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  • 特開-防振ブッシュの製造方法 図1
  • 特開-防振ブッシュの製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131932
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】防振ブッシュの製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16F 1/38 20060101AFI20230914BHJP
【FI】
F16F1/38 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022036957
(22)【出願日】2022-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】522297236
【氏名又は名称】株式会社プロスパイラ
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】脇田 靖之
【テーマコード(参考)】
3J059
【Fターム(参考)】
3J059AD05
3J059BA42
3J059BC06
3J059EA03
3J059EA06
3J059GA02
3J059GA07
(57)【要約】
【課題】中間筒の内周面の形状を複雑にしても、中間筒の型抜きを容易に行う。
【解決手段】振動発生部および振動受部のうちのいずれか一方に取付けられる外筒11、および他方に取付けられるとともに、外筒の内側に配設された内筒12と、外筒と内筒との間に配設された合成樹脂製の中間筒13と、内筒の外周面と中間筒の内周面とを連結した弾性体14と、を備えた防振ブッシュ1の製造方法であって、内筒をインサート品として、弾性体を加硫成形し、かつ弾性体を内筒の外周面に加硫接着する加硫成形工程と、弾性体の外周面に接着剤を塗布する塗布工程と、内筒の外周面に弾性体が加硫接着され、かつ弾性体の外周面に接着剤が塗布された中間体10をインサート品として、中間筒を射出成形し、かつ中間筒を弾性体の外周面に接着する射出成形工程と、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動発生部および振動受部のうちのいずれか一方に取付けられる外筒、および他方に取付けられるとともに、前記外筒の内側に配設された内筒と、
前記外筒と前記内筒との間に配設された合成樹脂製の中間筒と、
前記内筒の外周面と前記中間筒の内周面とを連結した弾性体と、を備えた防振ブッシュの製造方法であって、
前記内筒をインサート品として、前記弾性体を加硫成形し、かつ前記弾性体を前記内筒の外周面に加硫接着する加硫成形工程と、
前記弾性体の外周面に接着剤を塗布する塗布工程と、
前記内筒の外周面に前記弾性体が加硫接着され、かつ前記弾性体の外周面に接着剤が塗布された中間体をインサート品として、前記中間筒を射出成形し、かつ前記中間筒を前記弾性体の外周面に接着する射出成形工程と、を有する、防振ブッシュの製造方法。
【請求項2】
前記中間筒の内周面における軸方向の両端部は、軸方向の外側に向かうに従い径方向の内側に向けて延び、
前記弾性体の外周面は、前記中間筒の内周面における軸方向の両端部に接着されている、請求項1に記載の防振ブッシュの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防振ブッシュの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば下記特許文献1に示されるように、振動発生部および振動受部のうちのいずれか一方に取付けられる外筒、および他方に取付けられるとともに、外筒の内側に配設された内筒と、外筒と内筒との間に配設された合成樹脂製の中間筒と、内筒の外周面と中間筒の内周面とを連結した弾性体と、を備えた防振ブッシュが知られている。
この種の防振ブッシュの製造方法では、一般に、内筒、および予め射出成形により形成しておいた中間筒をインサート品として、弾性体を加硫成形し、かつ弾性体を内筒の外周面および中間筒の内周面に加硫接着する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-97994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の防振ブッシュの製造方法では、中間筒が射出成形により形成されるので、例えば、中間筒の内周面おける軸方向の両端部が、軸方向の外側に向かうに従い径方向の内側に向けて延びている構成等を採用すると、中子が引っ掛かりやすくなる等、中間筒の型抜きが困難になるおそれがある。
このような中間筒の内周面おける軸方向の両端部に、弾性体を接着すると、防振ブッシュの軸方向のばね定数が高められることとなり、例えば防振特性の自由度が増すこと等が期待される。
【0005】
この発明は、このような事情を考慮してなされたもので、例えば防振特性の自由度を増大させる等のために、中間筒の内周面の形状を複雑にしても、中間筒の型抜きを容易に行うことができる防振ブッシュの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明の防振ブッシュの製造方法は、振動発生部および振動受部のうちのいずれか一方に取付けられる外筒、および他方に取付けられるとともに、前記外筒の内側に配設された内筒と、前記外筒と前記内筒との間に配設された合成樹脂製の中間筒と、前記内筒の外周面と前記中間筒の内周面とを連結した弾性体と、を備えた防振ブッシュの製造方法であって、前記内筒をインサート品として、前記弾性体を加硫成形し、かつ前記弾性体を前記内筒の外周面に加硫接着する加硫成形工程と、前記弾性体の外周面に接着剤を塗布する塗布工程と、前記内筒の外周面に前記弾性体が加硫接着され、かつ前記弾性体の外周面に接着剤が塗布された中間体をインサート品として、前記中間筒を射出成形し、かつ前記中間筒を前記弾性体の外周面に接着する射出成形工程と、を有する。
【0007】
射出成形工程時に、内筒の外周面に弾性体が加硫接着され、かつ弾性体の外周面に接着剤が塗布された中間体をインサート品とするので、中間筒の射出成形時に、中間筒の内周面が弾性体の外周面に接着されることとなり、中間筒の内周面形状が型抜きに及ぼす影響を排除することが可能になり、例えば防振特性の自由度を増大させる等のために、中間筒の内周面の形状を複雑にしても、中間筒の型抜きを容易に行うことができる。
【0008】
前記中間筒の内周面における軸方向の両端部は、軸方向の外側に向かうに従い径方向の内側に向けて延び、前記弾性体の外周面は、前記中間筒の内周面における軸方向の両端部に接着されてもよい。
【0009】
中間筒の内周面における軸方向の両端部が、軸方向の外側に向かうに従い径方向の内側に向けて延びていて、中間筒単体では、型抜き時に、中子を中間筒の内側から軸方向に抜き出しにくくなるおそれがある。
しかしながら、本態様では、中間筒の型抜き時には、中間筒の内周面における軸方向の両端部に、弾性体の外周面がすでに接着されていて、中間筒の内周面形状が型抜きに及ぼす影響が排除されていることから、顕著な作用効果を有する。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、例えば防振特性の自由度を増大させる等のために、中間筒の内周面の形状を複雑にしても、中間筒の型抜きを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態として示した防振ブッシュの平面図である。
図2図1のII-II線矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、防振ブッシュの一実施形態を、図1および図2を参照しながら説明する。
防振ブッシュ1は、振動発生部および振動受部のうちのいずれか一方に取付けられる外筒11、および他方に取付けられるとともに、外筒11の内側に配設された内筒12と、外筒11と内筒12との間に配設された合成樹脂製の中間筒13と、内筒12の外周面と中間筒13の内周面とを連結した弾性体14と、を備えている。
【0013】
防振ブッシュ1は、例えば自動車用のサスペンションブッシュやエンジンマウント、あるいは工場に設置される産業機械のマウント等として用いられる。
外筒11、内筒12、および中間筒13は、共通軸Oと同軸に配設されている。
以下、共通軸Oに沿う方向を軸方向という。また、防振ブッシュ1を軸方向から見た平面視において、共通軸Oに交差する方向を径方向といい、共通軸O回りに周回する方向を周方向という。
【0014】
外筒11の内周面に、全域にわたってゴム膜11aが設けられている。
内筒12は、外筒11および中間筒13から軸方向の両側に突出している。内筒12における軸方向の中央部に、径方向の外側に向けて膨出した膨出部12aが形成されている。膨出部12aは、全周にわたって連続して延びている。
中間筒13は、外筒11内に嵌合されている。中間筒13の外周面は、ゴム膜11aに当接している。中間筒13の内周面における軸方向の両端部は、軸方向の外側に向かうに従い径方向の内側に向けて延びている。中間筒13の内周面は、全域にわたって、内筒12の膨出部12aより径方向の外側に位置している。
【0015】
中間筒13には、2つの貫通孔13aが周方向に間隔をあけて形成されている。2つの貫通孔13aは、共通軸Oを径方向に挟む両側に設けられている。貫通孔13aは、中間筒13のうち、軸方向の両端部より軸方向の内側に位置する部分における全域にわたって設けられている。貫通孔13aの軸方向の両端部は、内筒12の膨出部12aにおける軸方向の両端部より軸方向の外側に位置している。
【0016】
弾性体14は、ゴム材料で形成されている。弾性体14は、内筒12の外周面に接着されている。弾性体14の外周面は、中間筒13の内周面のうち、軸方向の両端部を含む全域にわたって接着されている。弾性体14の外周面のうち、中間筒13の貫通孔13aと径方向に対向する部分に、窪み部14aが形成されている。窪み部14aは、径方向の外側から見て、貫通孔13aと同等の形状で同等の大きさに形成されるとともに、同等の位置に設けられている。弾性体14における軸方向の両端面に、共通軸Oと同軸に配設された環状凹部14bが各別に形成されている。環状凹部14bは、周方向の全長にわたって連続して延びている。
【0017】
次に、以上のように構成された防振ブッシュ1の製造方法について説明する。
【0018】
まず、内筒12をインサート品として、弾性体14を加硫成形し、かつ弾性体14を内筒12の外周面に加硫接着する(加硫成形工程)。
次に、弾性体14の外周面に接着剤を塗布する(塗布工程)。これにより、内筒12の外周面に弾性体14が加硫接着され、かつ弾性体14の外周面に接着剤が塗布された第1中間体(中間体)10が得られる。
次に、第1中間体10をインサート品として、中間筒13を射出成形し、かつ中間筒13の内周面を弾性体14の外周面に前記接着剤を介して接着する(射出成形工程)。これにより、第1中間体10における弾性体14の外周面に、中間筒13の内周面が接着された第2中間体20が得られる。
次に、内周面がゴム膜11aで覆われた外筒11内に、第2中間体20を嵌合することで、防振ブッシュ1が得られる。
【0019】
以上説明したように、本実施形態による防振ブッシュ1の製造方法によれば、射出成形工程時に、内筒12の外周面に弾性体14が加硫接着され、かつ弾性体14の外周面に接着剤が塗布された第1中間体10をインサート品とするので、中間筒13の射出成形時に、中間筒13の内周面が弾性体14の外周面に接着されることとなり、中間筒13の内周面形状が型抜きに及ぼす影響を排除することが可能になり、例えば防振特性の自由度を増大させる等のために、中間筒13の内周面の形状を複雑にしても、中間筒13の型抜きを容易に行うことができる。
【0020】
中間筒13の内周面における軸方向の両端部が、軸方向の外側に向かうに従い径方向の内側に向けて延びていて、中間筒単体では、型抜き時に、中子を中間筒の内側から軸方向に抜き出しにくくなるおそれがある。
しかしながら、本態様では、中間筒13の型抜き時には、中間筒13の内周面における軸方向の両端部に、弾性体14の外周面がすでに接着されていて、中間筒13の内周面形状が型抜きに及ぼす影響が排除されていることから、顕著な作用効果を有する。
【0021】
なお、本発明の技術範囲は、前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0022】
例えば、弾性体14の外周面に窪み部14aを形成しなくてもよく、中間筒13に貫通孔13aを形成しなくてもよい。
中間筒13の内周面における軸方向の両端部は、軸方向に真直ぐ延びてもよく、また、この部分に、径方向の内側に向けて突出する環状突部等を形成してもよい。
窪み部14aに液体を封入し、2つの窪み部14a同士を連通するオリフィス通路を設けてもよい。
【0023】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態および変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0024】
1 防振ブッシュ
10 中間体(第1中間体)
11 外筒
12 内筒
13 中間筒
14 弾性体
O 中心軸線
図1
図2