(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131931
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】エンジン
(51)【国際特許分類】
F02B 77/08 20060101AFI20230914BHJP
F01P 1/06 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
F02B77/08 L
F01P1/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022036956
(22)【出願日】2022-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平尾 友
(72)【発明者】
【氏名】小林 悠樹
(57)【要約】 (修正有)
【課題】エンジン停止用のスイッチを備えるエンジンにおいて、スイッチの操作性の改善及びスイッチの劣化抑制を図る。
【解決手段】例示的なエンジンは、エンジンの停止を行うエンジン停止スイッチ28と、冷却液の保持部分または通路を構成する冷却部品29と、を備える。前記エンジン停止スイッチ28は、前記冷却部品29、または、前記冷却部品29の周辺部品に配置される。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの停止を行うエンジン停止スイッチと、
冷却液の保持部分または通路を構成する冷却部品と、
を備え、
前記エンジン停止スイッチは、前記冷却部品、または、前記冷却部品の周辺部品に配置される、エンジン。
【請求項2】
前記冷却部品は、冷却水を溜める冷却水タンクである、請求項1に記載のエンジン。
【請求項3】
前記冷却水タンクは、
第1上面と、
前記第1上面よりも低い第2上面と、
を有し、
前記エンジン停止スイッチは、前記第2上面、または、前記第2上面に設けられる前記周辺部品に配置される、請求項2に記載のエンジン。
【請求項4】
前記第2上面は、前記第1上面よりも面積が小さい、請求項3に記載のエンジン。
【請求項5】
前記冷却水タンクは、前記第1上面と前記第2上面との境界に位置する境界部を有し、
前記エンジン停止スイッチに接続される電線は、前記境界部に配置される、請求項3または4に記載のエンジン。
【請求項6】
前記第1上面には、冷却水を注入する注入部が設けられる、請求項3から5のいずれか1項に記載のエンジン。
【請求項7】
前記周辺部品は、前記冷却部品に固定される部品、又は、サーモスタットを収容するサーモスタットケースである、請求項1から6のいずれか1項に記載のエンジン。
【請求項8】
クランク軸方向の一方端側に配置され、排気ガスを排出する排気出口管を備え、
前記エンジン停止スイッチは、クランク軸方向の他方端側に配置される、請求項1から7のいずれか1項に記載のエンジン。
【請求項9】
前記一方端側には、前記排気出口管と接続される過給機が配置される、請求項8に記載のエンジン。
【請求項10】
クランク軸方向の一方端側に配置されるフライホイールを備え、
前記エンジン停止スイッチは、クランク軸方向の他方端側に配置される、請求項1から9のいずれか1項に記載のエンジン。
【請求項11】
クランク軸方向の一方端側に配置されるフライホイールと、
クランク軸方向の中央部よりもクランク軸方向の他方端側に配置されるコントローラと、
を備え、
前記エンジン停止スイッチは、前記他方端側に配置される、請求項1から9のいずれか1項に記載のエンジン。
【請求項12】
クランク軸方向の一方端側に配置され、排気ガスを排出する排気出口管と、
クランク軸方向の他方端側に配置されるエンジン停止スイッチと、
を備える、エンジン。
【請求項13】
クランク軸方向の一方端側に配置されるフライホイールと、
クランク軸方向の中央部よりもクランク軸方向の他方端側に配置されるコントローラと、
前記他方端側に配置されるエンジン停止スイッチと、
を備える、エンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、緊急時にエンジンを即座に停止させる緊急停止用スイッチをエンジンに設けることが知られる(例えば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に開示される舶用エンジンにおいては、エンジンの上面に設けられるトップカバーに上下方向に貫通する空間部が形成され、該空間部に、緊急停止用スイッチを含むエンジン側操作部が配置される。エンジン側操作部の上端はトップカバーの上面よりも低い位置に配置される。これにより、緊急停止用スイッチに容易にエンジンの上方からアクセスすることができるとともに、エンジンのメンテナンス時等に誤って緊急停止用スイッチが踏みつけられることを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、緊急用停止用スイッチをどのような場所に配置するかは、重要である。例えば、トップカバーに形成された空間部に緊急停止用スイッチを配置する構成では、操作性が必ずしも良くない可能性がある。また、高温になり易い場所に緊急停止用スイッチが配置されると、緊急停止用スイッチが劣化することが懸念される。
【0006】
本発明は、エンジン停止用のスイッチを備えるエンジンの改良を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の例示的なエンジンは、エンジンの停止を行うエンジン停止スイッチと、冷却液の保持部分または通路を構成する冷却部品と、を備え、前記エンジン停止スイッチは、前記冷却部品、または、前記冷却部品の周辺部品に配置される。
【発明の効果】
【0008】
例示的な本発明によれば、エンジン停止用のスイッチを備えるエンジンの改良を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】エンジンが備えるシリンダブロック、ヘッドブロック、および、ヘッドカバーで構成される部分を抽出して示す概略斜視図
【
図3】エンジンが備えるシリンダブロック部分の概略断面図
【
図6】エンジンのエンジン停止スイッチが配置される部分周辺を拡大して示した概略斜視図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図面において、適宜、3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。以下の説明において、X方向を前後方向、Y方向を左右方向、Z方向を上下方向とする。なお、+X側が前側、-X側が後側とする。+Y側を右側、-Y側を左側とする。+Z側を上側、-Z側を下側とする。詳細には、
図1に示すクランク軸(出力軸)の中心線Cが延びる方向を前後方向とし、シリンダブロック1に対してフライホイール2が配置される側を後側とする。また、シリンダブロック1に対してオイルパン3が配置される側を下側として上下方向を定義する。前後方向および上下方向に直交する方向を左右方向と定義し、後方から前方に向かって見た場合に右となる側を右側、左となる側を左側とする。なお、これらの方向は単に説明のために用いられる名称であって、実際の位置関係及び方向を限定する意図はない。
【0011】
<1.エンジンの概要>
図1は、本発明の実施形態に係るエンジン100の構成を示す概略斜視図である。エンジン100は、例えば船舶に使用する舶用エンジンとして好適である。ただし、エンジン100は、舶用エンジンに限らず、他の用途に適用されてもよい。なお、エンジン100はディーゼルエンジンである。
【0012】
図1に示すように、エンジン100は、シリンダブロック1と、ヘッドブロック4と、ヘッドカバー5とを備える。
図2は、エンジン100が備えるシリンダブロック1、ヘッドブロック4、および、ヘッドカバー5で構成される部分を抽出して示す概略斜視図である。
図3は、エンジン100が備えるシリンダブロック1部分の概略断面図である。
【0013】
図2および
図3に示すように、シリンダブロック1の内部には、前後方向に延びるクランク軸6およびピストン7が配置される。シリンダブロック1の内部は、下側に配置される潤滑油を貯留するオイルパン3の内部と繋がる。クランク軸6の後端には、フライホイール2(
図1参照)が取り付けられる。フライホイール2は、クランク軸6と一体的に回転し、エンジン100の動力を取り出すために利用される。ピストン7は、詳細には、シリンダブロック1に形成されるシリンダ11内に配置される。ピストン7は、コネクティングロッド71を介してクランク軸6に連結される。
【0014】
詳細には、シリンダブロック1は、右側に配置される右シリンダ11Rと、左側に配置される左シリンダ11Lとを有する。右シリンダ11Rは、後方から見た場合に、上下方向に対して右側に傾き、斜め方向に延びる円筒状である。左シリンダ11Lは、後方から見た場合に、上下方向に対して左側に傾き、斜め方向に延びる円筒状である。右シリンダ11Rと左シリンダ11Lとは、V字状に配置される。なお、V字状に配置される一対の右シリンダ11Rと左シリンダ11Lとは、シリンダ軸が前後方向に若干ずれて配置される。本実施形態では、左シリンダ11Lが右シリンダ11Rに対して若干前方に配置される。
【0015】
シリンダブロック1は、複数の右シリンダ11Rが前後方向に並ぶ右気筒列111Rと、複数の左シリンダ11Lが前後方向に並ぶ左気筒列111Lとを有する。すなわち、エンジン100は、第1気筒列111Rと第2気筒列111Lとを備える。右気筒列111Rと左気筒列111Lとは、V字状のバンクを構成する。本実施形態では、右気筒列111Rを構成する右シリンダ11Rの数と、左気筒列111Lを構成する左シリンダ11Lの数は、一例として、いずれも6つである。すなわち、本実施形態のエンジン100は、V型12気筒エンジンである。
【0016】
右気筒列111Rと左気筒列111Lとのそれぞれにおいて、各シリンダ11にはヘッドブロック4が重ねて配置される。ヘッドブロック4は、シリンダブロック1に螺子を用いて締結される。詳細には、ヘッドブロック4は、右シリンダ11Rに重ねられる右ヘッドブロック4Rと、左シリンダ11Lに重ねられる左ヘッドブロック4Lとを含む。右ヘッドブロック4Rは、各右シリンダ11Rに1つずつ重ねられるために、右シリンダ11Rの数と同数存在する。左ヘッドブロック4Lは、各左シリンダ11Lに1つずつ重ねられるために、左シリンダ11Lの数と同数存在する。本実施形態では、右ヘッドブロック4Rおよび左ヘッドブロック4Lの数は、いずれも6つである。
【0017】
各ヘッドブロック4は、シリンダ11、ピストン7、および、ヘッドブロック4で構成される燃焼室にガスを供給するための吸気ポート41と、燃焼室からガスを排気する排気ポート(不図示)とを有する。なお、排気ポートは、吸気ポート41が設けられる面と反対側の面に設けられる。詳細には、右ヘッドブロック4Rは、左側の側面に吸気ポート41を有し、右側の側面に排気ポートを有する。左ヘッドブロック4Lは、右側の側面に吸気ポート41を有し、左側の側面に排気ポートを有する。
【0018】
各ヘッドブロック4の上には、ヘッドカバー5が被せられる。ヘッドカバー5は、螺子を用いてヘッドブロック4に締結される。各ヘッドカバー5は、ヘッドブロック4に配置される吸気弁および排気弁(不図示)を覆う。各ヘッドカバー5には、インジェクタ8が取り付けられる。インジェクタ8の、燃料を噴射する噴射口が設けられる一端部は、燃焼室に臨む。インジェクタ8の他端部は、ヘッドカバー5から外部に向けて突出する。
【0019】
詳細には、ヘッドカバー5は、右ヘッドブロック4Rに被せられる右ヘッドカバー5Rと、左ヘッドブロック4Lに被せられる左ヘッドカバー5Lとを含む。右ヘッドカバー5Rは、各右ヘッドブロック4Rに被せられるために、右ヘッドブロック4Rの数と同数存在する。左ヘッドカバー5Lは、各左ヘッドブロック4Lに被せられるために、左ヘッドブロック4Lの数と同数存在する。本実施形態では、右ヘッドカバー5Rおよび左ヘッドカバー5Lの数は、いずれも6つである。なお、右ヘッドカバー5Rに配置される右インジェクタ8R、および、左ヘッドカバー5Lに配置される左インジェクタ8Lの数も、いずれも6つである。
【0020】
シリンダブロック1の右側においては、右バンクRBを構成する右シリンダ11R、右ヘッドブロック4Rおよび右ヘッドカバー5Rが右斜め上方に延びる。また、シリンダブロック1の左側においては、左バンクLBを構成する左シリンダ11L、左ヘッドブロック4Lおよび左ヘッドカバー5Lが左斜め上方に延びる。前後方向からの平面視において、右バンクRBと左バンクLBとはV字状であり、エンジン100はVバンクを有する。右バンクRBと左バンクLBとの左右方向間には、バンク内エリア200が形成される。
【0021】
図1に戻って、エンジン100は、上面カバー9と側面カバー10とを備える。上面カバー9は、例えば、結露等が原因となって内部に配置されるコントローラ26(後述の
図4等参照)等に水がかかることを防止する。側面カバー10は、例えば、ヘッドブロック4等の部品における亀裂等が原因となって燃料が飛散することを防止する。なお、
図1には、右側面に配置される側面カバー10のみが示されるが、左側面にも同様の側面カバー10が配置される。すなわち、エンジン100は、左右一対の側面カバー10を備える。
【0022】
図4は、本発明の実施形態に係るエンジン100の構成を示す概略上面図である。
図4においては、上面カバー9と一対の側面カバー10とは省略されている。
図1および
図4に示すように、エンジン100は、吸気マニホールド21および排気マニホールド22を備える。
【0023】
吸気マニホールド21は、外部から吸い込まれた空気または混合気である吸気を各シリンダ11に分配する。吸気マニホールド21は、エンジン100の上部に配置され、前後方向に延びる。詳細には、吸気マニホールド21は、右シリンダ11R用の右吸気マニホールド21Rと、左シリンダ11L用の左吸気マニホールド21Lとを含む。
【0024】
右吸気マニホールド21Rは、前後方向に並ぶ複数の右ヘッドブロック4Rの各吸気ポート41(
図2参照)の上側に配置される。右吸気マニホールド21Rの内部と、各右シリンダ11Rとは、各吸気ポート41を介して繋がる。左吸気マニホールド21Lは、前後方向に並ぶ複数の左ヘッドブロック4Lの各吸気ポート41の上側に配置される。左吸気マニホールド21Lの内部と、各左シリンダ11Lとは、各吸気ポート41を介して繋がる。
【0025】
なお、詳細には、各吸気ポート41と各シリンダ11との間には、吸気バルブ(不図示)が介在し、吸気バルブが開いた状態となると、吸気マニホールド21の内部とシリンダ11とは連通する。
【0026】
排気マニホールド22は、各シリンダ11からの排気を集約する。排気マニホールド22は、エンジン100の側面部に配置され、前後方向に延びる。詳細には、排気マニホールド22は、右シリンダ11R用の右排気マニホールド22Rと、左シリンダ11L用の左排気マニホールド22Lとを含む。
【0027】
右排気マニホールド22Rは、前後方向に並ぶ複数の右ヘッドブロック4R(
図2参照)の右側に配置される。右排気マニホールド22Rの内部と、各右シリンダ11Rとは、右ヘッドブロック4Rの右側に設けられる排気ポート(不図示)を介して繋がる。左排気マニホールド22Lは、前後方向に並ぶ複数の左ヘッドブロック4L(
図2参照)の左側に配置される。左排気マニホールド22Lの内部と、各左シリンダ11Lとは、左ヘッドブロック4Lの左側に設けられる排気ポート(不図示)を介して繋がる。
【0028】
なお、詳細には、各排気ポートと各シリンダ11との間には、排気バルブ(不図示)が介在し、排気バルブが開いた状態となると、排気マニホールド22の内部とシリンダ11とは連通する。
【0029】
右排気マニホールド22Rで集約された排ガスは、いずれもエンジン100の右後方に配置される右過給機23Rおよび右排気出口管24Rを介して外部に排気される。左排気マニホールド22Lで集約された排ガスは、いずれもエンジン100の左後方に配置される左過給機23Lおよび左排気出口管24Lを介して外部に排気される。
【0030】
右過給機23Rおよび左過給機23Lは、いずれもコンプレッサ部231とタービン部232とを有する。コンプレッサ部231は、エンジン100の外部から供給される空気等の吸気を加圧圧縮する。加圧圧縮された吸気は、インタークーラ25を介して吸気マニホールド21に供給される。タービン部232は、排気マニホールド22から供給される排ガスによって回転される。タービン部232の回転動力は、コンプレッサ部231に伝達される。すなわち、本実施形態の右過給機23Rおよび左過給機23Lは、排ガスタービンを駆動源とする、いわゆるターボチャージャである。
【0031】
吸気マニホールド21と接続されるインタークーラ25は、冷却水ポンプ(不図示)によって冷却水を供給され、吸気を冷却する。コンプレッサ部231から供給される吸気は、加圧圧縮されることにより圧縮熱が発生して温度が上昇する。インタークーラ25は、冷却水ポンプから供給される冷却水と、加圧圧縮された吸気との間で熱交換を行うことで吸気を冷却する。すなわち、インタークーラ25が設けられることにより、吸気マニホールド21に供給される吸気の温度を所望の温度に調整することができる。
【0032】
図4に示すように、右吸気マニホールド21Rと左吸気マニホールド21Lとは、エンジン100の上部において、左右方向に間隔をあけて並ぶ。
図4に示すように、上面カバー9を取り外した状態において、右吸気マニホールド21Rと左吸気マニホールド21Lとの間の空間を介して、バンク内エリア200は外部に露出する。バンク内エリア200には、例えば、エンジン100全体の制御を行うコントローラ26、および、インジェクタ8に燃料を供給する燃料ポンプ27等が配置される。
【0033】
つまり、エンジン100は、第1気筒列111Rと第2気筒列111Lとの間に位置するバンク内エリア200に配置されるコントローラ26を備える。また、エンジン100は、バンク内エリア200に配置される燃料ポンプ27を備える。なお、バンク内エリア200は、厳密な意味で、第1気筒列111Rと第2気筒列111Lとの間の空間領域であってもよい。ただし、本実施形態では、バンク内エリア200は、第1気筒列111Rを含む右バンクRBと、第2気筒列111Lを含む左バンクLBとの左右方向間の空間領域を広く含む。
【0034】
コントローラ26および燃料ポンプ27がバンク内エリア200に配置される構成とすることにより、バンク内エリア200を部品の配置に効率良く利用することができる。これにより、エンジン100の小型化を図ることができる。ただし、コントローラ26や燃料ポンプ27は、バンク内エリア200の外に配置されてもよい。
【0035】
なお、コントローラ26は、詳細には、第1コントローラ261と第2コントローラ262とを含む。ただし、コントローラ26の数は適宜変更されてよく、例えば、1つのコントローラのみで構成されてもよい。本実施形態において、第1コントローラ261と第2コントローラ262とは前後方向(クランク軸方向)に並ぶ。詳細には、第1コントローラ261は、第2コントローラ262よりも前方に位置する。第1コントローラ261と第2コントローラ262とのうち、いずれか一方がメインコントローラ、他方がサブコントローラとされる。本実施形態では、第1コントローラ261がメインコントローラであり、第2コントローラ262は、がサブコントローラである。
【0036】
メインコントローラとして構成される第1コントローラ261は、エンジン100の制御に必要な演算を実行する。エンジン100の制御に必要な演算には、例えば、燃料の噴射の制御に関わる演算や、エンジン100の停止に関わる演算等が含まれる。サブコントローラとして構成される第2コントローラ262は、第1コントローラ261と通信線(不図示)で接続され、第1コントローラ261と通信可能に設けられる。第2コントローラ262は、第1コントローラ261からの指示にしたがって制御動作を行う。
【0037】
第1コントローラ261は、右バンクRBに配置される右インジェクタ8Rの制御を行う。すなわち、第1コントローラ261と、各右インジェクタ8Rとは、電気的に接続される。また、第2コントローラ262は、左バンクLBに配置される左インジェクタ8Lの制御を行う。すなわち、第2コントローラ262と、各左インジェクタ8Lとは、電気的に接続される。
【0038】
また、燃料ポンプ27は、燃料を高圧として、右バンクRB用の高圧燃料パイプ(不図示)、および、左バンクLB用の高圧燃料パイプ(不図示)に向けて燃料を吐出する。右バンクRB用の高圧燃料パイプを通る燃料は、右バンクRBに配置される各右インジェクタ8Rに分配される。左バンクLB用の高圧燃料パイプを通る燃料は、左バンクLBに配置される各左インジェクタ8Lに分配される。各インジェクタ8は、コントローラ26による制御の下、燃料を燃焼室に噴射する。
【0039】
<2.エンジン停止スイッチ>
図5は、本発明の実施形態に係るエンジン100の構成を示す概略正面図である。
図5は、エンジン100を前方から後方に向かって見た図である。
図5に示すように、エンジン100は、エンジン100の停止を行うエンジン停止スイッチ28を備える。詳細には、エンジン停止スイッチ28は、エンジン100を緊急停止させるためのスイッチである。エンジン停止スイッチ28は、コントローラ26と電気的に接続される。エンジン停止スイッチ28が操作されると、当該操作を行われたことを示す信号がコントローラ26に送られる。当該信号を受信したコントローラ26は、エンジン100を停止する処理を行う。これにより、エンジン100が停止される。
【0040】
例えば、エンジン100が舶用エンジンとして構成される場合、エンジン100を緊急停止させる緊急停止スイッチは、例えばブリッジや、機関室の制御盤等に配置される。すなわち、通常は、遠隔操作によってエンジン100の停止が行われる。ただし、遠隔操作が不能となる事態や船員などの人がエンジン100付近にいて遠隔操作用の緊急停止スイッチまでの距離が遠い場合が生じ得る。本実施形態のように、エンジン100自体に緊急停止を可能とするエンジン停止スイッチ28が設けられることにより、遠隔操作が不能な場合や船員などの人がエンジン100付近にいて即座にエンジン100を停止する必要が生じた場合でも、船員等の人がエンジン停止スイッチ28を押してエンジン100を緊急停止することができる。
【0041】
詳細には、
図4および
図5に示すように、エンジン停止スイッチ28は、エンジン100の前端部に配置される。また、
図1および
図4に示すように、エンジン100の後端部には、上述した右排気出口管24Rおよび左排気出口管24Lが配置される。すなわち、エンジン100は、クランク軸方向の一方端側に配置され、排気ガスを排出する排気出口管24を備える。エンジン100は、クランク軸方向の他方端側に配置されるエンジン停止スイッチ28を備える。エンジン停止スイッチ28は、クランク軸方向の他方端側に配置される。
【0042】
このような構成では、エンジン100の高温の排ガスが排出される側と反対側に、エンジン停止スイッチ28を配置することができる。このために、エンジン停止スイッチ28が熱による被害を受けることを抑制することができる。また、エンジン停止スイッチ28操作時に人が高温部に誤って触れてしまうことをより確実に防止できる。
【0043】
また、
図1および
図4に示すように、エンジン100の後端部には、上述した右過給機23Rおよび左過給機23Lが配置される。すなわち、クランク軸方向の一方端側には、排気出口管24と接続される過給機23が配置される。エンジン停止スイッチ28は、高温となり易い過給機23から離れた位置に配置される。
【0044】
また、
図1に示すように、エンジン100の後端部には、上述したフライホイール2が配置される。すなわち、エンジン100は、クランク軸方向の一方端側に配置されるフライホイール2を備える。エンジン停止スイッチ28は、フライホイール2と反対側に配置される。
【0045】
なお、例えば船舶においては、推進機が複数搭載されることがある。このような場合、エンジンが左右方向に複数並べられる。機関室のスペースは限られているために、隣り合うエンジン間の間隔は狭くなりやすい。エンジン停止スイッチがエンジンの側面に設けられる構成とすると、隣のエンジンが邪魔になって、船員等の人がエンジン停止スイッチに近づき難くなることが懸念される。この点、本実施形態では、エンジン停止スイッチ28を、エンジン100の側面ではなく前面側に設けている。このために、船員等の人は、エンジン100に設けられるエンジン停止スイッチ28に容易に近づくことができる。
【0046】
図4において、一点鎖線DLは、エンジン100の前後方向(クランク軸方向)の中央部を示す。
図4に示すように、コントローラ26は、エンジン100の前後方向の中央部よりも前端側に配置される。すなわち、エンジン100は、クランク軸方向の中央部よりもクランク軸方向の他方端側に配置されるコントローラ26を備える。上述のように、エンジン停止スイッチ28は、クランク軸方向の他方端側に配置される。このために、エンジン停止スイッチ28に電気的に接続されるコントローラ26をエンジン停止スイッチ28の近くに配置することができ、電線の配線を行い易くすることができる。また、クランク軸方向の一方端側に配置される過給機23および排気出口管24からコントローラ26を離して配置することができ、コントローラ26が熱による被害を受けることを抑制することができる。
【0047】
なお、本実施形態では、コントローラ26は、バンク内エリア200に配置されているが、コントローラ26の位置は他の位置であってもよい。コントローラ26は、例えば、エンジン100の上面、左右の側面等に配置されてもよい。
【0048】
エンジン100は、冷却液の保持部分または通路を構成する冷却部品を備える。エンジン停止スイッチ28は、冷却部品、または、冷却部品の周辺部品に配置される。冷却部品、または、その周辺部品にエンジン停止スイッチ28が配置される構成とすると、エンジン停止スイッチ28を熱による影響を受け難い位置に配置することができる。周辺部品は、冷却部品に固定される部品を含んでよい。
【0049】
冷却液は、例えば、水、水に添加剤が加えられた液体、エチレングリコール等のグリコール系液体、グリコール系溶媒に添加剤が加えられた液体等であってよい。冷却部品は、例えば、冷却液を貯留するタンク、冷却液を流す冷却管、上述のインタークーラ25等のクーラであってよい。周辺部品は、例えば、冷却部品に取り付けられる部品、冷却部品に接触する部品、または、冷却部品の近傍に配置される部品である。
【0050】
本実施形態においては、
図5等に示すように、エンジン100は、冷却水を溜める冷却水タンク29を備える。冷却水タンク29は、エンジン100の前端の上部に配置される。冷却水タンク29の上面には、水をタンク内に注水するための注水部291が設けられる。注水部291は注水口を含む。冷却水タンク29は、エンジン100のフライホイール2が設けられる側と反対側の端部に配置される。このために、作業者は、例えばクラッチや推進機等の物体に邪魔されることなく、容易に注水作業を行うことができる。
【0051】
なお、本実施形態では、冷却水タンク29の下方に清水クーラ30が配置される。清水クーラ30は、不図示のサーモスタットと組になって使用され、清水(冷却水)の温度を一定に保つ。清水クーラ30では、清水と海水との間で熱交換が行われ、清水が冷却される。サーモスタットは、清水の温度に応じて水路を切り替えたり流量を制御したりして、清水の温度を一定に保つ働きを行う。なお、サーモスタットは、
図5に示すサーモスタットケース31内に収容される。また、清水クーラ30は、上述した冷却部品に含まれてよい。
【0052】
本実施形態では、エンジン停止スイッチ28が配置される、または、エンジン停止スイッチ28がその周辺に配置される冷却部品は、冷却水を溜める冷却水タンク29である。
【0053】
エンジン停止スイッチ28は、冷却水タンク29の上面、または、当該上面付近に設けられることが好ましい。本実施形態では、冷却水タンク29は、エンジン100の前面の上部に設けられる。エンジン停止スイッチ28が、冷却水タンク29の上面、または、その付近に設けられることによって、船員等の人の目線に近い位置にエンジン停止スイッチ28を配置することができる。すなわち、船員等の人にとって操作し易い位置にエンジン停止スイッチ28を配置することができる。
【0054】
詳細には、冷却水タンク29は、第1上面29aと、第1上面29aよりも低い第2上面29bとを有する。エンジン停止スイッチ28は、第2上面29b、または、第2上面29bに設けられる周辺部品に配置される。本実施形態において、第1上面29aと第2上面29bとは左右方向に並ぶ。詳細には、第2上面29bは、第1上面29aの左側に位置する。
【0055】
本実施形態では、第1上面29aには、冷却水を注入する注水部291が設けられる。第2上面29bに設けられるエンジン停止スイッチ28は、注水部291から離して配置される。
【0056】
また、本実施形態では、第2上面29bは、第1上面29aよりも面積が小さい。すなわち、エンジン停止スイッチ28は、第1上面29aよりも高さが低く、面積が小さい第2上面29bに設けられる。
【0057】
図6は、エンジン100のエンジン停止スイッチ28が配置される部分周辺を拡大して示した概略斜視図である。
図6に示すように、冷却水タンク29の第2上面29bには、サーモスタット(不図示)が収容されるサーモスタットケース31が配置される。エンジン停止スイッチ28は、サーモスタットケース31に配置される。
【0058】
すなわち、エンジン停止スイッチ28は、第2上面29bに設けられる、冷却部品の周辺部品に配置される。当該周辺部品は、サーモスタットが収容されるサーモスタットケース31である。
【0059】
詳細には、サーモスタットケース31は、冷却水タンク29の一部と、当該一部に螺子32を用いて固定されるサーモスタットカバー311とで構成される。このために、詳細には、エンジン停止スイッチ28は、サーモスタットカバー311に配置される。このために、サーモスタットカバー311を冷却部品の周辺部品と解してもよい。エンジン停止スイッチ28は、サーモスタットカバー311の前端上部に配置される。エンジン停止スイッチ28は、サーモスタットカバー311と共に、冷却水タンク29に螺子32により固定される。
【0060】
エンジン停止スイッチ28がサーモスタットカバー311の上面に配置されるために、エンジン停止スイッチ28が配置される上面と、注水部291が設けられる第1上面29aとの左右方向間には、あたかも溝が配置されるような構成となる。このために、注水作業等によってこぼれた水がエンジン停止スイッチ28に付着する可能性を低減することができる。
【0061】
エンジン停止スイッチ28は、詳細には、不図示の回路基板が収容されるスイッチケース部281と、スイッチケース部281に前後方向に移動可能に支持されるボタン部282とを有する。スイッチケース部281に収容される回路基板は、コントローラ26と電線33によって接続されている。スイッチケース部281が、サーモスタットカバー311に固定される。ボタン部282が船員等の人によって後方に向けて押圧されることによって、エンジン停止スイッチ28が操作されたことを示す信号がコントローラ26に送られる。
【0062】
図6に示すように、冷却水タンク29は、第1上面29aと第2上面29bとの間に位置する境界部34を有する。エンジン停止スイッチ28に接続される電線33は、境界部34に配置される。
【0063】
詳細には、境界部34は、第1上面29aと第2上面29bとを接続する接続面341を含む。接続面341は、上下方向と平行な面を含む。電線33は、接続面341に固定される電線支持具35によって支持された状態で境界部34に配置される。電線支持具35は、好ましい形態として接続面341の上下方向と平行な面に固定される。電線33は、接続面341に沿って配置され、第1上面29aよりも低い位置に配置される。このような構成とすることで、エンジン100のメンテナンスを行う作業者等が電線33を踏みつけたり、電線33に引っ掛かったりする可能性を低減することができる。
【0064】
<3.留意事項等>
本明細書中に開示される種々の技術的特徴は、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。また、本明細書中に示される複数の実施形態および変形例は可能な範囲で組み合わせて実施されてよい。
【0065】
以上に説明した実施形態では、エンジン100をV型エンジンとしたが、これは例示にすぎない。本発明は、例えば、ピストンが上下方向に往復動する直列型エンジンや、ピストンが水平方向に往復動する水平対向型エンジン等にも適用可能である。更に、エンジン停止スイッチを、エンジンを緊急に停止させる緊急停止用スイッチを例示して説明したが、通常時にエンジンを停止させる、通常のエンジン停止スイッチに対しても本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0066】
2・・・フライホイール
6・・・クランク軸
23・・・過給機
24・・・排気出口管
26・・・コントローラ
28・・・エンジン停止スイッチ
29・・・冷却水タンク(冷却部品)
29a・・・第1上面
29b・・・第2上面
31・・・サーモスタットケース(周辺部品)
33・・・電線
34・・・境界部
100・・・エンジン
291・・・注水部
311・・・サーモスタットカバー(周辺部品)