(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131803
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】半潜水浮体式基礎および半潜水浮体式基礎の構築方法
(51)【国際特許分類】
E02D 27/52 20060101AFI20230914BHJP
F03D 13/25 20160101ALI20230914BHJP
【FI】
E02D27/52 Z
F03D13/25
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022036763
(22)【出願日】2022-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】白谷 宏司
(72)【発明者】
【氏名】石河 亮
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 貴紀
【テーマコード(参考)】
2D046
3H178
【Fターム(参考)】
2D046DA61
3H178AA03
3H178AA26
3H178AA43
3H178BB73
3H178BB77
3H178CC22
3H178DD61X
3H178DD67X
(57)【要約】
【課題】比較的簡易に構築することが可能な半潜水浮体式基礎と、この半潜水浮体式基礎の構築方法を提案する。
【解決手段】風車11の支柱12を支持するセンターカラム3と、センターカラム3の四方に間隔をあけて配設された4本のサイドカラム4,4,…と、センターカラム3とサイドカラム4,4,…とを接続する4本のビーム5,5,…とを備える洋上風力発電施設1の半潜水浮体式基礎2である。センターカラム3およびサイドカラム4は、複数の円筒状プレキャスト部材を上下に連結することにより形成されている。ビーム5は、複数の角筒状プレキャスト部材54,54,…を横方向に連結することにより頂版51、底版52および左右の側壁53,53を有して形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
風車の支柱を支持するセンターカラムと、
前記センターカラムの四方に間隔をあけて配設された4本のサイドカラムと、
前記センターカラムと前記サイドカラムとを接続する4本のビームと、を備える風力発電施設の半潜水浮体式基礎であって、
前記センターカラムおよび前記サイドカラムは、複数の円筒状プレキャスト部材を上下に連結することにより形成されており、
前記ビームは、頂版、底版および左右の側壁を有して角筒状に形成されていることを特徴とする半潜水浮体式基礎。
【請求項2】
風車の支柱を支持するセンターカラムと、
前記センターカラムの四方に間隔をあけて配設された4本のサイドカラムと、
前記センターカラムと前記サイドカラムとを接続する4本のビームと、を備える風力発電施設の半潜水浮体式基礎であって、
前記ビームは、複数の角筒状プレキャスト部材を横方向に連結することにより頂版、底版および左右の側壁を有して形成されていることを特徴とする半潜水浮体式基礎。
【請求項3】
前記センターカラムおよび前記サイドカラムには、前記複数の円筒状プレキャスト部材に配設されたカラム用緊張材により、前記センターカラムおよび前記サイドカラムの軸方向に沿った緊張力が導入されており、
前記ビームには、前記頂版および前記底版に配設されたビーム用緊張材により、前記ビームの軸方向に沿った緊張力が導入されていることを特徴とする、請求項1に記載の半潜水浮体式基礎。
【請求項4】
前記センターカラムを挟んで対向する一対の前記ビームは、前記頂版および前記底版が前記センターカラムを介して連続していることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の半潜水浮体式基礎。
【請求項5】
前記センターカラムを挟んで対向する一対の前記ビームには、前記頂版および前記底版に挿通され且つ前記センターカラムを貫通したビーム用緊張材により緊張力が導入されていることを特徴とする、請求項4に記載の半潜水浮体式基礎。
【請求項6】
センターカラムと、前記センターカラムの四方に間隔をあけて配設された4本のサイドカラムと、前記センターカラムと前記サイドカラムとを接続する4本のビームと、を備える半潜水浮体式基礎の構築方法であって、
前記センターカラムのスラブを構成するセンターカラムスラブ用プレキャスト部材を配設する工程と、
前記センターカラムスラブ用プレキャスト部材の側面から四方に向けてビーム用プレキャスト部材を連設して前記ビームを形成する工程と、
前記ビームの端部に前記サイドカラムのスラブを構成するサイドカラムスラブ用プレキャスト部材を配設する工程と、
前記センターカラムスラブ用プレキャスト部材上に複数の円筒状プレキャスト部材を連設する工程と、
前記サイドカラムスラブ用プレキャスト部材上に複数の円筒状プレキャスト部材を連設する工程と、を備えていることを特徴とする、半潜水浮体式基礎の構築方法。
【請求項7】
前記サイドカラムスラブ用プレキャスト部材から、前記センターカラムを挟んで対向する位置に配設された他の前記サイドカラムスラブ用プレキャスト部材に至る緊張材により、前記センターカラムスラブ用プレキャスト部材を挟んで対向する一対の前記ビームに緊張力を導入する工程を備えていることを特徴とする、請求項6に記載の半潜水浮体式基礎の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水上風力発電施設の半潜水浮体式基礎および半潜水浮体式基礎の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
温室効果ガスの排出量削減を目的として、再生可能エネルギーの需要が高まっている。再生可能エネルギーには、例えば、太陽光発電、風力発電、水力発電、地熱発電、バイオマス等がある。風力発電施設は、風車による騒音や振動が生活環境に影響を及ぼす場合があり、居住空間等への影響を十分に考慮する必要があることから、居住区域から離れた山間部などに設置されることが多い。しかしながら、大型の風車を設置する用地を山間部に確保することは難しく、また、風力発電施設までの交通路の確保や、送電線等の設置等も困難であった。そのため、風力発電施設を海上(水上)に設置することが検討されている。
水上に構造物を構築する場合において、基礎構造として浮体構造物を採用する場合がある。浮体基礎構造としては、セミサブマージブル型、スパー型、パージ型、TLP型等がある。このうち、セミサブマージブル型基礎(半潜水浮体式基礎)は、風車の支柱を支持するセンターカラムと、センターカラムの周囲に間隔をあけて配設された複数本のサイドカラムと、センターカラムとサイドカラムとを連結するアームとを備えてなり、波や風に対して優れた安定性能を有していることから、比較的実績が多い。
半潜水浮体式基礎は、鋼製部材を主体に構成されることが多い。一方、半潜水浮体式基礎をコンクリートにより構築すれば、コストダウンを図ることができる。例えば、特許文献1には、主な構造上の構成要素をコンクリート製とした半潜水浮体式基礎が開示されている。
ところが、半潜水浮体式基礎を場所打ちコンクリートで構築すると、コンクリート量が多くなるため、施工に手間がかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、比較的簡易に構築することが可能な半潜水浮体式基礎と、この半潜水浮体式基礎の構築方法を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための本発明の半潜水浮体式基礎は、風車の支柱を支持するセンターカラムと、前記センターカラムの四方に間隔をあけて配設された4本のサイドカラムと、前記センターカラムと前記サイドカラムとを接続する4本のビームとを備えている。前記センターカラムおよび前記サイドカラムは、複数の円筒状プレキャスト部材を上下に連結することにより形成されている。また、前記ビームは、複数の角筒状プレキャスト部材を横方向に連結することにより頂版、底版および左右の側壁を有して形成されている。
前記半潜水浮体式基礎の構築方法は、前記センターカラムのスラブを構成するセンターカラムスラブ用プレキャスト部材を配設する工程と、前記センターカラムスラブ用プレキャスト部材の側面から四方に向けてビーム用プレキャスト部材を連設して前記ビームを形成する工程、前記ビームの端部に前記サイドカラムのスラブを構成するサイドカラムスラブ用プレキャスト部材を配設する工程と、前記センターカラムスラブ用プレキャスト部材上に複数の円筒状プレキャスト部材を連設する工程と、前記サイドカラムスラブ用プレキャスト部材上に複数の円筒状プレキャスト部材を連設する工程とを備えている。
【0006】
かかる半潜水浮体式基礎および半潜水浮体式基礎の構築方法によれば、プレキャスト部材を組み合わせることにより形成するため、場所打ちコンクリートにより半潜水浮体式基礎を構築する場合に比べて、施工性に優れている。
また、半潜水浮体式基礎のような大規模な構造物をプレキャスト部材により構築する場合は、経済的にも有利に働く。
また、構造体をプレキャスト部材により構成することで、部材厚を小さくすることができ、ひいては、半潜水浮体式基礎の全体的な寸法を小さくすることも可能となる。半潜水浮体式基礎を小さくすることで、施工ヤードを小さくすることができ、また、半潜水浮体式基礎の運搬に要する手間も低減できる。
さらに、浮体としてのサイドカラムを4本にすることで、サイドカラムを3本にする場合に比べてサイドカラムの小断面化が可能となり、施工性の向上による経済化が期待できる。
【0007】
前記センターカラムおよび前記サイドカラムを構成する円筒状プレキャスト部材は、前記複数の円筒状プレキャスト部材に配設されたカラム用緊張材により、前記センターカラムおよび前記サイドカラムの軸方向に沿った緊張力を導入することで連結するのが望ましい。
また、前記ビームは、前記頂版および前記底版に配設されたビーム用緊張材により、前記ビームの軸方向に沿った緊張力を導入することで、複数の角筒状プレキャスト部材を連結するのが望ましい。
また、前記センターカラムを挟んで対向する一対の前記ビームは、前記頂版および前記底版が前記センターカラムを介して連続しているのがさらに望ましい。このとき、前記センターカラムを挟んで対向する一対のビームには、前記頂版および前記底版に配設され且つ前記センターカラムを貫通した前記ビーム用緊張材により緊張力を導入すればよい。こうすることで、緊張材の本数と、定着具の数を減らすことが可能となり、コストダウンを図ることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の半潜水浮体式基礎とこの半潜水浮体式基礎の構築方法によれば、比較的簡易に構築することができ、ひいては、工期短縮化および費用の低減化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係る洋上風力発電施設を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る半潜水浮体式基礎を示す図であって、(a)は側面図、(b)は平面図である。
【
図3】センターカラムスラブ用プレキャスト部材を示す断面図である。
【
図7】半潜水浮体式基礎の構築方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態では、洋上風力発電施設(水上施設)1の基礎構造(半潜水浮体式基礎2)について説明する。
図1は、洋上風力発電施設1の斜視図である。
図1に示すように、洋上風力発電施設1は、風車11と、風車11を支持する支柱12とを有していて、半潜水浮体式基礎2を介して水面よりも高い位置に設けられている。風車11は、支柱12の上端部に回転可能に設けられている。支柱12は、半潜水浮体式基礎2上に立設されている。
半潜水浮体式基礎2は、コンクリートを主体とした浮体構造物である。半潜水浮体式基礎2は、風車11の支柱12を支持するセンターカラム3と、センターカラム3の四方に間隔をあけて配設された4本のサイドカラム4,4,…と、センターカラム3とサイドカラム4とを接続する4本のビーム5,5,…とを備えている。
【0011】
センターカラム3は、
図1に示すように、円柱状を呈している。センターカラム3は、コンクリート製である。センターカラム3は、上載される風車11から荷重を受けるため、曲げモーメントが大きくなる。そのため、本実施形態のセンターカラム3は、設計基準高度が80N/mm
2以上のコンクリートまたは設計基準強度が180N/mm
2以上の超高強度繊維補強コンクリートにより構成する。なお、センターカラム3を構成するコンクリートの種類や強度は、想定される曲げモーメントや上載される風車の荷重等に応じて、適宜決定すればよい。
図2に半潜水浮体式基礎2を示す。センターカラム3は、
図2(a)に示すように、センターカラム3の基部を構成するセンターカラムスラブ用プレキャスト部材31と、センターカラムスラブ用プレキャスト部材31の上に配設された複数のセンターカラム用円筒状プレキャスト部材32,32,…とを備えている。すなわち、センターカラムスラブ用プレキャスト部材31は上下に連結された複数のセンターカラム用円筒状プレキャスト部材32,32,…の集合体をセンターカラムスラブ用プレキャスト部材31の上に立設することにより形成されている。
【0012】
図3にセンターカラムスラブ用プレキャスト部材31の断面図を示す。センターカラムスラブ用プレキャスト部材31は、
図3に示すように、頂版33と、底版34と、側壁35と、接合部材36を備えている。
センターカラムスラブ用プレキャスト部材31の側面(側壁35)には、
図2(b)に示すように、4本のビーム5,5,…が、十字状に接続されている。すなわち、センターカラムスラブ用プレキャスト部材31には、センターカラムスラブ用プレキャスト部材31を挟んで対向する一対のビーム5,5が2組接続されている。側壁35のセンターカラムスラブ用プレキャスト部材31のビーム5との接続部(継目)には、接着剤を塗布することにより止水性を確保する。
【0013】
図4にビーム5示す。
図4に示すように、ビーム5は、頂版51、底版52および左右の側壁53,53を有した角筒状を呈している。ビーム5は、複数の角筒状プレキャスト部材54,54,…を横方向に連結することにより形成されている。角筒状プレキャスト部材54は、コンクリート製のプレキャスト部材である。角筒状プレキャスト部材54の端面(継目)には、接着剤を塗布することにより止水性を確保する。
【0014】
センターカラム3を挟んで対向する一対のビーム5,5は、
図3に示すように、センターカラム3を介して連続している。すなわち、一対のビーム5,5のそれぞれの頂版51および底版52が、センターカラムスラブ用プレキャスト部材31の頂版33または底版34に連結されていることで、一対のビーム5,5が同軸上に配置されている。センターカラム3を挟んで対向する一対のビーム5,5の頂版51および底版52には、
図5に示すように、ビーム用緊張材55がセンターカラム3(頂版33および底版34)を貫通して配設されていて、当該ビーム用緊張材55(マルチストランドあるいはシングルストランド)によりビーム5の軸方向に沿った緊張力が導入されている。
図5は、ビーム用緊張材55の配置を示す平面図である。本実施形態のビーム用緊張材55は、
図5に示すように、サイドカラム4の外側壁部(センターカラム3に対向する壁部の反対側の壁部)に定着している。
【0015】
センターカラムスラブ用プレキャスト部材31の底版34は、
図3に示すようにビーム5の底版52と同じ高さ位置に形成されていて、センターカラム3を挟んで対向するビーム5の底版52同士を連結している。底版34には、貫通孔が平面視格子状に形成されていて、ビーム5の底版52に配設されるビーム用緊張材55が挿通されている。底版34に接続される一方の一対のビーム5,5に挿通されたビーム用緊張材55の高さ位置は、他方の一対のビーム5,5に挿通されたビーム用緊張材55と高さ位置が異なっている。こうすることで、異なる方向に配設されるビーム用緊張材55同士を接触させることなく交差させることができる。
【0016】
また、センターカラムスラブ用プレキャスト部材31の頂版33は、
図3に示すように、ビーム5の頂版51と同じ高さ位置に形成されている。頂版33は、センターカラム3を挟んで対向するビーム5の頂版51同士を連結している。頂版33には、貫通孔が平面視格子状に形成されていて、ビーム5の頂版51に配設されるビーム用緊張材55が挿通されている。頂版33に接続された一方の一対のビーム5,5に挿通されたビーム用緊張材55の高さ位置は、他方の一対のビーム5,5に挿通されたビーム用緊張材55の高さ位置と異なっている。こうすることで、異なる方向に配設されるビーム用緊張材55同士を接触させることなく交差させることができる。
【0017】
接合部材36は、
図3に示すように、頂版51の上面に形成されている。接合部材36には、センターカラム用円筒状プレキャスト部材32が接合される。接合部材36は、少なくとも上端の平面形状が、センターカラム用円筒状プレキャスト部材32と同じ形状を有している。接合部材36の上面には、
図2(b)に示すように、センターカラム用円筒状プレキャスト部材32が上載されている。
複数のセンターカラム用円筒状プレキャスト部材32が上下に連設されることで、筒状の柱が形成される。最上段に配設されたセンターカラム用円筒状プレキャスト部材32は、風車11を支持する支柱12と連結可能に構成されている。センターカラム3を構成するプレキャスト部材(センターカラム用プレキャスト部材31,センターカラム用円筒状プレキャスト部材32)同士の継目(当接面)には、接着剤が塗布することにより止水性を確保するものとし、必要に応じて止水板やガスケットなどを介設する。
【0018】
センターカラム3には、複数のセンターカラム用円筒状プレキャスト部材32,32,…に配設されたセンターカラム用緊張材(マルチストランドあるいはシングルストランド)により、センターカラム3の軸方向に沿った緊張力が導入されている(図示せず)。センターカラム用緊張材の一端は、最上段に設けられたセンターカラム用円筒状プレキャスト部材32に定着されており、センターカラム用緊張材の他端は、センターカラムスラブ用プレキャスト部材31に定着されている。センターカラム用緊張材は、ビーム用緊張材55と接触しないよう、センターカラムスラブ用プレキャスト部材31に格子状に配設されたビーム用緊張材55同士の間に挿通される。
【0019】
サイドカラム4は、
図1に示すように、センターカラム3の周囲に間隔をあけて4本配設されている。隣り合うサイドカラム4同士の間隔は同一である。サイドカラム4は、ビーム5を介してセンターカラム3に連結されている。
サイドカラム4は、円柱状を呈している。
図6にサイドカラム4を示す。サイドカラム4は、
図6に示すように、外筒41と内筒42とを備えた2重構造の構造体である。サイドカラム4の上端は、天盤4aにより遮蔽されている。サイドカラム4は、サイドカラムスラブ用プレキャスト部材43と、サイドカラムスラブ用プレキャスト部材43の上に上載された複数の外筒用円筒状プレキャスト部材44,44,…と、サイドカラムスラブ用プレキャスト部材43および外筒41内に配設された複数の内筒用円筒状プレキャスト部材45,45,…とにより形成されている。
【0020】
サイドカラムスラブ用プレキャスト部材43は、コンクリート製部材であり、頂版47と、底版48と、側壁49とを備えている。
側壁49は、サイドカラム4の基端部の外壁を構成している。側壁49の下端は、底版48により遮蔽されている。また、側壁49のセンターカラム3側の外面のうち、ビーム5(頂版51、底版52、側壁53,53)との当接箇所(継目)には、接着剤が塗布することにより止水性を確保する。
【0021】
サイドカラムスラブ用プレキャスト部材43の底版48は、ビーム5の底版52と同じ高さ位置に形成されている。底版48にはビーム5の底版52が接続されている。底版48には、ビーム5の軸方向の延長線に沿った貫通孔が形成されている。この貫通孔には、ビーム5の底版52に配設されるビーム用緊張材55(
図3参照)が挿通されている。
サイドカラムスラブ用プレキャスト部材43の頂版47は、ビーム5の頂版51と同じ高さ位置に形成されている。頂版47は、サイドカラムスラブ用プレキャスト部材43の上端において、側壁49と内筒42との隙間を遮蔽している。頂版47には、ビーム5の頂版51が連結されている。頂版47には、ビーム5の軸方向の延長線に沿った貫通孔が形成されている。この貫通孔には、ビーム5の頂版51に配設されるビーム用緊張材55が挿通されている。
【0022】
外筒41は、
図6に示すように、複数のコンクリート製の外筒用円筒状プレキャスト部材44,44,…を頂版47の上において上下に積み上げることにより円筒状に形成されている。外筒41を構成するプレキャスト部材(サイドカラムスラブ用プレキャスト部材43および外筒用円筒状プレキャスト部材44)同士の継目(当接面)には、接着剤が塗布されており、必要に応じて止水板やガスケット等を介設する。外筒41は、複数の外筒用円筒状プレキャスト部材44,44,…に配設された外筒用緊張材(図示せず)により、サイドカラム4の軸方向に沿った緊張力が導入されている。外筒用緊張材の一端は、最上段に設けられた外筒用円筒状プレキャスト部材44に定着されており、外筒用緊張材の他端は、サイドカラムスラブ用プレキャスト部材43に定着されている。外筒用緊張材(例えばPC鋼棒等)は、ビーム用緊張材55と接触しないように、ビーム用緊張材55同士の間において、ビーム用緊張材55と交差している。
【0023】
内筒42は、
図6に示すように、複数の内筒用円筒状プレキャスト部材45,45,…を上下に連設することにより円筒状に形成されている。内筒42は、外筒41およびサイドカラムスラブ用プレキャスト部材43の内部空間に形成されている。内筒42には、複数の内筒用円筒状プレキャスト部材45,45,…に配設された内筒用緊張材(図示せず)により、サイドカラム4の軸方向に沿った緊張力が導入されている。内筒用緊張材の一端は、最上段に設けられた内筒用円筒状プレキャスト部材45に定着されており、内筒用緊張材の他端は、サイドカラムスラブ用プレキャスト部材43の底版48に定着されている。内筒用緊張材は、ビーム用緊張材55と接触しないように、ビーム用緊張材55同士の間において、ビーム用緊張材55と交差している。
【0024】
内筒用円筒状プレキャスト部材45は、コンクリート(例えば、超高強度繊維補強コンクリート)または鋼材により構成されている。内筒用円筒状プレキャスト部材45の外面と外筒用円筒状プレキャスト部材44の内面との間には、鋼材からなる複数(本実施形態では4枚)の仕切り材46,46,…が、周方向に等間隔で配設されている。すなわち、外筒41と内筒42との間の空間は、仕切り材46,46,…により複数に分割されている。仕切り材46は、少なくとも浸水範囲(例えば、吃水の上方5mから吃水の下方3mの範囲)に配設する。なお、サイドカラム4には、浸水範囲の下端に対応する高さ位置に、外筒41と内筒42との隙間を遮蔽する中間スラブ4bが形成されていて、外筒41と内筒42との間の空間を上下に分割している。
また、サイドカラムスラブ用プレキャスト部材43内において、内筒用円筒状プレキャスト部材45の外面とサイドカラムスラブ用プレキャスト部材43の側壁49の内面との間にも鋼材からなる複数(本実施形態では4枚)の仕切り材46,46,…が、周方向に等間隔で配設されている。すなわち、サイドカラムスラブ用プレキャスト部材43の頂版47、底版48、側壁49および内筒42に囲まれた空間が、仕切り材46,46,…により複数に分割されている。
【0025】
次に、本実施形態の半潜水浮体式基礎2の構築方法について説明する。
図7に半潜水浮体式基礎2の構築方法の手順を示す。半潜水浮体式基礎2の構築方法は、センタースラブ形成工程S1と、ビーム形成工程S2と、サイドスラブ形成工程S3と、スラブ緊張工程S4と、センターカラム形成工程S5と、センターカラム緊張工程S6と、サイドカラム形成工程S7と、サイドカラム緊張工程S8とを備えている。
センタースラブ形成工程S1は、センターカラムスラブ用プレキャスト部材31を配設する工程である。
ビーム形成工程S2は、センターカラムスラブ用プレキャスト部材31の側面から四方に向けて角筒状プレキャスト部材54,54,…を連設してビーム5を形成する工程である。角筒状プレキャスト部材54同士の間には、止水材を介設する。このとき、角筒状プレキャスト部材54,54,…は、PC鋼棒により圧縮力を導入して仮接合する。
【0026】
サイドスラブ形成工程S3は、ビーム5のセンターカラム3と反対側の端部にサイドカラムスラブ用プレキャスト部材43を配設する工程である。
スラブ緊張工程S4は、ポストテンション方式によりビーム5に緊張力を導入する工程である。まず、サイドカラムスラブ用プレキャスト部材43から、センターカラム3を挟んで対向する位置に配設された他のサイドカラムスラブ用プレキャスト部材43に至るビーム用緊張材55(マルチストランドあるいはシングルストランド)を配設する。次に、ビーム用緊張材55を利用して、センターカラムスラブ用プレキャスト部材31を挟んで対向する一対のビーム5,5に緊張力を導入する。
【0027】
センターカラム形成工程S5は、センターカラムスラブ用プレキャスト部材31上で、複数のセンターカラム用円筒状プレキャスト部材32,32,…を積み上げる工程である。このとき、複数のセンターカラム用円筒状プレキャスト部材32,32,…は、PC鋼棒により圧縮力を導入して仮接合する。
センターカラム緊張工程S6は、センターカラム3にポストテンション方式により緊張力を導入する工程である。まず、最上段に配設されたセンターカラム用円筒状プレキャスト部材32からセンターカラムスラブ用プレキャスト部材31に至るセンターカラム用緊張材(マルチストランドあるいはシングルストランド)を配設する。次に、センターカラム用緊張材に緊張力を導入する。
【0028】
サイドカラム形成工程S7は、サイドカラムスラブ用プレキャスト部材43上に外筒41を形成するとともに、サイドカラムスラブ用プレキャスト部材43内および外筒41内に内筒42を形成する工程である。外筒41は、サイドカラムスラブ用プレキャスト部材43上に複数の外筒用円筒状プレキャスト部材44を積み上げることにより形成する。このとき、複数の外筒用円筒状プレキャスト部材44,44,…は、PC鋼棒により圧縮力を導入して仮接合する。内筒42は、サイドカラムスラブ用プレキャスト部材43内および外筒41内において、複数の内筒用円筒状プレキャスト部材45を積み上げることにより形成する。このとき、複数の内筒用円筒状プレキャスト部材45,45,…は、PC鋼棒により圧縮力を導入して仮接合する。
【0029】
サイドカラム緊張工程S8は、外筒41および内筒42にポストテンション方式により緊張力を導入する工程である。まず、最上段に配設された外筒用円筒状プレキャスト部材44からサイドカラムスラブ用プレキャスト部材43に至る外筒用緊張材を配設するとともに、最上段に配設された内筒用円筒状プレキャスト部材45からサイドカラムスラブ用プレキャスト部材43に至る内筒用緊張材を配設する。次に、外筒用緊張材および内筒用緊張材に緊張力を導入する。
【0030】
本実施形態の半潜水浮体式基礎2および半潜水浮体式基礎2の構築方法によれば、プレキャスト部材を組み合わせることにより形成するため、場所打ちコンクリートにより半潜水浮体式基礎2を構築する場合に比べて、施工性に優れている。
また、半潜水浮体式基礎2のような大規模な構造物をプレキャスト部材により構築する場合は、経済的にも有利に働く。
また、構造体をプレキャスト部材により構成することで、部材厚を小さくすることができ、ひいては、半潜水浮体式基礎2の全体的な寸法を小さくすることも可能となる。半潜水浮体式基礎2を小さくすることで、施工ヤードを小さくすることができ、また、半潜水浮体式基礎2の運搬に要する手間も低減できる。また、半潜水浮体式基礎2の輸送に使用する台船の寸法を小さくすることも可能となる。
また、プレキャスト部材の小断面化により、プレキャスト部材の運搬費用の低減化が可能となり、工事全体の費用を削減することができる。
【0031】
また、浮体としてのサイドカラム4を4本にすることで、サイドカラム4を3本にする場合に比べて各サイドカラム4の小断面化が可能となり、経済的である。
また、サイドカラム4を4本として、ビーム5を十字状に設けることで、ビーム用緊張材55を格子状に配設することが可能となり、設置作業が容易となる。また、センターカラム3を貫通するようにビーム用緊張材55を配置することで、ビーム用緊張材55の定着部の数を減らすことができ、構造の簡素化、ひいては、施工性の向上を図ることができる。
【0032】
サイドカラム4を外筒41と内筒42とを備えた2重構造としているので、サイドカラム4に船舶や浮遊物等が接触して外筒41に破損が生じた場合であっても、内筒42によって浮力を確保できる。さらに、サイドカラム4は、仕切り材46により内部が複数に区画されているため、破損が生じた場合であっても、サイドカラム4全体に浸水することがなく、内部への浸水量を抑えることができる。
また、サイドカラム4内に仕切り材46が配設されているため、水圧による曲げを小さくすることが可能となり、ひいては、プレキャスト部材(サイドカラムスラブ用プレキャスト部材43、外筒用円筒状プレキャスト部材44、内筒用円筒状プレキャスト部材45)の部材厚を小さくできる。
【0033】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素については本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
例えば、前記実施形態では、サイドカラム4を外筒41と内筒42とを備えた2重構造としたが、センターカラム3を2重構造にしてもよい。また、サイドカラム4は、必ずしも2重構造である必要はない。
前記実施形態では、センターカラム3を挟んで対向する一対のビーム5,5を連続した構造にする場合について説明したが、対応する一対のビーム5,5は必ずしも連続している必要はない。
【0034】
また、センターカラム3を挟んで対向する一対のビーム5,5に対して、センターカラム3を貫通したビーム用緊張材55を配置する場合について説明したが、ビーム5に配置するビーム用緊張材55は、必ずしもセンターカラム3を貫通している必要はなく、センターカラム3に定着してもよい。
サイドカラム4において、ビーム5の頂版51の高さ位置に対応してスラブを形成し、当該スラブにビーム用緊張材55を定着してもよい。
サイドカラム4およびビーム5を構成するコンクリートの強度は、適宜決定すればよい。
サイドカラム緊張工程S8は、必要に応じて実施すればよく、軸方向の曲げモーメントが大きくない場合には、省略してもよい。
【0035】
前記実施形態では、センターカラム3,サイドカラム4およびビーム5がプレキャスト部材により形成されている場合について説明したが、センターカラム3,サイドカラム4およびビーム5は必ずしもすべてがプレキャスト部材により形成する必要はない。例えば、ビーム5をプレキャスト部材により形成し、センターカラム3およびサイドカラム4は従来工法により形成してもよい。また、センターカラム3およびサイドカラム4をプレキャスト部材により形成し、ビーム5は従来工法により形成してもよい。
【0036】
前記実施形態では、センターカラム3とビーム5との継目、サイドカラム4とビーム5との継目および角筒状プレキャスト部材54同士の継目を接着剤により接着するものとしたが、センターカラム3とビーム5との継目、サイドカラム4とビーム5との継目および角筒状プレキャスト部材54同士の継目の止水構造はこれに限定されるものではなく、適宜決定すればよい。例えば、センターカラム3とビーム5との継目(当接面)、サイドカラム4とビーム5との継目(当接面)、および角筒状プレキャスト部材54同士の継目(当接面)に必要に応じてシール溝を形成しておき、このシール溝に、シール材やガスケット等の止水材を配設してもよい。すなわち、センターカラム3,サイドカラム4およびビーム5を構成する各プレキャスト部材同士は、必要に応じて介設されたシール材やガスケット等の止水材により水密性を確保した状態で接合してもよい。このようにすれば、接合部(継目)における剛性を緩和でき、ひいては、波動に追随するやわらかい構造の実現と、断面力緩和による構造の合理化が可能となる。
同様に、センターカラム3およびサイドカラム4を構成するプレキャスト部材同士の止水構造も前記実施形態で示した内容(接着剤による接着)に限定されるものではなく、要求される水密性や場所(水位に対する高さ位置等)などに応じて適宜決定すればよい。
【符号の説明】
【0037】
1 洋上風力発電施設
11 風車
12 支柱
2 半潜水浮体式基礎
3 センターカラム
31 センターカラムスラブ用プレキャスト部材
32 センターカラム用円筒状プレキャスト部材
33 頂版
34 底版
35 側壁
4 サイドカラム
41 外筒
42 内筒
43 サイドカラムスラブ用プレキャスト部材
44 外筒用円筒状プレキャスト部材
45 内筒用円筒状プレキャスト部材
46 仕切り材
47 頂版
48 底版
49 側壁
5 ビーム
51 頂版
52 底版
53 側壁
54 角筒状プレキャスト部材
55 ビーム用緊張材