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特開2023-131810樹脂組成物、成形体、および、多層体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131810
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】樹脂組成物、成形体、および、多層体
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/02 20060101AFI20230914BHJP
   C08L 77/06 20060101ALI20230914BHJP
   C08G 69/26 20060101ALI20230914BHJP
   B65D 65/02 20060101ALN20230914BHJP
【FI】
C08L67/02
C08L77/06
C08G69/26
B65D65/02 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022036772
(22)【出願日】2022-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】小林 政之
(72)【発明者】
【氏名】宮部 高徳
【テーマコード(参考)】
3E086
4J001
4J002
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086BA02
3E086BA04
3E086BA15
3E086BA33
3E086BB02
3E086BB05
3E086BB22
3E086CA01
3E086DA06
4J001DA01
4J001DB02
4J001EB08
4J001EB09
4J001EC47
4J001EE16D
4J001FA01
4J001FB06
4J001FC03
4J001GA12
4J001JA13
4J001JB02
4J001JB29
4J002CF061
4J002CL032
4J002GG00
(57)【要約】
【課題】 優れたバリア性を維持しつつ、かつ、透明性に優れた樹脂組成物、ならびに、成形体および多層体の提供。
【解決手段】 ポリエチレンテレフタレート樹脂50~99質量部と、ポリアミド樹脂50~1質量部とを含み、ポリアミド樹脂は、ジアミンに由来する構成単位と、ジカルボン酸に由来する構成単位とを含み、ジアミンに由来する構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸に由来する構成単位の65.0~95.0モル%が炭素数4~8のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来し、35.0~5.0モル%が炭素数9~12のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する共重合体であり、ポリアミド樹脂の相対粘度が1.7~2.5である、樹脂組成物。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンテレフタレート樹脂50~99質量部と、ポリアミド樹脂50~1質量部とを含み、
前記ポリアミド樹脂は、ジアミンに由来する構成単位と、ジカルボン酸に由来する構成単位とを含み、前記ジアミンに由来する構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、前記ジカルボン酸に由来する構成単位の65.0~95.0モル%が炭素数4~8のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来し、35.0~5.0モル%が炭素数9~12のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する共重合体であり、
前記ポリアミド樹脂の相対粘度が1.7~2.5である、
樹脂組成物。
【請求項2】
前記ジカルボン酸に由来する構成単位の71.0~95.0モル%が炭素数4~8のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来し、29.0~5.0モル%が炭素数9~12のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記ジカルボン酸に由来する構成単位の75.0~95.0モル%が炭素数4~8のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来し、25.0~5.0モル%が炭素数9~12のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記炭素数4~8のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸がアジピン酸を含み、前記炭素数9~12のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸がセバシン酸を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記ジアミンに由来する構成単位の70モル%以上がメタキシリレンジアミンに由来する、請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記ポリアミド樹脂の相対粘度が1.9~2.2である、請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の樹脂組成物から形成された成形体。
【請求項8】
押出成形体である、請求項7に記載の成形体。
【請求項9】
フィルムである、請求項7または8に記載の成形体。
【請求項10】
一軸延伸または二軸延伸されている、請求項9に記載の成形体。
【請求項11】
射出成形体である、請求項7に記載の成形体。
【請求項12】
中空成形体である、請求項7または11に記載の成形体。
【請求項13】
請求項7~12のいずれか1項に記載の成形体を有する多層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、成形体、および、多層体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレート(PET)に代表されるポリエステル樹脂は、透明性、光沢性等の外観に優れ、機械的性能、保香性、ガスバリア性、リサイクル性にも優れるという特長を有している。そのため、ポリエステル樹脂は、フィルム、シート、中空容器等の各種包装材料に広く利用されている。ポリエステル樹脂は高いガスバリア性を有するが、さらなる酸素等に対するガスバリア性が求められる用途にとっては必ずしも十分ではない。ポリエステル樹脂のガスバリア性を改善する手段として、酸化アルミニウムや酸化珪素をポリエステル樹脂からなる成形体や包装容器に蒸着したり、あるいはポリエステル樹脂よりも高いガスバリア性能を有する樹脂をポリエステル樹脂からなる成形体や包装容器に塗布、積層、あるいは溶融混合する等の手段が挙げられる。
【0003】
ここで、ポリエステル樹脂より高いガスバリア性を有する樹脂の一つとしてエチレン-ビニルアルコール共重合樹脂が挙げられる。エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂は、その分子構造の特徴からポリエステル樹脂との相溶性に乏しく、両樹脂を混合してなる樹脂組成物は白濁し、ポリエステル樹脂の特長である透明性を損なう欠点があった。さらに、ポリエステル樹脂における最適な加工温度では、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂は急激に熱劣化する傾向にあるため、ポリエステル樹脂の加工安定性を損なう等の問題点があった。
【0004】
一方、エチレン-ビニルアルコール共重合体以外のガスバリア性樹脂としては、ナイロン6、ナイロン66等に代表されるポリアミド樹脂が挙げられる。とりわけメタキシリレンジアミンを主成分とするジアミン成分とアジピン酸を主成分とするジカルボン酸成分とを重合して得られるポリメタキシリレンアジパミドはガスバリア性に優れるポリアミド樹脂であり、好適である。ポリメタキシリレンアジパミドは他のポリアミド樹脂と比較して高いガスバリア性を有する上に、ポリエステル樹脂の中でも特に広く利用されているポリエチレンテレフタレートとガラス転移温度、融点、結晶性が近似していることから、ポリエステル樹脂と成形加工条件が近似しており、ポリエステル樹脂と成形加工がしやすい。このことから、ポリエステル樹脂のガスバリア性を改善するための材料として、ポリメタキシリレンアジパミドは非常に適した樹脂であるといえる。このような、ポリエステル樹脂とポリアミド樹脂をブレンドした樹脂組成物は、特許文献1および特許文献2に記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2020/250794号
【特許文献2】国際公開第2017/094542号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、本発明者が検討を行ったところ、ポリエステル樹脂にポリメタキシリレンアジパミドを配合した樹脂組成物は、ガスバリア性に優れているが、透明性については、用途等によっては、さらなる高い性能が要求される場合がある。
本発明は、かかる課題を解決することを目的としたものであって、優れたバリア性を維持しつつ、かつ、透明性に優れた樹脂組成物、ならびに、成形体および多層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題のもと、本発明者が検討を行った結果、ポリアミド樹脂の組成と相対粘度を調整することにより、上記課題を解決しうることを見出した。
具体的には、下記手段により、上記課題は解決された。
<1>ポリエチレンテレフタレート樹脂50~99質量部と、ポリアミド樹脂50~1質量部とを含み、前記ポリアミド樹脂は、ジアミンに由来する構成単位と、ジカルボン酸に由来する構成単位とを含み、前記ジアミンに由来する構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、前記ジカルボン酸に由来する構成単位の65.0~95.0モル%が炭素数4~8のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来し、35.0~5.0モル%が炭素数9~12のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する共重合体であり、前記ポリアミド樹脂の相対粘度が1.7~2.5である、樹脂組成物。
<2>前記ジカルボン酸に由来する構成単位の71.0~95.0モル%が炭素数4~8のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来し、29.0~5.0モル%が炭素数9~12のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する、<1>に記載の樹脂組成物。
<3>前記ジカルボン酸に由来する構成単位の75.0~95.0モル%が炭素数4~8のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来し、25.0~5.0モル%が炭素数9~12のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する、<1>に記載の樹脂組成物。
<4>前記炭素数4~8のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸がアジピン酸を含み、前記炭素数9~12のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸がセバシン酸を含む、<1>~<3>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<5>前記ジアミンに由来する構成単位の70モル%以上がメタキシリレンジアミンに由来する、<1>~<4>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<6>前記ポリアミド樹脂の相対粘度が1.9~2.2である、<1>~<5>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<7><1>~<6>のいずれか1つに記載の樹脂組成物から形成された成形体。
<8>押出成形体である、<7>に記載の成形体。
<9>フィルムである、<7>または<8>に記載の成形体。
<10>一軸延伸または二軸延伸されている、<9>に記載の成形体。
<11>射出成形体である、<7>に記載の成形体。
<12>中空成形体である、<7>または<11>に記載の成形体。
<13><7>~<12>のいずれか1つに記載の成形体を有する多層体。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、優れたバリア性を維持しつつ、かつ、透明性に優れた樹脂組成物、ならびに、成形体および多層体を提供可能になった。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という)について詳細に説明する。なお、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は本実施形態のみに限定されない。
なお、本明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書において、各種物性値および特性値は、特に述べない限り、23℃におけるものとする。
本明細書において、融点(Tm)は、示差走査熱量測定(DSC)に従い、ISO11357に準拠して、測定した値とする。具体的には、国際公開第2016/084475号の段落0036の記載に従って測定することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
本明細書における多層体は、フィルムまたはシートの形状をしているものを含む趣旨である。「フィルム」および「シート」とは、それぞれ、長さと幅に対して、厚さが薄く、概ね、平らな成形体をいう。また、本明細書における「フィルム」および「シート」は、単層であっても多層であってもよい。
本明細書で示す規格で説明される測定方法等が年度によって異なる場合、特に述べない限り、2022年1月1日時点における規格に基づくものとする。
【0010】
本実施形態の樹脂組成物は、ポリエチレンテレフタレート樹脂50~99質量部と、ポリアミド樹脂50~1質量部とを含み、前記ポリアミド樹脂は、ジアミンに由来する構成単位と、ジカルボン酸に由来する構成単位とを含み、前記ジアミンに由来する構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、前記ジカルボン酸に由来する構成単位の65.0~95.0モル%が炭素数4~8のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来し、35.0~5.0モル%が炭素数9~12のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する共重合体であり、前記ポリアミド樹脂の相対粘度が1.7~2.5であることを特徴とする。
このような構成とすることにより、優れたバリア性を維持しつつ、透明性に優れた樹脂組成物が得られる。ポリアミド樹脂を構成するジカルボン酸成分として、炭素数4~8のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸と共に、炭素数9~12のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸を用いることにより、結晶化速度がゆっくりとなり、固化に際して濁りづらくなり、得られる成形体の透明性が向上する傾向にある。特に、ポリエステル樹脂とポリアミド樹脂のブレンド物は、透明性が劣る傾向にあるが、本実施形態では、特定のキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂を用いることに透明性を低下できた点に高い意義がある。特に、ポリエステル樹脂とMXD6(メタキシリレンジアミンとアジピン酸から合成されたポリアミド樹脂)と比較しても、ヘイズが格段に小さくなり、透明性が向上している点は驚くべきことである。
また、特定のキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂を用いることにより、酸素バリア性も向上する。加えて、相対粘度を1.7~2.5の範囲とすることにより、透明性がより向上する傾向にある。この理由は、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂の分散性が向上することによるものであると推測される。
【0011】
<ポリエチレンテレフタレート樹脂>
本実施形態の樹脂組成物は、ポリエチレンテレフタレート樹脂を含む。ポリエチレンテレフタレート樹脂を含むことにより、優れた力学的性質、耐薬品性、保香性が達成される。
【0012】
本実施形態で用いるポリエステル樹脂としては、好ましくは、ジオールに由来する構成単位とジカルボン酸に由来する構成単位を含み、ジオールに由来する構成単位の70モル%以上がエチレングリコールに由来し、ジカルボン酸に由来する構成単位の60モル%以上がテレフタル酸およびそのエステルから選択される少なくとも1種(好ましくはテレフタル酸)に由来するポリエステル樹脂である。
前記ジオールに由来する構成単位は、好ましくは85モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上、一層好ましくは99モル%以上がエチレングリコールに由来することが好ましい。
また、前記ジカルボン酸に由来する構成単位は、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上がテレフタル酸およびそのエステルから選択される少なくとも1種に由来することが好ましい。前記の上限は100モル%であってもよく、99モル%以下が好ましい。
【0013】
さらに、本実施形態においては、前記ジカルボン酸に由来する構成単位の60~99モル%がテレフタル酸およびそのエステルから選択される少なくとも1種(好ましくはテレフタル酸)に由来し、40~1モル%がイソフタル酸およびそのエステルから選択される少なくとも1種(好ましくはイソフタル酸)に由来するものであってもよい。
また、本実施形態においては、前記ジカルボン酸に由来する構成単位におけるイソフタル酸およびそのエステルから選択される少なくとも1種に由来する構成単位の割合は、20モル%以下であることが好ましく、15モル%以下であることがより好ましく、10モル%以下であることがさらに好ましく、5モル%以下であることが一層好ましい。
【0014】
本実施形態で用いるポリエステル樹脂は、さらに、ジオールに由来する構成単位が、1,4-シクロヘキサンジメタノールに由来する構成単位等の他の構成単位を含んでいてもよい。しかしながら、本実施形態においては、ジオールに由来する構成単位の好ましくは85モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上、一層好ましくは99モル%以上が、エチレングリコールであることが好ましい。
また、本実施形態で用いるポリエステル樹脂は、さらに、ジカルボン酸に由来する構成単位がナフタレンジカルボン酸に由来する構成単位等の他の構成単位を含んでいてもよい。しかしながら、本実施形態においては、ジカルボン酸に由来する構成単位の好ましくは85モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上、一層好ましくは99モル%以上が、テレフタル酸およびイソフタル酸ならびにこれらのエステル(好ましくはテレフタル酸およびイソフタル酸)であることが好ましい。
【0015】
本実施形態におけるポリエステル樹脂は、末端基を除く全構成単位の、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、一層好ましくは95質量%以上、より一層好ましくは98質量%以上、さらに一層好ましくは99質量%以上がジオールに由来する構成単位とジカルボン酸由来によって構成される。
【0016】
ポリエステル樹脂層に含まれるポリエステル樹脂は、明確な融点を有する結晶性ポリエステル樹脂であってもよいし、明確な融点を有さない非晶性ポリエステル樹脂であってもよいが、融点を有する結晶性ポリエステル樹脂であることが好ましい。
本実施形態におけるポリエステル樹脂におけるポリエステル樹脂の融点は、150℃以上であることが好ましく、200℃以上であることがより好ましく、220℃以上であることがさらに好ましく、また、300℃で以下あることが好ましく、290℃以下であることがより好ましく、280℃以下であることがさらに好ましい。
本実施形態におけるポリエステル樹脂層が2種以上のポリエステル樹脂を含む場合、ポリエステル樹脂の融点は、各ポリエステル樹脂の融点に質量分率をかけた値とする。
【0017】
ポリエステル樹脂の固有粘度は、0.30dL/g以上であることが好ましく、0.40dL/g以上であることがより好ましく、0.60dL/g以上であることがさらに好ましい。また、前記固有粘度は、2.00dL/g以下であることが好ましく、1.50dL/g以下であることがより好ましく、1.00dL/g以下であることがさらに好ましく、0.90dL/g以下であることが一層好ましい。
本実施形態におけるポリエステル樹脂層が2種以上のポリエステル樹脂を含む場合、固有粘度は混合物のポリエステル樹脂の固有粘度とする。
【0018】
固有粘度は以下の方法に従って測定される。
フェノール/1,1,2,2-テトラクロロエタン(質量比1/1)の混合溶媒中に、ポリエステル樹脂(ペレット)を、濃度が1.00g/dLとなるように110℃で1時間撹拌して溶解させる。その後、30℃まで冷却する。全自動溶液粘度計にて、30℃で試料溶液の落下秒数、溶媒のみの落下秒数をそれぞれ測定し、下記式(1)により固有粘度を算出する。
固有粘度=((1+4Kηsp0.5-1)/(2KC) …(1)
ここで、ηsp=η/η-1であり、ηは試料溶液の落下秒数、ηは溶媒のみの落下秒数、Cは試料溶液濃度(g/dL)、Kはハギンズの定数である。Kは0.33を採用する。
【0019】
ポリエステル樹脂としては、上記の他、特開2016-169027号公報の段落0064~0080に記載のポリエステル樹脂、特開2006-111718号公報の段落0010~0021に記載のポリエステル樹脂、特開2017-105873号公報に記載のポリエステル樹脂、国際公開第2013/168804号に記載のポリエステル樹脂を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0020】
本実施形態の樹脂組成物中のポリエチレンテレフタレート樹脂の質量割合は、50質量%以上であることが好ましく、50質量%超であることがより好ましく、60質量%以上であることがさらに好ましく、65質量%以上であることが一層好ましく、75質量%以上であることがより一層好ましく、85質量%以上であることがさらに一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、高い透明性を保つことができる。また、前記ポリエチレンテレフタレート樹脂の質量割合は、樹脂組成物中、99質量%以下であることが好ましく、98質量%以下であることがより好ましく、97質量%以下であることがさらに好ましく、96質量%以下であることが一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、高いガスバリア性を得ることが可能となる。
本実施形態の樹脂組成物は、ポリエチレンテレフタレート樹脂を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0021】
<ポリアミド樹脂>
本実施形態の樹脂組成物は、ポリアミド樹脂を含む。本実施形態で用いるポリアミド樹脂は、ジアミンに由来する構成単位と、ジカルボン酸に由来する構成単位とを含み、前記ジアミンに由来する構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、前記ジカルボン酸に由来する構成単位の65.0~95.0モル%が炭素数4~8のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来し、35.0~5.0モル%が炭素数9~12のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来し、相対粘度が1.7~2.5であるポリアミド樹脂である。以下、本明細書では、このようなポリアミド樹脂を「キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂」ということがある。キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂を用いることにより、透明性およびバリア性に優れた樹脂組成物が得られる。
【0022】
キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂は、ジアミンに由来する構成単位と、ジカルボン酸に由来する構成単位を含み、前記ジアミンに由来する構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、前記ジカルボン酸に由来する構成単位の65.0~95.0モル%が炭素数4~8のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来し、35.0~5.0モル%が炭素数9~12のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する。
【0023】
本実施形態におけるキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂は、ジカルボン酸に由来する構成単位が炭素数4~8のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する構成単位と炭素数9~12のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する構成単位の両方を含む共重合体を用いる。すなわち、少なくとも、キシリレンジアミンと、炭素数4~8のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸と、炭素数9~12のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸との共重合体である。このように、共重合体とすることにより、透明性が向上する。すなわち、ジアミンに由来する構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸に由来する構成単位が炭素数4~8のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来するポリアミド樹脂(例えば、MXD6)と、ジアミンに由来する構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸に由来する構成単位が炭素数9~12のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来するポリアミド樹脂(例えば、MXD10)とをブレンドすると、十分な透明性が達成できない。これは、MXD6等とMXD10等では十分に相溶しない為と推測される。本実施形態では、共重合体(MXD610等)を用いることにより、この問題を解決したものである。
本実施形態で用いるキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂は、キシリレンジアミン(好ましくはメタキシリレンジアミン)と、炭素数4~8のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸(好ましくはアジピン酸)と、炭素数9~12のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸(好ましくはセバシン酸)との共重合体であり、末端基を除く全構成単位の、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、一層好ましくは95質量%以上、より一層好ましくは98質量%以上、さらに一層好ましくは99質量%以上がキシリレンジアミンと、炭素数4~8のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸と、炭素数9~12のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸の由来の構成単位によって構成される。
【0024】
キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂は、ジアミンに由来する構成単位の70モル%以上が、好ましくは80モル%以上が、より好ましくは90モル%以上が、さらに好ましくは95モル%以上が、一層好ましくは99モル%以上がキシリレンジアミン(好ましくはメタキシリレンジアミン)に由来する。前記上限は100モル%であってもよい。キシリレンジアミンは、メタキシリレンジアミンおよびパラキシリレンジアミンが好ましく、メタキシリレンジアミンがより好ましい。
本実施形態において、キシリレンジアミンにおけるメタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンのモル比率は、メタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンの合計を100モルとしたときに、10~100/90~0であることが好ましく、30~100/70~0であることがより好ましく、50~100/50~0であることがさらに好ましく、80~100/20~0であることが一層好ましく、90~100/10~0であることがより一層好ましく、95~100/5~0であることがさらに一層好ましく、98~100/2~0であることが特に一層好ましい。メタキシリレンジアミンの比率を高くすることにより、融点上昇を抑えることができ、加工時温度を下げられることで、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂に由来するコゲ、ゲルの発生をより効果的に抑制できる。
【0025】
本実施形態におけるポリアミド樹脂の原料ジアミン成分として用いることができるキシリレンジアミン以外のジアミンとしては、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、2-メチルペンタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4-トリメチル-ヘキサメチレンジアミン、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノメチル)デカリン、ビス(アミノメチル)トリシクロデカン等の脂環式ジアミン、ビス(4-アミノフェニル)エーテル、パラフェニレンジアミン、ビス(アミノメチル)ナフタレン等の芳香環を有するジアミン等を例示することができ、1種または2種以上を混合して使用できる。
【0026】
本実施形態で用いるキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂のジカルボン酸に由来する構成単位は、65.0~95.0モル%が炭素数4~8のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来し、35.0~5.0モル%が炭素数9~12のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する。炭素数4~8のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸を用いることにより、アミド結合密度を上げることができ、酸素バリア性に優れるポリアミド樹脂が得られる傾向にある。また、炭素数9~12のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸を用いることにより、ジカルボン酸成分として、炭素数4~8のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸のみを用いる場合と比較して、透明性が向上する傾向にある。
【0027】
より具体的には、前記ジカルボン酸に由来する構成単位における炭素数4~8のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸(好ましくはアジピン酸)の割合は、65.0モル%以上であり、71.0モル%以上であることが好ましく、75.0モル%以上であることがより好ましく、78.0モル%以上であることがさらに好ましい。また、前記ジカルボン酸に由来する構成単位における炭素数4~8のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸(好ましくはアジピン酸)の割合は、95.0モル%以下であり、90.0モル%以下であることが好ましく、88.0モル%以下であることがより好ましく、85.0モル%以下であることがさらに好ましい。
また、前記ジカルボン酸に由来する構成単位における炭素数9~12のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸(好ましくはセバシン酸)の割合は、5.0モル%以上であり、10.0モル%以上であることが好ましく、12.0モル%以上であることがより好ましく、15.0モル%以上であることがさらに好ましい。また、前記ジカルボン酸に由来する構成単位における炭素数9~12のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸(好ましくはセバシン酸)の割合は、35.0モル%以下であり、29.0モル%以下であることが好ましく、25.0モル%以下であることがより好ましく、22.0モル%以下であることがさらに好ましい。
【0028】
本実施形態におけるキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂のジカルボン酸に由来する構成単位は、70モル%以上、好ましくは75モル%以上、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、一層好ましくは95モル%以上が、より一層好ましくは98モル%以上が、さらに一層好ましくは99.9モル%以上が、炭素数が4~8のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する構成単位と炭素数9~12のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する構成単位によって占められる。前記合計の上限は100モル%であってもよい。
【0029】
炭素数4~8のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、アジピン酸、スベリン酸が挙げられ、アジピン酸が好ましい。
炭素数9~12のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸としては、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸が挙げられ、セバシン酸が好ましい。セバシン酸は植物原料由来のものとすることができ、樹脂のバイオベース度を高めることができる。
【0030】
本実施形態においては、前記炭素数4~8のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸がアジピン酸を含み、前記炭素数9~12のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸がセバシン酸を含むことが好ましい。さらには、炭素数4~8のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸の好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上、さらに好ましくは99%以上がアジピン酸であり、炭素数9~12のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸の好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上、さらに好ましくは99%以上がセバシン酸であることが好ましい。
【0031】
キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂においては、炭素数4~8のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する構成単位、および、炭素数9~12のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する構成単位は、それぞれ、1種のみ用いてもよいし、2種以上用いてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0032】
上記炭素数4~12のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸以外のジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、テレフタル酸、オルソフタル酸等のフタル酸化合物、1,2-ナフタレンジカルボン酸、1,3-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、1,6-ナフタレンジカルボン酸、1,7-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸といったナフタレンジカルボン酸を例示することができ、1種または2種以上を混合して使用できる。
【0033】
本実施形態におけるキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂の特に好ましい形態としては、ジアミンに由来する構成単位とジカルボン酸に由来する構成単位を含み、ジアミンに由来する構成単位の95モル%以上(より好ましくは98モル%以上、さらに好ましくは99.9モル%以上)がメタキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸に由来する構成単位の、75.0~95.0モル%がアジピン酸に由来し、25.0~5.0モル%がセバシン酸に由来し、アジピン酸に由来する構成単位とセバシン酸に由来する構成単位の合計がジカルボン酸に由来する構成単位の95モル%以上(より好ましくは98モル%以上、さらに好ましくは99.9モル%以上)を占めるポリアミド樹脂である。
【0034】
なお、本実施形態で用いるキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂は、ジカルボン酸に由来する構成単位とジアミンに由来する構成単位を含むが、ジカルボン酸に由来する構成単位およびジアミンに由来する構成単位以外の構成単位や、末端基等の他の部位を含みうる。他の構成単位としては、ε-カプロラクタム、バレロラクタム、ラウロラクタム、ウンデカラクタム等のラクタム、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸等のアミノカルボン酸等由来の構成単位が例示できるが、これらに限定されるものではない。さらに、本実施形態で用いるキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂には、合成に用いた添加剤等の微量成分が含まれる場合もあろう。
本実施形態におけるキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂は、末端基を除く全構成単位の好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上が、さらに好ましくは90質量%以上が、一層好ましくは95質量%以上が、より一層好ましくは98質量%以上が、さらに一層好ましくは99質量%以上がジカルボン酸に由来する構成単位およびジアミンに由来する構成単位からなる。前記上限は100質量%であってもよい。
【0035】
本実施形態で用いるキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂の相対粘度は、1.7以上であり、1.9以上であることが好ましく、2.0以上であることがより好ましい。また、前記キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂の相対粘度は、2.5以下であり、2.4以下であることが好ましく、2.3以下であることがさらに好ましく、2.2以下であってもよい。
本実施形態で用いるキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂の相対粘度は、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂0.2gを96%硫酸20mLに溶解し、キャノンフェンスケ型粘度計にて25℃で測定した落下時間(t)と、同様に測定した96%硫酸そのものの落下時間(t0)の比であり、次式で示される。
相対粘度=t/t0
本実施形態におけるポリアミド樹脂層が2種以上のキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂を含む場合、混合物の相対粘度とする。
【0036】
本実施形態で用いるキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂の示差走査熱量測定に従って測定した融点は、195℃以上であることが好ましく、200℃以上であることがより好ましく、205℃以上であることがさらに好ましく、210℃以上であることが一層好ましい。前記キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂の融点は、235℃以下であることが好ましく、230℃以下であることがより好ましく、225℃以下であることがさらに好ましく、220℃以下であることが一層好ましい。
本実施形態における樹脂組成物が2種以上のキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂を含む場合、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂の融点は、各キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂の融点に質量分率をかけた値とする。
【0037】
本実施形態の樹脂組成物中のキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂の質量割合は、1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましく、3質量%以上であることがさらに好ましく、4質量%以上であることが一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、より高いガスバリア性を得ることが可能となる。また、前記キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂の質量割合は、樹脂組成物中、50質量%以下であることが好ましく、50質量%未満であることがより好ましく、40質量%以下であることがさらに好ましく、35質量%以下であることが一層好ましく、25質量%以下であることがより一層好ましく、15質量%以下であることがさらに一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、高い透明性を保つことができる。
本実施形態の樹脂組成物は、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0038】
<ポリエチレンテレフタレート樹脂とキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂のブレンド比率>
次に、本実施形態の樹脂組成物におけるポリエチレンテレフタレート樹脂とキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂のブレンド比率について述べる。本実施形態においては、ポリエチレンテレフタレート樹脂50~99質量部に対し、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂50~1質量部の割合で含む。また、ポリエチレンテレフタレート樹脂とキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂の合計を100質量部としたとき、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂の質量割合は、1質量部以上であることが好ましく、2質量部以上であることがより好ましく、3質量部以上であることがさらに好ましく、4質量部以上であることが一層好ましい。また、前記キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂の質量割合は、樹脂組成物中、50質量部以下であることが好ましく、50質量部未満であることがより好ましく、40質量部以下であることがさらに好ましく、35質量部以下であることが一層好ましく、25質量部以下であることがより一層好ましく、20質量部以下であることがさらに一層好ましく、15質量部以下であることがよりさらに一層好ましい。
本実施形態の樹脂組成物におけるポリエチレンテレフタレート樹脂とキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂の総量は、70質量%以上であることが好ましく、75質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、85質量%以上であることが一層好ましく、90質量%以上であることがより一層好ましく、95質量%以上であることがさらに一層好ましく、97質量%以上であってもよい。また、本実施形態の樹脂組成物におけるポリエチレンテレフタレート樹脂とキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂の総量の上限は、100質量%であってもよい。
【0039】
<他の成分>
本実施形態の樹脂組成物は、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂以外のポリアミド樹脂、ポリアミド樹脂およびポリエチレンテレフタレート樹脂以外の熱可塑性樹脂、充填剤、ならびに、樹脂添加剤成分を含んでいてもよい。
【0040】
キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂以外のポリアミド樹脂としては、脂肪族ポリアミド樹脂であっても、半芳香族ポリアミド樹脂であっても、脂肪族ポリアミド樹脂と半芳香族ポリアミド樹脂の混合物であってもよいが、少なくとも半芳香族ポリアミド樹脂を含むことが好ましい。例えば、ポリアミド樹脂としては、特開2011-132550号公報の段落0011~0013の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
脂肪族ポリアミド樹脂としては、ポリアミド6、ポリアミド66が例示され、ポリアミド66が好ましい。
半芳香族ポリアミド樹脂としては、テレフタル酸系ポリアミド樹脂(ポリアミド6T、ポリアミド9T、ポリアミド10T)、テレフタル酸およびイソフタル酸系ポリアミド樹脂(ポリアミド6T/6I、ポリアミド9T/9I、ポリアミド10T/10I)が例示される。
樹脂組成物は、上記キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂以外のポリアミド樹脂を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂以外のポリアミド樹脂は、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂100質量部に対し、10質量部以下の割合で配合されることが好ましい。
【0041】
充填剤としては、特開2020-200380号公報の段落0029~0035の記載を参酌でき、この内容は明細書に組み込まれる。また、充填剤を配合する場合の含有量は、樹脂組成物の10~50質量%であることが好ましい。
【0042】
樹脂添加剤としては、酸化促進剤、黄変抑制剤、酸素吸収剤、熱安定剤、光安定剤、防湿剤、防水剤、滑剤(ステアリン酸カルシウム等)、展着剤などが挙げられる。酸化促進剤および黄変抑止剤については、国際公開第2021/177126号の段落0061~0070に記載の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0043】
<樹脂組成物の製造方法>
本実施形態の樹脂組成物は、公知の熱可塑性樹脂組成物の製造方法によって製造できる。
本実施形態の樹脂組成物の製造方法の一実施形態として、ポリエチレンテレフタレート樹脂、および、ポリアミド樹脂、ならびに、必要に応じて配合される他の成分を配合して溶融混練することが好ましい。このような樹脂組成物の一例として、ペレットが挙げられる。
具体的には、各成分を、例えばタンブラーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を用い予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダーなどの混合機で溶融混練する方法が挙げられる。強化フィラーは、混練時に破砕するのを抑制するため、押出機の途中から供給することが好ましい。また、各成分から選ばれた2種以上の成分を予め混合、混練しておいてもよい。
【0044】
<樹脂組成物の物性>
次に、本実施形態の樹脂組成物の物性について説明する。
本実施形態の樹脂組成物は、透明性に優れている。
具体的には、本実施形態の樹脂組成物は、180μmの厚さの無延伸フィルムに成形したときのヘイズが35.0%以下であることが好ましく、10.0%以下であることがより好ましい。下限としては、0%が理想であるが、0.1%以上が実際的である。このような無延伸フィルムの優れた透明性は、ポリアミド樹脂を構成するジカルボン酸成分として、炭素数4~8のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸と共に、炭素数9~12のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸を用いることによって達成される。
また、本実施形態の樹脂組成物は、20μmの厚さの延伸フィルムに成形したときのヘイズが35.0%以下であることが好ましく、25.0%以下であることがより好ましく、20.0%以下であることがさらに好ましい。下限としては、0%が理想であるが、0.1%以上が実際的である。このような延伸フィルムの優れた透明性は、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂の相対粘度を調整することによって達成される。
本実施形態の樹脂組成物は、酸素バリア性に優れている。
具体的には、本実施形態の樹脂組成物は、180μmの厚さの無延伸フィルムに成形したときの酸素バリア性が5.0(cc・mm)/(m・day・atm)以下であることが好ましい。また、前記酸素バリア性の下限値は、0(cc・mm)/(m・day・atm)が好ましいが、0.01(cc・mm)/(m・day・atm)以上が実際的である。このような優れた無延伸フィルムの優れた酸素バリア性は、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂、特に、ジカルボン酸単位として、炭素数4~8のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来の構成単位を含むポリアミド樹脂を用いることによって達成される。
また、本実施形態の樹脂組成物は、20μmの厚さの延伸フィルムに成形したときの酸素バリア性が2.0(cc・mm)/(m・day・atm)以下であることが好ましく、1.5(cc・mm)/(m・day・atm)以下であることがより好ましい。また、前記酸素バリア性の下限値は、0(cc・mm)/(m・day・atm)が好ましいが、0.01(cc・mm)/(m・day・atm)以上が実際的である。このような延伸フィルムの優れた酸素バリア性は、延伸することによって達成される。前記延伸フィルムは、例えば、実施例に記載の条件で製造された延伸フィルムである。
【0045】
<樹脂組成物の用途および成形方法> 次に、本実施形態の樹脂組成物の用途について説明する。
本実施形態の成形体は、本実施形態の樹脂組成物から形成される。本実施形態の成形体の製造方法は、特に定めるものではない。
例えば、本実施形態の成形体は、各成分を溶融混練した後、直接に各種成形法で成形してもよいし、各成分を溶融混練してペレット化した後、再度、溶融して、各種成形法で成形してもよい。
【0046】
成形体を成形する方法としては、特に制限されず、従来公知の成形法を採用でき、例えば、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、異形押出法、トランスファー成形法、中空成形法、ガスアシスト中空成形法、ブロー成形法、押出ブロー成形、IMC(インモールドコーティング成形)成形法、回転成形法、多層成形法、2色成形法、インサート成形法、サンドイッチ成形法、発泡成形法、加圧成形法等が挙げられる。
【0047】
本実施形態の成形体の一実施形態は、押出成形体である。また、本実施形態の成形体の他の実施形態は、射出成形体である。
本実施形態の成形体の形状としては、特に制限はなく、成形体の用途、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シート状、フィルム状、円筒状、環状、円形状、楕円形状、板状、プレート状、ロッド状、歯車状、多角形形状、中空状、枠状、箱状、パネル状のもの等が挙げられ、中空状が好ましい。
【0048】
本実施形態の成形体は、フィルムであることが好ましい。フィルムは延伸フィルムであることが好ましい。延伸フィルムは、単層延伸フィルムであってもよいし、多層延伸フィルムであってもよい。フィルムは、通常、押出成形によって成形された押出成形品である。延伸フィルムは、押出成形によって押し出されたあと、ロール間を搬送しながら延伸されることが好ましい。
延伸は、一方向のみに行ってもよいし(一軸延伸)、直交する二方向に行ってもよく(二軸延伸)、二軸延伸が好ましい。フィルムの搬送方向(Machine direction、「MD」ということがある)またはフィルムの幅方向(Transverse Direction、「TD」ということがある)のうちのいずれか一方向(より好ましくは、MD)、または、MDおよびTDの二方向に延伸することが好ましい。二軸延伸の場合、二方向の延伸は同時に行ってもよいし、逐次に行ってもよい。
フィルムを一軸延伸する場合の延伸倍率(MDあるいはTD延伸倍率)は、2倍以上延伸することが好ましく、3倍以上延伸することがより好ましく、5倍以上延伸することがさらに好ましい。
フィルムを二軸延伸する場合の延伸倍率は、それぞれの方向に、2倍以上延伸することが好ましく、2.5倍以上延伸することがより好ましく、2.9倍以上延伸することがさらに好ましい。一軸または二軸延伸する場合の、各延伸倍率の上限値は特に定めるものではないが、それぞれ、例えば、5倍以下、さらには、4倍以下、特には、3.5倍以下とすることができる。
フィルムの総合延伸倍率は、4倍以上であることが好ましく、6倍以上であることがより好ましく、8倍以上であることがさらに好ましい。総合延伸倍率の上限については、特に定めるものではないが、例えば、25倍以下とでき、さらには16倍以下とすることができ、特には13倍以下とすることもできる。ここで、総合延伸倍率とは、延伸前のフィルムの面積に対する、延伸した量後のフィルムの面積の割合であり、下記式で表される値である。
総合延伸倍率=MD延伸倍率xTD延伸倍率
【0049】
本実施形態の成形体は、また、他の層と積層した多層体であることも好ましい。多層体に含まれる他の層としては、ポリオレフィンフィルム(特に、延伸ポリオレフィンフィルム)、ポリエステルフィルム(特に、ポリエチレンテレフタレートフィルム)、金属蒸着膜が例示される。また、多層体に含まれる他の層としては、バリア性樹脂層、酸素吸収層、シーラント層、意匠層等も例示される。
【0050】
また、本実施形態の単層または多層フィルムは、用途に応じて、熱処理や調湿処理を行ってもよい。これらの詳細は、国際公開第2021/070500号の段落0049の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
また、延伸フィルムの製造、および、多層フィルムの製造について、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、国際公開第2019/208687号の段落0025~0030の記載、特開2001-002800号公報の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0051】
本実施形態の成形体は、また、中空成形体であることが好ましい。中空成形体の一例としては、ボトルが例示される。中空成形体は、例えば、射出成形によって成形された射出成形品である。
中空成形体としては、単層容器または多層容易が例示され、単層容器が好ましい。多層容器の場合は、本実施形態の樹脂組成物から形成された層と、他の樹脂層とを有する多層容器が挙げられる。例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂層/本実施形態の樹脂組成物から形成された層/ポリエチレンテレフタレート樹脂層の3層構造を含む多層容器が挙げられる。容器の種類は特に定めるものでは無く、例えば、ボトル、カップ、チューブ、トレイ、タッパウェア等が例示され、ボトルが好ましい。
単層容器または多層容器は、例えば、射出成形によって、プリフォームを成形した後、ブロー成形することによって成形できる。
【0052】
本実施形態の成形体の利用分野については特に定めるものではない。
本実施形態の成形体が、単層または多層フィルム、あるいは、単層または多層容器である場合、包装材料として好ましく用いられる。本実施形態の包装材料としては、食品用、医療用、化粧料用などが例示される。
本実施形態の包装材料に充填または包装できる内容物としては、米菓、豆菓子、ナッツ類、ビスケット、クッキー、ウェハース菓子、マシュマロ、パイ、半生ケーキ、キャンディ、スナック菓子などの菓子類、パン、スナックめん、即席めん、乾めん、パスタ、無菌包装米飯、ぞうすい、おかゆ、包装もち、シリアルフーズなどのステープル類、漬物、煮豆、納豆、味噌、高野豆腐、凍豆腐、豆腐、なめ茸、こんにゃく、山菜加工品、ジャム類、ピーナッツクリーム、サラダ類、冷凍野菜、ポテト加工品などの農産加工品、ハム類、ベーコン、ソーセージ類、チキン加工品、コンビーフ類などの畜産加工品、魚肉ハム、魚肉ソーセージ、水産練製品、かまぼこ、のり、佃煮、かつおぶし、塩辛、スモークサーモン、辛子明太子などの水産加工品、桃、みかん、パイナップル、マンゴー、りんご、洋ナシ、さくらんぼなどの果肉類、コーン、アスパラガス、マッシュルーム、玉ねぎ、人参、大根、じゃがいもなどの野菜類、ハンバーグ、ミートボール、水産フライ、ギョーザ、コロッケなどを代表とする冷凍惣菜、チルド惣菜などの調理済食品、バター、マーガリン、チーズ、クリーム、インスタントクリーミーパウダー、育児用調整粉乳などの乳製品、液体調味料、レトルトカレー、ペットフードなどの食品類、タバコ、使い捨てカイロ、医薬品、化粧品などが挙げられる。
【実施例0053】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
実施例で用いた測定機器等が廃番等により入手困難な場合、他の同等の性能を有する機器を用いて測定することができる。
なお、AAはアジピン酸を、SAはセバシン酸を、RVは相対粘度を示している。
【0054】
1.原料
PET1:BK2180、三菱ケミカル株式会社製、イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(固有粘度:0.83dL/g、融点:248℃)
PET2:RT-553C、三菱ケミカル株式会社製、ポリエチレンテレフタレート(固有粘度:0.84dL/g、融点:255℃)
【0055】
MXD610(AA:SA=80:20):下記合成例により合成した。
<MXD610の合成例>
撹拌機、分縮器、全縮器、温度計、滴下ロートおよび窒素導入管、ストランドダイを備えた反応容器に、精秤したアジピン酸10,000g(68mol)、セバシン酸3,460g(17.1mol)、次亜リン酸ナトリウム一水和物0.38g(NaHPO・HO)(ポリアミド樹脂中のリン原子濃度換算で5質量ppm)および酢酸ナトリウム0.15gを配合し、十分に窒素置換した後、窒素を内圧0.4MPaまで充填し、さらに少量の窒素気流下で系内を撹拌しながら190℃まで加熱した。
これにメタキシリレンジアミン11,813g(87mol)を撹拌下に滴下し、生成する縮合水を系外へ除きながら系内を連続的に昇温した。メタキシリレンジアミンの滴下終了後、内温を上昇させ、255℃に達した時点で反応容器内を減圧にし、さらに内温を上昇させて260℃で10分間、溶融重縮合反応を継続した。その後、系内を窒素で加圧し、得られた重合物をストランドダイから取り出して、これをペレット化し、ポリアミドMXD610(80/20)を得た。得られた樹脂のRVは2.1、融点は212℃であった。
【0056】
MXD610(AA:SA=80:20):下記合成例により合成した。
<MXD610の合成例>
撹拌機、分縮器、全縮器、温度計、滴下ロートおよび窒素導入管、ストランドダイを備えた反応容器に、精秤したアジピン酸10,000g(68mol)、セバシン酸3,460g(17.1mol)、次亜リン酸ナトリウム一水和物0.38g(NaHPO・HO)(ポリアミド樹脂中のリン原子濃度換算で5質量ppm)および酢酸ナトリウム0.15gを配合し、十分に窒素置換した後、窒素を内圧0.4MPaまで充填し、さらに少量の窒素気流下で系内を撹拌しながら190℃まで加熱した。
これにメタキシリレンジアミン11,813g(87mol)を撹拌下に滴下し、生成する縮合水を系外へ除きながら系内を連続的に昇温した。メタキシリレンジアミンの滴下終了後、内温を上昇させ、255℃に達した時点で反応容器内を減圧にし、さらに内温を上昇させて260℃で10分間、溶融重縮合反応を継続した。その後、系内を窒素で加圧し、得られた重合物をストランドダイから取り出して、これをペレット化し、ポリアミドMXD610(80/20)を得た。得られた樹脂は、バッチ式乾燥機で180℃、2時間で乾燥を行い、重合度を上げ、RV2.7、融点212℃の樹脂を得た。
【0057】
MXD610(AA:SA=90:10):下記合成例により合成した。
<MXD610(90/10)の合成例>
撹拌機、分縮器、全縮器、温度計、滴下ロートおよび窒素導入管、ストランドダイを備えた反応容器に、精秤したアジピン酸10,000g(68mol)、セバシン酸1,538g(7.6mol)、次亜リン酸ナトリウム一水和物0.33g(NaHPO・HO)(ポリアミド樹脂中のリン原子濃度換算で5質量ppm)および酢酸ナトリウム0.13gを配合し、十分に窒素置換した後、窒素を内圧0.4MPaまで充填し、さらに少量の窒素気流下で系内を撹拌しながら190℃まで加熱した。
これにメタキシリレンジアミン10,500g(77mol)を撹拌下に滴下し、生成する縮合水を系外へ除きながら系内を連続的に昇温した。メタキシリレンジアミンの滴下終了後、内温を上昇させ、255℃に達した時点で反応容器内を減圧にし、さらに内温を上昇させて260℃で10分間、溶融重縮合反応を継続した。その後、系内を窒素で加圧し、得られた重合物をストランドダイから取り出して、これをペレット化し、ポリアミドMXD610(90/10)を得た。得られた樹脂のRVは2.1、融点は225℃であった。
【0058】
MXD610(AA:SA=70:30):下記合成例により合成した。
<MXD610(70/30)の合成例>
撹拌機、分縮器、全縮器、温度計、滴下ロートおよび窒素導入管、ストランドダイを備えた反応容器に、精秤したアジピン酸10,000g(68mol)、セバシン酸5,931g(29.3mol)、次亜リン酸ナトリウム一水和物0.44g(NaHPO・HO)(ポリアミド樹脂中のリン原子濃度換算で5質量ppm)および酢酸ナトリウム0.17gを配合し、十分に窒素置換した後、窒素を内圧0.4MPaまで充填し、さらに少量の窒素気流下で系内を撹拌しながら190℃まで加熱した。
これにメタキシリレンジアミン13,500g(99mol)を撹拌下に滴下し、生成する縮合水を系外へ除きながら系内を連続的に昇温した。メタキシリレンジアミンの滴下終了後、内温を上昇させ、255℃に達した時点で反応容器内を減圧にし、さらに内温を上昇させて260℃で10分間、溶融重縮合反応を継続した。その後、系内を窒素で加圧し、得られた重合物をストランドダイから取り出して、これをペレット化し、ポリアミドMXD610(70/30)を得た。得られた樹脂のRVは2.1、融点は210℃であった。
【0059】
MXD10:下記合成例により合成した。
<MXD10の合成例>
撹拌機、分縮器、冷却器、温度計、滴下槽および窒素ガス導入管を備えたジャケット付反応缶内でセバシン酸(CASDA製)を入れ、十分窒素置換し、170℃にて加熱し溶融した後、内容物を撹拌しながら、メタキシリレンジアミン(三菱ガス化学社製、MXDA)をセバシン酸とのモル比が1:1になるように徐々に滴下しながら、温度を240℃まで上昇させた。滴下終了後、260℃まで昇温し、20分間継続した。その後、反応系内圧を0.08MPaまで連続的に減圧し、反応を継続した。反応終了後、反応缶内を窒素ガスにて0.2MPaの圧力を掛けポリマーを重合槽下部のノズルよりストランドとし取出し、水冷後ペレタイザーにてペレット化することで得た。得られた樹脂のRVは2.1、融点は190℃であった。
【0060】
MXD6:三菱ガス化学株式会社製、品番:S6001、RV2.1、融点237℃
【0061】
実施例1~6、比較例1~6
<無延伸フィルムおよび延伸フィルムの製造>
表1または表2に示すポリエステル樹脂およびポリアミド樹脂を表1または表2に示す割合(単位:質量部)でTダイ付き単軸押出機(プラスチック工学研究所社製、スクリュー径30mm)に供給し、270℃で溶融混練し、ダイから押出て、厚さ180μm、130mm幅に押し出し、無延伸フィルムを得た。
さらに、得られた無延伸フィルムを90mm角にカットした。その後、二軸延伸装置(テンター法、EX105S、株式会社東洋精機製作所製)を用いて、延伸倍率が3×3となるように、MDおよびTDにそれぞれ延伸を行い、厚さ20μmの延伸フィルムを得た。この延伸工程においては、途中にMD緩和率5.0%、TD緩和率5.0%となる緩和操作を設けるようにした。また、延伸後に熱固定を行った。熱固定温度は170℃、熱固定時間は30秒とし単層延伸フィルムを得た。
得られた無延伸フィルムおよび延伸フィルムについて、以下の通り、各種特性の評価を行った。結果を下記表1または表2に示す。
【0062】
<Haze>
得られた無延伸フィルムおよび延伸フィルムについて、ヘーズメーターを用いて、ヘイズ(Haze)値を測定した。
ヘーズメーターは、日本電色工業社製「COH-300A」を用いた。
【0063】
<酸素バリア性>
得られた無延伸フィルムおよび延伸フィルムについて、23℃、相対湿度(RH)60%の雰囲気下、等圧法にて、酸素透過率(OTR、単位:cc・mm/m・atm・day)を測定した。酸素雰囲気の圧力は1atmとし、測定時間は24時間(1day)とした。
酸素透過率(OTR)は、酸素透過率測定装置(MOCON社製、「OX-TRAN(登録商標) 2/21」)を使用して測定した。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
上記表1および表2において、MXD610(AA:SA=80:20)とは、MXD6であって、アジピン酸とセバシン酸のモル比率が80:20であることを示している。他のポリアミド樹脂も同様に考える。
上記結果から明らかなとおり、本実施形態の樹脂組成物は、透明性および酸素バリア性に優れていた。特に、ポリエステル樹脂とポリアミド樹脂のブレンド物は、透明性が劣る傾向にあるが、本発明では、特定のキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂を用いることにより、ヘイズが格段に低下しており、透明性が向上している点は驚くべきことである。