(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131835
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】保護具及び作業機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/00 20060101AFI20230914BHJP
E02F 9/24 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
E02F9/00 K
E02F9/24 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022036813
(22)【出願日】2022-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大西 創士
【テーマコード(参考)】
2D015
【Fターム(参考)】
2D015BA01
2D015GA01
2D015GB04
(57)【要約】
【課題】作業機械が有するシリンダに外部から負荷がかかることを防止する。
【解決手段】支持部と当該支持部に揺動自在に取り付けられる作業具とに揺動自在に取り付けられて伸縮動作することにより作業具を支持部に対して揺動させる作業機械のシリンダを保護する保護具100であって、保護具100は、支持部及びシリンダのいずれか一方に取り付けられており、保護具100には、シリンダの伸縮作動に伴い接近及び離反するシリンダと支持部との間の隙間に設けられ、保護具100が取り付けられる支持部及びシリンダの一方から支持部及びシリンダの他方に向かって突出する突出部50が設けられる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部と当該支持部に揺動自在に取り付けられる作業具とに揺動自在に取り付けられて伸縮動作することにより前記作業具を前記支持部に対して揺動させる作業機械のシリンダを保護する保護具であって、
前記保護具は、前記支持部及び前記シリンダのいずれか一方に取り付けられており、
前記保護具には、前記シリンダの伸縮作動に伴い接近及び離反する前記シリンダと前記支持部との間の隙間に設けられ、前記保護具が取り付けられる前記支持部及び前記シリンダの一方から前記支持部及び前記シリンダの他方に向かって突出する突出部が設けられることを特徴とする保護具。
【請求項2】
請求項1に記載の保護具であって、
前記突出部は、前記支持部及び前記シリンダの前記他方に向かうにつれて前記突出部の突出方向と前記シリンダの軸方向の両方に垂直な方向の寸法が小さくなることを特徴とする保護具。
【請求項3】
請求項1または2に記載の保護具であって、
前記突出部は、前記支持部及び前記シリンダの前記他方に弾性的に接触可能な弾性部を有することを特徴とする保護具。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一つに記載の保護具であって、
前記突出部は、前記支持部及び前記シリンダの前記一方に着脱可能に設けられることを特徴とする保護具。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一つに記載の保護具が設けられる作業機械であって、
前記作業機械は、前記作業具としてのバケットと、前記支持部としてのアームと、を有するショベルであり、
前記ショベルは、前記バケットと前記シリンダとを連結し前記シリンダの前記伸縮動作により前記バケットとともに回転駆動されるリンク機構をさらに有し、
前記シリンダは、シリンダチューブと、前記シリンダチューブから延出するピストンロッドと、を有し、
前記シリンダチューブは、前記リンク機構に回転自在に連結されることを特徴とする作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護具及び作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、走行部と、走行部の上部に旋回可能に設けられる旋回部と、旋回部の前方中央部に設けられる掘削部、を備える油圧ショベルが開示されている。掘削部は、ブームと、ブームの先端に揺動可能に取り付けられるアームと、アームの先端に揺動可能に取り付けられて土砂等を掘削するバケットと、を備える。また、掘削部は、ブームを上下に回動させるブームシリンダと、アームを上下に回動させるアームシリンダと、バケットを回動させるバケットシリンダと、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のショベルでは、バケットシリンダが伸縮すると、バケットシリンダとバケットとの間に設けられるリンク機構が回転駆動され、バケットが回転駆動される。この際、バケットシリンダがアームに接近し、バケットシリンダとアームとの間の隙間が小さくなる。よって、バケットシリンダが伸縮しバケットシリンダがアームに接近すると、バケットシリンダとアームとの間に石や木材等が挟み込まれる可能性がある。これにより、バケットシリンダに外部から負荷がかかるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、作業機械が有するシリンダに外部から負荷がかかることを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、支持部と当該支持部に揺動自在に取り付けられる作業具とに揺動自在に取り付けられて伸縮動作することにより作業具を支持部に対して揺動させる作業機械のシリンダを保護する保護具であって、保護具は、支持部及びシリンダのいずれか一方に取り付けられており、保護具には、シリンダの伸縮作動に伴い接近及び離反するシリンダと支持部との間の隙間に設けられ、保護具が取り付けられる支持部及びシリンダの一方から支持部及びシリンダの他方に向かって突出する突出部が設けられることを特徴とする。
【0007】
この発明では、支持部及びシリンダのいずれか一方に保護具が設けられ、保護具の突出部が他方に向かって突出する。これにより、作業具を揺動させる際にシリンダが支持部に接近すると、突出部によりシリンダと支持部との間の石や木材等の異物が掻き出される。そのため、シリンダと支持部との間に異物が挟み込まれることが防止される。
【0008】
本発明は、突出部は、支持部及びシリンダの他方に向かうにつれて突出部の突出方向とシリンダの軸方向の両方に垂直な方向の寸法が小さくなることを特徴とする。
【0009】
この発明では、突出部が他方に向かって突出するとともに他方に向かうにつれて突出方向とシリンダの軸方向の両方に垂直な方向の寸法が小さくなる。そのため、突出部によりシリンダと支持部との間の異物がより掻き出されやすくなる。
【0010】
本発明は、突出部は、支持部及びシリンダの他方に弾性的に接触可能な弾性部を有することを特徴とする。
【0011】
この発明では、弾性部が支持部またはシリンダの他方に接触し弾性変形することにより、他方の表面に付着した異物が掻き出される。さらに、弾性部により、突出部が他方に接触した際の衝撃が緩和される。
【0012】
本発明は、突出部は、支持部及びシリンダの一方に着脱可能に設けられることを特徴とする。
【0013】
この発明では、突出部が摩耗しても容易に交換することができる。
【0014】
本発明は、上記保護具が設けられる作業機械であって、作業機械は、作業具としてのバケットと、支持部としてのアームと、を有するショベルであり、ショベルは、バケットとシリンダとを連結しシリンダの伸縮動作によりバケットとともに回転駆動されるリンク機構をさらに有し、シリンダは、シリンダチューブと、シリンダチューブから延出するピストンロッドと、を有し、シリンダチューブは、リンク機構に回転自在に連結されることを特徴とする。
【0015】
この発明では、シリンダチューブがリンク機構に連結され、シリンダの伸縮動作によりリンク機構及びバケットが回転駆動される。よって、シリンダでは、回転駆動されるリンク機構に連結されたシリンダチューブの方がピストンロッドよりも大きく移動する。そのため、シリンダチューブでは、支持部との間に異物が入り込みやすく、さらに、ピストンロッドよりも大径であるため支持部との間が小さく異物を挟み込みやすい。しかしながら、このような構成のショベルであっても、突出部によりシリンダチューブと支持部との間に異物が挟み込まれることが防止される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、作業機械が有するシリンダに外部から負荷がかかることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係る保護具が設けられた油圧ショベルを示す概略図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る保護具が設けられた油圧ショベルの一部を示す側面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る保護具の斜視図であり、シリンダに取り付けられた状態を示す。
【
図4】本発明の実施形態に係る保護具の斜視図であり、シリンダに取り付けられる前の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図面を参照して、本発明の実施形態に係る保護具について説明する。保護具は、走行装置を備えた建設機械、農業機械、産業機械等の作業機械に設けられる。以下では、作業機械としてのクローラ式の油圧ショベル1に設けられる保護具100を一例に説明する。油圧ショベル1のアクチュエータの駆動には、作動流体として作動油を用いる例について説明するが、作動流体には作動水等の他の流体を用いてもよい。
【0019】
図1に示すように、油圧ショベル1は、クローラ式の走行部2と、走行部2の上部に旋回可能に設けられる旋回部3と、旋回部3の前方中央部に設けられる掘削部10と、を備える。旋回部3には、作業者が搭乗するキャビン3aが設けられる。走行部2、旋回部3、及び掘削部10は、エンジン(図示せず)により駆動される油圧ポンプ(図示せず)から吐出される作動油により駆動される。
【0020】
走行部2は、走行モータ(図示省略)によって左右一対のクローラ2aを駆動することで油圧ショベル1を走行させる。旋回部3は、旋回モータ(図示省略)によって駆動され、走行部2に対して左右方向に旋回する。
【0021】
図1、
図2を参照して、掘削部10について説明する。掘削部10は、土砂等を掘削する作業具としてのバケット11と、バケット11が先端に揺動自在に取り付けられる支持部としてのアーム12と、アーム12に取り付けられバケット11を揺動させるバケットシリンダ13と、バケット11とバケットシリンダ13とを連結するリンク機構20と、アーム12が先端に取り付けられ旋回部3の左右方向に延びる水平軸まわりに揺動可能に取り付けられるブーム14(
図1参照)と、ブーム14とアーム12との間に取り付けられアーム12を揺動させるアームシリンダ15(
図1参照)と、旋回部3とブーム14との間に取り付けられブーム14を揺動させるブームシリンダ16(
図1参照)と、を有する。
【0022】
図2に示すように、アーム12は、バケットシリンダ13が取り付けられる基部12aと、基部12aから延びて設けられバケット11が先端に取り付けられる延設部12bと、を有する。延設部12bの先端には、バケット11が連結ピン18により揺動可能に取り付けられるとともに、リンク機構20が連結ピン18及び後述する第一ピン25により揺動可能に取り付けられる。バケットシリンダ13は、シリンダチューブ13aと、シリンダチューブ13aから延出するピストンロッド13bと、を有し、ピストンロッド13bが連結ピン19によりアーム12の基部12aに揺動可能に取り付けられ、シリンダチューブ13aがリンク機構20に揺動可能(回転自在)に連結される。これにより、バケットシリンダ13は、延設部12bと並んで延びて設けられる。バケットシリンダ13は、軸方向に垂直な方向に延設部12bと並び、延設部12bよりもキャビン3aから離れて設けられる。延設部12bは、先端に向かうにつれてバケットシリンダ13と隣接する方向(
図2における左右方向)の寸法が小さくなるように、バケットシリンダ13に対向する面が傾斜して設けられる。なお、ブーム14、アームシリンダ15、及びブームシリンダ16の構成については、公知の構成を採用できるため、詳細な説明は省略する。
【0023】
リンク機構20は、略U字状に形成され、バケット11、アーム12、及びバケットシリンダ13との間にわたって設けられる。リンク機構20は、アーム12の延設部12bとバケットシリンダ13のシリンダチューブ13aとの間に設けられ両者を連結する第一リンク部21と、シリンダチューブ13aとバケット11との間に設けられ両者を連結する第二リンク部22と、バケット11とアーム12とを連結する連結ピン18と第二リンク部22との間に設けられる第三リンク部23と、を有する。第三リンク部23は、バケット11の二ヶ所に連結される。
【0024】
第一リンク部21におけるアーム12の延設部12b側の端部は、第一ピン25により延設部12bに揺動可能に連結される。第一リンク部21におけるバケットシリンダ13のシリンダチューブ13a側の端部は、第二リンク部22におけるシリンダチューブ13a側の端部とともに第二ピン26によりシリンダチューブ13aに揺動可能に連結される。このため、第一リンク部21は、バケットシリンダ13が伸縮すると、第一ピン25を支点として回転駆動される。また、第二リンク部22におけるバケット11側の端部は、第三リンク部23の一方の端部とともに第三ピン27によりバケット11に揺動可能に連結される。このため、第二リンク部22は、バケットシリンダ13の伸縮に追従する。また、第三リンク部23の他方の端部は、連結ピン18によりバケット11に揺動可能に連結される。このため、第三リンク部23は、バケットシリンダ13が伸縮すると、連結ピン18を支点として回転駆動される。
【0025】
このような掘削部10では、バケットシリンダ13が
図1に示す状態から伸長すると、バケットシリンダ13のシリンダチューブ13aに連結される第二ピン26が
図2における下方(言い換えれば、バケット11側)に変位する。すると、アーム12の延設部12bに連結される第一ピン25を支点として第一リンク部21が
図2における反時計回りに回転駆動される。さらに、バケットシリンダ13の伸長により、第二リンク部22を介して第三ピン27も
図2における下方に変位する。すると、バケット11及び延設部12bに連結される連結ピン18を支点として第三リンク部23が
図2における反時計回りに回転駆動される。これにより、バケット11は、連結ピン18を支点として
図2における反時計回りに回転駆動される。
【0026】
反対に、バケットシリンダ13が
図2に示す状態から収縮すると、第二ピン26が
図2における上方(言い換えれば、バケットシリンダ13側)に変位し、第一ピン25を支点として第一リンク部21が
図2における時計回りに回転駆動される。さらに、バケットシリンダ13の収縮により、第二リンク部22を介して第三ピン27も
図2における上方に変位し、連結ピン18を支点として第三リンク部23が
図2における時計回りに回転駆動される。これにより、バケット11は、連結ピン18を支点として
図2における時計回りに回転駆動される。
【0027】
このように、バケットシリンダ13は、伸長動作することによりバケット11及びリンク機構20をアーム12に対して揺動(回転駆動)させる。
【0028】
図3,
図4を参照して、油圧ショベル1に設けられる保護具100について説明する。本実施形態では、保護具100は、バケットシリンダ13のシリンダチューブ13aに取り付けられる。
【0029】
保護具100は、アーム12(具体的には、延設部12b)に向かって突出する突出部50と、突出部50をバケットシリンダ13のシリンダチューブ13aに取り付けるための取付部60と、を備える。取付部60は、シリンダチューブ13aの略全体を覆うように設けられる。
【0030】
突出部50は、バケットシリンダ13の軸方向に延びて設けられる。突出部50は、アーム12の延設部12bとバケットシリンダ13のシリンダチューブ13aとの間に設けられ、延設部12bに向かうにつれて突出方向とバケットシリンダ13の軸方向の両方に垂直な方向の寸法(
図1における奥行き方向の寸法)が小さくなるように形成される。ここで、「突出部50の突出方向」とは、バケットシリンダ13の軸方向とバケット11の回転中心軸である連結ピン18の両方に垂直な方向のことである。言い換えれば、「突出部50の突出方向」とは、バケットシリンダ13が軸方向に垂直な方向において延設部12bと並ぶ方向のことである。本実施形態では、突出部50は、バケットシリンダ13の軸に垂直な断面において、三角形状となるように形成される。また、突出部50は、延設部12bに弾性的に接触可能な弾性部50aを有する。本実施形態では、突出部50の全体が例えばゴム等で形成される弾性部50aである。
【0031】
取付部60は、例えば金属や樹脂等の突出部50よりも硬い材質で形成される。取付部60は、シリンダチューブ13aを覆うように形成される半円状の第一半円部61及び第二半円部62を有する。第一半円部61及び第二半円部62の内径は、シリンダチューブ13aの外形と略同じである。第一半円部61及び第二半円部62は、それぞれフランジ部61a,62aを有し、フランジ部61a,62aが互いに対向する。取付部60は、フランジ部61a,62aがボルト65及びナット66(
図4参照)により互いに固定されることにより、シリンダチューブ13aに取り付けられる。第一半円部61は、突出部50が取り付けられる取付面61bと、軸方向の一方の端部に設けられ取付面61bから突出して突出部50の位置を規定する位置規定部61dと、を有する。また、突出部50は、第一半円部61に取り付けられる取付面50bを有する。
図4に示すように、第一半円部61の取付面61b及び突出部50の取付面50bには、軸方向に延びる凹凸状(具体的にはT字状)に形成され互いに嵌合する嵌合部61c,50cが、それぞれの面の全体に設けられる。
【0032】
突出部50を第一半円部61に取り付けるには、第一半円部61の軸方向の他方の端部(位置規定部61dとは反対側の端部)における嵌合部61cの開口から突出部50の取付面50bを挿入し、第一半円部61の取付面61bを嵌合させて突出部50が位置規定部61dに当接するまでスライドさせる。これにより、突出部50が第一半円部61の径方向に脱落しないようにする。そして、突出部50における位置規定部61dとは反対側の端部において、プレート67をボルト68により第一半円部61に固定し、突出部50が位置規定部61dとは反対側の嵌合部61cの開口を通じて嵌合部61cから脱落しないようにする。これにより、突出部50が第一半円部61に取り付けられる。なお、第一半円部61に位置規定部61dが設けられずに、突出部50における両端部において、プレート67をボルト68により第一半円部61に固定して突出部50の脱落を防止してもよい。
【0033】
ここで、油圧ショベル1では、上記のように、バケットシリンダ13が伸縮すると、バケットシリンダ13のシリンダチューブ13aに連結される第一リンク部21が回転駆動されてバケット11が回転駆動される。この際、シリンダチューブ13aに連結される第二ピン26がアーム12の延設部12bに接近及び延設部12bから離反するため、シリンダチューブ13aがアーム12の延設部12bに接近及び延設部12bから離反する。シリンダチューブ13aが延設部12bに接近すると、シリンダチューブ13aと延設部12bとの間の隙間が小さくなる。仮に油圧ショベル1が保護具100を備えない場合は、バケットシリンダ13の伸縮によりシリンダチューブ13aと延設部12bとの間の隙間が小さくなると、石や木材等が挟み込まれ、バケットシリンダ13に外部から負荷がかかるおそれがある。
【0034】
しかしながら、本実施形態では、油圧ショベル1にはバケットシリンダ13のシリンダチューブ13aに保護具100が設けられ、保護具100の突出部50がアーム12の延設部12bに向かって突出するとともに延設部12bに向かうにつれて突出方向とバケットシリンダ13の軸方向の両方に垂直な方向の寸法が小さくなる。これにより、バケット11を揺動させる際にシリンダチューブ13aが延設部12bに接近すると、突出部50の傾斜によりシリンダチューブ13aと延設部12bとの間の石や木材等の異物が掻き出される。そのため、シリンダチューブ13aと延設部12bとの間に異物が挟み込まれることが防止される。
【0035】
また、突出部50は、アーム12の延設部12bに弾性的に接触可能な弾性部50aを有するため、弾性部50aが延設部12bに接触すると、接触面から広がるように弾性変形する。これにより、延設部12bの表面に付着した異物が掻き出され、シリンダチューブ13aと延設部12bとの間に異物が挟み込まれることがより防止される。さらに、弾性部50aにより、突出部50が延設部12bに接触しても、接触した際の衝撃が緩和され、バケットシリンダ13を保護することができる。言い換えれば、突出部50が弾性部50aを有することにより、突出部50が延設部12bに接触する場合であってもバケットシリンダ13を保護することができるため、保護具100を様々な油圧ショベル1に適用することができる。
【0036】
また、保護具100では、突出部50をシリンダチューブ13aに取り付けるための取付部60よりも、異物を掻き出すための突出部50の方が摩耗が速い。しかしながら、突出部50は、バケットシリンダ13のシリンダチューブ13aに取付部60を介して着脱可能に設けられる。そのため、保護具100では、突出部50が摩耗しても突出部50のみを容易に交換することができる。
【0037】
また、油圧ショベル1では、バケットシリンダ13のシリンダチューブ13aがリンク機構20に回転自在に連結され、バケットシリンダ13の伸縮動作によりリンク機構20及びバケット11が回転駆動される。よって、バケットシリンダ13では、回転駆動されるリンク機構20に連結されたシリンダチューブ13aの方がピストンロッド13bよりも大きく移動する。そのため、シリンダチューブ13aでは、アーム12の延設部12bとの間に異物が入り込みやすく、さらに、ピストンロッド13bよりも大径であるため延設部12bとの間が小さく異物を挟み込みやすい。しかしながら、このような構成の油圧ショベル1であっても、突出部50によりシリンダチューブ13aと延設部12bとの間に異物が挟み込まれることが防止される。
【0038】
なお、突出部50は、バケットシリンダ13の径方向に沿った断面において、半円状となるように形成されてもよい。この場合でも、突出部50は、アーム12の延設部12bに向かうにつれて突出方向とバケットシリンダ13の軸方向の両方に垂直な方向の寸法が小さくなるように形成される。また、突出部50が延設部12bに接触しない構成であってもよい。突出部50が延設部12bに接触しない構成であれば、突出部50が弾性部50aではなく金属や樹脂等で形成されてもよい。
【0039】
また、突出部50は、アーム12の延設部12bに向かうにつれて突出方向とバケットシリンダ13の軸方向の両方に垂直な方向の寸法が小さくなるように形成されることで、バケットシリンダ13とアーム12の延設部12bとの間の異物がより掻き出されやすくなる。しかしながら、異物が掻き出されにくくなるものの、突出部50は、アーム12の延設部12bに向かうにつれて突出方向とバケットシリンダ13の軸方向の両方に垂直な方向の寸法が小さくなるように形成されなくてもよい。例えば、突出部50は、突出方向とバケットシリンダ13の軸方向の両方に垂直な方向の寸法が一様となるようにアーム12の延設部12bに向けて突出する構成であってもよい。この構成であっても、突出部50によりシリンダチューブ13aと延設部12bとの間の異物が掻き出され、シリンダチューブ13aと延設部12bとの間に異物が挟み込まれることが防止される。
【0040】
上述した実施形態によれば、次の作用効果を奏する。
【0041】
油圧ショベル1では、バケットシリンダ13のシリンダチューブ13aに設けられる保護具100の突出部50により、シリンダチューブ13aとアーム12の延設部12bとの間の石や木材等の異物が掻き出される。そのため、シリンダチューブ13aと延設部12bとの間に異物が挟み込まれることが防止される。
【0042】
突出部50は、アーム12の延設部12bに弾性的に接触可能な弾性部50aを有するため、シリンダチューブ13aと延設部12bとの間に異物が挟み込まれることがより防止されるとともに、突出部50が延設部12bに接触した際の衝撃が緩和される。
【0043】
突出部50は、バケットシリンダ13のシリンダチューブ13aに取付部60を介して着脱可能に設けられるため、保護具100では、突出部50が摩耗しても突出部50のみを容易に交換することができる。
【0044】
油圧ショベル1では、バケットシリンダ13のシリンダチューブ13aがリンク機構20に回転自在に連結される。そのため、シリンダチューブ13aでは、アーム12の延設部12bとの間が小さく異物を挟み込みやすいものの、突出部50によりシリンダチューブ13aと延設部12bとの間に異物が挟み込まれることが防止される。
【0045】
次のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、上述の異なる実施形態で説明した構成同士を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせることも可能である。
【0046】
<変形例1>
上記実施形態では、保護具100は、バケットシリンダ13のシリンダチューブ13aに設けられる。これに限らず、保護具100は、アーム12(具体的には、延設部12b)に設けられてもよい。この場合は、保護具100は、バケットシリンダ13に向かって突出する突出部50を備え、突出部50は、アーム12とバケットシリンダ13との間に設けられ、バケットシリンダ13に向かうにつれて突出部50の突出方向とバケットシリンダ13の軸方向の両方に垂直な方向の寸法が小さくなればよい。突出部50は、取付部60と同様の構成により、アーム12に取り付けられる。このような構成であっても、上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0047】
さらに、保護具100は、ブーム14またはブームシリンダ16のいずれか一方に設けられてもよい。この場合は、保護具100は、ブーム14またはブームシリンダ16の他方に向かって突出する突出部50を備え、突出部50は、ブーム14またはブームシリンダ16との間に設けられ、ブーム14またはブームシリンダ16の他方に向かうにつれて突出部50の突出方向とブームシリンダ16の軸方向の両方に垂直な方向の寸法が小さくなればよい。また、突出部50は、取付部60と同様の構成により、ブーム14またはブームシリンダ16に取り付けられる。このような構成であっても、上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0048】
<変形例2>
上記実施形態では、保護具100は、油圧ショベル1に設けられる。これに限らず、保護具100は、その他の作業機械、例えば、ホイールローダに設けられてもよい。この場合は、保護具100は、土砂等を掘削するバケットが揺動自在に取り付けられるアームと、アームに取り付けられ伸縮動作によりアームに接近及びアームから離反してバケットを揺動させるシリンダと、のいずれか一方に設けられればよい。このような構成であっても、上記実施形態と同様の効果を奏する。このように、保護具100は、支持部に揺動自在に取り付けられる作業具がシリンダの伸縮動作により回転し、シリンダと支持部が接近及び離反する作業機械に適用することができる。
【0049】
<変形例3>
上記実施形態では、バケットシリンダ13のシリンダチューブ13aがリンク機構20に回転自在に連結される。これに限らず、バケットシリンダ13のピストンロッド13bがリンク機構20に回転自在に連結されてもよい。この場合は、シリンダチューブ13aがアーム12の基部12aに取り付けられる。このような構成であっても、上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0050】
<変形例4>
上記実施形態では、突出部50は、取付部60の第一半円部61と嵌合することによりバケットシリンダ13のシリンダチューブ13aに取り付けられる。これに限らず、突出部50は、取付部60の代わりにシリンダチューブ13aの外周面に取り付けられる複数の帯状のバンド部材によりシリンダチューブ13aに取り付けられてもよい。この場合は、バンド部材と突出部50とが、ボルトや接着剤等により固定されればよい。このような構成であっても、上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0051】
以上のように構成された本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0052】
支持部(アーム12,ブーム14,ホイールローダのアーム)と当該支持部に揺動自在に取り付けられる作業具(バケット11,ホイールローダのバケット)とに揺動自在に取り付けられて伸縮動作することにより作業具を支持部に対して揺動させる作業機械(油圧ショベル1,ホイールローダ)のシリンダ(バケットシリンダ13,ブームシリンダ16,ホイールローダのシリンダ)を保護する保護具100であって、保護具100は、支持部及びシリンダのいずれか一方に取り付けられており、保護具100には、シリンダの伸縮作動に伴い接近及び離反するシリンダと支持部との間の隙間に設けられ、保護具100が取り付けられる支持部及びシリンダの一方から支持部及びシリンダの他方に向かって突出する突出部50が設けられる。
【0053】
この構成では、支持部またはシリンダのいずれか一方に保護具100が設けられ、保護具100の突出部50が他方に向かって突出する。これにより、作業具を揺動させる際にシリンダが支持部に接近すると、突出部50によりシリンダと支持部との間の石や木材等の異物が掻き出される。そのため、シリンダと支持部との間に異物が挟み込まれることが防止される。
【0054】
保護具100は、突出部50が、支持部(アーム12,ブーム14,ホイールローダのアーム)及びシリンダ(バケットシリンダ13,ブームシリンダ16,ホイールローダのシリンダ)の他方に向かうにつれて突出部50の突出方向とシリンダの軸方向の両方に垂直な方向の寸法が小さくなる。
【0055】
この構成では、突出部50が他方に向かって突出するとともに他方に向かうにつれて突出方向とシリンダの軸方向の両方に垂直な方向の寸法が小さくなる。そのため、突出部50によりシリンダと支持部との間の異物がより掻き出されやすくなる。
【0056】
保護具100は、突出部50が、支持部(アーム12,ブーム14,ホイールローダのアーム)またはシリンダ(バケットシリンダ13,ブームシリンダ16,ホイールローダのシリンダ)の他方に弾性的に接触可能な弾性部50aを有する。
【0057】
この構成では、弾性部50aが支持部またはシリンダの他方に接触し弾性変形することにより、他方の表面に付着した異物が掻き出される。さらに、弾性部50aにより、突出部50が他方に接触した際の衝撃が緩和される。
【0058】
保護具100は、突出部50が、支持部(アーム12,ブーム14,ホイールローダのアーム)またはシリンダ(バケットシリンダ13,ブームシリンダ16,ホイールローダのシリンダ)の一方に着脱可能に設けられる。
【0059】
この構成では、突出部50が摩耗しても容易に交換することができる。
【0060】
保護具100が設けられる作業機械は、作業具としてのバケット11と、支持部としてのアーム12と、を有する油圧ショベル1であり、油圧ショベル1は、バケット11とバケットシリンダ13とを連結しバケットシリンダ13の伸縮動作によりバケット11とともに回転駆動されるリンク機構20をさらに有し、バケットシリンダ13は、シリンダチューブ13aと、シリンダチューブ13aから延出するピストンロッド13bと、を有し、シリンダチューブ13aは、リンク機構20に回転自在に連結される。
【0061】
この構成では、シリンダチューブ13aがリンク機構20に連結され、バケットシリンダ13の伸縮動作によりリンク機構20及びバケット11が回転駆動される。よって、バケットシリンダ13では、回転駆動されるリンク機構20に連結されたシリンダチューブ13aの方がピストンロッド13bよりも大きく移動する。そのため、シリンダチューブ13aでは、アーム12との間に異物が入り込みやすく、さらに、ピストンロッド13bよりも大径であるためアーム12との間が小さく異物を挟み込みやすい。しかしながら、このような構成の油圧ショベル1であっても、突出部50によりシリンダチューブ13aとアーム12との間に異物が挟み込まれることが防止される。
【0062】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0063】
1・・・油圧ショベル(作業機械)、100・・・保護具、11・・・バケット(作業具)、12・・・アーム(支持部)、13・・・バケットシリンダ(シリンダ)、13a・・・シリンダチューブ、13b・・・シリンダロッド、20・・・リンク機構、50・・・突出部、50a・・・弾性部