(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131965
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】アウトソールのスタッド、クリーツシューズ用のアウトソール、アウトソールの製造方法、およびクリーツシューズ
(51)【国際特許分類】
A43C 15/02 20060101AFI20230914BHJP
【FI】
A43C15/02 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022037011
(22)【出願日】2022-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000005935
【氏名又は名称】美津濃株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】須藤 眞吾
(72)【発明者】
【氏名】吉田 陽平
【テーマコード(参考)】
4F050
【Fターム(参考)】
4F050BA17
4F050BA21
4F050HA20
4F050HA22
4F050HA23
4F050HA56
4F050HA60
4F050HA85
4F050JA03
4F050JA06
4F050KA11
4F050LA01
(57)【要約】
【課題】アウトソールに対するスタッドの剥離を抑制するとともに、スタッドを強固に保つようにする。
【解決手段】アウトソール1のスタッド10は、アウトソール本体2に設けられた筒状の外筒部11と、外筒部11の内部に設けられた芯部12と、を備えている。外筒部11は、アウトソール本体2と継ぎ目がないように一体に形成されている。外筒部11は、外筒部11の内壁面が芯部12の側面を囲みかつ該内壁面が芯部12の側面と接するように構成されている。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クリーツシューズに用いられるアウトソールのスタッドであって、
前記アウトソールに設けられた筒状の外筒部と、
前記外筒部の内部に設けられた芯部と、を備え、
前記外筒部は、前記アウトソールと継ぎ目がないように一体に形成されており、
前記外筒部は、前記外筒部の内壁面が前記芯部の側面を囲みかつ該内壁面が前記芯部の側面と接するように構成されている、アウトソールのスタッド。
【請求項2】
請求項1に記載のアウトソールのスタッドにおいて、
前記芯部には、前記芯部が前記外筒部から抜け出ないようにするための抜け止め防止構造が設けられている、アウトソールのスタッド。
【請求項3】
請求項1または2に記載のアウトソールのスタッドにおいて、
前記外筒部および前記芯部の各々は樹脂材からなり、
前記外筒部の内壁面と前記芯部の側面とが互いに融着している、アウトソールのスタッド。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のアウトソールのスタッドにおいて、
前記外筒部の厚みが、下端部において最も小さくなるように構成されている、アウトソールのスタッド。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のアウトソールのスタッドにおいて、
前記芯部の下端部は、前記外筒部の下端部から露出している、アウトソールのスタッド。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のアウトソールのスタッドにおいて、
前記芯部は、前記アウトソールを製造するための金型装置に前記芯部を設置するための金型設置構造を有しており、
前記金型設置構造は、
前記芯部の上部側に形成された第1凹部と、
前記芯部の下部側に形成された第2凹部と、を含む、アウトソールのスタッド。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のスタッドを少なくとも1つ備えた、クリーツシューズ用のアウトソール。
【請求項8】
請求項7に記載のクリーツシューズ用のアウトソールにおいて、
アウトソール本体をさらに備え、
前記スタッドは、前記アウトソール本体の下側に配置されており、
前記外筒部は、前記アウトソール本体と継ぎ目がないように一体に形成されている、クリーツシューズ用のアウトソール。
【請求項9】
請求項8に記載のクリーツシューズ用のアウトソールを製造するための製造方法であって、
前記スタッドは、射出成形により前記アウトソール本体と共に成形される、アウトソールの製造方法。
【請求項10】
請求項7または8に記載のクリーツシューズ用のアウトソールを備えた、クリーツシューズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アウトソールのスタッド、クリーツシューズ用のアウトソール、アウトソールの製造方法、およびクリーツシューズに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、クリーツシューズに用いられるアウトソールのスタッドに関し、例えば特許文献1に示されるものが知られている。
【0003】
特許文献1には、複数のスタッド(第1スタッドおよび第2スタッド)が、クリーツシューズ用のアウトソール(第1アウトソール部)に設けられている。この複数のスタッドの各々は、アウトソールと異なる材料からなる別部材として構成されている。各スタッドは、アウトソールの下側に接合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された構成では、スタッドとアウトソールとの接合部分に継ぎ目が現れた状態となっている(例えば特許文献1の
図1および
図9を参照)。すなわち、上記構成では、スタッドとアウトソールとが連続しないようになっている。このため、クリーツシューズを着用した者(以下「着用者」という)による競技時の様々な運動動作(例えば、着用者による、歩く、走る、ボールを蹴る、急停止する、切り返す、跳ぶ、着地する、といった動作)により、スタッドに継続的な負荷が生じた場合には、上記継ぎ目が、スタッドがアウトソールから剥離する起点となり得る。また、上記継続的な負荷により上記継ぎ目の接合状態が不安定になると、スタッドをアウトソールに対して強固に保つことが困難になる場合があった。このようなことから、従来のスタッドに関して、スタッドがアウトソールから剥離しないようにするとともに、スタッドを強固に保つための改善が望まれていた。
【0006】
本開示は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、アウトソールに対するスタッドの剥離を抑制するとともに、スタッドを強固に保つことにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、第1の開示はクリーツシューズに用いられるアウトソールのスタッドに係るものであり、このスタッドは、アウトソールに設けられた筒状の外筒部と、外筒部の内部に設けられた芯部と、を備えている。外筒部は、アウトソールと継ぎ目がないように一体に形成されている。外筒部は、外筒部の内壁面が芯部の側面を囲みかつ内壁面が芯部の側面と接するように構成されている。
【0008】
第1の開示では、外筒部がアウトソールと継ぎ目がないように一体に形成されている。すなわち、第1の開示に係るスタッドでは、外筒部がアウトソールと連続的に形成されている。このため、クリーツシューズの着用者による競技時の様々な運動動作により、スタッドに継続的な負荷が生じたとしても、外筒部がアウトソールから剥離する起点となり得る継ぎ目が外側に現れていないことから、アウトソールに対するスタッドの剥離を抑制することが可能となる。さらに、第1の開示において、外筒部は、外筒部の内壁面が芯部の側面を囲みかつ該内壁面が芯部の側面と接するように構成されている。かかる構成によれば、外筒部の内壁面に囲まれた芯部によりスタッドの強度が向上する。また、外筒部の内壁面と芯部の側面との接触状態により生じうる抵抗力(例えば摩擦力)に起因して、芯部が外筒部から抜け出ないようになる。その結果、芯部が外筒部の内壁面に囲まれた状態が保たれる。すなわち、スタッドをアウトソールに対して安定させることが可能になる。したがって、第1の開示では、アウトソールに対するスタッドの剥離を抑制することができるとともに、スタッドを強固に保つことができる。
【0009】
第2の開示は、第1の開示において、芯部には、芯部が外筒部から抜け出ないようにするための抜け止め防止構造が設けられている。
【0010】
この第2の開示では、抜け止め防止構造により芯部が外筒部から抜けにくくなる。したがって、スタッドをアウトソールに対してより一層安定させることができる。
【0011】
第3の開示は、第1または第2の開示において、外筒部および芯部の各々は樹脂材からなり、外筒部の内壁面と芯部の側面とが互いに融着している。
【0012】
この第3の開示では、外筒部の内壁面と芯部の側面とが互いに融着していることにより、芯部が外筒部に対して強く固着された状態となる。すなわち、芯部が外筒部から抜けにくくなる。したがって、第2の開示では、スタッドをアウトソールに対してより一層安定させることができる。
【0013】
第4の開示は、第1~第3の開示のいずれか1つにおいて、外筒部の厚みが、下端部において最も小さくなるように構成されている。
【0014】
第4の開示では、例えば射出成形により外筒部を形成する場合において、金型装置において加熱溶融した樹脂材が外筒部の下端部側に向かって充填されやすくなる。その結果、外筒部において例えばヒケなどの現象が起こりにくくなり、外筒部を構造上安定させることができる。
【0015】
第5の開示は、第1~第4の開示のいずれか1つにおいて、芯部の下端部は、外筒部の下端部から露出している。
【0016】
第5の開示では、外筒部の下端部側(すなわち、スタッドが地面に接地する側)から見たときに、外筒部および芯部の双方が視認可能となる。これにより、例えば外筒部および芯部の各々の配色を適宜変えることにより、スタッドの意匠性を高めることができる。
【0017】
第6の開示は、第1~第5の開示のいずれか1つにおいて、芯部は、アウトソールを製造するための金型装置に芯部を設置するための金型設置構造を有している。金型設置構造は、芯部の上部側に形成された第1凹部と、芯部の下部側に形成された第2凹部と、を含む。
【0018】
第6の開示では、例えばアウトソールを製造する時のインサート工程において、芯部が有する金型設置構造(第1および第2凹部)を用いることにより、芯部を金型装置内において安定的に設置することができる。
【0019】
第7の開示は、第1~第6のいずれか1つのスタッドを少なくとも1つ備えた、クリーツシューズ用のアウトソールである。
【0020】
第7の開示では、上記第1~第6の開示と同様の作用効果を奏するクリーツシューズ用のアウトソールを得ることができる。
【0021】
第8の開示は、第7の開示において、アウトソール本体をさらに備えている。スタッドは、アウトソール本体の下側に配置されている。そして、外筒部は、アウトソール本体と継ぎ目がないように一体に形成されている。
【0022】
第8の開示では、外筒部が、アウトソール本体と継ぎ目がないように一体に形成されていることから、上記第1の開示と同様に、アウトソール本体に対するスタッドの剥離を抑制することができる。
【0023】
第9の開示は、第8の開示のクリーツシューズ用のアウトソールを製造するための製造方法であって、スタッドは、射出成形によりアウトソール本体と共に成形される。
【0024】
この第9の開示では、アウトソール本体に対するスタッドの剥離を抑制したクリーツシューズ用のアウトソールを安定的に得ることができる。
【0025】
第10の開示は、第7または第8の開示のアウトソールを備えたクリーツシューズである。
【0026】
この第10の開示では、アウトソール本体に設けられたスタッドにより地面に対するグリップ力を高めかつ接地時の安定性を高めることができる。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したように、本開示によると、アウトソールに対するスタッドの剥離を抑制することができるとともに、スタッドを強固に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態に係るアウトソールを上方から見て示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示したアウトソールを下方から見て示す斜視図である。
【
図5】
図5は、
図1に示したアウトソールを外甲側から見て示す側面図である。
【
図7】
図7は、
図6に示したスタッドの構成を拡大した部分拡大図である。
【
図8】
図8は、アウトソールを製造するための金型装置の断面構造を概略的に示した図である。
【
図9】
図9は、変形例1に係るスタッドの構成を示す
図7相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本開示、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0030】
図1~
図5は、本開示の実施形態に係るクリーツシューズ用のアウトソール1を示している。このアウトソール1を備えたクリーツシューズは、例えばサッカー、ラグビー、アメリカンフットボール、野球などの瞬発的な動作が要求されるスポーツに用いられる。
【0031】
本開示の実施形態において、アウトソール1は、左足用のみを例示している。右足用のアウトソールは、左足用のアウトソールと左右対称になるように構成されている。以下の説明では、左足用のアウトソールのみについて説明し、右足用のアウトソールの説明は省略する。
【0032】
以下の説明において、各図に示した「上」および「下」は、アウトソール1の上下方向の位置関係を表している。また、各図に示した「前」および「後」は、アウトソール1の足長方向(前後方向)の位置関係を表している。また、各図に示した「内甲側」および「外甲側」は、アウトソール1における足幅方向の位置関係を表している。
【0033】
(アウトソール本体)
図1~
図6に示すように、アウトソール1は、アウトソール本体2を備えている。アウトソール本体2の材料としては、例えば耐摩耗性の高い樹脂材が挙げられる。具体的に、アウトソール本体2の材料としては、例えば、ナイロン系エラストマー、熱可塑性ポリウレタン、スチレン系エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマーが適している。なお、アウトソール本体2の周縁部には、図示しないアッパーが固着される。
【0034】
アウトソール本体2の上面は、着用者の足裏を支持するための足裏支持面3として構成されている。足裏支持面3は、着用者の足裏を直接的に支持するように構成されていてもよく、あるいは、インソール(図示せず)などを介して着用者の足裏を支持するように構成されていてもよい。
【0035】
図1および
図3に示すように、アウトソール本体2は、複数の丸孔部4を有している。各丸孔部4は、平面視で略円形状に形成されている。各丸孔部4は、足裏支持面3からアウトソール本体2の下部に向かってアウトソール本体2を貫通するように形成されている(
図6および
図7参照)。各丸孔部4は、上下方向において後述の内孔部13と連通している。
【0036】
アウトソール本体2は、補強部5を有している。補強部5は、アウトソール本体2よりも剛性が高い硬質樹脂材からなる。具体的に、補強部5は、例えば、繊維強化プラスチック(FRP)、グラスファイバーが含有されたナイロン、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)等からなる。補強部5は、アウトソール本体2の、着用者の足の中足部から後足部に亘る範囲に対応する位置に配置されている。補強部5の上面は、アウトソール本体2の足裏支持面と略面一となっている。
【0037】
補強部5は、ハニカム構造6を有している。ハニカム構造6は、各々が正六角形状を有する複数の凹部により構成されている。このハニカム構造6により、アウトソール本体2の、着用者の足の中足部から後足部に亘る範囲の剛性が高められている。
【0038】
図1~
図3および
図5に示すように、アウトソール本体2は、カウンター部7を有している。カウンター部7は、アウトソール本体2の、着用者の足の踵部に対応する位置に配置されている。カウンター部7は、着用者の足の踵部を、該踵部の左右両側および後側から覆うように構成されている。
【0039】
図2および
図4に示すように、アウトソール本体2の下側には、中央スタッド8が設けられている。中央スタッド8は、例えば耐摩耗性の高い樹脂材からなる。中央スタッド8の材料としては、例えば、ナイロン系エラストマー、熱可塑性ポリウレタン、スチレン系の熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマーが適している。中央スタッド8は、アウトソール本体2の下側において着用者の足の前足部に対応する位置に配置されている。
【0040】
(スタッド)
図1および
図2に示すように、アウトソール1は、複数(図示例では12個)のスタッド10を備えている。複数のスタッド10は、接地時において地面に対するクリーツシューズのグリップ力を高めるための要素である。各スタッド10は、例えば射出成形によりアウトソール本体2と共に成形される。
【0041】
図2および
図4に示すように、複数のスタッド10は、アウトソール本体2の下側において分散した状態で配置されている。各スタッド10は、上下方向において各丸孔部4と重なる位置に配置されている。
【0042】
複数のスタッド10は、アウトソール本体2の、着用者の足の前足部および後足部に対応する位置に配置されている。また、複数のスタッド10は、アウトソール本体2の内甲側近傍およびアウトソール本体2の外甲側近傍のそれぞれに対応する位置に配置されている。内甲側の近傍に位置する複数のスタッド10は、足長方向において互いに間隔をあけて配置されている。外甲側の近傍に位置する複数のスタッド10は、足長方向において互いに間隔をあけて配置されている。
【0043】
図6および
図7に示すように、各スタッド10は、外筒部11および芯部12を有している。
【0044】
外筒部11は、アウトソール本体2と同じ樹脂材により構成されている。外筒部11は、アウトソール本体2の下部から下方に向かって延びる筒状を有している。この実施形態の外筒部11は、略円筒状に形成されている。
【0045】
外筒部11は、その下端部が地面と接地するように構成されている。外筒部11は、アウトソール本体2の下部の付け根部分から下方に向かって徐々に先細るように形成されている。この実施形態では、外筒部11の厚みが、後述の角部14に対応する位置から外筒部11の下端部に亘る範囲において略一定となっている。そして、本開示の特徴的構成として、外筒部11は、アウトソール本体2と継ぎ目がないようにアウトソール本体2と一体に形成されている。
【0046】
図7に示すように、外筒部11は、内孔部13を有している。内孔部13は、外筒部11を上下方向に貫通するように形成されている。内孔部13は、アウトソール本体2の各丸孔部4と連通している。内孔部13は、縦断面視において略バレル状に形成されている。すなわち、内孔部13は、芯部12の外形に適合するように形成されている。
【0047】
この実施形態の芯部12は樹脂材からなる。具体的に、芯部12は、耐摩耗性の高い樹脂材からなる。芯部12の樹脂材としては、例えば、ナイロン系エラストマー、熱可塑性ポリウレタン、スチレン系の熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマーが適している。特に、スチレン系の熱可塑性エラストマーは、耐摩耗性を有するとともに、他の材料との対比において比較的軽量である。このため、芯部12の材料としてスチレン系の熱可塑性エラストマーを適用することにより、芯部12の重量を抑えることが可能となる。すなわち、アウトソール1としての全体的な軽量化を実現しうる。
【0048】
芯部12は、外筒部11の内部に設けられている。具体的に、芯部12は、外筒部11の内孔部13内に配置されている。そして、本開示の特徴的構成として、外筒部11は、外筒部11の内壁面が芯部12の側面を囲みかつ外筒部11の内壁面が芯部12の側面と接するように構成されている。特に、この実施形態では、外筒部11および芯部12の双方が樹脂材により構成されていて、後述の射出成形工程を経ることにより、外筒部11の内壁面と芯部12の側面とが互いに融着した状態となっている。また、芯部12は、芯部12の下端部が外筒部11の下端部から露出するように構成されている。なお、この実施形態では、外筒部11の内壁面が芯部12の側面全体を囲むように構成されている。
【0049】
芯部12は、縦断面視において略バレル状を有している。具体的に、
図7に示すように、芯部12は角部14を有している。角部14は、芯部12の上端部寄りに位置している。この角部14の位置では、芯部12の径方向の大きさが最大となる。芯部12は、径方向の大きさが、角部14から上方および下方のそれぞれに向かって徐々に小さくなるように形成されている。そして、芯部12が内孔部13に内嵌合された状態では、角部14が外筒部11の内壁面に対して係止された状態となる。これにより、芯部12が外筒部11から抜け出ないようになる。すなわち、この実施形態のスタッド10では、角部14が、芯部12が外筒部11から抜け出ないようにするための抜け止め防止構造に相当する。
【0050】
図7に示すように、芯部12は、第1凹部15および第2凹部16を有している。第1凹部15は、芯部12の上部側に形成されている。第2凹部16は、芯部12の下部側に形成されている。第1凹部15および第2凹部16は、アウトソール1を製造するための金型装置30(
図8参照)に芯部12を設置するための金型設置構造として機能する。
【0051】
(アウトソールの製造方法)
次に、
図8を参照しながら、アウトソール1の製造方法を説明する。この製造方法は、主にインサート工程および射出成形工程を有している。ここで、
図8では、実際の製造形態を考慮して、アウトソール本体2の上面に対応する位置が
図8の紙面下側に位置するように示している。また、
図8では、アウトソール本体2および複数の外筒部11を構成する樹脂材が金型装置30の成形室31内に充填される前の状態を示している。なお、以下の説明では、上述の補強部5および中央スタッド8に関する説明を省略する。
【0052】
上記インサート工程として、複数の芯部12を、アウトソール1の金型装置30における所定の位置に設置する。具体的に、金型装置30の成形室31内には、複数の第1ピン32aおよび複数の第2ピン32bが所定の位置に予め設けられている。そして、各芯部12の第1凹部15を各第1ピン32aに合わせるとともに、各芯部12の第2凹部16を各第2ピン32bに合わせる。これにより、複数の芯部12が金型装置30内の所定位置に設置された状態となる。
【0053】
上記インサート工程を経た後、上記射出成形工程として、図示しない射出成形機により加熱溶融した樹脂材(すなわち、アウトソール本体2および各外筒部11を構成する樹脂材)を金型装置30に充填する。このとき、上記樹脂材を、金型装置30のゲート(図示せず)を介して金型装置30の成形室31に射出する。具体的に、上記樹脂材を、金型装置30の成形室31の、アウトソール本体2の足裏支持面3に対応する位置から外筒部11に対応する位置に向かって射出する。
【0054】
上記樹脂材を金型装置30の成形室31に充填した後、金型装置30に対して所定の冷却処理を行う。この冷却処理を経ることによりアウトソール1が得られる。
【0055】
なお、金型装置30は、従来型のアウトソール(例えば特許文献1に示されたアウトソール)の製造にも用いられる。すなわち、金型装置30は、本開示の実施形態に係るアウトソール1の製造と、従来型のアウトソールの製造との併用が可能となっている。
【0056】
[実施形態の作用効果]
本開示の実施形態に係るアウトソール1のスタッド10では、外筒部11がアウトソール本体2(アウトソール1)と継ぎ目がないように一体に形成されている。すなわち、外筒部11がアウトソール本体2(アウトソール1)と連続的に形成されている。このため、クリーツシューズの着用者による競技時の様々な運動動作により、スタッド10に継続的な負荷が生じたとしても、外筒部11がアウトソール本体2から剥離する起点となり得る継ぎ目が外側に現れていないことから、アウトソール本体2に対するスタッド10の剥離を抑制することが可能となる。なお、上記運動動作としては、例えば、着用者による、歩く、走る、ボールを蹴る、急停止する、切り返す、跳ぶ、着地する、といった動作が挙げられる。さらに、外筒部11は、外筒部11の内壁面が芯部12の側面を囲みかつ該内壁面が芯部12の側面と接するように構成されている。かかる構成によれば、外筒部11の内壁面に囲まれた芯部12によりスタッド10の強度が向上する。また、外筒部11の内壁面と芯部12の側面との接触状態により生じうる抵抗力(例えば摩擦力)に起因して、芯部12が外筒部11から抜け出ないようになる。その結果、芯部12が外筒部11の内壁面に囲まれた状態が保たれる。すなわち、スタッド10をアウトソール本体2に対して安定させることが可能になる。したがって、本開示の実施形態に係るアウトソール1のスタッド10では、アウトソール本体2(アウトソール1)に対するスタッド10の剥離を抑制することができるとともに、スタッド10を強固に保つことができる。
【0057】
また、芯部12には、抜け止め防止構造が設けられている。この抜け止め防止構造により、芯部12が外筒部11から抜けにくくなる。特に、この実施形態では、外筒部11の内孔部13と芯部12とが縦断面視において略バレル状に形成され、主に角部14が抜け止め防止構造として機能する。これにより、芯部12が外筒部11に対して上側および下側の双方に向かって抜け出にくくなる。このように、スタッド10をアウトソール1に対してより一層安定させることができる。
【0058】
また、外筒部11および芯部12の各々は樹脂材からなり、外筒部11の内壁面と芯部12の側面とが互いに融着している。これにより、芯部12が外筒部11に対して強く固着された状態となる。すなわち、芯部12が外筒部11から抜けにくくなる。したがって、スタッド10をアウトソール1に対してより一層安定させることができる。
【0059】
また、芯部12の下端部が外筒部11の下端部から露出していることから、外筒部11の下端部側(すなわち、スタッド10が地面に接地する側)から見たときに、外筒部11および芯部12の双方が視認可能となる。これにより、例えば外筒部11および芯部12の各々の配色を適宜変えることにより、スタッド10の意匠性を高めることができる。
【0060】
また、芯部12は、金型装置30において芯部12を設置するための金型設置構造を有している。金型設置構造は、第1凹部15および第2凹部16を含む。かかる構成によれば、例えば上記インサート工程において、金型設置構造(第1凹部15および第2凹部16)を用いることにより、芯部12を金型装置30の成形室31内において安定的に設置することができる。
【0061】
また、複数のスタッド10は、射出成形によりアウトソール本体2と共に成形される。これにより、アウトソール本体2に対するスタッド10の剥離を抑制したアウトソール1を安定的に得ることができる。
【0062】
[実施形態の変形例]
上述の抜け止め防止構造に関しては、上記実施形態で示した具体的構成に限らず、種々の構成を採用することが可能である。例えば、上記実施形態では、外筒部11の内孔部13および芯部12が略バレル状を有する形態を示したが、この形態に限られない。すなわち、
図9に示した変形例1のように、内孔部13と芯部12とが縦断面視においてテーパー状に形成されていて、芯部12の角部14が芯部12の上端部に形成されていてもよい。この変形例であっても、芯部12が外筒部11に対して上側および下側の双方に向かって抜け出ないようにすることが可能である。
【0063】
また、
図10に示した変形例2のように、突出部20を芯部12に設けてもよい。この突出部20は、芯部12の外周面から径方向外側に向かって突出している。突出部20は、断面視で略矩形状に形成されている。また、突出部20は、芯部12の上下方向において角部14よりも下側に位置している。このような突出部20を設けることにより、芯部12が外筒部11に対して上側および下側の双方に向かって抜け出にくくなる。すなわち、変形例2では、角部14および突出部20が抜け止め防止構造として機能する。
【0064】
また、
図11に示した変形例3のように、突出部20に対して貫通孔21を更に設けてもよい。この貫通孔21は、突出部20を、突出部20の延伸方向に直交する方向に貫通している。そして、この貫通孔21には、外筒部11の一部が入り込んだ状態となっている。すなわち、この変形例では、上記射出成形工程において、外筒部11を構成する樹脂材が貫通孔21に充填された状態で成形されている。このような変形例であっても、芯部12が外筒部11に対して上側および下側の双方に向かって抜け出にくくなる。
【0065】
また、
図12に示した変形例4のように、変形例2の突出部20を断面視で略三角形状に形成してもよい。この変形例であっても、上記変形例2と同様に、芯部12が外筒部11に対して上側および下側の双方に向かって抜け出にくくなる。
【0066】
また、上記実施形態の芯部12では、角部14の位置において芯部12の径方向の大きさが最大となるように形成したが、この形態に限られない。例えば、
図13に示した変形例5のように、角部14の位置において芯部12の径方向の大きさが最小となるように形成してもよい。この変形例では、外筒部11の内壁面が角部14に係止された状態となることから、芯部12が外筒部11に対して上側および下側の双方に向かって抜け出にくくなる。
【0067】
また、
図13に示した変形例5では、外筒部11の厚みが、外筒部11の下端部において最も小さくなるよう構成されている。かかる構成であれば、射出成形により外筒部11を形成する場合において、金型装置30において加熱溶融した樹脂材が外筒部11の下端部側に向かって充填されやすくなる。その結果、外筒部11においてヒケなどの成形不良が起こりにくくなり、外筒部11を構造上安定させることができる。
【0068】
さらに、
図14に変形例6のように、上記変形例5で示した芯部12の上端部に突出部20をさらに設けてもよい。このような変形例であっても、芯部12が外筒部11に対して上側および下側の双方に向かって抜け出にくくなる。
【0069】
このように、上記変形例1~6であっても、抜け止め防止構造により、芯部12が外筒部11に対して上側および下側の双方に向かって抜け出にくくなる。その結果、スタッド10をアウトソール1に対して安定させることができる。
【0070】
[その他の実施形態]
上記実施形態では、外筒部11が円筒状を有する形態を示したが、この形態に限られない。例えば、外筒部11は、三角形状を含む多角形状の筒状を有していてもよい。あるいは、外筒部11は、所定の方向に沿って延びるブレード状を有していてもよい。
【0071】
上記実施形態では、外筒部11の内壁面が芯部12の側面全体を囲んだ形態を示したが、この形態に限られない。図示しないが、芯部12の側面には、外筒部11の内壁面に囲われていない部分が存在していてもよい。すなわち、外筒部11の内壁面が芯部12の側面を実質的に囲むように構成されていればよい。
【0072】
上記実施形態では、外筒部11の厚みが、角部14に対応する位置から外筒部11の下端部に亘る範囲において略一定となる形態(
図7参照)を示したが、この形態に限られない。例えば、図示しないが、外筒部11の厚みが、角部14に対応する位置から外筒部11の下端部に向かって徐々に小さくなるように構成されていてもよい。このような構成であっても、
図13に示した変形例5と同様に、外筒部11の厚みを、外筒部11の下端部において最も小さくすることが可能となる。これにより、上記変形例5と同様に、外筒部11においてヒケなどの成形不良が起こりにくくなり、外筒部11を構造上安定させることができる。
【0073】
また、上記実施形態では、芯部12の材料として樹脂材を適用したが、この材料に限られない。すなわち、芯部12の材料として、樹脂材以外の材料(金属材料、セラミック材など)を適用してもよい。
【0074】
以上、本開示についての実施形態を説明したが、本開示は上述の実施形態のみに限定されず、本開示の範囲内で種々の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本開示は、クリーツシューズに用いられるアウトソールのスタッド、アウトソール、アウトソールの製造方法、およびクリーツシューズとして産業上の利用が可能である。
【符号の説明】
【0076】
1:アウトソール
2:アウトソール本体
3:足裏支持面
4:丸孔部
5:補強部
6:ハニカム構造
7:カウンター部
8:中央スタッド
10:スタッド
11:外筒部
12:芯部
13:内孔部
14:角部
15:第1凹部
16:第2凹部
20:突出部
21:貫通孔
30:金型装置
31:成形室
32a:第1ピン
32b:第2ピン