IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 電気化学工業株式会社の特許一覧

特開2023-132014スペーサ用モルタル組成物及びモルタル
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132014
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】スペーサ用モルタル組成物及びモルタル
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/04 20060101AFI20230914BHJP
   C04B 14/02 20060101ALI20230914BHJP
   C04B 18/14 20060101ALI20230914BHJP
   C04B 14/28 20060101ALI20230914BHJP
   C04B 14/42 20060101ALI20230914BHJP
   C04B 16/06 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
C04B28/04
C04B14/02 B
C04B18/14 Z
C04B14/28
C04B14/42
C04B16/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022037095
(22)【出願日】2022-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100119666
【弁理士】
【氏名又は名称】平澤 賢一
(74)【代理人】
【識別番号】100135758
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 高志
(72)【発明者】
【氏名】▲柳▼澤 あゆみ
(72)【発明者】
【氏名】相澤 一裕
【テーマコード(参考)】
4G112
【Fターム(参考)】
4G112MB23
4G112PA07
4G112PA10
4G112PA17
4G112PA24
4G112PA28
4G112PB31
(57)【要約】
【課題】特定の材料を組み合わせることで、高強度の鉄筋用スペーサを製造することができるスペーサ用モルタル組成物及びモルタルを提供する。
【解決手段】本発明のスペーサ用モルタル組成物は、ポルトランドセメント、軽量細骨材、ポゾラン微粉末、無機炭酸塩及び高性能減水剤を含有し、水を配合して硬化した際の材齢28日の圧縮強度が100N/mm以上である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポルトランドセメント、軽量細骨材、ポゾラン微粉末、無機炭酸塩及び高性能減水剤を含有し、
水を配合して硬化した際の材齢28日の圧縮強度が100N/mm以上である、スペーサ用モルタル組成物。
【請求項2】
ポルトランドセメント100質量部に対して、軽量細骨材が5~15質量部、ポゾラン微粉末が5~15質量部、無機炭酸塩が1~5質量部であり、
スペーサ用モルタル組成物全体に対して、高性能減水剤が0.5~3.0%である、請求項1に記載のスペーサ用モルタル組成物。
【請求項3】
前記軽量細骨材が真珠岩パーライトであり、
前記真珠岩パーライトの吸水率が70~100%であり、
前記真珠岩パーライトの最大粒径が1,000μm以下である、請求項1又は2に記載のスペーサ用モルタル組成物。
【請求項4】
前記ポゾラン微粉末が酸性シリカフュームである、請求項1~3のいずれか1項に記載のスペーサ用モルタル組成物。
【請求項5】
前記無機炭酸塩が炭酸カルシウムである、請求項1~4のいずれか1項に記載のスペーサ用モルタル組成物。
【請求項6】
前記高性能減水剤がポリカルボン酸系減水剤である、請求項1~5のいずれか1項に記載のスペーサ用モルタル組成物。
【請求項7】
ガラス繊維及びポリプロピレン繊維の少なくとも1つを含有する、請求項1~6のいずれか1項に記載のスペーサ用モルタル組成物。
【請求項8】
水を配合して硬化した際の材齢1日の圧縮強度が65N/mm以上である、請求項1~7のいずれか1項に記載のスペーサ用モルタル組成物。
【請求項9】
水を配合して硬化した際の材齢3日の圧縮強度が80N/mm以上である、請求項1~8のいずれか1項に記載のスペーサ用モルタル組成物。
【請求項10】
水を配合して硬化した際の材齢7日の圧縮強度が90N/mm以上である、請求項1~9のいずれか1項に記載のスペーサ用モルタル組成物。
【請求項11】
水を配合して硬化させる前のモルタルの単位容積質量が1.9kg/L以下である、請求項1~10のいずれか1項に記載スペーサ用モルタル組成物。
【請求項12】
水を配合して水中養生を行って硬化した際の材齢28日のモルタルの単位容積質量が2.1kg/L以下である、請求項1~11のいずれか1項に記載スペーサ用モルタル組成物。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載のスペーサ用モルタル組成物と、水とを含有し、
スペーサ用モルタル組成物全体に対して、水及び高性能減水剤の合計が15~25%である、モルタル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋と型枠内面との間隔(かぶり寸法)を確保するために使用される鉄筋用スペーサを製造するためのスペーサ用モルタル組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、土木・建築業界における鉄筋コンクリート工事において、鉄筋に装着して鉄筋と型枠内面との間隔(かぶり寸法)を確保するために、鉄筋用スペーサが使用されている。鉄筋コンクリート構造物は、鉄筋と型枠内面との間隔(かぶり寸法)を確保することによって耐久性を担保することができる。かぶり寸法を確保するものとして、鉄筋と型枠の間に設計上必要とされる長さの鉄筋用スペーサが取り付けられる。
【0003】
鉄筋用スペーサには、金属製、プラスチック製、モルタル製があるが、打設されるコンクリートとのなじみ易さなどの理由から、モルタル製が適している(例えば、特許文献1参照)。
モルタル製の鉄筋用スペーサは、強度が十分でない場合に鉄筋に装着して鉄筋と型枠内面との間隔(かぶり寸法)を確保することができなくなり、鉄筋コンクリート構造物の耐久性を担保することが困難となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-234600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、特定の材料を組み合わせることで、高強度の鉄筋用スペーサを製造することができるスペーサ用モルタル組成物及びモルタルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、本発明者らは、上記課題を解決すべく、種々の努力を重ねた結果、特定の材料を組み合わせることで、高強度の鉄筋用スペーサを製造することができることを知見し、本発明を完成するに至った。本発明の要旨は、以下のとおりである。
[1]ポルトランドセメント、軽量細骨材、ポゾラン微粉末、無機炭酸塩及び高性能減水剤を含有し、水を配合して硬化した際の材齢28日の圧縮強度が100N/mm以上である、スペーサ用モルタル組成物。
[2]ポルトランドセメント100質量部に対して、軽量細骨材が5~15質量部、ポゾラン微粉末が5~15質量部、無機炭酸塩が1~5質量部であり、スペーサ用モルタル組成物全体に対して、高性能減水剤が0.5~3.0%である、[1]に記載のスペーサ用モルタル組成物。
[3]前記軽量細骨材が真珠岩パーライトであり、前記真珠岩パーライトの吸水率が70~100%であり、前記真珠岩パーライトの最大粒径が1,000μm以下である、[1]又は[2]に記載のスペーサ用モルタル組成物。
[4]前記ポゾラン微粉末が酸性シリカフュームである、[1]~[3]のいずれかに記載のスペーサ用モルタル組成物。
[5]前記無機炭酸塩が炭酸カルシウムである、[1]~[4]のいずれかに記載のスペーサ用モルタル組成物。
[6]前記高性能減水剤がポリカルボン酸系減水剤である、[1]~[5]のいずれかに記載のスペーサ用モルタル組成物。
[7]ガラス繊維及びポリプロピレン繊維の少なくとも1つを含有する、[1]~[6]のいずれかに記載のスペーサ用モルタル組成物。
[8]水を配合して硬化した際の材齢1日の圧縮強度が65N/mm以上である、[1]~[7]のいずれかに記載のスペーサ用モルタル組成物。
[9]水を配合して硬化した際の材齢3日の圧縮強度が80N/mm以上である、[1]~[8]のいずれかに記載のスペーサ用モルタル組成物。
[10]水を配合して硬化した際の材齢7日の圧縮強度が90N/mm以上である、[1]~[9]のいずれかに記載のスペーサ用モルタル組成物。
[11]水を配合して硬化させる前のモルタルの単位容積質量が1.9kg/L以下である、[1]~[10]のいずれかに記載スペーサ用モルタル組成物。
[12]水を配合して水中養生を行って硬化した際の材齢28日のモルタルの単位容積質量が2.1kg/L以下である、[1]~[11]のいずれかに記載スペーサ用モルタル組成物。
[13][1]~[12]のいずれかに記載のスペーサ用モルタル組成物と、水とを含有し、スペーサ用モルタル組成物全体に対して、水及び高性能減水剤の合計が15~25%である、モルタル。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、特定の材料を組み合わせることで、高強度の鉄筋用スペーサを製造することができるスペーサ用モルタル組成物及びモルタルを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、本明細書における部や%は特に規定しない限り質量基準である。
また、本明細書でいうスペーサ用モルタル組成物とは、粗骨材のないペースト、細骨材を含有するモルタルを総称するものである。
【0009】
本発明のスペーサ用モルタル組成物は、ポルトランドセメント、軽量細骨材、ポゾラン微粉末、無機炭酸塩及び高性能減水剤を含有し、水を配合して硬化した際の材齢28日の圧縮強度が100N/mm以上である。
本発明のスペーサ用モルタル組成物の水を配合して硬化した際の材齢28日の圧縮強度が100N/mm未満であると、製造した鉄筋用スペーサの強度が十分ではなく、曲げ耐力及びせん断耐力が不足することから、鉄筋に装着して鉄筋と型枠内面との間隔(かぶり寸法)を確保することができなくなり、鉄筋コンクリート構造物の耐久性を担保することが困難となる。また、上記観点から、スペーサ用モルタル組成物の材齢28日の圧縮強度は、105N/mm以上であることが好ましく、110N/mm以上であることがより好ましく、115N/mm以上であることがさらに好ましい。
【0010】
本発明のスペーサ用モルタル組成物の水を配合して硬化した際の材齢1日の圧縮強度は、65N/mm以上であることが好ましく、70N/mm以上であることがより好ましく、75N/mm以上であることがさらに好ましい。
本発明のスペーサ用モルタル組成物の水を配合して硬化した際の材齢3日の圧縮強度は、80N/mm以上であることが好ましく、85N/mm以上であることがより好ましく、90N/mm以上であることがさらに好ましい。
本発明のスペーサ用モルタル組成物の水を配合して硬化した際の材齢7日の圧縮強度は、90N/mm以上であることが好ましく、95N/mm以上であることがより好ましく、100N/mm以上であることがさらに好ましい。
【0011】
本発明のスペーサ用モルタル組成物の水を配合して硬化させる前のモルタルの単位容積質量は、1.9kg/L以下であることが好ましく、1.7kg/L以下であることがより好ましく、1.5kg/L以下であることがさらに好ましい。水を配合して硬化させる前のモルタルの単位容積質量が上記上限値以下であることで、比較的軽量であり、取り扱い性が良好となる。
【0012】
本発明のスペーサ用モルタル組成物の水を配合して水中養生を行って硬化した際の材齢28日のモルタルの単位容積質量が2.1kg/L以下であることが好ましく、2.0kg/L以下であることがより好ましく、1.95kg/L以下であることがさらに好ましい。水を配合して水中養生を行って硬化した際の材齢28日のモルタルの単位容積質量が上記上限値以下であることで、比較的軽量であり、取り扱い性が良好となる。
【0013】
ポルトランドセメントは、特に限定されるものではないが、例えば、日本工業規格(JIS)で定められる普通、早強、中庸熱、低熱の各種ポルトランドセメントである。本発明では、早期に高い強度を有する観点から、早強ポルトランドセメントを選定することが好ましい。ポルトランドセメントの構成化合物は、エーライト(3CaO・SiO)、ビーライト(2CaO・SiO)、アルミネート(3CaO・Al)、フェライト(4CaO・Al・Fe)と、さらに、二水セッコウが混合されている(この一部が半水セッコウに変化することもある)。
【0014】
軽量細骨材は、絶乾密度が2.3g/cm未満の細骨材である。
軽量細骨材としては、例えば、珪砂、川砂、フライアッシュバルーン、黒曜石パーライト及び真珠岩パーライト等が挙げられ、中でも、真珠岩パーライトが好ましい。これらの軽量細骨材は1種を単独で、又は、2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0015】
軽量細骨材の吸水率は、70~100%であることが好ましく、75~95%であることがより好ましく、80~90%であることがさらに好ましい。軽量細骨材の吸水率が上記範囲内であることで、気中養生で高強度のスペーサを製造することができるスペーサ用モルタル組成物を得ることができる。
なお、軽量細骨材の吸水率は、JIS A 1109「細骨材の密度及び吸水率試験方法」に準拠して測定することができる。
【0016】
軽量細骨材の最大粒径は、1,000μm以下であることが好ましく、950μm以下であることがより好ましく、900μm以下であることがさらに好ましい。軽量細骨材の最大粒径が上記上限値以下であることで、モルタル充填性を向上させることができ、最密充填を可能にすることができる。また、軽量細骨材の最大粒径は、75μm以上であることが好ましく、80μm以上であることがより好ましく、85μm以上であることがさらに好ましい。軽量細骨材の最大粒径が上記下限値以上であることで、充填性及び流動性を向上させることができる。軽量細骨材の最大粒径を上記範囲内とするには、所望の目開きの篩を利用すればよい。
【0017】
軽量細骨材の含有割合は、ポルトランドセメント100質量部に対して、5~15質量部であることが好ましく、7~14質量部であることがより好ましく、10~13質量部であることがさらに好ましい。軽量細骨材の含有割合が上記範囲内であることで、強度を向上させることができる。
【0018】
ポゾラン微粉末は、アルカリ刺激によりポゾラン活性を示す物質である。ポゾラン微粉末は、特に限定されるものではないが、例えば、高炉水砕スラグ、高炉徐冷スラグ、転炉スラグ、シリカフューム、及びフライアッシュ等が挙げられ、中でも、シリカフュームが好ましい。
シリカフュームの種類は限定されるものではないが、流動性の観点から、不純物としてZrOを10%以下含有するシリカフュームや、酸性シリカフュームの使用がより好ましい。酸性シリカフュームとは、シリカフューム1gを純水100ccに入れて攪拌した時の上澄み液のpHが5.0以下の酸性を示すものをいう。
ポゾラン物質は、1種を単独で、又は、2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0019】
シリカフュームの粉末度は、通常、BET比表面積で2万cm/g以上30万cm/g以下の範囲にある。シリカフュームを除くポゾラン微粉末の粉末度は、特に限定されるものではないが、水和活性の点でブレーン比表面積3,000cm/g以上が好ましい。
【0020】
ポゾラン微粉末の含有割合は、ポルトランドセメント100質量部に対して、5~15質量部であることが好ましく、7~14質量部であることがより好ましく、9~13質量部であることがさらに好ましい。ポゾラン微粉末の含有割合が上記範囲内であることで、流動化時間及び強度を向上させることができる。
【0021】
無機炭酸塩は、スペーサ用モルタル組成物にさらなる凝結性や急硬性を付与することができる。無機炭酸塩としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸水素リチウム、炭酸ベリリウム、炭酸マグネシウム等が挙げられ、中でも、炭酸カルシウムが好ましい。炭酸カルシウムの形状は、特に限定はなく、例えば、100メッシュ、200メッシュ、325メッシュ、粒状が挙げられる。
無機炭酸塩は、1種を単独で、又は、2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0022】
無機炭酸塩の含有割合は、ポルトランドセメント100質量部に対して、1~5質量部であることが好ましく、1.5~4.5質量部であることがより好ましく、2~4質量部であることがさらに好ましい。無機炭酸塩の含有割合が上記範囲内であることで、強度を向上させることができる。
【0023】
高性能減水剤は、各材料の分散を助けるとともに、練り上がったスペーサ用モルタル組成物の流動性を付与する役割を担う。高性能減水剤は、コンシステンシーに影響することなく単位水量を大幅に減少させる化学混和剤である。また、高性能減水剤は、使用量を増加することにより減水性が向上するが、使用量を増加しても過剰な空気連行性や異常な凝結の遅延性が通常の減水剤と比して少ないため、単位水量を大幅に減少することができ、その結果、高強度のスペーサの製造が比較的容易に可能となる。
【0024】
高性能減水剤は、特に限定されるものではなく、例えば、ナフタレン系減水剤、メラミン系流減水剤、アミノスルホン酸系減水剤、及びポリカルボン酸系減水剤が挙げられ、中でも、ポリカルボン酸系減水剤が好ましい。高性能減水剤は、1種を単独で、又は、2種以上を組み合わせて使用することができる。
高性能減水剤の具体例としては、例えば、ナフタレン系減水剤としては、エヌエムビー社製商品名「レオビルドSP-9シリーズ」、花王社製商品名「マイティ2000シリーズ」、及び日本製紙社製商品名「サンフローHS-100」などが挙げられる。メラミン系減水剤としては、日本シーカ社製商品名「シーカメント1000シリーズ」及び日本製紙社製商品名「サンフローHS-40」などが挙げられる。アミノスルホン酸系減水剤としては、藤沢薬品工業社製商品名「パリックFP-200シリーズ」などが挙げられる。ポリカルボン酸系減水剤としては、エヌエムビー社製商品名「レオビルドSP-8シリーズ」、GCPケミカルズ社製商品名「スーパー1000N」、「ダーレックススーパー100PHX」、及び竹本油脂社製商品名「チューポールHP-8シリーズ」、「チューポールHP-11シリーズ」などが挙げられる。
高性能減水剤には粉末状のものも存在する。具体的には、ナフタレン系減水剤としては、花王社製商品名「マイティ100」、三洋化成工業社製商品名「三洋レベロンP」、及び第一工業製薬社製商品名「セルフロー110P」などが挙げられる。メラミン系減水剤としては、BASFポゾリス社製「メルメントF10M」などが挙げられる。ポリカルボン酸系減水剤としては、例えば、三菱化成社製商品名「クインフロー750」や花王社製商品名「CAD9000P」などが挙げられる。
【0025】
高性能減水剤の含有割合は、スペーサ用モルタル組成物全体に対して、0.5~3.0%であることが好ましく、1~2.7%であることがより好ましく、1.5~2.5%であることがさらに好ましい。減水剤の含有割合が上記範囲内であることで、材料分離を抑制しつつ、流動性を向上させることができる。
【0026】
本発明のスペーサ用モルタル組成物は、ポルトランドセメント、軽量細骨材、ポゾラン微粉末、無機炭酸塩、高性能減水剤とともに、スペーサのひび割れ抵抗性を改善する観点、スペーサに曲げ耐力及びせん断耐力を付与する観点から、繊維を含有することが可能である。
繊維の種類としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリプロピレン繊維、ビニロン繊維、アクリル繊維、ナイロン繊維、アラミド繊維等の高分子繊維類や、ガラス繊維、鋼繊維、炭素繊維、及び玄武岩等の岩石を溶融紡糸した繊維等の無機繊維類が挙げられる。繊維は、1種を単独で、又は、2種以上を組み合わせて使用することができ、ガラス繊維及びポリプロピレン繊維の少なくとも1つを含有することが好ましい。
【0027】
繊維の含有割合は、ポルトランドセメント100質量部に対して、0.1~10質量部であることが好ましく、1.0~7.5質量部であることがより好ましく、1.5~5質量部であることがさらに好ましい。繊維の含有割合が上記範囲内であることで、ひび割れ抵抗性を改善し、スペーサに曲げ耐力及びせん断耐力を付与することができる。
【0028】
本発明では、性能に悪影響を与えない範囲で、消泡剤、凝結遅延剤、ガス発泡物質、膨張材、凝結調整剤、AE剤、防錆剤、撥水剤、抗菌剤、着色剤、防凍剤、石灰石微粉末、高炉徐冷スラグ微粉末、下水汚泥焼却灰やその溶融スラグ、都市ゴミ焼却灰やその溶融スラグ、及びパルプスラッジ焼却灰等の混和材料、増粘剤、及び収縮低減剤、ポリマー、ベントナイト、セピオライトなどの粘土鉱物、並びに、ハイドロタルサイトなどのアニオン交換体等のうちの一種又は二種以上を、本発明の目的を実質的に阻害しない範囲で使用することが可能である。
【0029】
本発明のスペーサ用モルタル組成物において、各材料の混合方法は特に限定されるものではなく、それぞれの材料を施工時に混合しても良いし、あらかじめ一部を、あるいは全部を混合しておいても差し支えない。
混合装置としては、既存のいかなる装置、例えば、傾胴ミキサ、オムニミキサ、ヘンシェルミキサ、V型ミキサ、及びナウタミキサなどの使用が可能である。
【0030】
本発明のスペーサ用モルタル組成物と、水とを含有することで、本発明のモルタルとすることができる。本発明のモルタルは、スペーサ用モルタル組成物全体に対して、水及び高性能減水剤の合計の含有割合が15~25%である。水及び高性能減水剤の合計の含有割合が上記範囲外であると、スペーサ用モルタル組成物の材料分離が生じて所望のモルタルを得ることができない。また、水及び高性能減水剤の合計の含有割合が上記範囲外であると、流動性が悪化し、鉄筋用スペーサの製造の作業性が低下する。そこで、水及び高性能減水剤の合計の含有割合は、スペーサ用モルタル組成物全体に対して、16~24%であることが好ましく、17~23%であることがより好ましく、18~20%であることがさらに好ましい。水及び高性能減水剤の合計の含有割合が上記範囲内であることで、材料分離を抑制しつつ、流動性向上させることができる。
【0031】
本発明のスペーサ用モルタル組成物を用いた鉄筋用スペーサの製造方法は、特に限定されるものではなく、プレス法及び流し込み法など公知の方法で製造することができる。中でも、生産性向上の観点からは、金型にスペーサ用モルタル組成物を投入後、高圧で圧縮成形するプレス法を採用することが好ましい。
【実施例0032】
以下、本発明の実験例に基づいて、本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0033】
[実験例1]
ポルトランドセメント100質量部に対して、軽量細骨材、ポゾラン微粉末、無機炭酸塩を、表1に示す質量部を含有するように調製した。そして、スペーサ用モルタル組成物全体に対して、高性能減水剤、水及び高性能減水剤の合計が表1に示す含有量となるように、水及び高性能減水剤を混合し、スペーサ用モルタル組成物を調製した。ここで、水材料比〔%〕は、(水+高性能減水剤)〔kg〕/(スペーサ用モルタル組成物)〔kg〕×100により算出した。
調製したスペーサ用モルタル組成物について、下記評価方法により評価した。結果を表1に示す。
【0034】
<使用材料>
・ポルトランドセメント:早強ポルトランドセメント(デンカ社製、「デンカ早強ポルトランドセメント」)
・骨材A:軽量細骨材、真珠岩パーライト(ハットリ株式会社製、「服部パーライトB-2V」)、絶乾密度2.2g/cm、吸水率81%、最大粒径850μm~1,000μm
・骨材B:130号珪砂(東海リテック株式会社製)、絶乾密度2.69g/cm、吸水率0.2%、最大粒径300μm
・骨材C:石灰砂(デンカ株式会社製)、絶乾密度2.72g/cm、吸水率0.3%、最大粒径600μm
・骨材D:フェロニッケルスラグ、絶乾密度3.13g/cm、吸水率0.18%、最大粒径2,000μm
・ポゾラン微粉末:酸性シリカフューム(酸化ジルコニウムを含有するシリカフューム、酸化ジルコニウムの含有率5%)、BET比表面積12万cm/g、市販品
・無機炭酸塩:炭酸カルシウム(上越鉱業株式会社製)、100メッシュ
・高性能減水剤:ポリカルボン酸系減水剤(GCPケミカルズ社製「スーパー1000N」)
・水:水道水
【0035】
<評価方法>
(1)流動化時間
スペーサ用モルタル組成物及び水等の配合成分をJIS R 5201に規定されるモルタルミキサに投入し低速で混練して、流動化時間(分:秒)を目視にて測定した。なお、流動化時間とは、混練開始時からモルタルが流動化する状態に至るまでに要した時間をいう。
(2)静置フロー
混練後の流動化したモルタルを用いて、JIS R 5201「セメントの物理試験方法 12.フロー試験」に準拠し、静置フローでの測定をした。
(3)単位容積質量
JIS A 1171「単位容積質量試験方法」に準拠して、スペーサ用モルタル組成物の水を配合して硬化させる前のモルタルの単位容積質量、及び、スペーサ用モルタル組成物の水を配合して水中養生を行って硬化した際の材齢28日のモルタルの単位容積質量を測定した。
(4)粉体密度
乾式密度計(株式会社島津製作所製「アキュピックII 1340」)を用いて粉体密度を測定した。
(5)圧縮強度
JSCE-G505-1999「円柱供試体を用いたモルタル又はセメントペーストの圧縮強度試験方法」に準拠して、φ50mm×100mmの円柱供試体の材齢1日、3日、7日、28日の圧縮強度を測定した。
材齢1日圧縮強度が65N/mm以上である場合を「○」、65N/mm未満である場合を「×」と評価した。3日圧縮強度が80N/mm以上である場合を「○」、80N/mm未満である場合を「×」と評価した。7日圧縮強度が90N/mm以上である場合を「○」、90N/mm未満である場合を「×」と評価した。28日圧縮強度が100N/mm以上である場合を「○」、100N/mm未満である場合を「×」と評価した。材齢1日、3日、7日、28日の圧縮強度の測定結果から下記基準に基づいて評価した。
A:材齢28日の圧縮強度の評価が「○」であり、材齢1日、3日、7日の圧縮強度の評価の全てが「○」である。
B:材齢28日の圧縮強度の評価が「○」であり、材齢1日、3日、7日の圧縮強度の評価のうち2つが「○」である。
C:材齢28日の圧縮強度の評価が「○」であり、材齢1日、3日、7日の圧縮強度の評価のうち1つが「○」である。
D:材齢28日の圧縮強度の評価が「○」であり、材齢1日、3日、7日の圧縮強度の評価の全てが「×」である。
E:材齢28日の圧縮強度の評価が「×」である。
【0036】
【表1】
【0037】
表1の結果より、特定の材料を組み合わせることで、高強度の鉄筋用スペーサを製造することができるスペーサ用モルタル組成物とすることができることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明のスペーサ用モルタル組成物は、特定の材料を組み合わせることで、高強度の鉄筋用スペーサを製造することが可能となる。そのため、上下水、農水、鉄道、電力、道路、建築などで使用されるコンクリート構造物の鉄筋コンクリート工事に幅広く適用できる。