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特開2023-132012電子モジュール及び電子モジュールの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132012
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】電子モジュール及び電子モジュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01P 15/08 20060101AFI20230914BHJP
【FI】
G01P15/08 102Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022037092
(22)【出願日】2022-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137486
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 雅直
(72)【発明者】
【氏名】清水 開吏
(72)【発明者】
【氏名】中馬 弘樹
(57)【要約】      (修正有)
【課題】検出素子を実装したメイン基板以外に他の回路要素を実装したサブ基板を採用しコネクタで接続しても、両基板をケーシング内に適切に配置・使用できるようにした電子モジュールを実現する。
【解決手段】複数の基板を用いて物理量を検出するものであって、検出素子である加速度センサ1が実装されるメイン基板2と、他の回路要素6が実装されるサブ基板7と、メイン基板2とサブ基板7を電気的に接続するコネクタ8と、メイン基板2、サブ基板7及びコネクタ8を収容するケーシング3と、ケーシング3に設けた基板挿入部である溝3a、3bにメイン基板2を挿入して固定してなるメイン基板固定部2A、2Bと、ケーシング3に対してサブ基板7を非固定とした状態でケーシング3に樹脂材5を充填することによりサブ基板7を樹脂材5により支持してなるサブ基板支持部7E、7Fと、を備えることとした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の基板を用いて物理量を検出する電子モジュールであって、
検出素子が実装されるメイン基板と、他の回路要素が実装されるサブ基板と、前記メイン基板と前記サブ基板を電気的に接続するコネクタと、前記メイン基板、サブ基板及びコネクタを収容するケーシングと、前記ケーシングに設けた基板挿入部に前記メイン基板を挿入して固定してなるメイン基板固定部と、前記ケーシングに対して前記サブ基板を非固定とした状態で当該ケーシングに樹脂材を充填することにより前記サブ基板を前記樹脂材により支持してなるサブ基板支持部と、を備えたことを特徴とする電子モジュール。
【請求項2】
前記ケーシングに前記サブ基板の一部を交差させて非固定状態で対向させることによる第1のサブ基板係合部を有する、請求項1に記載の電子モジュール。
【請求項3】
前記メイン基板に前記サブ基板を交差させて非固定状態で係合させる第2のサブ基板係合部を有する、請求項1又は2に記載の電子モジュール。
【請求項4】
前記サブ基板係合部よりも基板中央よりに前記サブ基板に外部配線を接続している、請求項2又は3に記載の電子モジュール。
【請求項5】
前記メイン基板と前記サブ基板の取付角度が前記コネクタの形状と相関する、請求項1~3の何れかに記載の電子モジュール。
【請求項6】
複数の基板を備えて物理量を検出する電子モジュールの製造方法であって、
検出素子をメイン基板に実装するとともに他の回路要素をサブ基板に実装してメイン基板とサブ基板をコネクタで電気的に接続する基板組立工程と、
前記メイン基板を挿入して固定するための基板挿入部をケーシングの内部に設けるケーシング準備工程と、
前記メイン基板、前記サブ基板及び前記コネクタを前記ケーシングに収容し、当該メイン基板を基板挿入部に挿入して固定するとともに、当該サブ基板をケーシングに対して非固定状態に配する基板収容工程と、
前記ケーシング内に樹脂材を流し込んで固化又は硬化させることにより前記サブ基板を樹脂材に支持させる樹脂充填工程と、
を備えることを特徴とする電子モジュールの製造方法。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物理量を検出するための検出素子その他の要素をケーシング内に適切に配置・使用できるようにした、電子モジュール及び電子モジュールの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、加速度や角速度などの物理量を検出する検出素子は、基板に実装し、ケーシング内に固定状態で収容されて電子モジュールとして構成される。
【0003】
検出素子には、取り付けた基板に対して検出方向が平行となるものや垂直となるものなど、様々なものがある。また、信号処理方式がアナログかデジタルかによっても、検出素子とともに実装すべき電子部品その他の要素の種類や数は異なってくる。
【0004】
ところで、半導体の需給バランス等により検出素子を、検出方向が異なるものや信号処理方式が異なるものに変更する必要が生じる場合がある。
【0005】
このような場合に、ケーシング自体を変更することは、一般には望まれない。特にこのような検出素子を内蔵した電子モジュールは、例えば機械装置の可動部の狭小なスペースや、水の進入のおそれがある場所などで使用されることが多く、既に目的・用途に応じてケーシングの最適化のための設計がなされていることが多いためである。
【0006】
ケーシングを変更せずに検出方向の変更に対応したものとして、例えば特許文献1に示すものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013-217838
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記により検出素子を変更する場合、検出素子が実装される基板(メイン基板)に対して、検出素子とともに検出回路を構成する他の回路要素が実装される基板(サブ基板)を採用することが必要または有効とされる場合がある。
【0009】
このような場合、メイン基板とサブ基板をコネクタで接続して、両基板をそれぞれケーシング内に設けた基板挿入部に挿入して固定することが考えられる。
【0010】
しかしながら、製造上、基板実装のばらつき(厚み、反りなど)や、ケーシングの寸法のばらつき等が必ず存在する。このため、ケーシングの基板挿入部にメイン基板やサブ基板を挿入して固定する際、ケーシング側の基板挿入部の位置関係に従う形になるため、基板側に歪みが発生し易い。そしてその歪みにより、製品組立時や、組立後の使用時(振動や衝撃発生時)にコネクタやはんだ付け箇所に負荷が掛かり、破損する可能性があるという問題がある。
【0011】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであって、検出素子を実装したメイン基板以外に他の回路要素を実装したサブ基板を採用しコネクタで接続しても、両基板をケーシング内に適切に配置・使用できるようにした、電子モジュール及び電子モジュールの製造方法を実現することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、かかる目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0013】
すなわち、本発明に係る電子モジュールは、複数の基板を用いて物理量を検出するものであって、検出素子が実装されるメイン基板と、他の回路要素が実装されるサブ基板と、前記メイン基板と前記サブ基板を電気的に接続するコネクタと、前記メイン基板、サブ基板及びコネクタを収容するケーシングと、前記ケーシングに設けた基板挿入部に前記メイン基板を挿入して固定してなるメイン基板固定部と、前記ケーシングに対して前記サブ基板を非固定とした状態で当該ケーシングに樹脂材を充填することにより前記サブ基板を前記樹脂材により支持してなるサブ基板支持部と、を備えたことを特徴とする。
【0014】
このようにすれば、サブ基板のケーシングに対する相対位置に自由度があるため、組立時にコネクタや当該コネクタと基板のはんだ付け箇所への負荷を抑制することができる。また、樹脂材がばね(クッション材)のような働きをするため、振動や衝撃が発生したとしても、コネクタやはんだ付け箇所への負荷を抑制することができる。
【0015】
したがって、本発明によれば、検出素子を実装したメイン基板以外に他の回路要素を実装したサブ基板を採用しコネクタで接続しても、基板実装のばらつきや、ケーシングの寸法のばらつき等の影響を受けにくくなり、両基板をケーシング内に適切に収容して使用することが可能となる。
【0016】
前記ケーシングに前記サブ基板の一部を交差させて非固定状態で対向させることによる第1のサブ基板係合部を設けた場合には、サブ基板を拘束せずに安定してケーシングに支持することができる。
【0017】
前記メイン基板に前記サブ基板を交差させて非固定状態で係合させる第2のサブ基板係合部を設けた場合には、サブ基板をケーシングに対して拘束せずにメイン基板を利用して安定支持することができる。
【0018】
前記サブ基板係合部よりも基板中央よりに外部配線を接続した場合には、配線の引っ張り力がサブ基板に作用しても、サブ基板支持部とともにサブ基板係合部で引張力を緩和することができる。
【0019】
前記メイン基板と前記サブ基板の取付角度が前記コネクタの形状と相関する構成の場合は、特に基板同士が非平行となり易いため、本発明を適用することが特に有用となる。
【0020】
また、本発明に係る電子モジュールの製造方法は、複数の基板を備えて物理量を検出するにあたり、検出素子をメイン基板に実装するとともに他の回路要素をサブ基板に実装してメイン基板とサブ基板をコネクタで電気的に接続する基板組立工程と、前記メイン基板を挿入して固定するための基板挿入部をケーシングの内部に設けるケーシング準備工程と、前記メイン基板、前記サブ基板及び前記コネクタを前記ケーシングに収容し、当該メイン基板を基板挿入部に挿入して固定するとともに、当該サブ基板をケーシングに対して非固定状態に配する基板収容工程と、前記ケーシング内に樹脂材を流し込んで固化又は硬化させることにより前記サブ基板を樹脂材に支持させる樹脂充填工程と、を備えることを特徴とする。
【0021】
このようにすると、基板組立工程で接続されたメイン基板、サブ基板及びコネクタのうち、基板収容工程でケーシングに固定されるのは基本的にメイン基板だけとなるので、コネクタやはんだ付け箇所に極力負荷を掛けずに組立を行うことができ、その後の樹脂充填工程でサブ基板を樹脂に適切に支持させることができる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明した本発明によれば、検出素子を実装したメイン基板以外に他の回路要素を実装したサブ基板を採用しコネクタで接続しても、基板実装のばらつきや、ケーシングの寸法のばらつき等の影響を受けにくくなり、両基板をケーシング内に適切に配置・使用できるようにした、電子モジュール及び電子モジュールの製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第1実施形態に係る電子モジュールを示す模式的な断面図。
図2図1の説明図。
図3】同実施形態に係る電子モジュールの製造方法を示す図。
図4】本発明の第2実施形態を示す図。
図5】本発明の比較例1を示す図。
図6】本発明の比較例2を示す図。
図7】本発明の比較例3を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0025】
(適用対象)
この実施形態の電子モジュールは、例えば検出素子として加速度センサを用いた制御装置システムの振動検知に用いられる。制御装置システムは、一般に振動を検出する加速度センサ、振動を相殺する力を発生させるアクチュエータ、アクチュエータを駆動する電圧アンプ等の構成要素を備えており、車その他の振動物において振動を低減させたい対象部位にアクチュエータ及び加速度センサを設置し、対象部位の振動速度を加速度センサで検出して、振動速度に比例した制御力をアクチュエータによって発生させることで、対象の共振倍率を下げる働きをする。
【0026】
図1図3は本発明の第1実施形態に係る電子モジュール及び電子モジュールの製造方法を模式的に示し、図4は本発明の第2実施形態に係る電子モジュールを模式的に示し、図5図7は比較例を模式的に示している。
【0027】
(比較例)
先ず図5について説明する。図5は従来品に相当する電子モジュールEM5で、加速度センサ101を実装した基板102の両端102a、102bをケーシング103に設けた一対の基板挿入部であるコ字形の溝103a、103bに挿入して基板固定部102A、102Bとし、基板102に配線導出入口103cを介し配線104を接続して、ケーシング103内に樹脂材105を流し込んでいる。樹脂材105の役割は防水である。矢印Aは加速度センサの検出方向である。矢印Bは樹脂材105の弾性力、矢印Cは引張力(配線104を外部から断続的に引っ張る力)、矢印Dは引張力に対するケーシング103の溝部からの反力である。矢印A~Dについては他の図においても同様である。
【0028】
この構造は、基板102が他の基板と接続されていないため、組立時に他の基板からの拘束による負荷が掛からず、また配線接続部Xが基板102の両端の基板固定部102A、102Bの間にあるため、配線104に引っ張り力Cが作用しても反力Dで引張力に耐え、また樹脂材105の弾性力で引張力を緩和する構造となっている。
【0029】
ここで、図5の構成から加速度センサ101の検出方向(検出軸が基板に対して垂直になる方向)を変更する必要が生じた場合、図6の電子モジュールEM6に示すように、加速度センサ101を実装した基板102をケーシング103に対して90°回転させた姿勢でケーシング103の基板挿入部103a、103bに係合し、基板102から引き出した配線104を90°向きを変えて配線導出入口103cから引き出す構造とすることが考えられる。
【0030】
しかしながら、配線104を90°向きを変えた部分は常時応力が掛かり、その状態で基板固定部102Aにおけるケーシング103からの反力Dと配線104の引っ張り力Cが図示の力関係が続くと、耐衝撃性が弱くなり断線する可能性がある。また、配線接続部Xに応力が掛かり、衝撃により破損する可能性がある。
【0031】
一方、図5の構成から加速度センサ101の出力方式をアナログからデジタルに変更する必要が生じた場合、検出素子101以外の他の回路要素として例えばマイコン、A/D変換部などの信号処理素子が必要になるため、1つの基板102では収まらなくなる。そこで、図7の電子モジュールEM7に示すように、信号処理に必要なマイコン106aやA/D変換部106b等の他の回路要素106を搭載した信号処理基板であるサブ基板107をメイン基板102とともにケーシング103内に収容する構造が考えられる。
【0032】
図7では、メイン基板102とサブ基板107の間をコネクタ108で電気的に接続し、メイン基板102と同様に、サブ基板107の一対の端部107c、107dをケーシング103内に設けた溝であるサブ基板挿入部103c、103dに挿入して一対のサブ基板固定部107C、107Dとし、サブ基板107の一対のサブ基板固定部107C、107D間に配線104を接続している。
【0033】
このようにすると、配線接続部Xが一対のサブ基板固定部107C、107D間にあり、ケーシングの溝部の反力D2で配線104の引っ張り力Cが支持されるため、ケーシングの溝部の反力D1による支持とも相まって、引張力に耐える構造になると考えられる。
【0034】
しかしながら、ケーシング108の基板収納スペースが小さくなると、この構造が採用できなくなる可能性があり、耐衝撃性を確保できない可能性がある。また、サブ基板107を固定する溝103c、103dが追加で必要になるので、図5の従来構成よりも溝が増えて、製造上、加速度センサ101やその他の回路要素106をメイン基板102やサブ基板107に実装する際のばらつき(厚み、反りなど)や、ケーシング103の寸法のばらつき等が必ず存在する。このため、ケーシング103の基板挿入部103a~103dに基板102、107を挿入して固定する際、ケーシング103側の基板挿入部103a~103dの位置関係に従う形になり、基板102、107側に歪みが発生してしまう。そしてその歪みにより、製品組立時や、組立後の使用時(振動や衝撃発生時)にコネクタ108や、コネクタ108を基板102、107に取り付けるはんだ付け部位に負荷が掛かり、破損する可能性がある。
【0035】
(第1実施形態)
図1は、図7の構成の問題を解決する第1実施形態に係る電子モジュールEM1を示す。この電子モジュールEM1は、加速度センサ1を実装したメイン基板2と他の回路要素6を実装したサブ基板7の間をコネクタ8で電気的に接続し、メイン基板2の一対の端部2a、2bをケーシング3内に設けたメイン基板挿入部である溝3a、3bに挿入して一対のメイン基板固定部2A、2Bとする点では、図7のメイン基板固定部102A、102Bと同様である。但し、メイン基板2の姿勢はメイン基板102から90度変更されている。
【0036】
一方、サブ基板7は図7のようにケーシング3に基板挿入部である溝を設けて一対の端部を挿入、固定するのではなく、一対の端部をケーシング3に対して非固定すなわちフリーの状態としている。そして、ケーシング3内に充填した樹脂材5にサブ基板7の被サポート部位7e、7fを支持させて、図7の基板固定部107C、107Dに代わるサブ基板支持部7E、7F(図中ハッチング部位)としている。この実施形態の被サポート部位7e、7fは、ケーシング3の内壁よりも中央よりのケーシング内部空間に臨む部位である。
【0037】
ケーシング3のうち図中右側に位置する壁面の一部には上向きの対向面3gが形成され、サブ基板7の図中右側に位置する一部(他端部)7gをケーシング3と交差させて非固定状態でその対向面3gと対向させることにより第1のサブ基板係合部7Gを構成している。この対向面3gは引張力Cが加わった場合に基板固定部2Aとともにストッパの役割を果たす。
【0038】
メイン基板2とサブ基板7は、平行配置ではなく交叉配置(直交配置)とし、交差部の入隅部分に両基板2、7の回路上における必要部位同士を電気的に接続するコネクタ8を配置している。コネクタ8は例えばL字状のもので、図1における紙面垂直方向に沿って複数個所に設けられ、それぞれ両端が基板2、7にはんだ付けされている。勿論、コネクタ8はこのような形状に限らない。
【0039】
サブ基板7の図中左側に位置する端部をケーシング3に固定しないのは、ここを固定すると当該固定部とメイン基板固定部2Aとにより基板2、7同士の接続部(交差部位)に応力が掛かり、破損に繋がる可能性があるためである。
【0040】
基板2、7同士の交差部位においては、図1の下図に示すように、メイン基板2側の交差部に例えば切欠きや開口、凹部等からなる被係合部2hを設け、サブ基板7側の交差部に挿入片や凸部等からなる係合部7hを設けて、サブ基板7とメイン基板2とを完全には固定せずにサブ基板7をメイン基板2に支持させる第2のサブ基板係合部7Hを構成している。サブ基板7側が切欠きや開口、凹部等であってもよく、メイン基板2側が挿入片や凸部等であってもよい。
【0041】
図2(a)はサブ基板7の支持構造をより詳細に説明する図である。仮にサブ基板7の左側の端部7aを図5の場合と同様にケーシング3の基板挿入部である仮想溝3aに固定し、サブ基板7を水平にしたとすると、サブ基板7の右側の端部7g側には仮想溝3aと同じ高さの仮想線s上に仮想溝3aと同じ溝が位置することになるが、図2ではその仮想線sの位置よりも配線導出入部3c側(下側)へ変位した位置に上向きに対向面3gを設け、その対向面3gに対しケーシング3と交差するように非固定状態でサブ基板7の一部(他端部)7gを対向させ、当該サブ基板7の一部(他端部)7gの上方はケーシング側壁3eがオーバーハングしない状態にしている。
【0042】
このため、樹脂材5を注入する際にサブ基板7の他方の端部7gとケーシング3の対向面3gとの間に樹脂材5を多く取り込むことで、配線4の引っ張り応力Cを樹脂材5で緩和するものとなっている。
【0043】
また、図2(b)に示すように、メイン基板2とサブ基板7の取付角度がコネクタ8の形状と相関し、製造時にメイン基板2とサブ基板7をコネクタ8で接続する際のコネクタ8の形状やはんだ付け部の誤差等により、メイン基板2に対してサブ基板7が傾く場合がある。上記第1のサブ基板係合部7Gや上記第2のサブ基板係合部7Hは、このような傾きを許容するものとなっている。
【0044】
図3はかかる電子モジュールEM1の組立工程を示している。
【0045】
先ず、検出素子1をメイン基板2に実装するとともに信号処理に必要なマイコン6aやA/D変換部6b等の他の回路要素6を信号処理基板であるサブ基板7に実装し、メイン基板2とサブ基板7を交差させた状態でメイン基板2とサブ基板7の回路上必要箇所をコネクタ8で電気的に接続する(基板組立工程(a))。サブ基板7には防水パッキン4aを取り付けた配線4を接続しておく。
【0046】
一方、メイン基板2の一対の端部2a、2bを挿入して固定するための基板挿入部3a、3bをケーシング3の内部に設ける(ケーシング準備工程(b))。このとき、サブ基板7の一部を交差させて非固定状態で対向させる対向面3gや、配線4を引き出すための配線導出入口3c等もケーシング3に形成しておく。ケーシング3は複数の壁材の組立体であり、メイン基板2やサブ基板7等の挿入作業を行うために少なくとも一部の壁材(例えば紙面手前側の壁材)を開放状態として作業を行うことができるようにしておく。
【0047】
そして、メイン基板2、サブ基板7及びコネクタ8をその開放部からケーシング1に収容し、メイン基板2の一対の端部2a、2bを基板挿入部3a、3bに挿入して固定するとともに、サブ基板7をケーシング3に対して非固定状態に配し、一部7gをケーシング3の対向面3gに対向させることにより第1のサブ基板係合部7Gを構成する(基板収容工程(c))。サブ基板7は第2のサブ基板係合部7Hでメイン基板2にも支持されるので、サブ基板7は、各端部を固定されたメイン基板2に支持された状態でケーシング3内に配される。防水パッキン4aはケーシング3の配線導出入口8cを封止する位置に配される。そして、組み込み後にケーシング3の開放部を閉止する。
【0048】
そして、適宜部位からポッティング機Pのノズル部等をケーシング3内に挿入して樹脂材5を流し込み、固化又は硬化させて、サブ基板7を樹脂に支持させる(樹脂充填工程(d))。
【0049】
以上により、図1の電子モジュールEM1の製造を完了する。
【0050】
以上のように、本実施形態に係る電子モジュールEM1は。複数の基板を用いて物理量を検出するものであって、検出素子である加速度センサ1が実装されるメイン基板2と、他の回路要素6が実装されるサブ基板7と、メイン基板2とサブ基板7を電気的に接続するコネクタ8と、メイン基板2、サブ基板7及びコネクタ8を収容するケーシング3と、ケーシング3に設けた基板挿入部である溝3a、3bにメイン基板2を挿入して固定してなるメイン基板固定部2A、2Bと、ケーシング3に対してサブ基板7を非固定とした状態でケーシング3に樹脂材5を充填することによりサブ基板7を樹脂材5により支持してなるサブ基板支持部7E、7Fと、を備えたことを特徴とする。
【0051】
メイン基板2は検出素子である加速度センサ1が実装されているため、位置ずれしないようにケーシング3に対して固定しておくことが不可欠である。一方、他の回路要素6は加速度センサ1ほど厳格な位置決めを要しないものであるため、サブ基板7をケーシング3に対して非固定状態としておけば、サブ基板7のケーシング3に対する相対位置に自由度があるため、組立時にコネクタ8やコネクタ8と基板2、7とのはんだ付け箇所への負荷を抑制することができる。また、樹脂材5がばね(クッション材)のような働きをするため、振動や衝撃が発生したとしても、コネクタ8やはんだ付け箇所への負荷を効果的に抑制することができる。
【0052】
したがって、本実施形態によれば、検出素子である加速度センサ1を実装したメイン基板2以外に他の回路要素である信号処理素子6を実装したサブ基板7を採用しコネクタ8で接続しても、基板実装のばらつきや、ケーシング3の寸法のばらつき等の影響を受けにくくなり、両基板2、7をケーシング3内に適切に収容して使用することが可能となる。
【0053】
なお、図示例のサブ基板支持部7E、7Fは、サブ基板7の両端をケーシング3に固定するとした場合のサブ基板固定部に対応する位置(基板両端付近)に符号を付しているが、実際にはサブ基板7全体が樹脂材5で直接または間接に支持されるものである。
【0054】
また、ケーシング3にサブ基板7の一部(他方の端部)7gを交差させて非固定状態で対向させることによる第1のサブ基板係合部7Gを設けているので、サブ基板7を拘束せずに安定してケーシング3に支持することができ、樹脂充填によりサブ基板7の一部(他方の端部)7gと切欠き3gの間に樹脂材5が回り込むことで樹脂材5を緩衝材として機能させることもできる。
【0055】
また、メイン基板2にサブ基板7を交差させて非固定状態で係合させる第2のサブ基板係合部7Hを設けているので、サブ基板7をケーシング3に対して拘束せずにメイン基板2を利用して安定支持することができ、また基板2、7同士を交差させる配置を採用することで、例えば基板2、7の平行配置ではケーシング3内に収まらないような場合の解決策としても本発明を利用することができる。
【0056】
また、サブ基板係合部7Gや7Hよりも基板中央よりに外部配線4を接続しているので、配線4の引っ張り力Cがサブ基板7に作用しても、サブ基板支持部7E、7Fとともにサブ基板係合部7G、7Hで引張力を適切に緩和することができる。
【0057】
また、メイン基板2とサブ基板7の取付角度がコネクタ8の形状と相関することにより、特に両基板2、7同士が非平行となり易いが、本実施形態ではこれに有効に対応することができる。
【0058】
また、本実施形態に係る電子モジュールの製造方法は、複数の基板を備えて物理量を検出するにあたり、検出素子である加速度センサ1をメイン基板2に実装するとともに他の回路要素である信号処理素子6をサブ基板7に実装してメイン基板2とサブ基板7をコネクタ8で電気的に接続する基板組立工程(a)と、メイン基板2を挿入して固定するための基板挿入部3aをケーシング3の内部に設けるケーシング準備工程(b)と、メイン基板2、サブ基板7及びコネクタ8をケーシング3に収容し、メイン基板2を基板挿入部3a、3bに挿入して固定するとともに、サブ基板7をケーシング3に対して非固定状態に配する基板収容工程(c)と、ケーシング3内に樹脂材5を流し込んで固化又は硬化させることによりサブ基板7を樹脂材5に支持させる樹脂充填工程(d)と、を採用している。
【0059】
このような製造方法によると、基板組立工程(a)で接続されたメイン基板2、サブ基板7及びコネクタ8のうち、基板収容工程(c)でケーシング3に固定されるのは基本的にメイン基板2だけとなるので、コネクタ8やはんだ付け箇所に極力負荷を掛けずに組立を行うことができ、その後の樹脂充填工程(d)で充填した樹脂材5によりサブ基板7を樹脂に適切に支持させることができる。また、上記のように第1のサブ基板係合部7Gや第2のサブ基板係合部7Hを設けておけば、サブ基板2をケーシング3内の所定位置に非固定で配することができるので、樹脂充填時に別途にサブ基板7を仮固定する治具等の必要以上の部品を配置することを不要にしつつ、充填を確実に行うことができる。
【0060】
(第2実施形態)
図4は、図6の構成の問題を解決する本発明の第2実施形態に係る電子モジュールEM4を示す。
【0061】
図6では加速度センサ101の実装方向(検出軸)を変更する必要が生じ、基板102の取付方位を変更した結果、配線に係る引張力Cをケーシング103の溝部の反力Dで十分に受けることができず、基板102と配線104の接続部Xに応力が掛かる構造になっていた。
【0062】
そこで、図4では配線の接続先としてサブ基板7を採用し、メイン基板2との間をコネクタ8で接続して、図1と同様の構造でケーシング3内に組み込んでいる。図示のように検出軸を異ならせるだけでサブ基板7に信号処理素子等を必要としない場合は、図1との相違点はマイコン6a、A/D変換部6b等の信号処理素子の有無だけとなる。このため、特に説明しない点については図1と同様である。
【0063】
ただし、この場合もサブ基板7に実装される他の回路要素が無いわけではなく、少なくともメイン基板2と配線4とを接続する配線パターンが他の回路要素に相当する構成となる。
【0064】
以上のようにしても、上記第1実施形態と同様の作用効果が奏される。
【0065】
以上、本発明の実施形態について説明したが、検出素子は加速度センサ以外であっても勿論構わず、その他各部の具体的な構成は上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0066】
1…検出素子(加速度センサ)
2…メイン基板
2A、2B…メイン基板固定部
3…ケーシング
3a、3b…基板挿入部(溝)
4…外部配線
5…樹脂材
6…他の回路要素
7…サブ基板
7E、7F…サブ基板支持部
7G…第1のサブ基板係合部
7H…第2のサブ基板係合部
8…コネクタ


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7