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特開2023-131830情報処理装置、方法及びプログラムに関する。
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131830
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】情報処理装置、方法及びプログラムに関する。
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20230914BHJP
【FI】
G08G1/16 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022036802
(22)【出願日】2022-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003333
【氏名又は名称】ボッシュ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100154759
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 貴子
(72)【発明者】
【氏名】中里 研一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 正憲
(72)【発明者】
【氏名】山本 真哉
(72)【発明者】
【氏名】宮下 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】平田 弘達
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA07
5H181CC02
5H181CC11
5H181CC14
5H181FF04
5H181FF13
5H181FF27
5H181FF33
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL09
5H181LL14
(57)【要約】      (修正有)
【課題】自律移動機能を有する移動体の安全性を確保しつつ、滑らかな軌跡の移動経路を効率よく求める。
【解決手段】情報処理装置は、フィールド内での移動体の始点および終点、フィールド内の通過不能領域の情報を取得する条件取得部と、フィールド内に複数の中間点を設定し、始点から複数の中間点を経由して終点に至る評価対象の経路を設定する経路設定部と、経路と通過不能領域の近さに応じて増加する危険度の指標を算出する第1算出部と、経路の軌跡の滑らかさを示す指標を算出する第2算出部と、算出された指標に基づいて、危険度が低く滑らかな経路が生成されるようにフィールド内の中間点の位置を最適化する探索処理部と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自律移動機能を有する移動体(10)を所定のフィールド(F)内で移動させるときの移動経路を設定する情報処理装置(20)において、
前記フィールド内での前記移動体の始点(P)および終点(P)、前記フィールド内の通過不能領域(41)の情報を取得する条件取得部(31)と、
前記フィールド内に複数の中間点(P)を設定し、始点から複数の前記中間点を経由して前記終点に至る評価対象の経路(42)を設定する経路設定部(33)と、
前記経路と前記通過不能領域の近さに応じて増加する危険度の指標を算出する第1算出部(34)と、
前記経路の軌跡の滑らかさを示す指標を算出する第2算出部(35)と、
算出した指標に基づいて、前記危険度が低く滑らかな経路が生成されるように前記フィールド内の前記中間点の位置を最適化する探索処理部(37)と、を備える
情報処理装置。
【請求項2】
前記第1算出部(34)は、前記経路上の前記危険度の総和および前記経路上の前記危険度の最大値の少なくとも一方を前記危険度の指標として算出する
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記フィールド内の各位置に設定された前記危険度の設定値を、周囲の位置の前記設定値で平滑化して前記フィールドの危険度マップを生成するマップ生成部(32)をさらに備え、
前記第1算出部(34)は、前記危険度マップを用いて前記危険度の指標を算出する
請求項1または請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記第2算出部(35)は、前記中間点ごとのカーブの曲率の和に対応する指標を算出し、
前記探索処理部(37)は、前記カーブの曲率の和が小さくなるように最適化を行う
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記経路は、前記始点、前記中間点および前記終点をノードとし、前記ノード間をリンク(43)で接続して形成され、
前記第2算出部(35)は、前記中間点での前記リンク間の角度(θ)を用いて前記指標を算出する
請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記経路は、前記始点、前記中間点および前記終点をノードとし、前記ノード間をリンクで接続して形成され、
前記第2算出部(35)は、前記ノード間の距離のばらつきを示す指標を算出し、
前記探索処理部(37)は、前記ノード間の距離のばらつきが小さくなるように最適化を行う
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記フィールドに設定された衝突回避物の出現頻度に基づき、前記経路における前記移動体の予想移動時間を算出する第3算出部(36)をさらに備え、
前記探索処理部(37)は、前記予想移動時間を短縮するように前記フィールド内の前記中間点の位置を最適化する
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記探索処理部(37)で得られた複数の前記移動経路の候補を表示装置(29)に表示させる出力処理部(38)をさらに備える
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記移動体は、自律移動機能を有する建設機械である
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項10】
自律移動機能を有する移動体(10)を所定のフィールド(F)内で移動させるときの移動経路を設定する方法において、
前記フィールド内での前記移動体の始点(P)および終点(P)、前記フィールド内の通過不能領域(41)の情報を取得するステップ(S1)と、
前記フィールド内に複数の中間点(P)を設定し、始点から複数の前記中間点を経由して前記終点に至る評価対象の経路(42)を設定するステップ(S3)と、
前記経路と前記通過不能領域の近さに応じて増加する危険度の指標を算出するステップ(S4)と、
前記経路の軌跡の滑らかさを示す指標を算出するステップ(S5)と、
算出された指標に基づいて、前記危険度が低く滑らかな経路が生成されるように前記フィールド内の前記中間点の位置を最適化するステップ(S6-S8)と、を含む方法。
【請求項11】
自律移動機能を有する移動体(10)を所定のフィールド(F)内で移動させるときの移動経路を設定する方法をコンピュータ(20)に実行させるプログラムであって、前記方法は、
前記フィールド内での前記移動体の始点(P)および終点(P)、前記フィールド内の通過不能領域(41)の情報を取得するステップ(S1)と、
前記フィールド内に複数の中間点(P)を設定し、始点から複数の前記中間点を経由して前記終点に至る評価対象の経路(42)を設定するステップ(S3)と、
前記経路と前記通過不能領域の近さに応じて増加する危険度の指標を算出するステップ(S4)と、
前記経路の軌跡の滑らかさを示す指標を算出するステップ(S5)と、
算出された指標に基づいて、前記危険度が低く滑らかな経路が生成されるように前記フィールド内の前記中間点の位置を最適化するステップ(S6-S8)と、を含むプログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
障害物の位置などが既知の環境下において自律移動機能を有する移動体を効率的に移動させる行動計画を策定する場合、移動体の移動経路を最適化問題で探索することが考えられる。
【0003】
例えば、特許文献1には、学習モデルに基づいて、地図上の任意の2地点間のコストを提供するサーバ装置が提案されている。特許文献1の技術では、地図上の地点に対応する2つのノード間の予測コストをグラフ情報に基づいて計算し、2つのノードに対応する地図上の2地点間の実測コストを取得し、予測コスト及び実測コストの関係から学習モデルの学習データが生成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6562431号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この種の探索では、選択可能な移動経路が多くなるほど、移動体の移動経路を最適化するために多大な演算量が必要となってしまう。さらに、移動体の安全性を確保しつつ移動経路を滑らかな軌跡に近づけようとする場合、適切な解を得ることはより困難になる。
【0006】
本発明は、上記の課題を背景としてなされたものであり、自律移動機能を有する移動体の安全性を確保しつつ、滑らかな軌跡の移動経路を効率よく求めることのできる情報処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、自律移動機能を有する移動体(10)を所定のフィールド(F)内で移動させるときの移動経路を設定する情報処理装置(20)を提供する。情報処理装置は、フィールド内での移動体の始点(P)および終点(P)、フィールド内の通過不能領域(41)の情報を取得する条件取得部(31)と、フィールド内に複数の中間点(P)を設定し、始点から複数の中間点を経由して終点に至る評価対象の経路(42)を設定する経路設定部(33)と、経路と通過不能領域の近さに応じて増加する危険度の指標を算出する第1算出部(34)と、経路の軌跡の滑らかさを示す指標を算出する第2算出部(35)と、算出された指標に基づいて、危険度が低く滑らかな経路が生成されるようにフィールド内の中間点の位置を最適化する探索処理部(37)と、を備える。
【0008】
本発明の他の一態様は、自律移動機能を有する移動体(10)を所定のフィールド(F)内で移動させるときの移動経路を設定する方法を提供する。方法は、フィールド内での移動体の始点(P)および終点(P)、フィールド内の通過不能領域(41)の情報を取得するステップ(S1)と、フィールド内に複数の中間点(P)を設定し、始点から複数の中間点を経由して終点に至る評価対象の経路(42)を設定するステップ(S3)と、経路と通過不能領域の近さに応じて増加する危険度の指標を算出するステップ(S4)と、経路の軌跡の滑らかさを示す指標を算出するステップ(S5)と、算出された指標に基づいて、危険度が低く滑らかな経路が生成されるようにフィールド内の中間点の位置を最適化するステップ(S6-S8)と、を含む。
【0009】
本発明の他の一態様は、自律移動機能を有する移動体(10)を所定のフィールド(F)内で移動させるときの移動経路を設定する方法をコンピュータ(20)に実行させるプログラムを提供する。方法は、フィールド内での移動体の始点(P)および終点(P)、フィールド内の通過不能領域(41)の情報を取得するステップ(S1)と、フィールド内に複数の中間点(P)を設定し、始点から複数の中間点を経由して終点に至る評価対象の経路(42)を設定するステップ(S3)と、経路と通過不能領域の近さに応じて増加する危険度の指標を算出するステップ(S4)と、経路の軌跡の滑らかさを示す指標を算出するステップ(S5)と、算出された指標に基づいて、危険度が低く滑らかな経路が生成されるようにフィールド内の中間点の位置を最適化するステップ(S6-S8)と、を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、自律移動機能を有する移動体の安全性を確保しつつ、滑らかな軌跡の移動経路を効率よく求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態のシステム構成例を示す図である。
図2】第1実施形態の情報処理装置のソフトウェア構成例を示す図である。
図3】第1実施形態の情報処理装置の動作例を示す流れ図である。
図4】フィールドマップの一例を模式的に示す図である。
図5】危険度マップの一例を模式的に示す図である。
図6】評価対象の経路の初期設定例を示す図である。
図7図6の状態から最適化された経路の例を示す図である。
図8】第2実施形態の情報処理装置のソフトウェア構成例を示す図である。
図9】第2実施形態の情報処理装置20の動作例を示す流れ図である。
図10】衝突回避物の出現頻度の高い領域がフィールドに設定された例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の情報処理装置、方法及びプログラムの実施形態について、図面を参照して説明する。以下に説明する構成は、本発明の一例(代表例)であり、これに限定されない。
【0013】
<第1実施形態>
第1実施形態では、移動体の一例として自律移動機能を有するドーザーに適用されるシステムの事例を説明する。図1は、第1実施形態のシステム構成例を示す図である。第1実施形態のシステムは、ドーザー10と、情報処理装置20を備える。
【0014】
ドーザー10は、土木建設現場で運用される建設機械型のロボットであって、自動運転での盛り土の巻き出し機能と自律移動機能を有している。図1に示すように、ドーザー10は、盛り土を押し出す排土板11と、ドーザー10を走行させるための駆動部12と、センサ部13と、位置検出部14と、制御部15を備える。
【0015】
図1では、ドーザー10の一例として、駆動部12がクローラーで構成された装軌車両を示すが、ドーザー10は装輪車両であってもよい。また、ドーザー10は必要に応じて有人での操縦が可能な構成であってもよい。なお、ドーザー10は、排土板11を上下左右に制御できる構成であってもよく、排土板11を上下のみに制御できる構成であってもよい。
【0016】
センサ部13は、ドーザー10の周囲の情報を取得するためのセンサモジュールである。例えば、センサ部13は、画像を撮像して周囲の物体を検出する物体認識センサを含んでいてもよく、赤外線や超音波等で所定方向の物体の有無を検出する距離センサを含んでいてもよい。
位置検出部14は、ドーザー10の現在位置を検出するためのモジュールであって、例えば、GPS(Global Positioning System)などで構成される。
【0017】
制御部15は、ドーザー10の各部を統括的に制御して自動運転を実行するコンピュータである。例えば、制御部15は、外部から与えられた移動経路の情報に基づいて、土木建設現場内に複数設定される作業領域間を往来するドーザー10の自律移動を実行する。また、制御部15は、上記の作業領域では所定のアルゴリズムに従ってドーザー10を駆動し、盛り土の巻き出しを実行する。なお、制御部15は、移動経路の情報を保持する記憶部16をさらに備えている。
【0018】
情報処理装置20は、作業領域間を自律移動で往来するドーザー10の移動経路を設定するためのコンピュータである。情報処理装置20は、ドーザーの移動経路を設計するフィールド内においてドーザー10の移動経路を設定する。ドーザー10の移動経路の情報は、例えば記憶媒体を介した受け渡しや、有線または無線による通信などによって情報処理装置20からドーザー10に入力される。
【0019】
ここで、ドーザー10の移動経路は、ドーザー10が各種の障害物に衝突せずに安全に走行できることが要求される(第1の条件)。また、ドーザー10の移動経路を複雑な軌跡にすると、ドーザー10の旋回で整地後の地面が荒れてしまう。そのため、ドーザー10の移動経路は、上記の第1条件を満たした上で、ドーザー10の旋回が少なく滑らかな軌跡となることが好ましい(第2の条件)。
【0020】
図1に示すように、情報処理装置20は、CPU(Central Processing Unit)21と、ROM(Read Only Memory)22と、RAM(Random Access Memory)23と、記憶装置24と、入力I/F25および表示I/F26を備えるコンピュータである。情報処理装置20の各要素は、バス27を介して互いに接続されている。
【0021】
CPU21は、ROM22またはRAM23に格納されたプログラムに従って、各種の演算処理を行うプロセッサである。ROM22は、不揮発性の記憶領域であって、例えばBIOSなどのプログラムが格納される。RAM23は、揮発性の記憶領域であって、CPU21が各種の演算処理を行う際の一時記憶領域として使用される。
【0022】
記憶装置24は、不揮発性の大容量記憶媒体であって、例えば、ハードディスク(HDD)やソリッドステートドライブ(SSD)などが挙げられる。記憶装置24は、オペレーティングシステム(OS)、情報処理装置20の各種機能を実現するプログラム、および当該プログラムで使用されるデータなどを記憶する。
【0023】
入力I/F25は、外付けの入力装置28と接続され、入力装置28からの入力を受け付けるインターフェースである。入力装置28としては、例えば、キーボードやポインティングデバイスなどが挙げられる。
【0024】
表示I/F26は、外付けの表示装置29と接続され、表示装置29への出力を担うインターフェースである。表示装置29としては、例えば、液晶ディスプレイなどのモニタ装置が挙げられる。
【0025】
情報処理装置20においては、起動後にCPU21によりBIOSが実行され、記憶装置24からRAM23にOSが実行可能にロードされる。CPU21は、OSの動作に従って、情報処理装置20のソフトウェアモジュールを記憶装置24からRAM23に随時実行可能にロードする。そして、ロードされたソフトウェアモジュールは、CPU21がプログラムを実行することで動作する。
【0026】
(情報処理装置のソフトウェア構成)
図2は、第1実施形態の情報処理装置20のソフトウェア構成例を示す図である。
情報処理装置20は、ソフトウェアモジュールとして、条件取得部31と、マップ生成部32と、経路設定部33と、第1算出部34と、第2算出部35と、探索処理部37と、出力処理部38とを備える。
【0027】
条件取得部31は、ドーザー10の移動経路を設計するフィールドFと、ドーザー10の移動経路の始点Pおよび終点Pと、フィールドF内の通過不能領域41などの初期条件の入力をオペレータから受け付ける。これにより、条件取得部31は、フィールドFの仕様を示すフィールドマップ40を取得する。
【0028】
マップ生成部32は、フィールドF内の通過不能領域41の配置に基づき、フィールドF内での危険度を示す危険度マップMを生成する。
【0029】
経路設定部33は、フィールドF内において評価対象の経路42を設定する処理を行う。
第1算出部34は、経路42の危険度を示す指標を算出する。
第2算出部35は、経路42の軌跡の滑らかさを示す指標を算出する。
【0030】
探索処理部37は、上記の指標に基づいて経路42の最適化を行う。
出力処理部38は、探索処理部37で最適化された移動経路の候補を表示装置29に表示させる制御を行う。
【0031】
(情報処理装置の動作例)
図3は、第1実施形態の情報処理装置20の動作例を示す流れ図である。図3の処理は、入力装置28からのオペレータの開始指示に応じて開始される。
【0032】
S1にて、条件取得部31は、フィールドFの仕様を示すフィールドマップ40を取得する。一例として、S1の条件取得部31は、入力装置28を介して以下の初期条件の入力を受け付けることで、フィールドマップ40を生成する。
・フィールドFの形状および寸法の指定
・経路42の始点Pの位置
・始点Pからドーザー10が移動できる方向の指定
・経路42の終点Pの位置
・終点Pにドーザー10が侵入できる方向の指定
・通過不能領域41の数、位置および寸法の指定
【0033】
図4は、フィールドマップ40の一例を模式的に示す図である。フィールドFは、ドーザー10を自律走行させる土木建築現場に対応して設定され、本実施形態では簡単のためxy座標系で表現される二次元形状とする。なお、S1における各種の初期条件は、例えばGUI形式で情報処理装置20に入力されてもよい。
【0034】
図4に示すフィールドマップ40には、始点P、終点Pの位置と、3か所の通過不能領域41が規定されている。また、始点Pからドーザー10が移動できる方向は図中左向きに設定され、終点Pにドーザー10が侵入できる方向は図中上向きに設定されている。
【0035】
また、通過不能領域41は、例えば、土木建築現場内に存在する壁や配管などの固定障害物や、ドーザー10が通行できない寸法の穴、溝、段差などが該当する。フィールドマップ40では、ドーザー10の通過不能領域41と、通過不能領域41に該当しない通過可能領域は、例えば0と1の二値分布で示される。例えば、フィールドマップ40上で通過可能領域の座標には通過可能を示す設定値(「0」値)が対応付けされ、通過不能領域41の座標には通過不能を示す設定値(「1」値)が対応付けされている。
【0036】
S2にて、マップ生成部32は、フィールドF内の通過不能領域41の配置に基づき、フィールドF内での危険度を示す危険度マップMを生成する。危険度マップMは、フィールドFの各座標について、通過不能領域41からの近さを危険度として多諧調で示すマップである。
【0037】
図5は、危険度マップMの一例を模式的に示す図である。一例として、S2のマップ生成部32は、フィールドマップ40に平滑化フィルタ(例えばガウシアンフィルタや平均化フィルタ)を乗算し、危険度マップMを生成する。危険度マップMでの各座標の設定値は、周囲の座標の設定値で平滑化されて「0」値から「1」値の間で多諧調の値をとる状態に変換される。危険度マップMでの各座標の設定値は、通過不能領域41に近いほど「1」値に近づき、通過不能領域41から離れるほど「0」値に近づく。なお、図5では、平滑化された通過不能領域41aをグラデーションで示している。
【0038】
S3にて、経路設定部33は、フィールドF内に評価対象の経路42を設定する処理を行う。このとき、経路設定部33は、フィールドF内に複数の中間点P(ただし、nは1よりも大きい整数)を適宜設定する。そして、経路設定部33は、始点Pから複数の中間点Pを順次経由して終点Pに至る経路42を設定する。本実施形態での経路42は、ノード(始点、中間点、終点)を順番に直線のリンク43で結んで設定される。また、中間点Pの数と各中間点の通過順序は、オペレータによって予め設定される。なお、図6に、評価対象の経路42の初期設定例を示す。
【0039】
S4にて、第1算出部34は、評価対象の経路42の危険度を示す指標を以下の方法で算出する。まず、第1算出部34は、フィールドF上で経路42の通過する座標を特定し、危険度マップMから経路42上の各座標の設定値をそれぞれ取得する。そして、第1算出部34は、経路42の設定値の総和と、経路42上での設定値の最大値をそれぞれ危険度の指標として算出する。
【0040】
ここで、通過不能領域41またはその近傍では座標の設定値が高い値を示す。そのため、設定値の総和が大きい経路42は、設定値の総和が小さい経路42と比べて、例えばドーザー10が通過不能領域41の障害物と衝突する事象やドーザー10が障害物の近傍を走行するなどの事象が生じ、ドーザー10を安全に自律走行させることが困難になる。
また、設定値の最大値が閾値以上となる場合、ドーザー10が経路42のどこかで通過不能領域41の障害物と衝突するか又は非常に接近し、危険な状態が生じる可能性が高いと判断できる。
【0041】
そのため、情報処理装置20は、上記の設定値の総和が低い経路42や設定値の最大値が低い経路42を選択することで、走行時に危険度の低い経路42を選択することが可能となる。
【0042】
S5にて、第2算出部35は、経路42の軌跡の滑らかさを示す2種類の指標を算出する。第1の指標は、経路42上のカーブの大きさを示す指標であり、第2の指標は、経路42上のノード間の距離のばらつきを示す指標である。
【0043】
第2算出部35は、以下の方法により第1の指標を算出する。
まず、第2算出部35は、経路42の各中間点でリンク43間の角度を求める。ここで、2つのリンク43をつなぐ任意の中間点Pでのリンク間角度をθと表記する。
【0044】
次に、第2算出部35は、中間点Pでのカーブの大きさCvを下式(1)で求める。下式(1)のCvは、θの角度が180度に近く、中間点Pでのカーブの曲率が小さい(すなわち、2つのリンク43のなすカーブが緩い)と値が小さくなり、θの角度が180度から乖離し、中間点Pでのカーブの曲率が大きくなると値が大きくなる。
Cv=|180°-θn| …(1)
【0045】
そして、第2算出部35は、n個の全中間点で上記のCvの値を求める。そして、第2算出部35は、全中間点のCvのn乗和を第1の指標として取得する。
ここで、第1の指標は、経路42上に曲率の大きいカーブが多く存在するほど大きな値を示すことになる。そのため、情報処理装置20は、第1の指標の値が小さい経路42を選択することで、ドーザー10の旋回が少なく滑らかな軌跡の経路42を選択することが可能となる。また、第2算出部35は、リンク間角度θを用いて経路42の曲率を示す指標を簡易な演算で求めることで、演算負荷を抑制できる。
【0046】
また、第2算出部35は、以下の方法により第2の指標を算出する。
まず、第2算出部35は、経路42のノードを結ぶ各リンク43の長さをそれぞれ算出する。そして、第2算出部35は、第2の指標として、リンク43の長さの標準偏差を算出する。
【0047】
一般的にノード間の距離のばらつきの大きい経路42は、最適化が不十分で無駄が生じている場合が多く、曲率の大きなカーブも不必要に形成されやすい。そのため、情報処理装置20は、第2の指標でノード間の距離のばらつきの少ない経路を選択することで、ドーザー10の旋回が少なく滑らかな軌跡の経路を選択することが可能となる。
【0048】
ここで、経路42の探索では中間点Pの数を増やすほど経路の軌跡は滑らかになるがその分演算量は大幅に増える。経路42の探索の演算量を削減するためには中間点Pの数を減らしてノード間を曲線補間してドーザー10の実軌道を滑らかにすることも想定される。このようにノード間を曲線補間してドーザー10の実軌道を生成する場合、ノード間の距離が離れていると曲線補間した実軌道がリンクの軌跡から乖離しやすくなるので、ドーザー10が意図せずに通過不能領域の障害物に近づいてしまう可能性もある。そのため、曲線補間に適したノードを選択する場合には、第2の指標による判断がより有効になる。
【0049】
S6にて、探索処理部37は、経路42の安全性が確保されているかを判断する。
S6での探索処理部37は、経路42上の設定値の最大値が所定の第1閾値未満で障害物との衝突がなく、かつ経路42の設定値の総和が所定の第2閾値未満で障害物との安全マージンが確保されているときに、経路42の安全性が確保されていると判断する。
【0050】
経路42の安全性が確保されている場合(Yes)、処理はS7に移行する。一方、経路42の安全性が確保されていない場合(No)、処理はS8に移行する。
【0051】
S7にて、探索処理部37は、現在の経路42が最適化の打ち切り条件を満たしているかを判断する。
【0052】
例えば、S7での探索処理部37は、S5で算出した第1の指標および第2の指標を正規化して線形結合することで経路42の評価値を算出する。評価値は、経路42が滑らかな軌跡に近いほど小さな値を示す。
そして、探索処理部37は、評価値が所定の打ち切り条件の値よりも小さい状態であるときに、最適化の打ち切り条件を満たすと判断する。なお、初回の処理では、探索処理部37は打ち切り条件を満たしていないと判断する。
【0053】
最適化の打ち切り条件を満たさない場合(No)、処理はS8に移行する。一方、最適化の打ち切り条件を満たす場合(Yes)、処理はS9に移行する。
【0054】
S8にて、探索処理部37は、モンテカルロ法などのアルゴリズムを用いて中間点Pの位置を再設定する。S8の後、S4に戻って上記の処理が繰り返される。S8のループ処理により、現在の経路42よりも評価値が小さく、安全性の確保された経路が情報処理装置20により探索され、移動経路の最適化が行われる。
【0055】
なお、図7に、図6の状態から最適化された経路42aの例を示す。図6では、始点から2番目および3番目の中間点P,Pが平滑化された通行不能領域41aと重なっていたが、図7では、中間点P-Pが通行不能領域41aを避けて設定されている。
【0056】
S9にて、探索処理部37は、現在の経路42を移動経路の候補として保存する。
S10にて、探索処理部37は、保存された移動経路の候補の数が1より多い所定数以上であるかを判断する。移動経路の候補の数が所定数以上の場合(Yes)には、処理はS11に移行する。一方、移動経路の候補の数が所定数未満の場合(No)には処理はS3に戻り、新たな移動経路の候補が探索される。
【0057】
S11にて、探索処理部37は、所定数以上の移動経路の候補のうちから所定のアルゴリズムで最適な移動経路を決定する。モンテカルロ法などで経路42の最適化を行う場合には局所解となる場合も多いため、複数の候補から最適な移動経路を選択することで、ドーザー10の移動経路を適切に設定することが可能となる。
なお、S11において、出力処理部38が複数の移動経路の候補を表示装置29に表示し、オペレータから受け付けた経路の選択指示に基づいて探索処理部37が最適な移動経路を決定してもよい。
【0058】
以上で、図3の説明を終了する。その後、決定された移動経路の情報は、情報処理装置から読みだされてドーザー10に入力される。なお、移動経路の実軌道は、ドーザー10側で曲線補間されてもよい。
【0059】
以上のように、第1実施形態において、条件取得部31は、フィールドF内でのドーザー10の始点Pおよび終点P、フィールドF内の通過不能領域41の情報を取得する(S1)。経路設定部33は、フィールドF内に複数の中間点Pを設定し、始点Pから複数の中間点Pを経由して終点Pに至る評価対象の経路42を設定する(S3)。第1算出部34は、経路42と通過不能領域41の近さに応じて増加する危険度の指標を算出する(S4)。第2算出部35は、経路42の軌跡の滑らかさを示す第1の指標および第2の指標を算出する(S5)。そして、探索処理部37は、算出された指標に基づいて、危険度が低く滑らかな経路が生成されるようにフィールドF内の中間点Pの位置を最適化する(S6-S8)。
【0060】
第1実施形態によれば、上記のように、経路42の危険度および軌跡の滑らかさの指標に基づいて経路42の中間点を最適化するので、ドーザー10の安全性を確保しつつ、滑らかな軌跡の移動経路を効率よく求めることができる。
【0061】
<第2実施形態>
ドーザー10は、人や車両(土砂を運搬するダンプカーなど)などの衝突回避物を検出した場合、安全確保のため衝突回避物が経路42から退避するまで停止(あるいは減速)する機能を有している。第2実施形態の例では、上記の衝突回避物が経路42に出現する場合を考慮し、ドーザー10の予想移動時間に基づいてさらに経路42の最適化が行われる。
【0062】
第2実施形態は、第1実施形態の変形例であり、第2実施形態でのハードウェア構成は第1実施形態と同様である。そのため、第2実施形態の説明において、第1実施形態と同様の構成には同じ符号を付して重複説明を省略する。
【0063】
図8は、第2実施形態の情報処理装置20のソフトウェア構成例を示す図である。
情報処理装置20は、第1実施形態の各ソフトウェアモジュールに加えて、第3算出部36のソフトウェアモジュールをさらに備える。第3算出部36は、フィールドFに設定された衝突回避物の出現頻度に基づき、経路42におけるドーザー10の予想移動時間を算出する。
【0064】
また、図9は、第2実施形態の情報処理装置20の動作例を示す流れ図である。図9の動作例では、S5とS6の処理の間にS12の処理が行われる点で図3と相違する。また、S1の処理およびS7の処理も以下のように相違する。
【0065】
図9のS1において、条件取得部31は、第1実施形態の初期条件に加え、フィールドF上での衝突回避物の出現頻度を設定する入力をさらに受け付ける。例えば、オペレータは、フィールドFの任意の領域を衝突回避物の出現頻度の高い領域として設定できる。例えば、建設作業現場で車両の経路と重なる領域や、横断歩道の設定されている領域などが、衝突回避物の出現頻度の高い領域としてフィールドマップ40上に設定される。
なお、図10は、衝突回避物の出現頻度の高い領域44がフィールドFに設定された例を示す図である。
【0066】
図9において、S2からS5までの処理は第1実施形態と同様である。S5の処理の後、S12にて、第3算出部36は、経路42におけるドーザー10の予想移動時間を算出する。S12での第3算出部36は、ドーザー10の時速と経路42の全長から経路42の予想移動時間を算出する。ただし、領域44での移動時間の算出では、衝突回避物の出現を考慮して移動時間が以下のように算出される。
【0067】
領域44では、他の領域よりも比較的高い頻度で衝突回避物が出現してドーザー10が停止する。そのため、第3算出部36は、領域44を経路42が通過する場合、領域44での衝突回避物の出現頻度に基づくドーザー10の停止時間の期待値を予想移動時間に加算する。その後、S6の処理に移行する。S6の処理は第1実施形態と同様である。
【0068】
図9のS7では、探索処理部37は、S5で算出した第1の指標および第2の指標と、S12で算出した予想移動時間を正規化して線形結合し、経路42の評価値を算出する。そして、探索処理部37は、算出した評価値に基づき、経路42が最適化の打ち切り条件を満たしているかを判断する。
【0069】
最適化の打ち切り条件を満たさない場合(No)、処理はS8に移行する。一方、最適化の打ち切り条件を満たす場合(Yes)、処理はS9に移行する。図9のS8以降の処理は第1実施形態と同様である。
【0070】
以上のように、第2実施形態では、経路の予想移動時間を考慮して最適化の打ち切りが判断される。そして、図9のS8のループでは、予想移動時間を短縮するようにフィールドF内の中間点Pの位置が最適化される。
【0071】
これにより、第2実施形態では、図10に示すように、中間点Pを経由して衝突回避物の出現頻度の高い領域44を通過する経路42aよりも、中間点P’を経由して領域44を迂回する経路42b(すなわち、衝突回避物の出現頻度が低くなる経路)が選択されやすくなる。
【0072】
<実施形態の変形例>
上記実施形態の1以上の機能を実現するプログラムは、ネットワークを介して装置に供給されてもよい。また、上記実施形態の構成は、1以上の機能を実現するハードウェア回路(例えば、ASIC)を用いて実現されてもよい。
【0073】
また、上記実施形態では、自律移動機能を有するドーザー10の移動経路を設計する情報処理装置20の例を説明したが、本発明の情報処理装置はドーザー10以外の他の移動体の移動経路を設計するものであってもよい。例えば、自律移動機能を有する移動体としては、ドーザー以外の建設機械、車両、ワーク等を搬送する搬送ロボット、ドローンなどが挙げられる。
【0074】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0075】
10…ドーザー、20…情報処理装置、21…CPU、24…記憶装置、29…表示装置、31…条件取得部、32…マップ生成部、33…経路設定部、34…第1算出部、35…第2算出部、36…第3算出部、37…探索処理部、38…出力処理部、41…通過不能領域、42…経路、43…リンク、F…フィールド、M…危険度マップ、P…始点、P…終点、P…中間点

図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8
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図10