(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131839
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】スライム確認方法及びスライム確認装置
(51)【国際特許分類】
E02D 5/34 20060101AFI20230914BHJP
E02D 1/00 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
E02D5/34 Z
E02D1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022036817
(22)【出願日】2022-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】萩原 由訓
(72)【発明者】
【氏名】小島 宏章
(72)【発明者】
【氏名】和知 康晴
【テーマコード(参考)】
2D041
2D043
【Fターム(参考)】
2D041BA14
2D041BA44
2D041DA01
2D043AB06
2D043AC05
(57)【要約】
【課題】孔底のスライム沈降状況を効率的に確認するためのスライム確認方法及びスライム確認装置を提供する。
【解決手段】スライム確認装置A1は、場所打ちコンクリート杭の杭孔H1の孔底におけるスライムSL1の沈降状況を確認する。孔底H2に到達可能な検尺M1に取り付けられたセンサ装置10から、検尺M1を孔底H2に打ち付けた時の検出波形を取得し、検出波形を分析することにより、スライムの沈降状況を判定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
場所打ちコンクリート杭の杭孔の孔底におけるスライムの沈降状況を確認するためのスライム確認方法であって、
前記孔底に到達可能な長尺物に取り付けられたセンサ装置から、前記長尺物を前記孔底に打ち付けた時の検出波形を取得し、
前記検出波形を分析することにより、前記スライムの沈降状況を判定することを特徴とするスライム確認方法。
【請求項2】
前記長尺物は、前記杭孔の掘削深度を計測する検尺テープであり、
前記孔底に打ち付けた時の水平方向の動きを、前記検出波形として取得することを特徴とする請求項1に記載のスライム確認方法。
【請求項3】
場所打ちコンクリート杭の杭孔の孔底におけるスライムの沈降状況を確認するためのスライム確認装置であって、
前記孔底に到達可能な長尺物に取り付けられたセンサ装置と、
前記センサ装置から、前記長尺物を前記孔底に打ち付けた時の検出波形を取得し、前記検出波形を分析することにより、前記スライムの沈降状況を判定し、判定結果を記録する管理装置と、を備えたことを特徴とするスライム確認装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば、場所打ちコンクリート杭の杭孔における孔底のスライム沈降状況を確認するスライム確認方法及びスライム確認装置に関する。
【背景技術】
【0002】
安定液を用いたアースドリル工法で場所打ちコンクリート杭を施工する場合、削孔による掘りくずや安定液中に浮遊する細砂や細粒土分が杭孔底にスライムとして沈降する。コンクリート打設時に杭底面にスライムが残留していると、スライムを巻き込むため、杭体コンクリートの品質の低下が生じる。また、杭と先端地盤間にスライムが介在するため、杭先端支持性能が損なわれることがある。このため、通常の施工においては、コンクリート打設前にスライムを除去する孔底処理(スライム処理)が行なわれる。
【0003】
このライム沈降状況の確認方法は、重錘のついた検尺用テープを杭底面に降ろし、重錘がスライム上端面に接する際に手に伝わる感触からスライム上端面深度を測定し、孔底処理前後のスライム沈降状況の確認を行なう。
【0004】
また、スライム処理前後で、スライムが除去されていることを確認するための技術も検討されている(例えば、特許文献1参照)。この文献に開示された技術においては、鉛直なスライム測定軸の先端に設けた孔壁測定用プローブで杭孔の形状と深度を測定する。スライム測定軸の中間部に設けた開閉自在なアーム機構を開いて拡径部に沈降したスライムの有無を測定するのに適切な部位に、アーム機構のアーム先端を配置する。そして、アーム先端に設けたスライム測定部材によりスライムの有無を測定した後に、アーム機構を閉じる操作を行なう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、スライム測定部材の操作が必要である。特に、スライム測定部材はアーム先端に設けられるため、操作に手間がかかる。また、スライムの有無についての証跡を残す場合にも手間がかかる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためのスライム確認方法は、場所打ちコンクリート杭の杭孔の孔底におけるスライムの沈降状況を確認する。孔底に到達可能な長尺物に取り付けられたセンサ装置から、前記長尺物を前記孔底に打ち付けた時の検出波形を取得し、前記検出波形を分析することにより、スライムの沈降状況を判定する。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、孔底のスライム沈降状況を効率的に確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】実施形態のハードウェア構成の説明図である。
【
図4】実施形態のスライム確認処理の処理手順の説明図である。
【
図5】実施形態の計測結果の周波数特性の説明図であって、(a)はX軸方向、(b)はY軸方向、(c)はZ軸方向の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、
図1~
図5を用いて、スライム確認方法及びスライム確認装置を具体化した一実施形態を説明する。
図1に示すように、本実施形態では、場所打ちコンクリート杭の杭孔H1の拡底部のスライムSL1の沈降状況(有無)を確認する。杭孔H1は、掘削したときの孔壁を安定させるために、ベントナイトを含む安定液で満たされる。
【0011】
杭孔H1の深さを確認する場合、目盛りが付された検尺テープM1(長尺物)を用いる。検尺テープM1は、孔底H2に到達可能な長さ(例えば、10m~100m)の面状の巻尺である。この検尺テープM1の先端には重錘W1が吊り下げられる。なお、長尺物は、孔底H2に到達可能な長さで、接触時に振動するものであれば、検尺テープM1に限定されない。例えば、索条物や棒状物でもよい。
【0012】
本実施形態では、更に、センサ装置10、アンプAP1及び管理装置20を備えたスライム確認装置A1を用いる。センサ装置10は検尺テープM1の手元に取り付けられる。センサ装置10の詳細は後述する。
そして、センサ装置10は、通信線及びアンプAP1を介して、管理装置20に接続される。
【0013】
(ハードウェア構成の説明)
図2を用いて、管理装置20を構成する情報処理装置H10のハードウェア構成を説明する。情報処理装置H10は、通信装置H11、入力装置H12、表示装置H13、記憶装置H14、プロセッサH15を備える。なお、このハードウェア構成は一例であり、他のハードウェアにより実現することも可能である。
【0014】
通信装置H11は、他の装置との間で通信経路を確立して、データの送受信を実行するインタフェースである。
入力装置H12は、各種情報の入力を受け付ける装置であり、例えばマウスやキーボード等である。表示装置H13は、各種情報を表示するディスプレイ等である。
【0015】
記憶装置H14は、管理装置20の各種機能を実行するためのデータや各種プログラムを格納する記憶装置である。
プロセッサH15は、記憶装置H14に記憶されるプログラムやデータを用いて、管理装置20における各処理を制御する。プロセッサH15の一例としては、例えばCPUやMPU等がある。このプロセッサH15は、ROM等に記憶されるプログラムをRAMに展開して、各処理のための各種プロセスを実行する。
【0016】
プロセッサH15は、自身が実行するすべての処理についてソフトウェア処理を行なうものに限られない。例えば、プロセッサH15は、自身が実行する処理の少なくとも一部についてハードウェア処理を行なう専用のハードウェア回路(例えば、特定用途向け集積回路:ASIC)を備えてもよい。
【0017】
(システム構成)
次に、スライム確認装置A1の各機能を説明する。
図3に示すように、センサ装置10は、アクリル板等の板材11に、加速度計12~14が固定されている。そして、板材11は、ターンクリップ等の固定具ST1により、検尺テープM1の面上に着脱可能に取り付けられる。本実施形態では、検尺テープM1の面に対して垂線方向をX軸方向、検尺テープM1の幅方向をY軸方向、検尺テープM1の長さ方向をZ軸方向とした場合、センサ装置10は、YZ面内に配置される。
【0018】
加速度計12は、Z軸方向の動きの検出波形として加速度波形を計測する。加速度計13は、Y軸方向の動きの検出波形として加速度波形を計測する。加速度計14は、X軸方向の動きの検出波形として加速度波形を計測する。各加速度計12~14で計測した計測信号(加速度の時系列データ)は、ケーブルC1により伝送される。このケーブルC1は、ターンクリップ等の固定具ST2により束ねられて、検尺テープM1に固定される。
【0019】
図1に示すように、ケーブルC1は、アンプAP1に接続される。アンプAP1は、加速度計12~14からの計測信号を増幅して、管理装置20に入力する。
管理装置20は、スライム沈降状況の確認を支援する処理を実行するコンピュータシステムである。この管理装置20は、制御部21、確認情報記憶部22を備える。
【0020】
制御部21は、センサ装置10からの計測信号に基づいて、スライム沈降状況を記録する処理を実行する。制御部21は、後述する処理(取得段階、分析段階、判定段階等を含む処理)を行なう。このためのスライム確認プログラムを実行することにより、制御部21は、取得部211、分析部212、判定部213等として機能する。
【0021】
取得部211は、アンプAP1から、加速度計12~14による計測信号を取得する。
分析部212は、増幅された計測信号を分析する。ここでは、各軸の加速度の周波数特性を算出する。
判定部213は、スライムの沈降状況(有無)を判定する。
【0022】
確認情報記憶部22には、各杭孔のスライム沈降状況についての確認管理レコードが記録される。この確認管理レコードは、分析処理を行なった場合に登録される。確認管理レコードは、現場ID、杭孔ID、確認日時、掘削深度、各軸の計測信号、各軸の周波数特性、判定結果に関する情報を含む。
【0023】
現場IDデータ領域には、杭孔を形成した現場を特定するための識別子に関するデータが記録される。
杭孔IDデータ領域には、この現場の各杭孔を特定するための識別子に関するデータが記録される。
【0024】
確認日時データ領域には、確認処理を行なった年月日及び時刻に関するデータが記録される。
掘削深度データ領域には、杭孔の深さに関するデータが記録される。
【0025】
各軸の計測信号データ領域には、加速度計12~14から取得した各軸の計測信号に関するデータが記録される。ここでは、計測信号は、時間(sec)に対して、軸毎に加速度(gal)が記録される。
【0026】
各軸の周波数特性データ領域には、各軸の計測信号の周波数分析を行なった結果に関するデータが記録される。ここでは、周波数特性として、周波数(Hz)に対して、軸毎に加速度(gal)が記録される。
判定結果データ領域には、スライムの有無の判定結果が記録される。
【0027】
(確認処理)
図4、
図5を用いて、確認処理を説明する。この場合、確認情報記憶部22には、スライムを確認する現場の現場ID、スライムを確認する杭孔の杭孔ID、確認処理を行なう確認日時を記録した確認管理レコードを登録しておく。
【0028】
まず、検尺を行なう(ステップS11)。具体的には、作業者は、先端に重錘W1を付けた検尺テープM1を、杭孔H1に投下する。重錘W1が孔底H2に到達した場合に、作業者は、検尺テープM1の目盛りを用いて、削孔深度を計測する。そして、管理装置20の入力装置H12を用いて、確認情報記憶部22の確認管理レコードに削孔深度を記録する。
【0029】
次に、重錘の打ち付け操作処理を行なう(ステップS12)。具体的には、作業者は、検尺テープM1の手元(把持位置の直下)にセンサ装置10を取り付ける。そして、検尺テープM1を、孔底H2の手前から、重錘W1を孔底H2に打ち付けるように降ろして、打ち付け後に引き上げる。これにより、検尺テープには振動が生じる。
【0030】
この場合、管理装置20は、計測処理を実行する(ステップS13)。具体的には、センサ装置10は、加速度により振動を計測した場合、振動中の加速度についての計測信号を出力する。ここでは、加速度計12~14が、計測信号を、ケーブルC1を介して、アンプAP1に出力する。アンプAP1は、加速度計12~14からの計測信号を増幅する。そして、管理装置20の制御部21の取得部211は、X軸、Y軸、Z軸について、加速期間の増幅計測信号を取得する。
【0031】
次に、管理装置20は、分析処理を実行する(ステップS14)。具体的には、管理装置20の制御部21の分析部212は、X軸、Y軸、Z軸について、取得した増幅計測信号の周波数分析を行なう。
【0032】
図5に示すように、周波数毎に加速度の大きさを評価する。ここでは、
図5(a)はX軸方向、
図5(b)はY軸方向、
図5(c)はZ軸方向の周波数特性を示す。そして、点線は孔底処理前(スライム沈降が生じている状態)、実線は孔底処理後(スライムを除去した状態)の周波数特性である。
【0033】
次に、管理装置20は、記録処理を実行する(ステップS15)。具体的には、管理装置20の制御部21の判定部213は、確認情報記憶部22の確認管理レコードに、各軸の計測信号、各軸の周波数特性を記録する。
【0034】
次に、管理装置20は、判定処理を実行する(ステップS16)。具体的には、判定部213は、表示装置H13に周波数特性を出力する。この場合、担当者は、表示装置H13に出力された周波数特性を確認する。
【0035】
図5(a)~(c)に示すように、孔底処理後には、高周波領域(20Hz~40Hz)にピークが生じている(矢印)。
図5(a)、(b)に示すように、孔底処理後の水平方向の振動において、大きなピークが生じている。特に、検尺テープM1の面に対して垂直方向のX軸方向では、孔底処理前には無かったピークが顕著である。この周波数領域にピークを検出した場合には、スライムの沈降が生じていないと判定する。そして、入力装置H12を用いて、確認情報記憶部22の確認管理レコードに、判定結果を記録する。
【0036】
判定処理(ステップS16)において、ピークを検出できず、スライムが沈降していると判定した場合、孔底処理を行なう(ステップS17)。具体的には、例えば、バケットを用いて沈降したスライムをすくい上げる底ざらいバケット方式を用いる。また、エアリフト方式や水中ポンプ方式、サクションポンプ方式を用いてもよい。エアリフト方式では、圧縮空気をトレミー管中に吹き込み、管に上昇水流を作り、泥酔とともにスライムを吸い上げる。水中ポンプ方式では、水中ポンプを用いて、スライムを吸い上げる。サクションポンプ方式では、トレミー管をサクションポンプに連結し、スライムを吸い上げて排出する。再度、確認処理を行なって、スライムの沈降状況を確認する。
そして、判定処理(ステップS16)において、スライムが沈降していないと判定した場合には、確認処理を終了する。その後、この杭孔H1において、コンクリート杭の構築を行なう。
【0037】
(作用)
スライム沈降状況に応じて、打ち付け時の検尺テープM1の振動が変化するので、この変化をセンサ装置10により計測できる。
【0038】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態では、検尺テープM1の手元(把持位置の直下)にセンサ装置10を取り付ける。既存の検尺テープM1にセンサ装置10を取り付けるので、作業者の手間を軽減できる。そして、削孔深度を計測する検尺とともに、スライムの沈降状況を把握できる。
(2)本実施形態では、管理装置20は、計測処理を実行する(ステップS13)。これにより、検尺テープM1の先端の重錘の打ち付けにより生じた振動を、加速度により検知できる。
【0039】
(3)本実施形態では、管理装置20は、分析処理を実行する(ステップS14)。孔底H2におけるスライム沈降の有無により、重錘W1の打ち付け状況が変わる。すなわち、柔らかいスライムSL1に重錘W1の打ち付ける場合と、支持層が露出している孔底H2に打ち付ける場合とは、検尺テープM1に伝わる振動が異なる。このため、周波数分析を行なうことにより、その打ち付け状況を把握することができる。そして、この打ち付け状況に応じて、スライム沈降の有無を判定することができる。
【0040】
(4)本実施形態では、検尺テープM1の水平方向(面に対して垂線方向、幅方向)の加速度を検知する。重錘W1が孔底H2に打ち付けた場合、検尺テープM1にたるみが生じる。このたるみ状況により、打ち付け状況を把握できる。特に、検尺テープM1は、面に対して垂直方向(X軸方向)のたるみが顕著であり、X軸方向で、効率的に打ち付け状況を把握できる。
【0041】
(4)本実施形態では、管理装置20は、記録処理を実行する(ステップS15)。これにより、スライム沈降状況について証跡を残すことができる。
【0042】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態では、スライム確認装置A1は、センサ装置10、アンプAP1及び管理装置20を備える。ハードウェア構成は、この構成に限定されるものではない。例えば、アンプAP1及び管理装置20を携帯可能なタブレット端末で実現してもよい。また、センサ装置10の計測信号を、無線通信によりアンプAP1に送信するようにしてもよい。
【0043】
・上記実施形態では、検尺テープM1に、センサ装置10を取り付ける。センサ装置10の取り付け先は、孔底H2に到達できるとともに、孔底H2への打ち付け状況が伝達される長尺物であれば棒状材でもよい。
・上記実施形態では、Z軸方向の加速度を計測する加速度計12、Y軸方向の加速度を計測する加速度計13、X軸方向の加速度を計測する加速度計14を用いる。センサの数は、これに限定されるものではない。少なくとも水平方向の加速度を計測できればよい。
【0044】
・上記実施形態では、重錘の打ち付け操作処理を行なう(ステップS12)。ここで、作業者ではなく、機械(例えば、吊り下げ装置)により重錘の打ち付け操作処理を行なうようにしてもよい。この場合には、吊り下げ装置が、所定の速度で、重錘を落下させて、打ち付けを行なう。
・上記実施形態では、加速度センサを用いて、検尺テープM1の動き(加速度)の検出波形により、打ち付け状況を把握する。打ち付け状況の把握方法は、加速度(検出波形)を用いる場合に限定されない。打ち付けによる長尺物への影響を評価できる検出波形であればよい。例えば、検尺テープM1の張力を張力計(テンションメーター)で検出し、打ち付け時の張力変化を分析してもよい。この場合にも、スライム沈降状況に応じて、検出波形が異なるので、スライムの有無を確認できる。
【0045】
・上記実施形態では、管理装置20は、分析処理を実行する(ステップS14)。ここでは、周波数分析を行なう。分析方法は、周波数分析に限定されるものではない。打ち付け時の検尺の振動状況の違いを判定する分析方法であればよい。例えば、重錘を自然落下させて着底時の速度変化を比較して判定してもよい。
【0046】
・上記実施形態では、管理装置20は、判定処理を実行する(ステップS16)。ここでは、作業者が判定した結果を確認情報記憶部22に記録する。これに代えて、管理装置20が、周波数特性に基づいて、スライム沈降状況を予測するようにしてもよい。この場合には、スライムが沈降していない場合の検出波形と、スライムが沈降している場合の検出波形とを、教師情報として用いた機械学習により、検出波形からスライム沈降状況を予測する判定モデルを生成する。そして、評価対象の杭孔の検出波形を、この判定モデルに入力することにより、スライム沈降状況を予測する。
【0047】
・上記実施形態では、孔底処理後には、水平方向の振動において、高周波領域(20Hz~40Hz)にピークが生じている。ピークが生じる周波数領域は、杭孔の掘削深度に依存する。そこで、杭孔の掘削深度に応じて、ピークが生じる高周波領域を予め特定しておいてもよい。そして、掘削深度に応じた周波数領域の振動強度に応じて、スライム沈降状況を判定してもよい。
【0048】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
(a)前記検出波形の分析において、高周波領域のピークの有無によって、スライムの沈降状況を判定することを特徴とする請求項1に記載のスライム確認方法。
【0049】
(b)前記長尺物の先端には、重錘を備えることを特徴とする請求項1に記載のスライム確認方法。
(c)前記長尺物は面状材であり、少なくとも面状材の面に対して垂直方向の検出波形を取得することを特徴とする請求項1に記載のスライム確認方法。
【符号の説明】
【0050】
H1…杭孔、H2…孔底、SL1…スライム、M1…検尺テープ、W1…重錘、A1…スライム確認装置、10…センサ装置、11…板材、12,13,14…加速度センサ、ST1,ST2…固定具、AP1…アンプ、20…管理装置、21…制御部、211…取得部、212…分析部、213…判定部、22…確認情報記憶部。