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特開2023-131963直動案内ユニットおよび直動案内ユニットの予圧抜け判断方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131963
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】直動案内ユニットおよび直動案内ユニットの予圧抜け判断方法
(51)【国際特許分類】
   F16C 29/06 20060101AFI20230914BHJP
   F16C 41/00 20060101ALI20230914BHJP
   F16C 19/28 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
F16C29/06
F16C41/00
F16C19/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022037002
(22)【出願日】2022-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000229335
【氏名又は名称】日本トムソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136098
【弁理士】
【氏名又は名称】北野 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100137246
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勝也
(74)【代理人】
【識別番号】100158861
【弁理士】
【氏名又は名称】南部 史
(74)【代理人】
【識別番号】100194674
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 覚史
(72)【発明者】
【氏名】井上 智晶
(72)【発明者】
【氏名】小椋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】板橋 成政
【テーマコード(参考)】
3J104
3J217
3J701
【Fターム(参考)】
3J104AA03
3J104AA24
3J104AA36
3J104AA69
3J104AA74
3J104BA64
3J104DA01
3J217JA14
3J217JA22
3J217JB02
3J217JB68
3J701AA13
3J701AA34
3J701AA44
3J701AA64
3J701FA25
3J701FA41
3J701GA31
(57)【要約】
【課題】高い剛性を保ちながら、転動体に付与する予圧を適切に維持して円滑なスライダの摺動を確保することができる直動案内ユニットを提供する。
【解決手段】直動案内ユニット10aは、レール11aと、スライダ21aと、複数の転動体と、を備える。スライダ21aは、ケーシング22aと、エンドキャップ23a,23bと、を含む。ケーシング22aは、レール11aの幅方向の両側に配置される一対の袖部28a,28bと、一対の袖部28a,28bのそれぞれと連結されるベース部29aと、を含む。直動案内ユニット10aは、ケーシング22aに取り付けられ、ケーシング22aの歪を検出する歪センサ51aと、歪センサ51aにより検出された歪のデータに基づいて転動体に付与された予圧が抜けたか否かを判断する判断部および判断部による判断結果を出力する出力部を有する制御装置53aと、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に延びる第1軌道面を有するレールと、
前記レールに相対移動可能に取り付けられ、前記第1軌道面に対向する第2軌道面を有するスライダと、
前記第1軌道面と前記第2軌道面とから構成される軌道路を転動する複数の転動体と、を備える直動案内ユニットであって、
前記スライダは、
前記軌道路と並行する第1循環路が設けられ、前記第2軌道面を含むケーシングと、
前記ケーシングの長手方向の一方側に配置され、前記軌道路と前記第1循環路とを接続する第2循環路が設けられるエンドキャップと、を含み、
前記ケーシングは、
前記レールの幅方向の両側に配置される一対の袖部と、
前記一対の袖部のそれぞれと連結されるベース部と、を含み、
前記直動案内ユニットは、
前記ケーシングに取り付けられ、前記ケーシングの歪を検出する歪センサと、
前記歪センサにより検出された前記歪のデータに基づいて前記転動体に付与された予圧が抜けたか否かを判断する判断部および前記判断部による判断結果を出力する出力部を有する制御装置と、を含む、直動案内ユニット。
【請求項2】
前記歪センサは、前記幅方向における前記ケーシングの両側面に一対取り付けられる、請求項1に記載の直動案内ユニット。
【請求項3】
前記歪センサは、前記一対の袖部のそれぞれの側面に一対取り付けられる、請求項2に記載の直動案内ユニット。
【請求項4】
前記判断部は、前記一対の前記歪センサによりそれぞれ検出された前記歪のデータの和の値が第1の値以上であると判断すれば、前記転動体に付与された予圧が抜けたと判断する、請求項2または請求項3に記載の直動案内ユニット。
【請求項5】
前記歪センサは、前記幅方向における前記ケーシングのいずれか一方の側面に取り付けられる、請求項1に記載の直動案内ユニット。
【請求項6】
前記判断部は、前記歪センサにより検出された前記歪のデータが第2の値以上であると判断すれば、前記転動体に付与された予圧が抜けたと判断する、請求項5に記載の直動案内ユニット。
【請求項7】
前記転動体は、ローラである、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の直動案内ユニット。
【請求項8】
前記出力部は、予圧が抜けた状態であることを表示することおよび予圧が抜けた状態であることを音声により報知することのうちの少なくともいずれか一方により出力する、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の直動案内ユニット。
【請求項9】
長手方向に延びる第1軌道面を有するレールと、
前記レールに相対移動可能に取り付けられ、前記第1軌道面に対向する第2軌道面を有するスライダと、
前記第1軌道面と前記第2軌道面とから構成される軌道路を転動する複数の転動体と、を備える直動案内ユニットの予圧抜け判断方法であって、
前記スライダは、
前記軌道路と並行する第1循環路が設けられ、前記第2軌道面を含むケーシングと、
前記ケーシングの長手方向の一方側に配置され、前記軌道路と前記第1循環路とを接続する第2循環路が設けられるエンドキャップと、を含み、
前記ケーシングは、
前記レールの幅方向の両側に配置される一対の袖部と、
前記一対の袖部のそれぞれと連結されるベース部と、を含み、
前記直動案内ユニットは、
前記幅方向における前記ケーシングの両側面に取り付けられ、前記ケーシングの歪を検出する一対の歪センサを含み、
直動案内ユニットの予圧抜け判断方法は、
前記一対の歪センサによりそれぞれ検出された前記ケーシングの歪の和の値が、第1の値以上となるか否かを判断するステップと、
前記判断するステップにより前記第1の値以上となると判断すれば、予圧が抜けた状態として出力するステップと、を含む、直動案内ユニットの予圧抜け判断方法。
【請求項10】
長手方向に延びる第1軌道面を有するレールと、
前記レールに相対移動可能に取り付けられ、前記第1軌道面に対向する第2軌道面を有するスライダと、
前記第1軌道面と前記第2軌道面とから構成される軌道路を転動する複数の転動体と、を備える直動案内ユニットの予圧抜け判断方法であって、
前記スライダは、
前記軌道路と並行する第1循環路が設けられ、前記第2軌道面を含むケーシングと、
前記ケーシングの長手方向の一方側に配置され、前記軌道路と前記第1循環路とを接続する第2循環路が設けられるエンドキャップと、を含み、
前記ケーシングは、
前記レールの幅方向の両側に配置される一対の袖部と、
前記一対の袖部のそれぞれと連結されるベース部と、を含み、
前記直動案内ユニットは、
前記ケーシングに取り付けられ、前記ケーシングの歪を検出する歪センサを含み、
直動案内ユニットの予圧抜け判断方法は、
前記歪センサにより検出された前記ケーシングの歪の値が、第2の値以上となるか否かを判断するステップと、
前記判断するステップにより前記第2の値以上となると判断すれば、予圧が抜けた状態として出力するステップと、を含む、直動案内ユニットの予圧抜け判断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、直動案内ユニットおよび直動案内ユニットの予圧抜け判断方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
案内レールと、スライダと、転動体と、を含む直動案内装置が知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1において、特許文献1に開示の直動案内装置は、スライダに作用しているモーメント荷重の方向を適切に判別することができるとの記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-197296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
直動案内ユニットにおいては、レールとスライダとの間に配置される複数の転動体がそれぞれ循環路を循環しながら円滑に転動することにより、スライダを円滑に摺動させることができる。ここで、レールに対するスライダのがたつきを抑制し、直動案内ユニットの剛性を高くするために、転動体には予圧が付与される。予圧の付与は、例えば、レールの軌道面とスライダの軌道面との間隔よりも若干大きいローラ径のローラを用いることにより行われる。
【0005】
直動案内ユニットに対して荷重が負荷されると、直動案内ユニットを構成する部材が変形する。負荷される荷重が大きくなり、部材の変形量が大きくなると、転動体の転動面と軌道面との間に隙間が生じるおそれがある。そうすると、転動体に付与された予圧が抜けてしまうこととなる。その結果、スライダの摺動運動の不安定が生じることとなる。また、直動案内ユニットの剛性も低下することとなり、好ましくない。なお、過重な負荷に基づく変形に起因する隙間の発生を抑制するために、例えば、ローラ径をより大きくすることにより予め大きな予圧を付与することは、結果的に直動案内ユニットの寿命を縮めることとなる。よって、このような方策を立てることも避けたい。
【0006】
そこで、高い剛性を保ちながら、転動体に付与する予圧を適切に維持して円滑なスライダの摺動を確保することができる直動案内ユニットを提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に従った直動案内ユニットは、長手方向に延びる第1軌道面を有するレールと、レールに相対移動可能に取り付けられ、第1軌道面に対向する第2軌道面を有するスライダと、第1軌道面と第2軌道面とから構成される軌道路を転動する複数の転動体と、を備える。スライダは、軌道路と並行する第1循環路が設けられ、第2軌道面を含むケーシングと、ケーシングの長手方向の一方側に配置され、軌道路と第1循環路とを接続する第2循環路が設けられるエンドキャップと、を含む。ケーシングは、レールの幅方向の両側に配置される一対の袖部と、一対の袖部のそれぞれと連結されるベース部と、を含む。直動案内ユニットは、ケーシングに取り付けられ、ケーシングの歪を検出する歪センサと、歪センサにより検出された歪のデータに基づいて転動体に付与された予圧が抜けたか否かを判断する判断部および判断部による判断結果を出力する出力部を有する制御装置と、を含む。
【発明の効果】
【0008】
上記直動案内ユニットによれば、高い剛性を保ちながら、転動体に付与する予圧を適切に維持して円滑なスライダの摺動を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本開示の実施の形態1における直動案内ユニットを示す概略斜視図である。
図2図2は、図1に示す直動案内ユニットの一部の部材を省略して示す概略断面図である。
図3図3は、図1に示す直動案内ユニットの一部の部材を省略して示す概略正面図である。
図4図4は、図3中の矢印IV-IVで示す断面で切断した場合の概略断面図である。
図5図5は、実施の形態1における直動案内ユニットの構成を示すブロック図である。
図6図6は、Z方向に引張荷重が負荷された場合の直動案内ユニットの変形度合いを示すシミュレーション図である。
図7図7は、Z方向に圧縮荷重が負荷された場合の直動案内ユニットの変形度合いを示すシミュレーション図である。
図8図8は、圧縮荷重および引張荷重と袖部の歪の予想出力との関係を示すグラフである。
図9図9は、X方向の荷重およびZ方向の荷重と、荷重の合力との関係を示すグラフである。
図10図10は、実施の形態1における直動案内ユニットを用いた直動案内ユニットの予圧抜け判断方法において、予圧の抜けを判断する場合の処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施形態の概要]
本開示の直動案内ユニットは、長手方向に延びる第1軌道面を有するレールと、レールに相対移動可能に取り付けられ、第1軌道面に対向する第2軌道面を有するスライダと、第1軌道面と第2軌道面とから構成される軌道路を転動する複数の転動体と、を備える。スライダは、軌道路と並行する第1循環路が設けられ、第2軌道面を含むケーシングと、ケーシングの長手方向の一方側に配置され、軌道路と第1循環路とを接続する第2循環路が設けられるエンドキャップと、を含む。ケーシングは、レールの幅方向の両側に配置される一対の袖部と、一対の袖部のそれぞれと連結されるベース部と、を含む。直動案内ユニットは、ケーシングに取り付けられ、ケーシングの歪を検出する歪センサと、歪センサにより検出された歪のデータに基づいて転動体に付与された予圧が抜けたか否かを判断する判断部および判断部による判断結果を出力する出力部を有する制御装置と、を含む。
【0011】
本発明者らは、転動体に付与された予圧が抜ける状態について鋭意検討した。そして、予圧が抜けるまでは、直動案内ユニットを構成する部材に負荷される荷重が大きくなっても、スライダの変形量はほぼ一定であることを見出した。そして、予圧が抜けると、スライダの変形量が大きくなることも見出した。そして本発明者らは、このスライダの変形量の変化点に着目して、予圧の抜けを判断することができると考えた。本開示の直動案内ユニットによると、上記構成の歪センサと、上記構成の制御装置と、を含む。そうすると、歪センサにより検出された歪のデータに基づき、制御装置により予圧の抜けが判断される。したがって、制御装置から出力された判断結果により、予圧が抜けた状態か否かを容易に把握することができる。その結果、予圧が抜けた状態において直動案内ユニットが動作する状態を回避することが容易となる。また、過度に高い予圧を付与する必要はないため、高い剛性を保つことができる。その結果、このような直動案内ユニットは、高い剛性を保ちながら、転動体に付与する予圧を適切に維持して円滑なスライダの摺動を確保することができる。
【0012】
上記直動案内ユニットにおいて、歪センサは、幅方向におけるケーシングの両側面に一対取り付けられてもよい。このようにすることにより、縦方向の荷重に加え、横方向の荷重による変形に基づく歪も検知することが容易となる。したがって、さらに確実に予圧の抜けの判断を行うことができる。
【0013】
上記直動案内ユニットにおいて、歪センサは、一対の袖部のそれぞれの側面に一対取り付けられてもよい。袖部の変形量は他の部分に対して比較的大きいため、より顕著にケーシングの歪を検知することができる。したがって、より正確に予圧の抜けの判断を行うことができる。
【0014】
上記直動案内ユニットにおいて、判断部は、一対の歪センサによりそれぞれ検出された歪のデータの和の値が第1の値以上であると判断すれば、転動体に付与された予圧が抜けたと判断してもよい。このようにすることにより、ある一定の値と比較して予圧の抜けの判断を行うことができ、より容易に予圧の抜けを判断することができる。
【0015】
上記直動案内ユニットにおいて、歪センサは、幅方向におけるケーシングのいずれか一方の側面に取り付けられてもよい。このようにすることにより、構成をよりシンプルにして、ケーシングの変形を検知し、予圧の抜けを判断することができる。
【0016】
上記直動案内ユニットにおいて、判断部は、歪センサにより検出された歪のデータが第2の値以上であると判断すれば、転動体に付与された予圧が抜けたと判断してもよい。このようにすることにより、ある一定の値と比較して予圧の抜けの判断を行うことができ、より容易に予圧の抜けを判断することができる。
【0017】
上記直動案内ユニットにおいて、転動体は、ローラであってもよい。このような直動案内ユニットは、サイズをコンパクトにしながら定格荷重を大きくすることができる。
【0018】
上記直動案内ユニットにおいて、出力部は、予圧が抜けた状態であることを表示することおよび予圧が抜けた状態であることを音声により報知することのうちの少なくともいずれか一方により出力してもよい。このようにすることにより、視覚的な認識および聴覚的な認識のうちの少なくともいずれか一方により予圧が抜けた状態であることを報知することができる。したがって、より予圧が抜けた状態であることを認識させやすくすることができる。
【0019】
本開示の直動案内ユニットの予圧抜け判断方法は、長手方向に延びる第1軌道面を有するレールと、レールに相対移動可能に取り付けられ、第1軌道面に対向する第2軌道面を有するスライダと、第1軌道面と第2軌道面とから構成される軌道路を転動する複数の転動体と、を備える直動案内ユニットの予圧抜け判断方法である。スライダは、軌道路と並行する第1循環路が設けられ、第2軌道面を含むケーシングと、ケーシングの長手方向の一方側に配置され、軌道路と第1循環路とを接続する第2循環路が設けられるエンドキャップと、を含む。ケーシングは、レールの幅方向の両側に配置される一対の袖部と、一対の袖部のそれぞれと連結されるベース部と、を含む。直動案内ユニットは、幅方向におけるケーシングの両側面に取り付けられ、ケーシングの歪を検出する一対の歪センサを含む。直動案内ユニットの予圧抜け判断方法は、一対の歪センサによりそれぞれ検出されたケーシングの歪の和の値が、第1の値以上となるか否かを判断するステップと、判断するステップにより第1の値以上となると判断すれば、予圧が抜けた状態として出力するステップと、を含む。
【0020】
このような直動案内ユニットの予圧抜け判断方法によると、高い剛性を保ちながら、転動体に付与する予圧を適切に維持して円滑なスライダの摺動を確保することができる。
【0021】
また、本開示の直動案内ユニットの予圧抜け判断方法は、長手方向に延びる第1軌道面を有するレールと、レールに相対移動可能に取り付けられ、第1軌道面に対向する第2軌道面を有するスライダと、第1軌道面と第2軌道面とから構成される軌道路を転動する複数の転動体と、を備える直動案内ユニットの予圧抜け判断方法である。スライダは、軌道路と並行する第1循環路が設けられ、第2軌道面を含むケーシングと、ケーシングの長手方向の一方側に配置され、軌道路と第1循環路とを接続する第2循環路が設けられるエンドキャップと、を含む。ケーシングは、レールの幅方向の両側に配置される一対の袖部と、一対の袖部のそれぞれと連結されるベース部と、を含む。直動案内ユニットは、ケーシングに取り付けられ、ケーシングの歪を検出する歪センサを含む。直動案内ユニットの予圧抜け判断方法は、歪センサにより検出されたケーシングの歪の値が、第2の値以上となるか否かを判断するステップと、判断するステップにより第2の値以上となると判断すれば、予圧が抜けた状態として出力するステップと、を含む。
【0022】
このような直動案内ユニットの予圧抜け判断方法によると、高い剛性を保ちながら、転動体に付与する予圧を適切に維持して円滑なスライダの摺動を確保することができる。
【0023】
[実施形態の具体例]
次に、本開示の直動案内ユニットの具体的な実施の形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
【0024】
(実施の形態1)
まず、本開示の実施の形態である実施の形態1について説明する。図1は、本開示の実施の形態1における直動案内ユニットを示す概略斜視図である。図2は、図1に示す直動案内ユニットの一部の部材を省略して示す概略断面図である。なお、図2において、理解を容易にする観点から、一部の部材のハッチングを省略している。図3は、図1に示す直動案内ユニットの一部の部材を省略して示す概略正面図である。図4は、図3中の矢印IV-IVで示す断面で切断した場合の概略断面図である。図5は、実施の形態1における直動案内ユニットの構成を示すブロック図である。なお、図1および以下に示す図において、X方向は、直動案内ユニットの幅方向である短手方向を示し、Y方向は、直動案内ユニットの長手方向を示し、Z方向は、直動案内ユニットの厚さ方向(高さ方向)を示す。X方向、Y方向およびZ方向はそれぞれ、直交している。図2および図3は、矢印Yで示す向きから見た図である。なお、理解を容易にする観点から、図1において後述する制御装置を一点鎖線で模式的に示し、図2および図4において、後述するローラの一部の図示を省略している。
【0025】
図1図5を参照して、本開示の実施の形態1に係る直動案内ユニット10aは、軌道レールであるレール11aと、スライダ21aと、転動体としての複数のローラ20a,20b,20c,20dと、を含む。レール11aは、長手方向であるY方向に真っ直ぐに延びる構成である。実施の形態1に係る直動案内ユニット10aは、転動体として複数のローラ20a,20b,20c,20dを含むことにより、例えば転動体がボールである場合と比較して、サイズをコンパクトにしながら定格荷重を大きくすることができる。本実施形態においては、直動案内ユニット10aは、いわゆる4条列の直動案内ユニットである。
【0026】
まず、レール11aの構成について説明する。レール11aは、Z方向に間隔をあけて配置されるレール上端面12aおよびレール下端面12bと、X方向に間隔をあけて配置される第1レール側面13aおよび第2レール側面13bと、Y方向に間隔をあけて配置されるレール前端面14aおよびレール後端面14bと、を含む。すなわち、レール11aは、長手方向に沿ってそれぞれ平行に延びる第1レール側面13aおよび第2レール側面13bを含む。レール11aは、長手方向に互いに平行に延びる一対の第1軌道溝15a,15bを有する。第1軌道溝15aは、第1レール側面13aに設けられる。第1軌道溝15bは、第2レール側面13bに設けられる。このような構成のレール11aを含む直動案内ユニット10aは、より確実に小型化を実現することができる。
【0027】
第1軌道溝15aは、第1軌道面16a,16bと、側壁面17aと、から構成されている。第1軌道面16aは、X-Y平面に対して傾斜しており、レール上端面12a側に設けられている。第1軌道面16bは、X-Y平面に対して傾斜しており、レール下端面12b側に設けられている。側壁面17aは、第1軌道面16aおよび第1軌道面16bのそれぞれに連なって設けられている。第1軌道溝15bも第1軌道溝15aと同様に、第1軌道面16c,16dと、側壁面17bと、から構成されている。第1軌道面16cは、X-Y平面に対して傾斜しており、レール上端面12a側に設けられている。第1軌道面16dは、X-Y平面に対して傾斜しており、レール下端面12b側に設けられている。側壁面17bは、第1軌道面16cおよび第1軌道面16dのそれぞれに連なって設けられている。すなわち、レール11aは、長手方向に延びる第1軌道面16a,16b,16c,16dを含む。このようなレール11aを含む直動案内ユニット10aは、工作機械や組み立て装置、搬送機械等に好適に用いられる。
【0028】
レール11aには、レール上端面12aからレール下端面12bに至るようZ方向に貫通する複数の貫通孔18が設けられる。複数の貫通孔18は、Y方向において間隔をあけて設けられる。貫通孔18は、例えば直動案内ユニット10aの使用時において、レール11aを所定の箇所に取り付ける際にそれぞれ有効に利用される。
【0029】
次に、スライダ21aの構成について説明する。スライダ21aは、レール11aに相対移動可能に取り付けられる。スライダ21aは、レール11aの幅方向の両側に配置される一対の袖部28a,28bと、一対の袖部28a,28bのそれぞれと連結されるベース部29aと、を含む。一対の袖部28a,28bは、X方向に間隔をあけて配置される。ベース部29aは、スライダ21aをレール11aに取り付けた際に、レール上端面12aと対向する領域を含む。一対の袖部28a,28bとベース部29aとの境界Lは、図2中のX方向に延びる一点鎖線で示される。スライダ21aには、Z方向に凹む凹部24aが設けられている。スライダ21aは、この凹部24aにレール11aが嵌め込まれるようにして取り付けられている。すなわち、スライダ21aは、レール11aに摺動可能に跨架される。本実施形態においては、スライダ21aは、レール11aに跨るように取り付けられ、Y方向に移動可能な構成である。
【0030】
スライダ21aは、ケーシング22aと、一対のエンドキャップ23a,23b、具体的には、第1のエンドキャップ23aと、第2のエンドキャップ23bと、ローラ20a,20b,20c,20dをケーシング22aに保持させる保持部材41a,41bと、を含む。第1のエンドキャップ23aは、ケーシング22aの長手方向の一方側、具体的には、長手方向においてケーシング22aのうちのレール前端面14a側に配置される。第2のエンドキャップ23bは、ケーシング22aの長手方向の他方側、具体的には、長手方向においてケーシング22aのうちのレール後端面14b側に配置される。すなわち、スライダ21aは、ケーシング22aの長手方向の両側に配置される一対のエンドキャップ23a,23bを含む。第1のエンドキャップ23aには、Y方向に貫通する貫通孔が設けられている。第1のエンドキャップ23aおよび第2のエンドキャップ23bは共に、長手方向を厚さ方向としたいわゆる板状である。第1のエンドキャップ23aは、貫通孔を利用して、複数のボルト26a,26bによりケーシング22aに連結されている。第2のエンドキャップ23bは、貫通孔を利用して、複数のボルトによりケーシング22aに連結されている。
【0031】
保持部材41aは、保持板42aと、保持バンド43aと、を含む。保持板42aは、ローラ20a,20bの他方側に位置する第2端面と接触してローラ20a,20bを案内する第2案内面44a,44bを含む。また、保持板42aは、保持バンド43aを収容するように凹む溝部46aを含む。保持部材41bも保持部材41aと同様に、保持板42bと、保持バンド43bと、を含む。保持板42bの構成についても、保持板42aの構成と同様である。すなわち、保持板42bは、ローラ20c,20dの他方側に位置する第2端面と接触してローラ20c,20dを案内する第2案内面44c,44dを含む。また、保持板42bは、保持バンド43bを収容するように凹む溝部46bを含む。
【0032】
なお、スライダ21aは、第1のエンドキャップ23aの長手方向の一方側に配置されるエンドシール27aと、第2のエンドキャップ23bの長手方向の他方側に配置されるエンドシール27bと、潤滑油を付与する潤滑部材(図示しない)と、を含む。エンドシール27aおよび潤滑部材は、ボルト26a,26bにより第1のエンドキャップ23aに取り付けられている。第2のエンドキャップ23bは、第1のエンドキャップ23aと同様に、エンドシール27bおよび潤滑部材と共に複数のボルトによりケーシング22aに取り付けられている。なお、ケーシング22aにはZ方向に貫通する複数の貫通孔25が設けられている。複数の貫通孔25は、本実施形態においては6つ設けられている。6つの貫通孔25はそれぞれ、X方向およびY方向にそれぞれ間隔をあけて設けられており、例えばスライダ21aと他の部材とを連結する際に利用される。
【0033】
ケーシング22aは、第1軌道面16a,16b,16c,16dにそれぞれ対向する第2軌道面32a,32b,32c,32dを含む。ローラ20aが転動する軌道路31aは、第1軌道面16aと第2軌道面32aとから構成される。ローラ20bが転動する軌道路31bは、第1軌道面16bと第2軌道面32bとから構成される。ローラ20cが転動する軌道路31cは、第1軌道面16cと第2軌道面32dとから構成される。ローラ20dが転動する軌道路31dは、第1軌道面16dと第2軌道面32dとから構成される。
【0034】
ケーシング22aには、軌道路31a,31b,31c,31dとそれぞれ並行する第1循環路33a,33b,33c,33dが設けられている。第1循環路33a,33b,33c,33dは、リターン路とも呼ばれる。第1循環路33a内には、第1分割部材35aおよび第2分割部材36aを組み合わせて形成される中空円筒状のスリーブ34aが配置されている。スリーブ34a内を複数のローラ20aが移動する。同様に、第1循環路33b内には、第1分割部材35bおよび第2分割部材36bを組み合わせて形成される中空円筒状のスリーブ34bが配置されている。第1循環路33c内には、第1分割部材35cおよび第2分割部材36cを組み合わせて形成される中空円筒状のスリーブ34cが配置されている。第1循環路33d内には、第1分割部材35dおよび第2分割部材36dを組み合わせて形成される中空円筒状のスリーブ34dが配置されている。ケーシング22aは、ローラ20a,20b,20c,20dの一方側に位置する第1端面と接触してローラ20a,20b,20c,20dを案内する第1案内面39a,39b,39c,39dを含む。
【0035】
第1のエンドキャップ23aには、第2循環路37aが設けられている(特に図4参照)。第2のエンドキャップ23bには、第2循環路38aが設けられている。第2循環路37a,38aはそれぞれ、方向転換路とも呼ばれる。第2循環路37a,38aはそれぞれ、軌道路31aと第1循環路33aとを接続する。複数のローラ20aは、軌道路31a、第2循環路37a、第1循環路33aおよび第2循環路38aによって構成される環状路を循環している。なお、複数のローラ20bは、軌道路31b、第1のエンドキャップ23aの第2循環路、第1循環路33bおよび第2のエンドキャップ23bの第2循環路によって構成される環状路を循環している。複数のローラ20cは、軌道路31c、第1のエンドキャップ23aの第2循環路、第1循環路33cおよび第2のエンドキャップ23bの第2循環路によって構成される環状路を循環している。複数のローラ20dは、軌道路31d、第1のエンドキャップ23aの第2循環路、第1循環路33dおよび第2のエンドキャップ23bの第2循環路によって構成される環状路を循環している。
【0036】
ここで、直動案内ユニット10aは、歪センサ51a,51bと、制御装置53aと、を含む。歪センサ51a,51bはそれぞれケーシング22aに取り付けられ、ケーシング22aの歪を検出する。歪センサ51a,51bは、幅方向(X方向)におけるケーシング22aの両側面45a,45bに一対取り付けられる。本実施形態においては、歪センサ51a,51bは、一対の袖部28a,28bのそれぞれの側面45a,45bに一対取り付けられる。歪センサ51a,51bは、袖部28a,28bのうちの境界Lに近い位置に取り付けられる。また、歪センサ51a,51bはそれぞれ、Y方向において、ケーシング22aの中央領域に配置される。
【0037】
制御装置53aは、記憶部54aと、判断部55aと、出力部56aと、を含む。制御装置53aは、メモリやCPU(Central Processing Unit)等を備えるコントローラー等により構成される。制御装置53aは、歪センサ51a,51bのそれぞれと無線または有線で通信可能、すなわち、電子データの授受が可能に構成されている。また、制御装置53aは、ネットワーク57aを介して外部の電子機器等との通信も可能に構成されている。
【0038】
記憶部54aは、メモリやハードディスク等により構成されており、種々のデータ、例えば、後述する予圧の抜けの閾値となる第1の値や第2の値のデータを記憶する。判断部55aは、歪センサ51a,51bにより検出された歪のデータに基づいてローラ20a,20b,20c,20dに付与された予圧が抜けたか否かを判断する。出力部56aは、判断部55aによる判断結果を出力する。具体的には、予圧が抜けた状態であることを表示することおよび予圧が抜けた状態であることを音声により報知することのうちの少なくともいずれか一方により出力する。このようにすることにより、視覚的な認識および聴覚的な認識のうちの少なくともいずれか一方により予圧が抜けた状態であることを報知することができる。したがって、より予圧が抜けた状態であることを認識させやすくすることができる。
【0039】
図6は、Z方向に引張荷重が負荷された場合の直動案内ユニット10aの変形度合いを示すシミュレーション図である。図7は、Z方向に圧縮荷重が負荷された場合の直動案内ユニット10aの変形度合いを示すシミュレーション図である。図6および図7においては、レール11aを一点鎖線で図示し、ローラ20a,20b,20c,20dの図示を省略している。また、図6および図7において、各部材の変形度合いを誇張して図示している。
【0040】
まず図6を参照して、Z方向に引張荷重が負荷されている場合、すなわち、レール11aとスライダ21aとが引き離される方向に荷重が負荷される場合、第1軌道面16aと第2軌道面32aとの間の間隔47a、第1軌道面16cと第2軌道面32cとの間隔47bは狭くなり、第1軌道面16bと第2軌道面32bとの間の間隔48a、第1軌道面16dと第2軌道面32dとの間隔48bは広くなる。そして、さらに荷重が負荷され、間隔48a,48bが広くなっていくと、間隔48a,48bにおいてローラとの間に隙間が形成され、予圧が抜けることとなる。また、図7を参照して、Z方向に圧縮荷重が負荷されている場合、すなわち、レール11aにスライダ21aが押し付けられる方向に荷重が負荷される場合、第1軌道面16aと第2軌道面32aとの間の間隔47a、第1軌道面16cと第2軌道面32cとの間隔47bは広くなり、第1軌道面16bと第2軌道面32bとの間の間隔48a、第1軌道面16dと第2軌道面32dとの間隔48bは狭くなる。そして、さらに荷重が負荷され、間隔47a,47bが広くなっていくと、間隔47a,47bにおいてローラとの間に隙間が形成され、予圧が抜けることとなる。
【0041】
図8は、圧縮荷重および引張荷重と袖部28aの歪の予想出力との関係を示すグラフである。図8中の横軸で荷重を示し、縦軸で袖部28aの歪の予想出力を示している。図8において、線49aで引張荷重が負荷されている場合を示し、線49bで圧縮荷重が負荷されている場合を示す。図8において、線49a,49bの左端は、歪が0を示す。すなわち、荷重が大きくなるにつれ、マイナスの歪が大きくなっていく。図8を参照して、歪Eの時、引張荷重Fの方が圧縮荷重Fよりも大きい。そして、引張荷重および圧縮荷重のいずれについても、荷重が大きくなっていくにつれ、マイナスの歪が大きくなっていき、その関係が比例関係を示している。
【0042】
図9は、X方向の荷重およびZ方向の荷重と、荷重の合力との関係を示すグラフである。図9において、横軸は、荷重(N)を示し、縦軸は、合力(N)を示す。図9において、破線は、X方向の合力を示し、実線は、Z方向の合力を示す。図9を参照して、荷重が増えていくと、Z方向の合力については、比例関係を示す。一方、X方向の合力は、ある一定の荷重(P点)まではほぼ一定である。これは、上記間隔47a,47b,48a,48b内に配置されるローラ20a,20b,20c,20dが接触した状態を維持しており、予圧が付与された状態であるため、X方向において合力が相殺され、ほぼ一定の値を取るためであると考えられる。すなわち、ある一定の荷重(P点)までの変形はほとんどなく、歪はほぼ一定である。そして、荷重Pを過ぎると、いずれかの間隔47a,47b,48a,48bにおいてローラ20a,20b,20c,20dの転動面と第1軌道面16a,16b,16c,16dまたは第2軌道面32a,32b,32c,32dとの間に隙間が生じ、X方向における合力が相殺されず、各合力はそれぞれ増加する。そうすると、変形量は大きくなり、歪が大きくなる。そうすると、この荷重P点において、予圧が抜けていることが把握できる。よって、歪の値は、この荷重P点未満であれば、一定であり、荷重P点以上となると大きくなる。すなわち、例えば、値が一定であるこの荷重P点における歪の値を第1の値として設定すると、第1の値以上であるか否かを判断することにより、予圧が抜けた状態か否かを検知することができる。
【0043】
図10は、実施の形態1における直動案内ユニット10aを用いた直動案内ユニット10aの予圧抜け判断方法において、予圧の抜けを判断する場合の処理の流れを示すフローチャートである。併せて図10を参照して、まず、歪センサ51a,51bによるケーシング22aの歪の検出を開始する。すなわち、制御装置53aにおいて、歪センサ51a,51bによる歪のデータの取得が行われる(図10において、ステップS11、以下、「ステップ」を省略する)。なお、制御装置53aの記憶部54aには、第1の値のデータとして、上記した荷重Pに対応する歪の値のデータが記憶されている。
【0044】
そして、判断部55aは、取得した歪のデータの和の値を導出する(S12)。すなわち、第1の歪センサ51aから取得した歪のデータの値と第2の歪センサ51bから取得した歪のデータの値を足し合わせる。
【0045】
その後、足し合わせた歪のデータの和の値が、第1の値以上であるか否かを判断する(S13)。第1の値としては、上記したように、例えば、上記した図6に示す荷重P点に対応する歪のデータの値である。S13において、判断部55aにより、歪のデータの和の値が第1の値以上であると判断すれは(S13において、YES)、予圧が抜けていると判断し、出力部56aは、予圧が抜けている旨を出力する(S14)。具体的には、予圧が抜けている旨の表示を、例えば、制御装置53aに接続された出力部56aとしてのディスプレイ(図示せず)上に表示して視覚的に出力する。また、出力部56aとしての音声を発する音声発生装置(図示せず)により、アラート音といった警告音を発し、聴覚的に出力する。このようにして、出力する。なお、第1の値未満であると判断すれば(S13において、NO)、引き続き歪のデータの監視を行う。
【0046】
上記直動案内ユニット10aによると、上記構成の歪センサ51a,51bと、上記構成の制御装置53aと、を含む。そうすると、歪センサ51a,51bにより検出された歪のデータに基づき、制御装置53aにより予圧の抜けが判断される。したがって、制御装置53aから出力された判断結果により、予圧が抜けた状態か否かを容易に把握することができる。その結果、予圧が抜けた状態において直動案内ユニット10aが動作する状態を回避することが容易となる。また、過度に高い予圧を付与する必要はないため、高い剛性を保つことができる。その結果、このような直動案内ユニット10aは、高い剛性を保ちながら、ローラ20a,20b,20c,20dに付与する予圧を適切に維持して円滑なスライダ21aの摺動を確保することができる。
【0047】
なお、このような構成の直動案内ユニット10aは、例えば、長時間の使用によりローラ20a,20b,20c,20dが摩耗した結果、予圧が抜けた状態となることを検知することができる。したがって、適切な直動案内ユニット10aの寿命の管理も行うことができる。
【0048】
本実施形態においては、歪センサ51a,51bは、幅方向におけるケーシング22aの両側面45a,45bに一対取り付けられている。よって、縦方向の荷重に加え、横方向の荷重による変形に基づく歪も検知することが容易となる。したがって、さらに確実に予圧の抜けの判断を行うことができる。
【0049】
本実施形態においては、歪センサ51a,51bは、一対の袖部28a,28bのそれぞれの側面45a,45bに一対取り付けられている。袖部の変形量は他の部分に対して比較的大きいため、より顕著にケーシング22aの歪を検知することができる。したがって、より正確に予圧の抜けの判断を行うことができる。
【0050】
本実施形態においては、判断部55aは、一対の歪センサ51a,51bによりそれぞれ検出された歪のデータの和の値が第1の値以上であると判断すれば、ローラ20a,20b,20c,20dに付与された予圧が抜けたと判断する。よって、ある一定の値と比較して予圧の抜けの判断を行うことができ、より容易に予圧の抜けを判断することができる。
【0051】
また、本開示の直動案内ユニットの予圧抜け判断方法は、長手方向に延びる第1軌道面を有するレールと、レールに相対移動可能に取り付けられ、第1軌道面に対向する第2軌道面を有するスライダと、第1軌道面と第2軌道面とから構成される軌道路を転動する複数の転動体と、を備える直動案内ユニットの予圧抜け判断方法である。スライダは、軌道路と並行する第1循環路が設けられ、第2軌道面を含むケーシングと、ケーシングの長手方向の一方側に配置され、軌道路と第1循環路とを接続する第2循環路が設けられるエンドキャップと、を含む。ケーシングは、レールの幅方向の両側に配置される一対の袖部と、一対の袖部のそれぞれと連結されるベース部と、を含む。直動案内ユニットは、幅方向におけるケーシングの両側面に取り付けられ、ケーシングの歪を検出する一対の歪センサを含む。直動案内ユニットの予圧抜け判断方法は、一対の歪センサによりそれぞれ検出されたケーシングの歪の和の値が、第1の値以上となるか否かを判断するステップと、判断するステップにより第1の値以上となると判断すれば、予圧が抜けた状態として出力するステップと、を含む。
【0052】
このような直動案内ユニットの予圧抜け判断方法によると、高い剛性を保ちながら、転動体に付与する予圧を適切に維持して円滑なスライダの摺動を確保することができる。
【0053】
(他の実施の形態)
なお、上記実施の形態においては、歪センサ51a,51bは、一対設けられることとしたが、これに限らず、歪センサを一つとし、歪センサは、幅方向におけるケーシングのいずれか一方の側面に取り付けられてもよい。このようにすることにより、構成をよりシンプルにして、ケーシングの変形を検知し、予圧の抜けを判断することができる。
【0054】
また、上記実施の形態において、歪センサを一つの構成とし、判断部は、歪センサにより検出された歪のデータが第2の値以上であると判断すれば、転動体に付与された予圧が抜けたと判断してもよい。このようにすることにより、より容易に予圧の抜けの判断を行うことができる。
【0055】
また、本開示の直動案内ユニットの予圧抜け判断方法は、長手方向に延びる第1軌道面を有するレールと、レールに相対移動可能に取り付けられ、第1軌道面に対向する第2軌道面を有するスライダと、第1軌道面と第2軌道面とから構成される軌道路を転動する複数の転動体と、を備える直動案内ユニットの予圧抜け判断方法である。スライダは、軌道路と並行する第1循環路が設けられ、第2軌道面を含むケーシングと、ケーシングの長手方向の一方側に配置され、軌道路と第1循環路とを接続する第2循環路が設けられるエンドキャップと、を含む。ケーシングは、レールの幅方向の両側に配置される一対の袖部と、一対の袖部のそれぞれと連結されるベース部と、を含む。直動案内ユニットは、ケーシングに取り付けられ、ケーシングの歪を検出する歪センサを含む。直動案内ユニットの予圧抜け判断方法は、歪センサにより検出されたケーシングの歪の値が、第2の値以上となるか否かを判断するステップと、判断するステップにより第2の値以上となると判断すれば、予圧が抜けた状態として出力するステップと、を含む。
【0056】
このような直動案内ユニットの予圧抜け判断方法によると、高い剛性を保ちながら、転動体に付与する予圧を適切に維持して円滑なスライダの摺動を確保することができる。
【0057】
なお、上記実施の形態において、転動体として、ボールを用いることにしてもよい。
【0058】
また、上記の実施の形態においては、予め記憶された第1の値または第2の値との関係において大小関係を比較することとしたが、これに限らず、予圧が付与されている状態の歪の値を定期的に更新し、更新された歪の値との大小関係を比較して、予圧が抜けたか否かを判断することにしてもよい。
【0059】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、どのような面からも制限的なものではないと理解されるべきである。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって規定され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0060】
10a 直動案内ユニット、11a レール、12a レール上端面、12b レール下端面、13a 第1レール側面、13b 第2レール側面、14a レール前端面、14b レール後端面、15a,15b 第1軌道溝、16a,16b,16c,16d 第1軌道面、17a,17b 側壁面、18,25 貫通孔、20a,20b,20c,20d ローラ、21a スライダ、22a ケーシング、23a エンドキャップ(第1のエンドキャップ)、23b エンドキャップ(第2のエンドキャップ)、24a 凹部、26a,26b ボルト、27a,27b エンドシール、28a,28b 袖部、29 ベース部、31a,31b,31c,31d 軌道路、32a,32b,32c,32d 第2軌道面、33a,33b,33c,33d 第1循環路、34a,34b,34c,34d スリーブ、35a,35b,35c,35d 第1分割部材、36a,36b,36c,36d 第2分割部材、37a,38a 第2循環路、39a,39b,39c,39d 第1案内面、41a,41b 保持部材、42a,42b 保持板、43a,43b 保持バンド、44a,44b,44c,44d 第2案内面、45a,45b 側面、46a,46b 溝部、47a,47b,48b,48b 間隔、49a,49b 線、51a 歪センサ(第1の歪センサ)、51b 歪センサ(第2の歪センサ)、53a 制御装置、54a 記憶部、55a 判断部、56a 出力部、57a ネットワーク。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10