(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131858
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】光学シートおよび光学部品
(51)【国際特許分類】
G02B 5/08 20060101AFI20230914BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20230914BHJP
【FI】
G02B5/08 A
B32B7/023
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022036845
(22)【出願日】2022-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100173428
【弁理士】
【氏名又は名称】藤谷 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】愛須 淳平
【テーマコード(参考)】
2H042
4F100
【Fターム(参考)】
2H042DA05
2H042DA07
2H042DA08
2H042DA11
2H042DA17
2H042DA21
2H042DB06
2H042DC02
2H042DE01
2H042DE08
4F100AA01E
4F100AK01A
4F100AK01D
4F100AK25C
4F100AK25E
4F100AK45A
4F100AK45D
4F100AK52C
4F100AK52E
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4F100CB00C
4F100CB00E
4F100EH66B
4F100JB13C
4F100JK06C
4F100JL11C
4F100JL11E
4F100JN06B
4F100JN08B
4F100JN18B
4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】熱履歴を経たとしても気泡の発生が的確に抑制または防止されていると言える光学シート、また、かかる光学シートを備える信頼性に優れた光学部品を提供すること。
【解決手段】本発明の光学シート10は、第1基材1と、ハーフミラー層3と、接着剤層5と、第2基材2とが、この順で積層された積層体で構成され、接着剤層5は、当該光学シートの縦150mm×横100mmの大きさの試験片を用意し、そして、試験片を、30℃、70%RH環境下に24hr放置し、その後、170℃、10minの条件で加熱処理を施した後に、平面視で見たとき、接着剤層5と、第2基材2との間に形成されている気泡は、面積が1mm
2以上のものの数が、1個以下であることを満足する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性を有する樹脂材料を主材料として構成される第1基材と、
前記第1基材に積層され、入射する光の一部を透過し、残部を反射させるハーフミラー層と、
前記樹脂材料を主材料として構成され、前記ハーフミラー層の前記第1基材と反対側に積層された第2基材と、
光透過性を有し、前記ハーフミラー層と前記第2基材との間に設けられ、前記ハーフミラー層と前記第2基材とを接合する接着剤層と、を備える積層体で構成され、
前記接着剤層は、下記要件Aを満足することを特徴とする光学シート。
要件A:当該光学シートの縦150mm×横100mmの大きさの試験片を用意し、そして、前記試験片を、30℃、70%RH環境下に24hr放置し、その後、170℃、10minの条件で加熱処理を施した後に、平面視で見たとき、前記接着剤層と、前記第2基材との間に形成されている気泡は、面積が1mm2以上のものの数が、1個以下であることを満足する。
【請求項2】
前記接着剤層は、ポリカーボネートで構成されるポリカーボネート基板の表面に、厚さ50μm、幅20mmの前記接着剤層を形成した後に、120℃の環境下で、前記接着剤層の一端を持ち、180°の方向にて300mm/分の速度で引き剥がしたときに測定されるピール強度を密着力A(120℃)が5N/20mm以上15N/20mm以下である請求項1に記載の光学シート。
【請求項3】
前記接着剤層は、主としてシリコーン系接着剤、アクリル系接着剤およびエポキシ系接着剤のうちの少なくとも1種を、接着剤として含有する請求項1または2に記載の光学シート。
【請求項4】
前記接着剤は、加熱硬化型のものである請求項3に記載の光学シート。
【請求項5】
前記接着剤層は、ポリカーボネートで構成されるポリカーボネート基板の表面に、厚さ50μm、幅20mmの前記接着剤層を形成した後に、120℃の環境下で、前記接着剤層の一端を持ち、180°の方向にて300mm/分の速度で引き剥がしたときに測定されるピール強度を密着力A(120℃)[N/20mm]とし、25℃の環境下で、前記接着剤層の一端を持ち、180°の方向にて300mm/分の速度で引き剥がしたときに測定されるピール強度を密着力A(25℃)[N/20mm]としたとき、0.50<A(120℃)/A(25℃)≦1.00なる関係を満足する請求項1ないし4のいずれか1項に記載の光学シート。
【請求項6】
前記接着剤層の厚さは、1μm以上300μm以下である請求項1ないし5のいずれか1項に記載の光学シート。
【請求項7】
前記樹脂材料は、ポリカーボネート系樹脂である請求項1ないし6のいずれか1項に記載の光学シート。
【請求項8】
前記ハーフミラー層は、高屈折率層と、前記高屈折率層よりも光屈折率が低い少なくとも1層の低屈折率層と、を有する請求項1ないし7のいずれか1項に記載の光学シート。
【請求項9】
前記第1基材と、前記ハーフミラー層との間に設けられ、アクリル樹脂、無機含有アクリル樹脂、オルガノシロキサンのうちの少なくとも1種を主材料として含む、前記ハーフミラー層との密着性を向上させる密着層を、さらに備える請求項1ないし8のいずれか1項に記載の光学シート。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1項に記載の光学シートを備えることを特徴とする光学部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学シートおよび光学部品に関する。
【背景技術】
【0002】
オートバイ、ゴルフカートおよびフォークリフト等の車両に用いられる風防板、さらには、ヘルメットおよびゴーグル等の頭部装着物に用いられる風防板(バイザー)としては、その軽量性、透明性、加工性、割れにくさ、および割れた場合の安全性等の観点から、各種プラスチック材料が使用されている。
【0003】
近年、この風防板として、その意匠性の向上を図ることを目的に、特定の波長領域の光を反射するミラー層や、模様を、最外層に備える光学シートを用いることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、かかる構成の風防板すなわち光学シートでは、前記ミラー層が、表面の部分で最外層として露出していることに起因して、摩耗等により損傷することがある。そして、この損傷により、光学シートの意匠性が低下したり、さらには光学シートの光学特性が低下したりするという問題があった。
【0005】
そのため、かかる問題を解決することを目的に、光学シートにおいて、前記ミラー層を、基材同士の間に配置された中間層として設けることが考えられる。しかしながら、この光学シートを風防板として用いる場合、光学シート(風防板)を、湾曲形状を有するものとして熱成形を施すことがあるが、この熱成形の際に、光学シートが熱履歴を経ることに起因して、光学シートに気泡が認められると言う新たな問題が生じているのが実情であった。
【0006】
また、このような光学シートは、前述のような風防板として用いられる場合の他、例えば、眼鏡、サングラスのようなアイウエアが備えるレンズの表面に接合して、このレンズに意匠性を付与するために用いられることがあるが、このように、光学シートをレンズの表面に接合する場合においても、光学シートが熱履歴を経ることになるため、前述した問題が同様に生じているのが実情であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、熱履歴を経たとしても気泡の発生が的確に抑制または防止されていると言える光学シート、また、かかる光学シートを備える信頼性に優れた光学部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的は、下記(1)~(10)に記載の本発明により達成される。
(1) 光透過性を有する樹脂材料を主材料として構成される第1基材と、
前記第1基材に積層され、入射する光の一部を透過し、残部を反射させるハーフミラー層と、
前記樹脂材料を主材料として構成され、前記ハーフミラー層の前記第1基材と反対側に積層された第2基材と、
光透過性を有し、前記ハーフミラー層と前記第2基材との間に設けられ、前記ハーフミラー層と前記第2基材とを接合する接着剤層と、を備える積層体で構成され、
前記接着剤層は、下記要件Aを満足することを特徴とする光学シート。
【0010】
要件A:当該光学シートの縦150mm×横100mmの大きさの試験片を用意し、そして、前記試験片を、30℃、70%RH環境下に24hr放置し、その後、170℃、10minの条件で加熱処理を施した後に、平面視で見たとき、前記接着剤層と、前記第2基材との間に形成されている気泡は、面積が1mm2以上のものの数が、1個以下であることを満足する。
【0011】
(2) 前記接着剤層は、ポリカーボネートで構成されるポリカーボネート基板の表面に、厚さ50μm、幅20mmの前記接着剤層を形成した後に、120℃の環境下で、前記接着剤層の一端を持ち、180°の方向にて300mm/分の速度で引き剥がしたときに測定されるピール強度を密着力A(120℃)が5N/20mm以上15N/20mm以下である上記(1)に記載の光学シート。
【0012】
(3) 前記接着剤層は、主としてシリコーン系接着剤、アクリル系接着剤およびエポキシ系接着剤のうちの少なくとも1種を、接着剤として含有する上記(1)または(2)に記載の光学シート。
(4) 前記接着剤は、加熱硬化型のものである上記(3)に記載の光学シート。
【0013】
(5) 前記接着剤層は、ポリカーボネートで構成されるポリカーボネート基板の表面に、厚さ50μm、幅20mmの前記接着剤層を形成した後に、120℃の環境下で、前記接着剤層の一端を持ち、180°の方向にて300mm/分の速度で引き剥がしたときに測定されるピール強度を密着力A(120℃)[N/20mm]とし、25℃の環境下で、前記接着剤層の一端を持ち、180°の方向にて300mm/分の速度で引き剥がしたときに測定されるピール強度を密着力A(25℃)[N/20mm]としたとき、0.50<A(120℃)/A(25℃)≦1.00なる関係を満足する上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の光学シート。
【0014】
(6) 前記接着剤層の厚さは、1μm以上300μm以下である上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の光学シート。
【0015】
(7) 前記樹脂材料は、ポリカーボネート系樹脂である上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の光学シート。
【0016】
(8) 前記ハーフミラー層は、高屈折率層と、前記高屈折率層よりも光屈折率が低い少なくとも1層の低屈折率層と、を有する上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の光学シート。
【0017】
(9) 前記第1基材と、前記ハーフミラー層との間に設けられ、アクリル樹脂、無機含有アクリル樹脂、オルガノシロキサンのうちの少なくとも1種を主材料として含む、前記ハーフミラー層との密着性を向上させる密着層を、さらに備える上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の光学シート。
【0018】
(10) 上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の光学シートを備えることを特徴とする光学部品。
【発明の効果】
【0019】
本発明の光学シートによれば、縦150mm×横100mmの大きさの試験片を用意し、そして、前記試験片を、30℃、70%RH環境下に24hr放置し、その後、170℃、10minの条件で加熱処理を施した後に、平面視で見たとき、前記接着剤層と、前記第2基材との間に形成されている気泡は、面積が1mm2以上のものの数が、1個以下であることを満足する。したがって、光学シートを、例えば、湾曲形状を有するものに熱成形するために熱履歴を経たものとしても、この光学シートにおいて、気泡の発生が的確に抑制または防止されていると言うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の光学シートの第1実施形態を示す縦断面図である。
【
図2】本発明の光学シートの第2実施形態を示す縦断面図である。
【
図3】本発明の光学シートの第3実施形態を示す縦断面図である。
【
図4】本発明の光学シートの第4実施形態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の光学シートおよび光学部品を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0022】
<光学シート>
本発明の光学シート10は、光透過性を有する樹脂材料を主材料として構成される第1基材1と、第1基材1の一方の面側に設けられ、光透過性を有する樹脂材料を主材料として構成される第2基材2と、第1基材1と第2基材2との間に設けられた、入射する光の一部を透過し、残部を反射させるハーフミラー層3と、光透過性を有し、ハーフミラー層3と第2基材2との間に設けられ、ハーフミラー層3と第2基材2とを接合する接着剤層5と、を備える積層体で構成される。
【0023】
そして、この光学シート10は、縦150mm×横100mmの大きさの光学シート10からなる試験片を用意し、そして、この試験片を、30℃、70%RH環境下に24hr放置し、その後、170℃、10minの条件で加熱処理を施した後に、平面視で見たとき、接着剤層5と、第2基材2との間に形成されている気泡は、面積が1mm2以上のものの数が、1個以下であることを満足する。したがって、この光学シート10を、例えば、湾曲形状を有するものに熱成形するために熱履歴を経たものとしても、この光学シート10において、気泡の発生が的確に抑制または防止されていると言うことができる。
【0024】
以下、この光学シート10の各実施形態について詳述する。なお、以下では、光学シート10を、オートバイやゴルフカートのような車両またはサンバイザーのような頭部装着物に設けられる風防板として用いる場合について、一例として説明する。
【0025】
<<第1実施形態>>
図1は、本発明の光学シートの第1実施形態を示す縦断面図である。
【0026】
なお、以下では、説明の都合上、
図1の上側を「上」、下側を「下」と言う。また、
図1中のx方向を「左右方向」、y方向を「前後方向」、z方向を「上下方向」と言う。さらに、本発明の光学シートを風防板として用いて車両または頭部装着物に設けた際に、人または物側の面を裏側の面と言い、その反対側の面を表側の面と言うことから、
図1では、上側の面を「裏側の面」、下側の面を「表側の面」と言うこともある。また、
図1では、光学シートの厚さ方向を誇張して図示しているため、実際の寸法とは大きく異なる。
【0027】
光学シート10(光学基板)は、本実施形態では、
図1に示すように、光透過性を有する第1基材1と、第1基材1の一方の面(表側の面)側に設けられた光透過性を有する第2基材2と、第1基材1と第2基材2との間に設けられたハーフミラー層3と、ハーフミラー層3と第1基材1(一方の基材)との間に設けられ、ハーフミラー層3との密着性の向上を図る第1密着層6と、ハーフミラー層3と第2基材2(他方の基材)との間に設けられ、ハーフミラー層3(高屈折率層31)と第2基材2とを接合する接着剤層5と、を備えている。
【0028】
光学シート10において、各層が配置される位置関係を上記のように設定することで、ハーフミラー層3は、光学シート10の表面に露出していない。すなわち、光学シート10の上面または下面で露出する最外層を構成していない。そのため、最外層を構成した場合のように、ハーフミラー層3に砂ほこりや飛び石、さらには雨等が衝突したり、ハーフミラー層3が他の部材等により摩耗されるのを確実に防止することができる。したがって、この衝突や摩擦により、ハーフミラー層3が傷つくのを確実に防止することができる。よって、光学シート10を、意匠性および光学特性が長期に亘って維持されたものとし得る。
【0029】
さらに、光学シート10は、本発明では、縦150mm×横100mmの大きさの光学シート10からなる試験片を用意し、そして、この試験片を、30℃、70%RH環境下に24hr放置し、その後、170℃、10minの条件で加熱処理を施した後に、平面視で見たとき、接着剤層5と、第2基材2との間に形成されている気泡は、面積が1mm2以上のものの数が、1個以下であることを満足する。したがって、この光学シート10を、例えば、湾曲形状を有するものに熱成形するために熱履歴を経たものとしても、この光学シート10において、気泡の発生が的確に抑制または防止されていると言うことができる。
【0030】
以下、この光学シート10を構成する各層について説明する。
第1基材1は、ハーフミラー層3(光学多層膜)を支持するとともに、第1基材1と、後述する第2基材2との間にハーフミラー層3を配置させる、光学シート10の最外層を構成し、ハーフミラー層3を保護する保護層としての機能を有している。
【0031】
光学シート10において、第1基材1と、後述する第2基材2とが、光学シート10の最外層を構成することで、ハーフミラー層3は、光学シート10の表面に露出していない中間層として配置されている。そのため、ハーフミラー層3が最外層を構成し、この光学シートを例えば風防板として用いた際に、このハーフミラー層3が露出している場合のように、ハーフミラー層3に砂ほこりや飛び石、さらには雨等が衝突したり、ハーフミラー層3が他の部材等により摩耗されるのを、確実に防止することができる。したがって、この衝突や摩擦により、ハーフミラー層3が傷つくのを確実に防止することができる。よって、光学シート10を、その意匠性および光学特性が長期に亘って維持されたものとし得る。
【0032】
この第1基材1は、光透過性を有する樹脂材料、すなわち透明樹脂(ベース樹脂)を主材料として含有し、これにより、第1基材1に、前記機能が付与されている。
【0033】
なお、本明細書中において、「主材料」とは、このものを含有する層(基材)を構成する構成材料のうち、50重量%以上含有する構成材料のことを言うこととする。
【0034】
この透明樹脂としては、特に限定されないが、例えば、熱可塑性樹脂が挙げられ、具体的には、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アセチルセルロース系樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、ポリカーボネート系樹脂またはポリアミド系樹脂であるのが好ましく、特にポリカーボネート系樹脂であるのが好ましい。ポリカーボネート系樹脂は、透明性(透光性)や剛性等の機械的強度に富み、さらに耐熱性も高い熱可塑性樹脂であるため、透明樹脂にポリカーボネート系樹脂を用いることで、第1基材1における透明性や第1基材1の耐衝撃性、耐熱性を向上させることができる。また、ポリカーボネート系樹脂は、加熱時にガスを比較的多量に発生する樹脂材料であることから、樹脂材料がポリカーボネート系樹脂で構成される際に、後に詳述する本発明が好適に適用される。
【0035】
このポリカーボネート系樹脂としては、各種の樹脂を用いることができるが、中でも、芳香族系ポリカーボネート系樹脂であることが好ましい。芳香族系ポリカーボネート系樹脂は、その主鎖に芳香族環を備えており、これにより、より優れた強度を有する第1基材1を得ることができる。
【0036】
この芳香族系ポリカーボネート系樹脂は、例えば、ビスフェノールとホスゲンとの界面重縮合反応、ビスフェノールとジフェニルカーボネートとのエステル交換反応等により合成される。
【0037】
ビスフェノールとしては、例えば、ビスフェノールAや、下記式(1A)に示すポリカーボネートの繰り返し単位の起源となるビスフェノール(変性ビスフェノール)等が挙げられる。
【0038】
【化1】
(式(1A)中、Xは、炭素数1~18のアルキル基、芳香族基または環状脂肪族基であり、RaおよびRbは、それぞれ独立して、炭素数1~12のアルキル基であり、mおよびnは、それぞれ0~4の整数であり、pは、繰り返し単位の数である。)
【0039】
なお、前記式(1A)に示すポリカーボネートの繰り返し単位の起源となるビスフェノールとしては、具体的には、例えば4,4’-(ペンタン-2,2-ジイル)ジフェノール、4,4’-(ペンタン-3,3-ジイル)ジフェノール、4,4’-(ブタン-2,2-ジイル)ジフェノール、1,1’-(シクロヘキサンジイル)ジフェノール、2-シクロヘキシル-1,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン、2,3-ビスシクロヘキシル-1,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1’-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン、2,2’-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0040】
特に、ポリカーボネート系樹脂としては、ビスフェノールに由来する骨格を有するビスフェノール型ポリカーボネート系樹脂を主成分とするのが好ましい。かかるビスフェノール型ポリカーボネート系樹脂を用いることにより、第1基材1は、さらに優れた強度を発揮する。
【0041】
また、第1基材1は、光透過性を有していれば、その色は、無色であっても、赤色、青色、黄色等、如何なる色であってもよい。
【0042】
これらの色の選択は、第1基材1に染料または顔料を含有させることにより可能になる。この染料としては、例えば、酸性染料、直接染料、反応性染料、および塩基性染料等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0043】
染料の具体例としては、例えば、C.I.アシッドイエロー 17,23,42,44,79,142、C.I.アシッドレッド 52,80,82,249,254,289、C.I.アシッドブルー 9,45,249、C.I.アシッドブラック 1,2,24,94、C.I.フードブラック 1,2、C.I.ダイレクトイエロー 1,12,24,33,50,55,58,86,132,142,144,173、C.I.ダイレクトレッド 1,4,9,80,81,225,227、C.I.ダイレクトブルー 1,2,15,71,86,87,98,165,199,202、C.I.ダイレクトブラック 19,38,51,71,154,168,171,195、C.I.リアクティブレッド 14,32,55,79,249、C.I.リアクティブブラック 3,4,35等が挙げられる。
【0044】
第1基材1は、必要に応じて、上述した、透明樹脂、染料または顔料の他に、さらに、酸化防止剤、フィラー、可塑剤、光安定剤、紫外線吸収剤、熱線吸収剤、難燃剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
【0045】
また、第1基材1の屈折率n1は、1.3以上1.8以下であるのが好ましく、1.4以上1.65以下であるのがより好ましい。第1基材1の屈折率n1を上記数値範囲とすることにより、入射する光の一部を透過し、残部を反射させるハーフミラー層3としての機能を阻害するのを、的確に抑制または防止することができる。
【0046】
第1基材1は、その平均厚さが好ましくは0.1mm以上10.0mm以下、より好ましくは0.3mm以上5.0mm以下に設定される。第1基材1の平均厚さがかかる範囲内に設定されることで、光学シート10の薄型化を図りつつ、光学シート10に撓みが生じるのを的確に抑制または防止することができる。
【0047】
第2基材2は、ハーフミラー層3(光学多層膜)を支持するとともに、第1基材1と第2基材2との間にハーフミラー層3を配置させる、光学シート10の最外層を構成し、ハーフミラー層3を保護する保護層としての機能を有している。
【0048】
光学シート10において、第2基材2が、光学シート10の最外層を構成することで、ハーフミラー層3は、光学シート10の表面に露出していない中間層として配置されている。そのため、ハーフミラー層3が最外層を構成し、この光学シートを風防板として用いた際に、このハーフミラー層3が露出している場合のように、ハーフミラー層3に砂ほこりや飛び石、さらには雨等が衝突したり、ハーフミラー層3が他の部材等により摩耗されるのを、確実に防止することができる。したがって、この衝突や摩擦により、ハーフミラー層3が傷つくのを確実に防止することができる。よって、光学シート10を、その意匠性および光学特性が長期に亘って維持されたものとし得る。
【0049】
また、第2基材2を構成する構成材料としては、第1基材1で挙げたのと同様のもので構成することができる。なお、第2基材2の構成材料と、第1基材1の構成材料とは、同一(同種)のものであってもよいし、異なるものであってもよい。
【0050】
また、第2基材2の屈折率n2は、第1基材1の屈折率n1と、同じであってもよく、異なっていてもよいが、1.3以上1.8以下であるのが好ましく、1.4以上1.65以下であるのがより好ましい。第2基材2の屈折率n2を上記数値範囲とすることにより、入射する光の一部を透過し、残部を反射させるハーフミラー層3としての機能を阻害するのを、的確に抑制または防止することができる。
【0051】
さらに、第2基材2は、その平均厚さが、第1基材1と、同じであってもよく、異なっていてもよいが、例えば、0.1mm以上10.0mm以下であるのが好ましく、0.3mm以上5.0mm以下であるのがより好ましい。第1基材1の平均厚さがかかる範囲内に設定されることで、光学シート10の薄型化を図りつつ、光学シート10に撓みが生じるのを的確に抑制または防止することができる。
【0052】
なお、第2基材2は、上記のような樹脂材料を主材料として構成された単層体である場合の他、例えば、樹脂材料を主材料として構成された層と、この層のハーフミラー層3側に接着剤層を介して積層された偏光板(偏光層)とを備える積層体であってもよい。
【0053】
ハーフミラー層3は、第1基材1と第2基材2との間に設けられている。このハーフミラー層3は、入射する光の一部を透過し、残部を反射させるとともに、特定の波長領域の光を選択的に反射するハーフミラー機能を有するものである。
【0054】
このハーフミラー層3は、
図1に示すように、高屈折率層31と、高屈折率層31よりも光屈折率(以下、単に「屈折率」と言うこともある。)が低い低屈折率層32とを有する積層体で構成されている。図示の構成では、表側(第2基材2側)から、高屈折率層31と低屈折率層32との順で積層されている。
【0055】
高屈折率層31および低屈折率層32は、例えば、抵抗加熱法、電子ビーム加熱法(EB法)等の真空蒸着等により成膜された蒸着膜であり、ハーフミラー層3はこれらの積層体で構成される。
【0056】
また、高屈折率層31および低屈折率層32の構成材料としては、例えば、SiO2、SiO、TiO2、TiO、Ti2O3、Ti2O5、Al2O3、TaO2、Ta2O5、NdO2、NbO、Nb2O3、NbO2、Nb2O5、CeO2、MgO、Y2O3、SnO2、WO3、HfO2、ZrO2、Sc2O3、CrO、Cr2O3、In2O3、La2O3、CaF2、MgF2、Na3AlF6、AlF3、BaF3、CeF3、CaF2、LaF2、LiF、Na5Al3F14、NdF3、YF3等の酸化物またはフッ化物や、In、Cr、Ti、Ni、Au、Cu、Sn、Zr、Al等の金属材料が挙げられる。
【0057】
高屈折率層31の構成材料は、上記のうち金属材料で構成する場合には、CrまたはZrで構成されるものであるのが好ましい。一方、低屈折率層32の構成材料は、上記のうち金属材料で構成する場合には、InまたはAlであるのが好ましい。これにより、高屈折率層31の屈折率を、低屈折率層32の屈折率よりも高くすることができる。そのため、ハーフミラー層3は、ハーフミラー機能を発揮する。さらに、ハーフミラー層3の曲げ性を高めることができる。そのため、ハーフミラー層3における、クラックの発生を的確に抑制または防止することができる。
【0058】
また、高屈折率層31の構成材料は、上記のうち金属酸化物で構成する場合には、Ta2O5、HfO2、ZrO2、Y2O3、Sc2O3、CeO2であるのが好ましく、CeO2であるのがさらに好ましい。この場合、低屈折率層32の構成材料は、In、Alであるのが好ましい。一方、低屈折率層32の構成材料は、上記のうち金属酸化物で構成する場合には、SiO、SiO2、MgF2、CaF2、Na3AlF6、Na5Al3F14であるのが好ましく、SiO2であるのがさらに好ましい。この場合、高屈折率層31の構成材料は、In、Alであるのが好ましい。これにより、高屈折率層31の屈折率を、低屈折率層32の屈折率よりも高くすることができる。そのため、ハーフミラー層3は、ハーフミラー機能を発揮する。
【0059】
ハーフミラー層3を、かかる構成をなすものとすることで、光学シート10の下側(表側の面)から入射した光の一部が低屈折率層32を透過し、光学シート10の上側(裏側の面)から出射される。そのため、光学シート10の上側(裏面側)に位置する人により、この光学シート10を介して、光学シート10の下側(表側)を視認することができる。また、入射する光の残部が、
図1中の白抜き矢印のように、低屈折率層32を反射することから、光学シート10を下面側(表面側)から見たとき、この低屈折率層32は、ミラー層としての機能も発揮する。
【0060】
また、高屈折率層31が特定の波長領域の光を選択的に反射するミラー層としての機能を発揮することにより、
図1中の実線矢印のように、光学シート10の下側(表側の面)から入射した光のうち、特定の波長領域の光が、低屈折率層32と高屈折率層31との界面、さらに接着剤層5と高屈折率層31との界面において、選択的に反射する。そのため、光学シート10を下面側(表面側)すなわち第2基材2側では、低屈折率層32で反射された前記光の残部と、高屈折率層31で反射された特定の波長領域の光とが第3者により視認されることから、結果的に、高屈折率層31において選択的に反射された特定の波長領域の光に基づく色が視認される。
【0061】
なお、ハーフミラー層3は、上記のような高屈折率層31と低屈折率層32との積層体で構成する場合の他、例えば、Au、Cu、In等を主材料として構成される金属膜からなる単層体で構成することもできる。かかる構成をなす単層体で構成することで、ハーフミラー層3の厚さの薄膜化を図ることができる。ただし、ハーフミラー層3を、上述したような積層体すなわち複数層(多層膜)で構成することで様々な反射色を再現することができ、デザイン性に優れたものとし得る。
【0062】
また、高屈折率層31および低屈折率層32の平均厚さ(物理厚さ)は、それぞれ、同じであってもよく、異なっていてもよいが、1nm以上200nm以下であるのが好ましく、1.5nm以上150nm以下であるのがより好ましい。
【0063】
高屈折率層31および低屈折率層32の厚さ(光学厚さ:500nmの波長に対して)は、0.002/4λnm以上0.4/4λnm以下であるのが好ましく、0.003/4λnm以上0.3/4λnm以下であるのがより好ましい。
【0064】
高屈折率層31および低屈折率層32をこのような厚さとすることにより、ハーフミラー層3に、ハーフミラーとしての機能を確実に付与することができる。
【0065】
また、ハーフミラー層3の総厚(高屈折率層31および低屈折率層32の厚さの和)は、5nm以上500nm以下であるのが好ましく、7.5nm以上450nm以下であるのがより好ましく、10nm以上400nm以下であるのがさらに好ましい。これにより、ハーフミラー層3に、ハーフミラーとしての機能を確実に付与することができる。また、ハーフミラー層3を曲げ変形させた際に、ハーフミラー層3にクラックが生じてしまうのを的確に抑制または防止することができる。
【0066】
なお、ハーフミラー層3の総厚とは、ハーフミラー層3の平均厚さのことを言う。この平均厚さは、例えば、基材の断面を露出させSEMまたはTEMを用いて求めた値とすることができる。
【0067】
また、高屈折率層31と低屈折率層32との屈折率差(光屈折率差)は、0.2以上2.0以下であるのが好ましく、0.3以上1.8以下であるのがより好ましい。これにより、本発明の効果をより顕著に得られる。
【0068】
第1密着層6は、ハーフミラー層3と第1基材1(一方の基材)との間に設けられ、ハーフミラー層3との密着性の向上を図る機能を有するプライマー層(コート層)である。これにより、第1密着層6を介したハーフミラー層3と第1基材1との接合強度の向上が図られる。
【0069】
第1密着層6の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、アクリル樹脂、無機含有アクリル樹脂、オルガノシロキサン等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、アクリル樹脂であるのが好ましい。これにより、第1密着層6としての機能を確実に発揮させることができる。
【0070】
第1密着層6の厚さは、0.1μm以上100μm以下であるのが好ましく、1μm以上20μm以下であるのがより好ましい。これにより、前記効果を確実に発揮させることができる。
【0071】
なお、第1密着層6は、光学シート10の用途によって、ハーフミラー層3と第1基材1との間において、より優れた接合強度を必要としない場合には、その形成を省略することもできる。
【0072】
接着剤層5は、第2基材2(他方の基材)と、ハーフミラー層3(高屈折率層31)との間に設けられ、第2基材2とハーフミラー層3(高屈折率層31)とを接合する機能を有する。
【0073】
ここで、本発明では、光学シート10は、縦150mm×横100mmの大きさの光学シート10からなる試験片を用意し、そして、この試験片を、30℃、70%RH環境下に24hr放置し、その後、170℃、10minの条件で加熱処理を施した後に、平面視で見たとき、接着剤層5と、第2基材2との間に形成されている気泡は、面積が1mm2以上のものの数が、1個以下であることを満足する。
【0074】
前述の通り、従来の光学シートでは、ハーフミラー層を、2つの基材(第1基材と第2基材)同士の間に配置された中間層として設けると、以下に示すような問題が生じているのが実情であった。すなわち、光学シートを風防板として用いる場合、光学シート(風防板)を、湾曲形状を有するものとして熱成形を施すと、この熱成形の際に、光学シートが熱履歴を経ることに起因して、光学シートに気泡が認められると言う問題があった。
【0075】
かかる問題点について、本発明者が検討を行った結果、この気泡の発生が接着剤層と第2基材との間に認められ、さらに、この気泡は、樹脂材料を主材料として含有する第2基材の加熱により起因して、第2基材から発生したガスに由来することが判ってきた。
【0076】
そして、本発明者による更なる検討により、加熱時においても優れた密着力を発揮する接着剤層、すなわち優れた耐熱性を有する接着剤層とすることで、第2基材からガスが発生したとしても、接着剤層と第2基材との間における気泡の発生を的確に抑制または防止し得ることが判った。
【0077】
具体的には、接着剤層5の第2基材2に対する密着力は、ポリカーボネートで構成されるポリカーボネート基板の表面に、厚さ50μm、幅20mmの接着剤層5を形成した後に、120℃の環境下で、接着剤層5の一端を持ち、180°の方向にて300mm/分の速度で引き剥がしたときに測定されるピール強度を密着力A(120℃)[N/20mm]とし、25℃の環境下で、接着剤層5の一端を持ち、180°の方向にて300mm/分の速度で引き剥がしたときに測定されるピール強度を密着力A(25℃)[N/20mm]としたとき、好ましくは0.50<A(120℃)/A(25℃)≦1.00なる関係を満足し、より好ましくは0.60<A(120℃)/A(25℃)≦0.80なる関係を満足する。かかる関係を満足する密着力を有する接着剤層5を選択することで、接着剤層5と第2基材2との間における気泡の発生を的確に抑制または防止することができ、具体的には、前述の通り、接着剤層5と第2基材2との間に形成されている気泡のうち面積が1mm2以上のものの数を、1個以下に設定し得ることを、本発明者は、見出し本発明を完成するに至った。
【0078】
また、密着力A(120℃)は、5N/20mm以上15N/20mm以下であることが好ましく、6N/20mm以上15N/20mm以下であることがより好ましい。これにより、接着剤層5を、加熱時においても優れた密着力を発揮するものであると言うことができる。
【0079】
なお、前記気泡の数は、面積が1mm2以上のものの数が1個以下であればよいが、1mm2以上4mm2以下のものの数が1個以下であり、かつ、4mm2以上のものの数が0個であることが好ましい。これにより、光学シート10において、気泡の発生がより的確に抑制または防止されていると言うことができる。
【0080】
この接着剤層5は、前述のように、加熱時においても優れた密着力を発揮し、かつ、光透過性を有する接着剤により構成されており、この接着剤としては、特に限定されないが、例えば、シリコーン系、エポキシ系、アクリル系、シリル化ウレタン樹脂系、ウレタン樹脂系、ポリオレフィン系、塩素化ポリオレフィン系、シアノアクリレート系、ゴム系、ポリエステル系、ポリイミド系、フェノール系等の接着剤が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、中でも、シリコーン系、エポキシ系およびアクリル系の接着剤であることが好ましい。シリコーン系、エポキシ系およびアクリル系の接着剤は、加熱時においても優れた密着力を発揮する接着剤であることから0.50<A(120℃)/A(25℃)≦1.00なる関係を、比較的容易に満足させることができる。
【0081】
また、接着剤は、湿気硬化型接着剤、紫外線硬化型接着剤および加熱硬化型接着剤等が挙げられるが、中でも、加熱硬化型接着剤であることが好ましい。加熱硬化型接着剤であれば、接着剤層5の加熱により、接着剤層5においてより均一に接着剤を硬化させることができる。そのため、接着剤層5と第2基材2との接着面において、接着ムラを生じさせることなく、より均一な密着力で接着剤層5と第2基材2とを接合することができる。よって、面積が1mm2以上の前記気泡の数を、より確実に1個以下に設定することができる。なお、加熱硬化型接着剤としては、例えば、1液加熱エポキシ接着剤、2液加熱硬化型エポキシ接着剤、2液加熱硬化型シリコーン接着剤等が挙げられる。
【0082】
以上のことを考慮すると、接着剤層5に含まれる接着剤としては、特に、2液加熱硬化型シリコーン接着剤が好ましく用いられる。なお、接着剤に由来する気泡(ガス)の発生を抑制すると言う観点からは、付加重合反応型接着剤が好ましく用いられる。そのため、接着剤層5においてより均一に接着剤を硬化させる成形性をも考慮すると、付加重合反応型シリコーン接着剤がさらに好ましい。
【0083】
また、接着剤層5の屈折率n5は、1.3以上1.7以下であるのが好ましく、1.4以上1.65以下であるのがより好ましい。
【0084】
接着剤層5の厚さは、特に限定されず、例えば、1μm以上300μm以下であるのが好ましく、10μm以上300μm以下であるのがより好ましく、20μm以上100μm以下であるのがさらに好ましい。これにより、この接着剤層5を介して、第2基材2とハーフミラー層3とを確実に接合することができる。
【0085】
なお、光学シート10の総厚は、特に限定されないが、1.0mm以上10.0mm以下であるのが好ましく、1.2mm以上5.0mm以下であるのがより好ましい。これにより、光学シート10に優れた強度を付与しつつ、光学シート10を、湾曲形状をなす部分を有するものに成形する場合には、この光学シート10に優れた熱成形性を付与することができる。
【0086】
かかる構成をなす、本実施形態の光学シート10は、例えば、以下のようにして製造することができる。
【0087】
(光学シートの製造方法)
[1]まず、第1基材1を用意する。
第1基材1の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、カレンダー法、インフレーション押出し法、Tダイ押出し法のような押出成形法、湿式キャスティング法等の一般的な成形方法が挙げられる。
【0088】
[2]次に、第1基材1の表面に第1密着層6を形成する。
この第1密着層6は、例えば、第1基材1に、第1密着層6の構成材料を含むワニス状の液状材料を、塗布または散布した後、乾燥させて第1密着層6を形成することにより得ることができる。
【0089】
また、第1基材1への液状材料の塗布または散布は、例えば、ダイコート、カーテンダイコート、グラビアコート、コンマコート、バーコートおよびリップコート等の方法を用いて行うことができる。
【0090】
[3]次に、第1密着層6の第1基材1と反対側の表面に、低屈折率層32と高屈折率層31とをこの順で積層することで、ハーフミラー層3を形成する。
【0091】
低屈折率層32と高屈折率層31は、第1基材1の下側に設けられた第1密着層6に対して、この順で、例えば、抵抗加熱法、電子ビーム加熱法(EB法)の真空蒸着法、スパッタリング法のような物理的気相成長法(PVD法)を用いて成膜することができ、ハーフミラー層3はこれらの積層体で構成される。
【0092】
[4]次に、第2基材2を用意する。
第2基材2の製造方法としては、特に限定されないが、第1基材1の製造方法として挙げたのと、同様の方法を用いることができる。
【0093】
[5]次に、前記工程[3]で形成されたハーフミラー層3(低屈折率層32)の第1密着層6と反対側の表面に、接着剤を塗布し、この接着剤に対して、前記工程[4]で用意した第2基材2を貼り合わせた状態で、接着剤を固化させることにより、ハーフミラー層3と第2基材2との間に、これら同士を接合する接着剤層5を形成する。
【0094】
ハーフミラー層3(低屈折率層32)への接着剤の塗布は、例えば、ダイコート、カーテンダイコート、グラビアコート、コンマコート、バーコートおよびリップコート等の方法を用いて行うことができる。
【0095】
以上のような前記工程[1]~前記工程[5]を経ることにより、第1基材1と、第1密着層6と、ハーフミラー層3と、接着剤層5と、第2基材2とが、この順で積層された積層体で構成された、第1実施形態の光学シート10を製造することができる。
【0096】
また、得られた光学シート10を、湾曲形状を有するものに熱成形することで、所定の形状に成形された風防板を製造することができる。
【0097】
<第2実施形態>
また、光学シート10は、前記第1実施形態で説明した構成をなすものの場合の他、以下に示すような構成をなすものであってもよい。
【0098】
図2は、本発明の光学シートの第2実施形態を示す縦断面図である。
なお、以下では、説明の都合上、
図2の上側を「上」、下側を「下」と言う。また、
図2中のx方向を「左右方向」、y方向を「前後方向」、z方向を「上下方向」と言う。さらに、上述の通り、本発明の光学シートを風防板として用いて車両または頭部装着物に設けた際に、人または物側の面を裏側の面と言い、その反対側の面を表側の面と言うことから、
図2では、
図1とは逆に、上側の面を「表側の面」、下側の面を「裏側の面」と言うこともある。また、
図2では、光学シートの厚さ方向を誇張して図示しているため、実際の寸法とは大きく異なる。
【0099】
以下、この図を参照して本発明の光学シートの第2実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0100】
本実施形態の光学シート10は、ハーフミラー層3における、低屈折率層32と高屈折率層31との積層順が異なること以外は前記第1実施形態の光学シート10と同様である。
【0101】
すなわち、
図2に示すように、本実施形態では、光学シート10は、低屈折率層32と高屈折率層31とが積層されたハーフミラー層3を、高屈折率層31を第1基材1側とし、低屈折率層32を第2基材2側として、第1密着層6と接着剤層5との間に介挿されている。
【0102】
換言すれば、ハーフミラー層3は、本実施形態では、表側となる上側(第1基材1)から、低屈折率層32と高屈折率層31とが、この順に接触して積層された光学多層膜である。
【0103】
ハーフミラー層3を、かかる構成をなすものとすることで、光学シート10の上側(表側の面)から入射した光の一部が低屈折率層32を透過し、光学シート10の下側(裏側の面)から出射される。そのため、光学シート10の上側(裏面側)に位置する人により、この光学シート10を介して、光学シート10の上側(表側)を視認することができる。また、入射する光の残部が、
図2中の白抜き矢印のように、低屈折率層32を反射することから、光学シート10を上面側(表面側)から見たとき、この低屈折率層32は、ミラー層としての機能も発揮する。
【0104】
また、高屈折率層31が特定の波長領域の光を選択的に反射するミラー層としての機能を発揮することにより、
図2中の実線矢印のように、光学シート10の上側(表側の面)から入射した光のうち、特定の波長領域の光が、低屈折率層32と高屈折率層31との界面、さらに第1密着層6と高屈折率層31との界面において、選択的に反射する。そのため、光学シート10を上面側(表面側)すなわち第1基材1側では、低屈折率層32で反射された前記光の残部と、高屈折率層31で反射された特定の波長領域の光とが第3者により視認されることから、結果的に、高屈折率層31において選択的に反射された特定の波長領域の光に基づく色が視認される。
【0105】
このような第2実施形態の光学シート10によっても、前記第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0106】
<第3実施形態>
また、光学シート10は、前記第1実施形態で説明した構成をなすものの場合の他、以下に示すような構成をなすものであってもよい。
【0107】
図3は、本発明の光学シートの第3実施形態を示す縦断面図である。
なお、以下では、説明の都合上、
図3の上側を「上」、下側を「下」と言う。また、
図3中のx方向を「左右方向」、y方向を「前後方向」、z方向を「上下方向」と言う。さらに、上述の通り、本発明の光学シートを風防板として用いて車両または頭部装着物に設けた際に、人または物側の面を裏側の面と言い、その反対側の面を表側の面と言うことから、
図3では、上側の面を「裏側の面」、下側の面を「表側の面」と言うこともある。さらに、
図3では、光学シートの厚さ方向を誇張して図示しているため、実際の寸法とは大きく異なる。
【0108】
以下、この図を参照して本発明の光学シートの第3実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0109】
本実施形態の光学シート10は、高屈折率層31と接着剤層5との間に、さらに、第2密着層4が形成されていること以外は前記第1実施形態の光学シート10と同様である。
【0110】
すなわち、
図3に示すように、本実施形態では、光学シート10は、高屈折率層31と接着剤層5との間において、第2密着層4が形成され、その上面側において高屈折率層31が、下面側において接着剤層5が接合されている。
【0111】
この第2密着層4は、高屈折率層31(ハーフミラー層3)と接着剤層5との間に設けることで、ハーフミラー層3の接着剤層5との密着性の向上を図る機能を有する層である。これにより、第2密着層4および接着剤層5を介して、第2基材2とハーフミラー層3との間に、優れた密着力を付与することができる。
【0112】
このような第2密着層4を光学シート10が有することで、光学シート10を、例えば、湾曲形状をなすように熱成形したとしても、接着剤層5を介して第2密着層4と第2基材2との間で剥離が生じるのを的確に抑制または防止することができる。
【0113】
この第2密着層4は、特に限定されないが、SiO2およびAl2O3のうちの少なくとも1種を主材料として構成される。このように第2密着層4を主としてSiO2およびAl2O3のうちの少なくとも1種で構成されるものとすることで、接着剤層5を介した第2密着層4と第2基材2との間における密着力を優れた大きさのものに設定することができる。そのため、接着剤層5を介して第2密着層4と第2基材2との間で剥離が生じるのを的確に抑制または防止することができる。
【0114】
また、第2密着層4は、その厚さが1nm以上200nm以下であることが好ましく、1nm以上15nm以下であることがより好ましい。第2密着層4の厚さを、かかる範囲内に設定することにより、第2密着層4としての機能を確実に付与することができる。
【0115】
このような第3実施形態の光学シート10によっても、前記第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0116】
<第4実施形態>
また、光学シート10は、前記第1実施形態で説明した構成をなすものの場合の他、以下に示すような構成をなすものであってもよい。
【0117】
図4は、本発明の光学シートの第4実施形態を示す縦断面図である。
なお、以下では、説明の都合上、
図4の上側を「上」、下側を「下」と言う。また、
図4中のx方向を「左右方向」、y方向を「前後方向」、z方向を「上下方向」と言う。さらに、上述の通り、本発明の光学シートを風防板として用いて車両または頭部装着物に設けた際に、人または物側の面を裏側の面と言い、その反対側の面を表側の面と言うことから、
図4では、上側の面を「裏側の面」、下側の面を「表側の面」と言うこともある。さらに、
図4では、光学シートの厚さ方向を誇張して図示しているため、実際の寸法とは大きく異なる。
【0118】
以下、この図を参照して本発明の光学シートの第4実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0119】
本実施形態の光学シート10は、最外層として、第1基材1および第2基材2をそれぞれ被覆する被覆層7(ハードコート層)をさらに有すること以外は前記第1実施形態の光学シート10と同様である。
【0120】
すなわち、
図4に示すように、本実施形態では、光学シート10は、第2基材2の一方の面側(表面側)に、最外層として第2基材2を被覆する被覆層7をさらに有している。また、第1基材1の他方の面側(裏面側)に、最外層として第1基材1を被覆する被覆層7をさらに有している。換言すれば、本実施形態の光学シート10では、被覆層7、第2基材2、接着剤層5、ハーフミラー層3、第1密着層6、第1基材1および被覆層7が、光学シート10の表側の面から裏側の面に向かって、この順で積層された積層体で構成されている。
【0121】
光学シート10の用途によって、第1基材1および第2基材2を最外層として配置させることなく保護する必要がある場合、第1基材1および第2基材2をそれぞれ被覆する被覆層7を、本実施形態のように設ける構成とすることで、第1基材1および第2基材2が傷つくのを確実に防止することができる。
【0122】
この被覆層7(コート層)は、樹脂組成物を用いて形成された、いわゆるハードコート層であり、この樹脂組成物としては、例えば、シリコン変性(メタ)アクリル樹脂を含むものが好ましく用いられる。そこで、以下では、このシリコン変性(メタ)アクリル樹脂を含む樹脂組成物について説明する。
【0123】
(シリコン変性(メタ)アクリル樹脂)
シリコン変性(メタ)アクリル樹脂(シロキサン変性(メタ)アクリレート)は、(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリルモノマーに由来する構成単位が繰り返された主鎖と、この主鎖に連結し、シロキサン結合を有する構成単位が繰り返された繰り返し体(副鎖)とを有するポリマー(プレポリマー)である。
【0124】
すなわち、主鎖としての(メタ)アクリル系化合物と、副鎖としてのシロキサン結合(-Si-O-Si-)を有する化合物とが連結したポリマー(プレポリマー)である。
【0125】
シリコン変性(メタ)アクリル樹脂は、前記主鎖を有することにより、被覆層7に優れた透明性を付与し、また、前記シロキサン結合を有する構成単位が繰り返された繰り返し体を有することにより、被覆層7に優れた耐擦傷性および耐候性を付与すること、すなわち被覆層7としての機能を確実に付与することができる。
【0126】
シリコン変性(メタ)アクリル樹脂の主鎖としては、具体的には、下記式(1)および式(2)の少なくとも一方の(メタ)アクリロイル基を有するモノマーに由来する構成単位の繰り返しで構成されているものが挙げられ、これら双方のモノマーに由来する構成単位の繰り返しを備えるものとして、下記式(12)で示す化学式を有するものが挙げられる。
【0127】
【化2】
(式(1)中、nは、1以上の整数を示し、R1は、独立して炭化水素基、有機基、または水素原子を示し、R0は、独立して炭化水素基または水素原子を示す。)
【0128】
【化3】
(式(2)中、mは、1以上の整数を示し、R2は、独立して炭化水素基、有機基、または水素原子を示し、R0は、独立して炭化水素基または水素原子を示す。)
【0129】
【化4】
(式(12)中、m、nは、1以上の整数を示し、R1、R2、R3は、それぞれ独立して炭化水素基、有機基、または水素原子を示し、R0は、独立して炭化水素基または水素原子を示す。)
【0130】
また、かかる構成の主鎖の少なくとも1つの末端または側鎖には、シロキサン結合を有する構成単位が繰り返された繰り返し体(副鎖)が結合している。
【0131】
シロキサン結合は、結合力が高いため、シリコン変性(メタ)アクリル樹脂が、シロキサン結合を有する構成単位が繰り返された繰り返し体を有することにより、耐熱性、耐候性がより良好な被覆層7を得ることができる。また、シロキサン結合の結合力が高いことで、硬質な被覆層7を得ることができるため、光学シート10の耐擦傷性をさらに増大させることができる。
【0132】
シロキサン結合を有する構成単位が繰り返された繰り返し体としては、具体的には、下記式(3)および式(4)の少なくとも一方のシロキサン結合を有する構成単位の繰り返しで構成されているものが挙げられる。
【0133】
【化5】
(式(3)中、X
1は、炭化水素基または水酸基を示す。)
【0134】
【化6】
(式(4)中、X
2は、炭化水素基または水酸基を示し、X
3は、炭化水素基または水酸基から水素が離脱した2価の基を示す。)
【0135】
前記シロキサン結合を有する構成単位が繰り返された繰り返し体としては、具体的には、ポリオルガノシロキサンを有するものや、シルセスキオキサンを有するものが挙げられる。なお、シルセスキオキサンの構造としては、ランダム構造、籠型構造、ラダー構造(はしご型構造)等、いかなる構造であってもよい。
【0136】
前記炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等のアルキル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、ナフチル基、2-メチルフェニル基等のアリール基、ベンジル基、ジフェニルメチル基、ナフチルメチル基等のアラルキル基、ビフェニル基等が挙げられる。
【0137】
また、シロキサン結合を有する構成単位が繰り返された繰り返し体の末端または側鎖には、不飽和二重結合が導入されていることが好ましい。これにより、樹脂組成物中に後述するウレタン(メタ)アクリレートが含まれる場合、このウレタン(メタ)アクリレートが有する(メタ)アクリロイル基と結合して、シリコン変性(メタ)アクリル樹脂とウレタン(メタ)アクリレートとのネットワークを形成することができる。そのため、被覆層7において、シリコン変性(メタ)アクリル樹脂とウレタン(メタ)アクリレートとがより均一に分散し、その結果、被覆層7は、前述した特性をその全体にわたってより均一に発現することができる。
【0138】
前記樹脂組成物中におけるシリコン変性(メタ)アクリル樹脂の含有量は、特に限定されないが、前記樹脂組成物100質量部中、5質量部以上45質量部以下であることが好ましく、11質量部以上28質量部以下であることがより好ましい。前記樹脂組成物中におけるシリコン変性(メタ)アクリル樹脂の含有量が前記下限値未満であると、前記樹脂組成物により得られた被覆層7の硬さが低下する場合がある。また、前記樹脂組成物中におけるシリコン変性(メタ)アクリル樹脂の含有量が前記上限値を超えると、前記樹脂組成物中におけるシリコン変性(メタ)アクリル樹脂以外の材料の含有量が相対的に減ってしまい、前記樹脂組成物を用いて形成された被覆層7の撓み性が低下してしまう可能性がある。
【0139】
以上のような構成を有するシリコン変性(メタ)アクリル樹脂としては、例えば、下記式(5)、式(6)で表される化合物が挙げられる。
【0140】
【化7】
(式(5)中、Meは、メチル基を示し、m、n、pは、それぞれ1以上の整数を示す。)
【0141】
【化8】
(式(6)中、Meは、メチル基を示し、m、n、pは、それぞれ1以上の整数を示し、R1、R2、R3、R4は、それぞれ独立して炭化水素基、有機基、または水素原子を示す。)
【0142】
(ウレタン(メタ)アクリレート)
また、樹脂組成物は、さらに、ウレタン(メタ)アクリレートを含むものであることが好ましい。
【0143】
シリコン変性(メタ)アクリル樹脂が備える、シロキサン結合を有する構成単位が繰り返された繰り返し体の末端または側鎖に不飽和二重結合が導入されている場合、樹脂組成物中にウレタン(メタ)アクリレートが含まれることで、このウレタン(メタ)アクリレートが有する(メタ)アクリロイル基と不飽和二重結合とが結合して、シリコン変性(メタ)アクリル樹脂とウレタン(メタ)アクリレートとのネットワークが形成される。その結果、樹脂組成物が硬化して硬化物が得られることにより、この硬化物で構成される被覆層7が形成される。なお、この(メタ)アクリロイル基と不飽和二重結合とが結合することによる樹脂組成物の硬化は、樹脂組成物を紫外線のようなエネルギー線を照射することにより硬化する光硬化により行われる。
【0144】
以上のようにして形成される被覆層7において、ウレタン(メタ)アクリレートが含まれることにより、被覆層7の柔軟性を向上させることができ、光学シート10を、その一部または全部を、湾曲形状を有するものに適用するため、光学シート10を熱曲げする際に、被覆層7の表面におけるクラックの発生を的確に抑制し得ることから、光学シート10に優れた熱成形性を付与することができる。
【0145】
さらに、上述したシリコン変性(メタ)アクリル樹脂と、このウレタン(メタ)アクリレートとの組み合わせとすることにより、優れた耐擦傷性と熱成形性とを高度に両立した光学シート10を得ることができる。
【0146】
このウレタン(メタ)アクリレートは、ウレタン結合(-OCONH-)を有する主鎖と、この主鎖に連結した(メタ)アクリロイル基とを有する化合物のことを言う。また、ウレタン(メタ)アクリレートは、モノマーまたはオリゴマーである。
【0147】
かかる構成のウレタン(メタ)アクリレートは、ウレタン結合を有するため、柔軟性に優れた化合物である。このため、被覆層7がウレタン(メタ)アクリレートを含むことで、被覆層7にさらなる撓み性(柔軟さ)を付与することができる。そのため、光学シート10を湾曲形状に成形した際の、曲げ部におけるクラックの発生を的確に抑制することができる。
【0148】
なお、このウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリオールとジイソシアネートとを反応させて得られるイソシアネート化合物と、水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーとの反応生成物として得ることができる。
【0149】
また、ポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートジオールが挙げられる。
【0150】
また、ポリエステルポリオールは、例えば、ジオールとジカルボン酸もしくはジカルボン酸クロライドとを重縮合反応させたり、ジオールまたはジカルボン酸をエステル化して、エステル交換反応させたりすることにより得ることができる。ジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、セバシン酸、アゼライン酸、マレイン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸等が挙げられ、ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール等が挙げられる。
【0151】
さらに、ポリカーボネートジオールとしては、例えば、ジオールと、炭酸エステルとの反応物が挙げられ、ジオールとしては、1,4-ブタンジオール、1,6-へキサンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、ポリオキシエチレングリコール等が用いられ、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0152】
また、水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーの例として、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシブチルアクリレート、3-ヒドロキシブチルアクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート等が挙げられる。
【0153】
また、樹脂組成物中におけるウレタン(メタ)アクリレートの含有量は、特に限定されないが、前記樹脂組成物100質量部中、10質量部以上75質量部以下であることが好ましく、17質量部以上50質量部以下であることがより好ましい。樹脂組成物中におけるウレタン(メタ)アクリレートの含有量が、前記下限値未満であると、ウレタン(メタ)アクリレートの種類によっては、被覆層7の柔軟性が乏しくなるおそれがある。また、樹脂組成物中におけるウレタン(メタ)アクリレートの含有量が前記上限値を超えると、ウレタン(メタ)アクリレートの種類によっては、樹脂組成物中におけるウレタン(メタ)アクリレート以外の材料の含有量が相対的に減少し、光学シート10の耐擦傷性が低下するおそれがある。
【0154】
((メタ)アクリレートモノマー)
また、樹脂組成物は、さらに(メタ)アクリレートモノマーを含むものであることが好ましい。
【0155】
シリコン変性(メタ)アクリル樹脂が備える、シロキサン結合を有する構成単位が繰り返された繰り返し体の末端または側鎖に不飽和二重結合が導入されている場合、樹脂組成物中に(メタ)アクリレートモノマーが含まれることで、この(メタ)アクリレートモノマーが有する(メタ)アクリロイル基と不飽和二重結合とが結合して、シリコン変性(メタ)アクリル樹脂と(メタ)アクリレートモノマーとのネットワークが形成され、その結果、樹脂組成物が硬化することで被覆層7が形成される。
【0156】
(メタ)アクリレートモノマーとしては、特に限定されないが、例えば、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールトリアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、エトキシ化水添ビスフェノールAジアクリレート、エトキシ化シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシブチルアクリレート、3-ヒドロキシブチルアクリレート、イソボロニルアクリレート等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのなかでも、光学シート10の耐候性を向上させる観点から、芳香族を含まない樹脂であることが好ましい。
【0157】
樹脂組成物中における(メタ)アクリレートモノマーの含有量は、特に限定されないが、前記樹脂組成物100質量部中、15質量部以上55質量部以下であることが好ましく、27質量部以上55質量部以下であることがより好ましい。
【0158】
(イソシアネート)
また、樹脂組成物は、さらにイソシアネートを含むものであることが好ましい。
【0159】
これにより、樹脂組成物中において、イソシアネートは、シリコン変性(メタ)アクリル樹脂を分子間で結合(架橋)させる架橋剤として機能する。すなわち、架橋剤としてのイソシアネートが含まれることで、シリコン変性(メタ)アクリル樹脂が備える、(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリルモノマーに由来する構成単位が繰り返された主鎖が備える水酸基と、イソシアネートが有するイソシアネート基とが反応してウレタン結合で構成された架橋構造が形成され、その結果、樹脂組成物の硬化物で構成される被覆層7が形成される。なお、この水酸基とイソシアネート基とが結合することによる樹脂組成物の硬化は、樹脂組成物を加熱することにより硬化する熱硬化により行われる。
【0160】
以上のようにして形成される被覆層7において、水酸基とイソシアネート基とが結合することにより形成されるネットワークを構築することができるため、被覆層7の耐擦傷性および耐候性をより向上させることができる。
【0161】
樹脂組成物中におけるイソシアネートの含有量は、特に限定されないが、前記樹脂組成物100質量部中、3質量部以上40質量部以下であることが好ましく、10質量部以上25質量部以下であることがより好ましい。
【0162】
(その他の材料)
さらに、樹脂組成物には、上述した各種材料以外に、その他の材料が含まれていてもよい。
【0163】
その他の材料としては、特に限定されないが、例えば、前記シリコン変性(メタ)アクリル樹脂以外の樹脂材料、光重合開始剤、紫外線吸収剤、着色剤、増感剤、安定剤、界面活性剤、酸化防止剤、還元防止剤、帯電防止剤、表面調整剤、親水化添加剤、充填材および溶剤等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0164】
以上のような樹脂組成物の硬化物で構成される被覆層7の平均厚さは、特に限定されないが、1μm以上40μm以下であることが好ましく、2μm以上30μm以下であることがより好ましく、5μm以上20μm以下であることがさらに好ましい。被覆層7の厚さが前記下限値未満であると、光学シート10の耐候性が低下する場合がある。一方、被覆層7の厚さが前記上限値を超えると、光学シート10を、その少なくとも一部が湾曲形状に成形された成形部を備える構成をなすものとする場合、前記成形部の成形の際に、成形部においてクラックが発生するおそれがある。
【0165】
このような第4実施形態の光学シート10によっても、前記第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0166】
なお、上述した各実施形態の光学シート10は、湾曲形状を有するものに熱成形することで、車両または頭部装着物に設けられる風防板として適用可能であるが、車両とは、人、または物を乗せて移動や作業をする乗り物全般を指す。例えば、乗用車、トラック、船舶、鉄道車両、飛行機、バス、オートバイ、自転車、フォークリフト、工事現場等で所定の作業をする作業車、ゴルフカート、玩具用車両、遊園地の各種乗物等を含むものである。
【0167】
また、車両用風防板とは、車両に乗った人または物と、外部との間に配され、車両に乗った人または物と外部とを、少なくとも一方向において遮る板状の構造体を指す。例えば、オートバイや自転車の風防(スクリーン)、その他車両が備えるセンサーや表示装置のような各種装置を保護する窓材等を含むものである。
【0168】
さらに、この光学シート10は、車両用風防板の他、例えば、ヘルメットおよびゴーグル等の頭部装着物に用いられる風防板(バイザー、レンズ)等にも、適用することができる。
【0169】
したがって、車両および頭部装着物を、風防板として、かかる光学シート10を備えるものとすることで、優れた信頼性を有するものとし得る。
【0170】
また、この光学シート10は、風防板として用いる場合の他、眼鏡、サングラスのようなアイウエアが備えるレンズの表面に接合された保護シートとして用いることができ、前記レンズの成形の際に、光学シート10が熱履歴を経ることとなるが、光学シート10に本発明を適用することで、光学シート10における気泡の発生を的確に抑制または防止することができる。したがって、光学部品としての前記レンズを、本発明の光学シート10を備えるものとすることで、レンズを、優れた信頼性を発揮するものとし得る。
【0171】
さらに、かかる構成をなすレンズは、サングラスや眼鏡等のレンズとして使用され、この場合、車内のダッシュボードに載置された場合のように、過酷な条件下に曝されることが想定されるが、このような場合であっても、光学シート10に本発明を適用することで、光学シート10における気泡の発生を的確に抑制または防止することができる。
【0172】
以上、本発明の光学シートおよび光学部品を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、例えば、光学シートを構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0173】
なお、本発明の光学シートは、前記第1~第4実施形態で示した、任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
【実施例0174】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。
1.光学シートの形成
(実施例1)
まず、100質量部のビスフェノールA型ポリカーボネート(三菱エンジニアプラスチックス社製、「E2000FN」)を押し出し成形することで、2枚の基材(厚さ0.5mm、2.5mm)を得て、これらを第1基材1および第2基材2とした。
【0175】
次いで、第1基材1の一方の面上に、アクリル樹脂を塗布した後に乾燥させることで第1密着層6(厚さ8μm)を形成した。
【0176】
次いで、第1密着層6上に、蒸着源の種類を適宜変更した真空蒸着法を用いて、Alで構成される低屈折率層32(厚さ20nm)と、CeO2で構成される高屈折率層31(厚さ20nm)とを、この順で積層することにより得た。
【0177】
一方で、第2基材2の一方の面上に、硬化後に形成される接着剤層5の厚さが、100μmになるように、2液加熱硬化型シリコーン接着剤(信越化学工業社製、「KER-2937A,B」)で構成される塗膜を塗工した。
【0178】
そして、第1基材1を含む積層体と、第2基材2を含む積層体とを、高屈折率層31と塗膜とが接触するように貼り合わせ、その後、温度100℃、時間1.0hrの条件で一次加熱した後に、温度120℃、時間2.0hrの条件で二次加熱することで塗膜を硬化させ、さらに、温度25℃、湿度50%RH環境下で7日間、塗膜を養生することで接着剤層5を形成した。
【0179】
次いで、第2基材2の他方の面上に、シリコン変性(メタ)アクリル樹脂を含むアクリル樹脂を塗布した後に乾燥させることで被覆層7(厚さ8μm)を形成して、実施例1の光学シート10を得た。
【0180】
(実施例2)
第2基材2の一方の面上に、接着剤層5を形成するために用いた接着剤として、2液加熱硬化型シリコーン接着剤に代えて、2液加熱硬化型エポキシ接着剤(コニシ社製、「エポクリヤー」)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例2の光学シート10を得た。
【0181】
(比較例1)
第2基材2の一方の面上に、接着剤層5を形成するために用いた接着剤として、2液加熱硬化型シリコーン接着剤に代えて、1液湿気硬化型シリコーン接着剤(コニシ社製、「SL230C」)を用い、温度25℃、湿度50%RH環境下で7日間、塗膜を養生することで接着剤層5を形成したこと以外は、実施例1と同様にして比較例1の光学シート10を得た。
【0182】
(比較例2)
第2基材2の一方の面上に、接着剤層5を形成するために用いた接着剤として、2液加熱硬化型シリコーン接着剤に代えて、2液ウレタン接着剤(三井化学社製、「A-670A,B」)を用い、50℃環境下で72時間加熱し塗膜を硬化させ、さらに、温度25℃、湿度50%RH環境下で7日間、塗膜を養生することで接着剤層5を形成したこと以外は、実施例1と同様にして比較例2の光学シート10を得た。
【0183】
2.評価
各実施例および各比較例の光学シートを、以下の方法で評価した。
<1>接着剤層の密着力Aの測定
実施例1で用意した第1基材1(ポリカーボネート基板)の表面に、それぞれ、各実施例および各比較例で用いた接着剤で構成される厚さ100μm、幅20mmの接着剤層を形成した。その後、JIS G 3469に準拠して、120℃の環境下で、前記接着剤層の一端を持ち、180°の方向にて300mm/分の速度で引き剥がしたときに測定されるピール強度を密着力A(120℃)[N/20mm]を、引張試験機(島津製作所社製、「AG-10kNXPlus」)を用いて測定した。
【0184】
また、25℃の環境下で、前記接着剤層の一端を持ち、180°の方向にて300mm/分の速度で引き剥がしたときに測定されるピール強度を密着力A(25℃)[N/20mm]を、前記引張試験機を用いて測定した。
【0185】
そして、測定された密着力A(120℃)および密着力A(25℃)に基づいて、これらの比の関係を示す関係式A(120℃)/A(25℃)を求めた。
【0186】
<2>気泡の視認性評価
各実施例および各比較例の光学シートについて、それぞれ、縦150mm×横100mmの大きさに裁断することで試験片を用意した。次いで、各試験片を、30℃、70%RH環境下に24hr放置し、その後、170℃、10minの条件で加熱処理を施した。そして、各試験片を平面視で見たときに、接着剤層5と、第2基材2との間に形成されている気泡を観察し、その気泡のうち、面積が4mm2以上のものの数に基づいて、次のように評価した。
【0187】
A:面積が4mm2以上の気泡は0個、かつ
1mm2以上4mm2未満の気泡の数が0個である。
B:面積が4mm2以上の気泡は0個、かつ
1mm2以上4mm2未満の気泡の数が1個である。
C:面積が4mm2以上の気泡は0個、かつ
1mm2以上4mm2未満の気泡の数が2個以上である。
D:面積が4mm2以上の気泡は1個、かつ
1mm2以上4mm2未満の気泡の数が1個、または、
面積が4m2以上の気泡の数が2個以上である。
【0188】
<3>熱成形性評価
各実施例および各比較例の光学シートについて、それぞれ、幅60mm、長さ120mmの試験片を用意した。次いで、各試験片を170℃設定の熱風循環型オーブンで10分間加熱し軟化させ、取り出した直後に、第1基材1を外側にして各半径の木製円柱にネル布を介して添わせ、試験片が室温付近に冷却されるまでそのままに保つことで単曲面成形を行い、その後、接着剤層5と第2基材2との間におけるクラックの有無を観察し、次のように評価した。
【0189】
A:半径25mmの木型で熱成形したとき、前記クラックが認められない。
B:半径30mmの木型で熱成形したとき、前記クラックが認められない。
C:半径40mmの木型で熱成形したとき、前記クラックが認められない。
D:半径50mmの木型で熱成形したとき、前記クラックが認められる。
【0190】
以上のようにして得られた各実施例および各比較例の光学シートにおける評価結果を、それぞれ、下記の表1に示す。
【0191】
【0192】
表1に示したように、各実施例における光学シートでは、縦150mm×横100mmの大きさの試験片に対して、前記加熱処理を施した後に、接着剤層と、第2基材との間に形成されている気泡のうち、面積が1mm2以上のものの数が、1個以下であることを満足する結果を示したのに対して、各比較例における光学シートでは、面積が1mm2以上のものの数が、2個以上となる結果を示した。したがって、各実施例における光学シートを、例えば、湾曲形状を有するものに熱成形するために熱履歴を経たものとしても、各実施例の光学シートにおいては、気泡の発生が的確に抑制または防止されていると言えることが明らかとなった。