(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132015
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】車両の走行判定装置と走行判定方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20230914BHJP
G01C 7/04 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
G08G1/16 C
G01C7/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022037096
(22)【出願日】2022-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】大谷 英夫
(72)【発明者】
【氏名】鵜澤 哲史
(72)【発明者】
【氏名】小村 俊夫
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181AA07
5H181BB04
5H181BB05
5H181BB12
5H181BB13
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC11
5H181CC14
5H181FF04
5H181FF25
5H181FF27
5H181FF33
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL08
5H181LL14
(57)【要約】
【課題】障害物撤去の有無やその数量を含む車両の走行判定を効率的かつ高精度に実現できる、車両の走行判定装置と走行判定方法、及びプログラムを提供する。
【解決手段】車両が走行予定の対象道路に対して車両の走行可能性を判定する、車両の走行判定装置10であり、対象道路の路面と周囲物体に関する三次元点群データを取得する第一取得部102、三次元点群データから高さ成分を除いて抽出された二次元平面点群データを取得する第二取得部104、二次元平面点群データに対して車両に関する三次元車両データの走行軌跡に関する二次元走行軌跡データを重ね合わせる重畳部106、三次元点群データに基づいて作成した三次元VR空間の走行軌跡に沿って三次元車両データを走行させる試走行部108、三次元VR空間と三次元車両データの干渉の有無を判定し、干渉すると判定された際に干渉領域の三次元情報を特定する判定特定部110を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が走行予定の対象道路に対して、該車両の走行可能性を判定する、車両の走行判定装置であって、
前記対象道路の路面と、該対象道路の周囲空間にある周囲物体に関する三次元点群データを取得する、第一取得部と、
前記三次元点群データから高さ成分を除いて抽出された二次元平面点群データ、もしくは、前記路面と前記周囲物体に関して別途用意された二次元平面点群データを取得する、第二取得部と、
前記二次元平面点群データに対して、前記車両に関する三次元車両データの走行軌跡に関する二次元走行軌跡データを重ね合わせる、重畳部と、
前記三次元点群データに基づいて三次元VR空間を作成し、該三次元VR空間において、前記走行軌跡に沿って前記三次元車両データを走行させる、試走行部と、
前記三次元VR空間と前記三次元車両データの干渉の有無を判定し、干渉すると判定された際に干渉領域の三次元情報を特定する、判定特定部とを有することを特徴とする、車両の走行判定装置。
【請求項2】
前記第二取得部では、前記路面と前記周囲物体のオルソ図データを作成し、
前記重畳部では、前記オルソ図データに対して前記二次元走行軌跡データを重ね合わせることを特徴とする、請求項1に記載の車両の走行判定装置。
【請求項3】
前記干渉領域の三次元情報に基づいて、該干渉領域を図化する、図化部をさらに有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の車両の走行判定装置。
【請求項4】
前記干渉領域における干渉数量を特定する、数量特定部をさらに有することを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の車両の走行判定装置。
【請求項5】
前記第一取得部が、モービルマッピングシステムにより形成されていることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の車両の走行判定装置。
【請求項6】
車両が走行予定の対象道路に対して、該車両の走行可能性を判定する、車両の走行判定方法であって、
前記対象道路の路面と、該対象道路の周囲空間にある周囲物体に関する三次元点群データを取得する、A工程と、
前記三次元点群データから高さ成分を除いて抽出された二次元平面点群データ、もしくは、前記路面と前記周囲物体に関して別途用意された二次元平面点群データを取得する、B工程と、
前記二次元平面点群データに対して、前記車両に関する三次元車両データの走行軌跡に関する二次元走行軌跡データを重ね合わせる、C工程と、
前記三次元点群データに基づいて三次元VR空間を作成し、該三次元VR空間において、前記走行軌跡に沿って前記三次元車両データを走行させる、D工程と、
前記三次元VR空間と前記三次元車両データの干渉の有無を判定し、干渉すると判定された際に干渉領域の三次元情報を特定する、E工程とを有することを特徴とする、車両の走行判定方法。
【請求項7】
車両が走行予定の対象道路に対して、該車両の走行可能性を判定する、車両の走行判定をコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記対象道路の路面と、該対象道路の周囲空間にある周囲物体に関する三次元点群データを取得する、A工程と、
前記三次元点群データから高さ成分を除いて抽出された二次元平面点群データを取得する、B工程と、
前記二次元平面点群データに対して、前記車両に関する三次元車両データの走行軌跡に関する二次元走行軌跡データを重ね合わせる、C工程と、
前記三次元点群データに基づいて三次元VR空間を作成し、該三次元VR空間において、前記走行軌跡に沿って前記三次元車両データを走行させる、D工程と、
前記三次元VR空間と前記三次元車両データの干渉の有無を判定し、干渉すると判定された際に干渉領域の三次元情報を特定する、E工程とを有することを特徴とする、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行判定装置と走行判定方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光や風力、地熱、水力、バイオマスといった再生可能エネルギーは、温室効果ガスを排出せず、国内生産が可能であり、エネルギー安全保障にも寄与できる重要な低炭素の国産エネルギーである。その中で、風力エネルギーは、高効率で電気エネルギーに変換できること、太陽光発電と異なり風さえあれば夜間でも発電できることから注目されており、陸上と洋上の双方で発電システムが開発され、建設されている。陸上の風力発電システムにおいては、その主たる構成要素である発電用風車(塔状建造物)を構成するタワーの高さが、例えば50mかそれ以上にも及び得る。
上記する長尺のタワーは、複数の塔体に分割され、分割された塔体が設置場所において建て起こされて設置され、複数の塔体が順次上方に積層されることにより、所定長さのタワーが施工される。
複数に分割された塔体も基本的には長尺であることから、トレーラ等の運搬車両にて施工場所に搬送される際には、荷台に長尺の塔体を搭載しながら走行する運搬車両が、長さと高さともに巨大な荷姿となることから、このように巨大な塔体を搭載した運搬車両の走行可能性を精緻に判定することは極めて肝要になる。
特に、陸上の風力発電施設は山間部に設けられることが多いことから、山間部をうねるようにして延設する道路(山道)を運搬車両が走行する過程で、道路の曲率や幅が運搬車両の走行にとって不十分な場合や、荷台に搭載されている長尺な塔体が道路の周囲物体(土砂、樹木、電柱や道路標識等)と干渉する場合であって、他の代替道路が存在しない場合においては、干渉可能性のある道路の周囲物体を撤去しながら、道路の幅員を広げる等の事前準備施工が必要になる。
尚、発電用風車のタワーを構成する塔体の他にも、長尺な物体を運搬車両にて設置場所まで搬送する際には、上記と同様の検討と事前準備施工を要することに変わりはない。
【0003】
従来の事前準備施工では、(1)現地踏査と測量を行い、(2)地図や衛星画像で得られた道路線形図(二次元平面図)の上で車両の走行軌跡を検討し、その上で、(3)現地において干渉可能性のある障害物の位置を測量し、(4)干渉可能性の有無を判定している。
二次元平面図において、干渉可能性があると判定された障害物をチェックして障害物撤去図を作成し、道路の拡幅を要するエリアをチェックして道路拡幅図を作成した上で、これらの撤去と拡幅に要する工数数量の算定を行っている。
上記する(1)、(2)は、走行計画を行う業者による基本設計段階で実施され、(3)、(4)は、詳細設計段階もしくは実際に撤去施工や拡幅施工を行う施工業者により実施されるのが一般的であり、現地へ何度も足を運ぶことを含めて、作業が二度手間になるといった課題を有している。
【0004】
ここで、特許文献1には、特殊車両等の走行可能性の判定を行う、車両の走行判定装置と走行判定プログラムが提案されている。この走行判定装置は、指定された道路において、道路が水平面であると仮定した際の車両の3次元走行軌跡を生成する走行軌跡生成手段と、指定された道路の路面及び道路周囲の建築物、構築物その他の物体について収集されている3次元点群データを取得する3次元点群データ取得手段と、路面の3次元点群データに基づき、路面の勾配や起伏を算出し、3次元走行軌跡の高さ及び傾きを補正する走行軌跡補正手段と、補正後の3次元走行軌跡と3次元点群データとを重畳する重畳手段と、重畳手段の重畳処理の結果に基づき、補正後の3次元走行軌跡に包含される3次元点群データの点の属性に衝突情報を付与する衝突情報付与手段とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の車両の走行判定装置では、3次元走行軌跡を生成し、指定された道路の路面及び道路周囲の建築物や構築物等の3次元点群データを取得するとしているが、実際に車両が走行した際の道路周囲の建築物等との干渉領域の特定が不明であり、事前準備施工の計画に適用した際に、障害物撤去を含む走行計画を実現できるか否かは定かでない。
【0007】
本発明は、現地踏査や測量を軽減でき、車両の走行可能性に要する時間を短縮して、障害物撤去の有無やその数量を含む車両の走行判定を効率的かつ高精度に実現できる、車両の走行判定装置と走行判定方法、及びプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成すべく、本発明による車両の走行判定装置の一態様は、
車両が走行予定の対象道路に対して、該車両の走行可能性を判定する、車両の走行判定装置であって、
前記対象道路の路面と、該対象道路の周囲空間にある周囲物体に関する三次元点群データを取得する、第一取得部と、
前記三次元点群データから高さ成分を除いて抽出された二次元平面点群データ、もしくは、前記路面と前記周囲物体に関して別途用意された二次元平面点群データを取得する、第二取得部と、
前記二次元平面点群データに対して、前記車両に関する三次元車両データの走行軌跡に関する二次元走行軌跡データを重ね合わせる、重畳部と、
前記三次元点群データに基づいて三次元VR空間を作成し、該三次元VR空間において、前記走行軌跡に沿って前記三次元車両データを走行させる、試走行部と、
前記三次元VR空間と前記三次元車両データの干渉の有無を判定し、干渉すると判定された際に干渉領域の三次元情報を特定する、判定特定部とを有することを特徴とする。
【0009】
本態様によれば、対象道路の路面と周囲物体に関する三次元点群データから抽出された二次元平面点群データ等に対して、車両に関する三次元車両データの走行軌跡に関する二次元走行軌跡データを重ね合わせ、三次元点群データに基づいて作成した三次元VR空間において走行軌跡に沿って三次元車両データを走行させ、三次元VR空間と三次元車両データの干渉の有無の判定と、干渉領域の三次元情報の特定を実施することにより、現地踏査や測量を軽減でき、車両の走行可能性に要する時間を短縮して、干渉領域の有無や干渉領域における障害物の数量を含む車両の走行判定を、効率的かつ高精度に実現することができる。
特に、三次元VR空間において走行軌跡に沿って三次元車両データを走行させることにより、高さ方向と幅方向の双方が周囲物体と干渉可能性のある巨大な塔体等を搭載して走行する運搬車両の走行可能性を、精緻に判定することができる。
そして、判定特定部において、干渉すると判定された際に干渉領域の三次元情報を特定することにより、干渉領域における障害物(土砂や樹木、道路標識等)の撤去数量を特定することができ、綿密な走行計画の作成に繋がる。
尚、重畳部における、車両に関する三次元車両データの走行軌跡に関する二次元走行軌跡データの作成は、市販の車両走行軌跡作図ソフトを適用できる。
【0010】
また、本発明による車両の走行判定装置の他の態様において、
前記第二取得部では、前記路面と前記周囲物体のオルソ図データを作成し、
前記重畳部では、前記オルソ図データに対して前記二次元走行軌跡データを重ね合わせることを特徴とする。
【0011】
本態様によれば、重畳部において、オルソ図データに対して二次元走行軌跡データを重ね合わせることにより、二次元平面図における対象道路や周囲物体の平面像(平面輪郭)が正しく、位置も正確に配置されることから、二次元平面図において、対象道路や周囲物体、二次元走行軌跡等の位置や面積、距離(各物体間の相対距離を含む)を正確に表示することができる。
【0012】
また、本発明による車両の走行判定装置の他の態様は、
前記干渉領域の三次元情報に基づいて、該干渉領域を図化する、図化部をさらに有することを特徴とする。
【0013】
本態様によれば、干渉領域の三次元情報に基づいて当該干渉領域を図化する図化部をさらに有することにより、干渉領域を三次元的もしくは二次元的に視認でき、干渉領域を視覚的に把握することができる。
【0014】
また、本発明による車両の走行判定装置の他の態様は、
前記干渉領域における干渉数量を特定する、数量特定部をさらに有することを特徴とする。
【0015】
本態様によれば、干渉領域における干渉数量(障害物の数量)を特定する数量特定部をさらに有することにより、上記する図化部による干渉領域の視覚的な把握と、数量特定部による干渉領域の数量把握(定量把握)の双方を実現できる。ここで、数量特定部では、干渉数量の特定のみならず、干渉物の種類に応じた撤去等に要するコスト等の特定も可能になる。ここで、干渉領域は、上記する図化部を構成する例えば市販のCAD(Computer Aided Design)ソフトに読み込み可能にデータ変換(DXF変換等)され、CADに内蔵される多角形面積算定機能等を利用して干渉領域の面積や体積が算定されてよい。すなわち、図化部と数量特定部がCAD等の同一のアプリケーションに基づいて構成されてもよいし、別々のアプリケーションにより構成されてもよい。また、干渉領域に存在する木材や電柱の本数等は、オルソ図(オルソ画像)と重ね合わせることにより、数量算定が可能になる。
【0016】
また、本発明による車両の走行判定装置の他の態様は、
前記第一取得部が、モービルマッピングシステムにより形成されていることを特徴とする。
【0017】
本態様によれば、対象道路の路面や周囲空間にある周囲物体に関する三次元点群データが、モービルマッピングシステム(MMS:Mobile Mapping System)によって取得されることにより、対象道路の路面や周囲空間にある周囲物体に関する三次元点群データを、測量車両を走行させながら効率的に取得することができる。ここで、第一取得部は、モービルマッピングシステムそのものであってもよいし、モービルマッピングシステムにより取得されたデータが取り込まれる、走行判定装置の構成要素であってもよい。
【0018】
また、本発明による車両の走行判定方法の一態様は、
車両が走行予定の対象道路に対して、該車両の走行可能性を判定する、車両の走行判定方法であって、
前記対象道路の路面と、該対象道路の周囲空間にある周囲物体に関する三次元点群データを取得する、A工程と、
前記三次元点群データから高さ成分を除いて抽出された二次元平面点群データ、もしくは、前記路面と前記周囲物体に関して別途用意された二次元平面点群データを取得する、B工程と、
前記二次元平面点群データに対して、前記車両に関する三次元車両データの走行軌跡に関する二次元走行軌跡データを重ね合わせる、C工程と、
前記三次元点群データに基づいて三次元VR空間を作成し、該三次元VR空間において、前記走行軌跡に沿って前記三次元車両データを走行させる、D工程と、
前記三次元VR空間と前記三次元車両データの干渉の有無を判定し、干渉すると判定された際に干渉領域の三次元情報を特定する、E工程とを有することを特徴とする。
【0019】
本態様によれば、対象道路の路面と周囲物体に関する三次元点群データから抽出された二次元平面点群データ等に対して、車両に関する三次元車両データの走行軌跡に関する二次元走行軌跡データを重ね合わせ、三次元点群データに基づいて作成した三次元VR空間において走行軌跡に沿って三次元車両データを走行させ、三次元VR空間と三次元車両データの干渉の有無の判定と、干渉領域の三次元情報の特定を実施することにより、現地踏査や測量を軽減でき、車両の走行可能性に要する時間を短縮して、干渉領域の有無や干渉領域における障害物の数量を含む車両の走行判定を、効率的かつ高精度に実現することができる。
【0020】
また、本発明によるプログラムの一態様は、
車両が走行予定の対象道路に対して、該車両の走行可能性を判定する、車両の走行判定をコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記対象道路の路面と、該対象道路の周囲空間にある周囲物体に関する三次元点群データを取得する、A工程と、
前記三次元点群データから高さ成分を除いて抽出された二次元平面点群データを取得する、B工程と、
前記二次元平面点群データに対して、前記車両に関する三次元車両データの走行軌跡に関する二次元走行軌跡データを重ね合わせる、C工程と、
前記三次元点群データに基づいて三次元VR空間を作成し、該三次元VR空間において、前記走行軌跡に沿って前記三次元車両データを走行させる、D工程と、
前記三次元VR空間と前記三次元車両データの干渉の有無を判定し、干渉すると判定された際に干渉領域の三次元情報を特定する、E工程とを有することを特徴とする。
【0021】
本態様によれば、対象道路の路面と周囲物体に関する三次元点群データから抽出された二次元平面点群データ等に対して、車両に関する三次元車両データの走行軌跡に関する二次元走行軌跡データを重ね合わせ、三次元点群データに基づいて作成した三次元VR空間において走行軌跡に沿って三次元車両データを走行させ、三次元VR空間と三次元車両データの干渉の有無の判定と、干渉領域の三次元情報の特定を実施することにより、1つのコンピュータにて、干渉領域の有無や干渉領域における障害物の数量を含む車両の走行判定を、効率的かつ高精度に実現することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の車両の走行判定装置と走行判定方法、及びプログラムによれば、現地踏査や測量を軽減でき、車両の走行可能性に要する時間を短縮して、干渉領域の有無や干渉領域における障害物の数量を含む車両の走行判定を、効率的かつ高精度に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】実施形態に係る走行判定装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図2】実施形態に係る走行判定装置の機能構成の一例を示す図である。
【
図3】表示部に表示されている、対象道路とその周囲物体の一例の三次元点群を示す図である。
【
図4】表示部に表示されている、二次元平面点群と車両の走行軌跡が重ね合わされている一例を示す図である。
【
図5】表示部に表示されている、三次元VR空間において三次元車両が走行している一例を示す図である。
【
図6】表示部に表示されている、図化された干渉領域の平面図の一例を示す図である。
【
図7】表示部に表示されている、干渉領域における干渉数量の一例を示すテーブルである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、実施形態に係る車両の走行判定装置と走行判定方法について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0025】
[実施形態に係る車両の走行判定装置と走行判定方法]
図1乃至
図7を参照して、実施形態に係る車両の走行判定装置と走行判定方法の一例について説明する。ここで、
図1は、実施形態に係る走行判定装置のハードウェア構成の一例を示す図であり、
図2は、実施形態に係る走行判定装置の機能構成の一例を示す図である。
【0026】
走行判定装置10は、車両が走行予定の対象道路に対して、その走行可能性を判定する走行判定装置である。以下の説明では、車両がトレーラ等の運搬車両であり、トレーラの荷台に長尺で巨大な塔体が搭載された状態で、山道を走行する際の走行可能性を判定する例を取り上げて説明する。
【0027】
走行判定装置10は、パーソナルコンピュータ(PC:Personal Computer)等の情報処理装置(コンピュータ)により構成される。走行判定装置10を構成するコンピュータは、接続バス16により相互に接続されているCPU(Central Processing Unit)11、主記憶装置12、補助記憶装置13、通信IF(interface)14、及び入出力IF15を備えている。主記憶装置12と補助記憶装置13は、コンピュータが読み取り可能な記録媒体である。尚、上記の構成要素はそれぞれ個別に設けられてもよいし、一部の構成要素を設けないようにしてもよい。
【0028】
CPU11は、MPU(Microprocessor)やプロセッサとも呼ばれ、CPU11は、単一のプロセッサであってもよいし、マルチプロセッサであってもよい。CPU11は、コンピュータからなる走行判定装置10の全体の制御を行う中央演算処理装置である。CPU11は、例えば、補助記憶装置13に記憶されたプログラムを主記憶装置12の作業領域にて実行可能に展開し、プログラムの実行を通じて周辺機器の制御を行うことにより、所定の目的に合致した機能を提供する。
【0029】
主記憶装置12は、CPU11が実行するコンピュータプログラムや、CPU11が処理するデータ等を記憶する。主記憶装置12は、例えば、フラッシュメモリ、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)を含む。補助記憶装置13は、各種のプログラム及び各種のデータを読み書き自在に記録媒体に格納し、外部記憶装置とも呼ばれる。補助記憶装置13には、例えば、OS(Operating System)、各種プログラム、各種テーブル等が格納される。OSは、例えば、通信IF14を介して接続される外部装置等とのデータの受け渡しを行う通信インターフェースプログラムを含む。
【0030】
外部装置等には、例えば、モービルマッピングシステムを構成する測量車両に搭載されている、レーザー計測器や、GNSS、慣性装置、デジタルカメラ等により取得された各種データを送信する送信機や、モービルマッピングシステムにより取得されたデータを管理する管理用パーソナルコンピュータ(いずれも図示せず)等が含まれる。
【0031】
補助記憶装置13は、例えば、主記憶装置12を補助する記憶領域として使用され、CPU11が実行するコンピュータプログラムや、CPU11が処理するデータ等を記憶する。補助記憶装置13は、不揮発性半導体メモリ(フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable ROM))を含むシリコンディスク、ハードディスクドライブ(HDD:Hard Disk Drive)装置、ソリッドステートドライブ装置等である。また、補助記憶装置13として、CDドライブ装置、DVDドライブ装置、BDドライブ装置といった着脱可能な記録媒体の駆動装置が例示され、着脱可能な記録媒体として、CD、DVD、BD、USB(Universal Serial Bus)メモリ、SD(Secure Digital)メモリカード等が例示される。
【0032】
入出力IF15は、走行判定装置10に接続する機器との間でデータの入出力を行うインターフェイスである。入出力IF15には、例えば、キーボード、タッチパネルやマウス等のポインティングデバイス、マイクロフォン等の入力デバイス等が接続する。走行判定装置10は、入出力IF15を介して、入力デバイスを操作する操作者からの操作指示等を受け付ける。
【0033】
また、入出力IF15には、例えば、液晶パネル(LCD:Liquid Crystal Display)や有機ELパネル(EL:Electroluminescence)等の表示デバイス、プリンタ、スピーカ等の出力デバイスが接続される。
【0034】
例えば、以下で説明するように、二次元平面点群と車両の走行軌跡が重ね合わされている図や、三次元VR空間において三次元車両が走行している図(動画を含む)、干渉領域の平面図(二次元平面図)や立面図(三次元立体図)、干渉領域における干渉数量のテーブル等が画面表示されるようになっている。
【0035】
通信IF14は、走行判定装置10が接続するケーブルやネットワークとのインターフェイスである。通信IF14は、インターネット等の公衆ネットワーク、携帯電話網等の無線ネットワーク、VPN(Virtual Private Network)等の専用ネットワーク、LAN(Local Area Network)等、様々なネットワークを介して、モービルマッピングシステムにより取得されたデータを受信し、走行判定結果データを各関係者の有するコンピュータや携帯端末(スマートフォンやタブレット端末)等に送信する。
【0036】
図2に示すように、走行判定装置10は、CPU11によるプログラムの実行により、少なくとも、第一取得部102、第二取得部104、重畳部106、試走行部108,判定特定部110,図化部112,数量特定部114,表示部116,及び格納部118の各種機能を提供する。ここで、上記処理機能の少なくとも一部が、DSP(Digital Signal Processor)、GPU(Graphics Processing Unit)等によって提供されてもよく、同様に、上記処理機能の少なくとも一部が、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、数値演算プロセッサ、画像処理プロセッサ等の専用LSI(large scale integration)やその他のデジタル回路等であってもよい。
【0037】
第一取得部102は、対象道路の路面と、対象道路の周囲空間にある周囲物体に関する三次元点群データを取得する。
【0038】
第一取得部102は、モービルマッピングシステムそのものであってもよいし、モービルマッピングシステムにて取得されたデータが取り込まれる取得部であってもよい。例えば、モービルマッピングシステムにて取得されたデータは、一旦格納部118に格納(記憶)され、格納部118から第一取得部102に三次元点群データとして取得される。
【0039】
モービルマッピングシステムが適用されることにより、現地踏査や測量を軽減でき、対象道路の路面や周囲空間にある周囲物体に関する三次元点群データを、測量車両を走行させながら効率的に取得することができる。ここで、測量車両には、レーザー計測器や、GNSS(Global Navigation Satellite System;全球測位衛星システム)、慣性装置、デジタルカメラ等が搭載され、路面や周囲物体の三次元点群データと連続カラー画像を取得することができる。
【0040】
図3は、表示部116に表示されている、対象道路Rとその周囲物体B等の一例の三次元点群を示す図である。
【0041】
図3において、山道である対象道路Rは目的地点まで多数のうねりを有している。運搬対象は、陸上の風力発電システムの構成要素である発電用風車を構成するタワーの分割体である、長尺の塔体であり、この長尺で巨大な塔体を荷台に搭載したトレーラが対象道路Rを走行する。
【0042】
MMSを構成する測量車両を、対象道路Rに走行させ、その際に対象道路とその周囲物体に関する三次元点群データD1を取得する。
図3では、対象道路Rの周囲にある様々な周囲物体があり、この周囲物体には、土砂B、多数の樹木W、複数(
図3では四本)の電柱P、電柱P間に架設された電線C、道路標識Sが含まれる。これらの路面Rや周囲物体に関する三次元座標を含むデータポイントdにより、三次元点群D1が形成される。
【0043】
第二取得部104は、三次元点群データから高さ成分を除いて抽出された二次元平面点群データを取得する。ここで、第二取得部104はその他、路面と周囲物体に関して別途用意された二次元平面点群データを取得してもよい。
【0044】
重畳部106は、第二取得部104にて取得された二次元平面点群データに対して、車両に関する三次元車両データの走行軌跡に関する二次元走行軌跡データを重ね合わせる。
【0045】
図4は、表示部116に表示されている、二次元平面点群D2と車両の走行軌跡D3が重ね合わされている一例を示す図である。
【0046】
図4に示すように、第二取得部104では、二次元平面点群D2として、路面Rと周囲物体のオルソ図が作成される。そして、オルソ図に対して、二次元走行軌跡D3が重ね合わされる。
【0047】
二次元平面点群D2をオルソ図とし、オルソ図に対して二次元走行軌跡D3を重ね合わせることにより、
図4に示すような二次元平面図における対象道路Rや周囲物体B,W,P,S,Cの平面像が正しく、位置も正確に配置されることから、二次元平面図において、対象道路Rや周囲物体B,W,P,S,C、二次元走行軌跡D3の位置や面積、距離を正確に表示することができる。
【0048】
ここで、車両に関する三次元車両データの走行軌跡に関する二次元走行軌跡D3の作成は、市販の車両走行軌跡作図ソフトを適用できる。この車両走行軌跡作図ソフトとしては、例えば、株式会社エムティシー社製の車両走行軌跡作図システム;APS-K for AutoCAD等を適用できる。
【0049】
試走行部108は、重畳部106にて作成された、三次元点群データD1(の二次元平面点群D2)に車両の走行軌跡D3が重ね合わされている重ね合わせデータ(三次元点群データ)に基づいて三次元VR空間を作成し、当該三次元VR空間において、走行軌跡に沿って三次元車両データを走行させる。
【0050】
図5は、表示部116に表示されている、三次元VR空間D4において三次元車両D5が塔体D6を搭載した状態で走行している一例を示す図である。
【0051】
この試走行においては、例えば、トレーラD5の最前の車輪軸の中心と、荷台の最後尾の車輪軸の中心を、走行軌跡D3に沿って試走行させる。表示部116では、試走行するトレーラD5の動画が表示される。
【0052】
図5に示すように、三次元VR空間D4において塔体D6を搭載した三次元車両D5を走行軌跡D3に沿って試走行させることにより、高さ方向と幅方向の双方が周囲物体と干渉可能性のある巨大な塔体D6を搭載して走行する運搬車両D5の走行可能性を、精緻に判定することができる。ここで、走行可能性とは、運搬車両が周囲物体と干渉せずに走行できるか否かに加えて、干渉する場合にどの程度の干渉領域が生じ得るかを含んだ可能性のことである。
【0053】
判定特定部110は、三次元VR空間D4における路面Rの周囲物体と三次元車両D5の干渉の有無を判定し、干渉すると判定された際に干渉領域の三次元情報を特定する。
【0054】
図6は、表示部116に表示されている、図化された干渉領域D7の平面図の一例を示す図である。
【0055】
判定特定部110において特定された干渉領域D7に関する三次元情報に基づき、図化部112にて干渉領域D7が図化される。ここで、図化部112には、市販のCADソフト等が適用される。図化部112では、図示例のように二次元図の他、様々な方向から視認可能な三次元図としても図化される。
【0056】
図6においては、路面Rの曲がり区間において広範囲に亘る干渉領域D7が特定され、図示されており、この干渉領域D7には、土砂や樹木の他、三本の電柱Pと一本の道路標識Sが存在し、これらは全て、塔体D6を搭載したトレーラD5が当該区間を走行する際の障害物となる。
【0057】
干渉領域D7の三次元情報に基づいて、当該干渉領域D7が図示例のように二次元図や三次元図として図化されることにより、干渉領域を二次元的もしくは三次元的に視認でき、干渉領域を視覚的に把握することができる。
【0058】
数量特定部114は、干渉領域D7における干渉数量を特定する。
【0059】
図7は、表示部116に表示されている、干渉領域D7における干渉数量の一例を示すテーブルである。
【0060】
このテーブルには、塔体運搬ルートにおいて設定されている各地点のうち、判定特定部110において、塔体D6を搭載したトレーラD5と路面Rの周囲物体が干渉すると判定された干渉領域を有する地点が抽出される。そして、抽出された地点において、図化部112にて図化された干渉領域D7における平面積や体積等から、障害物のボリュームや数量等が算定され、表示される。
【0061】
ここで、図示を省略するが、各障害物の撤去に要するコスト(単位ボリューム当たりの撤去コスト)や単位面積当たりの舗装施工コスト等が格納部118に格納され、数量特定部114において、算定された障害物に対して単位ボリューム当たりの撤去コストが乗じられることで障害物の撤去コストが算出され、さらに、撤去領域に対する路面の舗装数量と単位面積当たりの舗装施工コストが乗じられることで路面追加施工コストが算出され、これらの総コストが表示されてもよい。
【0062】
このように、走行判定装置10によれば、現地踏査や測量を軽減でき、車両の走行可能性に要する時間を短縮して、干渉領域の有無や干渉領域における障害物の数量を含む車両の走行判定を、効率的かつ高精度に実現することができる。
【0063】
尚、実施形態に係る走行判定方法は、以下の方法となる。
【0064】
まず、A工程として、対象道路の路面と、対象道路の周囲空間にある周囲物体に関する三次元点群データを取得する。このA工程では、MMSにより、対象道路の路面や周囲空間にある周囲物体に関する三次元点群データを、測量車両を走行させながら効率的に取得する。
【0065】
次に、B工程として、三次元点群データから高さ成分を除いて抽出された二次元平面点群データ、もしくは、路面と周囲物体に関して別途用意された二次元平面点群データを取得する。
【0066】
次に、C工程として、二次元平面点群データに対して、車両に関する三次元車両データの走行軌跡に関する二次元走行軌跡データを重ね合わせる。このC工程では、二次元平面点群をオルソ図とし、オルソ図に対して二次元走行軌跡を重ね合わせることにより、二次元平面図において、対象道路や周囲物体、二次元走行軌跡の位置や面積、距離を正確に表示する。
【0067】
次に、D工程として、三次元点群データに基づいて三次元VR空間を作成し、三次元VR空間において、走行軌跡に沿って三次元車両データを走行させる。このD工程では、三次元VR空間において塔体を搭載した三次元車両を走行軌跡に沿って試走行させることにより、高さ方向と幅方向の双方が周囲物体と干渉可能性のある巨大な塔体を搭載して走行する運搬車両の走行可能性を、精緻に判定する。
【0068】
次に、E工程として、三次元VR空間と三次元車両データの干渉の有無を判定し、干渉すると判定された際に干渉領域の三次元情報を特定する。特定された干渉領域の三次元情報に基づいて、干渉領域を図化し、図化された干渉領域における干渉数量をさらに特定する。このE工程では、干渉領域における障害物の数量が特定されることから、対象道路に対する車両の走行可能性を判定し、必要に応じて事前準備施工を行うための施工計画を、効率的かつ高精度に実現することができる。
【0069】
さらに、上記する一連の工程は、一つのプログラムとして、走行判定装置10を構成するパーソナルコンピュータにインストール等され、実行させてもよい。このプログラムにおけるB工程は、三次元点群データから高さ成分を除いて抽出された二次元平面点群データを取得する工程となる。
【0070】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0071】
10:走行判定装置(車両の走行判定装置)
102:第一取得部
104:第二取得部
106:重畳部
108:試走行部
110:判定特定部
112:図化部
114:数量特定部
116:表示部
118:格納部
D1:三次元点群
D2:二次元平面点群
D3:二次元走行軌跡
D4:三次元VR空間
D5:三次元車両(運搬車両、トレーラ)
D6:塔体
D7干渉領域
d:データポイント
R:対象道路(山道、路面)
W:樹木(周囲物体)
B:土(盛土、周囲物体)
P:電柱(周囲物体)
C:電線(周囲物体)
S:道路標識(周囲物体)