(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023013179
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】放射性ストロンチウム計測装置、放射性ストロンチウム計測方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01T 1/167 20060101AFI20230119BHJP
G01T 1/203 20060101ALI20230119BHJP
G01T 1/22 20060101ALI20230119BHJP
G21F 9/36 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
G01T1/167 C
G01T1/203
G01T1/22
G21F9/36 511P
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021117167
(22)【出願日】2021-07-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】山中 和夫
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 純一
(72)【発明者】
【氏名】長澤 克己
(72)【発明者】
【氏名】室原 玄貴
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 博信
【テーマコード(参考)】
2G188
【Fターム(参考)】
2G188AA21
2G188AA23
2G188BB05
2G188BB15
2G188CC10
2G188CC39
2G188EE05
2G188EE06
2G188EE16
2G188EE25
2G188EE29
2G188HH01
2G188HH06
2G188JJ05
(57)【要約】
【課題】2~3日以内に放射性Srの放射能量を計測すると共に、分析済み試料の廃棄時に環境負荷を低減可能な放射性ストロンチウム計測装置を提供する。
【解決手段】第1試料から放射される放射線に基づくプラスチックシンチレーションの発光を第1計測し、第2試料から放射される放射線に基づくチェレンコフ光を第2計測する光電子倍増管を有する計測部と、第1計測されたプラスチックシンチレーションの発光の強度の分布に基づいてプラスチックシンチレーションの発光スペクトルを算出し、プラスチックシンチレーションの発光スペクトルに基づいてSr-90放射能量を第1算出し、計測部により計測されたチェレンコフ光の強度の分布に基づいてSr-89放射能量を第2算出し、第1算出結果と第2算出結果に基づいてストロンチウム試料のSr-90放射能量及びSr-89放射能量を算出する、演算部と、を備える放射性ストロンチウム計測装置である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離されたストロンチウム試料の粒子が表面に付着したプラスチックシンチレータペレットを有する第1試料から放射される放射線に基づくプラスチックシンチレーションの発光を第1計測し、前記ストロンチウム試料を前記第1試料と同量に含有する水溶液である第2試料から放射される放射線に基づくチェレンコフ光を第2計測する光電子倍増管を有する計測部と、
前記第1計測された前記プラスチックシンチレーションの発光の強度の分布に基づいて前記プラスチックシンチレーションの発光スペクトルを算出し、前記プラスチックシンチレーションの発光スペクトルに基づいてSr-90計数を算出し、算出結果に基づいて前記第1試料中に含まれるSr-90放射能量を第1算出し、
前記計測部により計測された前記チェレンコフ光の強度の分布に基づいてチェレンコフ光スペクトルを算出し、前記チェレンコフ光スペクトルに基づいてSr-89計数を算出し、算出結果に基づいて前記第2試料中に含まれるSr-89放射能量を第2算出し、
第1算出結果と第2算出結果に基づいて前記ストロンチウム試料のSr-90放射能量及びSr-89放射能量を算出する、演算部と、を備える、
放射性ストロンチウム計測装置。
【請求項2】
前記ストロンチウム試料を含む水溶液を凍結乾燥し、前記ストロンチウム試料の粒子を前記プラスチックシンチレータペレットの表面に吸着させ前記第1試料を生成する凍結乾燥機を備える、
請求項1に記載の放射性ストロンチウム計測装置。
【請求項3】
前記プラスチックシンチレータペレットを洗浄し表面に吸着した前記ストロンチウム試料の粒子を除去する洗浄装置を備える、
請求項1または2に記載の放射性ストロンチウム計測装置。
【請求項4】
ストロンチウム試料を単離する工程と、
前記ストロンチウム試料を含む水溶液を生成する工程と、
プラスチックシンチレータペレットを有する第1容器に所定量の前記水溶液を注入する工程と、
前記第1容器に含まれる前記水溶液を凍結乾燥して前記ストロンチウム試料の粒子が表面に付着した前記プラスチックシンチレータペレットを有する第1試料を形成する工程と、
前記所定量と同量の前記水溶液を第2容器に注入し第2試料を生成する工程と、
光電子倍増管を有する測定部により前記第1試料から放射される放射線に基づくプラスチックシンチレーションの発光を第1計測する工程と、
第1計測された前記プラスチックシンチレーションの発光の強度の分布に基づいて前記プラスチックシンチレーションの発光スペクトルを算出する工程と、
前記プラスチックシンチレーションの発光スペクトルに基づいてSr-90計数を算出する工程と、
算出結果に基づいて前記第1試料中に含まれるSr-90放射能量を第1算出する工程と、
前記光電子倍増管を有する前記測定部により前記第2試料から放射される放射線に基づくチェレンコフ光を第2計測する工程と、
第2計測された前記チェレンコフ光の強度の分布に基づいてチェレンコフ光スペクトルを算出する工程と、
前記チェレンコフ光スペクトルに基づいてSr-89計数を算出する工程と、
算出結果に基づいて前記第2試料中に含まれるSr-89放射能量を第2算出する工程と、
演算部により、第1算出結果と第2算出結果に基づいて前記ストロンチウム試料のSr-90放射能量及びSr-89放射能量を算出する工程と、を備える、
放射性ストロンチウム計測方法。
【請求項5】
ストロンチウム試料の放射能量を算出する放射性ストロンチウム計測装置において実行されるプログラムであって、
光電子倍増管を有する計測部に、
単離された前記ストロンチウム試料の粒子が表面に付着したプラスチックシンチレータペレットを有する第1試料から放射される放射線に基づくプラスチックシンチレーションの発光を第1計測させ、
前記ストロンチウム試料を前記第1試料と同量に含有する水溶液である第2試料から放射される放射線に基づくチェレンコフ光を第2計測させ、
演算部に、
第1計測された前記プラスチックシンチレーションの発光の強度の分布に基づいて前記プラスチックシンチレーションの発光スペクトルを算出させ、
前記プラスチックシンチレーションの発光スペクトルに基づいてSr-90計数を算出させ、
算出結果に基づいて前記第1試料中に含まれるSr-90放射能量を第1算出させ、
第2計測された前記チェレンコフ光の強度の分布に基づいてチェレンコフ光スペクトルを算出させ、
前記チェレンコフ光スペクトルに基づいてSr-89計数を算出させ、
算出結果に基づいて前記第2試料中に含まれるSr-89放射能量を第2算出させ、
第1算出結果と第2算出結果に基づいて前記ストロンチウム試料のSr-90放射能量及びSr-89放射能量を算出させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性ストロンチウムのうちストロンチウム89の放射能量を正確に計測することができる放射性ストロンチウム計測装置、放射性ストロンチウム計測方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所を含む原子力関連施設において、様々な放射性物質(廃棄物や処理水)等が排出される。これらの放射性物質は、核種の放射能量に応じて所定の基準に従って管理される。放射性物質には、例えば、使用済み燃料由来のストロンチウム90(以下、Sr-90という)や、その放射性同位体であるストロンチウム89(以下、Sr-89という)などの放射性ストロンチウム(Sr)や、Sr-90が崩壊して生成されるイットリウム-90(以下、Y-90という)が含まれており、各放射性核種の放射能量を個別に計測が必要となる場合がある。Sr-90は、半減期が約29年であるのに対し、Sr-89は、半減期が約51日である。
【0003】
放射性ストロンチウムの放射能量は、試料から放射されるβ線の計測値により得られる。しかし、このβ線の計測値には、Sr-89、Sr-90、Y-90の放射能量が含まれている。従来、Sr-90及びSr-89を含む放射性Srの放射能量を個別に計測するために、以下の手法が提案されている。
【0004】
例えば、非特許文献1には、GM計数管などを用いて、ストロンチウムフラクションの放射能量及び同フラクションからミルキングによって分離したY-90の放射能量を計測し、その量からSr-90の放射能量を求め、ストロンチウムフラクション放射能量から差し引きによってSr-89の放射能量を求める手法が提案されている。この手法によれば、ストロンチウムフラクション中のSr-90からY-90が生成し、放射平衡状態になるのを待つ必要があり、計測値を得るために核分裂の発生から計測が終わるまで約3週間を要する。
【0005】
また、非特許文献2には、GM計数管などを用いて、分離したストロンチウムフラクションの放射能を、異なった二つの時刻において計測し、その減衰あるいは増加から計算によってSr-89及びSr-90の放射能量をそれぞれ求める手法が提案されている。この手法によれば、ストロンチウムフラクション中のSr-90からY-90の生成により減衰曲線の変化を待つ必要があり、計測値を得るために核分裂の発生から約1週間を要する。
【0006】
また、非特許文献3には、β線のスペクトルを計測可能な装置を用いて、β線のスペクトル解析手法であるβ線スペクトロメトリによりSr-89の放射能量とSr-90の放射能量とを直接分離して計測し、計測値に基づいて最小二乗法を用いてそれぞれの放射能量を求める手法が提案されている。この手法によれば、核分裂の発生から約2日程度で計測値を得ることができる。
【0007】
また、非特許文献4には、液体シンチレーションカウンタ(Liquid Scintillation Counter:LSC)が有する光電子倍増管(PMTと略す)を用い、ストロンチウムフラクションから放射される主にSr-89およびY-90のβ線によって発光するチェレンコフ光のスペクトルを計測し、計測値に基づいてSr-89とY-90を直接分離して計測する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】放射性ストロンチウム分析法(文部科学省,平成15年改訂)
【非特許文献2】発電用軽水型原子炉施設における放出放射性物質の計測に関する指針(原子力安全委員会,平成13年3月29日一部改訂)
【非特許文献3】Rapid determination of 89Sr and 90Sr in radioactive waste using Sr extraction disk and beta-ray spectrometer, JAEA Y. Kameo et al.
【非特許文献4】液体シンチレーションカウンタによる放射性核種分析法(文部科学省,平成8年改訂)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
Sr放射能計測結果を数日以内で求める必要がある場合、上記手法のうち、非特許文献3に記載されたβ線スペクトロメトリを用いた計測が最も有効である。しかしながら、この手法によれば、Sr-89量がSr-90量に比べ、例えば1/5(Sr-89/Sr-90≦0.2)程度以下となる場合は、Sr-89の濃度誤差(2σ)がSr-89の濃度と同等近くまで大きくなり、検出下限値がSr-90に比して大きくなる場合がある。
【0011】
一方、Sr放射能計測結果を1週間程度で求める必要がある場合、非特許文献4に記載されたチェレンコフ光を利用した計測が提案されている。この計測手法によれば、Sr-90のβ線エネルギーは、Sr-89、Y-90のβ線エネルギーに比して小さく、チェレンコフ光が弱くなる。そのため、Sr-90のβ線エネルギーは、Y-90のβ線の計測値から計算で求める必要がある。そうすると、この手法によれば、Sr-90からY-90が生成された後、Y-90のチェレンコフ光の計測値に基づいてSr-90の放射能量を算出する。この手法によれば、Sr-90の算出結果を得るまでに約1週間程度を要する。
【0012】
従って、Sr-90については非特許文献3に記載されたβ線スペクトロメトリ法を用いて短期間にその放射能量を求めることができるが、Sr-89の放射能量の計測については誤差が大きくなるという課題がある。そのため、Sr-89の放射能量についても共存するSr-90の量の影響を受けにくく、更に、非特許文献4の方法の様に分析済み試料の廃棄に際し有機溶媒を含む液体シンチレータを使用せず、環境への負荷を低減可能な放射性ストロンチウム計測手法が望まれている。
【0013】
本発明は、2~3日以内に放射性Srの放射能量を核種別に計測すると共に、分析済み試料の廃棄時に環境負荷を低減可能な放射性ストロンチウム計測装置、放射性ストロンチウム計測方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一態様は、単離されたストロンチウム試料の粒子が表面に付着したプラスチックシンチレータペレットを有する第1試料から放射される放射線に基づくプラスチックシンチレーションの発光を第1計測し、前記ストロンチウム試料を前記第1試料と同量に含有する水溶液である第2試料から放射される放射線に基づくチェレンコフ光を第2計測する光電子倍増管を有する計測部と、前記第1計測された前記プラスチックシンチレーションの発光の強度の分布に基づいてプラスチックシンチレーションの発光スペクトルを算出し、前記プラスチックシンチレーションの発光スペクトルに基づいてSr-90計数を算出し、算出結果に基づいて前記第1試料中に含まれるSr-90放射能量を第1算出し、前記計測部により計測された前記チェレンコフ光の強度の分布に基づいてチェレンコフ光スペクトルを算出し、前記チェレンコフ光スペクトルに基づいてSr-89計数を算出し、算出結果に基づいて前記第2試料中に含まれるSr-89放射能量を第2算出し、第1算出結果と第2算出結果に基づいて前記ストロンチウム試料のSr-90放射能量及びSr-89放射能量を算出する、演算部と、を備えるストロンチウム計測装置である。
【0015】
本発明によれば、第1試料S1のプラスチックシンチレーション発光を計測することにより、Sr-90放射能量を算出することができ、第2試料S2のチェレンコフ光の発光を計測することにより、Sr-89放射能量を算出することができる。本発明によれば、Y-90の生成を待つことなく、2~3日程度で資料の放射能量を計測することができる。本発明によれば、Sr-89がSr-90に比べ1/5以下程度に小さい場合においても、Sr-89放射能量の検出精度を向上することができる。また、本発明によれば、計測においてプラスチックシンチレータペレットを用いることにより、液体シンチレータの廃液処理をすることなく環境負荷を低減することができる。
【0016】
また、本発明は、前記ストロンチウム試料を含む水溶液を凍結乾燥し、前記ストロンチウム試料の粒子を前記プラスチックシンチレータペレットの表面に吸着させ前記第1試料を生成する凍結乾燥機を備えていてもよい。
【0017】
本発明によれば、プラスチックシンチレータペレットを有する第1試料を形成することができ、計測において液体シンチレータの廃液処理をすることなく環境負荷を低減することができる。
【0018】
また、本発明は、前記プラスチックシンチレータペレットを洗浄し表面に吸着した前記ストロンチウム試料の粒子を除去する洗浄装置を備えていてもよい。
【0019】
本発明によれば、第1試料のプラスチックシンチレータペレットを、洗浄装置を用いて洗浄することにより、プラスチックシンチレータペレットを繰り返し使用することができ、計測におけるコストを低減すると共に、環境負荷を低減することができる。
【0020】
本発明の一態様は、ストロンチウム試料を単離する工程と、前記ストロンチウム試料を含む水溶液を生成する工程と、プラスチックシンチレータペレットを有する第1容器に所定量の前記水溶液を注入する工程と、前記第1容器に含まれる前記水溶液を凍結乾燥して前記ストロンチウム試料の粒子が表面に付着した前記プラスチックシンチレータペレットを有する第1試料を形成する工程と、前記所定量と同量の前記水溶液を第2容器に注入し第2試料を生成する工程と、光電子倍増管を有する測定部により前記第1試料から放射される放射線に基づくプラスチックシンチレーションの発光を第1計測する工程と、第1計測された前記プラスチックシンチレーションの発光の強度の分布に基づいて前記プラスチックシンチレーションの発光スペクトルを算出する工程と、前記プラスチックシンチレーションの発光スペクトルに基づいてSr-90計数を算出する工程と、算出結果に基づいて前記第1試料中に含まれるSr-90放射能量を第1算出する工程と、前記光電子倍増管を有する前記測定部により前記第2試料から放射される放射線に基づくチェレンコフ光を第2計測する工程と、第2計測された前記チェレンコフ光の強度の分布に基づいてチェレンコフ光スペクトルを算出する工程と、前記チェレンコフ光スペクトルに基づいてSr-89計数を算出する工程と、算出結果に基づいて前記第2試料中に含まれるSr-89放射能量を第2算出する工程と、演算部により、第1算出結果と第2算出結果に基づいて前記ストロンチウム試料のSr-90放射能量及びSr-89放射能量を算出する工程と、を備える放射性ストロンチウム計測方法である。
【0021】
本発明によれば、従来の放射性ストロンチウム計測装置の構成を変更することなく、演算手法を変更することで実現することができる。
【0022】
本発明の一態様は、ストロンチウム試料の放射能量を算出する放射性ストロンチウム計測装置において実行されるプログラムであって、光電子倍増管を有する計測部に、単離された前記ストロンチウム試料の粒子が表面に付着したプラスチックシンチレータペレットを有する第1試料から放射される放射線に基づくプラスチックシンチレーションの発光を第1計測させ、前記ストロンチウム試料を前記第1試料と同量に含有する水溶液である第2試料から放射される放射線に基づくチェレンコフ光を第2計測させ、演算部に、第1計測された前記プラスチックシンチレーションの発光の強度の分布に基づいて前記プラスチックシンチレーションの発光スペクトルを算出させ、前記プラスチックシンチレーションの発光スペクトルに基づいてSr-90計数を算出させ、算出結果に基づいて前記第1試料中に含まれるSr-90放射能量を第1算出させ、第2計測された前記チェレンコフ光の強度の分布に基づいてチェレンコフ光スペクトルを算出させ、前記チェレンコフ光スペクトルに基づいてSr-89計数を算出させ、算出結果に基づいて前記第2試料中に含まれるSr-89放射能量を第2算出させ、第1算出結果と第2算出結果に基づいて前記ストロンチウム試料のSr-90放射能量及びSr-89放射能量を算出させる。
【0023】
本発明によれば、従来の液体シンチレーションカウンタの構成を変更することなく、プログラムを変更することで実現することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、放射性Sr量を計測において、プラスチックシンチレーション発光を測定することにより、2~3日以内の短期間にSr-90放射能量を計測でき、また、測定試料のチェレンコフ光の発光を計測することによりSr-90放射能量の影響を受けにくいSr-89放射能量の測定ができる。また、本発明によれば、分析済み試料の廃棄時に環境負荷を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の実施形態に係る放射性ストロンチウム計測装置の計測対象の第1試料を示す図である。
【
図2】水分を除去して第1試料を生成するための凍結乾燥機の構成を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る放射性ストロンチウム計測装置の構成を概略的に示すである。
【
図4】試料から放射されるβ線のエネルギーのスペクトルを示す図である。
【
図5】従来のスペクトル解析の過程を示す図である。
【
図6】従来の放射性ストロンチウム計測方法の処理を示すフローチャートである。
【
図7】放射性ストロンチウム計測方法の処理を示すフローチャートである。
【
図8】第1試料を洗浄する洗浄装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態に係る放射性ストロンチウム計測装置、放射性ストロンチウム計測方法、及びプログラムについて説明する。
【0027】
本発明の実施形態に係る放射性ストロンチウム計測装置は、使用済み核燃料等から単離されたストロンチウム(以下、適宜Srと略す)の試料から放射される放射線を計測する装置である。放射性ストロンチウム計測装置は、計測結果に基づいて試料に含まれる核種毎に放射能量を算出する。以下、放射性ストロンチウム計測装置の概略的な構成について説明する。
【0028】
原子力設備において、使用済み核燃料が採取された後、ストロンチウム試料が湿式法や乾式法等の手法に基づいて単離され、ストロンチウム試料を含む水溶液が生成される。Srは、β崩壊する放射性核種を含んでいる。試料には、放射性核種のSr-90と、放射性同位体のSr-89が含まれている。単離されたSrのうち、Sr-90からはイットリウム90(Y-90)が生成される。放射能測定では、正確を期するため、試料に含まれるY-90を一旦、完全に除去するスカベンジング操作が行われる。スカベンジング操作を終了した際に、時刻が記録される。
【0029】
試料を含む水溶液において、スカベンジング操作の後、時間経過に従ってSr-90がベータ崩壊してY-90が生成される。従って、試料は、放射性のSr-90と、放射性同位体のSr-89と、Y-90とを含んでいる。試料中のSr-90、Y-90、Sr-89は、それぞれβ線を放出している。試料が含まれる水溶液は、2つのバイアル瓶B1,B2に同量に分けられる。水溶液は、第1容器B1に所定量が注入され、後述のように第1試料S1が形成される。水溶液は、第1容器B1に注入された所定量と同量が第2容器B2に注入され第2試料S2が形成される。
【0030】
図1に示されるように、第1容器B1には、プラスチックシンチレータペレットPが瓶口まで充填されている。プラスチックシンチレータペレットPは、放射線が透過した際にプラスチックシンチレーション発光する。プラスチックシンチレータペレットPは、樹脂製の球状や円柱状のペレットに形成されている。第1容器B1には、スカベンジング操作後のストロンチウム試料を含む水溶液が注入される。
【0031】
図2に示されるように、水溶液が注入された第1容器B1は、凍結乾燥機100に入れられ、第1容器B1に含まれる水溶液が凍結乾燥される。凍結乾燥機100は、例えば、真空乾燥機101と、真空乾燥機101の内部に設けられた凍結装置110とを備える。真空乾燥機101は、例えば、内部に内部空間Sが形成された真空容器本体102と、真空容器本体12の上部の開口を密閉して閉じ、内部空間Sを密閉する蓋部103と、内部空間S内の空気を吸引し内部空間S内を略真空状態にする真空ポンプ105と、を備える。
【0032】
凍結装置110は、例えば、第1容器B1等の凍結対象物を収容すると共に、冷却して内容物を凍結させる。凍結装置110は、第1容器B1を収容する収容部Tを有し、収容部T内をペルチェ素子等の冷却デバイスを用いて冷却する。
【0033】
第1試料S1は、凍結装置110の収容部Tに載置される。その後、真空容器本体102に蓋部103が取り付けられ、内部空間Sが密閉される。その後、凍結装置110が稼働して第1試料S1が冷却され、試料を含む水溶液が冷凍される。第1試料S1の冷凍後、真空ポンプ105を稼働させることにより、凍結した水溶液中の水分が昇華し、水溶液中のストロンチウムが析出し、プラスチックシンチレータペレットPの表面に付着する。
【0034】
これにより、表面にストロンチウム試料の粒子が付着したプラスチックシンチレータペレットPを有する第1試料S1が生成される。凍結乾燥機100は、ストロンチウム試料を含む水溶液を凍結乾燥し、ストロンチウム試料の粒子をプラスチックシンチレータペレットPの表面に吸着させ第1試料S1を生成する。第1試料S1は、試料の粒子が放射線を放射する毎にプラスチックシンチレーションの発光が観測される。
【0035】
第2試料S2は、試料が放射線を放射する毎に水溶液がチェレンコフ光により発光する。第2試料S2においてSr-90は、Sr-89及びY-90に比べβ線エネルギーが小さいため、チェレンコフ光の発光が微弱である。第2試料S2において、主にSr-89、Y-90から放射される放射線によりチェレンコフ光が観測される。
【0036】
図3に示されるように、第1試料S1及び第2試料S2は、放射性ストロンチウム計測装置1により放射能が計測される。放射性ストロンチウム計測装置1は、例えば、放射性核種を含む試料Sのβ線を計測する計測部2と、計測結果に基づいて放射能量を算出する演算装置10とを備える。
【0037】
放射性ストロンチウム計測装置1は、例えば、特許文献1に記載された一般的な液体シンチレーションカウンタの構成と基本的に同様に構成されている。放射性ストロンチウム計測装置1は、特許文献1に記載された装置に比して、後述のように演算装置10における演算処理が異なっている。
【0038】
計測部2は、例えば、第1試料S1及び第2試料S2等の計測対象に含まれる放射性核種の放射能量を計測する。計測部2は、鉛等の放射線を遮蔽する計測室3が設けられている。計測室3の内部には、試料が配置される。計測部2は、計測対象が第1試料S1である場合、第1試料S1から放射される放射線に基づくプラスチックシンチレーションの発光を第1計測する。計測部2は、計測対象が第2試料S2である場合、ストロンチウム試料を第1試料S1と同量に含有する水溶液である第2試料S2から放射される放射線に基づくチェレンコフ光を第2計測する。
【0039】
計測室3の両側には、試料の発光を検出する一対の光電子倍増管4(PMT)が対向して配置されている。一対の光電子倍増管4は、試料Sの発光を電気的に倍増したパルス状の電気信号を演算装置10側に出力する。
【0040】
演算装置10は、例えば、一対の光電子倍増管4に接続された同時計数回路11と、一対の光電子倍増管4に接続されたパルス加算回路12と、同時計数回路11とパルス加算回路12とに接続されたゲート回路13と、ゲート回路13に接続されたMCA14と、MCA14に接続された演算部15と、演算部15の演算結果を出力する表示部16と、演算部15に情報を入力する入力部17と、を備える。
【0041】
一対の光電子倍増管4は、同時計数回路11及びパルス加算回路12に同時に電気信号を出力する。同時計数回路11は、一対の光電子倍増管4から出力された電気信号が同時に入力された場合にゲート信号を後述のゲート回路13に出力する。パルス加算回路12は、一対の光電子倍増管4から出力された一対の電気信号を加算した単一のパルス信号を後述のゲート回路13に出力する。
【0042】
ゲート回路13は、同時計数回路11から出力されたゲート信号が入力された場合に加算パルス信号を通過させ、後述のMCA14に出力する。これにより、宇宙放射線や自然放射線によりカウントされる計数を排除することができる。MCA14(マルチチャンネルアナライザ)は、入力した加算パルス信号の大きさ(エネルギー値)毎に加算し、エネルギースペクトルの分布を記録し(
図4参照)演算部15に出力する。演算部15、入力部16、及び表示部17は、例えば、パーソナルコンピュータ等の計算可能な装置により構成されている。
【0043】
演算部15は、MCA14が記録したエネルギースペクトルの分布に基づいて、試料から放射されるβ線のエネルギーのスペクトルをβ線スペクトロメトリにより算出する。演算部15は、記録されたエネルギースペクトルの分布に基づいて、後述の様に最小二乗法近似によりSr-90、Sr-89およびY-90の単独スペクトルに分解し、第1試料S1のプラスチックシンチレーションの発光の計測結果に基づいてSr-90放射能量を算出すると共に、第2試料S2のチェレンコフ光の計測結果に基づいてSr-89放射能量を算出する。演算部15のβ線スペクトロメトリの演算処理の詳細内容は後述する。演算部15は、算出結果を表示部14に表示する。
【0044】
表示部16は、演算部15の演算結果が出力されるディスプレイ装置である。表示部16は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等の表示装置である。表示部16は、パーソナルコンピュータ、タブレット型端末、スマートフォン等により別体に構成されていてもよい。
【0045】
演算装置10は、この他、演算に必要なデータを記憶する記憶部(不図示)を備える。記憶部は、演算部15の演算に必要なプログラムや各種データが記憶されている。記憶部14は、例えば、RAM、ROM、HDD、フラッシュメモリなどの記憶媒体によって実現される。
【0046】
次に、演算部15において実行される、β線スペクトロメトリに基づく核種の放射能量の算出方法について説明する。
【0047】
図4には、計測されたβ線の計数に基づいてMCA14が記録したβ線のエネルギーのスペクトルが示されている。試料Sから放射されるβ線のエネルギーのスペクトルは、複数の核種Sr-90、Sr-89、Y-90から放射されるβ線の合計値である。複数の核種Sr-90、Sr-89、Y-90の放射能量を個別に算出するために、β線スペクトロメトリが用いられる。
【0048】
図5には、β線のエネルギーのスペクトルを5つのフラクションに分割した図が示されている。各フラクションには、Sr-90、Sr-89、Y-90の3核種のカウントの割合が示されている。従来の放射性ストロンチウム計測方法では、1から5の各フラクションにおける3核種の割合は、以下の式(1)に基づく最小二乗法により算出している。式(1)において、Sを最小とするXiを求める。
【数1】
但し
【数2】
である。
【0049】
第1試料S1におけるプラスチックシンチレーション発光では、Sr-90、Sr-89、Y-90から放射される放射線が計測される。演算部15は、計測部2の出力値に基づいて第1試料S1の計数を算出する。演算部15はβ線のエネルギーのスペクトルを算出する。演算部15は、解析結果に基づいて第1試料S1におけるSr-90の放射能量(濃度)を個別に算出する。このとき、演算部15は、計測値に基づいて、β線のエネルギーのスペクトルを最小二乗法近似により解析し、Sr-90の単独のスペクトルに分解した後、Sr-90の単独の放射能量を算出する。
【0050】
演算部15は、算出結果に基づいてストロンチウム試料の精製後の経過時間に基づいてY-90の放射能量をSr-90の関数として算出する。演算部15は、算出したSr-90の単独の放射能量と、Sr-90の関数として算出されたY-90の単独の放射能量との合計値を、試料SにおけるSr-90及びY-90から放射されるβ線の計数の合計値となる第1計数に換算して算出する。演算部15は、第1計数からY-90計数を差し引き、Sr-90計数を算出する。演算部15は、Sr-90計数に基づいて、Sr-90の単独の放射能量を算出する。
【0051】
第2試料S2におけるチェレンコフ光の計測では、Sr-90のβ線が弱いため、Sr-89、Y-90から放射される放射線が計測される。演算部15は、計測部2の出力値に基づいて第2試料S2の第2計数を算出する。演算部15はβ線のエネルギーのスペクトルを算出する。演算部15は、解析結果に基づいて第2試料S2におけるSr-89の放射能量(濃度)を個別に算出する。このとき、演算部15は、計測値に基づいて、β線のエネルギーのスペクトルを最小二乗法近似により解析し、Sr-89の単独のスペクトルに分解する。演算部15は、ストロンチウム試料の精製後の経過時間に基づいて算出したSr-90計数を第2計数から差し引き、Sr-89計数を算出する。演算部15は、Sr-89計数に基づいて、Sr-89の単独の放射能量を算出する。
【0052】
図6には、従来の放射性ストロンチウム計測装置を用いた放射性ストロンチウム計測方法の各工程が示されている。放射性ストロンチウム計測装置を用いてスカベンジング操作後の水溶液試料から放射されるβ線に基づくチェレンコフ光をシンチレーション発光に基づいて1回目の計測を行う(ステップS100)。水溶液試料のチェレンコフ光の1回目の計測結果に基づいて、水溶液試料のβ線のエネルギースペクトルを解析する(ステップS102)。β線のエネルギースペクトルに基づいて、β線スペクトロメトリを用いてSr-89量とY-90量を算出する(ステップS104)。
【0053】
1週間程度水溶液試料を放置する(ステップS106)。放射性ストロンチウム計測装置を用いて1週間程度の時間経過後の水溶液試料から放射されるβ線に基づくチェレンコフ光をシンチレーション発光に基づいて2回目の計測を行う(ステップS108)。水溶液試料のチェレンコフ光の2回目の計測結果に基づいて、水溶液試料のβ線のエネルギースペクトルを解析する(ステップS110)。Sr-89とY-90とのβ線のエネルギースペクトルに基づいて、β線スペクトロメトリを用いてY-90量を算出する(ステップS112)。
【0054】
Sr-90は,1回目の計測時のY-90量に対する2回目のY-90量の増加量に基づいて、Sr-90量を算出する(ステップS114)。算出結果に基づいて、試料に含まれるSr-89、Sr-90、Y-90の放射能量を個別に算出する(ステップS116)。この手法によれば、上記の通りSr-89量がSr-90量に比べ、例えば1/5程度以下となる場合は、検出下限値がSr-90に比して大きくなる場合がある。また、この手法によれば、Y-90が生成されるまで数日を要する。
【0055】
図7には、実施形態に係る放射性ストロンチウム計測装置1を用いた放射性ストロンチウム計測方法の各工程が示されている。先ず、計測前の準備段階として、使用済み核燃料からストロンチウム試料を取り出す。その後、ストロンチウム試料を含む水溶液を生成する。水溶液中のストロンチウム試料にスカベンジング操作を行い、ストロンチウム試料を単離する(ステップS200)。単離したストロンチウム試料を含む水溶液を生成する(ステップS201)。プラスチックシンチレータペレットが充填されたバイアル瓶B1(第1容器)に所定量の水溶液を注入する(ステップS202)。
【0056】
凍結乾燥機100を用いて第1容器に含まれる水溶液を凍結乾燥してストロンチウム試料の粒子が表面に付着したプラスチックシンチレータペレットを有する第1試料S1を形成する(ステップS203)。計測部2により第1試料S1のプラスチックシンチレーションの発光を第1計測する(ステップS204)。演算装置10は、第1計測されたプラスチックシンチレーションの発光の強度の分布に基づいて、プラスチックシンチレーションの発光スペクトルを算出する(ステップS205)。演算部15は、プラスチックシンチレーションの発光スペクトルに基づいて、β線スペクトロメトリを行い、Sr-90計数(量)を算出する(ステップS206)。演算部15は、算出結果に基づいて第1試料S1中に含まれるSr-90放射能量を第1算出する(ステップS207)。
【0057】
バイアル瓶B1に注入された所定量と同量の水溶液がバイアル瓶B2(第2容器)に注入し、第2試料S2を生成する(ステップS208)。計測部2により第2試料S2のチェレンコフ光の発光を第2計測する(ステップS209)。演算部15は、第2計測されたチェレンコフ光の発光の強度の分布に基づいて、チェレンコフ光の発光スペクトルを算出する(ステップS210)。演算部15は、チェレンコフ光の発光スペクトルに基づいて、β線スペクトロメトリを行い、Sr-89計数(量)を算出する(ステップS211)。
【0058】
演算部15は、算出結果に基づいて第2試料S2中に含まれるSr-89放射能量を第2算出する(ステップS212)。演算部15は、第1算出結果と第2算出結果に基づいてストロンチウム試料のSr-90放射能量及びSr-89放射能量を算出する(ステップS213)。
【0059】
計測終了後の第1試料S1は、洗浄装置200を用いてバイアル瓶B1、プラスチックシンチレータペレットPが洗浄される。洗浄後、バイアル瓶B1とプラスチックシンチレータペレットPは、再利用される。
【0060】
図8に示されるように、第1試料Sは、洗浄装置200に設けられた回収容器201において、プラスチックシンチレータペレットPが回収される。回収容器201には、洗浄部203が設けられている。洗浄部203は、洗浄水を供給し、回収容器201中のプラスチックシンチレータペレットPを洗浄する。洗浄水は、回収容器201の排水管(不図示)を経由して下方に設けられた廃液回収部202に回収される。洗浄の過程で、プラスチックシンチレータペレットPの表面に吸着したストロンチウム試料の粒子が除去される。
【0061】
洗浄後のプラスチックシンチレータペレットPは、回収容器201と一体又は別体に設けられた乾燥部204により乾燥される。上記と同様の工程により、洗浄装置200を用いて第1試料Sのバイアル瓶B1も洗浄され、乾燥される。乾燥後のプラスチックシンチレータペレットP及びバイアル瓶B1は、第1試料S1の生成のために再利用される。
【0062】
再利用されたプラスチックシンチレータペレットPは、所定の回数使用された後、廃棄される。上記の通り、プラスチックシンチレータペレットPを用いた放射能の測定は、有機溶媒を含む液体シンチレータを用いないため、分析済み試料の処分に際し環境への負荷を低減できる。また、洗浄装置200を用いてプラスチックシンチレータペレットPを繰り返し使用可能であるため、計測に関するコストを低減することができる。
【0063】
上述したように、放射性ストロンチウム計測装置1によれば、従来の放射性ストロンチウム計測装置の構成を変更することなく、演算手法を変更することで実現することができる。放射性ストロンチウム計測装置1によれば、従来の液体シンチレータを用いた計測に比して、Sr-90の娘核種のY-90の生成を待つことなく2~3日程度の短期間にSr-90放射能量及びSr-89放射能量を測定できる。放射性ストロンチウム計測装置1によれば、第1試料S1に含まれる放射性Sr量を計測する場合、プラスチックシンチレータペレットPからの発光スペクトルを利用することにより2~3日以内にSr-90放射能量を計測できる。
【0064】
また、放射性ストロンチウム計測装置1によれば、第2試料S2のチェレンコフ光スペクトルを利用することにより、Sr-90放射能量の影響を受けずに、Sr-89放射能量を単独に測定できる。放射性ストロンチウム計測装置1によれば、第2試料S2のチェレンコフ光によるスペクトルの計測においては、Sr-90放射能の最大β線エネルギーによるチェレンコフ発光領域を避けることにより、Sr-90放射能による影響を低減し、Sr-89に基づくチェレンコフ光を計測し、Sr-89の放射能量を計測することができる。放射性ストロンチウム計測装置1によれば、Sr-89がSr-90に比べ小さい場合においても、Sr-89放射能量の検出精度を向上することができる。
【0065】
放射性ストロンチウム計測装置1によれば、第1試料S1の計測において、プラスチックシンチレータペレットPを洗浄して繰り返し使用するため、分析済み試料廃棄時の環境負荷を低減できる。放射性ストロンチウム計測装置1によれば、第2試料S2の計測において、通常の液体シンチレーションカウンタで使用される有機溶媒を含む液体シンチレータを用いないため、分析済み試料の処分に際し環境への負荷を低減できる。
【0066】
上述した演算部15は、例えば、CPUなどのプロセッサが、記憶部に記憶されたプログラム(ソフトウェア)を実行することで実現される。演算部15における演算処理の各工程は、演算装置10にインストールされたプログラムを実行することにより処理される。また、これらの構成要素の機能のうち一部または全部は、LSIやASIC、FPGA、GPU等のハードウェア(回路部:circuitryを含む)によって実現されていてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されていてもよい。プログラムは、予めHDDやフラッシュメモリなどの記憶装置に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることでインストールされてもよい。
【0067】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0068】
1 放射性ストロンチウム計測装置
2 計測部
4 光電子倍増管
15 演算部
100 凍結乾燥機
200 洗浄装置
B1 第1容器
B2 第2容器
P プラスチックシンチレータペレット
S 第1試料
S1 第1試料
S2 第2試料