(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131780
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】プリズム装着具
(51)【国際特許分類】
G01C 15/06 20060101AFI20230914BHJP
【FI】
G01C15/06 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022036732
(22)【出願日】2022-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100182936
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 直樹
(72)【発明者】
【氏名】久保田 善経
(72)【発明者】
【氏名】園木 匠
(72)【発明者】
【氏名】山口 瞳
(72)【発明者】
【氏名】工藤 陸
(57)【要約】
【課題】球形ターゲットの設置位置の測量を容易にする。
【解決手段】一実施形態に係るプリズム装着具は、球形ターゲットに装着される装着部と、装着部に取り付けられているレール部であって、円弧形状のレールを含むレール部と、プリズムを備え、レール上を移動するプリズム部と、を含む、プリズム装着具であって、装着部は、球形ターゲットに装着された状態において球形ターゲットの球体とレールの円弧形状とが同心円となる配置で、レールを球形ターゲットの球体の中心を通る軸回りに回転させる回転部を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
球形ターゲットに装着される装着部と、
前記装着部に取り付けられているレール部であって、円弧形状のレールを含むレール部と、
プリズムを備え、前記レール上を移動するプリズム部と、
を含む、プリズム装着具であって、
前記装着部は、前記球形ターゲットに装着された状態において前記球形ターゲットの球体と前記レールの円弧形状とが同心円となる配置で、前記レールを前記球形ターゲットの前記球体の中心を通る軸回りに回転させる回転部を備える、
プリズム装着具。
【請求項2】
前記プリズム部の前記レール上の移動により、前記プリズムが前記レールの前記円弧形状と同心円上を移動する、
ことを特徴とする、請求項1に記載のプリズム装着具。
【請求項3】
前記回転部は、前記プリズム部の自重により回転可能であり、
前記レール部は、前記プリズム部の自重により前記レール上をスライド可能であるように前記プリズム部を保持し、
前記装着部が前記球形ターゲットに装着された状態で前記プリズム部は、前記球形ターゲットの前記球体の中心の鉛直方向下の位置に前記プリズムが配置されるように自重により前記レールに吊り下がる、ことを特徴とする、請求項1または2に記載のプリズム装着具。
【請求項4】
前記プリズム部は、前記レールの前記円弧形状の中心から前記プリズムに向かう方向の軸周りで前記プリズムのプリズム面を回転させる第2回転部を備える、ことを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載のプリズム装着具。
【請求項5】
前記プリズム部は、前記レールの前記円弧形状の中心から前記プリズムに向かう軸方向での前記プリズムの移動を可能にする可動部と、
前記プリズムの前記円弧形状の中心からの位置を特定するための目盛りと、を備える、
請求項1から4のいずれか1項に記載のプリズム装着具。
【請求項6】
前記レール部は、前記装着部から取り外し可能である、請求項1から5のいずれか1項に記載のプリズム装着具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリズム装着具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば、工事現場および建設現場などにおける進捗確認および出来形計測などの用途で3D(3次元)レーザースキャナで計測した3次元の点群データが利用されるようになってきている。例えば、現場の設計図に従って作成されたBIM(Building Information Modeling)などの3次元モデルと、レーザースキャナで計測した点群データとを重ね合わせることで、進捗確認および出来形計測などを容易にすることができる。
【0003】
また、より広い領域の点群データを取得するために、3Dレーザースキャナで複数の位置からスキャンして得た複数の点群データを合成することも行われている。また、計測範囲内にターゲットを設置して点群データの計測を行うことで、ターゲットの点群を基準として用いて複数の点群データの合成精度を高めることも行われている。
【0004】
また、測量機器などを用いてターゲットの位置を正確に計測し、得られたターゲットの位置を、計測した点群データの位置を絶対座標に合わせるために活用することが行われている。正確に位置合わせを行うことで設計モデルとの重ね合わせの精度が向上する。
【0005】
また、球形のターゲットが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
球形ターゲットは球体を含み、球体がどこから見ても同じ形状で計測することができる。そのため、球形ターゲットは、向きを気にせずに現場の天井および壁などの様々な場所に設置してターゲットとして用いることができる。一方で、測量機器などを用いてターゲットの位置を正確に測量する場合、ターゲットの設置位置を示す位置にプリズムを測量機器と正対させて設置することが求められる。しかしながら、例えば、球形ターゲットを壁および天井などに設置した場合、その設置位置を示す位置にプリズムを測量機器と正対させて設置することが困難なことがある。そのため、球形ターゲットが有する設置位置の高い自由度を、測量機器による測量のための制限により活かせないことがある。
【0008】
1つの側面では、本発明は、球形ターゲットの設置位置の測量を容易にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一つの形態に係るプリズム装着具は、球形ターゲットに装着される装着部と、装着部に取り付けられているレール部であって、円弧形状のレールを含むレール部と、プリズムを備え、レール上を移動するプリズム部と、を含む、プリズム装着具であって、装着部は、球形ターゲットに装着された状態において球形ターゲットの球体とレールの円弧形状とが同心円となる配置で、レールを球形ターゲットの球体の中心を通る軸回りに回転させる回転部を備える。
【0010】
球形ターゲットの設置位置の測量を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】ターゲットの設置位置の測量を例示する図である。
【
図3】実施形態に係るプリズム装着具を例示する図である。
【
図4】実施形態に係る装着部の動きを例示する図である。
【
図5】実施形態に係るプリズム部の動きを例示する図である。
【
図6】実施形態に係るプリズム装着具の動きを例示する図である。
【
図7】プリズムと球形ターゲットの球体の中心との位置関係を例示する図である。
【
図8】球形ターゲットを斜めの壁などに設置した場合を例示する図である。
【
図9】実施形態に係るプリズム装着具のプリズム部におけるプリズムの移動を例示する図である。
【
図10】実施形態に係るプリズム装着具を用いた計測の動作フローを例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明のいくつかの実施形態について詳細に説明する。なお、複数の図面において対応する要素には同一の符号を付す。
【0013】
上述のように、複数の地点から計測された点群データの共通部分を重ね合わせて、より広い領域の点群データを合成することが行われている。この場合に、計測対象の点群の情報だけでは合成が難しいことがある。例えば、長いトンネルの内部形状を計測した場合など、類似する構造が広い範囲にわたって連続して続く場合、合成に利用する特徴的な箇所が少なく、計測対象の点群の情報だけだと合成がうまくいかないことがある。
【0014】
そのため、現場にターゲットを設置して、ターゲットを含むように3Dレーザースキャナで点群データの計測を行い、ターゲットの点群を手かがりに複数の点群データを合成することが行われている。また、こうした複数の点群データの合成に用いるターゲットの一例として、球形ターゲット100が利用されている。
【0015】
図1は、球形ターゲット100を例示する図である。
図1(a)には、球形ターゲット100の側面が示されている。球形ターゲット100は、ターゲット部101と、取付部102とを含む。
【0016】
ターゲット部101は、例えば、球体である。また、取付部102は、例えば、球形ターゲット100を対象物に取り付けるための機能または構造を有する。例えば、
図1では取付部102は、マグネット110を含み、現場で建築物に使用されている鉄筋などの金属にマグネット110により球形ターゲット100を取り付けることが可能である。なお、取付部102の取り付けは、マグネットに限定されるものではなく、ソケットまたはシールなどの粘着物が用いられてもよい。
【0017】
また、
図1(b)には壁150に設置された球形ターゲット100が例示されている。球形ターゲット100は、例えば、異なる角度から3Dレーザースキャナで計測した場合にも、ターゲット部101については同一の球形状の点群を取得することができる。例えば、
図1(b)に示すように、球形ターゲット100を斜めの向きで設置したとしても、ターゲット部101の球形状は、
図1(a)の側面から見た場合の形状と変わらないことが分かる。そのため、複数の地点から計測された複数の点群データを合成する際に、ターゲット部101の点群を基準として用いることができる。このように、球形ターゲット100は、向きを気にせずに現場の天井や壁などに設置して用いることができる。建築現場などでは床に資材などを置くことが多く、また、物資の搬送などもあり、ターゲットを床に設置することが難しかったり、作業の妨げになったりすることがある。そのため、天井や壁などに設置して用いることができる球形ターゲットは利便性が高い。
【0018】
また、より高精度に座標変換を行うために、例えば、トランシットおよびトータルステーションなどの測量機器でターゲットの設置位置を正確に測量することも行われている。
【0019】
図2は、ターゲットの設置位置の測量を例示する図である。例えば、
図2(a)に示すように、或る位置に球形ターゲット100を設置するとする。この場合、予め設計図上での位置座標が特定されている位置に測量機器202を設置し、その位置からの球形ターゲット100の設置位置を測量により特定する。
【0020】
例えば、測量機器202で球形ターゲット100の設置位置を測量するために、
図2(b)に示すように、球形ターゲット100の設置位置を示す位置にプリズム203のプリズム面を測量機器202と略正対させて設置する。なお、正対させるとは、一例では、測量機器202の光軸に直交する面上にプリズム203のプリズム面を略平行に配置することであってよい。また、球形ターゲット100の設置位置を示す位置は、例えば、ターゲット部101の中心位置である。
【0021】
続いて、測量機器202でプリズム203の位置(例えば、X,Y,Zの位置座標)を測量することで、球形ターゲット100の設置位置を特定する。
【0022】
なお、例えば、予め設計図上での位置座標が特定されている基準点201などの位置を測量機器202で測量することで、基準点201からの測量機器202の位置を特定することができる。
【0023】
測量後、プリズム203の位置にターゲット部101を設置して、3Dレーザースキャナで球形ターゲット100を含む領域を計測する。
【0024】
同様にして、球形ターゲット100を含む領域を複数の位置から3Dレーザースキャナで計測することで、設計図面などにおける位置が特定された球形ターゲット100を含む複数の点群データを計測することができる。そして、球形ターゲット100の位置に基づいて複数の点群データを重ね合わせることで、複数の点群データを高精度に合成することができる。なおかつ、球形ターゲット100の位置座標に基づき高精度に座標変換ができる。
【0025】
しかしながら、この場合、球形ターゲット100の設置位置と、プリズム203の測量位置とを高い精度で合わせなければ、点群データの座標変換の精度が低下してしまう。それゆえ、高精度な位置合わせをするために、床などの平らな面に水準器(水平器)などを用いて厳密に設置することが行われている。また、球形ターゲット100を上空に設置した場合など球形ターゲット100の設置場所によっては、その位置と対応する位置にプリズム203を測量機器202に正対させて設置することが困難なこともある。そのため、球形ターゲット100は、3Dレーザースキャナのターゲットとしては設置位置に高い自由度を有しているにもかかわらず、ターゲットの設置位置を測量で決定するような高精度の座標変換を行う場合には、測量のために設置位置が制限されてしまうことがある。その結果、球形ターゲットの設置場所を選ばないという利点が十分に生かすことができないことがある。
【0026】
そのため、球形ターゲット100の設置位置によらず、球形ターゲット100の設置位置の測量を容易にするプリズムの提供が望まれている。以下で述べる実施形態では、球形ターゲット用のプリズム装着具300が提供される。
【0027】
図3は、実施形態に係るプリズム装着具300を例示する図である。
図3(a)において、プリズム装着具300は、例えば、レール部301、プリズム部302、装着部303を含む。レール部301は、例えば、装着部303に取り付けられており、円弧形状のレールを含む。なお、装着部303は、例えば、プリズム装着具300を球形ターゲット100に装着する機能または構造を有する。また、装着部303は、レール部301を着脱する機能または構造を有し、レール部301を着脱可能であってよい。プリズム部302は、プリズム310を含む。また、プリズム部302は、例えば、レール部301に嵌り(乗り)、レール部301に沿って移動することができる。プリズム部302は、レール部301から着脱可能であってもよい。
【0028】
図3(b)には、レール部301、プリズム部302、および装着部303が分離された状態で示されている。
【0029】
図4は、装着部303の動きを例示する図である。
図4(a)には、装着部303によるレールの回転が示されている。
図4(a)に示すように、装着部303は、第1部位401と、第2部位402とを含む。また、
図4(b)は、装着部303の第2部位402の断面を例示しており、装着部303の回転する構造が例示されている。取付部102の第1部位401および第2部位402は、
図4(b)に示すように、開口部403を含む。開口部403の大きさや形状は、球形ターゲット100の取付部102の形状および大きさに合わせて作られていてよい。
図4(a)に示すように、開口部403を通して取付部102を挿入することができる。そして、固定ネジ404を締めることで、装着部303の第1部位401を取付部102に固定することができる。
【0030】
また、取付部102の第2部位402は、
図4(b)に示すように、開口部405を含む。開口部405には、レール部301の端部を挿入することができ、固定ネジ406を締めることで挿入されたレール部301を固定したり、固定ネジ406をゆるめてレール部301を取り外したりすることができる。なお、
図4で例示した開口とネジとを用いた固定は例示であり、その他の構成で固定が行われてもよい。
【0031】
また、
図4(b)に示すように、第2部位402は、例えば、軸受け、またはベアリングであってよく、内側部材411と、複数のボール420が取り付けられた外側部材412とを含む。なお、外側部材412を、回転部と呼ぶことがある。内側部材411は、例えば、第1部位401と接続されており、第1部位401とともに取付部102に固定される。外側部材412は、複数のボール420が内側部材411上を滑らかに回転することで、内側部材411の周りを矢印430に示すように回転することができる。その結果、装着部303が球形ターゲット100に取り付けられた際に、取付部102の長手方向の軸方向を回転軸として球形ターゲット100の周りでレール部301を矢印450に示すように回転させることができる。なお、球形ターゲット100にプリズム装着具300が装着された状態で、球形ターゲット100の球体の周囲にレール部301の円弧形状のレールは配置される。また、球形ターゲット100にプリズム装着具300が装着された状態で、球形ターゲット100のターゲット部101の中心と、レール部301の円弧形状のレールの中心は一致していてよい。そして、球形ターゲット100にプリズム装着具300が装着された状態では、ターゲット部101の球体と同心円上にレール部301の円弧形状のレールが配置される。従って、装着部303は、球形ターゲット100に装着された状態において球形ターゲットの球体とレールの円弧形状とが同心円となる配置で、レールを球形ターゲット100の球体の中心を通る軸回りに回転させることができる。
【0032】
図5は、プリズム部302の動きを例示する図である。
図5(a)は、プリズム部302をレール部301に取り付けた状態を示している。
図5(b)は、プリズム部302のレール部301との取り付け部分の断面を例示する図である。
図5の例では、レール部301は、中空の構造をした溝501を含む。溝501は、例えば、ターゲット部101とは反対側に開口している溝であってよい。プリズム部302は、例えば、
図5(b)に示すように、プリズム310と、プリズム310が取り付けられた支柱502と、支柱502の先端に取り付けられた円盤部材503とを含む。円盤部材503には複数のボール504が取り付けられており、ボール504が滑らかに回転することでレール部301のレールの溝501に沿ってプリズム部302は、
図5(a)の矢印520に示すように移動することができる。そして、プリズム部302のレール上の移動により、例えば、プリズム310は、レールの円弧形状と同心円上を移動する。
【0033】
また、プリズム部302は、レールの円弧形状の中心からプリズム310に向かう軸方向の周りでプリズム310のプリズム面を回転させる第2回転部を備える。例えば、ボール504は、第2回転部として機能してよく、ボール504が滑らかに回転することで、レール部301内でプリズム310は、支柱502を回転軸として矢印530に示すように回転することができる。なお、
図5の例ではプリズム部302の全体が矢印530に示すように回転する例を述べているが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、別の例では、プリズム310が支柱502の周りを矢印530に示すように回転可能であってもよい。
【0034】
以上で述べたように、実施形態に係るプリズム装着具300は、
図6(a)に示す装着部303の軸回りの回転(矢印601)と、プリズム部302のレール部301のレールに沿った移動(矢印602)とにより、プリズム部302の位置を変えることができる。その結果、例えば、
図6(b)に示すように、球形ターゲット100を壁および天井などに様々な向きで取り付けたとしても、プリズム部302が吊り下げられた場合、この2つの動きにより球形ターゲット100の球体の中心から鉛直方向に下の位置にプリズム部302のプリズム310を吊り下げることができる。
【0035】
また、例えば、プリズム部302は、レールの円弧形状の中心からプリズム310に向かう軸方向の周りでプリズム310のプリズム面を回転させる。例えば、プリズム部302は、球形ターゲット100の球体の中心から鉛直方向に下の位置に吊り下げられた状態で、矢印603に示すように回転させることができる。そのため、測量機器202の設置位置に合わせて、プリズム部302を回転させて、プリズム310を測量機器202に正対させることができる。
【0036】
また、プリズム部302のプリズム310は、球形ターゲット100の球体の中心から鉛直方向に下の位置に吊り下がるため、プリズム310と、球形ターゲット100の球体の中心との位置関係は一定に保たれる。
【0037】
図7は、プリズム310と、球形ターゲット100の球体の中心との位置関係を例示する図である。
図7(a)では、球形ターゲット100は水平の向きで取り付けられており、一方、
図7(b)では、球形ターゲット100は、斜めの向きで取り付けられている。しかしながら、プリズム部302は、球形ターゲット100の球体の中心から鉛直方向に下の位置に吊り下がるため、球形ターゲット100を様々な向きで取り付けたとしても、球形ターゲット100の球体の中心と、プリズム310の水平方向の位置(X方向およびY方向の位置)は、
図7に示すように一致する。また、球形ターゲット100の球体の中心と、プリズム310との鉛直方向の距離は所定値Aとなる。換言すると、球形ターゲット100にプリズム装着具300が装着された状態では、ターゲット部101の球体と同心円上をプリズム310は移動するため、球形ターゲット100の球体の中心と、プリズム310との鉛直方向の距離は所定値Aとなる。そのため、プリズム310の位置座標を測量機器202で特定した場合、その座標のZ成分にAを加算するなどしてシフトすることで、球形ターゲット100の球体の中心の座標を特定することができる。
【0038】
従って、
図8に例示するように、球形ターゲット100を斜めの壁150などに設置した場合にも、プリズム310を測量機器202に正対させて配置して、その位置を特定することができる。そして、特定したプリズム310のZ成分をAだけシフトすることで球形ターゲット100の中心位置を特定することができる。
【0039】
以上で述べたように、実施形態によれば球形ターゲット100を用いる場合にも、その設置位置を容易に特定することが可能である。また、実施形態によれば球形ターゲット100を様々な向きで設置した場合にも、その設置位置を容易に特定することが可能である。
【0040】
なお、プリズム装着具300のプリズム部302は、レール部301の円弧の中心からプリズム310に向かう軸方向に沿ってのプリズム310の移動を可能にする可動部を備えてもよい。例えば、
図8に示すように、球形ターゲット100を床よりも高所の壁や天井などに設置した場合にも、障害物の存在によっては、測量機器202の位置から見てプリズム310が死角に入ってしまうことがある。そのような場合にも、プリズム310の位置を移動可能であればプリズム310が見える位置に移動させることができる。
【0041】
図9は、実施形態に係るプリズム部302におけるプリズム310の移動を例示する図である。
図9に示すように、プリズム部302においてプリズム310は、支柱502の中心軸に沿った方向にスライドして移動可能である。なお、一例では、ボルトとナットなどの留め具を用いてプリズム310は支柱502に固定されていてよい。この場合、例えば、支柱502は、ボルトのネジ山の部分が通る溝を有し、プリズム310に取り付けられているボルトを回してボルトの頭と、ナットとの間で支柱502を締め付けることで、プリズム310が支柱502に固定されてよい。また、この場合、ボルトをゆるめることで支柱502に沿ってプリズム310は移動可能であってよい。それにより、レール部301の円弧の中心からプリズム310に向かう軸方向に沿ってのプリズム310の移動を可能にすることができる。
【0042】
また、移動させた場合のプリズム310の位置を特定可能にするために、プリズム部302は、プリズム310の位置を示す目盛り901を有していてよい。
図9の例では、支柱502は、支柱502の軸方向に沿った目盛りを含んでおり、プリズム310の位置を移動させた際のレール部301の円弧の中心からプリズム310に向かう軸方向に沿ったプリズム310の位置を特定可能である。
【0043】
また、
図9の例では、プリズム部302は、重り902を含んでいる。上述のように、プリズム部302は、自重で鉛直方向に吊り下がってよく、このように重り902を含むことで、鉛直方向への吊り下がりをより安定させることができる。なおかつ、プリズムを固定するために人手を必要としない。
【0044】
図10は、実施形態に係るプリズム装着具300を用いた計測の動作フローを例示する図である。
【0045】
S1001において設計図上での位置が分かっている基準点201を、トランシットおよびトータルステーションなどの測量機器202で測量して、測量機器202の位置を特定する。
【0046】
S1002において球形ターゲット100を設置する。球形ターゲット100は、例えば、壁や天井など様々な場所に設置されてよい。
【0047】
S1003において設置した球形ターゲット100にプリズム装着具300を装着する。球形ターゲット100にプリズム装着具300を装着すると、例えば、プリズム部302は自重で鉛直方向に吊り下がる。また、プリズム部302においてプリズムのプリズム面を回転させることができ、プリズム面を測量機器202と正対する向きに向けることができる。
【0048】
S1004において測量機器202で、プリズム装着具300のプリズム310を測量し、プリズム310の位置座標を特定する。
【0049】
そして、S1005においてプリズム310の位置座標に、所定値Aを加算するなどして球形ターゲット100の位置座標(X,Y,Z座標)を特定する。
【0050】
S1006において球形ターゲット100からプリズム装着具300を取り外す。
【0051】
S1007において複数の位置から球形ターゲット100を3Dレーザースキャナで計測し、複数の点群データを取得する。
【0052】
S1008において球形ターゲット100の位置座標を用いて複数の点群データを合成する。
【0053】
以上で述べたように、球形ターゲット100の位置をプリズム装着具300により特定できるため、正確な座標合わせができ、点群の合成、および座標変換に関わる後処理の効率を高めることができる。
【0054】
また、実施形態に係るプリズム装着具300によれば、壁面および天井などの様々な場所に設置された球形ターゲット100を手軽に測量することができる。
【0055】
そのため、測量のために球形ターゲット100を床などの測量のし易い場所に設置しなくてもよく、球形ターゲット100の設置場所を選ばない特徴を活かすことができる。
【0056】
例えば、球形ターゲット100の位置を測量で特定する場合にも、床ではなく壁および天井などの交通および施工の妨げにならない箇所に球形ターゲット100を設置することができる。そのため、長期間、球形ターゲット100を設置した状態にすることも可能になる。それにより、計測のたびに球形ターゲット100を毎回設置する手間が不要になる。例えば、3Dレーザースキャナで現場の出来形を定点観測したりする際にも、球形ターゲット100を設置したままにして計測を行うことができるため、利便性が高い。
【0057】
以上において、いくつかの実施形態が説明される。しかしながら、実施形態は上記の実施形態に限定されるものではなく、上述の実施形態の各種変形形態および代替形態を包含するものとして理解されるべきである。例えば、各種実施形態は、その趣旨および範囲を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できることが理解されよう。また、前述した実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより、種々の実施形態が実施され得ることが理解されよう。更には、実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除して、または実施形態に示される構成要素にいくつかの構成要素を追加して種々の実施形態が実施され得ることが当業者には理解されよう。
【符号の説明】
【0058】
100 :球形ターゲット
101 :ターゲット部
102 :取付部
110 :マグネット
150 :壁
201 :基準点
202 :測量機器
203 :プリズム
300 :プリズム装着具
301 :レール部
302 :プリズム部
303 :装着部
310 :プリズム
401 :第1部位
402 :第2部位
403 :開口部
404 :固定ネジ
405 :開口部
406 :固定ネジ
411 :内側部材
412 :外側部材
420 :ボール
501 :溝
502 :支柱
503 :円盤部材
504 :ボール
901 :目盛り
902 :重り