(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131822
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】検出器具
(51)【国際特許分類】
G01N 33/543 20060101AFI20230914BHJP
【FI】
G01N33/543 521
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022036793
(22)【出願日】2022-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】足立 達司
(72)【発明者】
【氏名】東 亮吾
(57)【要約】
【課題】正確な検出が可能な検出器具を提供する。
【解決手段】検出器具1は、固相担体130、標識物質保持部120及び吸収体140を、第1方向Xに延在する基材シート110上に備える試験片100と、試験片100を間に挟んで保持する第1部材210と第2部材220とを備える筐体200とを備え、第1部材210は、開口219と、その周縁部217の一部として第1押圧部211及び第2押圧部212を備え、第1押圧部211は、基材シート110と固相担体130と標識物質保持部120との重複部分160の、第1方向Xと交差する第2方向Yの全体に延在する領域120A1を押圧し、第2押圧部212は、基材シート110と固相担体130と吸収体140の重複部分170の、第2方向Yの全体に延在する領域140B1を押圧する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体試料中の被検物質を検出するための検出器具であって、
試験片と、試験片を収容する筐体とを備え、
試験片は、基材シート、標識物質保持部、固相担体、及び吸収体を備え、
基材シートは、第1方向に、第1端部から第2端部まで延在し、且つ、第1方向に沿う第1面、及び、第1面の裏側の、第1方向に沿う第2面を有し、
基材シートの第1面上に、標識物質保持部、固相担体及び吸収体が、この順で、第1方向に沿って、少なくとも一部が重なるように配置され、
筐体は、試験片を間に挟んで保持する、基材シートの第1面と対向して配置された第1部材と、基材シートの第2面と対向して配置された第2部材とを備え、
第1部材の、試験片の固相担体に臨む位置に開口が形成されており、
第1部材は、試験片の基材シートの第1面と対向する面上に、試験片を第2部材に向けて押圧する、開口の周縁部の一部である、第1押圧部及び第2押圧部を備え、
第1押圧部は、試験片の、基材シートと固相担体と標識物質保持部とが重なる部分における表面の、第1方向と交差する第2方向の全体に延在する領域と当接する、第1押圧面を有し、
第2押圧部は、試験片の、基材シートと固相担体と吸収体とが重なる部分における表面の、第2方向の全体に延在する領域と当接する、第2押圧面を有する
ことを特徴とする検出器具。
【請求項2】
試験片において、
標識物質保持部は、被検物質と結合する標識物質を遊離可能な状態で含む多孔質体であり、
固相担体は、被検物質を結合する捕捉物質が固定された捕捉部を一部に含み、
吸収体は、液体試料を吸収する多孔質体であり、
固相担体は、第1方向に、基材シートの第1端部と第2端部との間に位置する第3端部から、第3端部と基材シートの第2端部との間に位置する第4端部まで延在し、基材シートの第1面の側から、基材シートの第1方向の一部を被覆するように配置され、
固相担体の捕捉部は、固相担体の第3端部と第4端部との間に配置され、
標識物質保持部は、第1方向に、固相担体の第3端部よりも基材シートの第1端部寄りに位置する第5端部から、固相担体の第3端部と捕捉部との間に位置する第6端部まで延在し、基材シートの第1面の側から、基材シート及び固相担体の第1方向の一部を被覆するように配置され、
吸収体は、第1方向に、固相担体の捕捉部と第4端部との間に位置する第7端部から、固相担体の第4端部よりも基材シートの第2端部寄りに位置する第8端部まで延在し、基材シートの第1面の側から、基材シート及び固相担体の第1方向の一部を被覆するように配置され、
筐体の第1部材において、
開口は、第1部材の、試験片の固相担体の捕捉部を含む部分に臨む位置に形成されており、
第1押圧部の第1押圧面は、試験片の、基材シートと固相担体と標識物質保持部とが重なる部分における標識物質保持部の表面の、第1方向と交差する第2方向の全体に延在する領域と当接し、
第2押圧部の第2押圧面は、試験片の、基材シートと固相担体と吸収体とが重なる部分のうち、吸収体の第7端部を含む部分における、吸収体の表面の、第2方向の全体に延在する領域と当接し、
第1押圧部は、第1方向において試験片の基材シートの第1端部が位置する側で開口と隣接する、開口の周縁部の一部であり、
第2押圧部は、第1方向において試験片の基材シートの第2端部が位置する側で開口と隣接する、開口の周縁部の一部である
請求項1に記載の検出器具。
【請求項3】
試験片において、標識物質保持部の、固相担体を被覆する部分は、固相担体に接着されておらず、吸収体の、固相担体を被覆する部分は、固相担体に接着されていない、
請求項2に記載の検出器具。
【請求項4】
筐体の第1部材は、試験片の基材シートの第1面と対向する面上に、試験片を第2部材に向けて押圧する第3押圧部を更に備え、
第3押圧部は、試験片の、基材シートと固相担体と吸収体とが重なる部分のうち、固相担体の第4端部を含む部分における、吸収体の表面の、第2方向の一部の領域と当接する、第3押圧面を有する、
請求項2又は3に記載の検出器具。
【請求項5】
第3押圧部の第3押圧面は、第2押圧部の第2押圧面よりも、試験片に向けて突出した位置に配置されている、請求項4に記載の検出器具。
【請求項6】
試験片は、液体試料を受容する多孔質体である試料受容部を更に備え、
試料受容部は、第1方向に、標識物質保持部の第5端部よりも基材シートの第1端部寄りに位置する第9端部から、標識物質保持部の第5端部と固相担体の第3端部との間に位置する第10端部まで延在し、基材シートの第1面の側から、基材シート及び標識物質保持部の第1方向の一部を被覆するように配置される、
請求項2~5のいずれか1項に記載の検出器具。
【請求項7】
試験片は、液体試料を受容する多孔質体である試料受容部を更に備え、
試料受容部は、基材シートの第1面上に、少なくとも一部が標識物質保持部と重なるように配置される、
請求項1~5のいずれか1項に記載の検出器具。
【請求項8】
筐体の第1部材は、試験片の基材シートの第1面と対向する面上に、試験片を第2部材に向けて押圧する第4押圧部を更に備え、
第4押圧部は、試験片の、基材シートと標識物質保持部と試料受容部とが重なる部分の表面の、第2方向の一部の領域と当接する、第4押圧面を有する、
請求項7に記載の検出器具。
【請求項9】
筐体の第1部材は、第1方向において第1押圧部と第4押圧部との間の、試験片を介して第2方向に対向する一対の位置に、それぞれ、第1嵌合部を備え、
筐体の第2部材は、第1部材の第1嵌合部と対向する一対の位置に、それぞれ、第1嵌合部と嵌合可能な第2嵌合部を備える、
請求項8に記載の検出器具。
【請求項10】
筐体の第2部材は、試験片の基材シートの第2面と対向する面上に、試験片を第1部材に向けて押圧する第5押圧部を備え、
第5押圧部は、試験片の、基材シートと固相担体と標識物質保持部とが重なる部分における、基材シートの第2面の、第2方向の全体に延在する領域と当接する、第5押圧面を有する、
請求項1~9のいずれか1項に記載の検出器具。
【請求項11】
試験片の標識物質保持部に保持された標識物質が、被検物質と免疫学的に結合する第1の抗体分子を含み、
試験片の固相担体の捕捉部に固定された捕捉物質が、被検物質と免疫学的に結合する第2の抗体分子を含む、
請求項1~10のいずれか1項に記載の検出器具。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の検出器具及び試料前処理試薬を備える、試料中の被検物質を検出するためのキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体試料中の被検物質を検出するための検出器具に関する。
【背景技術】
【0002】
生体等に由来する液体試料中の被検物質を検出する方法として、特に被検物質がタンパク質である場合は、被検物質に特異的に結合する物質(抗体/抗原)を用いて抗原抗体反応を生じさせることで被検物質を検出するイムノアッセイが広く利用されている。特に、迅速かつ簡便に被検物質を検出する方法として、固相担体の所定の位置に被検物質に特異的に結合する捕捉物質(抗体/抗原)を固定し、ここに被検物質を含む液体試料を展開して被検物質を前記所定の位置に捕捉し、目視等で検出するイムノクロマト法が知られている。
【0003】
イムノクロマト法等のクロマトグラフィーを用いた液体試料中の被検物質の検出を簡便に行うために、被検物質と結合する捕捉物質を固定化した固相担体を含む試験片と、前記試験片を収容する筐体とを備える検出器具が従来から開発されている。
【0004】
例えば特許文献1には、検査ストリップとそれを収容するハウジングとを備える検査装置が記載されており、ハウジングの内面に、各突出部が検査ストリップと接触する一連の突出部を設けることが記載されている。特許文献1では、前記一連の突出部の少なくとも一つの突出部の高さが前記一連の突出部の別の突出部の高さとは異なり、取り付けられた形態において前記一連の突出部が、前記検査ストリップの長さに沿って前記一連の突出部中の最初の突出部と最後の突出部との間で流体が所定の流速で流れることを可能にする圧力勾配を発生させるように構成されていると記載されている。
【0005】
特許文献2では、テストストリップの第一面を覆う第一ケース部材と第二面を覆う第二ケース部材を用いてテストストリップをその間に挟み込んだ構造からなる免疫クロマトグラフィー用デバイスであって、前記テストストリップは、試料添加部材、標識保持部材、クロマト用膜担体を含み、前記試料添加部材が前記標識保持部材の少なくとも一部において重なって配置されており、前記第一ケース部材に、テストストリップの試料展開方向に対して少なくとも2箇所の凸部が設けられ、前記第一ケース部材の凸部の少なくとも1つが標識保持部材と重なり合う試料添加部材の上部に設けられ、前記第二ケース部材に、前記第一ケース部材の少なくとも2箇所の凸部に対向する凸部を設けてなる免疫クロマトグラフィー用デバイスが記載されている。特許文献2によれば、これらの凸部を設けたことにより、試料添加部材、標識保持部材及びクロマト用膜担体が部分的に密着するという効果が奏される。
【0006】
特許文献3では、被検出物質に特異に結合する物質に標識を固定した標識化物質が保持される領域を含む第1の部材と、前記被検出物質を介して前記標識化物質を捕捉する検出ゾーンを有し、前記第1の部材の展開方向下流に接続された第2の部材とを含む検査キットが記載されている。特許文献3では更に、前記検査キットを収容するケースに、前記検査キットを厚さ方向に押圧する複数の押圧部を設けることが記載されている。
【0007】
特許文献4では、試料滴下パッド、標識化物質保持パッド、固定化メンブレン、吸収パッドがこの順で接続されたテストストリップと、それを収容する第1のケースを備えた検査キットが記載されている。特許文献4では、第1のケースに押圧部を設け、この押圧部により、標識化物質保持パッドと固定化メンブレンとが重なり合った部位の、液体試料の展開方向に直交する方向の一部を押圧することで、標識化物質保持パッドと固定化メンブレンとが密着し、液体試料の展開を円滑に行うことができると記載されている。特許文献4では更に、試料滴下パッドと標識化物質保持パッドとが重なり合った部位と、固定化メンブレンと吸収パッドとが重なり合った部位とを、それぞれ、展開方向に直交する方向の全体に亘り押圧する押圧部を、第1のケースに設けることも記載されている。
【0008】
特許文献5では、ベースカード上にサンプルパッド、メンブレン、吸収パッドが配置された展開基材を収容する筐体を備える液体試料検査具用容器が記載されている。特許文献5において前記筐体の一部を構成する上部筐体には、展開基材のメンブレンに対応する領域に検出穴が形成されており、検出穴を囲う周壁面の展開基材側の端部は平坦面であり、前記平坦面がメンブレンを押圧することが記載されている。特許文献5の前記上部筐体は更に、コンジュゲートパッドを押圧するための押圧壁を備える。
【0009】
特許文献6では、上ケース、下ケース及びそれらの間に収容されたテストストリップを備えた液体試料検査具において、テストストリップと対向する上ケースの内面に押さえピン又は押さえ部材を配置することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2020-126077号公報
【特許文献2】特開2005-37384号公報
【特許文献3】特開2014-178153号公報
【特許文献4】特開2018-36199号公報
【特許文献5】実用新案登録第3212222号公報
【特許文献6】特開2021-18240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
基材シート上に、標識物質保持部、固相担体、及び、吸収体が展開方向の上流から下流にこの順で配置された試験片と、それを収容する筐体とを備える検出器具を用いて、液体試料中の被検物質を検出する場合に、次の課題が存在することを本発明者らは見出した。まず、試験片に展開される液体試料の流れが、試験片の幅方向で不均一となると、検出結果が不明確になるという課題がある。また、標識物質保持部と固相担体との間の接触と、固相担体と吸収体との間の接触とが十分でない場合には、展開される液体試料が各部材の接点で滞留するという課題がある。
上記の通り特許文献1~6は上記の課題を十分に解決できるものではない。そこで本発明は、上記の課題を解決できる検出器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は以下を提供する。
[1]液体試料中の被検物質を検出するための検出器具であって、
試験片と、試験片を収容する筐体とを備え、
試験片は、基材シート、標識物質保持部、固相担体、及び吸収体を備え、
基材シートは、第1方向に、第1端部から第2端部まで延在し、且つ、第1方向に沿う第1面、及び、第1面の裏側の、第1方向に沿う第2面を有し、
基材シートの第1面上に、標識物質保持部、固相担体及び吸収体が、この順で、第1方向に沿って、少なくとも一部が重なるように配置され、
筐体は、試験片を間に挟んで保持する、基材シートの第1面と対向して配置された第1部材と、基材シートの第2面と対向して配置された第2部材とを備え、
第1部材の、試験片の固相担体に臨む位置に開口が形成されており、
第1部材は、試験片の基材シートの第1面と対向する面上に、試験片を第2部材に向けて押圧する、開口の周縁部の一部である、第1押圧部及び第2押圧部を備え、
第1押圧部は、試験片の、基材シートと固相担体と標識物質保持部とが重なる部分における表面の、第1方向と交差する第2方向の全体に延在する領域と当接する、第1押圧面を有し、
第2押圧部は、試験片の、基材シートと固相担体と吸収体とが重なる部分における表面の、第2方向の全体に延在する領域と当接する、第2押圧面を有する
ことを特徴とする検出器具。
【0013】
[2]試験片において、
標識物質保持部は、被検物質と結合する標識物質を遊離可能な状態で含む多孔質体であり、
固相担体は、被検物質を結合する捕捉物質が固定された捕捉部を一部に含み、
吸収体は、液体試料を吸収する多孔質体であり、
固相担体は、第1方向に、基材シートの第1端部と第2端部との間に位置する第3端部から、第3端部と基材シートの第2端部との間に位置する第4端部まで延在し、基材シートの第1面の側から、基材シートの第1方向の一部を被覆するように配置され、
固相担体の捕捉部は、固相担体の第3端部と第4端部との間に配置され、
標識物質保持部は、第1方向に、固相担体の第3端部よりも基材シートの第1端部寄りに位置する第5端部から、固相担体の第3端部と捕捉部との間に位置する第6端部まで延在し、基材シートの第1面の側から、基材シート及び固相担体の第1方向の一部を被覆するように配置され、
吸収体は、第1方向に、固相担体の捕捉部と第4端部との間に位置する第7端部から、固相担体の第4端部よりも基材シートの第2端部寄りに位置する第8端部まで延在し、基材シートの第1面の側から、基材シート及び固相担体の第1方向の一部を被覆するように配置され、
筐体の第1部材において、
開口は、第1部材の、試験片の固相担体の捕捉部を含む部分に臨む位置に形成されており、
第1押圧部の第1押圧面は、試験片の、基材シートと固相担体と標識物質保持部とが重なる部分における標識物質保持部の表面の、第1方向と交差する第2方向の全体に延在する領域と当接し、
第2押圧部の第2押圧面は、試験片の、基材シートと固相担体と吸収体とが重なる部分のうち、吸収体の第7端部を含む部分における、吸収体の表面の、第2方向の全体に延在する領域と当接し、
第1押圧部は、第1方向において試験片の基材シートの第1端部が位置する側で開口と隣接する、開口の周縁部の一部であり、
第2押圧部は、第1方向において試験片の基材シートの第2端部が位置する側で開口と隣接する、開口の周縁部の一部である
[1]に記載の検出器具。
【0014】
[3]試験片において、標識物質保持部の、固相担体を被覆する部分は、固相担体に接着されておらず、吸収体の、固相担体を被覆する部分は、固相担体に接着されていない、
[2]に記載の検出器具。
【0015】
[4]筐体の第1部材は、試験片の基材シートの第1面と対向する面上に、試験片を第2部材に向けて押圧する第3押圧部を更に備え、
第3押圧部は、試験片の、基材シートと固相担体と吸収体とが重なる部分のうち、固相担体の第4端部を含む部分における、吸収体の表面の、第2方向の一部の領域と当接する、第3押圧面を有する、
[2]又は[3]に記載の検出器具。
【0016】
[5]第3押圧部の第3押圧面は、第2押圧部の第2押圧面よりも、試験片に向けて突出した位置に配置されている、[4]に記載の検出器具。
【0017】
[6]試験片は、液体試料を受容する多孔質体である試料受容部を更に備え、
試料受容部は、第1方向に、標識物質保持部の第5端部よりも基材シートの第1端部寄りに位置する第9端部から、標識物質保持部の第5端部と固相担体の第3端部との間に位置する第10端部まで延在し、基材シートの第1面の側から、基材シート及び標識物質保持部の第1方向の一部を被覆するように配置される、
[2]~[5]のいずれかに記載の検出器具。
【0018】
[7]試験片は、液体試料を受容する多孔質体である試料受容部を更に備え、
試料受容部は、基材シートの第1面上に、少なくとも一部が標識物質保持部と重なるように配置される、
[1]~[5]のいずれかに記載の検出器具。
【0019】
[8]筐体の第1部材は、試験片の基材シートの第1面と対向する面上に、試験片を第2部材に向けて押圧する第4押圧部を更に備え、
第4押圧部は、試験片の、基材シートと標識物質保持部と試料受容部とが重なる部分の表面の、第2方向の一部の領域と当接する、第4押圧面を有する、
[7]に記載の検出器具。
【0020】
[9]筐体の第1部材は、第1方向において第1押圧部と第4押圧部との間の、試験片を介して第2方向に対向する一対の位置に、それぞれ、第1嵌合部を備え、
筐体の第2部材は、第1部材の第1嵌合部と対向する一対の位置に、それぞれ、第1嵌合部と嵌合可能な第2嵌合部を備える、
[8]に記載の検出器具。
【0021】
[10]筐体の第2部材は、試験片の基材シートの第2面と対向する面上に、試験片を第1部材に向けて押圧する第5押圧部を備え、
第5押圧部は、試験片の、基材シートと固相担体と標識物質保持部とが重なる部分における、基材シートの第2面の、第2方向の全体に延在する領域と当接する、第5押圧面を有する、
[1]~[9]のいずれかに記載の検出器具。
【0022】
[11]試験片の標識物質保持部に保持された標識物質が、被検物質と免疫学的に結合する第1の抗体分子を含み、
試験片の固相担体の捕捉部に固定された捕捉物質が、被検物質と免疫学的に結合する第2の抗体分子を含む、
[1]~[10]のいずれかに記載の検出器具。
【0023】
[12][1]~[11]のいずれかに記載の検出器具及び試料前処理試薬を備える、試料中の被検物質を検出するためのキット。
【発明の効果】
【0024】
本発明の検出器具によれば、より正確な検出が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る検出器具の全体の斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係る検出器具における筐体の第1部材、試験片及び筐体の第2部材の関係を模式的に示す分解斜視図である。
図2以後の図中の矢印は第1方向及び第2方向を示す。
【
図3A】
図3Aは、本発明の一実施形態に係る検出器具における筐体の第1部材を、筐体の内側から見た平面図である。
【
図3B】
図3Bは、本発明の一実施形態に係る検出器具における筐体の第1部材の、
図3Aに示すI-I線に沿った断面図である。
【
図3C】
図3Cは、本発明の一実施形態に係る検出器具における筐体の第1部材を、筐体の内側から見た斜視図である。
【
図4A】
図4Aは、本発明の一実施形態に係る検出器具における筐体の第2部材を、筐体の内側から見た平面図である。
【
図4B】
図4Bは、本発明の一実施形態に係る検出器具における筐体の第2部材の、
図4Aに示すII-II線に沿った断面図である。
【
図5A】
図5Aは、本発明の一実施形態に係る検出器具における試験片を、基材シートの第1面の側から見た平面図である。
【
図5B】
図5Bは、本発明の一実施形態に係る検出器具における試験片の、
図5Aに示すIII-III線に沿った断面図である。
【
図5C】
図5Cは、本発明の一実施形態に係る検出器具における試験片を、基材シートの第2面の側から見た平面図である。
【
図6】
図6は、本発明の一実施形態に係る検出器具の断面図である。筐体の第1部材の断面は、
図3Aに示すI-I線に沿った断面であり、筐体の第2部材の断面は、
図4Aに示すII-II線に沿った断面であり、試験片の断面は、
図5Aに示すIII-III線に沿った断面である。
【
図7】
図7は、
図6に示す本発明の一実施形態に係る検出器具の断面図の部分拡大図である。
図7の左下拡大図は、筐体の第1部材の第1押圧部及び第4押圧部、並びに、筐体の第2部材の第5押圧部と、それらにより押圧される試験片を示す。
図7の右下拡大図は、筐体の第1部材の第2押圧部及び第3押圧部と、それらにより押圧される試験片を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明に係る検出器具の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0027】
検出器具1は、液体試料中の被検物質を検出するための検出器具1であって、試験片100と、試験片100を収容する筐体200とを備えることを特徴とする。
【0028】
筐体200は、試験片100を間に挟んで保持する、基材シート110の第1面110Aと対向して配置された第1部材210と、基材シート110の第2面110Bと対向して配置された第2部材220とを備える。第1部材210と第2部材220とを組み付けて筐体200が構成される(
図1、2、6、7参照)。筐体200としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタラート、ポリ塩化ビニル等の水不透過性の成形可能な材料の成形体であることができる。
【0029】
試験片100は、形状や大きさに関して特に限定は無いが、例えば長さが40mm以上120mm以下であり、幅が3mm以上20mm以下であり、厚みが10μm以上5.0mm以下である、略直方体とすることができる。形状や大きさは適宜変更することができる。試験片100の特徴を、主に
図5A、
図5B、
図5Cを参照して説明する。
【0030】
試験片100は、基材シート110、標識物質保持部120、固相担体130及び吸収体140を少なくとも備える。
図示する実施形態では、標識物質保持部120は、被検物質と結合する標識物質を遊離可能な状態で含む多孔質体であり、固相担体130は、被検物質を結合する捕捉物質が固定された捕捉部135を一部に含み、吸収体140は、液体試料を吸収する多孔質体である。
【0031】
図示する試験片100の実施形態は、液体試料を受容する多孔質体である試料受容部150を更に備える。
【0032】
基材シート110は、バッキングシートとも呼ばれる。基材シート110は水を浸透しない樹脂製シートであることが好ましい。基材シート110としては、例えばポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエステル、塩化ビニル等の樹脂製シートを用いることができる。
【0033】
標識物質保持部120は、分析しようとする液体試料が展開されたときに遊離可能な状態で標識物質を含む多孔質体であり、繊維の集積体であることが好ましく、例えば、グラスファイバー、セルロースファイバー、ポリエステルファイバー、ポリエチレンファイバー、ポリプロピレンファイバー等の繊維の集積体であることができる。標識物質としては、被検物質と結合し、液体試料の展開後に固相担体130上で検出できるものであればよく特に限定されないが、例えば、着色粒子、酵素、ビオチン、ジゴキシゲニン等の既知の標識物質と、被検物質との結合のための物質とが連結されたコンジュゲートが例示できる。着色粒子としては、例えば、金属粒子、着色ラテックス粒子、着色ポリスチレン粒子、着色セルロース粒子、蛍光セルロース粒子、色素を包含するシリカナノ粒子が挙げられる。金属粒子としては、金コロイド粒子、銀コロイド粒子、白金コロイド粒子等の金属コロイド粒子が挙げられる。被検物質との結合のための物質は、被検物質に応じて適宜選択でき、例えば、被検物質がポリペプチドである場合は、当該ポリペプチドに特異的に結合することができる抗体を使用することができ、被検物質が抗原分子である場合は、当該抗原分子に特異的に結合することができる抗体を使用することができ、被検物質がDNA等のポリヌクレオチドある場合は、当該ポリヌクレオチドに特異的に結合することができるポリヌクレオチドであることができる。
【0034】
固相担体130は、液体試料(移動相)が展開するときの固相となる。固相担体130は例えば薄膜(メンブレン)であることができ、例えば、ニトロセルロース、セルロース、酢酸セルロース、ポリエーテルスルフォン、ナイロン、ポリエステル、グラスファイバー等の素材のメンブレンであることができる。
【0035】
固相担体130は、被検物質を結合する捕捉物質が固定された捕捉部135を一部に含む。捕捉部135は、被検物質と結合可能な捕捉物質が固定された部位であり、例えば、通常、テストラインと称される、固相担体130の幅方向である第2方向Yに沿って配置された線状とすることができる。固相担体130に展開される液体試料が被検物質を含む場合に、捕捉部135において、被検物質と標識物質との複合体が捕捉物質と結合する。
【0036】
捕捉物質としては、標識物質が結合した被検物質と結合できるものであればよく、被検物質に応じて適宜選択できる。例えば、被検物質がポリペプチドである場合は、当該ポリペプチドに特異的に結合することができる抗体を使用することができ、被検物質が抗原分子である場合は、当該抗原分子に特異的に結合することができる抗体を使用することができ、被検物質がDNA等のポリヌクレオチドある場合は、当該ポリヌクレオチドに特異的に結合することができるポリヌクレオチドであることができる。
【0037】
被検物質がポリペプチドである場合、標識物質保持部120に保持された標識物質が、被検物質と免疫学的に結合する第1の抗体分子と標識物質とが連結されたコンジュゲートであり、固相担体130の捕捉部135に固定された捕捉物質が、被検物質と免疫学的に結合する第2の抗体分子であることが好ましい。この好適な態様に係る検出器具1は、イムノクロマト用のデバイスである。
【0038】
吸収体140は、試験片100の上流から展開された液体試料が、固相担体130を通過したのち、液体試料が逆流しないように液体試料を吸収し保持するために設けられる多孔質体である。吸収体140は吸収パッドとも呼ばれる。吸収体140としては、繊維の集積体であることが好ましく、例えば、グラスファイバー、セルロースファイバー、ポリエステルファイバー、ポリエチレンファイバー、ポリプロピレンファイバー等の繊維の集積体であることができる。
【0039】
液体試料を受容する多孔質体である試料受容部150は、液体試料がロード(例えば滴下)される部位であり、サンプルパッドとも呼ばれる。試料受容部150としては、繊維の集積体であることが好ましく、例えば、グラスファイバー、セルロースファイバー、ポリエステルファイバー、ポリエチレンファイバー、ポリプロピレンファイバー等の繊維の集積体であることができる。
【0040】
次に、試験片100の構造について説明する。
【0041】
基材シート110は、長手方向である第1方向Xに、第1端部111から第2端部112まで延在し、且つ、第1方向Xに沿う第1面110A、及び、第1面110Aの裏側の、第1方向Xに沿う第2面110Bを有する。
【0042】
基材シート110の第1面110A上に、標識物質保持部120、固相担体130及び吸収体140が、この順で、第1方向に沿って、少なくとも一部が重なるように配置されている。すなわち隣接する標識物質保持部120と固相担体130とが、一部が重なるように基材シート110の第1面110A上に配置されており、隣接する固相担体130と吸収体140とが、一部が重なるように基材シート110の第1面110A上に配置されている。
【0043】
基材シート110の第1面110A上には更に、試料受容部150が、少なくとも一部が標識物質保持部120と重なるように配置される。
【0044】
図示する実施形態において試験片100は更に以下の特徴を備える。
【0045】
固相担体130は、第1方向Xに、基材シート110の第1端部111と第2端部112との間に位置する第3端部131から、第3端部131と基材シート110の第2端部112との間に位置する第4端部132まで延在し、基材シート110の第1面110Aの側から、基材シート110の第1方向Xの一部を被覆するように配置される。固相担体130は、典型的には、基材シート110の第1面110Aに固定された薄層である。
【0046】
ここで固相担体130の捕捉部135は、固相担体130の第3端部131と第4端部132との間に配置される。図示する例のように、捕捉部135は、固相担体130の、第1方向Xの一部であって、第1方向Xと交差(好ましくは直交)する第2方向Yの全体に亘り配置された線状の領域であることが、視認性が良く好ましい。
【0047】
標識物質保持部120は、第1方向Xに、固相担体130の第3端部131よりも基材シート110の第1端部111寄りに位置する第5端部121から、固相担体130の第3端部131と捕捉部135との間に位置する第6端部122まで延在し、基材シート110の第1面110Aの側から、基材シート110及び固相担体130の第1方向Xの一部を被覆するように配置される。すなわち、標識物質保持部120は、第5端部121を含む部分120Bが基材シート110を被覆し、第6端部122を含む部分120Cが固相担体130の第3端部131を含む部分を被覆する。
【0048】
ここで、標識物質保持部120の、固相担体130を被覆する部分120Cは、固相担体130に接着されておらず、接着剤を介さずに直接載置されている場合に、標識物質保持部120から固相担体130への液体試料の移動が円滑となるため好ましい。一方、基材シート110からの脱落の防止のため、標識物質保持部120の、基材シート110を被覆する部分120Bは、基材シート110に接着されていることが好ましい。
【0049】
吸収体140は、第1方向Xに、固相担体130の捕捉部135と第4端部132との間に位置する第7端部141から、固相担体130の第4端部132よりも基材シート110の第2端部112寄りに位置する第8端部142まで延在し、基材シート110の第1面110Aの側から、基材シート110及び固相担体130の第1方向Xの一部を被覆するように配置される。すなわち、吸収体140は、第7端部141を含む部分140Cが固相担体130の第4端部132を含む部分を被覆し、第8端部142を含む部分140Bが基材シート110を被覆する。
【0050】
ここで、吸収体140の、固相担体130を被覆する部分140Cは、固相担体130に接着されておらず、接着剤を介さずに直接載置されている場合に、固相担体130から吸収体140への液体試料の移動が円滑となるため好ましい。一方、基材シート110からの脱落の防止のため、吸収体140の、基材シート110を被覆する部分140Bは、基材シート110に接着されていることが好ましい。
【0051】
試料受容部150は、第1方向Xに、標識物質保持部120の第5端部121よりも基材シート110の第1端部111寄りに位置する第9端部151から、標識物質保持部120の第5端部121と固相担体130の第3端部131との間に位置する第10端部152まで延在し、基材シート110の第1面110Aの側から、基材シート110及び標識物質保持部120の第1方向Xの一部を被覆するように配置される。すなわち、試料受容部150は、第10端部152を含む部分150Cが、標識物質保持部120の第5端部121を含む部分を被覆し、第9端部151を含む部分150Bが基材シート110を被覆する。
【0052】
ここで、試料受容部150の、標識物質保持部120を被覆する部分150Cは、標識物質保持部120に接着されておらず、接着剤を介さずに直接載置されている場合に、試料受容部150から標識物質保持部120への液体試料の移動が円滑となるため好ましい。一方、基材シート110からの脱落の防止のため、試料受容部150の、基材シート110を被覆する部分150Bは、基材シート110に接着されていることが好ましい。
【0053】
【0054】
第1部材210の、試験片100の固相担体130に臨む位置には、開口219が形成されている。特に、第1部材210の開口219は、試験片100の固相担体130の捕捉部135を含む部分に臨む位置に形成されていることが好ましい。この実施形態によれば、開口219を通じて、試験片100の固相担体130の捕捉部135を、筐体200の外部から観察することができる。
【0055】
第1部材210は、試験片100の基材シート110の第1面110Aと対向する面210A上に、試験片100を第2部材220に向けて、試験片100の厚さ方向に押圧する第1押圧部211及び第2押圧部212を備える。
【0056】
第1押圧部211は、試験片100の、基材シート110と固相担体130と標識物質保持部120とが重なる部分160における表面の、第1方向Xと交差(図示する例では直交)する第2方向Yの全体に延在する領域120A1(
図5A参照)と当接する、第1押圧面211Aを有する。第1押圧部211の第1押圧面211Aは、特に、試験片100の、基材シート110と固相担体130と標識物質保持部120とが重なる部分160における、標識物質保持部120の表面120Aの、第1方向Xと交差(図示する例では直交)する第2方向Yの全体に延在する領域120A1(
図5A参照)と当接する。
【0057】
図7の左下拡大図に、第1部材210の第1押圧部211により、試験片100の、基材シート110と固相担体130と標識物質保持部120とが重なる部分160が押圧されている状態を模式的に示す。第1部材210の第1押圧部211による押圧によって、試験片100の部分160が第2部材220に向けて押し付けられる。この結果、固相担体130と標識物質保持部120が密着するとともに、多孔質体である標識物質保持部120が押しつぶされるため、標識物質保持部120から固相担体130への液体試料の移動が促進され、標識物質保持部120と固相担体130との界面での液体試料の滞留が抑制される。しかも、第1押圧部211の第1押圧面211Aは、標識物質保持部120の表面120Aの第2方向Yの全体を押圧するため、試験片100に展開される液体試料の流れが、試験片100の幅方向である第2方向Yの全体で均一化される。更に、第1押圧部211の第1押圧面211A及び領域120A1が、図示するように、第2方向Yに加えて第1方向Xにも十分な幅を有する矩形(例えば、第2方向Yの幅に対して、第1方向Xの幅が0.5倍以上である矩形)である態様では、試験片100に展開される液体試料の流れを、第1方向Xと第2方向Yの両方で均一化する効果が高く好ましい。
【0058】
第2押圧部212は、試験片100の、基材シート110と固相担体130と吸収体140とが重なる部分170における表面の、第2方向Yの全体に延在する領域140A1(
図5A参照)と当接する、第2押圧面212Aを有する。第2押圧部212の第2押圧面212Aは、特に、試験片100の、基材シート110と固相担体130と吸収体140とが重なる部分170のうち、吸収体140の第7端部141を含む部分171における、吸収体140の表面140Aの、第2方向Yの全体に延在する領域140A1(
図5A参照)と当接する。
【0059】
図7の右下拡大図に、第1部材210の第2押圧部212により、試験片100の、基材シート110と固相担体130と吸収体140とが重なる部分170のうち、吸収体140の第7端部141を含む部分171が押圧されている状態を模式的に示す。第1部材210の第2押圧部212による押圧によって、試験片100の部分171が第2部材220に向けて押し付けられる。この結果、固相担体130と吸収体140が密着するとともに、多孔質体である吸収体140が押しつぶされるため、固相担体130から吸収体140への液体試料の移動が促進され、固相担体130と吸収体140との界面での液体試料の滞留が抑制される。しかも、第2押圧部212の第2押圧面212Aは、吸収体140の表面140Aの第2方向Yの全体を押圧するため、試験片100に展開される液体試料の流れが、試験片100の幅方向である第2方向Yの全体で均一化される。更に、第2押圧部212の第2押圧面212A及び領域140A1が、図示するように、第2方向Yに加えて第1方向Xにも十分な幅を有する矩形(例えば、第2方向Yの幅に対して、第1方向Xの幅が0.5倍以上である矩形)である態様では、試験片100に展開される液体試料の流れを、第1方向Xと第2方向Yの両方で均一化する効果が高く好ましい。
【0060】
第1部材210は、試験片100の基材シート110の第1面110Aと対向する面210Aから試験片100に向け突出した、開口219の周囲を囲う周縁部217を有しており、第1押圧部211及び第2押圧部212は、周縁部217の周方向の一部である。
【0061】
第1押圧部211は、第1方向Xにおいて試験片100の基材シート110の第1端部111が位置する側(すなわち展開の上流側)で開口219と隣接する、周縁部217の一部である。第2押圧部212は、第1方向Xにおいて試験片100の基材シート110の第2端部112が位置する側(すなわち展開の下流側)で開口219と隣接する、周縁部217の一部である。
【0062】
第1押圧部211の第1押圧面211Aと、第2押圧部212の第2押圧面212Aとは、好ましくは同一の仮想平面上に配置されている。この構成により、試験片100の固相担体130を含む部分が、第1方向の全体に亘り、第2部材220に均等に押し付けられるため、試験片100に展開される液体試料の流れが更に均一化されやすい。
【0063】
筐体200の第1部材210は、試験片100の基材シート110の第1面110Aと対向する面210A上に、試験片100を第2部材220に向けて押圧する第3押圧部213を更に備えることが好ましい。ここで、第3押圧部213は、試験片100の、基材シート110と固相担体130と吸収体140とが重なる部分170のうち、固相担体130の第4端部132を含む部分172における、吸収体140の表面140Aの、第2方向Yの一部の領域140A2(
図5A参照)と当接する、第3押圧面213Aを有する。
【0064】
吸収体140の表面140Aの領域140A2は、第2方向Yの一部であり、好ましくは
図5Aに示すように第2方向Yに沿って整列した2つの点状領域である。第3押圧部213の第3押圧面213Aは、前記領域140A2に応じた形状を有する面である。図示する例では第3押圧部213は、2つの円柱状突起であるがこの態様には限定されない。
【0065】
図7の右下拡大図に、第1部材210の第2押圧部212に加えて、第3押圧部213により、試験片100の、前記部分172が押圧されている状態を模式的に示す。第3押圧部213による押圧によって、固相担体130の第4端部132からの、吸収体140の浮き上がりが抑制されて密着することにより、固相担体130の第4端部132と吸収体140との界面での液体試料の滞留が更に効率的に抑制される。しかも、第3押圧部213の第3押圧面213Aは、吸収体140の表面140Aの第2方向Yの一部の領域140A2のみを押圧するため、吸収体140が、固相担体130の第4端部132に過度に押さえつけられて折れ曲がり液体試料の吸収体140への移動が阻害されることが抑制できる。
【0066】
図7の右下拡大図に示すように、第3押圧部213の第3押圧面213Aは、第2押圧部212の第2押圧面212Aよりも、試験片100に向けて突出した位置に配置されることが更に好ましい。この態様によれば、第3押圧部213による上記の効果が更に高まる。
【0067】
図示するように、試験片100が標識物質保持部120の上流に更に試料受容部150を有する態様では、筐体200の第1部材210は、試験片100の基材シート110の第1面110Aと対向する面210A上に、試験片100を第2部材220に向けて押圧する第4押圧部214を更に備えることが好ましい。ここで、第4押圧部214は、試験片100の、基材シート110と標識物質保持部120と試料受容部150とが重なる部分180における表面の、第2方向Yの一部の領域150A1(
図5A参照)と当接する、第4押圧面214Aを有する。第4押圧部214の第4押圧面214Aは、特に、試験片100の、基材シート110と標識物質保持部120と試料受容部150とが重なる部分180における試料受容部150の表面150Aの、第2方向Yの一部の領域150A1(
図5A参照)と当接する。
【0068】
試料受容部150の表面150Aの領域150A1は、第2方向Yの一部であり、好ましくは
図5Aに示すように第2方向Yに沿って整列した2つの点状領域である。第4押圧部214の第4押圧面214Aは、前記領域150A1に応じた形状を有する面である。図示する例では第4押圧部214は、2つの円柱状突起であるがこの態様には限定されない。
【0069】
図7の左下拡大図に、第1部材210の第4押圧部214により、試験片100の、前記部分180が押圧されている状態を模式的に示す。第4押圧部214による押圧によって、試料受容部150と標識物質保持部120とが密着し、試料受容部150と標識物質保持部120との界面での液体試料の滞留が抑制される。しかも、第4押圧部214の第4押圧面214Aは、試料受容部150の表面150Aの第2方向Yの一部の領域150A1のみを押圧するため、液体試料の移動の阻害が抑制できる。
【0070】
図示する好適な態様では、筐体200の第1部材210は更に以下の特徴を有する。
【0071】
第1部材210は、試験片100の試料受容部150に臨む位置に、試料供給孔240が形成されている。試料供給孔240を通じて、試験片100の試料受容部150に、ピペット、シリンジ等の適当な器具を用いて液体試料を筐体200の外部から供給して、液体試料の試験片100での展開を開始することができる。
【0072】
図示する好適な態様では更に、第1部材210の、試験片100の吸収体140に臨む位置に、複数の通気孔250が形成されている。
【0073】
続いて、筐体200を構成する第2部材220の好ましい特徴を、主に
図5A、
図5B、
図6及び
図7を参照して説明する。
【0074】
筐体200の第2部材220は、試験片100の基材シート110の第2面110Bと対向する面220A上に、試験片100を第1部材210に向けて押圧する第5押圧部225を備えることが好ましい。ここで、第5押圧部225は、試験片100の、基材シート110と固相担体130と標識物質保持部120とが重なる部分160における、基材シート110の第2面110Bの、第2方向Yの全体に延在する領域110B1(
図5A参照)と当接する、第5押圧面225Aを有する。第5押圧部225の第5押圧面225Aは、特に、試験片100の、基材シート110と固相担体130と標識物質保持部120とが重なる部分160のうち、固相担体130の第3端部131を含む部分161における、基材シート110の第2面110Bの、第2方向Yの全体に延在する領域110B1(
図5A参照)と当接する。
【0075】
図7の左下拡大図に、第2部材220の第5押圧部225により、試験片100の、基材シート110と固相担体130と標識物質保持部120とが重なる部分160のうち、固相担体130の第3端部131を含む部分161が押圧されている状態を模式的に示す。第2部材220の第5押圧部225は、第1部材210の第1押圧部211の一部と向かい合って配置される。第2部材220の第5押圧部225は、第1押圧部211とともに、基材シート110と固相担体130と標識物質保持部120とが重なる部分160のうち、固相担体130の第3端部131を含む部分161を押圧することで、固相担体130の第3端部131の近傍と、標識物質保持部120とが更に強く密着する。しかも、第5押圧部225の第5押圧面225Aは、基材シート110の第2面110Bの第2方向Yの全体を押圧するため、試験片100に展開される液体試料の流れが、試験片100の幅方向である第2方向Yの全体で均一化されるため好ましい。
【0076】
続いて、本実施形態に係る検出器具1における、試験片100、筐体200の第1部材210及び筐体200の第2部材220の組み立てについて、主に
図2、
図3A、
図3C、
図4A及び
図6を参照して説明する。
【0077】
筐体200の第2部材220の、試験片100の基材シート110の第2面110Bと対向する面220Aには、試験片100を設置し位置決めするための複数の位置決め部材260が、試験片100の周囲を囲う位置に配置されている。
【0078】
試験片100を、筐体200の第2部材220の面220A上に設置し、更に筐体200の第1部材210の面210Aの側を、試験片100の基材シート110の第1面110Aと向かい合うように配置し、第1部材210と第2部材220とを固定して筐体200を組み立てることで、検出器具1が完成する。
【0079】
このとき第1部材210と第2部材220とを固定する手段は特に限定されないが、好ましくは、図示するような嵌合部を介して固定することができる。
【0080】
好ましい実施形態では、図示するように
筐体200の第1部材210は、第1方向Xにおいて第1押圧部211と第4押圧部214との間の、試験片100を介して第2方向Yに対向する一対の位置に、それぞれ、第1嵌合部231(例えば嵌合凹部)を備え、
筐体200の第2部材220は、第1部材210の第1嵌合部231と対向する一対の位置に、それぞれ、第1嵌合部231と嵌合可能な第2嵌合部232(例えば嵌合凸部)を備える。
【0081】
第1嵌合部231と第2嵌合部232がこの位置に配置されていることにより、第1部材210の第1押圧部211及び第4押圧部214並びに第2部材220の第5押圧部225による上述の有利な効果が更に高まる。
【0082】
更に好ましい実施形態では、図示するように
筐体200の第1部材210は、第2押圧部212を間に介して第2方向Yに対向する一対の位置に、それぞれ、第3嵌合部233(例えば嵌合凹部)を備え、
筐体200の第2部材220は、第1部材210の第3嵌合部233と対向する一対の位置に、それぞれ、第3嵌合部233と嵌合可能な第4嵌合部234(例えば嵌合凸部)を備える。
【0083】
第3嵌合部233と第4嵌合部234がこの位置に配置されていることにより、第1部材210の第2押圧部212による上述の有利な効果が更に高まる。
【0084】
更に好ましくは、筐体200の第1部材210は、隅部分に一対の第5嵌合部235、及び、一対の第7嵌合部237を備える。この場合、筐体200の第2部材220は、隅部分の、第1部材210の一対の第5嵌合部235と対向する位置に、一対の第6嵌合部236を備え、第1部材210の一対の第7嵌合部237と対向する位置に、一対の第8嵌合部238を備える。
【0085】
本発明の別の実施形態は、検出器具1及び試料前処理試薬を備える、試料中の被検物質を検出するためのキットに関する。
【0086】
試料前処理試薬は、試料をデバイス上で展開可能な状態にするために使用される試薬であれば、特に限定されず、例えば、試料希釈液、細胞溶解液、有機溶媒等とすることができる。好ましくは、試料前処理試薬は、試料希釈液である。
【0087】
本実施形態に係るキットは、測定対象となる試料の種類によっては、ろ過用フィルター、遠心分離用チューブ、試料採取用の綿棒、カップ・スポイト、スクイズチューブ等を備えてもよい。さらに、展開後のラインの判定を補助するためのカラーゲージや、使用説明書を備えていてもよい。
【符号の説明】
【0088】
1:検出器具
100:試験片
110:基材シート
110A:基材シートの第1面
110B:基材シートの第2面
120:標識物質保持部
130:固相担体
135:捕捉部
140:吸収体
150:試料受容部
200:筐体
210:第1部材
220:第2部材
211:第1押圧部
212:第2押圧部
213:第3押圧部
214:第4押圧部
225:第5押圧部
219:開口
217:周縁部
231:第1嵌合部
232:第2嵌合部
233:第3嵌合部
234:第4嵌合部
235:第5嵌合部
236:第6嵌合部
237:第7嵌合部
238:第8嵌合部
X:第1方向
Y:第2方向