(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131844
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】仮設壁及びその仮設壁を用いる管渠の改修方法
(51)【国際特許分類】
E03F 3/04 20060101AFI20230914BHJP
E03F 7/00 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
E03F3/04 Z
E03F7/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022036824
(22)【出願日】2022-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000108719
【氏名又は名称】タキロンシーアイ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000207562
【氏名又は名称】タキロンシーアイシビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【弁理士】
【氏名又は名称】沖中 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100102211
【弁理士】
【氏名又は名称】森 治
(72)【発明者】
【氏名】石橋 直也
(72)【発明者】
【氏名】加藤 晋康
(72)【発明者】
【氏名】建部 宏輔
(72)【発明者】
【氏名】竹下 賢
(72)【発明者】
【氏名】家高 渉
(72)【発明者】
【氏名】森田 佳伸
【テーマコード(参考)】
2D063
【Fターム(参考)】
2D063BA35
2D063BA37
2D063EA05
(57)【要約】
【課題】簡易かつ迅速に設置することができるようにしながら、大きな水圧にも対応できる、管渠の改修時に該管渠を補修域と仮流路とに区画し、補修域への水の侵入を防ぐために設置する仮設壁及びその仮設壁を用いる管渠の改修方法を提供すること。
【解決手段】管渠Pの長手方向に沿って配置される仕切壁W1と、仕切壁W1の上流端及び下流端で補修域Dの開口を塞ぐ閉止壁W2、W3とを備え、仕切壁W1及び閉止壁W2、W3は、複数の支柱2と、複数の止水板3とを備え、支柱2は、支持手段4により管渠Pの底部に立設するように固定されており、かつ止水板3の保持機構5を備え、止水板3は、保持機構5により、管渠Pの底部から立設されるようにする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管渠の改修時に前記管渠を補修域と仮流路とに区画し、前記補修域への水の侵入を防ぐために設置する仮設壁であって、
前記仮設壁は、前記管渠の長手方向に沿って配置される仕切壁と、前記仕切壁の上流端及び下流端で前記補修域の開口を塞ぐ閉止壁とを備え、
前記仕切壁及び前記閉止壁は、複数の支柱と、複数の止水板とを備え、
前記支柱は、支持手段により前記管渠の底部に立設するように固定されており、かつ前記止水板の保持機構を備え、
前記止水板は、前記保持機構により、前記管渠の底部から立設されるようにしてなる
ことを特徴とする仮設壁。
【請求項2】
前記支持手段として、前記管渠の対向する両壁に締結した支持桁を備えてなることを特徴とする請求項1に記載の仮設壁。
【請求項3】
前記支持桁は、トラス構造であることを特徴とする請求項2に記載の仮設壁。
【請求項4】
前記保持機構は、前記止水板の端部を挿入する溝であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の仮設壁。
【請求項5】
前記仕切壁及び閉止壁の少なくとも一部は、同一の前記支柱間に前記止水板を複数積み重ねた構造であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の仮設壁。
【請求項6】
前記支柱の少なくとも一つは、前記管渠の前記仮流路側の壁と支持索により締結されていることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の仮設壁。
【請求項7】
前記止水板は、幅方向に延びる貫通孔を有する中空構造であることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の仮設壁。
【請求項8】
前記止水板は、持ち手が設けられていることを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の仮設壁。
【請求項9】
前記管渠の底部の少なくとも一部が、改修済みであることを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の仮設壁。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の仮設壁を用いる管渠の改修方法であって、
前記支柱を、前記支持手段により固定する工程と、
前記支柱と支柱との間に止水板を設置することで前記仕切壁及び閉止壁を備えた仮設壁を構築し、前記管渠を補修域と仮流路とに区画する工程と、
前記補修域に滞留している水を排出し、前記補修域をドライ状態にする工程と、
前記補修域において、管渠を改修する工程とを含む
ことを特徴とする仮設壁を用いる管渠の改修方法。
【請求項11】
所定の作業終了時に、前記閉止壁を構成する止水板を撤去し、前記補修域を流水下とする工程と、
次の作業開始前に、前記閉止壁を構成する止水板を設置する工程と、
前記補修域に滞留している水を排出し、前記補修域をドライ状態にする工程とを実施した後に、
改修作業を再開することをさらに含む
ことを特徴とする請求項10に記載の仮設壁を用いる管渠の改修方法。
【請求項12】
前記補修域は未改修であり、前記仮流路の少なくとも一部が改修済みであることを特徴とする請求項10又は11に記載の仮設壁を用いる管渠の改修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管渠の改修時に該管渠を補修域と仮流路とに区画し、前記補修域への水の侵入を防ぐために設置する仮設壁及びその仮設壁を用いる管渠の改修方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、老朽化した管渠の改修構造として、管渠の内面を内張り材で全面的に覆う管渠の改修構造が数多く提案されている(例えば、特許文献1及び2参照。)。
【0003】
ところで、このような管渠の改修構造によって管渠の改修を行う場合において、管渠内の流水が改修作業の障害となるときは、管渠としての機能(例えば、下水道管)を維持しながら管渠の改修を行うために、改修を行う管渠部分において流水をバイパスさせる、所謂、切りまわしが必要となる。
そして、この切りまわしの一例として、改修を行う管渠部分の上流側のマンホールからポンプで流水を汲み上げ、地上に敷設されたホースを通じて下流側のマンホールまで送り、これを下流側の管渠に放流する方法がある(例えば、特許文献3参照。)。
【0004】
しかしながら、特許文献3に開示された方法は、流水の水量が多い特に大口径管の場合、大容量のポンプや多数のホースが必要になるため地上側のスペースを確保することが困難になり、また仮に大容量のポンプや多数のホースを設置するスペースが確保できても、ホースにおける流体損失により十分な流下容量を確保するのが困難で対応が難しいという問題があった。
【0005】
一方、ポンプやホースを使用しない管渠の改修方法として、管渠の改修時に該管渠をシート部材からなる仮設壁で補修域と仮流路とに区画し、前記補修域への水の侵入を防いだ状態で補修域の管渠の改修を行う方法が提案されている(特許文献4参照。)。
【0006】
特許文献4に開示された方法は、シート部材からなる仮設壁で補修域と仮流路とに区画することで、ポンプやホースを使用する切りまわしの問題点を解消することができるものの、限定された領域(人孔)に適用される方法であることから、仮流路が長くなる場合や、下水道管の流水の水量が多く、水位が高くなった場合は、シート部材からなる仮設壁が水圧に耐えきれず、漏水や仮設壁の崩壊等の事故が発生するおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第5746443号公報
【特許文献2】特開2017-198305号公報
【特許文献3】特開2001-113600号公報
【特許文献4】特開2014-214455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来の老朽化した管渠の改修方法の問題点に鑑み、簡易かつ迅速に設置することができるようにしながら、大きな水圧にも対応できる、管渠の改修時に該管渠を補修域と仮流路とに区画し、補修域への水の侵入を防ぐために設置する仮設壁及びその仮設壁を用いる管渠の改修方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の仮設壁は、
管渠の改修時に前記管渠を補修域と仮流路とに区画し、前記補修域への水の侵入を防ぐために設置する仮設壁であって、
前記仮設壁は、前記管渠の長手方向に沿って配置される仕切壁と、前記仕切壁の上流端及び下流端で前記補修域の開口を塞ぐ閉止壁とを備え、
前記仕切壁及び前記閉止壁は、複数の支柱と、複数の止水板とを備え、
前記支柱は、支持手段により前記管渠の底部に立設するように固定されており、かつ前記止水板の保持機構を備え、
前記止水板は、前記保持機構により、前記管渠の底部から立設されるようにしてなる
ことを特徴とする。
【0010】
この場合において、前記支持手段として、前記管渠の対向する両壁に締結した支持桁を備えてなるようにすることができる。
【0011】
また、前記支持桁は、トラス構造とすることができる。
【0012】
また、前記保持機構は、前記止水板の端部を挿入する溝とすることができる。
【0013】
また、前記仕切壁及び閉止壁の少なくとも一部は、同一の前記支柱間に前記止水板を複数積み重ねた構造とすることができる。
【0014】
また、前記支柱の少なくとも一つは、前記管渠の前記仮流路側の壁と支持索により締結されているようにすることができる。
【0015】
また、前記止水板は、幅方向に延びる貫通孔を有する中空構造とすることができる。
【0016】
また、前記止水板は、持ち手が設けられているようにすることができる。
【0017】
また、前記管渠の底部の少なくとも一部が、改修済みであるようにすることができる。
【0018】
また、同じ目的を達成するため、本発明の仮設壁を用いる管渠の改修方法は、上記仮設壁を用いる管渠の改修方法であって、
前記支柱を、前記支持手段により固定する工程と、
前記支柱と支柱との間に止水板を設置することで前記仕切壁及び閉止壁を備えた仮設壁を構築し、前記管渠を補修域と仮流路とに区画する工程と、
前記補修域に滞留している水を排出し、前記補修域をドライ状態にする工程と、
前記補修域において、管渠を改修する工程とを含む
ことを特徴とする。
【0019】
この場合において、所定の作業終了時に、前記閉止壁を構成する止水板を撤去し、前記補修域を流水下とする工程と、
次の作業開始前に、前記閉止壁を構成する止水板を設置する工程と、
前記補修域に滞留している水を排出し、前記補修域をドライ状態にする工程とを実施した後に、
改修作業を再開することをさらに含むようにすることができる。
【0020】
また、前記補修域は未改修であり、前記仮流路の少なくとも一部が改修済みであるようにすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の仮設壁及びその仮設壁を用いる管渠の改修方法によれば、管渠の改修時に該管渠を補修域と仮流路とに区画し、補修域への水の侵入を防ぐために設置する、大きな水圧にも対応できる仮設壁を、簡易かつ迅速に設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の仮設壁を用いる管渠の改修方法の一実施例を示す工程説明図(1)である。
【
図6】本発明の仮設壁の一実施例を示し、仮設壁を設置した管渠の縦断面図である。
【
図8】同仮設壁の支柱を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図、(d)は背面図である。
【
図9】同仮設壁の止水板を示し、(a1)、(a2)は平面図、(b1)、(b2)は正面図、(c1)、(c2)は側面図である。
【
図10】同仮設壁の支柱を立設した状態を示す正面図である。
【
図11】従来の管渠の更生構造の例を示し、(a)は円形断面の管渠の更生構造を示す説明図、(b)は矩形断面の管渠の更生構造を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の仮設壁及びその仮設壁を用いる管渠の改修方法の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0024】
図1~
図10に、本発明の仮設壁及びその仮設壁を用いる管渠の改修方法の一実施例を示す。
ここで、
図1~
図7は、本発明の仮設壁及びその仮設壁を用いる管渠の改修方法を説明するために簡略化して表した図面であり、管渠Pの管軸方向の改修長さ等は任意に設定できるものである。
ちなみに、本実施例において、
図7における仮設壁の最上流部と最下流部との間の距離は、例えば、約100mである。これは改修対象の管渠(本実施例では下水管路)の所定のマンホールから、下流側の次のマンホールまでの距離に相当する。言い換えると、下水管路の隣り合うマンホール間に仮設壁を設置し改修を行うようにしている。
【0025】
この仮設壁1は、管渠Pの改修時に管渠Pを補修域Dと仮流路Fとに区画し、補修域Dへの水の侵入を防ぐために設置するもので、
図1~
図7(特に
図2参照)に示すように、管渠Pの長手方向に沿って配置される仕切壁W1と、仕切壁W1の上流端及び下流端で補修域Dの開口を塞ぐ閉止壁W2、W3とを備え、仕切壁W1及び閉止壁W2、W3は、複数の支柱2と、複数の止水板3とを備え、支柱2は、支持手段4により管渠Pの底部に立設するように固定されており、かつ止水板3の保持機構5を備え、止水板3は、保持機構5により、管渠Pの底部から立設されるようにしている。
ここで、水流(水圧)を考慮して、管渠Pの長手方向に沿って配置される仕切壁W1は、管渠Pの幅方向の中心に、仕切壁W1の上流端及び下流端で補修域Dの開口を塞ぐ閉止壁W2、W3は、管渠Pの長手方向に対して斜めに設けるようにすることが好ましい。
なお、
図1~
図7において、閉止壁W2が上流端、閉止壁W3が下流端である。また、
図1~
図7において、支柱2、止水板3など、同一の部材が複数使用されている場合は、図が複雑になることを避けるため代表して一つの部材に符号を付している。
【0026】
ところで、本実施例において改修の対象としている管渠Pは、断面が矩形のボックスカルバートであるが、これに限定されるものではなく、断面が円形の鉄筋コンクリート管(ヒューム管)のほか、プレキャスト工法以外の工法で構築された老朽化した管渠も対象にしている。
【0027】
また、改修によって管渠Pの内側に構築する更生管Rには、老朽化した下水道管等の既設管を更生するために用いられている公知の更生管を広く用いることができるが、本実施例においては、
図11に記載した更生管(FFT工法協会「ストリング工法」(登録商標))(特許文献1及び2参照。)を用いるようにしている。
【0028】
更生管Rは、具体的には、管渠Pの内周面に沿って、更生管Rの管軸方向に間隔をあけて設置した異形鉄筋からなる環状(管渠Pが矩形の場合は略矩形状)の固定部材と、固定部材に配設した連結部材と、連結部材と間隔を規定するスペーサを介して、更生管Rの管軸方向に隣接する固定部材に配設した連結部材に架設される高密度ポリエチレン等の合成樹脂製の帯状の内面材と、隣接する内面材同士を連結し、その隙間を覆う高密度ポリエチレン・熱可塑性エラストマ等の合成樹脂製のファスナとを備え、更生管Rと管渠Pとの間に高流度・高強度モルタル等の充填材を、充填、硬化するようにしている。
【0029】
支柱2は、本実施例においては、
図8に示すように、角形鋼管や形鋼等の鋼材を用いて構成するようにしているが、このほか、H形鋼や丸形鋼管等の鋼材を用いたり、アルミニウム、ステンレススチール等の鉄以外の金属製の部材や合成樹脂(複合材料を含む。)製の部材を用いて構成することもできる。
【0030】
支柱2には、止水板3の保持機構5として、
図1~
図4、
図6及び
図8に示すように、支柱2の上下方向に延びる、止水板3の端部を挿入する溝21を形成するとともに、溝21に挿入した止水板3を固定するネジ(図示せず)を螺入するためのナット21a(
図8参照)を設けるようにする。止水板3を固定するネジは、補修域Dがドライ状態となり、仮流路Fの水圧等により止水板3が自然に安定するまでの間、止水板3を所定の位置に保つために止水板3を補修域D側に押圧する形で使用する。
なお、止水板3の保持機構5は、これに限定されず、例えば、支柱2に丸形鋼管を用いた場合は、止水板3の保持機構5を、丸形鋼管の凸状の湾曲面と、これと接する止水板3の端部の凹状の湾曲面とで構成することができる。
【0031】
支柱2の下部には、着底部22a、22bを設け、補修域D側の着底部22aの裏面には、クロロプレンゴム製等のパッキン22cを、仮流路F側の着底部22bには、レベル調整用のネジを螺入するためのナット22dを、それぞれ設けるようにする。
ここで、支柱2の着底部22a、22b(及び止水板3)が着底する管渠Pの底部は、改修前の管渠Pの底部のほか、
図3~
図4に示すように、改修済みの管渠Pの底部、すなわち、更生管Rの表面の場合もある。この場合でも、支柱2は後述の支持手段4によって支えられているため、更生管Rの表面にかかる負荷は最小限にとどめられており、更生管Rの性能を損なうようなことはない。
【0032】
支柱2の中間部には、
図10に示すように、隣接する支柱2同士を連結するくさび式足場用手すり6を装着するためのくさび受23を設けるようにする。
くさび式足場用手すり6は、隣接する支柱2同士の間隔が、止水板3の幅寸法に適合した所定寸法になるように連結する位置合わせ部材として使用する。これにより、支柱2及び後述の支持手段4(特に後述の支持桁41)の設置間隔を容易に定めることができる。また、隣接する支柱2同士を連結することで、仕切壁W1や閉止壁W2、W3の緩み、がたつきを抑制することができる。
なお、
図1~
図7の各図においては、図が複雑化することを避けるため、くさび式足場用手すり6は図示していない。
【0033】
本実施例では、支柱2の支持手段4として、管渠Pの対向する両壁に締結した支持桁41を備えるようにしている。
支持桁41は、両端を、アンカーボルト等を介して管渠Pの壁面に固定し、中間位置で、クランプ等により支柱2を固定することで、支柱2を支持するようにしている。
支持桁41は、軽量化のため、トラス構造のものを用いるようにしているが、これに限定されず、例えば、鋼管や形鋼等の鋼材を用いることもできる。
【0034】
また、本実施例では支柱2の支持手段4として、支持桁41に加え、管渠Pの仮流路F側の壁と支柱2とを支持索42により締結するようにしている。
ここで、支持索42は、支柱2(止水板3)にかかる水圧に抗する方向に張設するようにする。
【0035】
本実施例では、支持索42を、短い鋼製のワイヤーロープの一端を管渠Pの壁にアンカーボルトにより固定し、長さ調整機能のある接続部材、例えば、ターンバックル(図示せず)を介して短い鋼製のワイヤーロープの他端と別のワイヤーロープの一端を接続し、別のワイヤーロープの他端を任意の支柱2と締結することで構成するようにしている。これにより、支持索42の張力を最適なものに調整することができる。
なお、支持索42には、鋼製のワイヤーロープのほか、伸びの小さい繊維製ロープを用いることもできる。
【0036】
支持桁41や支持索42といった支持手段4は、支柱2(止水板3)にかかる水圧に対応するためのもので、想定される水圧に応じた強度(耐力)を有するように設計するようにする。
なお、支持桁41や支持索42は、必ずしもすべての支柱2に設ける必要はなく、例えば、管渠Pの壁面に沿って配置する支柱2は、管渠Pの壁面に直接固定することができる。言い換えると、管渠Pの壁面に直接固定するための金具43を支持手段4とすることができる。
この際、管渠Pの壁面と、管渠Pの壁面に沿って配置する支柱2との隙間は、必要に応じ速乾モルタル等の目止め材で止水するようにする。
また、管渠Pの壁面に沿って設置する支柱2は、その形状が管渠Pの壁面の形状に沿いやすいようオーダーメードで製作してもよい。これにより、止水性を高め、目止め材の使用量を必要最小限とすることができる。
【0037】
止水板3は、保持機構5である支柱2の溝21に挿入することで、仕切壁W1や閉止壁W2、W3を構成するもので、想定される水位に応じて、同一の支柱2間に複数積み重ねて、管渠Pの底部から立設されるようにしている。
【0038】
この止水板3は、構築する仕切壁W1や閉止壁W2、W3の寸法に柔軟に対応できるようにするため、
図9に示すように、幅寸法の異なる複数種の止水板3を用意することが好ましく、本実施例においては、幅寸法が2000mmと1000mmの止水板3を用意している。
【0039】
また、止水板3は、支柱2に設けた保持機構により確実に保持できる構造であれば種々の態様のものを用いることができるが、幅方向に延びる貫通孔31を有する中空構造のものを好適に用いることができる。
これにより、作業時の軽量化を図りながら、設置した状態では仮流路Fからの貫通孔31内への水の流入を許容し、止水板3の浮上を防止するようにして、止水板3の設置状態
の安定化を図ることができるようにしている。
なお、止水板3には、想定される水圧に応じた強度(耐力)を有する合成樹脂(複合材料を含む。)製や金属製の部材を用いることができるが、FRP製の引抜成形品(例えば、タキロンシーアイシビル社製「プルフロア」(登録商標))を好適に用いることができる。
そして、支柱2の溝21に挿入される止水板3の端部の補修域D側の面及び底面に、クロロプレンゴム製等のパッキン32a、32bを、それぞれ設けるようにする。パッキン32a、32bが仮流路の流水の水圧、止水板3本体の重量及び止水板3に流入した水により自然に押圧され止水性能を発揮することで、補修域Dへの水の侵入を防ぐようにしている。
【0040】
さらに、止水板3には、操作性を高めるために、持ち手33を設けるようにしている。
【0041】
次に、この仮設壁を用いる管渠の改修方法について説明する。
以下の工程で、
図1の工程説明図(1)~
図2の工程説明図(2)及び
図6~
図7に示すように、管渠Pの補修を行うようにする。
・流水Wの存在下で、管渠Pの改修を行う箇所に、支柱2を、くさび型足場用手すり6で間隔を定めながら、支持桁41や支持索42といった支持手段4により管渠Pの底部に立設するように固定する工程。
・支柱2と支柱2との間に止水板3を設置することで仕切壁W1及び閉止壁W2、W3を備えた仮設壁を構築し、管渠Pを補修域Dと仮流路Fとに区画する工程。
これにより、補修域Dが締め切られ、流水Wは仮流路Fを流れるようになるため、続けて以下の工程を実施する。
・補修域Dに滞留している水を排出し、補修域Dをドライ状態にする工程。
・補修域Dにおいて、管渠Pの内側に更生管Rを構築し、管渠Pを改修する工程。
ここで、
図2の工程説明図(2)において、更生管Rは、少なくとも、補修域Dが締め切りを解除したときに流水Wの水位が及ぶ範囲を越えるように構築するようにし、流水Wの存在下でも構築できるそれより上部は、適宜段階で構築するようにする。
【0042】
この場合、例えば、夜間に急に増水した際に、予定外の事象が発生することを防止するため、以下の工程を含むようにすることができる。
・所定の作業終了時、例えば、一日の作業終了時に、閉止壁W2、W3を構成する止水板3を撤去し、補修域Dを流水W下とする工程。
・次の作業開始前、例えば、次の日の作業開始時に、閉止壁W2、W3を構成する止水板3を設置する工程。
・補修域Dに滞留している水を排出し、補修域Dをドライ状態にする工程。
上記工程を実施した後に、改修作業を再開することができる。
【0043】
補修域Dにおいて、管渠Pの内側に更生管Rを構築し、管渠Pの半分を改修し終えると、以下の工程で、
図3の工程説明図(3)~
図4の工程説明図(4)に示すように、管渠Pの残りの半分の補修を行うようにする。
・流水Wの存在下で、管渠Pの改修を行う箇所に、支柱2を、くさび型足場用手すり6で間隔を定めながら、支持桁41や支持索42といった支持手段4により管渠Pの底部(改修した箇所は、改修済みの管渠Pの底部、すなわち、更生管Rの表面)に立設するように固定する工程。
・支柱2と支柱2との間に止水板3を設置することで仕切壁W1及び閉止壁W2、W3を備えた仮設壁を構築し、管渠Pを補修域Dと仮流路Fとに区画する工程。
これにより、補修域Dが締め切られ、流水Wは仮流路Fを流れるようになるため、続けて以下の工程を実施する。
・補修域Dに滞留している水を排出し、補修域Dをドライ状態にする工程。
・補修域Dにおいて、先に構築した更生管Rに連続して、管渠Pの内側に更生管Rを構築し、管渠Pを改修する工程。
ここで、
図4の工程説明図(4)において、更生管Rは、少なくとも、補修域Dが締め切りを解除したときに流水Wの水位が及ぶ範囲を越えるように構築するようにし、流水Wの存在下でも構築できるそれより上部は、適宜段階で構築するようにする。
【0044】
これにより、
図5に示すように、管渠Pの内側に更生管Rを構築し、管渠Pを改修することができる。
なお、
図5においては更生管Rの一部が完成した状態となっているが、実際はこの後通常の足場を組んで更生管Rの上部を構築し、
図11(b)に示したような、既設管全周を覆う更生管Rを構築するようにする。
【0045】
以上、本発明の仮設壁及びその仮設壁を用いる管渠の改修方法について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の仮設壁及びその仮設壁を用いる管渠の改修方法は、簡易かつ迅速に設置することができるようにしながら、大きな水圧にも対応できることから、管渠の改修時に該管渠を補修域と仮流路とに区画し、補修域への水の侵入を防ぐために設置する仮設壁及びその仮設壁を用いる管渠の改修方法の用途に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0047】
1 仮設壁
2 支柱
21 溝(保持機構)
3 止水板
4 支持手段
5 保持機構
6 くさび式足場用手すり
D 補修域
F 仮流路
P 管渠
R 更生管
W 流水
W1 仕切壁
W2 閉止壁
W3 閉止壁