(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131849
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】金車カバー
(51)【国際特許分類】
B66D 3/04 20060101AFI20230914BHJP
【FI】
B66D3/04 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022036832
(22)【出願日】2022-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】511208771
【氏名又は名称】竹村電気工事株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(72)【発明者】
【氏名】舞木 康顕
(72)【発明者】
【氏名】島崎 武巳
(72)【発明者】
【氏名】呉屋 純平
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 崇雄
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 啓夫
(72)【発明者】
【氏名】富澤 竜一
(57)【要約】
【課題】本発明は、ワイヤロープをかけ替える際の手間を軽減しつつ、ワイヤロープと金車の索輪との間への作業員の衣服等の巻き込みを防止することが可能な金車を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明にかかる金車カバー100の構成は、ワイヤロープ20のかかる金車10に取り付けられる金車カバー100であって、金車10の軸10aに対して異なる角度で配置され、金車10の表裏に配置された一対の側壁112・114を有し、金車10の軸10aに回転自在に取り付けられた2組のアーム110a・110bと、一対の側壁112・114を連結するピン120と、アーム110a・110bを回動させてピン120をワイヤロープ20に付勢するバネ130と、を備えていることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤロープのかかる金車に取り付けられる金車カバーであって、 前記金車の軸に対して異なる角度で配置され、前記金車の表裏に配置された一対の側壁を有し、前記金車の軸に回転自在に取り付けられた2組のアームと、
前記一対の側壁を連結するピンと、
前記アームを回動させて前記ピンを前記ワイヤロープに付勢するバネと、を備えていることを特徴とする金車カバー。
【請求項2】
前記一対の側壁には、前記ピンに対して前記バネと反対側の縁に、互いに近づくフランジが設けられていて、対向する前記フランジ同士の間には前記ワイヤロープが通る隙間が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の金車カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤロープのかかる金車に取り付けられる金車カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
送電線工事において、重量物を地表から鉄塔上部まで上昇させる等、搬送物を目的箇所まで運搬する際に金車が使用されている。詳細には金車は、ワイヤ溝が形成された索輪を有し、索輪の中心軸を吊り具によってつり下げることで自在に回転する。これにより、ワイヤロープを引き込んで搬送物を目的箇所まで上昇させ、またはワイヤロープを送り出して搬送物を目的箇所まで下降させる。
【0003】
金車の操作中において、回転している索輪に作業員の身体や衣服(以下、衣服等と称する)が接触すると、衣服等がワイヤロープと索輪とに巻き込まれてしまう。このような事態を防ぐために、例えば特許文献1に「安全カバーを備えた金車装置」が開示されている。特許文献1の金車装置における安全カバーは、「一部を金車の中心軸に回転自在に軸支されたアームと、該アームに固定されて前記金車に巻き掛けられたワイヤを包囲する包囲具と」を備えている。
【0004】
特許文献1の包囲具は、一対の本体部と、本体部に対して開閉自在なワイヤ着脱用の開閉片とを備えていて、それらによって形成される空間にワイヤが挿通される。そしてワイヤの角度が変化すると包囲具がワイヤに追従して移動し、ワイヤが包囲具によって包囲された状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
送電線工事ではワイヤロープのかけ替え頻度が非常に高い。すると特許文献1の金車装置では、ワイヤロープをかけ替える度に開閉片を開閉しなくてはならず、都度の開閉作業によって頻繁な手間が生じる。また特許文献1では開閉片を閉めた後に留め具を止める必要があるが、留め具を止め忘れると開閉片が開状態となり、包囲具がワイヤロープに追従しなくなる。すると、ワイヤロープが露出した状態となるため、ワイヤロープと索輪への作業員の衣服等の巻き込みを防ぐことができなくなってしまう。加えて特許文献1のように包囲具によってワイヤロープが包囲される構成であると作業員がワイヤロープを視認しづらくなるため、作業性の低下が懸念される。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑み、ワイヤロープをかけ替える際の手間を軽減しつつ、ワイヤロープと金車の索輪との間への作業員の衣服等の巻き込みを防止することが可能な金車を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明にかかる金車カバーの代表的な構成は、ワイヤロープのかかる金車に取り付けられる金車カバーであって、金車の軸に対して異なる角度で配置され、金車の表裏に配置された一対の側壁を有し、金車の軸に回転自在に取り付けられた2組のアームと、一対の側壁を連結するピンと、アームを回動させてピンをワイヤロープに付勢するバネと、を備えていることを特徴とする。
【0009】
上記一対の側壁には、ピンに対してバネと反対側の縁に、互いに近づくフランジが設けられていて、対向するフランジ同士の間にはワイヤロープが通る隙間が形成されているとよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ワイヤロープをかけ替える際の手間を軽減しつつ、ワイヤロープと金車の索輪との間への作業員の衣服等の巻き込みを防止することが可能な金車を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】金車および本実施形態にかかる金車カバーの全体斜視図である。
【
図2】金車および本実施形態にかかる金車カバーの正面図および側面図である。
【
図3】金車の動作時における金車カバーの状態を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0013】
図1は、金車10および本実施形態にかかる金車カバー100の全体斜視図である。
図1(a)は、金車10および金車カバー100を斜め上方から観察した状態を例示していて、
図1(b)は、金車10および金車カバー100を斜め下方から観察した状態を例示している。
図2は、金車10および本実施形態にかかる金車カバー100の正面図および側面図である。
図2(a)は、金車10および本実施形態にかかる金車カバー100の正面図であり、
図2(b)は、金車10および本実施形態にかかる金車カバー100の側面図である。
【0014】
図1(a)および(b)に示すように本実施形態の金車カバー100は、ワイヤロープ20(
図3参照)のかかる金車10に取り付けられ、金車10にかけられた部分のワイヤロープ20を覆う。詳細には金車10は、ワイヤロープ20がかかる溝12a(
図2(b)参照)が形成された索輪12と、索輪12を挟むように配置された一対の側板14を含んで構成される。
【0015】
図1および
図2に示すように本実施形態の金車カバー100は、2組のアーム110a・110bで構成される。2組のアーム110a・110bは、金車10の軸10a(厳密には索輪12の軸)に対して異なる角度で配置され、回転自在に金車10の軸10aに取り付けられている。
【0016】
2組のアーム110a・110bは、それぞれ金車10の表裏に配置された一対の側壁112・114を有している。一対の側壁112・114はピン120によって連結されている。また金車10の軸10aにはバネ130(ねじりバネ)が取り付けられていて、かかるバネ130はアーム110a・110bの側壁112に係止している。バネ130はアーム110a・110bを回動させて、ピン120をワイヤロープ20に付勢する。
【0017】
なお、本実施形態ではバネ130が図示手前側の側壁112に係止している構成を例示したが、これに限定するものではなく、図示奥側の側壁114に係止している構成としてもよい。また本実施形態では金車カバー100が1つのバネ130を備える構成を例示したが、これにおいても限定されず、図示手前側の側壁112および図示奥側の側壁114の両方にバネを備える構成とすることも可能である。
【0018】
図3は、金車10の動作時における金車カバー100の状態を例示する図である。
図3(a)は金車10の軸10aに対するワイヤロープ20の開き角がαの場合を例示していて、
図3(b)は金車10の軸10aに対するワイヤロープ20の開き角がβの場合を例示している。なお開き角は「α>β」とする。
【0019】
図3(a)に示すようにワイヤロープ20の開き角がαの場合(開き角が広い場合)、一対のアーム110a・110bはバネ130の付勢力によって回転方向D1に回動させられる。これにより、一対のアーム110a・110bに取り付けられているピン120が回転方向D2に回動し、ピン120がワイヤロープ20に当接した状態となる。
【0020】
図3(b)に示すようにワイヤロープ20の開き角がβの場合(開き角が狭い場合)においても、一対のアーム110a・110bはバネ130の付勢力によって回転方向D1に回動させられる。この場合も、一対のアーム110a・110bに取り付けられているピン120が回転方向D2に回動し、ピン120がワイヤロープ20に当接した状態となる。
【0021】
すなわち本実施形態の金車カバー100では、ワイヤロープ20の開き角が変化しても、一対のアーム110a・110bがバネ130の付勢力によってワイヤロープ20に追従するように回動する。そしてピン120は、一対のアーム110a・110bを介して受けるバネ130の付勢力によって付勢されて常にワイヤロープ20に当接した状態となる。これにより、ワイヤロープ20の開き角にかかわらず、金車10近傍ではワイヤロープ20が側壁112・114によって囲われた状態となる。したがって、ワイヤロープ20と金車10の索輪12との間への作業員の指や衣服等の巻き込みを防止すること可能となる。
【0022】
更に本実施形態の金車カバー100では、
図1(a)および(b)に示すように、一対の側壁112・114には、ピン120に対してバネ130と反対側の縁に、互いに近づくフランジ116・118が設けられている。そして対向するフランジ116・118同士の間には、ワイヤロープ20(
図3参照)が通る隙間Gが形成されている。
【0023】
かかる構成によれば、隙間Gを通してワイヤロープ20を金車カバー100内に配置可能となる。したがって本実施形態の金車カバー100では、ワイヤロープ20を金車10にかけ替える際に金車カバー100を着脱したり、開閉したりする必要がない。このため、ワイヤロープ20をかけ替える際の手間を軽減することができ、作業効率の向上を図ることが可能となる。またフランジ116・118が形成されているためワイヤロープ20と作業員の衣服等の接触をより効果的に防ぐことができ、且つ隙間Gからワイヤロープ20を目視で視認可能であるためワイヤロープ20の状態確認を良好に行うことができる。
【0024】
また本発明にかかる金車カバー100は、軸10aに取り付けるだけの簡単な構成であって、金車10そのものに特別な構造を必要としない。したがって既存の金車10や任意のメーカーの金車10に取り付けることが可能である。
【0025】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、ワイヤロープのかかる金車に取り付けられる金車カバーとして利用することができる。
【符号の説明】
【0027】
10…金車、10a…軸、12…索輪、12a…溝、14…側板、20…ワイヤロープ、100…金車カバー、110a…アーム、110b…アーム、112…側壁、114…側壁、116…フランジ、118…フランジ、120…ピン、130…バネ