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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131979
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】接合体
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/52 20060101AFI20230914BHJP
   B23K 35/30 20060101ALI20230914BHJP
   C22C 5/02 20060101ALN20230914BHJP
   B23K 35/22 20060101ALN20230914BHJP
   B23K 1/00 20060101ALN20230914BHJP
【FI】
H01L21/52 B
B23K35/30 310A
C22C5/02
B23K35/22 310A
B23K1/00 330E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022037034
(22)【出願日】2022-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】八十嶋 司
【テーマコード(参考)】
5F047
【Fターム(参考)】
5F047AA17
5F047BA05
5F047BA19
5F047BA21
5F047BB11
5F047BB16
5F047BB18
5F047CA02
(57)【要約】
【課題】Au-Sn合金からなる接合層が薄く形成されるとともに、接合強度に優れた接合体を提供する。
【解決手段】第一部材11と第二部材12とが接合層13を介して接合された接合体10であって、接合層13は、Au-Sn合金で構成され、厚さが10μm未満とされており、接合層13において、真円度が60%以下の異形ボイドの面積率が、接合面積の15%未満であることを特徴とする。接合層13におけるボイドの面積率が、接合面積の25%未満であることが好ましい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一部材と第二部材とが接合層を介して接合された接合体であって、
前記接合層は、Au-Sn合金で構成され、厚さが10μm未満とされており、
前記接合層において、真円度が60%以下の異形ボイドの面積率が、接合面積の15%未満であることを特徴とする接合体。
【請求項2】
前記接合層におけるボイドの面積率が、接合面積の25%未満であることを特徴とする請求項1に記載の接合体。
【請求項3】
前記第一部材の接合面および前記第二部材の接合面のいずれか一項または両方に、Auを除くメタライズ層が形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の接合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第一部材と第二部材とが、Au-Sn合金で構成された接合層を介して接合された接合体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、LEDやパワーモジュールといった各種デバイスにおいては、金属部材からなる回路層を備えた基板の上に半導体素子等の電子部品が接合された構造とされている。
半導体素子等の電子部品を回路層上に接合する際には、例えば特許文献1に示すように、Au-Sn合金からなるはんだ材を用いた方法が広く使用されている。
ここで、基板(回路層)と電子部品とをAu-Sn合金はんだを用いて接合する際には、Au-Sn合金はんだとの濡れ性を確保するため、基板(回路層)の接合面に、膜厚の薄いAuめっき層(Auフラッシュめっき層)を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-010152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、Au-Sn合金はんだは、非常に高価であるため、接合層の厚さを薄くすることが求められている。
ここで、Au-Sn合金はんだの塗布量を低減した場合には、接合面にAuフラッシュめっき層を形成してAu-Sn合金はんだを用いてはんだ接合した際に、接合層内にボイドが多く生成し、接合強度が低下することがあった。
【0005】
この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、Au-Sn合金からなる接合層が薄く形成されるとともに、接合強度に優れた接合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明者らが鋭意検討した結果、接合面にAuフラッシュめっき層を形成してAu-Sn合金はんだを用いてはんだ接合した際には、接合加熱時に接合界面に配設したAu-Sn合金はんだにAuフラッシュめっき層のAuが混入し、接合界面に存在するAu-Sn合金の液相の組成がAuリッチ側に変化し、その融点(液相線温度)が高くなる。これにより、接合時において所定温度に加熱して保持していても、接合界面に存在するはんだの液相中に固相が形成され、液相の流動性が低下し、接合後に形成される接合層の内部にボイドが形成され、接合強度が低下することが分かった。また、このとき形成されるボイドは真円度が低くいびつな形状となることが分かった。なお、組成ずれは、Au-Snはんだの塗布厚さが薄くなるほど顕著となる。
【0007】
本発明は、上述の知見に基づいてなされたものであって、本発明の接合体は、第一部材と第二部材とが接合層を介して接合された接合体であって、前記接合層は、Au-Sn合金で構成され、厚さが10μm未満とされており、前記接合層において、真円度が60%以下の異形ボイドの面積率が、接合面積の15%未満であることを特徴としている。
【0008】
本発明の接合体によれば、Au-Sn合金で構成された接合層の厚さが10μm以下と薄く形成され、真円度が60%以下の異形ボイドの面積率が、接合面積の15%未満とされているので、接合加熱時に液相の流動性が確保されており、第一部材と第二部材とを安定して接合でき、第一部材と第二部材との接合強度に優れている。
【0009】
ここで、本発明の接合体においては、前記接合層におけるボイドの面積率が、接合面積の25%未満であることが好ましい。
この場合、接合層におけるボイドの面積率が25%未満とされているので、第一部材と第二部材との接合強度に十分に優れている。
【0010】
また、本発明の接合体においては、前記第一部材の接合面および前記第二部材の接合面のいずれか一方または両方に、Auを除くメタライズ層が形成されていることが好ましい。
この場合、Auを除くメタライズ層が形成されている場合であっても、異形ボイドの発生が抑制されており、第一部材と第二部材との接合強度に優れている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、Au-Sn合金からなる接合層が薄く形成されるとともに、接合強度に優れた接合体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る接合体の説明図である。
図2】Au-Sn合金の状態図である。
図3】本発明の一実施形態に係る接合体の製造方法のフロー図である。
図4】本発明の一実施形態に係る接合体の製造方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施形態である接合体について、図面を参照して説明する。
【0014】
本実施形態に係る接合体10は、図1に示すように、第一部材11と第二部材12とが、接合層13を介して接合されたものである。本実施形態では、接合体10は、絶縁回路基板の回路層(第一部材11)と半導体素子(第二部材12)とが、接合層13を介して接合された半導体装置とされている。なお、図1に示すように、絶縁回路基板の回路層(第一部材11)は半導体素子(第二部材12)よりも面積が大きい。
【0015】
ここで、回路層(第一部材11)は、例えば、銅又は銅合金、アルミニウム又はアルミニウム合金、鉄又は鉄合金等の導電性に優れた金属で構成されており、本実施形態では、鉄合金(コバール)で構成されたものとされている。
ここで、回路層(第一部材11)の接合面には、Auを除くメタライズ層11aが形成されていてもよい。Auを除くメタライズ層11aは、例えば、Ni,Pd,Ag,Cu等が挙げられる。
また、半導体素子(第二部材12)の接合面には、Au等の貴金属膜が成膜されていてもよい。
【0016】
本実施形態においては、接合層13は、Au-Sn合金で構成されている。また、接合層13の厚さtが10μm以下とされている。なお、接合層13の厚さtは10μm以下であることが好ましく、4μm以下であることがより好ましい。
ここで、図2にAu-Sn合金の状態図を示す。Au-Sn合金においては、図2に示すように、共晶反応する共晶型合金であり、Au-20mass%Snが共晶組成とされており、融点が共晶温度278℃となる。
【0017】
そして、本実施形態である接合体10においては、接合層13において、真円度Cが60%以下の異形ボイドの面積率が、接合面積の15%未満とされている。
さらに、本実施形態である接合体10においては、接合層13におけるボイドの面積率(すなわち、異形ボイドを含む全てのボイドの面積率)が、接合面積の25%未満とされていることが好ましい。
【0018】
ここで、ボイドの真円度Cは、接合層13を接合面に対向する方向(図1の矢印A方向)から観察し、ボイドの面積A1とそのボイドの輪郭のうち最も離間した2点を直径する円の面積A0とから、以下のように定義される。
ボイドの真円度C(%)=A1/A2×100
【0019】
また、異形ボイドの面積率、および、異形ボイドを含む全てのボイドの面積率は、接合層13を接合面に対向する方向(図1の矢印A方向)から観察して算出する。
ここで、真円度Cが60%以下の異形ボイドの面積率は、接合面積の15%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。
また、ボイドの面積率(異形ボイドを含む全てのボイドの面積率)は、接合面積の25%以下であることがより好ましく、15%以下であることがさらに好ましい。
【0020】
次に、本実施形態である接合体10の製造方法について、図3および図4を参照して説明する。
【0021】
(第一部材準備工程S01)
まず、接合する第一部材11を準備する。この第一部材11の表面には、図4に示すように、Auを除くメタライズ層11aが形成されていてもよい。
そして、また、図4に示すように、第一部材11の接合面に、必要に応じてAuフラッシュめっき層21を形成してもよい。ここで、Auフラッシュめっき層21の厚さt0は、10nm以下とすることが好ましく、4nm以下とすることがより好ましい。
【0022】
(はんだ材塗布工程S02)
次に、図4に示すように、第一部材11の接合面および第二部材12の接合面の一方又は両方に、はんだ材23を塗布する。塗布方法は特に限定されないが、例えば、メタルマスク法、スクリーン印刷法、ディスペンス法等を適用することができる。
ここで、例えば、ディスペンス法を使用する場合、はんだ材23の塗布量は0.2nL以上50nL以下の範囲内とすることが好ましい。
さらに、第一部材11の接合面にAuフラッシュめっき層21を形成した場合には、Auフラッシュめっき層21の厚さt0と接合後の接合層12の厚さtとの比t0/tを0.003以下とすることが好ましく、より好ましくは0.001以下とすることがより好ましい。なお、Auフラッシュめっき層21を形成しない場合には、t0/tは0となる。
また、接合後のAuフラッシュめっき層21の厚さt0は、第一部材11と第二部材12とが接合されている領域以外の領域を測定することで求めることができる。本実施形態では回路層(第一部材11)において、半導体素子(第二部材12)が接合されている領域の外側の表面を測定することでAuフラッシュめっき層21の厚さt0を求めることができる。
【0023】
はんだ材23は、金属粉末とフラックス(溶剤、チキソ剤、活性剤、樹脂)とを含むものとされている。
金属粉末は、合金粉末であってもよいし、混合粉末であってもよい。本実施形態では、Au粉末とSn粉末の混合粉末とされている。また、混合粉末の混合比率は、質量比でAu:Sn=78:22とされている。すなわち、本実施形態におけるはんだ材23は、Au-22mass%Snとされている。
【0024】
フラックスに含まれる溶剤としては、例えば、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、芳香族系、炭化水素類、テルペン系及びテルペノイド系等の溶剤が用いられる。具体的には、ベンジルアルコール、エタノール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ジエチレングリコール、エチレングリコール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ブチルカルビトール 、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸ブチル、アジピン酸ジエチル、ドデカン、テトラデセン、α-テルピネオール、2-メチル2,4-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、トルエン、キシレン、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジイソブチルアジペート、へキシレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、2-ターピニルオキシエタノール、2-ジヒドロターピニルオキシエタノール、シトラール、リナロール、リモネン、カルバクロール、ピネン、ファルネセンなどが単独又はこれらを混合して用いられる。
【0025】
チキソ剤としては、例えば、硬化ヒマシ油、水素添加ひまし油、カルナバワックス、アミド類、ヒドロキシ脂肪酸類、ジベンジリデンソルビトール、ビス(p-メチルベンジリデン)ソルビトール類、蜜蝋、ステアリン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸エチレンビスアミド等が単独又はこれらを混合して用いられる。
活性剤としては、例えば、アジピン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸のような脂肪酸、1,2-ヒドロキシステアリン酸のようなヒドロキシ脂肪酸、酸化防止剤、界面活性剤、アミン類等を添加して用いられる。
樹脂としては、例えば、重合ロジン、天然ロジン、精製ロジン等が用いられる。
【0026】
(積層工程S03)
次に、図4に示すように、上述のはんだ材23を介して、第一部材11と第二部材12とを積層する。
【0027】
(接合工程S04)
次に、図4に示すように、はんだ材23を介して積層された第一部材11および第二部材12を加熱処理して液相を生じさせ、この液相を凝固することで接合層13を形成し、第一部材11と第二部材12とを接合する。
【0028】
ここで、上述のように、はんだ材23がAu-22mass%Snとされているが、Auフラッシュめっき層21を形成している場合には、接合工程S04での加熱時にはんだ材23が溶融して形成された液相にAuフラッシュめっき層21のAuが混合することで、Auリッチ側に組成ずれが生じ、図2の状態図に示すように、液相線温度が上昇することになる。すると、接合時の保持温度によっては、保持中に液相中に固相が生じ、液相の流動性が低下し、真円度Cが60%以下の異形ボイドが生成することになる。
【0029】
このため、本実施形態においては、Auフラッシュめっき層21を形成した場合には、Auフラッシュめっき層21の厚さt0と接合後の接合層12の厚さtとのt0/tを0.003以下とすることが好ましく、より好ましくは0.001以下とするとよい。
また、Auフラッシュめっき層21を形成しないことが最も好ましい。ただし、Auフラッシュめっき層21を形成しない場合には、はんだ材23の第一部材11との濡れ性が低下するおそれがある。
【0030】
そこで、本実施形態においては、接合工程S04において、はんだ材23の融点±5℃の温度範囲における昇温速度を0.1℃/min以上5℃/min以下、好ましくは0.1℃/min以上1℃/minの範囲内と、昇温速度を非常に遅く設定している。これにより、はんだ材23が第一部材11の接合面に対して十分に濡れることになる。
本実施形態では、はんだ材23の合金組成がAu-22mass%Snとされており、この組成での融点は280℃であることから、275℃から285℃までの昇温速度を0.1℃/min以上5℃/min以下の範囲内としている。
【0031】
また、接合工程S04における保持温度は、はんだ材23の融点+5℃以上融点+50℃以下の範囲内とすることが好ましい。具体的には、285℃以上330℃以下の範囲内とすることが好ましい。さらに、保持温度での保持時間は、0.5分以上3分以下の範囲内とすることが好ましい。
さらに、加熱処理時には、積層体に対して0MPa以上0.0007MPa以下の圧力で積層方向に加圧してもよい。
【0032】
上述した第一部材準備工程S01、はんだ材塗布工程S02、積層工程S03、接合工程S04により、本実施形態である接合体10が製造される。
【0033】
以上のような構成とされた本実施形態である接合体10によれば、Au-Sn合金で構成された接合層13の厚さが10μm以下と薄く形成され、真円度Cが60%以下の異形ボイドの面積率が、接合面積の15%未満とされているので、接合工程S04時に液相の流動性が確保されており、第一部材11と第二部材12とを安定して接合でき、第一部材11と第二部材12との接合強度に優れている。
【0034】
また、本実施形態である接合体10において、接合層13におけるボイドの面積率(異形ボイドを含む全てのボイドの面積率)が、接合面積の25%未満である場合には、第一部材11と第二部材12との接合強度に特に優れている。
さらに、本実施形態である接合体10において、第一部材11の接合面に、Auを除くメタライズ層11aが形成されていても、接合層13における異形ボイドの発生が抑制されており、第一部材11と第二部材12との接合強度に優れている。
【0035】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【実施例0036】
以下に、本発明の有効性を確認するために行った確認実験の結果について説明する。
【0037】
第一部材として、鉄合金(コバール)板(250mm×150mm×厚さ0.1mm)の表面に、表1に示すメタライズ層を形成した基板を準備した。また、一部の基板の接合面には、表1に示すAuフラッシュめっき層を形成した。
第二部材として、接合面にNiめっき(厚さ4μm)を施したSiCチップ(1mm×1mm×厚さ0.4mm)を準備した。
また、はんだ材として、実施形態で説明したAu-22mass%Sn合金粉末とフラックスからなるペーストを用いた。金属粉末とフラックスの割合は50:50(体積比)とし、重合ロジン、テルペン系溶剤、アマイド系チキソ剤、有機酸活性剤からなるフラックスを用いた。
【0038】
ディスペンス装置(武蔵エンジニアリング社製、エアパルス式、ノズル内径0.25mm)により、はんだ材を第一部材の接合面に塗布した。塗布量を表1に示す。また、Auフラッシュめっき層の厚さt0と接合層12の厚さtとの比t0/tを表1に示す。
【0039】
そして、保持温度300℃、保持時間1分、加圧圧力0MPaの条件により、第一部材と第二部材とを接合した。
このとき、はんだ材の融点(280℃)±5℃の温度範囲(275℃から285℃まで)の昇温速度を表1に示す条件とした。
上述のように得られた接合体について、以下の項目について評価した。
【0040】
(接合層の厚さ)
接合体の積層方向に沿った断面をSEM観察し、積層層の厚さを測定した。倍率1000倍で観察し、1つの視野内で5点の厚さを測定し、これを5視野で実施し、その平均厚さを接合層の厚さとして、表1に示す。
【0041】
(ボイドの真円度)
接合層を接合面に対向する方向から超音波探傷機(日立パワーソリューションズ社製FSP8V)で観察し、白色で示される未接合部をボイドとした。このボイドの面積A1とそのボイドの輪郭のうち最も離間した2点を直径する円の面積A0とから、ボイドの真円度C(%)=A1/A0×100として算出した。
【0042】
(異形ボイドの面積率)
接合層を接合面に対向する方向から超音波探傷機(日立パワーソリューションズ社製FSP8V)で観察し、白色で示される未接合部をボイドとした。そして、真円度Cが60%以下の異形ボイドの面積を測定し、これを接合面積(1mm×1mm)で割ることにより、異形ボイドの面積率を算出した。
異形ボイドの面積率が10%未満を「◎」、異形ボイドの面積率が10%以上15%未満を「〇」、異形ボイドの面積率が15%以上を「×」とした。
【0043】
(ボイドの面積率)
接合層を接合面に対向する方向から超音波探傷機(日立パワーソリューションズ社製FSP8V)で観察し、白色で示される未接合部をボイドとした。そして、異形ボイドを含む全てのボイドの面積を測定し、これを接合面積(1mm×1mm)で割ることにより、ボイドの面積率を算出した。
ボイドの面積率が15%未満を「◎」、ボイドの面積率が15%以上25%未満を「〇」、ボイドの面積率が25%以上を「×」とした。
【0044】
(接合強度)
得られた接合体について、せん断強度評価試験機(株式会社レスカ製ボンディングテスタPTR-1101)を用いて接合強度を測定した。測定は、接合体の第1部材を水平に固定し、接合層の表面から100μm上方の位置にてシェアツールを用いて、第1部材を横から水平方向に押して、第2部材が破断されたときの強度を測定した。シェアツールの移動速度は0.1mm/sとした。一条件につき3回試験を行い、それらの算術平均値を測定値とした。
接合強度が50MPa以上を「◎」、接合強度が30MPa以上50MPa未満を「〇」、接合強度が30MPa未満を「×」とした。
【0045】
【表1】
【0046】
比較例1においては、第一部材の接合面に形成されたAuフラッシュめっき層の厚さt0が3.5nmとされ、Auフラッシュめっき層の厚さt0と接合後の接合層の厚さtとの比t0/tが0.0035とされており、接合層において、真円度が60%以下の異形ボイドの面積率が15%以上、ボイドの面積率が25%以上となった。これにより、接合強度が30MPa未満となり、接合強度が不十分であった。
【0047】
比較例2においては、第一部材の接合面に形成されたAuフラッシュめっき層の厚さt0が10.0nmとされ、Auフラッシュめっき層の厚さt0と接合後の接合層の厚さtとの比t0/tが0.0033とされており、接合層において、真円度が60%以下の異形ボイドの面積率が15%以上、ボイドの面積率が25%以上となった。これにより、接合強度が30MPa未満となり、接合強度が不十分であった。
【0048】
これに対して、本発明例1-10においては、接合層の厚さが10μm未満とされるとともに、接合層において、真円度が60%以下の異形ボイドの面積率が15%以上とされており、接合強度が30MPa以上となり、接合強度に優れていた。
【0049】
以上の確認実験の結果から、本発明例によれば、Au-Sn合金からなる接合層が薄く形成されるとともに、接合強度に優れた接合体を提供可能であることが確認された。
【符号の説明】
【0050】
10 接合体
11 第一部材
11a メタライズ層
12 第二部材
13 接合層
21 Auフラッシュめっき層
23 はんだ材
図1
図2
図3
図4