(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132010
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】こま式ボールねじ
(51)【国際特許分類】
F16H 25/22 20060101AFI20230914BHJP
F16H 25/24 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
F16H25/22 C
F16H25/24 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022037086
(22)【出願日】2022-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100183357
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義美
(72)【発明者】
【氏名】橋本 聡志
【テーマコード(参考)】
3J062
【Fターム(参考)】
3J062AB22
3J062AC07
3J062BA32
3J062CD07
3J062CD54
(57)【要約】
【課題】螺旋溝とボール循環路との段差を極力少なくして螺旋溝とボール循環路との間の乗り継ぎを円滑に行うとともに、ボール循環路内における溝直角断面方向への動作を抑えて作動性を向上させる。
【解決手段】内周面に螺旋溝3が形成されたナット1と、ナット1の螺旋溝3に対向する螺旋溝7が外周面に形成されたねじ軸5と、ナット1の螺旋溝3及びねじ軸5の螺旋溝7によって形成される螺旋状のボール転走路の間に転動自在に組み入れられた複数のボール9と、ナット1の螺旋溝3内に設けられ、ボール転走路の終点から始点へとボール9を戻し循環させるS形のボール循環路13を有するこま部材11と、を備え、ナット1の螺旋溝3と、ボール循環路13とは、それぞれ、二つの円弧からなるゴシックアーチ形状とした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面に螺旋溝が形成されたナットと、前記ナットの螺旋溝に対向する螺旋溝が外周面に形成されたねじ軸と、前記ナットの螺旋溝及び前記ねじ軸の螺旋溝によって形成される螺旋状のボール転走路の間に転動自在に組み入れられた複数のボールと、前記ナットの螺旋溝内に設けられ、前記ボール転走路の終点から始点へと前記ボールを戻し循環させるS形のボール循環路を有するこま部材と、を備え、
前記ナットの螺旋溝と、前記ボール循環路とは、それぞれ、二つの円弧からなるゴシックアーチ形状としたことを特徴とするこま式ボールねじ
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボールを循環させる循環部材としてのこま部材を有するこま式ボールねじに関する。
【背景技術】
【0002】
ボールねじは、内周面に螺旋溝(ねじ溝)3が形成されたナット1と、ナット1の螺旋溝(ねじ溝)3に対向する螺旋溝(ねじ溝)7が外周面に形成されたねじ軸5と、ナット1の螺旋溝3及びねじ軸5の螺旋溝7によって形成される螺旋状のボール転走路の間に組み入れられたボール(鋼球)9とを備えている。
こま式と呼ばれる循環方式においては、ナット1の螺旋溝3内に設けられたこま部材11のS形のボール循環路(以下S溝という。)13により、ボール9が循環を行うように構成されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0003】
従来のこま式ボールねじにおける螺旋溝3は、その断面形状が、
図5(a)に示すように、二つの円弧からなるゴシックアーチ形状を使用し、そして、ボール循環路13は、その断面形状が、
図5(b)に示すように、単一円弧を使用している
【0004】
しかし、このように異なる断面形状の溝構成を採用していたため、ボール循環路13と螺旋溝3との境目には、必ず段差が発生してしまう(
図5(c)参照)。
すなわち、従来のボールねじでは、
図5(a)(b)に示すように、螺旋溝3では、ボール9と溝3内との接点がa1の位置であるのに対し、ボール循環路13では、ボール9の中心と溝13内との接点が同一線上にあり、ボール9の接点はa2の位置である。
従って、ボール9が循環する際、その段差をボール9が乗り越えるため、作動性に影響を与えることがある。またボール循環路13内において、単一円弧形状では、ボール9が溝直角断面方向に動くため(
図5(b)及び
図6の矢印L1方向)、作動性に影響を与えることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は従来技術の有するこのような問題点を解決するためになされたものであり、その課題とするところは、こま式ボールねじにおいて、螺旋溝とボール循環路との段差を極力少なくして螺旋溝とボール循環路との間の乗り継ぎを円滑に行うとともに、ボール循環路内における溝直角断面方向への動作を抑えて作動性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、第1の本発明は、内周面に螺旋溝が形成されたナットと、前記ナットの螺旋溝に対向する螺旋溝が外周面に形成されたねじ軸と、前記ナットの螺旋溝及び前記ねじ軸の螺旋溝によって形成される螺旋状のボール転走路の間に転動自在に組み入れられた複数のボールと、前記ナットの螺旋溝内に設けられ、前記ボール転走路の終点から始点へと前記ボールを戻し循環させるS形のボール循環路を有するこま部材と、を備え、
前記ナットの螺旋溝と、前記ボール循環路とは、それぞれ、二つの円弧からなるゴシックアーチ形状としたことを特徴とするこま式ボールねじとしたことである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、螺旋溝とボール循環路との段差を極力少なくして螺旋溝とボール循環路との間の乗り継ぎを円滑に行うとともに、ボール循環路内における溝直角断面方向への動作を抑えて作動性を向上させることを可能にしたこま式ボールねじを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態を示す部分概略側面図である。
【
図3】(a)は本実施形態における螺旋溝内でのボールの状態を示し、(b)はボール循環路内でのボールの状態を示し、(c)は螺旋溝とボール循環路との切り替わり時におけるボールの状態を示す部分概略断面図である。
【
図4】本実施形態におけるボール循環路内の状態を示す概略図である。
【
図5】(a)は従来例における螺旋溝内でのボールの状態を示し、(b)はボール循環路内でのボールの状態を示し、(c)は螺旋溝とボール循環路との切り替わり時におけるボールの状態を示す部分概略断面図である。
【
図6】従来例におけるボール循環路内の状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明こま式ボールねじの一実施形態について説明する。
なお、本実施形態は本発明の一実施形態に過ぎず、何等限定解釈されるものではなく、本発明の範囲内で適宜設計変更可能である。
「第一実施形態」
【0011】
本実施形態のボールねじは、こま式と呼ばれる循環方式を採用しているもので、内周面に螺旋溝(ねじ溝)3が形成されたナット1と、ナット1の螺旋溝3に対向する螺旋溝(ねじ溝)7が外周面に形成されたねじ軸5と、ナット1の螺旋溝3及びねじ軸5の螺旋溝7によって形成される螺旋状のボール転走路の間に転動自在に組み入れられた複数のボール9と、ナット1の螺旋溝3内に設けられ、ボール転走路の終点から始点へとボール9を戻し循環させるS形のボール循環路(S溝)13を有するこま部材11と、を備えて構成されている。
【0012】
ナット1の螺旋溝3とねじ軸5の螺旋溝7は、それぞれ、二つの円弧からなる断面視でゴシックアーチ形状としている(
図3(a)参照。)。
こま部材11に設けられているボール循環路13も、二つの円弧からなるゴシックアーチ形状としている(
図3(b)参照。)。
すなわち、本実施形態のボールねじでは、
図3に示すように、螺旋溝3及びボール循環路13の双方ともに、ボール9と溝内との接点がa1の位置である。
【0013】
本実施形態によれば、ボール循環路13の断面形状を、螺旋溝3と同等のゴシックアーチ形状にしたことにより、螺旋溝3とボール循環路13との切り替わり時の段差が極力少なくなるため、ボール9の乗り継ぎが大変円滑となり作動性が向上する(
図3(c)参照)。
また、ボール循環路13内において、従来のように溝直角断面方向(
図5(b)及び
図6の矢印L1方向)への動作を抑止できるため、ボール循環路13内における作動性が向上する(
図4参照。)。
【0014】
螺旋溝3とボール循環路13とのそれぞれのゴシックアーチを形成する二つの円弧については、特に限定解釈されることはないが、双方のゴシックアーチ形状を同一としたほうが、切り替わり時の段差を極力小さくすることができるため好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明は、S形の循環路を有するボールねじ全般に利用可能である。
【符号の説明】
【0016】
1 ナット
3 螺旋溝
5 ねじ軸
7 螺旋溝
9 ボール
13 循環路(S溝)