(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023013181
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】吸着材回収方法
(51)【国際特許分類】
G21F 9/12 20060101AFI20230119BHJP
G21F 9/06 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
G21F9/12 501Z
G21F9/06 501Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021117169
(22)【出願日】2021-07-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 健太
(72)【発明者】
【氏名】浅野 恭一
(57)【要約】
【課題】原子力設備において放射性物質を吸着処理した後の吸着塔から吸着材を回収することができる吸着材回収方法を提供する。
【解決手段】収容容器と、前記収容容器に充填された吸着材と、前記収容容器の外側を遮蔽材により覆う遮蔽容器と、を備える吸着塔から前記吸着材を回収する吸着材回収方法であって、作業環境及び吸着塔の内部構造に応じて前記収容容器における前記吸着材を取り出すための作業孔の位置を選択する工程と、前記位置に応じて前記遮蔽材に開口を形成する工程と、前記開口から前記位置に前記作業孔を形成する工程と、前記位置に応じて選択された前記吸着材の取り出し方法に基づいて前記作業孔から前記吸着材を回収する工程と、を備える。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容容器と、前記収容容器に充填された吸着材と、前記収容容器の外側を遮蔽材により覆う遮蔽容器と、を備える吸着塔から前記吸着材を回収する吸着材回収方法であって、
作業環境及び吸着塔の内部構造に応じて前記収容容器における前記吸着材を取り出すための作業孔の位置を選択する工程と、
前記位置に応じて前記遮蔽材に開口を形成する工程と、
前記開口から前記位置に前記作業孔を形成する工程と、
前記位置に応じて選択された前記吸着材の取り出し方法に基づいて前記作業孔から前記吸着材を回収する工程と、を備える、
吸着材回収方法。
【請求項2】
前記収容容器の下部に前記作業孔を形成する工程を備える、
請求項1に記載の吸着材回収方法。
【請求項3】
前記作業孔と前記吸着材を回収する回収容器とを密閉して接続するように形成された治具を前記作業孔に取り付ける工程と、
前記治具を介して前記吸着材を落下させて前記回収容器に回収する工程と、を備える、
請求項1又は2に記載の吸着材回収方法。
【請求項4】
前記収容容器の上部に前記作業孔を形成する工程を備える、
請求項1に記載の吸着材回収方法。
【請求項5】
前記遮蔽容器の上部の前記遮蔽材を取り除く工程と、
前記収容容器の上部を取り除き前記収容容器の径方向全体に前記作業孔を形成する工程と、を備える、
請求項1に記載の吸着材回収方法。
【請求項6】
前記作業孔に吸引管を挿入する工程と、
前記吸引管を介して前記吸着材を吸引して回収する工程と、を備える、
請求項1、4、5のうちいずれか1項に記載の吸着材回収方法。
【請求項7】
前記作業孔にスクリューコンベアを挿入する工程と、
前記スクリューコンベアにより前記吸着材を移送して回収する工程と、を備える、
請求項4又は5に記載の吸着材回収方法。
【請求項8】
可撓性を有する管により前記作業孔と前記吸着材を回収する回収容器とを密閉して接続する工程と、
前記収容容器を反転させ前記管を介して前記吸着材を前記回収容器に収容する工程と、を備える、
請求項5に記載の吸着材回収方法。
【請求項9】
前記吸着材を掬い取る機構を有する装置を用いて前記作業孔から前記吸着材を回収する工程を備える、
請求項5に記載の吸着材回収方法。
【請求項10】
前記位置に応じて選択された洗浄方法により前記収容容器内を洗浄する工程を備える、
請求項1から9のうちいずれか1項に記載の吸着材回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性物質を吸着させた吸着材を収容容器から回収する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力設備において取り扱われる水には、放射性ストロンチウムイオンや放射性セシウムイオン等の処理対象物質が含まれている場合がある。処理対象物質を含む水は、例えば、収容空間が形成された収容容器と、収容空間内に充填された粒子状の吸着材とを備えた装置(吸着塔ともいう)により処理対象物質が吸着処理される(例えば、特許文献1参照)。吸着塔の内部空間内に処理対象物質を含む水が流通すると、処理対象物質が吸着材に吸着され、水は所定基準を満たした処理水となって回収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
吸着材の吸着性能が低下した後、吸着材は収容容器に収容された状態で暫時保管されるが、吸着材を処理する必要があるときには収容容器内部から吸着材が回収される。回収後の吸着材は、セメントを用い固化され、或いは溶融されたガラスを用いて固化され、所定の保管施設において所定期間保管される。特許文献1には、吸着材の具体的な回収方法については、提案されていなかった。
【0005】
本発明は、原子力設備において放射性物質を吸着処理した後の吸着塔から吸着材を回収することができる吸着材回収方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、収容容器と、前記収容容器に充填された吸着材と、前記収容容器の外側を遮蔽材により覆う遮蔽容器と、を備える吸着塔から前記吸着材を回収する吸着材回収方法であって、作業環境及び吸着塔の内部構造に応じて前記収容容器における前記吸着材を取り出すための作業孔の位置を選択する工程と、前記位置に応じて前記遮蔽材に開口を形成する工程と、前記開口から前記位置に前記作業孔を形成する工程と、前記位置に応じて選択された前記吸着材の取り出し方法に基づいて前記作業孔から前記吸着材を回収する工程と、を備える吸着材回収方法である。
【0007】
本発明によれば、制約された条件下における作業環境において回収方法を選択することで、飛散を防止しつつ収容容器の内部に充填された吸着材を回収することができる。
【0008】
また、本発明は、前記収容容器の下部に前記作業孔を形成する工程を備えていてもよい。
【0009】
本発明によれば、収容容器の下部に作業孔を形成することで、動力を用いずに吸着材を落下させて回収することができる。
【0010】
また、本発明は、前記作業孔と前記吸着材を回収する回収容器とを密閉して接続するように形成された治具を前記作業孔に取り付ける工程と、前記治具を介して前記吸着材を落下させて前記回収容器に回収する工程と、を備えていてもよい。
【0011】
本発明によれば、作業孔の周囲に治具を取り付けることにより、吸着材の落下時に吸着材が外部に逸散することが防止されると共に、吸着材を回収容器内に案内することができる。
【0012】
また、本発明は、前記収容容器の上部に前記作業孔を形成する工程を備えていてもよい。
【0013】
本発明によれば、収容容器の下方のスペースに制約がある場合や、収容容器の上部から内部にアクセスしやすい場合に適用することができる。
【0014】
また、本発明は、前記遮蔽容器の上部の前記遮蔽材を取り除く工程と、前記収容容器の上部を取り除き前記収容容器の径方向全体に前記作業孔を形成する工程と、を備えていてもよい。
【0015】
本発明によれば、収容容器の上蓋を取り除くことが可能な場合に適用することにより、収容容器の内部へのアクセスを容易にすることができる。
【0016】
また、本発明は、前記作業孔に吸引管を挿入する工程と、前記吸引管を介して前記吸着材を吸引して回収する工程と、を備えていてもよい。
【0017】
本発明によれば、収容容器の上側の作業孔から作業する場合に適用することにより、吸着材を上方に吸引して回収することができる。
【0018】
また、本発明は、前記作業孔にスクリューコンベアを挿入する工程と、前記スクリューコンベアにより前記吸着材を移送して回収する工程と、を備えていてもよい。
【0019】
本発明によれば、収容容器の上側の作業孔から作業する場合に適用することにより、スクリューコンベアにより吸着材を上方に移送して回収することができる。
【0020】
また、本発明は、可撓性を有する管により前記作業孔と前記吸着材を回収する回収容器とを密閉して接続する工程と、前記収容容器を反転させ前記管を介して前記吸着材を前記回収容器に収容する工程と、を備えていてもよい。
【0021】
本発明によれば、収容容器の径方向全体に前作業孔を形成する場合に適用することにより、吸着材の回収時間を短縮することができる。また、容器を反転させることで、吸着材が収容容器内において固着していてもそのまま落下させて回収することができる。
【0022】
また、本発明は、前記吸着材を掬い取る機構を有する装置を用いて前記作業孔から前記吸着材を回収する工程を備えていてもよい。
【0023】
本発明によれば、収容容器の径方向全体に前作業孔を形成する場合に適用することにより、吸着材を掬い取る装置を用いて回収効率を向上することができる。
【0024】
また、本発明は、前記位置に応じて選択された洗浄方法により前記収容容器内を洗浄する工程を備えていてもよい。
【0025】
本発明によれば、作業孔の位置に応じて洗浄方法を選択することで、作業環境に適した洗浄を行うことができる。
【0026】
また、本発明は、前記作業孔を介して前記収容容器の内部を洗浄する工程を備えていてもよい。
【0027】
本発明によれば、作業孔を利用することで洗浄水の飛散を防止しつつ収容容器内の洗浄を行うことができる。
【0028】
また、本発明は、前記作業孔から洗浄水を回収する工程と、を備えていてもよい。
【0029】
本発明によれば、作業孔を利用することで洗浄水の飛散を防止しつつ洗浄水の回収を行うことができる。
【0030】
また、本発明は、前記収容容器の下部に排水口を形成する工程と、前記作業孔を介して前記収容容器の内部を洗浄すると共に前記排水口から洗浄水を回収する工程と、を備えていてもよい。
【0031】
本発明によれば、収容容器の下部に排水口を形成することで、洗浄水の回収効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、原子力設備において放射性物質を吸着処理した後の吸着塔から吸着材を回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の適用対象である吸着塔の構成を概略的に示す断面図である。
【
図2】吸着材の回収方法の各工程を概略的に示す図である。
【
図4】収容容器の下部構造における作業孔の位置を示す平面図である。
【
図5】吸着塔を解体する各工程を概略的に示す図である。
【
図6】変形例1に係る吸着材の回収方法の各工程を概略的に示す図である。
【
図7】変形例2に係る吸着材を回収する工程を概略的に示す図である。
【
図8】変形例3に係る吸着材の回収方法の各工程を概略的に示す図である。
【
図9】変形例4に係る吸着材を回収する工程を概略的に示す図である。
【
図10】吸着材回収方法の各処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1に示されるように、吸着塔1は、内部空間Sが形成された収容容器2と、収容容器2に充填された吸着材Qと、収容容器2の外側を覆う遮蔽材11を有する遮蔽容器10と、を備える。吸着塔1は、放射性ストロンチウムイオンや放射性セシウムイオン等の処理対象物質を含む水を流通させることにより、吸着材Qに処理対象物質を吸着させる浄化装置である。吸着塔1からは、処理対象物質の濃度が所定基準以下となった処理済みの水を回収することができる。
【0035】
収容容器2は、タンク状に形成されている。収容容器2は、円筒状に形成された本体部3を備える。本体部3の上方の円形の開口は、円形のドーム状に形成された上蓋4(上鏡ともいう)により閉塞されている。上蓋4は、例えば、本体部3に溶接されている。上蓋4は、本体部3と一体生成されていてもよい。上蓋4は、平板状であってもよい。本体部3の下方の円形の開口は、円形の碗状に形成された下蓋5(下鏡ともいう)により閉塞されている。下蓋5は、例えば、本体部3に溶接されている。下蓋5は、本体部3と一体生成されていてもよい。下蓋5は、平板状であってもよい。上記構成により、収容容器2の内部には、内部空間Sが形成されている。
【0036】
上蓋4には、処理対象物質を含む水を収容容器2の外部から内部空間Sの上方に供給する供給配管6が設けられている。上蓋4には、吸着材Qを内部空間Sに投入するための開閉可能な投入口7が設けられている。下蓋5の上方には、処理済みの処理水を内部空間Sから収容容器2の外部に送出するための配管装置8が設けられている。配管装置8には、収容容器2の外部に連通する配管9が設けられている。配管9は収容容器2の内部を通って上蓋4を貫通して収容容器2の外部に達するものであってもよい。下蓋5の下部は、下蓋5を支持する台座5Aが設けられている。下蓋5が平板状であって、台座5Aがないものであってもよい。
【0037】
内部空間Sには、吸着材Qが充填されている。吸着材Qは、粒径が所定範囲の粒子状に形成されている。吸着材Qは、例えば、ストロンチウムイオンやセシウムイオン等の処理対象物質を吸着する。吸着材Qは、例えば、ゼオライトやケイチタン酸塩、活性炭、樹脂により形成されている。
【0038】
本体部3の側方の周囲は、遮蔽容器10の側面に設けられた円筒状の遮蔽材11により覆われている。遮蔽材11の上部の円形の開口は、開口形状に合わせた円板状に形成された遮蔽材12により覆われている。遮蔽材12の上部には、配管や冷却装置を収容する上部に開口した上部構造15が設けられている。遮蔽材11の下部の円形の開口は、開口形状に合わせた円板状に形成された遮蔽材13により覆われている。遮蔽容器10の下部には、収容容器2の冷却用の空気を流入させる配管20が設けられている。遮蔽容器10の上部には、収容容器2の冷却用の空気を流出させる配管21が設けられている。
【0039】
遮蔽材11-13の内側及び外側の表面は、例えば、金属板により形成されている。遮蔽材11-13の端面は、金属板により覆われている。これにより、遮蔽材11-13には、内部空間が形成されている。遮蔽材11―13の内部空間には、放射線を遮蔽するための鉛ビーズが充填され、あるいは鉛が鋳込まれている。上記構成によれば、吸着塔1は、高線量となる吸着材Qの放射線を防護可能に構成されている。その反面、吸着塔1は、吸着材Qを回収し難い構造を有している。
【0040】
次に、吸着材回収方法について説明する。吸着材回収方法は、処理対象物質を含む吸着材Qの飛散を防止しつつ、収容容器2の除染及び解体を終了するまで遠隔操作可能に各工程が設定される。吸着材Qを取り出すためには、収容容器2に吸着材Qを取り出すための作業孔を形成することが必要である。作業孔の位置は、作業環境及び吸着塔1の内部構造に応じて選択される。作業環境は、処理対象物質の飛散を防止する対策が行われた限られたスペース内において、遠隔作業を併用して行われることが想定される。
【0041】
そのため、作業スペースをなるべく小さくすると共に、効率的になるように全体的な工程が設定されることが望ましい。また、遮蔽容器10の内部に充填された鉛ビーズあるいは鉛金属と、吸着材Qとが混合しないように分別して回収することが求められる。先ず、収容容器2における吸着材Qを取り出すための作業孔の位置が選択される。そして、作業孔の位置に応じてその後の各工程が設定される。先ず吸着塔1の下方から吸着材Qを回収する第1方法を検討する。
【0042】
図2及び
図3に示されるように、第1方法は、収容容器2の下部の下蓋5に作業孔を削孔して形成する。そのため、作業孔の位置に応じて遮蔽材13に開口を形成する必要がある。吸着塔1は、設定された作業環境において下部の遮蔽材13の下面側が露出される作業テーブル(不図示)等に設置される。遮蔽材13の下面側には、円筒状の治具G1が取り付けられる(
図2(1)参照)。治具G1の内部において、遮蔽材13の下面側には、円形の開口13Aが形成される。開口13Aは、例えば、ホールソー等の切削工具を用いて形成される。開口13Aからは、遮蔽材13の内部に充填された鉛ビーズBが回収される。鉛ビーズBは、必ずしも全量が回収されなくてもよい。
【0043】
遮蔽材13の上面側には、開口13Aを介して円形の開口13Bが形成される(
図2(2)参照)。開口13Bは、例えば、開口13Aと同径に同様の方法を用いて形成される。遮蔽材13の下面側には、下蓋5に接触する円筒状の治具G2が取り付けられる。治具G2は、作業孔5Bと吸着材Qを回収する回収容器とを密閉して接続するように形成されている。治具G2は、開口13A及び開口13Bの径に比して若干小さい外径に形成されている。治具G2により、遮蔽材13の内部空間に残置された鉛ビーズBが流出することが防止される。治具G1の下方には、吸着材Qを収容する回収容器(不図示)が取り付けられる。治具G1の側面には、開口G1Hが設けられており、工具や洗浄用のノズルが挿入可能である。
【0044】
収容容器2の下蓋5には、治具G2を介して開口13A及び開口13Bから作業孔5Bを形成する予定の位置に作業孔5Bが形成される(
図2(3)参照)。収容容器2の内部において下蓋5の上方には、配管装置8が設けられている場合がある。下蓋5の中心には、配管装置8の部品8Aが存在する場合がある(
図3参照)。そのような場合、作業孔5Bは、下蓋5の中心を回避した所定位置に形成される(
図4参照)。作業孔5Bからは、作業孔5Bが形成された位置に応じて選択された吸着材の取り出し方法に基づいて吸着材Qが回収される。第1方法においては、作業孔5Bからは、重力が作用して吸着材Qが落下し、落下した吸着材Qを回収容器内に回収する。
【0045】
吸着材Qは、治具G2,G1に案内されて下方に設置された回収容器内に収容される。治具G2,G1により、吸着材Qが外部に逸散することが防止される。吸着材Qが収容容器2内において固着している場合、開口G1H、作業孔5Bを通じて洗浄用のノズル等が挿入され、収容容器2内に送水し吸着材Qの固着が解かれる。この他、残置された配管9から水や圧縮空気を送り、配管装置8を介して収容容器2内に水や圧縮空気を導入し、吸着材Qの固着を解いてもよい。回収容器に吸着材Qが収容された後、回収容器は厳重に蓋が取り付けられ所定の保管場所に運搬される。
【0046】
次に、第1方法の作業環境及び吸着塔1の内部構造に応じて選択された洗浄方法により収容容器2内が洗浄される。収容容器2の内部には、開口G1H、作業孔5Bを通じて洗浄用のノズルNが挿入される(
図2(4)参照)。ノズルNは、洗浄水を高圧にジェット噴射して対象物を洗浄する洗浄装置である。ノズルNの先端は、例えば、水圧に基づいて回転する回転機構を備え、収容容器2の内壁の周方向を洗浄可能に構成されている。
【0047】
治具G1の下方には、洗浄水回収容器(不図示)が取り付けられる。ノズルNの先端には、例えば、カメラ(不図示)が取り付けられており、収容容器2の内部を監視しつつ、ノズルNから噴射される洗浄水により除染作業が行われる。洗浄水は、治具G2,G1に案内されて下方に設置された洗浄水回収容器内に収容される。ノズルNは、洗浄水による洗浄の他、氷やドライアイスをメディアとしたアイスブラスト等のブラスト処理を行うものであってもよい。
【0048】
図5に示されるように、収容容器2が除染された後、遮蔽容器10及び収容容器2は、解体される。遮蔽容器10及び収容容器2は、溶融され、金属材料に再利用される。例えば、収容容器2が洗浄された後、遮蔽容器10からは、鉛ビーズBが回収される(
図5(1)参照)。鉛ビーズBが回収された遮蔽容器10は、解体され所定の設備において金属溶融される(
図5(2)参照)。露出した収容容器2は、細かく切断され所定の設備において金属溶融される(
図5(3)参照)。
【0049】
上述したように、第1方法に係る吸着材回収方法によれば、原子力設備において放射性物質を吸着処理した後の吸着塔1から吸着材Qを回収することができる。第1方法に係る吸着材回収方法によれば、吸着塔1から吸着材Qの逸散を防止しつつ、吸着材Qを回収することができる。第1方法に係る吸着材回収方法によれば、遠隔作業可能に省スペースの作業環境において吸着材Qを回収することができる。第1方法に係る吸着材回収方法によれば、収容容器2の下方に作業孔5Bを形成するため、吸着材Qや洗浄水の回収を容易にすることができる。
【0050】
[変形例1]
図6に示されるように、吸着塔1の上部には、吸着材Qを投入するための投入口7が設けられている。投入口7を作業孔として利用すれば、削孔する工程を省略することができる。以下、投入口7を利用した第2方法について説明する。
【0051】
先ず、作業環境において投入口7の蓋(不図示)が取り外され、作業孔が形成される(
図6(1)参照)。投入口7の蓋は、例えば、複数のボルトにより固定されている。そのため、ボルトの取り外しにより作業孔を形成することができる。投入口7には、吸着材Qを吸引するための吸引管30の一端側が挿入される。吸引管30の他端側は、可撓性を有するホース(不図示)の一端側が接続される。ホースの他端側は回収容器(不図示)に接続される。回収容器内は、例えば、エアポンプ等により大気圧に比して陰圧に調整されている。これにより、吸着材Qは、吸引管30の先端から吸引される(
図6(2)参照)。
【0052】
吸引管30は、例えば、金属管により形成されている。吸引管30は、必ずしも直管形状に形成されていなくてもよい。吸引管30は、湾曲した湾曲部や屈曲した屈曲部が形成されていてもよく、挿入角度や回転角度を調整して収容容器2の径方向の任意の位置を吸引可能に構成されていてもよい。
【0053】
吸着材Qが固着している場合、吸引管30から収容容器2の内部に水や圧縮空気を導入し、吸着材Qの固着を解いてもよい。この他、残置された配管9から水や圧縮空気を送り、配管装置8を介して収容容器2内に水や圧縮空気を導入し、吸着材Qの固着を解いてもよい。また、吸引管30動かして吸着材Qをかき混ぜ、吸着材Qの固着を解いてもよい。また、吸引管30の他に、バイブレータ等の振動を与える装置を投入口7に挿入し、振動によって吸着材Qの固着を解いてもよい。また、吸引管30には、振動を発生する装置が設けられていてもよい。
【0054】
吸着材Qは、吸引管30の先端から吸引され、回収容器に収容される。吸引管30には、例えば、カメラが取り付けられている。作業者は、カメラから得られた画像に基づいて吸引管30を吸着材Qに近づけ、吸着材Qを吸引させる。収容容器2内から吸着材Qが吸引除去された後、投入口7からノズルNが挿入される(
図6(3)参照)。ノズルNにより、収容容器2の内部が高圧洗浄水により洗浄され、除染が行われる。収容容器2の内部において、洗浄水が所定水位となった場合、或いは、所定の洗浄領域の洗浄が完了した場合、ノズルNは排水管40と交換される。
【0055】
排水管40は、吸引ポンプ(不図示)に接続され、収容容器2の内部に溜まった洗浄水を吸引して収容容器2の外部に排出する。排水管40は、例えば、洗浄水回収容器(不図示)に接続され、洗浄水回収容器に洗浄水が回収される。投入口7にノズルNと排水管40が挿入可能な場合、ノズルNによる洗浄と排水管40による排水を同時に行ってもよい。排水管40だけでなく、収容容器2に残置された配管9及び配管装置8を用いて収容容器2の外部に洗浄水を排水してもよい。ノズルNによる収容容器2の内部の洗浄が終了した後、遮蔽容器10及び収容容器2が解体される(
図5参照)。
【0056】
上述したように、第2方法に係る吸着材回収方法によれば、収容容器2に削孔することなく吸着材Qを回収することができる。第2方法に係る吸着材回収方法によれば、投入口7を作業孔として利用することで、吸着材Qの逸散を防止しつつ、吸着材Qを吸引して回収することができる。第2方法に係る吸着材回収方法によれば、投入口7を作業孔として利用することで、収容容器2の内部を洗浄することができる。
【0057】
[変形例2]
図7に示されるように、投入口7には、吸着材Qを上方に移送可能なスクリューコンベア50が挿入されてもよい。以下、スクリューコンベア50利用した第3方法について説明する。スクリューコンベア50は、例えば、円筒形の鞘管51と、鞘管51に挿入されたオーガスクリュー52とを備える。オーガスクリュー52は、例えば、螺旋歯を有し、所定回転方向に回転することにより、鞘管51の内部において吸着材Qを上方に強制的に移送することができる。収容容器2の内部の洗浄は、第2方法と同様である。
【0058】
第3方法に係る吸着材回収方法によれば、投入口7にスクリューコンベア50を挿入し、オーガスクリュー52を所定回転方向に回転させることにより吸着材Qを上方に移送して回収することができる。第3方法に係る吸着材回収方法によれば、吸着材Qが固着していても、上方から押し付けることにより、固着した吸着材Qを掘削し、鞘管51の内部において吸着材Qを上方に移送することができる。
【0059】
[変形例3]
図8に示されるように、収容容器2の上蓋4を取り除き、収容容器2の径方向全体に作業孔2Hを形成し、吸着材Qを回収してもよい。以下、収容容器2の上蓋4を取り除く第4方法について説明する。吸着塔1において、遮蔽容器10の上部構造15及び遮蔽材12が取り除かれる(
図8(1)、(2)参照)。遮蔽容器10の上部に形成された開口10Hから、収容容器2の上蓋4が取り除かれる(
図8(3)参照)。上蓋4は、例えば、グラインダやガス溶断を用いて本体部3から切り離される。
【0060】
これにより、収容容器2の径方向全体に作業孔2Hが形成される。作業孔2Hと吸着材Qを回収する回収容器(不図示)とは、可撓性を有する管FPにより密閉して接続される(
図8(4)参照)。その後、収容容器2が反転される。吸着材Qは、重力が作用して下方に落下する。吸着材Qは、固着していても塊の状態で落下する。吸着材Qが固着し落下し難い場合、収容容器2を揺すりながら吸着材Qを落下させてもよい。吸着材Qは、管FPに案内され外部に逸散することなく回収容器に収容される。収容容器2の内部の洗浄は、第2方法と同様である。収容容器2の内部の洗浄において、洗浄水は、収容容器2を反転して洗浄水回収容器に回収されてもよい。
【0061】
第4方法に係る吸着材回収方法によれば、収容容器2の径方向全体に作業孔2Hを形成することにより、吸着材Qの回収時間を大幅に短縮することができる。第4方法に係る吸着材回収方法によれば、吸着材Qが固着していても吸着塔1全体を反転させることにより、吸着材Qを落下させて回収することができる。
【0062】
[変形例4]
図9に示されるように、収容容器2の径方向全体に作業孔2Hを形成した場合、作業孔2Hから吸着材Qを上方に取り出して回収してもよい。以下、作業孔2Hの上方に吸着材Qを回収する第5方法について説明する。作業孔2Hを形成した場合、収容容器2の内部が視認し易くなり。吸着材Qの状態をリアルタイムに把握することができる。作業孔2Hからは、例えば、吸着材Qを掬い取る機構を有する重機J等の装置を用いて吸着材Qが回収される。重機Jは、例えば、遠隔により操作される。重機Jには、防護対策が施されることにより乗員が操作してもよい。
【0063】
重機Jの他、吸着材Qを掬い取ることができればどのような装置が用いられてもよい。第5方法においては、吸着材Qの逸散を防止するため吸着塔1、重機Jを含めた作業環境全体が建物等により閉塞される。収容容器2の内部の洗浄は、第2方法と同様である。収容容器2の内部の洗浄において、洗浄水は、収容容器2を反転して洗浄水回収容器に回収されてもよい。
【0064】
上述したように、第5方法に係る吸着材回収方法によれば、作業孔2Hから重機J等の装置により吸着材Qを上方に掬い取って効率的に回収することができる。
【0065】
[変形例5]
上述した第1から第5方法における各工程は、適宜組み合わされて施工されてもよい。例えば、第2から第5方法における洗浄工程は、収容容器2の下方から洗浄水を排水していないので、洗浄水の回収時間を要したり、設備が大型化したりする虞がある。そのため、第2から第5方法における洗浄工程は、第1方法のように収容容器2の下側から排水するようにしてもよい。そのため、第2から第5方法における洗浄工程の前に、収容容器2の下蓋5に排水口を設けてもよい。この場合、排水口は、洗浄水を排水可能な程度の径に形成すればよい。即ち、第2から第5方法は、収容容器の下部に排水口を形成し、作業孔を介して収容容器の内部を洗浄すると共に排水口から洗浄水を回収するようにしてもよい。
【0066】
第2方法及び第3方法は、投入口7から吸着材Qを回収するため、収容容器2径方向の動きに制約がある。そのため、第2方法及び第3方法には、第4方法及び第5方法のように、収容容器2の径方向全体に作業孔2Hを形成してもよい。これにより、収容容器2の径方向の任意の位置に吸引管30やスクリューコンベア50を移動することができ、吸着材Qの回収効率を向上させてもよい。
【0067】
吸引管30やスクリューコンベア50は、作業孔2Hの周方向に沿って移動させ、吸着材Qの固着を解しながら吸着材Qを回収してもよい。吸着材Qは、主にスクリューコンベア50により回収するようにし、スクリューコンベア50によっては回収しきれない収容容器2の下部に残置された吸着材Qを吸引管30によって回収するようにしてもよい。この場合、作業孔2Hと吸引管30或いはスクリューコンベア50との間の隙間は、フィルム等で覆われ、吸着材Qの飛散が防止される。吸着材Qを回収した後、作業孔2Hの側から収容容器2の下蓋5に排水口を削孔して形成してもよい。
【0068】
上述したように、第1から第5方法に係る吸着材回収方法に含まれる各工程は、適宜組み合わされて構成することができる。吸着材回収方法に含まれる各工程は、作業環境、作業効率、作業コストを考慮して、最適に組み合わされて構成することができる。
【0069】
以下、吸着材回収方法における吸着材Qの回収方法の選択について説明する。上述したように、吸着材回収方法の各工程には一長一短があり、作業環境、作業効率、作業コスト等の制約に基づいていずれの方法が選択される。
【0070】
図10には、吸着材回収方法の計画から実施までの各工程がフローチャートにより示されている。先ず、作業環境のスペース、吸着塔1の内部構造、回収装置等の条件に応じて収容容器2における吸着材Qを取り出すための作業孔の位置が選択される(ステップS10)。作業孔の位置は、収容容器2の上蓋4の投入口7、下蓋5の一部、上蓋4全部の位置のいずれかの位置が選択される。
【0071】
次に、選択した作業孔の位置に応じて遮蔽材に開口が形成される(ステップS12)。作業孔の位置が収容容器2の上蓋4の投入口7、及び上蓋4全部の位置である場合、遮蔽材12が取り除かれ、開口10Hが形成される。作業孔の位置が下蓋5の一部である場合、遮蔽材13に開口13A,13Bが形成される。次に、形成された開口から所定位置に作業孔が形成される(ステップS14)。作業孔は、収容容器2の上蓋4の投入口7の蓋の取り外し、下蓋5の一部への削孔、上蓋4全部の削除により形成される。
【0072】
次に、作業孔の位置に応じて選択された吸着材の取り出し方法に基づいて作業孔から吸着材が回収される(ステップS16)。作業孔が投入口7である場合、吸引管30により吸着材Qを上方に吸引する方法や、スクリューコンベア50により吸着材Qを上方に移送する方法が適用される。作業孔が下蓋5に形成される場合、吸着材Qを下方に落下させ回収容器に収容する方法が適用される。作業孔が収容容器2の径方向全体に形成される場合、吸着塔1を反転させて吸着材Qを下方に落下させ回収容器に収容する方法や、重機J等の装置を用いて吸着材Qを上方に掬い取る方法が適用される。
【0073】
次に、作業孔の位置に応じて選択された洗浄方法により収容容器2内が洗浄される(ステップS18)。作業孔が投入口7である場合、投入口7からノズルNが挿入され収容容器2内が洗浄される。作業孔が下蓋5に形成された場合、作業孔からノズルNが挿入され収容容器2内が洗浄される。作業孔が収容容器2の径方向全体に形成される場合、作業孔からノズルNを挿入して収容容器2内を洗浄する。
【0074】
次に、作業孔の位置に応じて洗浄水が回収される(ステップS20)。作業孔が投入口7である場合、投入口7に排水管40が挿入され、洗浄水が上方に吸引されて排水される。作業孔が下蓋5に形成される場合、洗浄水は、下方に落下し洗浄水回収容器に収容される。作業孔が収容容器2の径方向全体に形成される場合、吸着塔1を反転させて洗浄水を下方に落下させ洗浄水回収容器に収容する方法や、排水管40により洗浄水を上方に吸引する方法が適用される。作業孔が投入口7である場合や収容容器2の径方向全体に形成される場合、収容容器の下部に排水口を形成し、洗浄水の排水を排水口から排水させ洗浄水回収容器に回収してもよい。
【0075】
次に、遮蔽容器10及び収容容器は解体され、材料毎に分別処理される(ステップS22)。解体後の部材のうち金属部材は、所定基準を満たし再生可能であれば溶融され、金属素材として再生される。
【0076】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0077】
例えば、遮蔽容器10は、ボルト等により解体自在に構成されていてもよい。収容容器2の上蓋4は、ボルト等により着脱自在に構成されていてもよい。収容容器2の下蓋5には、洗浄水を排水する配管が予め設けられていてもよい。吸着材Qは、水が流通可能な袋体に予め充填されて収容容器2内に収容されていてもよい。袋体は、小分けされて収容容器2内に収容されていてもよい。袋体の他に容器が用いられてもよい。吸着材Qは、複数のカートリッジにより積層されて構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0078】
1…吸着塔、2…収容容器、2H…作業孔、3…本体部、4…上蓋、5…下蓋、5A…台座、5B…作業孔、6…供給配管、7…投入口、8…配管装置、8A…部品、9…配管、10…遮蔽容器、10H…開口、11…遮蔽材、11-13…遮蔽材、12…遮蔽材、13…遮蔽材、13A…開口、13B…開口、15…上部構造、30…吸引管、40…排水管、50…スクリューコンベア、51…鞘管、52…オーガスクリュー、B…鉛ビーズ、FP…管、G1…治具、G1H…開口、G2…治具、J…重機、N…ノズル、Q…吸着材、S…内部空間