(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131792
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】傘
(51)【国際特許分類】
A45B 25/02 20060101AFI20230914BHJP
【FI】
A45B25/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022036744
(22)【出願日】2022-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】503378420
【氏名又は名称】日鉄ステンレス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】弁理士法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】小山 謙一
(72)【発明者】
【氏名】加賀 祐司
【テーマコード(参考)】
3B104
【Fターム(参考)】
3B104AA06
3B104UA03
(57)【要約】
【課題】たわみ量を減少させて、強度を向上させた傘を提供する。
【解決手段】一の方向に延びる中棒と、中棒の一端部に固定された上ろくろと、中棒の側方に放射状に延びるように上ろくろに接続された複数の親骨2と、親骨2に貼り付けられた傘生地6と、一の方向に沿って、中棒の他端部と上ろくろとの間で移動自在に設けられた下ろくろと、親骨と下ろくろとを接続した複数の受骨と、を備える傘であって、親骨2は、延伸方向に直交する断面において、底部23と縦壁部21、22とを有し、縦壁部21、22が傘生地6側にある。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一の方向に延びる中棒と、
前記中棒の一端部に固定された上ろくろと、
前記中棒の側方に放射状に延びるように上ろくろに接続された複数の親骨と、
前記親骨に貼り付けられた傘生地と、
前記一の方向に沿って、前記中棒の他端部と前記上ろくろとの間で移動自在に設けられた下ろくろと、
前記親骨と前記下ろくろとを接続した複数の受骨と、
を備える傘であって、
前記親骨は、延伸方向に直交する断面において、底部と縦壁部とを有し、前記縦壁部が前記傘生地側にある、傘。
【請求項2】
前記親骨が、前記断面において、前記傘生地側に開いた開口を有する、請求項1に記載の傘。
【請求項3】
前記底部が、前記開口側に突出した凸部を備える、請求項2に記載の傘。
【請求項4】
前記凸部の高さが、0.2mm以上であり、前記縦壁部の開放端面以下である、請求項3に記載の傘。
【請求項5】
前記開口が、前記断面において、幅0.5mm以上13.0mm以下の開口である、請求項2から請求項4の何れか一つに記載の傘。
【請求項6】
前記親骨の板厚が、0.15mm以上0.4mm以下である、請求項2から請求項5までの何れか一つかに記載の傘。
【請求項7】
前記底部の下面と、前記縦壁部の開放端面との垂直距離が、2.0mm以上5.0mm以下である、請求項1から請求項6までの何れか一つに記載の傘。
【請求項8】
前記中棒および前記受骨が、ステンレス鋼板で構成された、請求項1または請求項7の何れか一つに記載の傘。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、傘に関する。
【背景技術】
【0002】
傘は、雨、雪または日光などを防ぐために、人が手に持ったり、地面に設置したりして使用される。傘は、中棒に複数の親骨が支持され、その複数の親骨に傘生地が貼り合わされた構造である。これまでに、傘の軽量化または強度向上を実現するため、様々な提案がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、軽量化を達成する傘の構造が開示されている。一般的に、傘には、親骨を支える受骨を中棒に纏める下ろくろと呼ばれる部品がある。傘は、その下ろくろが、中棒に組み込まれたハジキと呼ばれるパーツに固定されることで、閉じた状態となる。特許文献1では、この下ろくろを、磁力により固定する構造とすることで、ハジキを不要とし、軽量化を達成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されている傘の構造により、傘の軽量化が可能となる。しかしながら、傘は、強風に煽られると、傘生地が貼られた親骨が折れ、使い物にならなくなるおそれがあるため、傘には強度も求められる。特許文献1に開示された構造では、傘の強度を向上させることができない。そこで、本発明者は、親骨のたわみ量を減少させることで、傘の強度を向上させることができる構造を見出した。
【0006】
本発明の目的の一つは、たわみ量を減少させて、強度を向上させた傘を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面における傘は、
一の方向に延びる中棒と、
前記中棒の一端部に固定された上ろくろと、
前記中棒の側方に放射状に延びるように上ろくろに接続された複数の親骨と、
前記親骨に貼り付けられた傘生地と、
前記一の方向に沿って、前記中棒の他端部と前記上ろくろとの間で移動自在に設けられた下ろくろと、
前記親骨と前記下ろくろとを接続した複数の受骨と、
を備える傘であって、
前記親骨は、延伸方向に直交する断面において、底部と縦壁部とを有し、前記縦壁部が前記傘生地側にある。
【発明の効果】
【0008】
この構成によると、たわみ量を減少させて、強度を向上させた傘を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】
図2は、親骨と受骨との接続部分を示す図である。
【
図3】
図3は、
図2のIII-III線における断面図である。
【
図4】
図4は、傘生地側に開口させた親骨のたわみ量が減少する理由を説明するための図である。
【
図6】
図6は、縦壁部を傘生地側にした親骨のたわみ量が減少することを確認するために行った試験の結果を示す図である。
【
図7】
図7は、親骨のサイズを説明するための図である。
【
図8】
図8は、板厚を変化させたときの親骨のたわみ比率の変化を示す図である。
【
図9】
図9は、断面がU字形状の親骨の開口幅W、または、深さH
1を変化させたときの親骨のたわみ比率の変化を示す図である。
【
図10】
図10は、断面がU字形状の親骨の開口幅W、または、深さH
1を変化させたときの親骨のたわみ比率の変化を示す図である。
【
図11】
図11は、断面がU字形状の親骨の開口幅W、または、深さH
1を変化させたときの親骨のたわみ比率の変化を示す図である。
【
図12】
図12は、断面がU字形状の親骨の開口幅W、または、深さH
1を変化させたときの親骨のたわみ比率の変化を示す図である。
【
図13】
図13は、断面がU字形状の親骨の開口幅W、または、深さH
1を変化させたときの親骨のたわみ比率の変化を示す図である。
【
図14】
図14は、断面がU字形状の親骨の開口幅W、または、深さH
1を変化させたときの親骨のたわみ比率の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本実施形態の傘10を示す図である。
図1は、傘10が開いた状態を示す。また、
図1では、傘10の骨組みが視認できるように、傘生地6の一部を省略している。
【0011】
傘10は、中棒1と、親骨2と、受骨3と、上ろくろ4と、下ろくろ5と、傘生地6とを備えている。
【0012】
中棒1は一の方向に延びた長尺状である。中棒1の一端部には石突き1Aが設けられ、他端部には手元(ハンドルとも言う)1Bが設けられている。本実施形態では、石突き1Aが設けられている一端部は上端部とし、他端部は下端部とする。
【0013】
中棒1の上端部には上ろくろ4が固定されている。上ろくろ4は、複数の親骨2の一端部を支持している。複数の親骨2は、中棒1の延伸方向の上方から見て、中棒1の側方に放射状に延びている。後に詳述するが、親骨2は、親骨2の延伸方向に直交する断面において、底部と縦壁部とを有し、その縦壁部が傘生地6側に位置するように上ろくろ4に支持されている。
【0014】
複数の親骨2には傘生地6が貼り付けられている。傘生地6は、傘10が開いた状態において親骨2の上方に位置するように、親骨2に貼り付けられる。
【0015】
中棒1には、その下端部(詳しくは、手元1B)と上ろくろ4との間に、下ろくろ5が設けられている。下ろくろ5は、中棒1の外周面に沿って、手元1Bと上ろくろ4との間で移動自在に設けられている。
【0016】
複数の受骨3それぞれは、一端部が複数の親骨2それぞれに接続されている。複数の受骨3それぞれは、後述の
図2および
図3で説明するダボにより接続されている。また、複数の受骨3それぞれは、他端部が下ろくろ5で支持されている。複数の受骨3は、下ろくろ5が手元1B側に移動すると、親骨2を引っ張り、傘10が閉じた状態となる。また、複数の受骨3は、下ろくろ5が上ろくろ4側に移動すると、親骨2を押し広げて、傘10が開いた状態となる。
【0017】
下ろくろ5は、図示しないが、中棒1の上ろくろ4側に設けられた上はじき、または、中棒1の手元1B側に設けられた下はじきで、保持されるようになっている。下ろくろ5は、傘10を開いた状態にする場合には上はじきに保持され、傘10を閉じた状態にする場合には下はじきに保持される。
【0018】
なお、
図1では、傘10は、長傘として説明したが、折り畳み傘であってもよい。
【0019】
次に、親骨2の形状と、その親骨2に受骨3を接続するためのダボの形状について説明する。
【0020】
図2は、親骨2と受骨3との接続部分を示す図である。
図3は、
図2のIII-III線における断面図である。
【0021】
図3に示すように、親骨2は、縦壁部21、縦壁部22および底部23を有している。親骨2は、親骨2の延伸方向から見て、縦壁部21、22が底部23の両端部に設けられて形成され、開口を有した溝型となっている。また、親骨2の底部23は、開口側に突出した凸部23Aを有している。この構成の親骨2の延伸方向に直交する断面はW字形状となっている。親骨2は、縦壁部21、22が傘生地6側となるように、すなわち、開口が傘生地6側となるように、上ろくろ4に支持されている。
【0022】
従来の傘の親骨は、その断面が一方向に開口したU字状又は凹状の溝型であり、傘生地とは反対側へ開口するよう上ろくろに支持されている。これに対し、本実施形態の親骨2は、傘生地6側に開口するよう上ろくろに支持されている。この場合、従来の傘の親骨と比べて、親骨2のたわみ量は減少する。その結果、傘10の強度が向上する。また、親骨2のたわみ量を減少させることができるため、親骨2の板厚を薄くでき、それに伴い、傘10の軽量化を実現することができる。
【0023】
図4は、傘生地6側に開口させた親骨2のたわみ量が減少する理由を説明するための図である。
図4(A)は、傘生地6と反対側に親骨2を開口させた、従来の傘の構造を示す図であり、
図4(B)は、傘生地6側に親骨を開口させた、本実施形態の構造を示す図である。
図4の矢印は、雨または風などにより傘生地6にかかる負荷を示し、
図4の斜線部分は、親骨2において、傘生地6を介して負荷がかかる部分を示す。
【0024】
従来、
図4(A)のように、傘生地6と反対側に親骨を開口させることで、親骨のたわみ量は小さく、傘の強度は向上するものと考えられていた。しかしながら、本発明者が行った試験によると、
図4(B)のように、傘生地6側に親骨を開口させた方が、親骨のたわみ量がより小さくなり、傘の強度もより向上することが分かった。その理由としては、
図4(A)の場合、底部23の板厚が薄く、その底部23の斜線領域の中央部分に負荷がかかり、たわみ量が大きくなる。一方、
図4(B)の場合、板厚よりも長い縦壁部21、22に負荷がかかるため、たわみ量が小さくなる。換言すれば、傘生地6と反対側に開口させた構造の場合、
図4(A)の斜線部分で示すように、親骨2の板厚に相当する長さの金属板で負荷を受けることになると言える。これに対し、傘生地6側に開口させた構造の場合、
図4(B)の斜線部分で示すように、親骨2の深さに相当する長さの金属板で負荷を受けることになると言える。つまり、
図4(B)の縦壁部21、22の断面係数は、
図4(A)の底部23の断面係数よりも大きくなる。このため、
図4(B)の場合の方が、
図4(A)の場合よりも、負荷を受けたときのたわみ量は小さい。この結果、親骨2の縦壁部21、22を傘生地6側に位置させることで、親骨2のたわみが減少し、傘10の強度は向上するようになる。
【0025】
図2および
図3に戻る。ダボ7は、親骨2と受骨3とを接続するための部材である。ダボ7は、その断面が、一方向に開口した溝型であって、溝底部の略中央部が開口と反対側へ突出している。以下、ダボ7の溝底部で開口と反対側に突出した部分は凸部7Aと言う。ダボ7は、親骨2の溝底部側に配置される。このとき、ダボ7は、凸部7Aが、親骨2の凸部23Aによって親骨2の溝底部裏側に形成される空間に位置するように、配置される。そして、親骨2とダボ7とは、溶接8により固定される。ダボ7は、支持部7Bを支点に回転動可能に受骨3を支持している。
【0026】
以上のように、従来の親骨は、底部を傘生地側にして、傘生地側とは反対側に開口させていた。これに対し、本実施形態の親骨2は、縦壁部21、22を傘生地6側にして傘生地6側に開口させている。この構成とすることで、親骨2のたわみ量を減少させることができ、傘10の強度を向上させることができる。
【0027】
なお、本実施形態では、親骨2は、縦壁部21、22と底部23とを備え、その延伸方向に直交する断面がW字形状としたものとして説明しているが、これに限定されない。
【0028】
図5は、親骨2の別の形状を示す図である。親骨2は、その断面において、縦壁部21,22と底部23とからなる構成であればよい。例えば、親骨2は、その延伸方向に直交する断面がU字形状(
図5(A))、U字が角張った形状(
図5(B))、V字形状(
図5(C))、または、L字形状(
図5(D))としたものであってもよい。これら何れの場合であっても、傘10は、親骨2の縦壁部が傘生地6側に位置するように、親骨2を支持する構成となる。これらの場合も、
図4での説明と同様、底部よりも厚い縦壁部で傘生地からの負荷を受けることになるため、親骨のたわみ量が小さく、傘10の強度は向上する。
【0029】
なお、
図5(A)~
図5(C)に示す形状の親骨は、2つの縦壁部21、22で傘生地6を支えるのに対し、
図5(D)に示す形状の親骨は、1つの縦壁部21で傘生地6を支えている。このため、傘生地6から負荷を受けたときの親骨のたわみ量は、
図5(A)~
図5(C)に示す形状の方が
図5(D)の形状よりも小さい。また、
図5(A)および
図5(B)に示す形状の親骨は、2つの縦壁部21、22が傘生地6に対して略垂直であるのに対し、
図5(C)に示す形状の親骨は、2つの縦壁部21、22が傘生地6に対して傾斜している。このため、
図5(A)および
図5(B)に示す形状の親骨の縦壁部21、22は、傘生地6からの負荷をほぼ直線状に受けることになるため、
図5(A)および
図5(B)に示す形状の親骨は、
図5(C)の形状の親骨に比べてたわみ量は小さい。
【0030】
また、
図5(A)および
図5(B)の形状の親骨において、親骨の高さ(底部23から縦壁部21、22の開口側端部までの距離)を高くすると、親骨のたわみ量は小さくなる。さらに、
図5(A)および
図5(B)の形状の親骨は、他の形状の親骨に比べて加工性に優れている。また、
図5(A)の形状の親骨は、その底部23の幅が、
図5(B)の幅よりも小さいため、
図5(A)の形状の親骨は、
図5(B)の形状の親骨よりも軽量化が可能となる。
【0031】
また、
図5(C)の形状の親骨は、
図5(A)および
図5(B)と同様、その高さを高くすると、そのたわみ量は小さくなる。さらに、
図5(C)の形状の親骨は、縦壁部21、22の傾斜角度(
図5(C)に示す角度θ)が45°以上であることが、そのたわみ量を小さくできることで好ましい。
【0032】
さらに、
図5(D)の形状の親骨は、底部23に対する縦壁部21の角度が90°±5°とすることが好ましい。上記角度とすることで、親骨と傘生地6との接触不備を回避でき、親骨のたわみ量が大きくならないようにすることができる。
【0033】
なお、親骨2を
図5(A)~
図5(D)に示す形状とした場合、親骨2に固定するダボは、親骨2の形状に合わせて適宜設計変更され、溶接、カシメ、ロウ付け、またはリベットなどで固定される。また、
図5(A)~
図5(C)の形状の親骨は、
図5(D)の形状の親骨との対比において、ダボが取り付けやすい。
【0034】
図6は、普通鋼(SS)およびアルミニウム合金板それぞれで構成された親骨2において、縦壁部21、22の傘生地6に対する位置によるたわみ量の変化を確認するために行った試験の結果を示す図である。
図6では、親骨2は、その延伸方向に直交する断面がU字形状であって、傘生地6側に開口している。また、たわみ比率とは、従来の一般的な傘の親骨の構造、具体的には、傘生地とは反対側に開口したU字状(または凹状)の親骨のたわみ量に対する比率である。つまり、たわみ比率が1.0未満であれば、従来の傘と比べてたわみ量は減少している、すなわち、傘の強度は向上していることを意味する。なお、
図6において、アルミニウム合金版のたわみ比率は、アルミニウム合金版を材料とした、従来の親骨のたわみ量に対する比率である。また、普通鋼版のたわみ比率は、普通鋼版を材料とした、従来の親骨のたわみ量に対する比率である。
【0035】
図6に示すように、普通鋼板(SS)およびアルミニウム合金板のいずれも場合においても、親骨2の縦壁部21、22を傘生地6側に位置させることで、たわみ比率は、1.0を下回ることが分かる。親骨2が普通鋼板(SS)である場合には、たわみ比率は約1/2、親骨2がアルミニウム合金板である場合には、たわみ比率は約1/3に減少している。このように、いずれの素材を用いた場合でも、親骨2の縦壁部21、22を傘生地6側に位置させることで、親骨2のたわみ量を減少させて、傘10の強度を向上させることができる。
【0036】
なお、中棒1、親骨2および受骨3の材料としては、金属板、合金板、鋼板など、より具体的には、アルミニウム合金板、普通鋼板(SS)、または、ステンレス鋼板などが挙げられる。特に、中棒1、親骨2および受骨3の材料としてはステンレス鋼板が好ましく、親骨2および受骨3は、オーステナイト系ステンレス鋼板(例えば、JIS規格のSUS301)とすることが好ましい。また、中棒1は、フェライト系ステンレス鋼板(例えば、日鉄ステンレス(株)製NSSCFW1)を材料とすることが好ましい。また、この場合、親骨2は、板厚0.15mm以上0.4mm以下であるステンレス鋼板で構成されることが好ましい。
【0037】
中棒1、親骨2および受骨3の材料としてステンレス鋼板を用いることで、傘10は、リサイクルが可能となるため、環境に配慮した製品とすることができる。
【0038】
次に、断面がW字形状である親骨2の好適なサイズについて説明する。
【0039】
図7は、親骨2のサイズを説明するための図である。
図7に示すように、親骨2を構成するステンレス鋼板の板厚をt、溝型の親骨2の開口幅をW、溝の深さをH
1、W字の開口側に突出した凸部23Aの高さをH
2、でそれぞれ表す。溝の深さをH
1は、底部の下面から、縦壁部の開放端側の面までの垂直距離である。なお、開口幅W、深さH
1、および、高さH
2それぞれは、板厚tを含んでいる。
【0040】
この場合において、親骨2の板厚tは、十分な強度を付与するために0.15mm以上であることが好ましく、傘重量低減のためには0.4mm以下であることが好ましい。また、親骨2のたわみ比率を1.0未満とするために、親骨2の開口幅Wは、2.0mm以上13.0mm以下であることが好ましく、親骨2の溝の深さH1は、2.0mm以上5.0mm以下であることが好ましい。さらに、親骨2の捻じれ強度を強くし、親骨2にダボ7を固定し易くするために、底部23に凸部23Aを設けることが好ましく、その凸部23Aの高さH2は、ダボ7の固定強度を担保するために、その下限値が0.2mm以上であり、その上限値が親骨2の溝の深さH1以下、本実施形態では5.0mm以下であることが好ましい。
【0041】
親骨2のサイズについて、より詳しくは、親骨2の断面形状がU字形状(
図5(A)参照)であって、親骨2の板厚tが0.15mmである場合、開口幅Wが2.0mm以上13.0mm以下、親骨2の溝の深さH
1が2.0mm以上5.0mm以下であることが好ましい。また、親骨2の板厚tが0.20mmである場合、開口幅Wが2.0mm以上10.0mm以下、親骨2の溝の深さH
1が2.0mm以上5.0mm以下であることが好ましい。親骨2の板厚tが0.25mmである場合、開口幅Wが2.0mm以上9.0mm以下、親骨2の溝の深さH
1が2.0mm以上5.0mm以下であることが好ましい。親骨2の板厚tが0.30mmである場合、開口幅Wが2.0mm以上7.5mm以下、親骨2の溝の深さH
1が2.0mm以上4.0mm以下であることが好ましい。親骨2の板厚tが0.35mmである場合、開口幅Wが2.0mm以上7.0mm以下、親骨2の溝の深さH
1が2.0mm以上4.0mm以下であることが好ましい。親骨2の板厚tが0.40mmである場合、開口幅Wが2.0mm以上6.5mm以下、親骨2の溝の深さH
1が2.0mm以上4.0mm以下であることが好ましい。
【0042】
以下に、断面がW字の親骨2において、板厚tが上記範囲であれば、親骨2のたわみ比率は減少することを確認するために行ったシミュレーションの結果を、以下の
図8に示す。
【0043】
図8は、板厚tを変化させたときの親骨2のたわみ比率の変化を示す図である。
図8の縦軸はたわみ比率、横軸は板厚tを示す。
【0044】
図8の(1)は、親骨2の底部23を傘生地6側として、傘生地6と反対側に開口させた親骨2の開口幅W=3.5mm、深さH
1=3.5mm、高さH
2=0.2mmとして、板厚tを変化させたときのたわみ比率を示す。
図8の(2)は、親骨2の底部23を傘生地6側とて、傘生地6と反対側に開口させた親骨2の開口幅W=3.5mm、深さH
1=3.5mm、高さH
2=0.5mmとして、板厚tを変化させたときのたわみ比率を示す。
図8の(3)は、親骨2の縦壁部21、22を傘生地6側として、傘生地6側に開口させた親骨2の開口幅W=3.5mm、深さH
1=3.5mm、高さH
2=0.2mmとし、板厚tを変化させたときのたわみ比率を示す。すなわち、
図8の(3)の例は、
図8の(1)の例と同じ親骨を開口が逆向きとなるようにした例である。
【0045】
図8の(3)に示すように、板厚tが0.15以上であれば、たわみ比率が1.0以下となる。また、
図8の(3)の場合、
図8の(1)および
図8(2)の場合と比べて、板厚tを小さくしても、たわみ比率を減少させることができる。例えば、板厚tを0.15とした場合、
図8の(1)および
図8(2)ではたわみ比率を1未満とできないのに対し、
図8の(3)では、たわみ比率を1未満とすることができる。つまり、親骨2の縦壁部21、22を傘生地6側に位置させることで、親骨2の板厚をより小さくでき、その結果、傘10の軽量化を実現できる。また、
図8の(1)および
図8(2)を比べると、高さH
2が高いほど、たわみ比率を小さくできることが分かる。
【0046】
以上のように、断面がW字の親骨2の場合を例にとって、親骨のたわみ比率低減効果を説明したが、親骨の形状は上記に限定されない。
【0047】
次に、断面がU字形状の親骨である場合に、板厚t、開口幅W、溝の深さH
1が上記範囲であれば、親骨のたわみ比率は減少することを確認するために行ったシミュレーションの結果を、以下の
図9~
図14に示す。
【0048】
図9~
図14は、断面がU字形状の親骨の開口幅W、または、深さH
1を変化させたときの親骨のたわみ比率の変化を示す図である。
図9~
図14では、開口を傘生地側にした親骨のたわみ比率を示している。
【0049】
図9は、板厚tが0.15mmの場合に、開口幅Wおよび深さH
1を変化させたときの、親骨のたわみ比率の変化を示している。
図9に示すように、深さH
1が2.0mm以上5.0mm以下、開口幅Wが2.0mm以上13.0mm以下であれば、たわみ比率は1.0未満となる。
【0050】
図10は、板厚tが0.2mmの場合に、開口幅Wおよび深さH
1を変化させたときの、親骨のたわみ比率の変化を示している。
図10に示すように、深さH
1が2.0mm以上5.0mm以下、開口幅Wが2.0mm以上10.0mm以下であれば、たわみ比率は1.0未満となる。
【0051】
図11は、板厚tが0.25mmの場合に、開口幅Wおよび深さH
1を変化させたときの、親骨のたわみ比率の変化を示している。
図11に示すように、深さH
1が2.0mm以上5.0mm以下、開口幅Wが2.0mm以上9.0mm以下であれば、たわみ比率は1.0未満となる。
【0052】
図12は、板厚tが0.3mmの場合に、開口幅Wおよび深さH
1を変化させたときの、親骨のたわみ比率の変化を示している。
図12に示すように、深さH
1が2.0mm以上4.0mm以下、開口幅Wが2.0mm以上7.5mm以下であれば、たわみ比率は1.0未満となる。
【0053】
図13は、板厚tが0.35mmの場合に、開口幅Wおよび深さH
1を変化させたときの、親骨のたわみ比率の変化を示している。
図13に示すように、深さH
1が2.0mm以上4.0mm以下、開口幅Wが2.0mm以上7.0mm以下であれば、たわみ比率は1.0未満となる。
【0054】
図14は、板厚tが0.4mmの場合に、開口幅Wおよび深さH
1を変化させたときの、親骨のたわみ比率の変化を示している。
図14に示すように、深さH
1が2.0mm以上4.0mm以下、開口幅Wが2.0mm以上6.5mm以下であれば、たわみ比率は1.0未満となる。
【符号の説明】
【0055】
1 :中棒
1A :石突き
1B :手元
2 :親骨
3 :受骨
6 :傘生地
7 :ダボ
7A :凸部
7B :支持部
8 :溶接
10 :傘
21、22 :縦壁部
23 :底部
23A:凸部