(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131827
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】排気浄化装置
(51)【国際特許分類】
F01N 3/20 20060101AFI20230914BHJP
F01N 3/08 20060101ALI20230914BHJP
F01N 3/28 20060101ALI20230914BHJP
F01N 3/023 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
F01N3/20 E
F01N3/08 B
F01N3/28 301F
F01N3/023 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022036798
(22)【出願日】2022-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100130052
【弁理士】
【氏名又は名称】大阪 弘一
(72)【発明者】
【氏名】林崎 圭一
【テーマコード(参考)】
3G091
3G190
【Fターム(参考)】
3G091AA18
3G091AB02
3G091AB04
3G091AB13
3G091AB15
3G091BA11
3G091BA14
3G091BA15
3G091BA19
3G091GB05W
3G091GB06W
3G091GB07W
3G091HA05
3G091HA10
3G091HA12
3G091HA15
3G091HA16
3G091HA44
3G190AA12
3G190BA35
3G190CA30
3G190CB03
3G190CB19
3G190CB23
3G190CB26
3G190CB30
3G190CB44
3G190DA46
(57)【要約】
【課題】大型化及びコスト増大を避けつつ、触媒の被毒を抑制可能な排気浄化装置を提供する。
【解決手段】排気浄化装置1は、エンジン10の排気ガスGを流通させる排気通路20と、排気通路20に設けられ、排気ガスGを浄化するための触媒を含む触媒部30と、触媒部30よりも上流側において交換可能に排気通路20に設けられ、排気ガスGを流通させつつ排気ガスGに含まれる触媒部30の被毒物質をトラップするためのトラップ層40pを有するトラップ部40と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの排気ガスを流通させる排気通路と、
前記排気通路に設けられ、前記排気ガスを浄化するための触媒を含む触媒部と、
前記触媒部よりも上流側において交換可能に前記排気通路に設けられ、前記排気ガスを流通させつつ前記排気ガスに含まれる前記触媒部の被毒物質をトラップするためのトラップ層を有するトラップ部と、
を備える排気浄化装置。
【請求項2】
前記排気通路は、
前記触媒部が収容される第1管部分と、
前記第1管部分の上流側の第2管部分と、
を含み、
前記トラップ部は、前記トラップ層と、前記トラップ層に設けられたフランジ部と、を含み、前記第1管部分の内部に前記トラップ層が嵌め合わせられた状態において、前記フランジ部が前記第2管部分に締結されることにより、交換可能に前記排気通路に設けられている、
請求項1に記載の排気浄化装置。
【請求項3】
前記触媒部は、
前記排気ガスに含まれる炭化水素及び一酸化炭素を酸化するための第1触媒部と、
前記排気ガスに含まれる窒素酸化物を還元するための第2触媒部と、
を含む、
請求項1又は2に記載の排気浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ディーゼル排気システムが記載されている。このシステムでは、排ガスは、エンジンから酸化触媒へ流れ、酸化された排ガスは、その後にディーゼル粒子フィルタへ運ばれる。その後、その排ガス中に還元剤が注入され、その混合された排ガスが、次いで選択的還元のための触媒へ導入される。その触媒から出る排ガスは浄化されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなディーゼル排気システムでは、酸化触媒や選択還元触媒といった触媒は、その前面(上流側)から、リンや硫黄や炭化水素等の被毒物質による被毒が生じ、触媒性能が低下するおそれがある。この問題に対しては、予め触媒量を増やすことで劣化後の性能を十分に確保すれば、対応可能とも考えられる。しかし、この場合には、結果として、当該触媒が設けられる排気通路が大型化したり、コストが増大したりしてしまう。
【0005】
本開示は、大型化及びコスト増大を避けつつ、触媒の被毒を抑制可能な排気浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る排気浄化装置は、エンジンの排気ガスを流通させる排気通路と、排気通路に設けられ、排気ガスを浄化するための触媒を含む触媒部と、触媒部よりも上流側において交換可能に排気通路に設けられ、排気ガスを流通させつつ排気ガスに含まれる触媒部の被毒物質をトラップするためのトラップ層を有するトラップ部と、を備える。
【0007】
この排気浄化装置では、エンジンからの排気ガスを流通させる排気通路に、排気ガスを浄化するための触媒を含む触媒部が設けられている。特に、この排気浄化装置では、排気通路における触媒部の上流側に、被毒物質をトラップするためのトラップ層を含むトラップ部が設けられている。したがって、被毒物質による触媒の被毒が抑制される。さらに、この排気浄化装置では、当該トラップ部が交換可能に設けられている。したがって、適当な頻度でトラップ部を交換するようにすることが可能なため、大きく高コストなトラップ部(トラップ用の触媒)を用意する必要が無い。よって、この排気浄化装置によれば、大型化及びコスト増大を避けつつ、触媒の被毒を抑制可能である。
【0008】
本開示に係る排気浄化装置では、排気通路は、触媒部が収容される第1管部分と、第1管部分の上流側の第2管部分と、を含み、トラップ部は、トラップ層と、トラップ層に設けられたフランジ部と、を含み、第1管部分の内部にトラップ層が嵌め合わせられた状態において、フランジ部が第2管部分に締結されることにより、交換可能に排気通路に設けられていてもよい。この場合、簡単な構成により、トラップ部を交換可能に排気通路に設けることができる。
【0009】
本開示に係る排気浄化装置では、触媒部は、排気ガスに含まれる炭化水素及び一酸化炭素を酸化するための第1触媒部と、排気ガスに含まれる窒素酸化物を還元するための第2触媒部と、を含んでもよい。この場合、酸化触媒及び還元触媒の両方の被毒を抑制可能である。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、大型化及びコスト増大を避けつつ、触媒の被毒を抑制可能な排気浄化装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る排気浄化装置を示す模式図である。
【
図2】
図2は、
図1に示された排気浄化装置の要部の概略的な拡大断面図である。
【
図3】
図3は、変形例に係る排気浄化装置の要部の概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して一実施形態に係る排気浄化装置について説明する。なお、各図において、同一の要素又は相当する要素には、互いに同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0013】
図1は、一実施形態に係る排気浄化装置を示す模式図である。
図1に示される排気浄化装置1は、例えばバスやトラック等の大型車両、産業車両等の車両に搭載され、エンジン10によって発生した排気ガスGを浄化するためのものである。排気浄化装置1が搭載される車両は、例えばエンジン10を発電用の動力源として利用する、いわゆるシリーズ方式のハイブリッド車であってもよい。エンジン10は、ディーゼルエンジン等の内燃機関である。エンジン10は、例えばハイブリッド車両に搭載される場合、バッテリの残存容量が低下したときに駆動されてもよい。エンジン10から発生する一酸化炭素(NO)や二酸化炭素(NO
2)等をまとめて窒素酸化物(NOx)と称する。
【0014】
排気浄化装置1は、エンジン10の排気ガスGを外部に向けて流通させる排気通路20に設けられ、排気ガスGを浄化するための触媒部30を備えている。触媒部30は、DOC(Diesel Oxidation Catalyst)装置31と、DOC装置31の下流側に設けられたSCR(Selective Catalytic Reduction)装置33と、を含む。DOC装置31は、例えばセラミック製の担体と当該担体上に担持される酸化触媒とを含み、排気ガスに含まれる炭化水素(HC)及び一酸化炭素(CO)等を酸化して浄化する第1触媒部である。DOC装置31に含まれる酸化触媒としては、白金、ロジウム、パラジウム等の貴金属触媒が挙げられる。
【0015】
SCR装置33は、選択還元触媒を含む。選択還元触媒は、例えばセラミック製の担体上に担持される。選択還元触媒は、還元剤を用いて排気ガスGに含まれる窒素酸化物を選択的に還元する触媒であり、例えば銅系触媒、バナジウム系触媒又は鉄系触媒が利用される。SCR装置33は、アンモニア(NH3)等の還元剤を用いて排気ガスに含まれる窒素酸化物を窒素(N2)及び水(H2O)に還元する。なお、「還元剤」には還元剤の前駆体が含まれるものとする。このように、SCR装置33は、排気ガスGに含まれる窒素酸化物を還元するための第2触媒部である。
【0016】
排気浄化装置1は、DPF(Diesel Particulate Filter)装置32を備えている。DPF装置32は、排気通路20におけるDOC装置31とSCR装置33との間に配置されている。DPF装置32は、例えば多数の通気孔が形成されたセラミック製のフィルタを含み、排気ガスに含まれる粒子状物質(PM:Particulate Matter)を捕集するためのものである。
【0017】
排気浄化装置1は、さらに、触媒部30の上流側において排気通路20に設けられたトラップ部40を備えている。トラップ部40は、排気ガスGに含まれる触媒部30の被毒物質をトラップするためのものである。被毒物質は、例えば、リン(P)、硫黄(S)、及び、炭化水素(HC:hydrocarbon)等である。
【0018】
図2は、
図1に示された排気浄化装置の要部の概略的な拡大断面図である。
図2に示されるように、トラップ部40は、トラップ層40pとフランジ部40fとを含む。トラップ層40pは、排気ガスGに含まれる触媒部30の被毒物質をトラップする。そのために、トラップ層40pは、例えばセラミック製の担体と当該担体上に担持されるトラップ用触媒とを含む。トラップ用触媒は、例えば、アルミナやシリカやチタニアやアルカリ金属等の被毒物質を吸着しやすい材料に、助触媒としての微量の貴金属や遷移金属が添加されて構成され得る。助触媒として用いられ得る貴金属及び遷移金属の一例としては、Pt、Pd、Rh、Ir、Fe、Cu、Ag、V、Co、Mn、Ni、Zn等である。トラップ用触媒における貴金属等の助触媒の割合は、例えば0.1wt%以上1.0wt%未満程度である。なお、DOC装置31における上記貴金属触媒の割合は、例えば1.0wt%以上5.0wt%以下程度である。
【0019】
排気通路20は、触媒部30が収容される第1管部分21と、第1管部分21の上流側の第2管部分22と、を含む。そして、トラップ層40pは、第1管部分21内に嵌め合されている。トラップ層40pは、例えば、断面ハニカム状に構成されており、内部に排気ガスGを流通させ得る。したがって、トラップ層40pは、その内部に排気ガスGを流通させつつ排気ガスGに含まれる被毒物質をトラップ(吸着)する。
【0020】
トラップ層40pの上流側の端部には、フランジ部40fが設けられている。また、第2管部分22の下流側の端部には、フランジ部22fが設けられている。そして、トラップ部40は、トラップ層40pの外側面を第1管部分21の内側面21sに摺動させるようにトラップ層40pが第1管部分21に嵌め合わせられた状態において、フランジ部40fとフランジ部22fとがボルト等の締結部材50により互いに締結されることにより、排気通路20に対して交換可能に設けられている。したがって、トラップ部40は、締結部材50による締結を解除した後に、第1管部分21からトラップ層40pを引き抜くことによって、排気通路20から取り外して交換することが可能である。
【0021】
排気浄化装置1は、排気浄化装置1を搭載した車両の走行距離、エンジン10の運転時間、燃料噴射積算量、エンジンオイルの消費量等の少なくとも1つに基づいて、トラップ部40の交換のタイミングをユーザに報知する報知手段を有していてもよい。また、排気通路20から取り外されたトラップ部40のトラップ層40pは、例えば、酸での洗浄(リン、アッシュの溶解洗浄)や、例えば600℃以上の還元雰囲気での水素や炭化水素で硫黄をパージする等により、再生され得る。
【0022】
以上説明したように、排気浄化装置1では、エンジン10からの排気ガスGを流通させる排気通路20に、排気ガスGを浄化するための触媒を含む触媒部30が設けられている。特に、排気浄化装置1では、排気通路20における触媒部30の上流側に、被毒物質をトラップするためのトラップ層40pを含むトラップ部40が設けられている。したがって、被毒物質による触媒部の触媒の被毒が抑制される。さらに、排気浄化装置1では、当該トラップ部40が交換可能に設けられている。したがって、適当な頻度でトラップ部40を交換するようにすることが可能なため、大きく高コストなトラップ部40(トラップ用触媒)を用意する必要が無い。よって、排気浄化装置1によれば、大型化及びコスト増大を避けつつ、触媒部30の触媒の被毒を抑制可能である。
【0023】
また、排気浄化装置1では、排気通路20は、触媒部30が収容される第1管部分21と、第1管部分21の上流側の第2管部分22と、を含む。そして、トラップ部40は、トラップ層40pと、トラップ層40pに設けられたフランジ部40fと、を含み、第1管部分21の内部にトラップ層40pが嵌め合わせられた状態において、フランジ部40fが第2管部分22(のフランジ部22f)に締結されることにより、交換可能に排気通路20に設けられている。このように、簡単な構成により、トラップ部40を交換可能に排気通路20に設けることができる。
【0024】
さらに、排気浄化装置1では、触媒部30は、排気ガスGに含まれる炭化水素及び一酸化炭素を酸化するためのDOC装置31と、排気ガスGに含まれる窒素酸化物を還元するためのSCR装置33と、を含んでいる。このため、DOC装置31の酸化触媒、及び、SCR装置3の還元触媒の両方の被毒を抑制可能である。
【0025】
以上の実施形態は、本開示の一側面を説明したものである。本開示は、上述した排気浄化装置1に限定されず、任意に変形され得る。引き続いて、排気浄化装置1の変形例について説明する。
【0026】
図3は、変形例に係る排気浄化装置の要部の概略的な断面図である。
図3に示される排気浄化装置1Aは、上述した排気浄化装置1と比較して、トラップ部40に代えてトラップ部40Aを備える点、及び、排気通路20の第1管部分21の上流側の端部にフランジ部21fが設けられている点で相違している。
【0027】
トラップ部40Aは、上述したトラップ層40pと、トラップ層40pを収容する第3管部分41と、を含む。第3管部分41の一端部には上述したフランジ部40fが設けられており、第3管部分41のフランジ部40fと反対側の他端部には別のフランジ部40kが設けられている。トラップ層40pは、例えば嵌め合いにより第3管部分41に固定されている。このようなトラップ部40Aは、第3管部分41が第1管部分21と第2管部分22との間に介在するように配置される。
【0028】
そして、トラップ部40Aは、一方のフランジ部40fが第2管部分22のフランジ部22fに締結部材50により締結されると共に、他方のフランジ部40kが第1管部分21のフランジ部21fに別の締結部材60により締結されることにより、排気通路20に交換可能に設けられている。この状態において、トラップ部40Aの第3管部分41は、第1管部分21及び第2管部分22と共に排気通路20の一部を構成している。この例では、締結部材50,60の締結を解除することにより、トラップ部40Aを排気通路20から取り外して交換することが可能である。
【0029】
以上の排気浄化装置1Aによれば、上述した排気浄化装置1と同様の効果を奏することが可能である。さらに、排気浄化装置1Aによれば、トラップ部40Aの取り付け及び取り外しに際して、トラップ層40pを第1管部分21の内側面21sに摺動させて嵌め合せる工程が不要となる。
【0030】
なお、以上の排気浄化装置1,1Aでは、触媒部30がDOC装置31及びSCR装置33を含み、トラップ部40がそれらよりも上流側に設けられる場合について説明した。しかし、触媒部30の構成及びトラップ部40の配置はこれに限定されない。
【0031】
例えば、触媒部30においては、DOC装置31及びDPF装置32よりも上流側にSCR装置33を配置し、そのSCR装置33のさらに上流側にトラップ部40を交換可能に設けてもよい。また、DOC装置31及びDPF装置32の下流側にSCR装置33を配置する場合であっても、DOC装置31(及びDPF装置32)とSCR装置33との間にトラップ部40を交換可能に設けて、SCR装置33の被毒を抑制することも可能である。この場合、DOC装置31の上流側にさらにトラップ部40を設けてもよい。
【0032】
すなわち、排気浄化装置1,1Aでは、排気ガスGを浄化するための触媒を含む少なくとも1つの触媒部が備えられ、当該触媒部よりも上流側に少なくとも1つのトラップ部40が交換可能に設けられていればよい。
【符号の説明】
【0033】
1,1A…排気浄化装置、10…エンジン、20…排気通路、21…第1管部分、22…第2管部分、30…触媒部、31…DOC装置(第1触媒部)、33…SCR装置(第2触媒部)、40,40A…トラップ部、40p…トラップ層、40f…フランジ部、G…排気ガス。