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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131944
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】エンジン
(51)【国際特許分類】
   F01P 3/20 20060101AFI20230914BHJP
   F02B 39/16 20060101ALI20230914BHJP
   F01N 13/10 20100101ALI20230914BHJP
【FI】
F01P3/20 T
F02B39/16 G
F01N13/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022036971
(22)【出願日】2022-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平尾 友
(72)【発明者】
【氏名】松尾 真也
【テーマコード(参考)】
3G004
3G005
【Fターム(参考)】
3G004AA08
3G004AA09
3G004BA05
3G005EA14
3G005EA21
3G005FA28
(57)【要約】
【課題】エンジンが備える過給機が過度に高温となることを抑制できる新たな技術を提供する。
【解決手段】例示的な液冷式エンジンは、シリンダブロック及びシリンダヘッドで構成されるエンジンブロックと、前記エンジンブロックに取り付けられる排気マニホールドと、前記排気マニホールドからの排ガスにより駆動される過給機と、前記排気マニホールドと前記過給機とを連結する排気連絡管と、前記エンジンブロックから排出された冷却液を前記排気連絡管、前記排気マニホールドの順に流す冷却液流路と、を備える。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液冷式エンジンであって、
シリンダブロック及びシリンダヘッドで構成されるエンジンブロックと、
前記エンジンブロックに取り付けられる排気マニホールドと、
前記排気マニホールドからの排ガスにより駆動される過給機と、
前記排気マニホールドと前記過給機とを連結する排気連絡管と、
前記エンジンブロックから排出された冷却液を前記排気連絡管、前記排気マニホールドの順に流す冷却液流路と、
を備える、エンジン。
【請求項2】
前記冷却液流路は、前記エンジンブロックの複数の箇所から排出された前記冷却液を集めて前記排気連絡管に排出する冷却液集合管を含む、請求項1に記載のエンジン。
【請求項3】
前記排気マニホールドおよび前記冷却液集合管は、クランク軸と平行に配置され、
前記過給機の少なくとも一部は、前記排気マニホールドよりもクランク軸方向の一方側に配置される、請求項2に記載のエンジン。
【請求項4】
クランク軸方向の他方側の端部に、前記排気マニホールドを流れた前記冷却液が送られる冷却液流路構成部品が配置される、請求項3に記載のエンジン。
【請求項5】
前記冷却液流路構成部品は、サーモスタットを収容するサーモスタットケース、および、冷却液クーラのうち、少なくとも一方を含む、請求項4に記載のエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、過給機を備えるエンジンが知られている。このようなエンジンにおいては、過給機の温度が過度に上昇することを防止するために、冷却系が設けられる。例えば特許文献1には、ターボチャージャのタービンハウジングに冷却水流路が設けられる構成が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-186954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
過給機に冷却水流路を設ける構成では、例えば、過給機の構造が複雑となることや、製造コストが高くなること等が懸念される。エンジンの構造が複雑となることを抑制しつつ、過給機の温度が過度に上昇することを抑制できる技術が望まれる。
【0005】
本発明は、エンジンが備える過給機が過度に高温となることを抑制できる新たな技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の例示的なエンジンは、液冷式エンジンであって、シリンダブロック及びシリンダヘッドで構成されるエンジンブロックと、前記エンジンブロックに取り付けられる排気マニホールドと、前記排気マニホールドからの排ガスにより駆動される過給機と、前記排気マニホールドと前記過給機とを連結する排気連絡管と、前記エンジンブロックから排出された冷却液を前記排気連絡管、前記排気マニホールドの順に流す冷却液流路と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
例示的な本発明によれば、エンジンが備える過給機が過度に高温となることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】エンジンの構成を示す概略斜視図
図2】エンジンが備えるシリンダブロック、ヘッドブロック、および、ヘッドカバーで構成される部分を抽出して示す概略斜視図
図3】エンジンが備えるシリンダブロック部分の概略断面図
図4】エンジンの構成を示す概略上面図
図5】エンジンが備える冷却液流路の概略構成を示す図
図6】エンジンの構成を示す概略正面図
図7】右気筒列専用冷却液流路および左気筒列専用冷却液流路の一部を構成する部品を示す概略斜視図
図8図7に示すVIII-VIII位置で切った断面を示す概略断面斜視図
図9】エンジンが備える右排気連絡管の構成を示す概略斜視図
図10】エンジンが備えるギヤケースの構成を示す概略斜視図
図11図10と異なる方向からギヤケースを見た場合のギヤケースの概略斜視図
図12】エンジンが備えるギヤケースの構成を示す概略右側面図
図13図12に示すXIII-XIII位置で切った断面を示す概略断面斜視図
図14図12に示すXIV-XIV位置で切った断面を示す概略断面斜視図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図面において、適宜、3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。以下の説明において、X方向を前後方向、Y方向を左右方向、Z方向を上下方向とする。なお、+X側が前側、-X側が後側とする。+Y側を右側、-Y側を左側とする。+Z側を上側、-Z側を下側とする。詳細には、図1に示すクランク軸(出力軸)の中心線Cが延びる方向を前後方向とし、シリンダブロック1に対してフライホイール2が配置される側を後側とする。また、シリンダブロック1に対してオイルパン3が配置される側を下側として上下方向を定義する。前後方向および上下方向に直交する方向を左右方向と定義し、後方から前方に向かって見た場合に右となる側を右側、左となる側を左側とする。なお、これらの方向は単に説明のために用いられる名称であって、実際の位置関係及び方向を限定する意図はない。また、本明細書では、クランク軸方向は、クランク軸の中心線Cが延びる前後方向と同じである。
【0010】
<1.エンジンの概要>
図1は、本発明の実施形態に係るエンジン100の構成を示す概略斜視図である。エンジン100は、例えば船舶に使用する舶用エンジンとして好適である。ただし、エンジン100は、舶用エンジンに限らず、他の用途に適用されてもよい。なお、エンジン100はディーゼルエンジンである。
【0011】
図1に示すように、エンジン100は、シリンダブロック1と、ヘッドブロック4と、ヘッドカバー5とを備える。シリンダブロック1およびヘッドブロック4は、エンジンブロック(エンジン本体)を構成する。すなわち、エンジン100はエンジンブロックを備える。図2は、エンジン100が備えるシリンダブロック1、ヘッドブロック4、および、ヘッドカバー5で構成される部分を抽出して示す概略斜視図である。図3は、エンジン100が備えるシリンダブロック1部分の概略断面図である。
【0012】
図2および図3に示すように、シリンダブロック1の内部には、前後方向に延びるクランク軸6およびピストン7が配置される。シリンダブロック1の内部は、下側に配置される潤滑油を貯留するオイルパン3の内部と繋がる。クランク軸6の後端には、フライホイール2(図1参照)が取り付けられる。フライホイール2は、クランク軸6と一体的に回転し、エンジン100の動力を取り出すために利用される。ピストン7は、詳細には、シリンダブロック1に形成されるシリンダ11内に配置される。ピストン7は、コネクティングロッド71を介してクランク軸6に連結される。
【0013】
詳細には、シリンダブロック1は、右側に配置される右シリンダ11Rと、左側に配置される左シリンダ11Lとを有する。右シリンダ11Rは、後方から見た場合に、上下方向に対して右側に傾き、斜め方向に延びる円筒状である。左シリンダ11Lは、後方から見た場合に、上下方向に対して左側に傾き、斜め方向に延びる円筒状である。右シリンダ11Rと左シリンダ11Lとは、V字状に配置される。なお、V字状に配置される一対の右シリンダ11Rと左シリンダ11Lとは、シリンダ軸が前後方向に若干ずれて配置される。本実施形態では、左シリンダ11Lが右シリンダ11Rに対して若干前方に配置される。
【0014】
シリンダブロック1は、複数の右シリンダ11Rが前後方向に並ぶ右気筒列111Rと、複数の左シリンダ11Lが前後方向に並ぶ左気筒列111Lとを有する。すなわち、エンジン100は、2つの気筒列111R、111Lを備える。2つの気筒列111R、111Lのそれぞれは、クランク軸方向に列が延びる。2つの気筒列111R、111Lは、互いに並んで配置される。なお、2つの気筒列111R、111Lは、詳細には左右方向に並ぶ。右気筒列111Rと左気筒列111Lとは、V字状のバンクを構成する。本実施形態では、右気筒列111Rを構成する右シリンダ11Rの数と、左気筒列111Lを構成する左シリンダ11Lの数は、一例として、いずれも6つである。すなわち、本実施形態のエンジン100は、V型12気筒エンジンである。
【0015】
右気筒列111Rと左気筒列111Lとのそれぞれにおいて、各シリンダ11にはヘッドブロック4が重ねて配置される。ヘッドブロック4は、シリンダブロック1に螺子を用いて締結される。詳細には、ヘッドブロック4は、右シリンダ11Rに重ねられる右ヘッドブロック4Rと、左シリンダ11Lに重ねられる左ヘッドブロック4Lとを含む。右ヘッドブロック4Rは、各右シリンダ11Rに1つずつ重ねられるために、右シリンダ11Rの数と同数存在する。左ヘッドブロック4Lは、各左シリンダ11Lに1つずつ重ねられるために、左シリンダ11Lの数と同数存在する。本実施形態では、右ヘッドブロック4Rおよび左ヘッドブロック4Lの数は、いずれも6つである。
【0016】
各ヘッドブロック4は、シリンダ11、ピストン7、および、ヘッドブロック4で構成される燃焼室にガスを供給するための吸気ポート41と、燃焼室からガスを排気する排気ポート(不図示)とを有する。なお、排気ポートは、吸気ポート41が設けられる面と反対側の面に設けられる。詳細には、右ヘッドブロック4Rは、左側の側面に吸気ポート41を有し、右側の側面に排気ポートを有する。左ヘッドブロック4Lは、右側の側面に吸気ポート41を有し、左側の側面に排気ポートを有する。
【0017】
各ヘッドブロック4の上には、ヘッドカバー5が被せられる。ヘッドカバー5は、螺子を用いてヘッドブロック4に締結される。各ヘッドカバー5は、ヘッドブロック4に配置される吸気弁および排気弁(不図示)を覆う。各ヘッドカバー5には、インジェクタ8が取り付けられる。インジェクタ8の、燃料を噴射する噴射口が設けられる一端部は、燃焼室に臨む。インジェクタ8の他端部は、ヘッドカバー5から外部に向けて突出する。
【0018】
詳細には、ヘッドカバー5は、右ヘッドブロック4Rに被せられる右ヘッドカバー5Rと、左ヘッドブロック4Lに被せられる左ヘッドカバー5Lとを含む。右ヘッドカバー5Rは、各右ヘッドブロック4Rに被せられるために、右ヘッドブロック4Rの数と同数存在する。左ヘッドカバー5Lは、各左ヘッドブロック4Lに被せられるために、左ヘッドブロック4Lの数と同数存在する。本実施形態では、右ヘッドカバー5Rおよび左ヘッドカバー5Lの数は、いずれも6つである。なお、右ヘッドカバー5Rに配置される右インジェクタ8R、および、左ヘッドカバー5Lに配置される左インジェクタ8Lの数も、いずれも6つである。
【0019】
シリンダブロック1の右側においては、右バンクRBを構成する右シリンダ11R、右ヘッドブロック4Rおよび右ヘッドカバー5Rが右斜め上方に延びる。また、シリンダブロック1の左側においては、左バンクLBを構成する左シリンダ11L、左ヘッドブロック4Lおよび左ヘッドカバー5Lが左斜め上方に延びる。前後方向からの平面視において、右バンクRBと左バンクLBとはV字状であり、エンジン100はVバンクを有する。右バンクRBと左バンクLBとの左右方向間には、バンク内エリア200が形成される。
【0020】
図1に戻って、エンジン100は、上面カバー9と側面カバー10とを備える。上面カバー9は、例えば、結露等が原因となって内部に配置されるコントローラ26(後述の図4等参照)等に水がかかることを防止する。側面カバー10は、例えば、ヘッドブロック4等の部品における亀裂等が原因となって燃料が飛散することを防止する。なお、図1には、右側面に配置される側面カバー10のみが示されるが、左側面にも同様の側面カバー10が配置される。すなわち、エンジン100は、左右一対の側面カバー10を備える。
【0021】
図4は、本発明の実施形態に係るエンジン100の構成を示す概略上面図である。図4においては、上面カバー9と一対の側面カバー10とは省略されている。図1および図4に示すように、エンジン100は、吸気マニホールド21および排気マニホールド22を備える。吸気マニホールド21および排気マニホールド22は、エンジンブロック(詳細にはヘッドブロック4)に取り付けられる。
【0022】
吸気マニホールド21は、外部から吸い込まれた空気または混合気である吸気を各シリンダ11に分配する。吸気マニホールド21は、エンジン100の上部に配置され、前後方向に延びる。詳細には、吸気マニホールド21は、右シリンダ11R用の右吸気マニホールド21Rと、左シリンダ11L用の左吸気マニホールド21Lとを含む。すなわち、エンジン100は、2つの吸気マニホールド21R、21Lを備える。
【0023】
右吸気マニホールド21Rは、前後方向に並ぶ複数の右ヘッドブロック4Rの各吸気ポート41(図2参照)の上側に配置される。右吸気マニホールド21Rの内部と、各右シリンダ11Rとは、各吸気ポート41を介して繋がる。左吸気マニホールド21Lは、前後方向に並ぶ複数の左ヘッドブロック4Lの各吸気ポート41の上側に配置される。左吸気マニホールド21Lの内部と、各左シリンダ11Lとは、各吸気ポート41を介して繋がる。
【0024】
なお、詳細には、各吸気ポート41と各シリンダ11との間には、吸気バルブ(不図示)が介在し、吸気バルブが開いた状態となると、吸気マニホールド21の内部とシリンダ11とは連通する。
【0025】
排気マニホールド22は、各シリンダ11からの排気を集約する。排気マニホールド22は、エンジン100の側面部に配置され、前後方向に延びる。詳細には、排気マニホールド22は、右シリンダ11R用の右排気マニホールド22Rと、左シリンダ11L用の左排気マニホールド22Lとを含む。
【0026】
右排気マニホールド22Rは、前後方向に並ぶ複数の右ヘッドブロック4R(図2参照)の右側に配置される。右排気マニホールド22Rの内部と、各右シリンダ11Rとは、右ヘッドブロック4Rの右側に設けられる排気ポート(不図示)を介して繋がる。左排気マニホールド22Lは、前後方向に並ぶ複数の左ヘッドブロック4L(図2参照)の左側に配置される。左排気マニホールド22Lの内部と、各左シリンダ11Lとは、左ヘッドブロック4Lの左側に設けられる排気ポート(不図示)を介して繋がる。
【0027】
なお、詳細には、各排気ポートと各シリンダ11との間には、排気バルブ(不図示)が介在し、排気バルブが開いた状態となると、排気マニホールド22の内部とシリンダ11とは連通する。
【0028】
右排気マニホールド22Rで集約された排ガスは、いずれもエンジン100の右後方に配置される右過給機23Rおよび右排気出口管24Rを介して外部に排気される。左排気マニホールド22Lで集約された排ガスは、いずれもエンジン100の左後方に配置される左過給機23Lおよび左排気出口管24Lを介して外部に排気される。
【0029】
右過給機23Rおよび左過給機23Lは、いずれもコンプレッサ部231とタービン部232とを有する。コンプレッサ部231は、エンジン100の外部から供給される空気等の吸気を加圧圧縮する。加圧圧縮された吸気は、インタークーラ25を介して吸気マニホールド21に供給される。タービン部232は、排気マニホールド22から供給される排ガスによって回転される。タービン部232の回転動力は、コンプレッサ部231に伝達される。すなわち、本実施形態の右過給機23Rおよび左過給機23Lは、排ガスタービンを駆動源とする、いわゆるターボチャージャである。エンジン100は、排気マニホールド22からの排ガスにより駆動される過給機23を備える。
【0030】
吸気マニホールド21と接続されるインタークーラ25は、冷却水ポンプ(不図示)によって冷却水を供給され、吸気を冷却する。コンプレッサ部231から供給される吸気は、加圧圧縮されることにより圧縮熱が発生して温度が上昇する。インタークーラ25は、冷却水ポンプから供給される冷却水と、加圧圧縮された吸気との間で熱交換を行うことで吸気を冷却する。すなわち、インタークーラ25が設けられることにより、吸気マニホールド21に供給される吸気の温度を所望の温度に調整することができる。
【0031】
図4に示すように、右吸気マニホールド21Rと左吸気マニホールド21Lとは、エンジン100の上部において、左右方向に間隔をあけて並ぶ。図4に示すように、上面カバー9を取り外した状態において、右吸気マニホールド21Rと左吸気マニホールド21Lとの間の空間を介して、バンク内エリア200は外部に露出する。バンク内エリア200には、例えば、エンジン100全体の制御を行うコントローラ26、および、インジェクタ8に燃料を供給する燃料ポンプ27等が配置される。
【0032】
つまり、エンジン100は、右気筒列111Rと左気筒列111Lとの間に位置するバンク内エリア200に配置されるコントローラ26を備える。また、エンジン100は、バンク内エリア200に配置される燃料ポンプ27を備える。なお、バンク内エリア200は、厳密な意味で、右気筒列111Rと左気筒列111Lとの間の空間領域であってもよい。ただし、本実施形態では、バンク内エリア200は、右気筒列111Rを含む右バンクRBと、左気筒列111Lを含む左バンクLBとの左右方向間の空間領域を広く含む。
【0033】
コントローラ26および燃料ポンプ27がバンク内エリア200に配置される構成とすることにより、バンク内エリア200を部品の配置に効率良く利用することができる。これにより、エンジン100の小型化を図ることができる。ただし、コントローラ26や燃料ポンプ27は、バンク内エリア200の外に配置されてもよい。
【0034】
なお、コントローラ26は、詳細には、第1コントローラ261と第2コントローラ262とを含む。ただし、コントローラ26の数は適宜変更されてよく、例えば、1つのコントローラのみで構成されてもよい。本実施形態において、第1コントローラ261と第2コントローラ262とは前後方向(クランク軸方向)に並ぶ。詳細には、第1コントローラ261は、第2コントローラ262よりも前方に位置する。第1コントローラ261と第2コントローラ262とのうち、いずれか一方がメインコントローラ、他方がサブコントローラとされる。本実施形態では、第1コントローラ261がメインコントローラであり、第2コントローラ262は、がサブコントローラである。
【0035】
メインコントローラとして構成される第1コントローラ261は、エンジン100の制御に必要な演算を実行する。エンジン100の制御に必要な演算には、例えば、燃料の噴射の制御に関わる演算や、エンジン100の停止に関わる演算等が含まれる。サブコントローラとして構成される第2コントローラ262は、第1コントローラ261と通信線(不図示)で接続され、第1コントローラ261と通信可能に設けられる。第2コントローラ262は、第1コントローラ261からの指示にしたがって制御動作を行う。
【0036】
第1コントローラ261は、右バンクRBに配置される右インジェクタ8Rの制御を行う。すなわち、第1コントローラ261と、各右インジェクタ8Rとは、電気的に接続される。また、第2コントローラ262は、左バンクLBに配置される左インジェクタ8Lの制御を行う。すなわち、第2コントローラ262と、各左インジェクタ8Lとは、電気的に接続される。
【0037】
また、燃料ポンプ27は、燃料を高圧として、右バンクRB用の高圧燃料パイプ(不図示)、および、左バンクLB用の高圧燃料パイプ(不図示)に向けて燃料を吐出する。右バンクRB用の高圧燃料パイプを通る燃料は、右バンクRBに配置される各右インジェクタ8Rに分配される。左バンクLB用の高圧燃料パイプを通る燃料は、左バンクLBに配置される各左インジェクタ8Lに分配される。各インジェクタ8は、コントローラ26による制御の下、燃料を燃焼室に噴射する。
【0038】
<2.冷却系>
本実施形態のエンジン100は、液冷式エンジンである。エンジン100は、エンジンブロックを構成するシリンダブロック1、および、複数のヘッドブロック4のそれぞれを冷却する冷却液を流す冷却液流路50(後述の図5参照)を備える。本実施形態において冷却液は冷却水である。ただし、冷却液は、例えば不凍液等の水以外の液体であってもよい。不凍液は、例えば、純水とエチレングリコールとを所定割合で混合した液体である。
【0039】
図5は、本発明の実施形態に係るエンジン100が備える冷却液流路50の概略構成を示す図である。本実施形態においては、冷却液流路50は、第1冷却液流路50Rおよび第2冷却液流路50Lを含む。すなわち、エンジン100は、第1冷却液流路50Rおよび第2冷却液流路50Lを備える。第1冷却液流路50Rは、2つの気筒列111R、111Lの一方に対して設けられる。第2冷却液流路50Lは、2つの気筒列111R、111Lの他方に対して設けられる。詳細には、第1冷却液流路50Rは、右気筒列111Rに対して設けられる冷却液流路である。第2冷却液流路50Lは、左気筒列111Lに対して設けられる冷却液流路である。
【0040】
第1冷却液流路50Rは、右気筒列専用冷却液流路51Rと共用冷却液流路52とを含む。第2冷却液流路50Lは、左気筒列専用冷却液流路51Lと共用冷却液流路52とを含む。共用冷却液流路52は、第1冷却液流路50Rと第2冷却液流路50Lとの両方に共用される冷却液流路である。
【0041】
図5に示すように、共用冷却液流路52には、冷却液ポンプ30と、冷却液クーラ31と、潤滑油クーラ32と、サーモスタット33を収容するサーモスタットケース34とが含まれる。図6は、本発明の実施形態に係るエンジン100の構成を示す概略正面図である。図6は、エンジン100を前方から後方に向かって見た図である。図6に示すように、冷却液ポンプ30、冷却液クーラ31、潤滑油クーラ32、および、サーモスタットケース34は、エンジン100の前端部に配置される。
【0042】
冷却液ポンプ30は、冷却液流路50に冷却液を循環させる。冷却液ポンプ30は、クランク軸6からギヤ(不図示)を介して伝達される回転動力により駆動される。本実施形態においては、冷却液ポンプ30は冷却水ポンプである。
【0043】
冷却液クーラ31は、冷却液流路50を循環する冷却液の冷却を行う。本実施形態において、冷却液クーラ31は清水クーラである。冷却液クーラ31は、海水ポンプ35の駆動によって汲み上げた海水との熱交換を利用して、冷却液流路50を循環する冷却液の冷却を行う。なお、海水ポンプ35は、エンジン100の前端部に配置される。海水ポンプ35は、クランク軸6からギヤ(不図示)を介して伝達される回転動力により駆動される。また、本実施形態では、海水ポンプ35で汲み上げられた海水は、インタークーラ25に送られた後に冷却液クーラ31に至り、外部(海)に放出される。すなわち、海水ポンプ35は、上述したインタークーラ25に冷却水を供給する冷却水ポンプの一例である。
【0044】
潤滑油クーラ32は、潤滑油を冷却する。潤滑油は、潤滑油ポンプ(不図示)の駆動により、オイルパン3からエンジン100の各部に供給され、オイルパン3に戻る。潤滑油クーラ32は、潤滑油の流路も構成する。潤滑油クーラ32は、冷却液流路50を流れる冷却液を用いて潤滑油の冷却を行う。なお、潤滑油ポンプは、クランク軸6からギヤ(不図示)を介して伝達される回転動力により駆動される。
【0045】
サーモスタットケース34は、冷却液クーラ31に配置されるサーモスタット33を覆い、冷却液流路50を構成する。サーモスタット33は、冷却液の温度を設定された温度の付近に保つ機能を有する。サーモスタット33の機能により、冷却が必要とされる冷却液は冷却液クーラ31に送られる。
【0046】
冷却液ポンプ30から吐出された冷却液は、右気筒列専用冷却液流路51Rおよび左気筒列専用冷却液流路51Lに送られる。右気筒列専用冷却液流路51Rと左気筒列専用冷却液流路51Lとのそれぞれを通過した冷却液は、サーモスタット33を収容するサーモスタットケース34へと送られる。サーモスタットケース34に送られた冷却液には、サーモスタット33の作用により、冷却液クーラ31に送られる冷却液と、冷却液クーラ31に送られることなく冷却液ポンプ30に戻る冷却液が存在する。冷却液クーラ31に送られた冷却液は、冷却液クーラ31の熱交換部311(図6参照)で冷却され、冷却液クーラ31の冷却液タンク312(図6参照)に送られる。冷却液タンク312に溜められた冷却液は、適宜、冷却液ポンプ30に送られる。また、冷却液クーラ31に送られた冷却液の一部は、潤滑油クーラ32を介して冷却液ポンプ30に戻る。
【0047】
図7は、右気筒列専用冷却液流路51Rおよび左気筒列専用冷却液流路51Lの一部を構成する部品を示す概略斜視図である。図7において、白抜きの矢印は冷却液の流れを示す。図7に示すように、右気筒列専用冷却液流路51Rを構成する部品には、右排気マニホールド22R、右冷却液集合管28R、および、右排気連絡管29Rが含まれる。左気筒列専用冷却液流路51Lを構成する部品には、左排気マニホールド22L、左冷却液集合管28L、および、左排気連絡管29Lが含まれる。
【0048】
右排気マニホールド22Rおよび左排気マニホールド22Lは、前後方向に延びる筒状である。図8は、図7に示すVIII-VIII位置で切った断面を示す概略断面斜視図である。図8において、太い矢印は冷却液の流れを示す。図8に示すように、右排気マニホールド22Rおよび左排気マニホールド22Lのそれぞれは、内側の側面に設けられる排気ガス入口221と連通するマニホールド内排気管222を内部に有する。なお、排気ガス入口221は、各排気マニホールド22R、22Lにおいて、前後方向に複数並んで設けられ、それらのそれぞれが、各ヘッドブロック4に設けられる排気ポートと連通する。右排気マニホールド22Rおよび左排気マニホールド22Lのそれぞれにおいて、冷却液は、各排気マニホールド22R、22Lの内部空間SP1を流れる。詳細には、冷却液は、内部空間SP1に配置されるマニホールド内排気管222の周りを流れる。
【0049】
右冷却液集合管28Rおよび左冷却液集合管28Lは、前後方向に延びる筒状である。右冷却液集合管28Rは、右排気マニホールド22Rと並べて配置され、右排気マニホールド22Rに取り付けられる。右冷却液集合管28Rは、右排気マニホールド22Rの右斜め上方に配置される。左冷却液集合管28Lは、左排気マニホールド22Lと並べて配置され、左排気マニホールド22Lに取り付けられる。左冷却液集合管28Lは、左排気マニホールド22Lの左斜め上方に配置される。
【0050】
右冷却液集合管28Rおよび左冷却液集合管28Lのそれぞれの内側の側面には、複数の冷却液孔281が設けられる。各冷却液集合管28R、28Lには、各気筒列111R、111Lを構成するシリンダ(気筒)の数と同数の冷却液孔281が、前後方向に間隔をあけて配置される。本実施形態では、各冷却液集合管28R、28Lに設けられる冷却液孔281の数は6つである。
【0051】
各冷却液孔281は、不図示の冷却液パイプにより各ヘッドブロック4に設けられる冷却液流路と繋がる。右バンクRBを構成する各ヘッドブロック4の冷却液流路と繋がる冷却液パイプから排出された冷却液は、各冷却液孔281を介して右冷却液集合管28Rの内部空間SP2に流れ込む。左バンクLBを構成する各ヘッドブロック4の冷却液流路と繋がる冷却液パイプから排出された冷却液は、各冷却液孔281を介して左冷却液集合管28Lの内部空間SP2に流れ込む。
【0052】
図7に示すように、右排気連絡管29Rは、右排気マニホールド22Rの後端に接続される。左排気連絡管29Lは、左排気マニホールド22Lの後端に接続される。図1に示すように、右排気連絡管29Rは、右過給機23Rのタービン部232に接続される。左排気連絡管29Lは、左過給機23Lのタービン部232に接続される。換言すると、右排気連絡管29Rは、右排気マニホールド22Rと右過給機23Rとを連結する。左排気連絡管29Lは、左排気マニホールド22Lと左過給機23Lとを連結する。すなわち、エンジン100は、排気マニホールド22と過給機23とを連結する排気連絡管29を備える。
【0053】
図9は、本発明の実施形態にかかるエンジン100が備える右排気連絡管29Rの構成を示す概略斜視図である。図9において、太い矢印は冷却液の流れを示す。なお、左排気連絡管29Lは、右排気連絡管29Rと主要構成が同じである。このために、右排気連絡管29Rを代表例として排気連絡管29の構成について説明する。
【0054】
図9に示すように、右排気連絡管29Rは、内部に空間SP3を有する。この内部空間SP3には、排気ガスを通す連絡管内排気管291が配置される。右排気連絡管29Rの前面には、連絡管内排気管291の一端と繋がる排気入口292が設けられる。右排気連絡管29Rと右排気マニホールド22Rとが接続された状態で、連絡管内排気管291とマニホールド内排気管222とは連通する。
【0055】
また、右排気連絡管29Rには、連絡管内排気管291の他端と繋がる排気出口293が設けられる。右排気連絡管29Rと、右過給機23Rのタービン部232とが接続された状態で、連絡管内排気管291とタービン部232の内部とは連通する。すなわち、右バンクRBの各燃焼室からの排気ガスは、右排気マニホールド22Rのマニホールド内排気管222および右排気連絡管29Rの連絡管内排気管291を通って、右過給機23Rのタービン部232に送られる。同様に、左バンクLBの各燃焼室からの排気ガスは、左排気マニホールド22Lのマニホールド内排気管222および左排気連絡管29Lの連絡管内排気管291を通って、左過給機23Lのタービン部232に送られる。
【0056】
図9に示すように、右排気連絡管29Rには、冷却液の入口である冷却液入口294が設けられる。詳細には、冷却液入口294は、右排気連絡管29Rの右側面に設けられる。ただし、冷却液入口294が設けられる場所は適宜変更されてよい。図7に示すように、冷却液入口294は、冷却液連絡管36を介して右冷却液集合管28Rの内部空間SP2と連通する。また、右排気連絡管29Rの前面には、冷却液の出口である冷却液出口295が設けられる。右排気連絡管29Rと右排気マニホールド22Rとが接続された状態で、冷却液出口295は、右排気マニホールド22Rの内部空間SP1と連通する。
【0057】
右排気連絡管29Rにおいて、冷却液入口294から内部空間SP3に入った冷却液は、連絡管内排気管291の周りを流れて冷却液出口295から排出される。同様に、左排気連絡管29Lにおいて、冷却液入口294から内部空間SP3に入った冷却液は、連絡管内排気管291の周りを流れて冷却液出口295から排出される。
【0058】
冷却液ポンプ30から吐出されて右気筒列専用冷却液流路51Rを流れる冷却液は、シリンダブロック1および右バンクRBを構成する各ヘッドブロック4に設けられる右気筒列111R用の冷却液流路に送られる。図7において白抜きの矢印で示すように、右バンクRBを構成する各ヘッドブロック4から排出された冷却液は、右排気連絡管29R、右排気マニホールド22Rの順に流れる。
【0059】
また、冷却液ポンプ30から吐出されて左気筒列専用冷却液流路51Lを流れる冷却液は、シリンダブロック1および左バンクLBを構成する各ヘッドブロック4に設けられる左気筒列111L用の冷却液流路に送られる。図7において白抜きの矢印で示すように、左バンクLBを構成する各ヘッドブロック4から排出された冷却液は、左排気連絡管29L、左排気マニホールド22Lの順に流れる。
【0060】
すなわち、本実施形態においては、エンジン100は、エンジンブロックから排出された冷却液を排気連絡管29、排気マニホールド22の順に流す冷却液流路50を備える。このように構成すると、エンジン100にとって重要な部分であるエンジンブロック(シリンダブロック1およびヘッドブロック4)を、まず冷却液で冷却することができる。そして、エンジンブロックから排出された比較的低温の冷却液を、排気マニホールド22ではなく排気連絡管29に先に送ることによって、エンジン100において温度が特に高くなり易い過給機23の手前部分を優先的に冷却することができる。これにより、過給機23の排気入口部分の温度上昇を適切に抑制することができ、過給機23の温度が過度に上昇することを抑制できる。
【0061】
詳細には、右バンクRBを構成する各ヘッドブロック4から排出された冷却液は、右冷却液集合管28R、右排気連絡管29R、右排気マニホールド22Rの順に流れる。また、左バンクLBを構成する各ヘッドブロック4から排出された冷却液は、左冷却液集合管28L、左排気連絡管29L、左排気マニホールド22Lの順に流れる。すなわち、冷却液流路50は、エンジンブロックの複数の箇所から排出された冷却液を集めて排気連絡管29に排出する冷却液集合管28を含む。
【0062】
本実施形態において、排気マニホールド22および冷却液集合管28は、クランク軸6と平行に配置される。別の言い方をすると、排気マニホールド22および冷却液集合管28は、クランク軸6と並んで配置される。詳細には、排気マニホールド22および冷却液集合管28は、クランク軸6と左右方向に並んで配置される。より詳細には、右排気マニホールド22Rおよび右冷却液集合管28Rは、クランク軸6の右側に並んで配置される。左排気マニホールド22Lおよび左冷却液集合管28Lは、クランク軸6の左側に並んで配置される。
【0063】
過給機23の少なくとも一部は、排気マニホールド22よりもクランク軸方向の一方側に配置される。本例では、クランク軸方向の一方側は後方側を指す。詳細には、右過給機23Rの少なくとも一部は、右排気マニホールド22Rおよび右冷却液集合管28Rよりも後方に配置される。左過給機23Lの少なくとも一部は、左排気マニホールド22Lおよび左冷却液集合管28Lよりも後方に配置される。このような配置とすることで、過給機23の近くに配置される排気連絡管29と、冷却液集合管28および排気マニホールド22の両方とを連結する構造を複雑な形状とすることなく構成できる。すなわち、冷却液集合管28、排気連絡管29、排気マニホールド22の順に冷却液が流れる冷却液流路をコンパクト且つ簡単な構造として形成することができる。
【0064】
エンジン100のクランク軸方向の他方側の端部に、排気マニホールド22を流れた冷却液が送られる冷却液流路構成部品が配置される。本例では、クランク軸方向の他方側は前方側を指す。図7に白抜きの矢印で示すように、右排気マニホールド22Rおよび左排気マニホールド22Lを流れる冷却液は、後方から前方に向けて流れる。このために、エンジン100の後方側の端部に冷却液流路構成部品を配置することで、エンジン100を構成する部品を効率良く配置することができる。
【0065】
冷却液流路構成部品は、冷却液流路を構成する部品を広く含んでよい。冷却液流路構成部品は、例えば冷却液を流す冷却管等を含んでもよい。冷却液流路構成部品は、冷却液の冷却に関わる部品であることが好ましい。詳細には、冷却液流路構成部品は、サーモスタット33を収容するサーモスタットケース34、および、冷却液クーラ31のうち、少なくとも一方を含むことが好ましい。排気マニホールド22から排出される冷却液は、排ガス等から熱を奪って冷却液ポンプ30から排出された時点よりも高温となる。このために、排気マニホールド22から冷却液が排出される付近に冷却液クーラ31や、冷却液クーラ31とセットで使用されるサーモスタット33が配置される構成とすることで、冷却性能を維持するための冷却液の冷却を効果的に行うことができる。
【0066】
なお、本実施形態では、冷却液クーラ31は、上述のように清水クーラであるが、清水クーラ以外であってもよく、例えばラジエータであってもよい。すなわち、冷却液クーラの範疇には、清水クーラとラジエータとが含まれてよい。
【0067】
第1冷却液流路50Rは、2つの気筒列111R、111Lの一方を冷却した冷却液を集める右冷却液集合管(第1冷却液集合管)28Rを含む。第1冷却液流路50Rは、右冷却液集合管28Rと連結される水冷式の右排気連絡管29Rと、右排気連絡管29Rと連結される水冷式の右排気マニホールド22Rとを更に含む。詳細には、右冷却液集合管28R、水冷式の右排気連絡管29R、および、水冷式の右排気マニホールド22Rは、右気筒列専用冷却液流路51Rを構成する。
【0068】
第2冷却液流路50Lは、2つの気筒列111R、111Lの他方を冷却した冷却液を集める左冷却液集合管(第2冷却液集合管)28Lを含む。第2冷却液流路50Lは、左冷却液集合管28Lと連結される水冷式の左排気連絡管29Lと、左排気連絡管29Lと連結される水冷式の左排気マニホールド22Lとを更に含む。詳細には、左冷却液集合管28L、水冷式の左排気連絡管29L、および、水冷式の左排気マニホールド22Lは、左気筒列専用冷却液流路51Lを構成する。
【0069】
本実施形態においては、図7に示すように、右排気マニホールド22Rから排出された冷却液は、冷却管37を介してギヤケース40に設けられる冷却液流路に流れ込む。左排気マニホールド22Lから排出された冷却液は、冷却管37を介してギヤケース40に設けられる冷却液流路に流れ込む。すなわち、エンジン100は、第1冷却液流路50Rの一部と第2冷却液流路50Lの一部とが設けられるギヤケース40を備える。ただし、これは例示であって、ギヤケースには、第1冷却液流路50Rの一部および/又は第2冷却液流路50Lの一部が設けられる構成であってよい。
【0070】
ギヤケース40は、例えば、クランク軸6の回転動力を、冷却液ポンプ30、海水ポンプ35、オルタネータ(不図示)等の回転軸に伝達するギヤ(不図示)を収容する。すなわち、本実施形態の構成は、エンジン100に元来備えられる付属部品であるギヤケース40を利用して2つの気筒列111R、111Lの冷却液流路50を形成する構成である。このために、2つの気筒列111R、111Lを備えるエンジン100において、部品点数の増加を抑制しつつ冷却液流路を構成することができる。部品点数を削減できるために、冷却液流路を配置するスペースを少なくして、エンジン100のコンパクト化を図ることができる。
【0071】
なお、本実施形態においては、冷却液ポンプ30および海水ポンプ35は、ギヤケース40に取り付けられる。また、ギヤケース40は、2つの気筒列111R、111Lよりも前方に配置される。ギヤケース40は、エンジンブロックよりも前方に配置される。
【0072】
図10は、本発明の実施形態に係るエンジン100が備えるギヤケース40の構成を示す概略斜視図である。図11は、図10と異なる方向からギヤケース40を見た場合のギヤケース40の概略斜視図である。図10は、右斜め前方からギヤケース40を見た図である。図11は、右斜め後方からギヤケース40を見た図である。図12は、エンジン100が備えるギヤケース40の構成を示す概略右側面図である。図13は、図12に示すXIII-XIII位置で切った断面を示す概略断面斜視図である。図14は、図12に示すXIV-XIV位置で切った断面を示す概略断面斜視図である。なお、図10図11図13、および、図14において、太い矢印は冷却液の流れを示す。
【0073】
図10図14に示すように、ギヤケース40は、前後方向に厚みを有し、前後方向と直交する方向に広がる板状である。前後方向からの平面視において、ギヤケース40は、中央下方寄りに、前後方向に貫通するクランク軸孔401を有する。クランク軸孔401には、クランク軸6の前端部が入れられる。また、ギヤケース40は、クランク軸孔401の前方にベアリング収容凹部402を有する。ベアリング収容凹部402は、前方から後方に向かって凹み、クランク軸6を回転可能に支持するベアリング38(図6参照)を収容する。また、ギヤケース40は、後面に、前方に向かって凹むギヤ収容凹部403を有する。ギヤ収容凹部403は、クランク軸6の回転動力を伝達する複数のギヤ(不図示)を収容する。複数のギヤには、例えば、冷却液ポンプ30に回転動力を伝達するギヤ、および、海水ポンプ35に回転動力を伝達するギヤが含まれる。また、ギヤケース40は、右側の前面に、冷却液ポンプ30を取り付ける冷却液ポンプ取付開口404を有する。また、ギヤケース40は、左側の前面に、海水ポンプ35を取り付ける海水ポンプ取付開口405を有する。
【0074】
ギヤケース40は、右側面上部に、右冷却液集合管28Rからの冷却液を入れる右側面冷却液入口406Rを有する。右側面冷却液入口406Rは、ギヤケース40の内部に設けられる右気筒列用第1ケース内流路407R(図13参照)と繋がる。右気筒列用第1ケース内流路407Rは、ギヤケース40の上部に設けられ、左右方向に延びる。なお、右気筒列用第1ケース内流路407Rは、第1冷却液流路50Rに含まれ、詳細には、右気筒列専用冷却液流路51Rに含まれる。
【0075】
また、ギヤケース40は、左側面上部に、左冷却液集合管28Lからの冷却液を入れる左側面冷却液入口406Lを有する。左側面冷却液入口406Lは、ギヤケース40の内部に設けられる左気筒列用第1ケース内流路407L(図13参照)と繋がる。左気筒列用第1ケース内流路407Lは、ギヤケース40の上部に設けられ、右気筒列用第1ケース内流路407Rの左側に配置される。なお、左気筒列用第1ケース内流路407Lは、第2冷却液流路50Lに含まれ、詳細には、左気筒列専用冷却液流路51Lに含まれる。
【0076】
右気筒列用第1ケース内流路407Rと左気筒列用第1ケース内流路407Lとは、ギヤケース40内において、上下方向に延びる隔壁408によって仕切られている。すなわち、ギヤケース40は、第1冷却液流路50Rと第2冷却液流路50Lとを隔てる隔壁408を有する。右側面冷却液入口406Rからケース内に入る冷却液と、左側面冷却液入口406Lからケース内に入る冷却液との間で水圧に差が生じることがある。このような場合に、隔壁408がないと、圧力差による逆流が起こる可能性がある。隔壁408が設けられることにより、このような圧力差による逆流を防ぐことができる。なお、右側面冷却液入口406Rからケース内に入る冷却液と、左側面冷却液入口406Lからケース内に入る冷却液がいずれも充分な圧力を有し、圧力差による逆流を起こすことなく下流へと流れる場合は、隔壁408を設けず、右側面冷却液入口406Rからケース内に入る冷却液と、左側面冷却液入口406Lからケース内に入る冷却液とがギヤケース40内で合流する構成としてもよい。
【0077】
ギヤケース40の上面には、右上面冷却液出口409Rと、左上面冷却液出口409Lとが設けられる。右上面冷却液出口409Rと左上面冷却液出口409Lとは、ギヤケース40の上面の左端寄りに左右に並んで配置される。右上面冷却液出口409Rは、左上面冷却液出口409Lの右側に配置される。右上面冷却液出口409Rは、右気筒列用第1ケース内流路407Rと繋がる。左上面冷却液出口409Lは、左気筒列用第1ケース内流路407Lと繋がる。
【0078】
右側面冷却液入口406Rから右気筒列用第1ケース内流路407Rに入った冷却液は、右上面冷却液出口409Rからケース外に排出されてサーモスタットケース34に送られる。左側面冷却液入口406Lから左気筒列用第1ケース内流路407Lに入った冷却液は、左上面冷却液出口409Lからケース外に排出されてサーモスタットケース34に送られる。すなわち、右冷却液集合管(第1冷却液集合管)28Rおよび左冷却液集合管(第2冷却液集合管)28Lからギヤケース40に入った冷却液は、サーモスタット33を収容するサーモスタットケース34に排出される。ただし、これは例示であって、右冷却液集合管28Rおよび/又は左冷却液集合管28Lからギヤケース40に入った冷却液が、サーモスタット33を収容するサーモスタットケース34に排出される構成であってよい。
【0079】
図10および図14に示すように、ギヤケース40は、前面上部の右寄りに、潤滑油クーラ32から排出された冷却液をケース内部へと導く第1前面冷却液入口410を有する。ギヤケース40は、内部に、第1前面冷却液入口410と繋がる共用ケース内流路411を有する。共用ケース内流路411は、共用冷却液流路52に含まれる。ギヤケース40は、前面の右端部に、共用ケース内流路411と繋がる前面冷却液出口412を有する。前面冷却液出口412は、第1前面冷却液出口410よりも右側且つ下側に配置される。第1前面冷却液入口410から共用ケース内流路411に入った冷却液は、前面冷却液出口412からケース外に排出されて冷却液ポンプ30に送られる。
【0080】
以上からわかるように、ギヤケース40は、第1冷却液流路50Rと第2冷却液流路50Lとの両方に共用される共用冷却液流路52を有する。詳細には、ギヤケース40は、共用冷却液流路52の一部を有する。ギヤケース40に設けられる共用冷却液流路52は、潤滑油を冷却する潤滑油クーラ32から排出された冷却液を冷却液ポンプ30へと導く流路を含む。
【0081】
また、図10および図14に示すように、ギヤケース40は、前面の中央部に、冷却液ポンプ30から吐出された冷却液をケース内部へと導く第2前面冷却液入口413を有する。ギヤケース40は、内部に、第2前面冷却液入口413と繋がり、冷却液を第1冷却液流路50Rと第2冷却液流路50Lとに分ける分岐部414を有する。分岐部414は、共用冷却液流路52に含まれる。
【0082】
図14に示すように、ギヤケース40は、内部に、分岐部414と繋がり、右斜め下方に延びる右気筒列用第2ケース内流路415Rを有する。右気筒列用第2ケース内流路415Rは、第1冷却液流路50Rに含まれ、詳細には、右気筒列専用冷却液流路51Rに含まれる。また、ギヤケース40は、内部に、分岐部414と繋がり、左斜め下方に延びる左気筒列用第2ケース内流路415Lを有する。左気筒列用第2ケース内流路415Lは、第2冷却液流路50Lに含まれ、詳細には、左気筒列専用冷却液流路51Lに含まれる。
【0083】
図11に示すように、ギヤケース40は、後面下部の右端に、右気筒列用第2ケース内流路415Rと繋がる右後面冷却液出口416Rを有する。また、ギヤケース40は、後面下部の左端に、左気筒列用第2ケース内流路415Lと繋がる左後面冷却液出口416Lを有する。
【0084】
冷却液ポンプ30から吐出された冷却液は、分岐部414で右気筒列用第2ケース内流路415Rを流れる冷却液と、左気筒列用第2ケース内流路415Lを流れる冷却液とに分かれる。右気筒列用第2ケース内流路415Rを流れる冷却液は、右後面冷却液出口416Rからケース外に排出され、シリンダブロック1に設けられる右気筒列用の冷却流路へと送られる。左気筒列用第2ケース内流路415Lを流れる冷却液は、左後面冷却液出口416Lからケース外に排出され、シリンダブロック1に設けられる左気筒列用の冷却流路へと送られる。
【0085】
以上からわかるように、ギヤケース40に設けられる第1冷却液流路50Rの一部は、冷却液ポンプ30から供給された冷却液を2つの気筒列111R、111Lの一方に導く流路を含む。また、ギヤケース40に設けられる第2冷却液流路50Lの一部は、冷却液ポンプ30から供給された冷却液を2つの気筒列111R、111Lの他方に導く流路を含む。本例では、2つの気筒列111R、111Lの一方は、右気筒列111Rである。2つの気筒列111R、111Lの他方は、左気筒列111Lである。
【0086】
本実施形態では、ギヤケース40の内部に、冷却液を流す複数種類の流路が設けられ、冷却液流路50を効率良く形成することができる。
【0087】
<3.留意事項等>
本明細書中に開示される種々の技術的特徴は、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。また、本明細書中に示される複数の実施形態および変形例は可能な範囲で組み合わせて実施されてよい。
【0088】
以上に説明した実施形態では、エンジン100をV型エンジンとしたが、これは例示にすぎない。本発明は、例えば、ピストンが上下方向に往復動する直列型エンジンや、ピストンが水平方向に往復動する水平対向型エンジン等にも適用可能である。
【符号の説明】
【0089】
1・・・シリンダブロック(エンジンブロック)
4・・・ヘッドブロック(エンジンブロック)
6・・・クランク軸
22・・・排気マニホールド
23・・・過給機
28・・・冷却液集合管
29・・・排気連絡管
31・・・冷却液クーラ(冷却液流路構成部品)
34・・・サーモスタットケース(冷却液流路構成部品)
50・・・冷却液流路
100・・・エンジン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14