(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131845
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】熱カチオン重合性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 59/68 20060101AFI20230914BHJP
【FI】
C08G59/68
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022036825
(22)【出願日】2022-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000162434
【氏名又は名称】協立化学産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】永松 健太郎
【テーマコード(参考)】
4J036
【Fターム(参考)】
4J036AA01
4J036AA06
4J036AD08
4J036AF06
4J036AJ08
4J036DA05
4J036DB29
4J036FA10
4J036GA24
4J036HA12
4J036JA15
(57)【要約】
【課題】Tgが高く、アウトガス量が低減されており、耐熱透明性が優れ、かつ、熱硬化性に優れる、熱カチオン重合性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】本発明は、(A)カチオン硬化性樹脂、(B)下記式(1):Ar1-I+-Ar2・[(R1)(R2)(R3)(R4)Ga]- (1)〔式中、R1~R4は、互いに独立して、アルキル基又はAr3であるが、但し、R1~R4の少なくとも1つはAr3であり、Ar1~Ar3は、互いに独立して、アリール基又はヘテロアリール基であり、前記アリール基又はヘテロアリール基は、アルキル基、ハロゲン原子で置換されたアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ニトロ基、水酸基、シアノ基、-OR6基、-COR7基、-OCOR8基、-SR9基、-NR10R11基又はハロゲン原子で置換されていてもよくここで、R6は、アルキル基、水酸基で置換されたアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基であり、R7~R9は、互いに独立して、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基であり、R10及びR11は、互いに独立して、水素原子、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基である〕で示されるヨードニウムガレート塩、及び(C)有機過酸化物を含む、熱カチオン重合性樹脂組成物に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カチオン硬化性樹脂、
(B)下記式(1):
Ar1-I+-Ar2・[(R1)(R2)(R3)(R4)Ga]- (1)
〔式中、
R1~R4は、互いに独立して、アルキル基又はAr3であるが、但し、R1~R4の少なくとも1つはAr3であり、
Ar1~Ar3は、互いに独立して、アリール基又はヘテロアリール基であり、前記アリール基又はヘテロアリール基は、アルキル基、ハロゲン原子で置換されたアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ニトロ基、水酸基、シアノ基、-OR6基、-COR7基、-OCOR8基、-SR9基、-NR10R11基又はハロゲン原子で置換されていてもよく、ここで、
R6は、アルキル基、水酸基で置換されたアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基であり、R7~R9は、互いに独立して、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基であり、R10及びR11は、互いに独立して、水素原子、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基である〕で示されるヨードニウムガレート塩、及び
(C)有機過酸化物
を含む、熱カチオン重合性樹脂組成物。
【請求項2】
更に、(D)熱カチオン重合開始剤を含む、請求項1に記載の熱カチオン重合性樹脂組成物。
【請求項3】
(A)成分が、エポキシ樹脂及びオキセタン樹脂からなる群より選択される少なくとも一種である、請求項1又は2に記載の熱カチオン重合性樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱カチオン重合性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
カチオン硬化性樹脂は、その硬化物が機械的強度、耐薬品性、電気絶縁性、接着性などの特性に優れていることから、塗料、電気・電子、土木・建築、接着剤分野などで幅広く利用されている。
【0003】
一般に、ラジカルレッドクス機構(ヨードニウム塩系の光カチオン重合開始剤と有機過酸化物(熱ラジカル重合開始剤)との組み合わせ)を利用した熱硬化性の樹脂組成物は、低温で硬化可能で、且つ熱硬化のみの場合でも、紫外線硬化及び熱硬化の両方を行った場合と同等の物性を発現することが可能である。このような組成物として、特許文献1~3には、前記したラジカルレッドクス機構及びカチオン硬化性樹脂を含む熱カチオン重合性の組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-129473号公報
【特許文献2】特開2014-129474号公報
【特許文献3】特開2011-116977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明者らの知見によれば、特許文献1~3に記載された熱カチオン重合性の組成物において、Tg(ガラス転移温度)、アウトガス量及び耐熱透明性の点で改善の余地があることが見いだされた。
【0006】
よって、本発明は、Tgが高く、アウトガス量が低減され、耐熱透明性に優れ、かつ、熱硬化性に優れる、熱カチオン重合性樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記課題を鑑み鋭意検討を重ねた結果、ラジカルレドックス機構を利用した配合において、ガリウムタイプのアニオン構造を有するヨードニウム塩系酸発生剤を用いることにより、Tgを高温で維持したまま、アウトガス量を低減することができ、かつ、耐熱透明性に優れることを見出した。
【0008】
本発明は、以下の[1]~[4]に関する。
[1](A)カチオン硬化性樹脂、
(B)下記式(1):
Ar1-I+-Ar2・[(R1)(R2)(R3)(R4)Ga]- (1)
〔式中、
R1~R4は、互いに独立して、アルキル基又はAr3であるが、但し、R1~R4の少なくとも1つはAr3であり、
Ar1~Ar3は、互いに独立して、アリール基又はヘテロアリール基であり、前記アリール基又はヘテロアリール基は、アルキル基、ハロゲン原子で置換されたアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ニトロ基、水酸基、シアノ基、-OR6基、-COR7基、-OCOR8基、-SR9基、-NR10R11基又はハロゲン原子で置換されていてもよく、ここで、R6は、アルキル基、水酸基で置換されたアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基であり、R7~R9は、互いに独立して、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基であり、R10及びR11は、互いに独立して、水素原子、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基である〕で示されるヨードニウムガレート塩、及び
(C)有機過酸化物
を含む、熱カチオン重合性樹脂組成物。
[2]更に、(D)熱カチオン重合開始剤を含む、[1]の熱カチオン重合性樹脂組成物。
[3](A)成分が、エポキシ樹脂及びオキセタン樹脂からなる群より選択される少なくとも一種である、[1]又は[2]の熱カチオン重合性樹脂組成物
【発明の効果】
【0009】
本発明により、Tgが高く、アウトガス量が低減され、耐熱透明性に優れ、かつ、熱硬化性に優れる、熱カチオン重合性樹脂組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0011】
[熱カチオン重合性樹脂組成物]
熱カチオン重合性樹脂組成物は、(A)カチオン硬化性樹脂、(B)上記式(1)で示されるヨードニウムガレート塩、及び(C)有機過酸化物を含む。
【0012】
<(A)カチオン硬化性樹脂>
カチオン硬化性樹脂としては、分子内に1以上のカチオン重合性基を有する樹脂であれば、特に限定されない。カチオン重合性基としては、エポキシ基、オキセタニル基、ビニルエーテル基等が挙げられる。カチオン硬化性樹脂の具体例としては、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、ポリスチレン系化合物、及びビニルエーテル化合物等が挙げられる。
【0013】
≪エポキシ樹脂≫
エポキシ樹脂としては、芳香族、脂肪族及び脂環式エポキシ樹脂が挙げられる。
【0014】
芳香族エポキシ化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC社製のEPICLON850、850-S、EXA-850CRP、EXA-8067等)、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(DIC社製のEPICLON830-S、EXA-830LVP等)、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC社製のEPICLONのHP-4032D、HP-7200H等)、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(DIC社製のEPICLON N-740、N-770等)、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC社製のEPICLON N-660、N-670、N-655-EXP-S等)、多官能型エポキシ樹脂等が挙げられる。多官能型エポキシ化合物としては、テトラ(ヒドロキシフェニル)アルカンのグリシジルエーテル、テトラヒドロキシベンゾフェノンのグリシジルエーテル、エポキシ化ポリビニルフェノール等が挙げられる。
【0015】
脂肪族エポキシ樹脂としては、多価アルコール又はそのアルキレンオキシド付加物のポリグリシジルエーテルが挙げられる。脂肪族エポキシ化合物の具体例としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(共栄社化学社製のエポライト100MF)、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物(ダイセル社製のEHPE3150)等が挙げられる。
【0016】
脂肪族エポキシ樹脂は、脂環構造を形成する2つの炭素原子と酸素原子とで、エポキシ基が形成された構造を有する樹脂であり、脂環構造を形成する1つの炭素原子に、エポキシ基が結合する脂肪族エポキシ樹脂は含まれない。脂環式エポキシ化合物としては、シクロヘキサン系、シクロヘキシルメチルエステル系、シクロヘキシルメチルエーテル系、スピロ系及びトリシクロデカン系エポキシ化合物が挙げられる。脂環式エポキシ化合物の具体例としては、(3,3’,4,4’-ジエポキシ)ビシクロヘキシル(ダイセル社製のセロキサイド8010等)、3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル 3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ダイセル社製のセロキサイド2021P等)、1,2:8,9-ジエポキシリモネン、1,2-エポキシ-4-ビニルシクロヘキサン等が挙げられる。
【0017】
≪オキセタン樹脂≫
オキセタン樹脂の具体例としては、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン(オキセタンアルコール)(東亞合成社製のOXT-101等)、2-エチルヘキシルオキセタン(東亞合成社製のOXT-212等)、キシリレンビスオキセタン(XDO。東亞合成社製のOXT-121等)、3-エチル-3{[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]メチル}オキセタン(東亞合成社製のOXT-221等)、オキセタニルシルセスキオキセタン(東亞合成社製OXT-191等)、フェノールノボラックオキセタン(東亞合成社製PHOX等)及び3-エチル-3-フェノキシメチルオキセタン(POX。東亞合成社製OXT-211等)が挙げられる。
【0018】
≪ビニルエーテル化合物≫
ビニルエーテル化合物の具体例としては、ヒドロキシブチルビニルエーテル(ISP社製のHBVE等)、1,4-シクロヘキサンジメタノールのビニルエーテル(ISP社製のCHVE等)、トリエチレングリコールジビニルエーテル(ISP社製のDVE-3等)、ドデシルビニルエーテル(ISP社製のDDVE等)、及びシクロヘキシルビニルエーテル(ISP社製CVE等)が挙げられる。
【0019】
≪好ましいカチオン硬化性樹脂≫
(A)成分は、エポキシ樹脂及びオキセタン樹脂からなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましい。
(A)成分は、1種又は2種以上の組み合わせであってよい。
【0020】
<(B)式(1)で示されるヨードニウムガレート塩>
(B)成分は、下記式(1):
Ar1-I+-Ar2・[(R1)(R2)(R3)(R4)Ga]- (1)
〔式中、
R1~R4は、互いに独立して、アルキル基又はAr3であるが、但し、R1~R4の少なくとも1つはAr3であり、
Ar1~Ar3は、互いに独立して、アリール基又はヘテロアリール基であり、前記アリール基又はヘテロアリール基は、アルキル基、ハロゲン原子で置換されたアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ニトロ基(-NO2基)、水酸基(-OH基)、シアノ基(-CN基)、-OR6基、-COR7基、-OCOR8基、-SR9基、-NR10R11基又はハロゲン原子で置換されていてもよく、ここで、
R6は、アルキル基、水酸基で置換されたアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基であり、R7~R9は、互いに独立して、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基であり、R10及びR11は、互いに独立して、水素原子、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基である〕で示されるヨードニウムガレート塩(以下、単に「ヨードニウムガレート塩」ともいう。)である。
【0021】
本明細書において、単独で又は他の用語との組み合わせにおいて、「アルキル基」は、直鎖状又は分岐状であり、環状又は非環状である、1価の基である。
非環状のアルキル基の炭素原子数は、1~20であることが好ましく、1~18であることがより好ましく、1~10であることが更に好ましく、1~4であることが特に好ましい。非環状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基等が挙げられる。
環状のアルキル基の炭素原子数は、3~20であることが好ましい。環状のアルキル基は、単環又は多環であり、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロデシル、シクロドデシル等のシクロアルキル基;及び、ノルボルニル、アダマンチル等の架橋環式アルキル基が挙げられる。
【0022】
本明細書において、単独で又は他の用語との組み合わせにおいて、「アリール基」は、単環又は多環の芳香族環を有する1価の基である。アリール基の炭素原子数は6~20であることが好ましい。
単環式アリール基としては、フェニル基が挙げられる。
多環式アリール基としては、ビフェニリル基、ナフチル基、ターフェニリル基、アントラセニル基、フェナンスレニル基、アントラキノリル基、フルオレニル基及びナフトキノリル基等が挙げられる。
【0023】
本明細書において、単独で又は他の用語との組み合わせにおいて、「ヘテロアリール基」は、炭素原子の他に、少なくとも酸素原子、硫黄原子及び窒素原子からなる群から選択される1以上のヘテロ原子を含む、単環又は多環の、1価の複素環基である。ヘテロアリール基の総原子数5~30であることが好ましい。
ヘテロアリール基としては、フタルイミジル基、イミダゾリル基、キサンテニル基、チオキサンテニル基、チエニル基、ジベンゾフリル基、クロメニル基、イソチオクロメニル基、フェノキサチイニル基、ピロリル基、ピラゾリル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、インドリジニル基、イソインドリル基、インドリル基、インダゾリル基、プリニル基、キノリジニル基、イソキノリル基、キノリル基、フタラジニル基、ナフチリジニル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、シンノリニル基、プテリジニル基、カルバゾリル基、β-カルボリニル基、フェナントリジニル基、アクリジニル基、ペリミジニル基、フェナントロリニル基、フェナジニル基、イソチアゾリル基、フェノチアジニル基、イソオキサゾリル基、フラザニル基等が挙げられる。
【0024】
本明細書において、単独で又は他の用語との組み合わせにおいて、「アルケニル基」は、直鎖状又は分岐状であり、環状又は非環状である、1価の基である。アルケニル基が有する不飽和結合の数は、1~5であることが好ましく、1又は2であることが特に好ましい。アルケニル基は、炭素原子数が2~20であることが好ましく、3~20であることがより好ましく、3~15であることが更に好ましく、3~10であることが特に好ましい。
非環状のアルケニル基としては、ビニル基、1-メチルビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、1-メチル-1-プロペニル基、2-メチル-1-プロペニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、2-ペンテニル基、3-ペンテニル基、4-ペンテニル基、2-ヘキセニル基、3-ヘキセニル基、4-ヘキセニル基、5-ヘキセニル基、9-デセニル基等が挙げられる。
環状のアルケニル基の炭素原子数は、3~20であることが好ましい。環状のアルケニル基は、単環又は多環であり、2-シクロヘキセニル基及び3-シクロヘキセニル基等が挙げられる。
【0025】
本明細書において、単独で又は他の用語との組み合わせにおいて、「アルキニル基」は、直鎖状又は分岐状である、1価の基である。アルキニル基の炭素原子数は、2~20であることが好ましく、2~15であることが特に好ましい。アルキニル基は、エチニル基、プロパルギル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、2-ペンチニル基、3-ペンチニル基、4-ペンチニル基、2-ヘキシニル基、3-ヘキシニル基、4-ヘキシニル基、5-ヘキシニル基等が挙げられる。
【0026】
本明細書において、単独で又は他の用語との組み合わせにおいて、「ハロゲン原子」としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。
本明細書において、単独で又は他の用語との組み合わせにおいて、「ハロゲン原子で置換されたアルキル基」は、当該アルキル基の少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換されたハロゲノアルキル基であり、トリフルオロメチル基等のパーフルオロアルキル基であることが好ましい。
【0027】
R6がアルキル基である場合の-OR6基としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、n-ペントキシ基、i-ペントキシ基、neo-ペントキシ基、n-ヘキシルオキシ基、n-オクチルオキシ基、n-デシルオキシ基、n-ドデシルオキシ基、n-オクタデシルオキシ基及び2-メチルブトキシ基等が挙げられる。なお、R6がアルキル基である場合、当該アルキル基は水酸基で置換されていてもよい。また、R6がアリール基である場合の-OR6基としては、フェノキシ基、ナフトキシ基等が挙げられる。
【0028】
-COR7基としては、アセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基、ピバロイル基及びベンゾイル基等が挙げられる
【0029】
-OCOR8基としては、アセトキシ基、ブタノイルオキシ基及びベンゾイルオキシ基等が挙げられる。
【0030】
R9がアルキル基である場合の-SR9基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、ブチルチオ基、ヘキシルチオ基、2-エチルヘキシルチオ基及びシクロヘキシルチオ基等が挙げられる。また、R9がアリール基である場合の-SR9基としては、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等が挙げられる。
【0031】
-NR10R11基としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、メチルエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジプロピルアミノ基、フェニルメチルアミノ基、ジフェニルアミノ基及びピペリジノ基等が挙げられる。
【0032】
《好ましい態様》
Ar1及びAr2は、非置換のアリール基又は上記した基で置換されたアリール基であることが好ましく、非置換のアリール基であるか、又はアルキル基若しくは-OR6基で置換されたアリール基であることが特に好ましい。よって、オニウムガレート塩のAr1-I+-Ar2で表されるヨードニウムカチオンとしては、ジフェニルヨードニウム、ジ-p-トリルヨードニウム、4-メチルフェニル-4-(1-メチルエチル)フェニルヨードニウム(4-イソプロピルフェニル(p-トリル)ヨードニウム)、ジ-(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウム、ジ-(4-tert-ペンチルフェニル)ヨードニウム、4-オクチルオキシフェニルフェニルヨードニウム、ジ-4-イソプロピルフェニルヨードニウム、4-イソブチルフェニル(p-トリル)ヨードニウム、ビス(2,4-ジイソプロピルフェニル)ヨードニウム、4-ヘキシルフェニル(p-トリル)ヨードニウム、4-シクロヘキシルフェニル(p-トリル)ヨードニウム、ビス(4-ドデシルフェニル)ヨードニウム、4-オクチルオキシフェニル(2,4,6-トリメトキシフェニル)ヨードニウム、ビス(4-オクタデシルフェニル)ヨードニウム、ビス(4-メトキシフェニル)ヨードニウム、ビス(4-デシルオキシフェニル)ヨードニウム、4-(2-ヒドロキシテトラデシルオキシフェニル)フェニルヨードニウム等が好ましい。
【0033】
R1~R4は、独立して、Ar3であることが好ましい。また、熱安定性の観点から、Ar3は、上記した基で置換されたアリール基であることが好ましく、ハロゲン原子で置換された炭素原子数1~8のアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基又はシアノ基で置換されたアリール基であることがより好ましく、フッ素原子で置換された炭素数1~8のアルキル基又はフッ素原子で置換されたアリール基であることが更に好ましい。
よって、ヨードニウムガレート塩の[(R1)(R2)(R3)(R4)Ga]-で表されるガレートアニオンとしては、[Ga(C6F5)4]-、[Ga(C6F3H2)4]-、[Ga((CF3)2C6H3)4]-、[Ga(C6F5)3(C4F9)]-、又は[Ga(C6F5)3(C6H5)]-であることが特に好ましい。
(B)成分は、1種又は2種以上の組み合わせであってよい。
【0034】
<(C)有機過酸化物>
(C)有機過酸化物は、パーオキシ基(-O-O-)を含む化合物である。有機過酸化物は、ラジカル源である。有機過酸化物から発生したラジカルが、(B)成分のヨードニウムガレート塩を還元的に分解し、光によらず酸を発生させることにより、カチオン重合を促進させる。有機過酸化物としては、ジアシルパーオキシド類、ヒドロパーオキシド類、ジアルキルパーオキシド類、パーオキシケタール類、パーオキシエステル類、パーオキシカーボネート類等が挙げられる。
【0035】
(C)成分の具体例としては、ジラウロイルパーオキシド、ジベンゾイルパーオキシド、ビス-3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキシドのようなジアシルパーオキシド類;1,1,3,3-テトラメチルブチルヒドロパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド(例えば、化薬アグゾ社製のカヤクメンH)、t-ブチルヒドロパーオキシドのようなヒドロパーオキシド類;ジクミルパーオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,3-ビス(t-ブチルパーオキシソプロピル)ベンゼン、t-ブチルクミルパーオキシド、ジ-t-ブチルパーオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3のようなジアルキルパーオキシド類;2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキサン、2,2-ジ-t-ブチルペルオキブタンのようなパーオキシケタール類;1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、α-クミルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t-ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ-t-ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、t-アミルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート、t-アミルパーオキシベンゾエートのようなパーオキシエステル類;ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシソプロピルカーボネート、t-ブチルパーオキシ2-エチルヘキシルカーボネート、1,6-ビス(t-ブチルパーオキシカルボニルオキシ)ヘキサンのようなパーオキシカーボネート類等を挙げることができる。このような有機過酸化物は、試薬供給業者から市販されており、容易に入手することができる。
【0036】
(C)成分は、1種又は2種以上の組み合わせであってよい。
【0037】
<その他の成分>
熱カチオン重合性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、その目的に応じて、(A)成分~(C)成分以外の、その他の成分を含むことができる。その他の成分として、(D)熱カチオン重合開始剤、(E)(B)成分以外のヨードニウム塩、(F)添加剤が挙げられる。
【0038】
<(D)熱カチオン重合開始剤>
(D)熱カチオン重合開始剤は、加熱によりカチオン重合させる際のカチオン発生源となる成分である。熱カチオン重合開始剤としては、カチオン部分が、芳香族スルフォニウム、芳香族ジアゾニウム、芳香族アンモニウム、チアンスレニウム、チオキサントニウム、又は、(2,4-シクロペンタジエン-1-イル)[(1-メチルエチルベンゼン]-Feカチオンであり、アニオン部分が、[(R1)(R2)(R3)(R4)Ga]-(式中、R1~R4は、上記の通りである)、[P(RF)nF6-n]-(式中、RFは、独立して、炭素原子数1~6の部分又は全フッ素化アルキル基であり、nは0~5の整数である)、SbF6
-、BF4
-、PF6
-、B(C6F5)4
-、又は[BX4]-(式中、Xは少なくとも2つ以上のフッ素原子又はトリフルオロメチル基で置換されたフェニル基である)である、カチオン部分及びアニオン部分で構成されるオニウム塩が挙げられる。熱カチオン重合開始剤は、スルフォニウム塩であることが好ましい。また、熱カチオン重合開始剤のアニオン部分が、[(R1)(R2)(R3)(R4)Ga]-(式中、R1~R4は、上記の通りである)、[P(RF)nF6-n]-(式中、RFは、独立して、炭素原子数1~6の部分又は全フッ素化アルキル基であり、nは0~5の整数である)であることが好ましい。
【0039】
(D)成分の市販品としては、サンアプロ社製のTA-60、TA-60B、TA-100、TA-100FG、TA-120;ADEKA社製のアデカオプトンCP-77、アデカオプトンCP-66;日本曹達社製のCI-2639、CI-2624;キングインダストリーズ社製のCXC-1612、CXC-1738;三新化学工業社製のサンエイドSI-45、サンエイドSI-60、サンエイドSI-80、サンエイドSI-100、サンエイドSI-110、サンエイドSI-B3、サンエイドSI-B3A、サンエイドSI-B4等が挙げられる。
【0040】
(D)成分は、1種又は2種以上の組み合わせであってよい。
【0041】
<(E):(B)成分以外のヨードニウム塩>
(E)成分は、(B)成分以外のヨードニウム塩(以下、「その他のヨードニウム塩」ともいう。)である。(E)成分は、非ガリウム系のアニオンを有するヨードニウム塩であれば特に限定されない。このような(E)成分は、式(2):Ar4-I+-Ar5・X-(式(2)中、Ar4及びAr5は、独立して、Ar1及びAr2と同義であり、X-は、ガリウムを含まないアニオンである)で示されるヨードニウム塩が挙げられる。
Ar4及びAr5は、Ar1及びAr2において前記した基が挙げられる。
X-は、ガリウムを含まず、かつ、一価のカウンターアニオンである。X-は、非アンチモン系のアニオンであることが好ましく、BF4
-、AsF6
-、B(C6F5)4
-、[P(RF)nF6-n]-、[C(RFSO2)3]-、又は[N(RFSO2)2]-(式中、RFは、独立して、炭素原子数1~6の部分又は全フッ素化アルキル基であり、nは0~5の整数である)であることが特に好ましい。
【0042】
(E)成分の具体例としては、ジフェニルヨードニウム・ヘキサフルオロアルセネート、ジ(4-クロロフェニル)ヨードニウム・ヘキサフルオロアルセネート、ジ(4-ブロムフェニル)ヨードニウム・ヘキサフルオロアルセネート、フェニル(4-メトキシフェニル)ヨードニウム・ヘキサフルオロアルセネート、4-メチルフェニル-4-(1-メチルエチル)フェニルヨードニウム・ヘキサフルオロホスフェート、4-メチルフェニル-4-(1-メチルエチル)フェニルヨードニウム・トリ(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート(例えば、サンアプロ社製のIK-1)、4-メチルフェニル-4-(1-メチルエチル)フェニルヨードニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(例えば、ローディア社製のPI-2074)、4-メチルフェニル-4-(2-メチルプロピル)フェニルヨードニウム・ヘキサフルオロホスフェート(例えば、BASF社製のIRGACURE(登録商標)250)、ビス(C10~14-アルキルフェニル)ヨードニウム・ヘキサフルオロホスフェート(例えば、和光純薬工業社製のWPI-113)、4-メチルフェニル-4-(1-メチルエチル)フェニルヨードニウム・ヘキサフルオロアンチモネート(例えば、和光純薬工業製のWPI-116等)等を挙げることができる。このようなヨードニウム塩は、例えばカチオン開始剤として、試薬供給業者から市販されており、容易に入手することができる。
【0043】
<(F)添加剤>
(F)添加剤は、(A)成分~(E)成分以外の成分であり、ポットライフ安定剤、重合禁止剤、溶剤、光増感剤、充填剤、カップリング剤(特に、シランカップリング剤)、強化材、着色剤、安定剤、増量剤、粘度調節剤、粘着付与剤、難燃剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、変色防止剤、抗菌剤、防黴剤、老化防止剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、平滑化剤、発泡剤、離型剤等が挙げられる。
【0044】
重合禁止剤としては、ヒドロキノン、パラメトキシフェノール、ジブチルヒドロキシトルエン等が挙げられる。
ポットライフ安定剤としては、SI助剤(4-ヒドロキシフェニルジメチルスルホニウムメチルサルファイト)、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が挙げられる。
上記した成分以外は、公知の成分から適宜選択できる。
【0045】
(F)成分は、それぞれ、1種又は2種以上の組み合わせであってよい。例えば、(E)成分は、1種以上のポットライフ安定剤と、1種以上の溶剤との組み合わせであってもよい。
【0046】
<組成物の調製方法>
熱カチオン重合性樹脂組成物は、各成分を混合することで製造することができる。なお、(B)成分~(F)成分が固体である場合は、各成分(特に、(A)成分)との相溶性の向上のために、溶剤に溶解させて、カチオン重合性樹脂組成物の製造に供されてもよい。
【0047】
〔硬化方法〕
熱カチオン重合性樹脂組成物は、熱を加えることにより硬化させることができる。また、熱カチオン重合性樹脂組成物は、紫外線等のエネルギー線を照射することにより仮硬化(仮固定)させた後に、熱を加えることによって本硬化(本固定)させてもよい。よって、熱カチオン重合性樹脂組成物は、熱硬化性組成物であってもよく、光及び熱硬化性組成物であってもよい。熱カチオン重合性樹脂組成物を、エネルギー線を照射することにより仮硬化させる場合は、熱カチオン重合性樹脂組成物は、光増感剤を含んでいてもよい。
【0048】
<成分の含有量>
熱カチオン重合性樹脂組成物における、各成分の含有量は以下の通りであることが好ましい。
(A)成分中のオキセタン樹脂の合計の含有量は、(A)成分の125重量部に対して、5~50重量部であることが好ましく、10~40重量部であることが特に好ましい。
(A)成分中のエポキシ樹脂及びオキセタン樹脂の合計の含有量は、(A)成分の100重量部に対して、60~100重量部であることが好ましく、80~100重量部であることが特に好ましい。また、(A)成分中の脂環式エポキシ樹脂及び芳香族エポキシ樹脂の合計の含有量は、(A)成分中のエポキシ樹脂の100重量部に対して、60~100重量部であることが好ましく、80~100重量部であることが特に好ましい。
(B)成分の含有量は、熱硬化性及びTgがより高まる観点から、(A)成分の125重量部に対して、0.1~10.0重量部であることが好ましく、0.5~5.0重量部であることが特に好ましい。
(C)成分の含有量は、アウトガス量の観点から、(A)成分の125重量部に対して、0.1~10.0重量部であることが好ましく、0.5~5.0重量部であることがより好ましく、1.0~3.0重量部であることが特に好ましい。また、(C)成分の含有量は、耐熱透明性の観点から、(A)成分の125重量部に対して、0.1~10.0重量部であることが好ましく、0.5~5.0重量部であることがより好ましい。
(D)成分の含有量は、Tgがより高まる観点から、(A)成分の125重量部に対して、0.01~1.5重量部以下であることが好ましく、0.03~1.0重量部であることが特に好ましい。
(E)成分の含有量は、高いTgと耐熱透明性とを効率よく両立させる観点から、(A)成分の125重量部に対して、5.0重量部以下であることが好ましく、3.0重量部以下であることがより好ましく、0.1~3.0重量部であることが特に好ましい。
(A)成分~(E)成分の合計は、熱カチオン重合性樹脂組成物の総量に対して、20~100重量部であることが好ましく、30~100重量部であることが好ましく、40~100重量部であることが特に好ましい。残余は、(F)成分である。
【0049】
[用途]
熱カチオン重合性樹脂組成物は、光学部品固定(例えばディスプレイ装置バックライトユニット組立、光ピックアップ組立)、カメラモジュール組立、レンズモジュール組立、光通信用モジュール組立、ハードディスク組立、及び電子部品の保護(例えば、モールド)に用いることができる。
【実施例0050】
以下に本発明の具体的な実施様態を明らかにするために実施例を示すが、本発明はここに示す実施例のみに限定されるわけではない。
【0051】
実施例及び比較例の各組成物を以下の原材料を使用して製造した。
1.(A)成分:カチオン硬化性樹脂
(1)エポキシ樹脂
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC社製、EPICLON EXA-850CRP)
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC社製、EPICLON N-655-EXP-S)
ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC社製、EPICLON HP-4032D)
脂環式エポキシ樹脂;(3,3’,4,4’-ジエポキシ)ビシクロヘキシル(ダイセル社製、セロキサイド8010)
(2)オキセタン樹脂
3-エチル-3-フェノキシメチルオキセタン(東亞合成社製、OXT-211(POX))
キシリレンビスオキセタン(東亞合成社製、OXT-121(XDO))
【0052】
2.(B)成分:ヨードニウムガレート塩
4-メチルフェニル-4-(1-メチルエチル)フェニルヨードニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ガレート(サンアプロ社製、IK-1FG)
【0053】
4.(C)成分:有機過酸化物
1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(日本油脂社製、パーオクタO)
t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(日本油脂社製、パーブチルO)
【0054】
5.(D)成分:熱カチオン重合開始剤
4-ヒドロキシフェニル-メチル-ベンジルスルホニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ガレート(サンアプロ社製、TA-100FG)
4-ヒドロキシフェニル-メチル-ベンジルスルホニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート(サンアプロ社製、TA-100)
【0055】
3.(E)成分:その他のヨードニウム塩
ビス[4-n-アルキル(C10~13)フェニル]ヨードニウム・ヘキサフルオロホスフェート(富士フィルム和光純薬社製、WPI-113)
4-メチルフェニル-4-(1-メチルエチル)フェニルヨードニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(ソルベイ(ローディア)社製、PI-2074)
4-メチルフェニル-4-(1-メチルエチル)フェニルヨードニウム・トリ(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート(サンアプロ社製、IK-1)
置換ジフェニルヨードニウム・トリ(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート(サンアプロ社製、IK-2)
【0056】
5.(F)成分:その他の成分
ポットライフ安定剤:4-ヒドロキシフェニルジメチルスルホニウムメチルサルファイト(三新化学社製、SI助剤)
重合禁止剤:ジブチルヒドロキシトルエン(関東化学社製、BHT)
溶剤:4-ブチロラクトン(関東化学社製)
溶剤:プロピレンカーボネート(関東化学社製)
【0057】
なお、一部の固体の熱カチオン開始剤、ヨードニウムガレート塩、その他のヨードニウム塩等はカチオン硬化性樹脂に溶解しにくいものがあるため、予め4-ブチロラクトン、プロピレンカーボネートに溶解してから樹脂と混合した。
【0058】
実施例1~11、比較例1~8
〔調製条件〕
熱カチオン重合性樹脂組成物を、表1及び表2に記載の配合に基づき、各成分を混合し、室温(25±3℃。以下同じ。)環境の下、撹拌機で透明になるまで撹拌し、調製した。
【0059】
〔評価条件〕
・熱硬化性(DSC)
アルミパンに樹脂を4±2mg測り取り、DSC(PerkinElmer社製 DSC4000)で昇温速度10℃/分で測定を行った。得られたピークから反応開始温度(ピークの立ち上がり温度)とピーク温度を読み取った。
以下の基準により熱硬化性を判断した。
◎(熱硬化性により優れる):反応開始温度が100℃以下である。
○(熱硬化性に優れる):反応開始温度が100℃超110℃以下である。
×(熱硬化性に劣る):反応開始温度が110℃超である。
【0060】
・ガラス転移温度(Tg)及び貯蔵弾性率
長さ50mm、幅10mm、厚さ0.5mmの型に注型し、100℃の熱風オーブン(エスペック社製、LC113)で60分間熱硬化を行い、硬化物試験片を作製した。得られた硬化物試験片を動的粘弾性測定装置(DMA、セイコーインスツル社製、DMS6100)にて、周波数1.0Hzで昇温させながら測定を行った。得られた結果の損失正接tanδにおけるピークトップ温度をTgとした。
Tgと同様の条件で硬化物試験片の作製及び動的粘弾性測定装置(DMA、セイコーインスツル社製、DMS6100)による測定を行った。得られた結果において25℃での貯蔵弾性率の値を抽出した。
以下の基準によりTgの高低を判断した。
◎(Tgがより高い):Tgが110℃以上である。
○(Tgが高い):Tgが90℃以上110℃未満である。
×(Tgが低い):Tgが90℃未満である。
【0061】
・着色評価(透過率)
スライドガラス上に樹脂を塗布してから、樹脂厚みが50μmとなるように、もう一枚のスライドガラスで貼り合わせ、100℃の熱風オーブン(エスペック社製、LC113)で60分間熱硬化を行い、硬化物試験片を作製した。得られた硬化物試験片を紫外可視分光光度計(日本分光社製 分光光度計 V-570型)で透過率測定を行い、400nmの値を抽出した。さらに硬化物試験片を120℃で140時間放置した後、同様に透過率測定を行い、400nmの値を抽出した。透過率変化は以下の計算式から求めた。
【0062】
【0063】
以下の基準により耐熱透明性を判断した。
◎(耐熱透明性がより優れる):透過率変化が-3%以上+3%以下である。
○(耐熱透明性が優れる):透過率変化が-10%以上-3%未満又は+3%超+10%以下である。
×(耐熱透明性が劣る):透過率変化の絶対値が10%超(即ち、透過率変化が-10%未満(-20%等)又は+10%超)である。
【0064】
・アウトガス量
アルミパンに樹脂を10±3mg測り取り、TGA(METTLER TOLED社製 TGA/DSC1)用いて秤量した(初期重量)。その後、100℃で60分保持した後に秤量した(加熱後重量)。以下の計算式から加熱減量率(重量変化率(%))を求め、アウトガス量とした。
【0065】
【0066】
以下の基準によりアウトガス量を判断した。
×(アウトガス量が低減されていない):アウトガス量が1.0%超である。
○(アウトガス量が低減されている):アウトガス量が0.5%超1.0%以下である。
◎(アウトガス量がより低減されている):アウトガス量が0.5%以下である。
【0067】
結果を以下の表にまとめた。
【0068】
【0069】
【0070】
実施例1~11の熱カチオン重合性樹脂組成物は、Tgが高く、アウトガス量が低減されており、耐熱透明性が優れており、かつ、熱硬化性が優れていた。
実施例1~3の比較により、(A)成分の125重量部に対して、(B)成分の含有量が特に好ましい範囲であると、Tgがより高かった。
実施例1、4~5の比較により、(A)成分の125重量部に対して、(C)成分の含有量が減少すると、アウトガス量がより低減されていた。
実施例1と実施例9~10との比較により、熱カチオン重合性樹脂組成物が、更に(D)成分を含む場合であっても、Tgがより高く、かつ、アウトガス量がより低減されていた。
比較例1~6は、(B)成分を含まないため、Tgが低いか、アウトガス量が低減されていないか、耐熱透明性が劣っていた。
比較例7は、(C)成分を含まないため、熱硬化性が劣っていた。
比較例8は、(B)成分を含まず、(D)熱カチオン重合開始剤を含むため、Tgが低かった。