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特開2023-131843フルオレン骨格を有する(メタ)アクリレート化合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131843
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】フルオレン骨格を有する(メタ)アクリレート化合物
(51)【国際特許分類】
   C07C 69/653 20060101AFI20230914BHJP
   C07C 67/14 20060101ALI20230914BHJP
   C08F 20/00 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
C07C69/653 CSP
C07C67/14
C08F20/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022036822
(22)【出願日】2022-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000216243
【氏名又は名称】田岡化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】阿部 健幸
(72)【発明者】
【氏名】仲辻 秀文
【テーマコード(参考)】
4H006
4J100
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AA02
4H006AA03
4H006AB46
4H006AC48
4H006BJ50
4H006KA14
4J100AL66P
4J100BC12P
4J100BC43P
4J100BC48P
4J100JA01
4J100JA32
4J100JA33
4J100JA35
(57)【要約】
【課題】
有機溶媒や単官能(メタ)アクリレート等の希釈剤に対する相溶性あるいは溶解性に優れ、且つ高屈折率である二官能性(メタ)アクリレート化合物及びその製造方法の提供。
【解決手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、下記一般式(1)で表される二官能性(メタ)アクリレート化合物が、有機溶媒や単官能性(メタ)アクリレート等の希釈剤に対する相溶性あるいは溶解性に優れ、前記課題が解決可能であることを見出した。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1):
【化1】
(式中、Z1a及びZ1bはそれぞれ独立して炭素数6~14の単環式又は多環式芳香族炭化水素環を示し、Rは炭素数1~18のアルキル基、炭素数6~12のシクロアルキル基または炭素数6~12の芳香族基を示し、R2a及びR2bはそれぞれ独立して水素原子、炭素数1~12のアルキル基または炭素数6~12のシクロアルキル基を示し、R3a及びR3bはそれぞれ独立して炭素数1~12のアルキル基、炭素数6~12のシクロアルキル基または炭素数6~12の芳香族基を示し、R4a及びR4bはそれぞれ独立して水素原子またはメチル基を示す。m1及びm2はそれぞれ独立して0~4の整数を示す。)
で表される化合物。
【請求項2】
下記一般式(2):
【化2】
(式中、Z1a、Z1b、R、R2a、R2b、R3a、R3b、m1及びm2は上述の通りである。)
で表される化合物と、(メタ)アクリル酸類とを反応させる、請求項1に記載の一般式(1)で表される化合物の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の一般式(1)で表される化合物を含む硬化性組成物。
【請求項4】
請求項3に記載の硬化性組成物を硬化した硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルオレン骨格を有する新規な二官能性(メタ)アクリレート化合物及びその製造方法、該二官能性(メタ)アクリレート化合物を含む硬化性組成物、並びに該硬化性組成物を硬化させてなる硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置に用いられるプリズムシート、オーバーコート剤、ハードコート剤、反射防止膜、或いは、カメラレンズ、眼鏡レンズ、光ファイバー、光導波路、ホログラムといった光学材料には、軽量性、安全性、意匠性の観点から無機ガラスの代替材料としてプラスチック(樹脂)が多用されており、これら樹脂の中でも(メタ)アクリレート化合物を重合(硬化)させることによって得られる(メタ)アクリレート樹脂は、活性エネルギー線にて比較的低温で、かつ容易に硬化可能であるといった特徴があることから、前記材料として多用されている樹脂の一種である。
【0003】
一方、前記樹脂は、無機ガラスと比べ屈折率が低く、無機ガラスの代替として使用した場合、無機ガラスと比べて厚みが大きくなりやすいといった問題があるため、前記樹脂を用いた材料の薄型化の観点から更なる高屈折率化が求められている。
【0004】
前述した光学材料に用いられる(メタ)アクリレート化合物の中でも、高屈折率である化合物として、フルオレン骨格を有するビスフェノール化合物から誘導される二官能性(メタ)アクリレート化合物が知られている(例えば、特許文献1)。
【0005】
しかしながら、フルオレン骨格を有するビスフェノール化合物から誘導される二官能性(メタ)アクリレート化合物は、高屈折率である一方で非常に高粘度もしくは固体(粉体)であるものが多いことから、硬化物を製造する際には有機溶媒や単官能(メタ)アクリレート等の希釈剤を用いて粘度を低下させる必要がある。ところが、フルオレン骨格を有するビスフェノール化合物から誘導される二官能性(メタ)アクリレート化合物は、前述した希釈剤との相溶性あるいは溶解性が悪いものが多い為、該(メタ)アクリレート化合物を高濃度に含む硬化性組成物を調製することが困難である場合や、希釈剤に由来する屈折率の振れ等が生じ、該(メタ)アクリレート化合物によって発現する高屈折率性が十分に発揮されないといった問題が知られている(例えば、特許文献2)。前記問題に対し特許文献2では、芳香族構造を有するカチオン重合性液状化合物を添加することにより解決を図っているが、カチオン重合性液状化合物を添加した場合には、添加しない場合に比して屈折率が低下する傾向がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平04-325508号公報
【特許文献2】特開2009-231596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、有機溶媒や単官能(メタ)アクリレート等の希釈剤に対する相溶性あるいは溶解性に優れ、且つ高屈折率である二官能性(メタ)アクリレート化合物及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、下記一般式(1)で表される化合物が、有機溶媒や単官能性(メタ)アクリレート等の希釈剤に対する相溶性あるいは溶解性に優れることを見出した。本発明は、具体的には以下の発明を含む。
【0009】
〔1〕
下記一般式(1):
【0010】
【化1】
(式中、Z1a及びZ1bはそれぞれ独立して炭素数6~14の単環式又は多環式芳香族炭化水素環を示し、Rは炭素数1~18のアルキル基、炭素数6~12のシクロアルキル基または炭素数6~12の芳香族基を示し、R2a及びR2bはそれぞれ独立して水素原子、炭素数1~12のアルキル基または炭素数6~12のシクロアルキル基を示し、R3a及びR3bはそれぞれ独立して炭素数1~12のアルキル基、炭素数6~12のシクロアルキル基または炭素数6~12の芳香族基を示し、R4a及びR4bはそれぞれ独立して水素原子またはメチル基を示す。m1及びm2はそれぞれ独立して0~4の整数を示す。)
で表される化合物。
【0011】
〔2〕
下記一般式(2):
【0012】
【化2】
(式中、Z1a、Z1b、R、R2a、R2b、R3a、R3b、m1及びm2は上述の通りである。)
で表される化合物と、(メタ)アクリル酸類とを反応させる、〔1〕に記載の一般式(1)で表される化合物の製造方法。
【0013】
〔3〕
〔1〕に記載の一般式(1)で表される化合物を含む硬化性組成物。
【0014】
〔4〕
〔3〕に記載の硬化性組成物を硬化した硬化物。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、有機溶媒や単官能(メタ)アクリレート等の希釈剤に対する相溶性あるいは溶解性に優れる、フルオレン骨格を有する新規な二官能性(メタ)アクリレート化合物が提供可能となる。
【0016】
本発明の二官能性(メタ)アクリレート化合物は、フルオレン骨格を有しており高屈折率、低アッベ数である。また、有機溶媒や単官能(メタ)アクリレート等の希釈剤に対する相溶性あるいは溶解性に優れるため、希釈剤の使用量が低減でき、本発明の二官能性(メタ)アクリレート化合物を高濃度で含む硬化性組成物が調製可能である。そのため本発明の硬化性組成物及びその硬化物は、高屈折率、低アッベ数といった本発明の二官能性(メタ)アクリレート化合物の特性がより発揮され易いことから、例えば高屈折率等が求められる各種光学部材(例えば液晶表示装置に用いられるプリズムシート、オーバーコート剤、ハードコート剤、反射防止膜、或いは、カメラレンズ、眼鏡レンズ、光ファイバー、光導波路、ホログラム等)に、好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】上記一般式(1)で表される化合物の内、実施例1で得られた、下記式(1-1)で表される化合物のH-NMRチャートである。
図2】上記一般式(1)で表される化合物の内、実施例1で得られた、下記式(1-1)で表される化合物の13C-NMRチャートである。
図3】上記一般式(1)で表される化合物の内、実施例1で得られた、下記式(1-1)で表される化合物の質量分析チャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書において、数値範囲を「A~B」で示す場合、A以上B以下を意味する。
【0019】
<本発明の二官能性(メタ)アクリレート化合物>
本発明の二官能性(メタ)アクリレート化合物は、上記一般式(1)で表される。
【0020】
上記一般式(1)において、環Z1a及びZ1bにおける炭素数6~14の単環又は多環式芳香族炭化水素環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環等が挙げられる。これら環Z1a及びZ1bの中でも、ベンゼン環またはナフタレン環が好ましい。また、環Z1aとZ1bは同一であっても異なってもよいが、原料の入手性の観点から、同一であることが好ましい。また、環Z1a及びZ1bがナフタレン環の場合、フルオレニル基及び置換基Rが結合している炭素原子との結合位置は、ナフタレン環の1位または2位のいずれであってもよいが、2位が好ましい。
【0021】
上記一般式(1)において環Z1a、Z1bが、例えば、ベンゼン環である場合、(メタ)アクリロイルオキシ基の置換位置は、フルオレニル基及び置換基Rが結合している炭素原子との結合位置(ベンゼン環の1位)に対し、4位(パラ位)であることが好ましい。また、上記一般式(1)において環Z1a、Z1bが、例えば、ナフタレン環である場合、(メタ)アクリロイルオキシ基の置換位置は、ナフタレン環の4位、5位又は6位であることが好ましく、6位であることがより好ましい。)
【0022】
上記一般式(1)において、置換基Rにおける炭素数1~18のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基が挙げられ、炭素数6~12のシクロアルキル基としては、例えば、シクロへキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、ビシクロへキシル基等が挙げられ、炭素数6~12の芳香族基としては、例えば、フェニル基、アルキル(例えば、炭素数1~4のアルキル)置換フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。これら置換基Rの中でも、炭素数1~8の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基が好ましく、炭素数1~4の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基がより好ましく、メチル基またはエチル基が更に好ましい。
【0023】
上記一般式(1)において、置換基R2a及びR2bにおける炭素数1~12のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基が挙げられ、炭素数6~12のシクロアルキル基としては、例えば、シクロへキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、ビシクロへキシル基等が挙げられる。これら置換基R2a及びR2bの中でも、水素原子または炭素数1~8の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基が好ましく、水素原子または炭素数1~4の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基がより好ましく、水素原子、メチル基またはエチル基が更に好ましい。また、置換基R2a及びR2bは、原料の入手性の観点から、同一であることが好ましい。
【0024】
上記一般式(1)において、置換基R3a及びR3bにおける炭素数1~12のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基が挙げられ、炭素数6~12のシクロアルキル基としては、例えば、シクロへキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、ビシクロへキシル基等が挙げられ、炭素数6~12の芳香族基としては、例えば、フェニル基、アルキル(例えば、炭素数1~4のアルキル)置換フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。これら置換基R3a及びR3bの中でも、炭素数1~4の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基又はフェニル基が好ましい。また、置換基R3a及びR3bは、原料の入手性の観点から、同一であることが好ましい。
【0025】
上記一般式(1)において、m1及びm2は、それぞれ独立して0~4の整数、好ましくは0~2の整数、より好ましくは0又は1を表す。m1及びm2は同一であっても異なってもよいが、原料の入手性の観点から、同一であることが好ましい。m1が2以上である場合、複数ある置換基R3aは同一であっても異なってもよいが、原料の入手性の観点から、同一であることが好ましい。また、m2が2以上である場合、複数ある置換基R3bは同一であっても異なってもよいが、原料の入手性の観点から、同一であることが好ましい。
【0026】
本発明の二官能性(メタ)アクリレート化合物は、有機溶媒や単官能性(メタ)アクリレート等の希釈剤に対する相溶性あるいは溶解性に優れる。よって、本発明の二官能性(メタ)アクリレート化合物を高濃度で含む硬化性組成物が調製可能であることから、後述する本発明の二官能性(メタ)アクリレート化合物の特性を十分に発揮し得る硬化性組成物、或いは該硬化性組成物を硬化した硬化物を容易に得ることができる。
【0027】
<本発明の二官能性(メタ)アクリレート化合物の製造方法>
本発明の二官能性(メタ)アクリレート化合物は、上記一般式(2)で表される化合物と、(メタ)アクリル酸類とを反応させる(以下、(メタ)アクリレート化反応と称することがある)ことによって得られる。なお、上記一般式(2)におけるZ1a、Z1b、R、R2a、R2b、R3a、R3b、m1及びm2は上記した通りであり、それぞれの好ましい態様についても上記した通りである。
【0028】
(メタ)アクリレート化反応に使用する(メタ)アクリル酸類としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸低級アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ハライド、(メタ)アクリル酸無水物等が挙げられる。(メタ)アクリル酸低級アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル等のC1-4アルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。(メタ)アクリル酸ハライドとしては、例えば、(メタ)アクリル酸クロライド等が挙げられる。
【0029】
(メタ)アクリル酸類の使用量は、上記一般式(2)で表される化合物1モルに対し、通常2~20モル、好ましくは2.2~10モル、さらに好ましくは2.5~5モルである。
【0030】
(メタ)アクリレート化反応では、適宜、酸、塩基等を使用してもよい。
【0031】
(メタ)アクリレート化反応に用いることができる酸としては、例えば、無機酸、有機酸等各種の酸が使用可能である。無機酸としては、例えば、硫酸、塩化水素、塩酸、リン酸、ヘテロポリ酸、ゼオライト、粘土鉱物等が挙げられる。有機酸としては、例えば、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、イオン交換樹脂等が挙げられる。これら酸の中でも、塩酸、パラトルエンスルホン酸が好ましい。これら酸は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
(メタ)アクリレート化反応に用いることができる塩基としては、例えば、無機塩基や有機塩基等各種塩基が使用可能である。無機塩基としては、例えば、金属炭酸塩、カルボン酸金属塩、金属水酸化物等が挙げられる。金属炭酸塩としては、例えば、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属炭酸塩;炭酸水素ナトリウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属炭酸水素塩等が挙げられる。カルボン酸金属塩としては、例えば、酢酸ナトリウム、酢酸カルシウム等の酢酸アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩等が挙げられる。金属水酸化物としては、例えば、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物等が挙げられる。有機塩基としては、例えば、アミン類等が挙げられる。アミン類としては、例えば、第3級アミン類が挙げられ、具体的には、例えば、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン等のトリアルキルアミン;N,N-ジメチルアニリン等の芳香族第3級アミン;ピリジン等の複素環式第3級アミン等が挙げられる。これら塩基の中でもトリエチルアミンが好ましい。これら塩基は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
酸、塩基等を使用する場合、その使用量は、例えば、上記一般式(2)で表されるビスフェノール化合物1モルに対し0.01~10モル、好ましくは0.05~5モル、さらに好ましくは0.1~3モルである。
【0034】
また、(メタ)アクリレート化反応は、必要に応じて、重合禁止剤(熱重合禁止剤)の存在下で行ってもよい。重合禁止剤としては、例えば、ヒドロキノン類、カテコール類、アミン類、2,2-ジフェニル-1-ピクリルヒドラジル、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペラジン-1-オキシル等が挙げられる。ヒドロキノン類としては、例えば、ヒドロキノン;ヒドロキノンモノメチルエーテル(メトキノン)などのヒドロキノンモノアルキルエーテル等が挙げられる。カテコール類としては、例えば、t-ブチルカテコール等のアルキルカテコール等が挙げられる。アミン類としては、例えば、ジフェニルアミン等が挙げられる。これら重合禁止剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
重合禁止剤を使用する場合、その使用量は、例えば、(メタ)アクリル酸類100重量部に対して0.1~10重量部、好ましくは0.3~8重量部、さらに好ましくは0.5~5重量部である。
【0036】
(メタ)アクリレート化反応は、溶媒の存在化または非存在化で実施することができる。使用可能な有機溶媒としては、例えば、炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、エーテル類、ケトン類、ニトリル類等が挙げられる。炭化水素類としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類等が挙げられる。ハロゲン化炭化水素類としては、例えば、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等の脂肪族ハロゲン化炭化水素類;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の芳香族ハロゲン化炭化水素類等が挙げられる。エーテル類としては、例えば、ジエチルエーテル等のジアルキルエーテル類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル類;アニソール等が挙げられる。ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のジアルキルケトン類等が挙げられる。ニトリル類としては、例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等が挙げられる。これら有機溶媒は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、前記した酸、塩基等が液体である場合、これらを溶媒として使用することもできる。
【0037】
有機溶媒を使用する場合、その使用量は、例えば、上記一般式(2)で表されるビスフェノール化合物1重量部に対し0.5~20重量部、好ましくは1~10重量部である。
【0038】
(メタ)アクリレート化反応は、通常-20~80℃、好ましくは0~40℃で実施される。また、(メタ)アクリレート化反応を実施する際、副生する水やアルコール類を除去しながら行ってもよい。また、反応は、加圧下又は減圧下で実施することもできる。
【0039】
(メタ)アクリレート化反応終了後、を必要に応じ中和、水洗、濃縮、晶析、濾過等の常法を実施することにより、上記一般式(1)で表される化合物が得られる。また、一旦取り出した上記一般式(1)で表される(メタ)アクリレート化合物を、更に再結晶、蒸留、吸着、カラムクロマトグラフィー等の定法により精製してもよい。上述の通り、得られた上記一般式(1)で表される化合物は必要に応じ、後述する方法によって本発明の二官能性(メタ)アクリレート化合物を含む硬化性組成物としてもよい。
【0040】
<本発明の二官能性(メタ)アクリレート化合物を含む硬化性組成物>
本発明の二官能性(メタ)アクリレート化合物を含む硬化性組成物(以下、本発明の硬化性組成物と称することもある。)は、上記一般式(1)で表される化合物の他、他の多官能性(メタ)アクリレート、重合開始剤、希釈剤等を含んでいても良い。なお、上記一般式(1)で表される化合物のみを硬化することによって硬化物を得ることも可能である。
【0041】
本発明の硬化性組成物に含み得る他の多官能性(メタ)アクリレートとしては、例えば、二官能性(メタ)アクリレート、三官能以上の多官能性(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート等が挙げられる。二官能性(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;ジ乃至テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジ乃至テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;ビスフェノールA(又はそのC2-3アルキレンオキシド付加体)のジ(メタ)アクリレート;9,9-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシ-3-メチルフェニル)フルオレン等の9,9-ビス((メタ)アクリロイルオキシフェニル)フルオレン類;9,9-ビス[4-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)-3-メチルフェニル]フルオレン等の9,9-ビス[(メタ)アクリロイルオキシ(ポリ)エトキシフェニル]フルオレン類等が挙げられる。三官能以上の多官能性(メタ)アクリレートとしては、例えば、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ又はテトラ(メタ)アクリレート等のトリ又はテトラオールのトリ又はテトラ(メタ)アクリレート;ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート;ジペンタエリスリトールテトラ乃至ヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これら他の多官能性(メタ)アクリレートは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0042】
他の多官能性(メタ)アクリレートを併用する場合、その使用量は、例えば、上記一般式(1)で表される(メタ)アクリレート化合物100重量部に対して1~300重量部であり、好ましくは2~200重量部、さらに好ましくは5~100重量部である。
【0043】
本発明の硬化性組成物に含み得る重合開始剤としては、例えば、熱重合開始剤や光重合開始剤が挙げられ、熱重合開始剤と光重合開始剤は必要に応じ併用することもできる。
【0044】
熱重合開始剤としては、例えば、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド類;ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類;過酢酸t-ブチル等の過酸エステル類;ケトンパーオキサイド類、パーオキシカーボネート類、パーオキシケタール類などの有機過酸化物;2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)等のアゾ化合物等が挙げられる。これら熱重合開始剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0045】
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾイン類;アセトフェノン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン等のアセトフェノン類;2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノアミノプロパノン等のアミノアセトフェノン類;アントラキノン、2-メチルアントラキノン等のアントラキノン類;2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、キサントン類等が挙げられる。これら光重合開始剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
また、光重合開始剤は、光増感剤と組み合わせて使用してもよい。併用可能な光増感剤としては、例えば、第3級アミン類が挙げられ、より具体的には、例えば、トリアルキルアミン;トリエタノールアミン等のトリアルカノールアミン;N,N-ジメチルアミノ安息香酸エチル、N,N-ジメチルアミノ安息香酸アミル等のジアルキルアミノ安息香酸アルキルエステル;4,4-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(ミヒラーズケトン)等のビス(ジアルキルアミノ)ベンゾフェノン;4-(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン等のジアルキルアミノベンゾフェノン等が挙げられる。これら光増感剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
重合開始剤の使用量は、例えば、上記一般式(1)で表わされる(メタ)アクリレート化合物100重量部に対し(他の多官能性(メタ)アクリレートを併用する場合は、上記一般式(1)で表わされる(メタ)アクリレート化合物と他の多官能性(メタ)アクリレートの合計量100重量部に対し)、0.1~30重量部、好ましくは1~20重量部、さらに好ましくは1.5~10重量部である。また、重合開始剤(光重合開始剤)と共に光増感剤を併用する場合の光増感剤の使用量は、例えば、重合開始剤(光重合開始剤)100重量部に対して、5~200重量部、好ましくは10~150重量部、さらに好ましくは20~100重量部である。
【0048】
本発明の硬化性組成物に含み得る希釈剤としては、例えば、反応性希釈剤および/または非反応性希釈剤(溶媒)が挙げられる。反応性希釈剤としては、例えば、単官能(メタ)アクリレート化合物、非(メタ)アクリル系モノマー等が挙げられる。(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸アルキル;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等のメタアクリル酸シクロアルキル;(メタ)アクリル酸フェニル等の(メタ)アクリル酸アリール;(2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシテトラエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の(ポリ)オキシアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸3-メトキシブチル等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド等のN-置換(メタ)アクリルアミド;N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート等のアミノアルキル(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。非(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、スチレン等の芳香族ビニル系単量体等が挙げられる。これら反応性希釈剤は1種、あるいは必要に応じ2種以上混合して使用してもよい。これら反応性希釈剤の中でも、硬化物の密着性が向上させ易くなることから、単官能(メタ)アクリレート化合物が好ましく、特に2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2-(2-フェニルフェノキシ)エチル(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリル酸シクロヘキシルが好ましい。これら反応性希釈剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0049】
反応性希釈剤を使用する場合、その使用量は、例えば、上記一般式(1)で表わされる(メタ)アクリレート化合物100重量部に対し(他の多官能性(メタ)アクリレートを併用する場合は、上記一般式(1)で表わされる(メタ)アクリレート化合物と他の多官能性(メタ)アクリレートの合計量100重量部に対し)1~1000重量部であり、より高濃度の組成物を得る観点から、好ましくは5~500重量部、より好ましくは10~200重量部である。
【0050】
非反応性希釈剤としては、例えば、脂肪族炭化水素類、ケトン類、芳香族炭化水素類、グリコールエーテル類、エステル類、石油系溶剤等が挙げられる。脂肪族炭化水素類として例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等が、ケトン類として例えばエチルメチルケトン、シクロヘキサノン等が、芳香族炭化水素類として例えばトルエン、キシレン等が、グリコールエーテル類としてエチルセロソルブ、メチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等が、エステル類として酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、炭酸プロピレン等が、石油系溶剤として例えば石油エーテル、石油ナフサ、ソルベントナフサ等が挙げられる。これら非反応性希釈剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0051】
非反応性希釈剤を使用する場合、その使用量は、例えば、上記一般式(1)で表わされる(メタ)アクリレート化合物100重量部に対し(他の多官能性(メタ)アクリレートを併用する場合は、上記一般式(1)で表わされる(メタ)アクリレート化合物と他の多官能性(メタ)アクリレートの合計量100重量部に対し)1~500重量部であり、より高濃度の組成物を得る観点から、好ましくは20~300重量部、より好ましくは30~200重量部である。
【0052】
本発明の硬化性組成物は、上述した他の多官能性(メタ)アクリレート、重合開始剤、希釈剤の他、更に、慣用の添加剤、例えば、着色剤、安定剤(熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤など)、充填剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤、レベリング剤、シランカップリング剤、重合禁止剤(又は熱重合禁止剤)等を含んでいてもよい。
【0053】
<本発明の硬化物>
本発明の硬化物は、前述した本発明の硬化性組成物に、後述する硬化処理を実施することによって得られる。例えば、フィルム状の硬化物は、基材に対して、本発明の硬化性組成物を塗布して塗膜(又は薄膜)を形成した後、硬化処理を施すことにより製造することができる。フィルム状の塗膜(又は薄膜)の厚みは、用途に応じて選択でき、例えば、0.1~1000μm、好ましくは1~500μm、さらに好ましくは5~300μmである。また、三次元的形状(例えば、プリズム状、レンズ状など)の硬化物は、注型成形や3Dプリンタなどを利用して製造することができる。なお、必要に応じて、硬化処理に先立って、本発明の硬化性組成物を加熱により低粘度化してもよい。
【0054】
硬化処理としては、例えば、加熱処理、光照射処理等が挙げられる。また、加熱処理と光照射処理とを組み合わせてもよい。加熱処理を実施する際の加熱温度は、例えば、50~250℃、好ましくは60~200℃、さらに好ましくは70~150℃である。また、光照射処理(露光処理)において、光照射エネルギー量は、用途、塗膜の膜厚等によっても異なるが、通常、0.1~10000mJ/cm、好ましくは1~8000mJ/cm、さらに好ましくは10~5000mJ/cmである。
【0055】
本発明の二官能性(メタ)アクリレート化合物は、有機溶媒や単官能性(メタ)アクリレート化合物等の希釈剤に対する相溶性あるいは溶解性に優れることから、多量の希釈剤による希釈を実施せずとも容易に硬化物を製造できるといった特徴を有する。そのため、従来公知のフルオレン骨格を有する二官能性(メタ)アクリレート化合物を用いる場合に比し、より容易に硬化物が製造可能であると同時に、本発明の(メタ)アクリレート化合物が有する特性(高屈折率、低アッベ数等)を十分に発揮できる硬化物が得られる。
【実施例0056】
以下、実施例等を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例等における各測定値は、次の方法、測定条件に従って取得した。また、各成分の生成率(残存率)及び純度(HPLC純度)は下記条件で測定したHPLCの面積百分率である。
【0057】
〔1〕HPLC分析
(1-1)ビスフェノール化合物のHPLC分析条件
装置 :島津製作所製 「LC-20A」
カラム:(株)Waters製 「XBridge Shield RP18」
(3.5μm、4.6mmφ×250mm)
移動相:A液0.1vоl.%トリフルオロ酢酸水溶液、B液アセトニトリル。B液濃度に付、下記の通り濃度を変化させ分析を行った。
B液濃度:30%→(25分)→100%(15分)
流量:1.0ml/min、カラム温度:40℃、検出波長:UV 254nm
(1-2)二官能性アクリレート化合物のHPLC分析条件
装置 :島津製作所製 「LC-20A」
カラム:(株)Waters製 「XBridge Shield RP18」
(3.5μm、4.6mmφ×250mm)
移動相:A液超純水、B液アセトニトリル。B液濃度に付、下記の通り濃度を変化させ分析を行った。
B液濃度:70%→(20分)→100%(10分)
流量:1.0ml/min、カラム温度:40℃、検出波長:UV 254nm
【0058】
〔2〕NMR測定
H-NMR及び13C-NMRは、溶媒としてクロロホルム-d1を用いて、JEOL-ESC400分光計によって記録した。
【0059】
〔3〕LC-MS測定
LC-MSは次の測定条件で分離、質量分析し、目的物を同定した。
【0060】
・装置:(株)Waters製「Xevo G2 Q-Tof」
・カラム:(株)Waters製「ACQUITY UPLC BEH Shield18」(1.7μm、2.1mmφ×100mm)
・カラム温度:40℃
・検出波長:UV 191-300nm
・移動相:A液=10mM酢酸アンモニウム水溶液、B液=アセトニトリル、C液=2-プロパノール
・移動相流量:0.4ml/min
・移動相グラジエント:A液/B液/C液=50/40/10(0.5分)→(4.7分)→0/80/20(5.0分)
・検出法:Q-Tof
・イオン化法:ESI(+)法
・Ion Source:電圧(+)2.0kV、温度120℃
・Sampling Cone :電圧 30V、ガスフロー50L/h
・Desolvation Gas:温度400℃、ガスフロー1200L/h
【0061】
〔4〕希釈剤に対する溶解性・相溶性
以下実施例等にて得られた二官能性アクリレート化合物30重量部と、下記する希釈剤(溶媒又は単官能性アクリレート)70重量部とを混合し、下記評価基準に基づき溶解性・相溶性を評価した。
<溶媒>
・プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、
・メチルエチルケトン(MEK)、
・酢酸エチル(EA)
<単官能性アクリレート>
・2-フェニルフェノキシエチルアクリレート(OPPEA)(新中村化学製)
・m-フェノキシベンジルアクリレート(POB-A)(共栄社化学製)
<評価基準>
○:室温で溶解する
△:加温すると溶解し、冷却しても結晶が析出しない
×:加温すると溶解するが、冷却すると結晶が析出する、あるいは、加温しても溶解しな
い。
【0062】
〔5〕屈折率及びアッベ数
次のようにして測定した、下記する各波長における屈折率を、以下実施例等にて得られた二官能性アクリレート化合物の屈折率及びアッベ数とした。
二官能性アクリレート化合物をN-メチル-2-ピロリドンに溶解して5重量%、10重量%及び15重量%溶液(比較例1に関しては、有機溶媒に溶解しにくいため、1重量%、3重量%及び5重量%)を調製し、各溶液について後述の装置、条件にて各波長における屈折率を測定した。次に、得られた3点の測定値から近似曲線を導き、これを100重量%に外挿したときの値を各二官能性アクリレート化合物の各波長における屈折率とした。また、得られた各波長の屈折率に基づきアッベ数を算出した。
<各溶液の屈折率及びアッベ数測定条件>
装置:アッベ屈折計((株)アタゴ製「多波長アッベ屈折計 DR-2M」)
測定波長;屈折率:589nm(20℃)、アッベ数:486、589、656nm
【0063】
〔6〕融点及びガラス転移温度(Tg)
以下実施例等にて得られた二官能性(メタ)アクリレート5mgをアルミパンに精密に秤取し、示差走査熱量計(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社:DSC7020)を用い、下記操作条件で測定し、検出された融解吸熱最大温度を融点とした。また、融解吸熱ピークが検出されなかった化合物(非晶質体)は、変曲点の接線の交点をガラス転移温度(Tg)とした。
(操作条件)
・昇温速度:10℃/min、
・測定範囲:-30~350℃、
・雰囲気:開放、窒素40ml/min。
【0064】
<製造例1 上記一般式(2)で表される化合物の内、以下式(2-1)で表される化合物の製造例>
【0065】
【化3】
【0066】
攪拌器、冷却器、および温度計を備えた1Lのガラス製反応器に、2-アセチル-9H-フルオレン102g、フェノール424g、硫酸48g、3-メルカプトプロピオン酸5.2gを仕込んだ後、内圧2kPa、内温55℃で12時間反応させて、上記式(2-1)で表される化合物を含む反応混合物を得た。
得られた反応混合物にイオン交換水102gを仕込み、24%水酸化ナトリウム水溶液を添加し中和させ、内温を25℃まで冷却することにより結晶を析出させた。析出した結晶をろ別し、トルエン及び水を用いて洗浄することで上記式(2-1)で表される化合物の粗結晶を得た。
得られた粗結晶をメタノールを用いて再結晶することにより、上記式(2-1)で表される化合物の結晶98g(収率:53%、純度:99.6%)を得た。
【0067】
<実施例1 上記一般式(1)で表される化合物のうち、以下式(1-1)で表される化合物の製造例>
【0068】
【化4】
攪拌器、冷却器及び温度計を備えた500mlのガラス製反応容器に、上記式(2-1)で表される化合物20.0g、p-メトキシフェノール0.07g、トリエチルアミン12.6g、トルエンを投入し、25℃で撹拌した。その後、同温度を保持したままアクリル酸クロライド11.2gを投入して2時間反応した。
反応後、反応液をHPLCにて分析したところ、上記式(1-1)で表される化合物が93.5%生成していた。
得られた反応液に5%重曹水を加えて中和した後、水で2回洗浄し、減圧下で濃縮することで上記式(1-1)で表される化合物21.3gを得た(収率:83.0%、HPLC純度:93.6%)。
図1及び2に、得られた上記式(1-1)で表される化合物のH-NMRチャート及び13C-NMR(CDCl)チャートを、また図3に質量分析チャートを示し、併せて各スペクトル値を下記する。また、屈折率、アッベ数、融点又はガラス転移温度(Tg)、及び希釈剤に対する溶解性・相溶性の測定結果について表1に示す。
【0069】
H-NMR(CDCl3,400MHz):
δ=2.24ppm(3H、s)、3.84ppm(2H,s)、6.01ppm(2H、dd、J=1.4、10.5)、6.32ppm(2H、dd、J=10.5、17.4)、6.60ppm(2H、dd、J=1.4、17.4)、7.03-7.07ppm(4H、m)、7.11-7.18ppm(5H,m)、7.26-7.30ppm(2H,m)、7.36ppm(1H、t、J=7.3)、7.52ppm(1H,d、J=7.3)、7.68ppm(1H、d、J=8.2)、7.76ppm(1H、d、J=7.3)
【0070】
13C-NMR(CDCl3,100MHz):
δ=31.11ppm、37.13ppm、52.19ppm、119.36ppm、119.94ppm、120.92ppm、125.12ppm、125.33ppm、126,68ppm、126.83ppm、127.59ppm、128.08ppm、129.88ppm、132.65ppm、139.93ppm、141.43ppm、143.22ppm、143.58ppm、146.73ppm、147.48ppm、148.83ppm、164.65ppm
【0071】
質量分析値([M+NH):504.2189(上記式(1-1)で表される化合物の計算上の分子量(TOF MS ESI;[C3326+NH):504.2169)
【0072】
<比較例1>
下記式(3)で表される化合物(HPLC純度:93.0%)について、上記した方法、測定条件で屈折率、アッベ数、融点又はガラス転移温度(Tg)、希釈剤に対する溶解性・相溶性を測定した。結果を表1に示す。
【0073】
【化5】
【0074】
【表1】
図1
図2
図3