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  • 特開-照明器具の仮設置方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132004
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】照明器具の仮設置方法
(51)【国際特許分類】
   F21V 21/03 20060101AFI20230914BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20230914BHJP
【FI】
F21V21/03 150
F21Y115:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022037077
(22)【出願日】2022-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000001834
【氏名又は名称】三機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内山 力弥
(57)【要約】
【課題】天井更新工事において、工事期間中に天井の照明器具を継続的に仮設置することが可能な仮設置方法を提供する。
【解決手段】天井更新工事中における照明器具の仮設置方法は、吊りボルトを用いて天井ボードの天井面の位置に基台或いは反射板の見切りが設置されている既設の照明器具を、天井面よりも低い位置に仮設置する。典型的には、仮設置方法は、全ねじボルトと、吊りボルト及び全ねじボルトに螺合する長ナットと、を準備する工程と、照明器具を吊りボルトから取り外す工程と、長ナットを用いて全ねじボルトの基端側を吊りボルトの先端に連結する工程と、全ねじボルトの先端側に照明器具を仮設置する工程と、を備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吊りボルトを用いて天井ボードの天井面の位置に基台或いは反射板の見切りが設置されている既設の照明器具を天井面よりも低い位置に仮設置するための仮設置方法であって、
全ねじボルトと、前記吊りボルト及び前記全ねじボルトに螺合する長ナットと、を準備する準備工程と、
前記照明器具を前記吊りボルトから取り外す取り外し工程と、
前記長ナットを用いて前記全ねじボルトの基端側を前記吊りボルトの先端側に連結する連結工程と、
前記全ねじボルトの先端側に前記照明器具を仮設置する仮設置工程と、
を備えることを特徴とする照明器具の仮設置方法。
【請求項2】
前記全ねじボルトは、前記吊りボルトと同径及び同ピッチであることを特徴とする請求項1に記載の照明器具の仮設置方法。
【請求項3】
前記全ねじボルトの長さは、仮設置された前記照明器具の基台或いは反射板の見切りから天井面までの距離が200mm以上400mm以下となる長さであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の照明器具の仮設置方法。
【請求項4】
前記全ねじボルトの長さは、仮設置された前記照明器具の下端からフロア面までの距離が2m以上となる長さであることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の照明器具の仮設置方法。
【請求項5】
前記天井ボードの工事が完了した後に、仮設置された前記照明器具を前記全ねじボルトから取り外す工程と、
前記吊りボルトから前記全ねじボルト及び前記長ナットを取り外す工程と、
前記吊りボルトを用いて新規の照明器具を設置する工程と、
を更に含むことを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1項に記載の照明器具の仮設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、照明器具の仮設置方法に係り、特に天井更新工事において、天井の照明器具を仮設置するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、天井に設置される照明器具に関する技術が開示されている。この技術では、天井板に設けられた埋込開口に埋込設置される埋込形照明器具の器具本体は、施設側の構造物つまり上階床スラブに設けられている一対の吊りボルトに取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-82513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
既設事務所ビルの改修工事において、事務所が稼働していない週末等の休日のみを利用して天井を新たに居ながら更新・改修する天井更新工事が行われる場合がある。天井更新工事では、既設天井の建築工事の前に、設備側工事として照明器具の撤去等の電気工事を行う必要がある。これは、専門家である電気工事の職人が照明器具を安全に行う必要があるからである。ただし、天井更新工事が一つの週末だけで終了せず複数週にわたって行われる場合、事務所が稼働する稼働日、つまり平日に備えて休日の最後には照明器具をその都度仮復旧させる必要がある。天井板が落とされて軽量組の下地だけになっていても清掃されていれば、照明さえあれば何とか居室として利用可能だからである。ただし、天井工事は設備工事ではなく、主に大工や内装工、塗装工などの建築側工事であって、電気工事の職人は、照明器具の仮復旧のためだけに毎週末工事をすることとなる。このように、天井更新工事期間中に照明器具の設置及び撤去を複数回行うことは、人工の増加を招いてしまい非効率である。
【0005】
本開示は、上述のような課題に鑑みてなされたもので、天井更新工事において、工事期間中に天井の照明器具を継続的に仮設置することが可能な仮設置方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、第1の開示は、吊りボルトを用いて天井ボードの天井面の位置に基台或いは反射板の見切りが設置されている既設の照明器具を天井面よりも低い位置に仮設置するための仮設置方法に適用される。仮設置方法は、全ねじボルトと、吊りボルト及び全ねじボルトに螺合する長ナットと、を準備する準備工程と、照明器具を吊りボルトから取り外す取り外し工程と、長ナットを用いて全ねじボルトの基端側を吊りボルトの先端側に連結する連結工程と、全ねじボルトの先端側に照明器具を仮設置する仮設置工程と、を備える。
【0007】
第2の開示は、第1の開示において更に以下の特徴を備える。
全ねじボルトは、吊りボルトと同径及び同ピッチである。
【0008】
第3の開示は、第1又は第2の開示において更に以下の特徴を備える。
全ねじボルトの長さは、仮設置された照明器具の基台或いは反射板の見切りから天井面までの距離が200mm以上400mm以下となる長さである。
【0009】
第4の開示は、第1から第3の何れか1つの開示において更に以下の特徴を備える。
全ねじボルトの長さは、仮設置された照明器具の下端からフロア面までの距離が2m以上となる長さである。
【0010】
第5の開示は、第1から第4の何れか1つの開示において更に以下の特徴を備える。
照明器具の仮設置方法は、
天井ボードの工事が完了した後に、仮設置された照明器具を全ねじボルトから取り外す工程と、
吊りボルトから全ねじボルト及び長ナットを取り外す工程と、
吊りボルトを用いて新規の照明器具を設置する工程と、
を更に含む。
【発明の効果】
【0011】
本開示の照明器具の仮設置方法によれば、照明器具を継続的に仮設置した状態で工事期間における天井工事及び事務所稼働期間における事務所業務を進めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態に適用される照明装置の例を事務所フロア側から見た斜視図である。
図2】図中の-Y方向に沿って照明装置を見た部分断面図である。
図3】仮設置装置4の構成を説明するための図である。
図4】仮設置装置4を照明装置に適用した例を示す斜視図である。
図5】仮設置装置4を用いて照明装置を仮設置した状態を図中の-Y方向に沿って見た部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本開示の実施の形態について説明する。ただし、以下に示す実施の形態において各要素の個数、数量、量、範囲等の数に言及した場合、特に明示した場合や原理的に明らかにその数に特定される場合を除いて、その言及した数に、この開示が限定されるものではない。また、以下に示す実施の形態において説明する構造等は、特に明示した場合や明らかに原理的にそれに特定される場合を除いて、この開示に必ずしも必須のものではない。
【0014】
実施の形態.
1.実施の形態に適用される照明装置の構成
図1は、実施の形態に適用される照明装置の例を事務所フロア側から見た斜視図である。図2は、図中の-Y方向に沿って照明装置を見た部分断面図である。図1では、既設事務所ビルの天井裏の内部構造の一部を透視して示している。照明装置は、複数個の既設の照明器具10を備える。照明器具10は蛍光灯またはLEDの天井付の照明であり、例えば埋設形照明器具では、既設事務所ビルの天井ボード20の矩形の開口部22に、照明器具の基台或いは反射板の見切り(埋設形の場合は反射板の見切り)を開口部縁に接合してそれぞれ設置される。例えばV形照明器具では、基台の見切りを所定の天井板位置に接合してそれぞれ設置される。各照明器具10は、それぞれ一対の吊りボルト12によって建屋の構造体、例えば上階の床スラブから支持される。一対の吊りボルト12は、建物の天井スラブ14から照明器具10を吊り下げるための全ねじボルト(寸切りボルトとも呼ばれる)である。一対の吊りボルト12は、基端側が天井スラブ14に固定され、先端側が照明器具10に固定される。図2では、照明器具10が天井ボード20に埋設された状態(埋設形照明器具)を例示しているが、天井ボード20の天井面に設置する構成の、V形照明器具でも単台器具でもよい。既設事務所ビルの事務所フロアにはこのような照明器具10が間隔を開けて複数個設置されている。なお、図において、X方向は照明器具10の長手方向を示し、Y方向は照明器具10の短手方向を示し、Z方向は高さ方向を示している。
【0015】
2.実施の形態の仮設置装置の構成
既設事務所ビルの事務所フロアの天井ボード20を改修・更新する天井更新工事が行われる場合がある。天井更新工事は、週末等の特定日に事務所フロアを閉鎖して行われる。天井更新工事では、先ず照明器具等の電気設備を一旦撤去する電気工事を行い、その後に天井更新のための建築工事が行われる。ただし、天井更新工事が複数週にわたって行われる場合、次の週末までの平日期間において、事務所フロアにおいて業務可能な状態である所定の照度を達成できる照明器具を仮復帰させる必要がある。
【0016】
ここで、建築工事を行う週末期間の最初に電気設備を撤去し、週末期間の最後に仮復帰させる電気工事を、毎週末行うことを考える。例えば天井更新工事の工期が2カ月の場合、このような電気設備の撤去及び仮復帰のために計16日の電気工事の職人の人工が必要となる。
【0017】
そこで、本実施の形態の仮設置装置4は、天井の建築工事に支障のない位置に照明器具10を仮設置することを目的として考案された装置である。天井の建築工事に支障のない位置とは、例えば、天井ボード20の天井面から鉛直下方への距離が200mm以上300mm以下となる位置である。天井ボード20と照明器具の基台或いは反射板の見切りまでの距離が200mm以上あれば、新規に設置する軽量組の野縁受けや新規の天井ボードとの鉛直距離が十分にとれ、建築工事側の職人の工具などの取り回しおよび設置する材料の取り回しの邪魔にならない。また、照明器具10の仮設置位置は、事務所フロアに居る人が接触しない高さが好ましい。このような高さは、例えば、事務所フロアのフロア面から照明器具10の下端までの鉛直上方への距離が2m以上となる位置である。
【0018】
図3は、仮設置装置4の構成を説明するための図である。また、図4は、仮設置装置4を照明装置に適用した例を示す斜視図である。仮設置装置4は、全ねじボルト6と、長ナット8と、を備える。全ねじボルト6のねじ径及びねじピッチは、吊りボルト12と同ねじ径及び同ねじピッチであることが好ましい。例えば、全ねじボルト6のねじ径はW3/8である。これは、天井内設備機器の吊りボルト12に用いられる全ねじボルトのねじ径は、よほど重量物でない限りW3/8であるからである。また、全ねじボルト6の長さは、仮設置位置の上記条件を満たすための長さであり、例えば200mm以上300mm以下である。
【0019】
長ナット8は、吊りボルト12及び全ねじボルト6と螺合するねじ径及びねじピッチを有する六角ナットである。長ナット8は、一端側から吊りボルト12の先端が捩じ込まれ、他端側から全ねじボルト6の基端が捩じ込まれることで、吊りボルト12と全ねじボルト6とを連結する。例えば、長ナット8のねじ径はW3/8であり、長さは40mmである。
【0020】
3.照明装置の仮設置装置を用いた照明器具の仮設置方法
次に、実施の形態の照明装置の仮設置装置を用いた照明器具10の仮設置方法の作業手順について詳細に説明する。図5は、仮設置装置4を用いて照明装置を仮設置した状態を図中の-Y方向に沿って見た部分断面図である。以下、複数の照明器具10のうちの一つの照明器具10の仮設置方法の作業手順について図示するが、他の照明器具10についても同様である。
【0021】
3-1.準備工程:
照明器具10が天井スラブのインサートなどから吊られた一対の吊りボルト12に設置されている場合、各照明器具10に対してそれぞれ二本の全ねじボルト6と二つの長ナット8を含む仮設置装置4を準備する。
【0022】
3-2.取り外し工程:
照明器具10は吊りボルト12にボルト止めされている。作業員は、照明器具10を吊りボルト12から取り外すとともに、照明器具10の電気配線を取り外す。これにより、天井ボード20の開口部22に吊りボルト12の先端が露出する。
【0023】
3-3.連結工程:
作業員は、長ナット8の一端側を吊りボルト12の先端に螺合させるとともに、他端側に全ねじボルト6の基端に螺合させる。これにより、吊りボルト12の先端と全ねじボルト6の基端とが一直線状に連結される。
【0024】
3-4.仮設置工程:
作業員は、照明器具10を吊りボルト12に固定するために使用していたボルトを使って、全ねじボルト6の先端に照明器具10を仮設置する。これにより、照明器具10は、全ねじボルト6の長さ分だけ下方の位置に配置される。その結果、照明器具10の下端の天井面からの設置高さh1は、例えば200mm以上300mm以下となり、照明器具10の下端の事務所フロアからの設置高さh2は、例えば2m以上となる。また、作業員は、照明器具10に電気配線を接続する。既設の電気配線は、天井裏において余長が取られていて、基の配電盤から接続されたまま天井レベルよりも下に引き延ばされる。これにより、照明器具10は仮照明として使用可能な状態で仮設置される。
【0025】
仮設置工程において照明器具10が仮設置された後の事務所フロアでは、事務所休日に天井の建築工事が行われ、事務所稼働日に事務所の通常業務が行われる。仮設置された照明器具10は、事務所フロアの仮照明として使用される。
【0026】
3-5.撤去工程:
天井の建築工事が完了すると、作業員は、仮設置されていた照明器具10及び仮設置装置4を撤去する。ここでは、仮設置工程及び連結工程の逆の手順で照明器具10及び仮設置装置4が取り外される。
【0027】
3-6.新規照明器具の設置工程:
作業員は、新規の照明器具に電気配線を接続するともに、吊りボルト12に新規照明器具を固定する。同型の照明器具であれば既設の開口部22と同一寸法の新規開口部22に対して照明器具の基台或いは反射板の見切りがきれいに接合される。また、既設の旧式の蛍光灯照明器具を省エネルギー性の高いLED照明に変更しやすくするため、照明器具メーカでは同様の照度が得られるよう同形状の置換用LED照明器具を製作しており、この置換用LED照明器具であれば、既設の開口部22と同一寸法の新規開口部22に対して照明器具の基台或いは反射板の見切りがきれいに接合される。
【0028】
4.照明器具の仮設置方法の作用及び効果
以上のような仮設置装置4を用いた仮設置方法によれば、以下の作用及び効果が得られる。
【0029】
仮設置装置4によって天井面よりも低い位置に仮設置された照明器具10は、工事中及び事務所フロアの稼働中に仮照明として機能させることができる。これにより、天井の建築工事が事務所稼働日をまたいで行われる場合であっても、照明器具10をその都度脱着する手間が省ける。特に、照明器具10の仮設置位置は、天井面から200mmから300mm下方となる高さに仮設置することで、天井の建築工事に支障が生じることを防ぐことができる。これにより、特に工事期間のための仮設照明は必要なく既設品のリユースが図れる。また、照明器具10は、事務所フロア面から照明器具10の下端までの距離が2m以上となるように仮設置することで、事務所フロアに居る人が照明器具10に接触することを防ぐことができる。
【0030】
仮設置装置4の全ねじボルト6は吊りボルト12と同ねじ径及び同ねじピッチのものが使用される。これにより、照明器具10は、吊りボルト12への固定と同方法によって全ねじボルト6に固定することができる。また、廃棄予定の既設の照明器具10を仮設置する照明として流用することができるため、工事期間中の照明器具10の汚れや傷等を気にする必要がない。
【0031】
仮設置装置4によって仮設置されている照明器具10は、天井工事において新たに設置する新規の照明器具のための新開口の目安になる。
【0032】
仮設置装置4の全ねじボルト6及び長ナット8は、他の工事において再利用することができる。
【0033】
5.照明器具の仮設置方法の変形例
実施の形態の照明器具の仮設置方法は、以下のように変形した態様を適用してもよい。
【0034】
仮設置装置4の全ねじボルト6及び長ナット8の寸法に限定はない。すなわち、全ねじボルト6の長さは、事務所ビルの天井面の高さに応じて適宜設定することができる。また、全ねじボルト6のネジ径又はねじピッチについても、必ずしも吊りボルト12のそれと同じである必要はない。ただし、全ねじボルト6のネジ径又はねじピッチが吊りボルト12のそれと異なる場合、長ナット8は、一端側から半分が全ねじボルト6に螺合し、他端側から半分が吊りボルト12に螺合するように、2種のネジ径又はねじピッチが組み合わさったナットとして構成されていればよい。
【0035】
また、今回の天井は軽天天井、つまり従来の軽量鉄骨スタッドによる野縁、野縁受け及びボード天井を想定して開口などを述べたが、これに限らず、正方形の天井パネルをTバーの野縁受けなどにはめ込むシステム天井においても同様に構成することが可能である。
【符号の説明】
【0036】
4 仮設置装置
6 全ねじボルト
8 長ナット
10 照明器具
12 吊りボルト
14 天井スラブ
20 天井ボード
22 開口部
図1
図2
図3
図4
図5