を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、対象物に対し絶縁膜を形成する絶縁膜形成方法であり、前記絶縁膜は、膜厚が1mm以下であり、前記対象物に対し絶縁膜形成用塗料を塗布する絶縁膜形成用塗布工程と、前記絶縁膜形成用塗料の塗膜を乾燥する絶縁膜乾燥工程と、を備え、前記絶縁膜形成用塗料は、イソシアネート成分を含む主剤と、アミン化合物を含む硬化剤と、を含むポリウレア形成用塗料であり、前記絶縁膜形成用塗料の指触乾燥時間が30分以上であることを特徴とする。
【0007】
本発明の金属製構造体は、金属製の対象物と、前記対象物に形成された絶縁膜と、を備え、前記絶縁膜は、厚みが1mm以下のポリウレア樹脂であることを特徴とする。
【0008】
本発明は、絶縁膜を形成するための絶縁膜形成用塗料であり、イソシアネート成分を含む主剤と、アミン化合物を含む硬化剤と、を含むポリウレア形成用塗料であり、指触乾燥時間が30分以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、レール等の金属構造体に対し、薄い絶縁膜を設けることができるため、破断等の原因となる漏れ電流を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1の施工方法の概要を示すフローチャートである。
【
図3】電車用レールユニットの概要を示す側面図である。
【
図5】第2の施工方法の概要を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1~2に示すように、絶縁膜形成方法2は、対象物TGにプライマーを塗布して、プライマー塗膜PMを形成するプライマー塗布工程S10と、プライマー塗膜PMの乾燥を行うプライマー乾燥工程S20と、対象物TGに対し絶縁膜形成用塗料を塗布して、絶縁膜を形成する絶縁膜形成用塗布工程S30と、絶縁膜を乾燥する絶縁膜乾燥工程S40と、を備える。
【0012】
対象物TGは、金属製の構造体であり、例えば、電流が流れる配線、電極や、電車用のレール等がある。
【0013】
プライマー塗布工程S10では、対象物TGに対し直接または間接的にプライマーを塗布する。プライマーの塗布方法としては、ローラや刷毛等公知の方法を用いることができる。塗布の条件によっては、短毛のローラやスポンジローラ等を用いればよい。
【0014】
プライマー塗膜PMは、硬化乾燥の状態において、透光性を有するものであることが好ましい。これにより、プライマー塗膜PMの形成後、対象物TGの表面状態を目視観察することができるためである。
【0015】
ここで、硬化乾燥とは、塗面の中央を親指と人差指とで強く挟んだ際、塗面に指紋によるへこみが付かず、塗膜の動きが感じられず、また、塗面の中央を指先で急速に繰り返しこすって,塗面にすり跡が付かない状態をいう(JIS K 5600-1-1:1999)。
【0016】
プライマーとしては、対象物TGに対する密着性が高いものであればよく、ビニル系合成樹脂等、公知の物を利用すればよい。
【0017】
プライマー乾燥工程S20では、プライマー塗布工程S10によって形成されたプライマー塗膜PMの乾燥を行う。乾燥方法は、対象物を大気中に静置すればよい。乾燥時間は目的に応じて適宜設定すればよいが、例えば、30分以上行うことが好ましく、1時間以上行うことがより好ましい。
【0018】
硬化乾燥となったプライマー塗膜PMの膜厚は、目的に応じて適宜設定すればよいが、例えば、20μm以上60μm以下であることが好ましく、30μm以上50μm以下であることがより好ましい。
【0019】
絶縁膜形成用塗布工程S30では、プライマー塗膜PMに対し絶縁膜形成用塗料を塗布する。絶縁性塗膜PRは、硬化乾燥となった状態において、透光性を有することが好ましい。これにより、絶縁性塗膜PRの形成後、対象物TGの表面状態を目視観察することができるためである。
【0020】
絶縁膜形成用塗料の塗布方法としては、ローラや刷毛等公知の方法を用いることができる。塗布の条件によっては、短毛のローラやスポンジローラ等を用いればよい。
【0021】
絶縁膜形成用塗料は、ポリウレア形成用塗料であり、イソシアネート成分を含む主剤と、アミン化合物を含む硬化剤と、を含む。
【0022】
主剤の割合は、全体に対して、50重量%以上70重量%以下であることが好ましく、55重量%以上65重量%以下であることがより好ましい。
【0023】
硬化剤の割合は、全体に対して、20重量%以上40重量%以下であることが好ましく、25重量%以上35重量%以下であることがより好ましい。
【0024】
また、絶縁膜形成用塗料に含まれる硬化剤に対する絶縁膜形成用塗料に含まれる主剤の割合の下限は、1.3倍以上であることが好ましく、1.5倍以上であることがより好ましく、2倍以上であることが特に好ましい。この割合の上限は、用途に応じて設定すればよいが、例えば、4倍以下であることが好ましく、3倍以下であることが好ましい。
【0025】
なお、絶縁膜形成用塗料には、用途に応じて添加剤を含めてもよい。添加剤としては、例えばホルムアルデヒドや酢酸等がある。添加剤の割合は、目的に応じて適宜設定すればよく、例えば、3重量%以上15重量%以下であることが好ましく、5重量%以上10重量%以下であることがより好ましい。
【0026】
絶縁膜形成用塗料の指触乾燥時間は、30分以上であることが好ましく、60分以上であることがより好ましく、120分以上であることが特に好ましい。
【0027】
指触乾燥時間とは、塗布開始から、塗膜が指触乾燥となるまでの時間をいう。指触乾燥とは、塗面の中央に指先で軽く触れたときに、指先が汚れない状態をいう(JIS K 5600-1-1:1999)。
【0028】
これにより、塗膜が均一の厚さに濡れ広がることが容易となるため、長大な構造体に対し、膜厚が均一で、薄い塗膜を形成することができる。また、絶縁膜形成用塗料は、1液型であるため、作業現場において、比率の調整をせずに済むため、結果として、絶縁膜を品質のばらつきを抑えることができる。
【0029】
絶縁膜乾燥工程S40では、絶縁膜形成用塗料の絶縁性塗膜PRを乾燥する。乾燥方法は、対象物を大気中に静置すればよい。乾燥時間は目的に応じて適宜設定すればよいが、例えば、30分以上行うことが好ましく、1時間以上行うことがより好ましい。
【0030】
硬化乾燥となった絶縁性塗膜PRの膜厚は、目的に応じて適宜設定すればよいが、例えば、1mm以下である。また、絶縁性塗膜PRの膜厚は、100μm以上800μm以下であることが好ましく、150μm以上600μm以下であることがより好ましく、200μm以上~500μm以下であることが特に好ましい。
【0031】
こうして、対象物TGの上には、プライマー塗膜PMと、絶縁性塗膜PRとが積層する絶縁性塗膜90が形成される。
【0032】
なお、既設のレールに対しては、絶縁膜形成用塗布工程の前に行われるケレン工程と、ケレン工程及び絶縁膜形成用塗布工程の間に行われる脱脂工程と、を行えばよい。ケレン工程では、塗料を塗る前に対象物における被塗面を整える。具体的には、さび、黒被、塩分、水分、粉塵、粉埃等の付着物を対象物から取り除く。さらに、ケレン工程では、塗料の付着性を高めるために、被塗面に凹凸をつけてもよい。脱脂工程では、ケレン工程の後の被塗面に対し脱脂を行う。
【0033】
また、既設のレールに対し、プライマー塗布工程S10や絶縁膜形成用塗布工程S30を行う場合には、被塗面が下方に向く姿勢のレールに対して各工程を行うことが好ましい。
【0034】
次に、レール(対象物)に対し、絶縁膜を形成する手順について説明する。
【0035】
図3~4に示すように、電車用レールユニット100は、枕木110と、レール120と、レール120を固定する固定構造130と、を備える。
【0036】
枕木110は、レール120を支えるための物であり、地面、砂利、コンクリートなどの上に設けられる。枕木110は、木、コンクリートやプラスチック等の絶縁物から形成される。枕木110の長手方向(紙面横方向)の中央部にレール120を設置した際、電車用レール12の両側の枕木110には、枕木側ボルト孔110Xが開口する。枕木側ボルト孔110Xには、固定ボルト133(後述)と螺合可能な目ねじが形成される。
【0037】
レール120は、枕木110の上に設けられるものであり、枕木110に当接する板状の載置部120Aと、載置部120Aから上に延びる延設部120Bと、延設部120Bの先端に設けられる車輪が転動する柱状の転動部120Cと、を備える。レール120は、枕木110に対し、直角または所定の角度で交差するように配される。レール120の寸法は目的に応じて適宜設定されればよいが、例えば、載置部120Aの幅は、100m以上300m以下であり、転動部120Cの幅は、50mm以上100mm以下であり、長さは15m以上50m以下である。
【0038】
固定構造130は、枕木110に対しレール120を固定するものであり、枕木110に固定された位置決め部材131と、位置決め部材131から載置部120Aに向かって延びる設けられる板バネ構造132と、板バネ構造132を枕木に対して固定する固定ボルト133と、を備える。
【0039】
位置決め部材131は枕木110に形成された係合溝110Mに対し係止される。係合溝110Mは、枕木側ボルト孔110Xよりも外側に位置する。
【0040】
板バネ構造132は、抑え部132Aと、抑え部132Aの上方に位置する板バネ部132Bとを備える。抑え部132Aの基端は、位置決め部材131と一体となっており、抑え部132Aの先端は、載置部120Aに対して係合可能となっている。板バネ部132Bの基端は、位置決め部材131と一体となっており、抑え部132Aと板バネ部132Bの先端には、それぞれ、バネ側ボルト孔132AX、132BXが形成される。
【0041】
固定ボルト133を、バネ側ボルト孔132BX及びバネ側ボルト孔132AXへこの順序で挿通した後、枕木側ボルト孔110Xに螺合する。こうして、固定構造130は、枕木110に対しレール120を固定することができる。
【0042】
絶縁膜180(絶縁性塗膜)は、載置部120Aに設けられることが好ましい。絶縁膜180における電気抵抗率は、1×108以上であることが好ましく、1×1013以上であることがより好ましく、1×1015以上であることが特に好ましい。
【0043】
絶縁膜180は、載置部120A及び延設部120Bに設けられることが好ましい。絶縁膜180は、延設部120Bの全体に設けられてもよいし、延設部120Bの一部(例えば、下方部分)に設けられてもよい。例えば、延設部120Bの下方部分とはは、例えば、延設部120Bの全体高さのうち50%以下の部分とすることが好ましい。
【0044】
絶縁膜180は、膜厚が薄く、十分な絶縁性を備えるため、レール120と、その周辺にある部材との間の絶縁を保つことができる。したがって、レール120の破断等の原因となる漏れ電流を防ぐことができる。
【0045】
なお、
図5~6に示すように、絶縁膜形成方法2は、重ね塗り工程S50と、全体乾燥工程S60と、を備えていてもよい。
【0046】
重ね塗り工程S50では、絶縁膜乾燥工程S40の後に行われるものであり、絶縁性塗膜PRに対し絶縁膜形成用塗料を塗布する。ここで、重ね塗り工程S50は、指触乾燥となった絶縁性塗膜PRに行うことが好ましい。
【0047】
全体乾燥工程S60は、重ね塗り工程S50の後に行われるものであり、絶縁膜形成用塗布工程S30及び重ね塗り工程S50において形成された絶縁性塗膜PRの乾燥を行うことが好ましい。
【0048】
(実験1)
サンプルに対し絶縁膜形成方法2を行ない、サンプル表面に、プライマー塗膜PMと、絶縁性塗膜PRとが積層する絶縁性塗膜90を形成した。絶縁膜乾燥工程S40及びプライマー乾燥工程S20はそれぞれ1時間行った。硬化状態におけるプライマー塗膜PMの膜厚は0.04mmであり、硬化状態における絶縁性塗膜PRの膜厚は、0.5mmであった。
【0049】
(プライマー)
実験1で用いたプライマーの組成は以下のとおりである。
ビニール樹脂 45重量%
トルエン(CAS No. 108-88-3) 33重量%
キシレン(CAS No. 1330-20-7) 7重量%
酢酸イソブチル(CAS No.110-19-0) 5重量%
プロピレングリコール(CAS No.108-65-6) 4重量%
メチルイソブチルケトン(CAS No.108-10-1) 6重量%
【0050】
(絶縁膜形成用塗料)
実験1で用いた絶縁膜形成用塗料の組成は以下のとおりである。
変性アミン硬化剤 30重量%
ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート 60重量%
添加剤(ホルムアルデヒド、酢酸) 10重量%以下
【0051】
(実験2)
サンプル表面に、直接、絶縁性塗膜PRのみからなる絶縁性塗膜90を形成したこと以外は、実験1と同じ条件で、絶縁膜形成方法2を行なった。
【0052】
(評価方法)
得られた絶縁性塗膜90に対し、表面抵抗率を測定した。
表面抵抗率の測定は以下のように行った。
試験規格 JIS K6911:1995
試験装置 デジタル超高抵抗/微小電流計 8340A型(株式会社エーディーシー製)主電極50mmφ/ガード電極 内径70mmφ/外形80mmφ
印加電圧 500V
印加時間 60秒
試験環境 23±2℃ /50±5%RH
試験数 3
測定面 光沢面
状態調節 23±2℃ /50±5%RH、90時間以上
電極処理 導電性ゴム使用
試験片形状 約100mm×約100mm
【0053】
(評価結果)
実験1
表面抵抗 2.1×1014Ω
表面抵抗率 4.0×1015Ω/sq
実験2
表面抵抗 9.3×1013Ω
表面抵抗率 1.7×1015Ω/sq
なお、表面抵抗及び表面抵抗率は、3つのサンプルの測定値の平均である。
【0054】
尚、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0055】
2 絶縁膜形成方法
90 絶縁性塗膜
100 電車用レールユニット
110 枕木
120 電車用レール
120A 載置部
120B 延設部
120C 転動部
130 固定構造
131 部材
132 板バネ構造
180 絶縁膜
S10 プライマー塗布工程
S20 プライマー乾燥工程
S30 絶縁膜形成用塗布工程
S40 絶縁膜乾燥工程
S50 塗り工程
S60 全体乾燥工程
TG 対象物
【手続補正書】
【提出日】2022-04-02
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
本発明は、絶縁膜形成方法、金属製構造体、及び絶縁膜形成用塗料に関する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0005】
そこで、本発明は、上記課題を鑑み、絶縁膜形成方法、金属製構造体、及び絶縁膜形成用塗料を提供する。