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特開2023-131924舗装表面接着型の非接触給電舗装構造体および舗装構造体の施工方法
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  • 特開-舗装表面接着型の非接触給電舗装構造体および舗装構造体の施工方法 図1
  • 特開-舗装表面接着型の非接触給電舗装構造体および舗装構造体の施工方法 図2
  • 特開-舗装表面接着型の非接触給電舗装構造体および舗装構造体の施工方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131924
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】舗装表面接着型の非接触給電舗装構造体および舗装構造体の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E01C 9/00 20060101AFI20230914BHJP
   E01C 7/08 20060101ALI20230914BHJP
   H02J 50/12 20160101ALI20230914BHJP
【FI】
E01C9/00
E01C7/08
H02J50/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022036947
(22)【出願日】2022-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】390019998
【氏名又は名称】東亜道路工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114258
【弁理士】
【氏名又は名称】福地 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100125391
【弁理士】
【氏名又は名称】白川 洋一
(72)【発明者】
【氏名】松村 高志
(72)【発明者】
【氏名】吉武 美智男
(72)【発明者】
【氏名】塚本 真也
【テーマコード(参考)】
2D051
【Fターム(参考)】
2D051AC01
2D051EA01
2D051EA03
2D051EA06
(57)【要約】
【課題】舗装構造体の構造を変更せずに、電気自動車に対して走行中の非接触給電を可能とする。
【解決手段】走行体の受電装置に対して、非接触で給電を行なう給電ユニット5を備えた舗装構造体であって、表層12b上に設けられ、表層12bの表面の細かな凹凸を解消するレベリング層1と、レベリング層1上に設けられた接着層3と、接着層3上で前記走行体が走行する方向に延伸するように設けられ、接着剤によって表層12bおよびレベリング層1に接着された給電ユニット5と、表層12bおよび給電ユニット5との段差を埋める擦り付け層7と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行体の受電装置に対して、非接触で給電を行なう給電ユニットを備えた舗装構造体 であって、
表層上に設けられ、表層表面の細かな凹凸を解消するレベリング層と、
前記レベリング層上に設けられた接着層と、
前記接着層上で前記走行体が走行する方向に延伸するように設けられ、接着剤によって前記表層およびレベリング層に接着された給電ユニットと、
前記表層および前記給電ユニットとの段差を埋める擦り付け層と、を備えることを特徴とする舗装構造体。
【請求項2】
前記給電ユニットの引張強度は、3MPa以上であることを特徴とする請求項1記載の舗装構造体。
【請求項3】
前記給電ユニットの線膨張係数が100×10-6/℃以下であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の舗装構造体。
【請求項4】
前記給電ユニットの表面は、すべり摩擦係数0.25以上のすべり止め加工が施されたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の舗装構造体。
【請求項5】
前記接着層は、接着強度0.6MPa以上であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の舗装構造体。
【請求項6】
前記擦り付け層は、前記給電ユニットの表面と前記表層との間で勾配5%以下の傾斜面を構成することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の舗装構造体。
【請求項7】
走行体の受電装置に対して、非接触で給電を行なう給電ユニットを備える舗装構造体の施工方法であって、
舗装における表層表面の細かな凹凸を解消するレベリング層を設ける工程と、
前記レベリング層上に接着層を設ける工程と、
前記接着層上で前記走行体が走行する方向に延伸するように、前記接着層で給電ユニットを接着する工程と、
前記表層および前記給電ユニットとの段差を埋める擦り付け層を設ける工程と、を含むことを特徴とする舗装構造体の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、舗装面接着型の非接触給電構造体および舗装構造体の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池を搭載している電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)等の走行体は、二次電池に蓄えられた電力を利用してモータを回転させ、モータの回転力で車輪を駆動させて走行している。二次電池に蓄えられた電力を利用して走行する走行体は、窒素酸化物や二酸化炭素等の環境に悪影響を与える物質を排出しないので、環境保全の観点から普及が望まれている。二次電池の電力で走行する電気自動車は、二次電池の充電量が低下したときには充電しなければならず、一般の充電方法としては、充電スタンドや家庭で電気自動車と給電装置を接続して充電を行なう。
【0003】
しかしながら、電気自動車の二次電池を充電完了するまでは、その場で走行体を移動させずに待機していなければならない。したがって、電気自動車で長距離の行程を走行する場合、充電スタンド等でたびたび停車し、かなりの時間を費やして二次電池を充電しなければならないという問題がある。
【0004】
また、一度の充電で走行可能な距離は二次電池の容量に依存しており、走行可能な距離を延伸させるためには搭載する二次電池の容量を大きくするといった対応がなされているが、車両重量が重くなることや製造コストが増大するといった問題がある。
【0005】
そのような問題を解決するために、走行中に非接触給電を可能とする技術が提案されている。これにより、電気自動車の課題である長距離走行が可能となる。また、そのためのインフラ設備の開発の一環として、走行路から給電する舗装構造体が提案されている。例えば、既設の舗装体に非接触給電ユニットを埋設する舗装構造体(特許文献1)、既設の舗装構造体にトラフを配置し非接触給電ユニットを備える舗装構造体(特許文献2)、既設の舗装構造体に給電導体を埋設する構造(特許文献3)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014-181546号公報
【特許文献2】特開2015-044422号公報
【特許文献3】特開2017-163798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
舗装構造体は、各層の舗装厚を大型車の交通条件、路床の支持力に応じて設計する。ところが、舗装構造体の内部を凹に成型し、給電コイルを設置すると、舗装構造体の構造強度の低下が生じてしまう(先行特許文献1から3)。また、給電コイル下部に、水はけを良くするために、樹脂空隙構造体を埋設する構成を採る場合、舗装の構造変更および構造強度を下げるような改築が必要となる。そのため、舗装の構造強度を低下させずに給電コイルを設置するためには、舗装の構造設計を行ない、所定の耐久力を有した舗装構造に改良する必要があり、多大なコストを要することになる。
【0008】
また、舗装構造体に給電体を埋設する構成を採る場合は、給電体が埋設される部材の材質によっては、給電効率に影響が及ぶ恐れがある。例えば、MHz帯の高周波電流を導体に送電すると、導体周囲の電気特性、つまり比誘電率や誘電正接等の特性によって高周波電力の伝播損失が大きく変化する。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、既設の舗装構造体の構造を変更せずに、電気自動車に対して走行中の非接触給電を可能とする舗装表面接着型の非接触給電舗装構造体およびその舗装構造体の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)上記の目的を達成するために、本発明は、以下のような手段を講じた。すなわち、本発明の舗装構造体は、走行体の受電装置に対して、非接触で給電を行なう給電ユニットを備えた舗装構造体であって、表層上に設けられ、表層表面の細かな凹凸を解消するレベリング層と、前記レベリング層上に設けられた接着層と、前記接着層上で前記走行体が走行する方向に延伸するように設けられ、接着剤によって前記表層およびレベリング層に接着された給電ユニットと、前記表層および前記給電ユニットとの段差を埋める擦り付け層と、を備えることを特徴とする。
【0011】
このように、本発明の舗装構造体では、すでに供用されている舗装構造体や、通常の設計手法で新たに構築された通常の舗装構造体(以下、「既設の舗装構造体」と呼称する。)に簡易かつ迅速かつ確実に給電ユニットを追加・設置することができる。その結果、既設の舗装構造体の改築を必要とせず、舗装構造体の設計変更や舗装構造の改良も必要とせず、コストの削減を図ることが可能となる。さらに、給電ユニットを埋設する構造を採らないため、埋設される部材の材質による給電効率に影響を生じない。
【0012】
(2)また、本発明の舗装構造体において、前記給電体ユニットの引張強度は3MPa以上であることを特徴としている。
【0013】
このように、給電体ユニットにおいて、引張強度が3MPa以上であることで、交通荷重に対して耐力を有することができ、交通荷重の作用によって破損する恐れがない。
【0014】
(3)また、本発明の舗装構造体において、前記給電体ユニットの線膨張係数が100×10-6/℃以下であることを特徴としている。
【0015】
このように、給電体ユニットにおいて、線膨張係数が100×10-6/℃であることで、既存の舗装構造体や本発明の舗装構造体を破損するおそれがなく維持することができる。
【0016】
(4)また、本発明の舗装構造体において、前記給電ユニットの表面は、すべり摩擦係数0.25以上のすべり止め加工が施されたことを特徴としている。
【0017】
このように、給電ユニットの表面は、すべり摩擦係数0.25以上のすべり止め加工が施されたことから、走行体のタイヤをしっかりとグリップさせることが可能となる。
【0018】
(5)また、本発明の舗装構造体は、前記接着層は、接着強度0.6MPa以上であることを特徴としている。
【0019】
このように、前記接着層は、接着強度0.6MPa以上であることで、交通荷重の作用や温度応力に対応することができる。
【0020】
(6)また、本発明の舗装構造体において、前記擦り付け層は、前記給電ユニットの表面と前記表層との間で勾配5%以下の傾斜面を構成することを特徴としている。
【0021】
このように、前記擦り付け層は、勾配5%以下であることで、本発明の舗装構造体と既設の舗装構造体との段差を解消することができる。
【0022】
(7)また、本発明の舗装構造体の施工方法は、走行体の受電装置に対して、非接触で給電を行なう給電ユニットを備える舗装構造体の施工方法であって、舗装における表層表面の細かな凹凸を解消するレベリング層を設ける工程と、前記レベリング層上に接着層を設ける工程と、前記接着層上で前記走行体が走行する方向に延伸するように、前記接着層で給電ユニットを接着する工程と、前記表層および前記給電ユニットとの段差を埋める擦り付け層を設ける工程と、を含むことを特徴とする。
【0023】
これにより、既設の舗装構造体に、簡易かつ迅速かつ確実に給電ユニットを設置することができる。その結果、既設の舗装構造体の改築を必要とせず、舗装構造体の設計変更や舗装構造の改良も必要とせず、コストの削減を図ることが可能となる。さらに、給電ユニットを埋設する構造を採らないため、埋設される部材の材質による給電効率に影響を生じない。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、既設の舗装構造体に、簡易かつ迅速に給電ユニットを設置することができる。その結果、既設の舗装構造体の改築を必要とせず、舗装構造体の設計変更や舗装構造の改良も必要とせず、コストの削減を図ることが可能となる。さらに、給電ユニットを埋設する構造を採らないため、埋設される部材の材質による給電効率に影響を生じない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施形態に係る舗装構造体の断面構造の一例を示す模式的な断面図である。
図2】本発明の実施形態に係る舗装構造体の施工方法の一例を示すフローチャートである。
図3】本発明の実施形態の使用例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(舗装構造体の構成)
本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。なお、構成図において、各構成要素の大きさは概念的に表したものであり、必ずしも実際の寸法比率を表すものではない。
【0027】
図1は、本実施形態に係る舗装構造体100の断面構造の一例を示す模式的な断面図である。本実施形態に係る舗装構造体100は、図示しない路床上に設けられ、下層路盤および上層路盤からなる路盤10を備える。この路盤10上の基層12aの上に表層12bが設けられている。表層12bの表面(路面)上にレベリング層1が設けられている。レベリング層1は、表層12bの表面の凸凹を解消することを目的としている。レベリング層1は、樹脂系結合材料を用いた混合物などを用いることができる。
【0028】
このレベリング層1上に接着層3が設けられている。接着層3は、レベリング層1と給電ユニット5を貼り付けることを目的としている。交通荷重の作用や温度応力に対応するため接着層3の接着強度0.6MPa以上となるように貼り付ける。接着層3の接着強度0.6MPa以上であれば、対応可能であるが接着強度1.4~3.0MPa程度での貼り付けが望ましい。接着層3の上に給電ユニット5が貼付される。
【0029】
図1に示すように、本願発明の給電ユニット5は、走行体(例えば、電気自動車)に非接触で給電をするため、車線の中心に設けられる。給電ユニット5の幅方向の大きさは0.3mから1.5mであり、0.6m~1.2m程度が望ましく、図3に示すように、給電ユニット5が走行体Cの左右のタイヤの間に位置するように設置されている。また、本願発明の給電ユニット5は、表層12bの表面(路面)からおおよそ12mmの高さを有し、レベリング層1は、表層12bの表面(路面)からおおよそ1mmの厚さを有する。接着層3は、レベリング層1の上部表面からおおよそ1mmの厚さを有し、給電ユニット5は、接着層3の上部表面からおおよそ10mmの厚さを有する。擦り付け層7は、給電ユニット5の上部表面から表層12bの表面(路面)に向かって勾配をつけ、その勾配が5%以下となるように擦り付けし、段差の修正がされている。
【0030】
給電ユニット5は、非接触給電方式が採られている。給電ユニット5の基材は、交通荷重に対する耐力を有する必要がある。例えば、FRP、ABSなど樹脂材料を用いることができる。給電ユニット5(の基材)は、引張強度3MPa以上が好ましい。既存の舗装構造体や本発明の舗装構造体を破損するおそれがなく維持するため、給電ユニット5(の基材)は、線膨張係数が100×10-6/℃以下であることが好ましい。
【0031】
給電ユニット5の表面5aには、すべり止め加工を施すことができる。車両や人などの道路の利用者の安全で快適な路面のため、給電ユニット5の表面に抵抗性を有することを目的としている。給電ユニット5の表面は、すべり摩擦係数0.25以上となるように加工する。たとえば、砂やガラスビーズなどを樹脂で固着させて凹凸を設ける。この加工は、給電ユニット5の作製工場で加工してもよいし、施工現場で加工してもよい。
【0032】
擦り付け層7は、給電ユニット5の表面と表層12bの表面(路面)の段差の修正することを目的とする。交通荷重に対する耐力を有する必要がある。擦り付け材として、たとえば、樹脂と砂の混合物を用いることができる。擦り付け層7は、車両や人などの道路の利用者の安全で快適な路面のため、勾配が5%以下となるように構成されている。
【0033】
[舗装構造体の施工方法]
舗装構造体100の製造方法について一例を説明する。図2は、本発明の実施形態に係る舗装構造体の施工方法の一例を示すフローチャートである。最初に、表層12bの表面(路面)の細かな凹凸を解消するためのレベリング層を設ける(ステップS1)。すなわち、既設の舗装構造体の表層12bの不陸を調整するためのレベリング層1を設ける。
【0034】
次に、レベリング層1の表面において、給電ユニット5を設置する箇所に接着剤3を塗布する(ステップS2)。
【0035】
次に、ステップS2で塗布した接着剤上に給電ユニット5を配置する(ステップS3)。工場で作成されたロール状やパネル状などの給電ユニット5を設置する。例えば、給電ユニット5がロール状に巻回されている場合は、施工現場まで運搬し、ロールの芯を中心に引き出すことによって、迅速に給電ユニット5を敷設することが可能となる。ステップS3において、接着剤が完全に固まるまで保持することも重要である。
【0036】
次に、給電ユニット5の表面と表層の表面(路面)の段差の調整する(ステップS4)。その段差を調整するために樹脂と砂の混合物などを擦り付け材として擦り付けをする。この時に、給電ユニット5の表面5aに、滑り止め加工をおこなってもよいし、運搬前の段階で、工場において給電ユニット5の製作時に表面5aの加工をしてもよい。
【0037】
本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の思想と範囲に含まれる様々な変形および均等物に及ぶことはいうまでもない。また、各図面に示された構成要素の構造、形状、数、位置、大きさ等は説明の便宜上のものであり、適宜変更しうる。
【符号の説明】
【0038】
100…舗装構造体
1…レベリング層
3…接着層
5…給電ユニット
5a…表面
7…擦り付け層
10…路盤
12a…基層
12b…表層
図1
図2
図3