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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131887
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   F21S 43/20 20180101AFI20230914BHJP
   F21W 103/00 20180101ALN20230914BHJP
   F21W 103/20 20180101ALN20230914BHJP
   F21W 103/55 20180101ALN20230914BHJP
   F21W 102/30 20180101ALN20230914BHJP
   F21W 103/10 20180101ALN20230914BHJP
【FI】
F21S43/20
F21W103:00
F21W103:20
F21W103:55
F21W102:30
F21W103:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022036894
(22)【出願日】2022-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100081433
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 章夫
(72)【発明者】
【氏名】秋山 京平
(72)【発明者】
【氏名】高橋 祐貴
(72)【発明者】
【氏名】片岡 拓海
(72)【発明者】
【氏名】戸塚 貴丈
(57)【要約】
【課題】光源の光出射面が最適な方向に向けられていない場合においても、要求される配光を実現することが可能なインナーレンズを備えた車両用灯具を提供する。
【解決手段】光を出射する光源1と、光源1から出射された光を透過させるとともに偏向する光学系2としてインナーレンズ4を備える。インナーレンズ4は光源1からの光が入射される入光側レンズ41と、入光側レンズ41から出射された光が入射される出光側レンズ42を備える。入光側レンズ41と出光側レンズ42との間には空隙が存在し、入光側レンズ41は入射された光を第1の方向に偏向して出射する偏向ステップ411,412を備え、出光側レンズ42は入射された光をさらに第1の方向に偏向して出射する偏向ステップ421を備える。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を出射する光源と、当該光源から出射された光を透過させるとともに偏向するインナーレンズを備えており、前記インナーレンズは前記光源からの光が入射される入光側レンズと、当該入光側レンズから出射された光が入射される出光側レンズを備え、前記入光側レンズと前記出光側レンズとの間には空隙が存在し、前記入光側レンズは入射された光を第1の方向に偏向して出射する偏向ステップを備え、前記出光側レンズは入射された光をさらに第1の方向に偏向して出射する偏向ステップを備えることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記入光側レンズと前記出光側レンズは細長い板状に形成されており、各レンズの長さ方向の少なくとも一方の端部において端板により連結され、各レンズの長さ方向に沿った側辺部において側板により連結されている請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記入光側レンズと前記端板は鈍角で交わるように連結され、前記出光側レンズと前記端板は鋭角で交わるように連結される請求項2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記偏向ステップは、水平断面が鋸歯状の屈折ステップで構成される請求項1ないし3のいずれかに記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記光源は基板に搭載された複数の発光素子で構成され、前記入光側レンズは一部の発光素子には対向配置されておらず、当該一部の発光素子には出光側レンズが対向配置されている請求項1ないし4のいずれかに記載の車両用灯具。
【請求項6】
前記出光側レンズは前記一部の光源から出射された光を前記第1の方向と異なる第2の方向に偏向する偏向ステップを備える請求項5に記載の車両用灯具。
【請求項7】
前記インナーレンズは第2インナーレンズとして構成されており、前記光源と当該第2インナーレンズとの間に、光源から出射された光を平行光束に制御する第1インナーレンズを備え、前記第2インナーレンズとアウターレンズとの間に、第2インナーレンズから出射される光を発散ないし拡散させる第3インナーレンズを備える請求項1ないし6のいずれかに記載の車両用灯具。
【請求項8】
前記車両用灯具は、車両に装備されたときに、前記光源は発光面が車両の前後方向に対して水平方向に傾斜された方向に向けられる請求項1ないし7のいずれかに記載の車両用灯具。
【請求項9】
前記インナーレンズは前記光源から出射した光を車両の車幅方向の内側方向である前記第1の方向と、当該第1の方向と異なる方向に向けて偏向する構成である請求項8に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車等の車両に装備して好適な車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用の灯具として、LED(発光ダイオード)等の光源から出射した光を所要の配光に制御するための光学系としてインナーレンズを備えた灯具が提案されている。特許文献1には、所要の空隙を介して配置された第1レンズ部と第2レンズ部を備え、これら第1レンズ部と第2レンズ部を接続板部で接続した構成のインナーレンズ、すなわち中空構造のインナーレンズが提案されている。このインナーレンズによれば、中実構造のレンズ、すなわち第1レンズ部と第2レンズ部との間に空隙を有していないレンズに比較して、レンズの軽量化が実現できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-112065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、自動車用の灯具では、自動車の車体に配設する際のスペース上の要求から光源の配設位置、特に光源から光を出射する発光面等の光出射面の向きに制約を受けることがあり、要求される配光を満たすために光出射面を最適な方向に向けることができない場合がある。このような場合には、光出射面から出射された光線ないし光線束(多数の光線群)の方向をインナーレンズにより偏向制御することが要求される。例えば、インナーレンズに屈折ステップを形成し、この屈折ステップにより光線束を偏向させるように構成した灯具が考えられる。
【0005】
このような灯具において、インナーレンズにおける光線束の偏向角度が増大すると、これに伴ってインナーレンズの偏向手段、すなわちインナーレンズに形成する屈折ステップの光屈折面の傾斜角を増大する必要がある。しかし、通常のインナーレンズは透光性樹脂の成型によって形成しているため、傾斜角の大きな屈折ステップを成型すると、成型時における「ひけ」により、高精度の屈折ステップを形成することが難しくなり、そのために要求される偏向制御ないし配光制御を実現することは難しくなる。
【0006】
本発明の目的は、光源の光出射面が最適な方向に向けられていない場合においても、要求される配光を実現することが可能なインナーレンズを備えた車両用灯具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、光を出射する光源と、当該光源から出射された光を透過させるとともに偏向するインナーレンズを備えており、インナーレンズは光源からの光が入射される入光側レンズと、この入光側レンズから出射された光が入射される出光側レンズを備える。入光側レンズと出光側レンズとの間には空隙が存在し、入光側レンズは入射された光を第1の方向に偏向して出射する偏向ステップを備え、出光側レンズは入射された光をさらに第1の方向に偏向して出射する偏向ステップを備える。
【0008】
本発明の好ましい形態は、入光側レンズと出光側レンズは細長い板状に形成されており、各レンズの長さ方向の一方の端部において端板により連結され、各レンズの長さ方向に沿った側辺部において側板により連結されている。入光側レンズと端板は鈍角で交わるように連結され、出光側レンズと端板は鋭角で交わるように連結されることが好ましい。
【0009】
また、本発明の好ましい形態は、光源は基板に搭載された複数の発光素子で構成され、入光側レンズは一部の発光素子には対向配置されておらず、一部の発光素子には出光側レンズが対向配置されている。その上で、出光側レンズは一部の光源から出射された光を第1の方向と異なる第2の方向に偏向する偏向ステップを備える。さらに、インナーレンズは第2インナーレンズとして構成されており、光源と第2インナーレンズとの間に、光源から出射された光を平行光束に制御する第1インナーレンズを備え、第2インナーレンズとアウターレンズとの間に、第2インナーレンズから出射される光を発散ないし拡散させる第3インナーレンズを備えることが好ましい。
【0010】
本発明の車両用灯具の一つの形態は、車両に装備されたときに、例えば、光源は発光面が車両の前後方向に対して水平方向に傾斜された方向に向けられる。この場合において、インナーレンズは光源から出射した光を車幅方向の内側方向である第1の方向に偏向する構成とすることが好ましい。さらには、この第1の方向と異なる方向に向けて偏向する構成とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、インナーレンズの入光側レンズと出光側レンズのそれぞれにおいて光源の光を偏向することができる。これにより、光源の発光面(光出射面)が最適な方向に向けられていない場合においても、要求される配光を満たす方向に光を偏向することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明を適用した自動車とリアランプを斜め後方から見た斜視図。
図2】外側ランプの概略の部分分解斜視図。
図3図1のIII-III線に沿った水平断面図。
図4】第1インナーレンズの一部の斜視図。
図5】第2インナーレンズの外観斜視図であり、(a)は一部を破断して斜め上方から見た図、(b)は斜め下方から見た図。
図6図5(a)のA部の拡大図。
図7】光線束の光路を示す模式平面図。
図8】光線束の光路を示す模式側面図。
図9】TLユニットの配光を示す自動車の概略平面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の車両用灯具として、自動車CARの車体の左右後部に配設されたコンビネーション構造のリアランプR-RL,L-RLに適用された実施形態の概略斜視図である。左右のリアランプR-RL,L-RLは、車体側に配設された外側ランプoRLと、トランクリッド側に配設された内側ランプiRLで構成されている。本発明はこの外側ランプoRLに適用されている。すなわち、外側ランプoRLは、図1に一部を破断した拡大図に示すように、外側テールランプユニットoTLUと、ターンシグナルランプユニットTSLUが配設されている。なお、本発明との関連が少ないので符号を付しての説明は省略するが、内側ランプiRLには内側テールランプユニットとバックアップランプユニットが配設されている。
【0014】
図2は前記右リアランプR-RLの外側ランプoRLの概略の部分分解斜視図であり、図3図1のIII-III線に沿った水平断面図である。なお、以降の説明において、前後方向、左右方向は自動車の前後方向、左右方向に基づいている。また、後述する光線束の出射方向及び偏向方向については、自動車の車幅方向の中央に向かう方向を車幅内方向と称し、反対の車幅方向の外側に向かう方向を車幅外方向と称する。したがって、図2及び図3の外側ランプoRLにおいて、右方向が車幅外方向で左方向が車幅内方向になる。
【0015】
前記外側ランプoRLは、一部を開口した容器状のランプボディ101と、このランプボディ101の開口に装着されたアウターカバー(アウターレンズ)102とでランプハウジング100が構成されている。ランプボディ101は車体の後部から右側部に向けて延在する所謂回り込み形状とされており、当該ランプボディ101の背面側には自動車CARのトランクルームが存在する。そのため、ランプボディ101の内底面は自動車CARの前後方向に対して所要の角度で傾斜されるとともに、開口から内底面までの内部の深さは浅く形成されている。また、ランプボディ101の開口は外側テールランプユニットoTLUに要求される配光、すなわち自動車CARの後方から側方に向けた所要の角度領域に光を照射することができるように、後方から側方向に向けた領域が開口されている。アウターカバー102は、無色透明な透光部材で構成されており、車体の後面から右側面の曲面形状に沿った曲面に形成されている。
【0016】
ランプハウジング100内には、前記したように外側テールランプユニットoTLUとターンシグナルランプユニットTSLUが配設されている。また、ランプハウジング100内の外側テールランプユニットoTLUとターンシグナルランプユニットTALUが配設されていない領域には、図1に示したエクステンション103と称する疑似リフレクターが配設されている。このエクステンション103により、アウターカバー102を透してランプハウジング100の内部が露見されることが防止され、外側ランプoRLの外観上の見栄えが高められている。
【0017】
前記外側テールランプユニット(以下、TLユニットと称する)oTLUは、図2において分解して示すように、光源1と光学系2を備えており、光源1で発光した赤色の光を光学系3において所要の配光となるように制御し、制御した光を、アウターカバー102を透して出射させる構成である。
【0018】
光源1は、半導体発光素子、ここではそれぞれ赤色光を発光する複数個のLED(発光ダイオード)11を備えている。複数個のLED11は光源基板10の表面に一列に並んで搭載されており、各LED11の光出射面、すなわち発光面は当該光源基板10の表面と同一方向に向けられている。これらのLED11は光源基板10に構成されている給電回路(図示せず)を通して所要の電力が供給されて発光されるようになっている。
【0019】
前記光源基板10は、搭載されている複数個のLED11が水平方向に並ぶように、その裏面が略鉛直に向けられた状態でランプボディ101の内底面に固定支持されている。また、この光源基板10は、図3に示すように、その表面が自動車CARの車幅外方向で、かつ後方に対して所要の角度で傾斜した状態で配置されている。したがって、各LED11の発光面の中心において当該発光面に垂直な軸を発光主軸Oxと定義すると、各LED11の発光面は、発光主軸Oxが自動車CARの前後方向及び左右方向に対して車幅外方向に向けて傾斜された状態で配設されている。
【0020】
前記光学系3はLED11の発光面側、すなわち光源基板10からアウターカバー102に向けて配列された第1インナーレンズ3、第2インナーレンズ4、及び第3のインナーレンズ5を備えている。各インナーレンズ3,4,5は無色の透光性部材、ここでは無色透明な樹脂で形成されている。これらのインナーレンズ3,4,5はいずれも、図には表れない支持部材によってランプボディ101に支持されている。なお、光源1と光学系2はそれぞれ個別にランプホディ101に支持されてもよいが、光源1と光学系2がサブアッシーされて一体のユニットとして構成され、このユニットがランプボディ101に支持される構成であってもよい。
【0021】
第1インナーレンズ3は、光源基板10の表面に対して平行にかつ所要の間隙をおいて配設されている。図4に一部の拡大斜視図を示すように、第1インナーレンズ3は水平方向に延長された平板状に形成されており、光源基板10に対向される側が光入射面(以下、第1レンズ入射面)3iとされ、反対側が光出射面(以下、第1レンズ出射面)3oとして構成されている。第1レンズ入射面3iには、光源1の複数個のLED11の各発光主軸Oxに対してレンズ光軸を一致させた凸レンズを構成するフレネルステップ31が形成されている。このフレネルステップ31で構成される凸レンズの焦点はLED11の発光面の中心に位置されている。したがってLED11から発散状態に出射される光は第1レンズ入射面31に入射されるとフレネルステップ31により平行な光線束に制御される。
【0022】
第1レンズ出射面3oには、第1レンズ入射面3iにおいて制御された平行な光線束を偏向する偏向ステップが形成されている。この偏向ステップは、光線束を屈折して水平方向に偏向する屈折ステップ32,33で構成されており、水平方向の断面が鋸歯状をした多数の屈折ステップ32,33が水平方向に並んで配列された縦縞状に構成されている。そして、車幅方向内側の大部分の屈折ステップ32は、透過される光線束を発光主軸Oxに対して車幅内方向に向けて所要の角度で屈折するように光屈折面の面角度が設定されたステップ形状とされている。なお、この実施形態では、この多数の屈折ステップ32は、各光線束の屈折角が等しくなるように形成されている。
【0023】
一方、車幅方向外側の屈折ステップ33、すなわち、図3に示した最も車幅外方向側に位置されている1つのLED(以下、最外LEDと称する)11xから出射された光線束が透過される屈折ステップ33は、車幅方向内側の屈折ステップ32とは反対方向に光を屈折して偏向する屈折ステップとして構成されている。すなわち、この屈折ステップ33は、光線束を発光主軸Oxに対して車幅外方向側に屈折するように光屈折面の面角度が設定されたステップ形状とされている。
【0024】
第2インナーレンズ4は、図5(a)斜め上方から見た一部を破断した斜視図と、図5(b)に斜め下方から見た斜視図を示すように、それぞれ水平方向に細長い平板状をした入光側レンズ41と出光側レンズ42を備えている。これら入光側レンズ41と出光側レンズ42は所要の空隙を介して略平行に対向配置されており、両レンズ41,42の車幅内方向の端部と、両レンズ41,42の長さ方向に沿った一つの側辺部、ここでは上側辺部がそれぞれ端板43と側板44とで連結された角樋状に形成されている。また、出光側レンズ42の車幅外方向の端部は入光側レンズ41の端部よりも水平方向に延出された延出部45として構成されている。この第2インナーレンズ4は、入光側レンズ41、出光側レンズ42、延出部45、端板43及び側板44が透光性樹脂の一体成型により形成されているので、第2インナーレンズ4は中空構造のレンズとして構成されているとも言える。
【0025】
図6図5(a)のA部の拡大図であり、入光側レンズ41の光入射面(入光側レンズ入射面)41iと光出射面(入光側レンズ出射面)41oには、それぞれ偏向ステップが形成されている。これらの偏向ステップは、第1レンズ出射面3oの屈折ステップ32,33と同様に、水平方向の断面が鋸歯状をした多数の屈折ステップ411,412が水平方向に並んで配列された縦縞状に構成されている。この屈折ステップ411,412は、入光側レンズ入射面41iに入射された光線束を発光主軸Oxに対して車幅内方向に屈折して入光側レンズ出射面41oから出射するように光屈折面の面角度が設定された構成とされている。
【0026】
出光側レンズ42の光入射面(出光側レンズ入射面)42iにも偏向ステップとして屈折ステップ421が形成されている。この屈折ステップ421は、入光側レンズ41の屈折ステップ411と同様に、水平方向の断面が鋸歯状をした多数の屈折ステップが水平方向に並んで配列された縦縞状に構成されている。この屈折ステップ421は、出光側レンズ入射面42iに入射された光線束を発光主軸Oxに対して車幅内方向に向けて屈折するように光屈折面の面角度が設定された構成とされている。
【0027】
ここで、第2インナーレンズ4においては、第2インナーレンズ4において偏向されて出光側レンズ出射面42oから出射される光線束は、車幅方向の外側領域から出射されるときよりも、車幅方向の内側領域から出射されるときの偏向角が大きくなるように構成されている。すなわち、入光側レンズ入射面41i、入光側レンズ出射面41o及び出光側レンズ入射面42iのそれぞれに形成されている屈折ステップ411,412,421は、車幅方向の外側領域から内側領域に向けて光屈折面の角度が徐々に大きくされており、第2インナーレンズ4の全体として車幅方向の外側よりも内側の偏向角が大きくなるように構成されている。
【0028】
一方、出光側レンズ出射面42oには、光線束を鉛直方向に所要の角度範囲で発散させるための屈折ステップ422が形成されている。ここでは、鉛直断面が緩やかな曲率の曲面形状をして水平方向に延長された屈折ステップ422が、鉛直方向に並んで配列されている。
【0029】
出光側レンズ42の延出部45においては、その入射面(延長部入射面45i)と出射面(延長部出射面)45oのそれぞれに偏向ステップが形成されている。これらの偏向ステップは、水平方向の断面が鋸歯状をした多数の屈折ステップ451,452が水平方向に並んで配列された縦縞状に構成され、光線束を発光主軸Oxに対して車幅外方向に向けて屈折して偏向する屈折ステップとして構成されている。
【0030】
第2インナーレンズ4は、入光側レンズ入射面41iが第1インナーレンズ3の第1レンズ出射面3oに対して平行となるように配置される。このとき、入光側レンズ41は前記した最外LED11xを除く他の複数のLED11に対して対向配置されるが、当該最外LED11xに対しては対向配置されていない。この最外LED11xに対しては、出光側レンズ42の延出部45のみが対向配置される。
【0031】
ここで第2インナーレンズ4をランプハウジング100内に配設したときに、入光側レンズ41と出光側レンズ42を車幅内方向の端部で連結している端板43がランプボディ101と干渉することを回避するために、さらにはLED11から出射される光線束が端板43によって遮光されないようにするために、端板43は自動車の前後方向に向けられている。したがって、図3図5に示すように、入光側レンズ41と端板43との連結部の角度θbは鈍角とされ、出光側レンズ42と端板43との連結部の角度θaは鋭角とされている。換言すれば、各角部は直角以外の角度とされている。
【0032】
前記第3インナーレンズ5は、概ねアウターカバー102の内面に沿った曲面板として構成されており、第2インナーレンズ4の出光側レンズ42の略全面を覆うように配設されている。第3インナーレンズ5の光入射面(第3レンズ入射面)5iは平滑面に構成され、光出射面(第3レンズ出射面)5oには、光を水平方向に発散させる多数の発散ステップ51が形成されている。この発散ステップとして、水平方向の断面が円弧状をして鉛直方向に伸びる微細幅の多数の鉛直シリンドリカルステップが水平方向に配列されている。この発散ステップは、出射される光の一部を拡散する拡散ステップとして構成されることも可能である。
【0033】
以上のTLユニットoTLUは、点灯時には、各LED11が発光して発光面から赤色の光が出射される。図7はTLユニットの点灯時における光の光路を模式的に示す平面図であり、図8は側面図である。各LED11の発光面から発散状態で出射された光は、第1インナーレンズ3の第1レンズ入射面3iのフレネルステップ31により平行な光線束に制御される。各LED11の発光主軸Oxは自動車の後方の車幅外方向に向けて所要の角度で傾斜されているので、制御された平行な光線束は発光主軸Oxの方向、すなわち自動車の右斜め後方に向けられる。
【0034】
第1レンズ3を透過して第1レンズ出射面3oから出射される光線束は、当該第1レンズ出射面3oの屈折ステップ32により屈折されて発光主軸Oxに対して偏向される。すなわち、車幅外方向側の最外LED11xを除く他のLED11からの光線束は発光主軸Oxに対して車幅内方向に偏向される。一方、最外LED11xからの光線束は発光主軸Oxに対して車幅外方向に偏向される。
【0035】
第1レンズ出射面3oから出射された光線束のうち、最外LED11xからの光線束を除く光線束は、第2インナーレンズ4の入光側レンズ入射面41iに入射され、入光側レンズ出射面41oから出射される。このとき、入光側レンズ入射面41iと入光側レンズ出射面41oの各屈折ステップ411,412により、光線束は発光主軸Oxに対して車幅内方向に所要の屈折角で屈折されて偏向される。さらに、入光側レンズ出射面41oから出射された光束は、出光側レンズ入射面42iに入射され、出光側レンズ出射面42oから出射される。このとき出光側レンズ入射面42iの屈折ステップ421により、各光線束は発光主軸Oxに対してさらに大きな角度で車幅内方向に向けて偏向される。その上で、出光側レンズ出射面42oから出射される光線束は、発散ステップ422により水平方向にほぼ均等な光量(光度)となるように発散される。
【0036】
一方、最外LED11xからの光束は、前記したように第1インナーレンズ3を透過したときに発光主軸Oxに対して車幅外方向に向けて偏向されるため、第2インナーレンズ4の入光側レンズ41を透過することなく、第2インナーレンズ4の延長部入射面45iに入射され、その延長部出射面45oから出射される。このとき、延長部入射面45iと延長部出射面45oに設けられている各屈折ステップ451,452により、光線束は発光主軸Oxに対してさらに大きな角度で車幅外方向に向けて偏向される。
【0037】
第2インナーレンズ4の出光側レンズ出射面42oと延長部出射面45oから出射された全ての光線束は、第3インナーレンズ5を透過されるが、第3レンズ出射面5oに設けられている鉛直シリンドリカルステップ51により水平方向に発散される。これにより、図9に示すように、TLユニットoTLUの全体としては、自動車CARの後方から右側方にわたる広い領域に向けて光が照射される配光となる。この第3レンズ出射面5oに設けられる発散ステップ51は、多数の微小な凸レンズまたは凹レンズを枡目状に配列したフライアイレンズとして構成されてもよい。
【0038】
このように、最外LED11xを除く他のLED11から出射されて第1インナーレンズ3と第2インナーレンズ4を透過し、さら第3インナーレンズ5を透過して第3レンズ出射面5oから出射される光線束は、第2インナーレンズ4の入光側レンズ41、出光側レンズ42及び第3インナーレンズ5に形成されている偏向ステップ(屈折ステップ)によってLED11の発光主軸Oxに対して車幅内方向に偏向される。
【0039】
一方、最外LED11xから出射された光線束は、第2インナーレンズ4の延長部45の入射面45i及び出射面45oに形成されている偏向ステップ(屈折ステップ)451,452によって最外LED11xの発光主軸Oxに対して車幅外方向に偏向される。これにより、最外LED11xの発光面が自動車CARの斜め後方に向けられているのにもかかわらず、出射される光線束の出射方向は自動車CARの右側方に向けられ、いわゆるサイドマーカランプとして機能することができる。
【0040】
このように、実施形態のTLユニットoTLUは、第1インナーレンズ3において平行な光線束に制御されたLED11の光を第2インナーレンズ4により偏向制御し、第3インナーレンズ5において発散させることにより、自動車の後方から右側方の所要の領域を照射する配光が得られる。したがって、リアランプの形状や寸法に制限を受ける等の理由でLED11の発光面を自動車の後方に向けて配置することが難しく、各LED11の発光面が自動車の斜め後方に向けられているのにもかかわらずテールランプに要求される配光を満たすことができる。
【0041】
また、TLユニットoTLUの光学系2を構成している第2インナーレンズ4は、入光側レンズ41と出光側レンズ42との間に空隙を設けた中空レンズとして構成されているので、入光側レンズ入射面41i、入光側レンズ出射面41o、出光側レンズ入射面42i及び出光側レンズ出射面42oの4つの面を屈折面として構成できる。この構成により、入射面と出射面の2つの屈折面で構成される中実レンズに比較して、屈折面の数が2倍となる。これにより、第2インナーレンズ4の各面においては中実レンズよりも屈折角の小さい屈折ステップを形成することが可能になり、例えば、各面に形成する屈折ステップの屈折角を小さくできる。したがって、屈折角を大きくするために屈折ステップの傾斜角を大きく設計した場合の樹脂成型時に発生する「ひけ」が抑制でき、高い精度の屈折ステップの製造が可能になる。
【0042】
また、第2インナーレンズ4は、入光側レンズ41と出光側レンズ42との間に空隙を設けることにより、入光側レンズ入射面41oから出光側レンズ出射面42oまでの光線束の光路長を稼ぐことができる。これにより、入光側レンズ入射面41iに入射されて出光側レンズ出射面42oから出射される光線束が車幅方向に変位する量を大きくし、車幅方向の配光領域を拡大する上で有利になる。このように光路長を稼いでも、入光側レンズと出光側レンズとの間に空隙を有する中空構造であるので、中実レンズに比較して軽量化が可能となる。
【0043】
さらに、実施形態の第2インナーレンズ4は、端板43と入光側レンズ41の連結部の角度を鈍角にし、端板43と出光側レンズ42の連結部の角度を鋭角に設計している。したがって、端板43を自動車の前後方向に向けることができ、端板43の一部が車幅内方向及び車幅外方向に突出する寸法を抑制できる。これにより、LED11から出射された光が端板43で遮光されるようなことはなく、またTLユニットoTLUの車幅方向の寸法の増大が抑制でき、トランクルームの容積を拡大する上で有効になる。
【0044】
なお、実施形態の第2インナーレンズ4は、入光側レンズ41と出光側レンズ42を端板43と側板44で連結した一体構成としているので、第2インナーレンズ4を成型した際における変形を抑止する上で有効である。したがって、第2インナーレンズ4を樹脂成型したときに、第2インナーレンズ4の変形による光学的な特性、例えば、入光側レンズ41と出光側レンズ42の入射面や出射面の面精度、これらの面に形成される屈折ステップの形状、寸法等を高い精度に形成できる。第2インナーレンズ4を成型した際に、このような光学的な特性が低下する変形のおそれがないのであれば、端板43と側板44の一方を省略した構成としてもよい。
【0045】
なお、第3レンズ出射面5oにおける発散ステップ51の水平方向の発散角度が大きく設計できる場合には、第2インナーレンズ4に形成される屈折ステップ、すなわち入光側入射面41i、入光側出射面41o、出光側入射面42iの各屈折ステップはそれぞれ均一な形状、寸法で形成されてもよい。この場合には、第2インナーレンズ4においては、各LED11の光線束の偏向角は均一になり、第3インナーレンズ5での光の発散によって要求される配光を満たすことができる。このようにすれば、第2インナーレンズ4の各面における屈折ステップの設計、製造が容易になる。
【0046】
ここで、最外LED11xは車幅外方向に配列された複数のLEDで構成されてもよい。さらに、発光回路での制御によって最外LED11xを点滅制御する構成としてターンシグナルランプとして構成してもよい。この場合には、最外LED11xはアンバー色で発光するLEDで構成することが好ましい。
【0047】
本発明において、光学系を構成するインナーレンズは少なくとも第2インナーレンズを備える構成であればよい。すなわち、第1インナーレンズは光源の一部として構成されてもよく、第3インナーレンズは特に設けられていなくてもよい。したがって、このような場合の本発明におけるインナーレンズは第2インナーレンズで構成されることになる。
【0048】
以上の説明は、車体右後部に配設された右リアランプに適用された実施形態であるが、車体左後部に配設された左リアランプについても同様に適用できる。この場合には、特にTLユニットは左右対称の構造になる。したがって、光学系を構成している第1ないし第3の各インナーレンズの構成、特に第2インナーレンズと第3インナーレンズに形成されている偏向ステップによる偏向方向における車幅内方向と車幅外方向の左右関係は実施形態とは反対になる。
【0049】
また、本発明は、自動車のヘッドランプに設けられる各種補助ランプのランプユニットとしても適用できる。例えば、クリアランスランプ、デイタイムランニングランプ、フォグランプ等であり、これらの場合には光源は白色光を発光するLEDで構成される。
【0050】
本発明において、実施形態の記載は省略するが、各種ランプに適用されたときには、本発明における第1の方向は必ずしも実施形態に記載の車幅内方向に特定されるものではなく、車両の前方向あるいは後方向であってもよい。また、第2の方向は、少なくとも第1の方向と異なる方向であればよく、実施形態に記載の車幅外方向に特定されるものではない。
【符号の説明】
【0051】
1 光源
2 光学系
3 第1インナーレンズ
4 第2インナーレンズ
5 第3インナーレンズ
31 フレネルステップ
32 屈折ステップ(偏向ステップ)
41 入光側レンズ
411,412 屈折ステップ(偏向ステップ)
42 出光側レンズ
421 屈折ステップ(偏向ステップ)
43 端板
44 側板
45 延長部
100 ランプハウジング
CAR 自動車
R-RL,L-RL リアランプ
oTLU 外側テールランプユニット
図1
図2
図3
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図9