特開 2023-132027 スラストフォイル軸受の製造方法

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2023132027

(43)【公開日】2023-09-22

(54)【発明の名称】スラストフォイル軸受の製造方法

(51)【国際特許分類】

   F16C 27/02 20060101AFI20230914BHJP

【ＦＩ】

F16C27/02 A

【審査請求】未請求

【請求項の数】9

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2022037116

(22)【出願日】2022-03-10

(71)【出願人】

【識別番号】515078198

【氏名又は名称】株式会社汐見製作所

(74)【代理人】

【識別番号】100104776

【弁理士】

【氏名又は名称】佐野 弘

(74)【代理人】

【識別番号】100119194

【弁理士】

【氏名又は名称】石井 明夫

(72)【発明者】

【氏名】槐島 登士巳

(72)【発明者】

【氏名】見山 圭二

(72)【発明者】

【氏名】白井 成明

【テーマコード（参考）】

3J012

【Ｆターム（参考）】

3J012BB02

3J012CB10

3J012EB08

3J012EB09

3J012HB01

(57)【要約】

【課題】ベースプレートとバックフォイルとトップフォイルの位置決めを簡単かつ確実に行え、効率よく製造できるスラストフォイル軸受の製造方法を提供する。
【解決手段】スラストフォイル軸受１０の製造方法で、バックフォイル３０及び／又はトップフォイル４をベースプレート２０の所定位置に位置決めする位置決め部を有しており、ベースプレート２０の所定位置に対して、位置決め部を用いてバックフォイル３０及び／又はトップフォイル４０を位置決めして配置し、ベースプレート２０とバックフォイル３０とトップフォイル４０とを固定する。
【選択図】図１

【特許請求の範囲】

【請求項1】

円環形状のベースプレート上に、複数のバックフォイル片を円環状に配置してバックフォイルを形成し、複数の前記バックフォイル片の上に複数のトップフォイル片を円環状に配置してトップフォイルを形成し、前記ベースプレートと前記バックフォイルと前記トップフォイルとを固定して形成されるスラストフォイル軸受の製造方法であって、
前記バックフォイル及び／又は前記トップフォイルを前記ベースプレートの所定位置に位置決めする位置決め部を有しており、
前記ベースプレートの所定位置に対して、前記位置決め部を用いて前記バックフォイル及び／又は前記トップフォイルを位置決めして配置し、
前記ベースプレートと前記バックフォイルと前記トップフォイルとを固定することを特徴とするスラストフォイル軸受の製造方法。

【請求項2】

前記位置決め部として前記バックフォイルに付加されて前記ベースプレートの所定位置に位置決めされるバックフォイル位置決め部を有し、前記ベースプレートの所定位置に対して、前記バックフォイル位置決め部を用いて前記バックフォイルを位置決めして配置するバックフォイル位置決め工程と、
前記位置決め部として前記トップフォイルに付加されて前記ベースプレートの所定位置に位置決めされるトップフォイル位置決め部を有し、前記ベースプレートの所定位置に対して、前記トップフォイル位置決め部を用いて前記トップフォイルを位置決めして配置するトップフォイル位置決め工程と、
の少なくとも一方を有しており、
その後、前記ベースプレートと前記バックフォイルと前記トップフォイルとを固定する取付工程を有することを特徴とする請求項１に記載のスラストフォイル軸受の製造方法。

【請求項3】

前記位置決め部として前記バックフォイルに付加されて前記ベースプレートの所定位置に位置決めされるバックフォイル位置決め部を有し、複数の前記バックフォイル片同士を扇形状に繋ぐバックフォイル連結部を有し、前記バックフォイル連結部で結合された複数の前記バックフォイル片で構成されたバックフォイル片結合部において前記バックフォイル連結部が前記バックフォイル位置決め部を兼ねており、１又は複数の前記バックフォイル片結合部を、前記バックフォイル連結部を用いて前記ベースプレートの所定位置に位置決めして円環状に配置するバックフォイル位置決め工程と、
前記位置決め部として前記トップフォイルに付加されて前記ベースプレートの所定位置に位置決めされるトップフォイル位置決め部を有し、複数の前記トップフォイル片同士を扇形状に繋ぐトップフォイル連結部を有し、前記トップフォイル連結部で結合された複数の前記トップフォイル片で構成されたトップフォイル片結合部において前記トップフォイル連結部が前記トップフォイル位置決め部を兼ねており、１又は複数の前記トップフォイル片結合部を、前記トップフォイル連結部を用いて前記ベースプレートの所定位置に位置決めして円環状に配置するトップフォイル位置決め工程と、
の少なくとも一方を有しており、
その後、前記ベースプレートと前記バックフォイルと前記トップフォイルとを固定する取付工程を有することを特徴とする請求項１に記載のスラストフォイル軸受の製造方法。

【請求項4】

前記位置決め部として前記バックフォイルに付加されて前記ベースプレートの所定位置に位置決めされるバックフォイル位置決め部を有し、前記バックフォイル位置決め部が複数の前記バックフォイル片それぞれに付加されており、複数の前記バックフォイル片をそれぞれの前記バックフォイル位置決め部を用いて前記ベースプレートの所定位置に位置決めして円環状に配置するバックフォイル位置決め工程と、
前記位置決め部として前記トップフォイルに付加されて前記ベースプレートの所定位置に位置決めされるトップフォイル位置決め部を有し、前記トップフォイル位置決め部が複数の前記トップフォイル片それぞれに付加されており、複数の前記トップフォイル片をそれぞれの前記トップフォイル位置決め部を用いて前記ベースプレートの所定位置に位置決めして円環状に配置するトップフォイル位置決め工程と、
の少なくとも一方を有しており、
その後、前記ベースプレートと前記バックフォイルと前記トップフォイルとを固定する取付工程を有することを特徴とする請求項１に記載のスラストフォイル軸受の製造方法。

【請求項5】

前記バックフォイル位置決め部は、前記バックフォイルにおける前記ベースプレート及び前記トップフォイルと固定されるバックフォイル固定部に付加されており、
前記トップフォイル位置決め部は、前記トップフォイルにおける前記ベースプレート及び前記バックフォイルと固定されるトップフォイル固定部に付加されていることを特徴とする請求項２乃至４の何れか１項に記載のスラストフォイル軸受の製造方法。

【請求項6】

前記バックフォイル位置決め部は、前記バックフォイルから外周側及び／又は内周側に向けて突出した棒状又は板状の部材で構成されており、
前記トップフォイル位置決め部は、前記トップフォイルから外周側及び／又は内周側に向けて突出した棒状又は板状の部材で構成されていることを特徴とする請求項２乃至５の何れか１項に記載のスラストフォイル軸受の製造方法。

【請求項7】

前記バックフォイル位置決め部は、前記バックフォイルから斜め上方に突出するように構成されており、
前記トップフォイル位置決め部は、前記トップフォイルから斜め上方に突出するように構成されていることを特徴とする請求項６に記載のスラストフォイル軸受の製造方法。

【請求項8】

前記ベースプレートを保持する枠体を有しており、
前記枠体には、前記バックフォイル位置決め部及び／又は前記トップフォイル位置決め部を所定位置に保持する位置決め部保持部を有しており、
前記バックフォイル位置決め工程で、前記バックフォイル位置決め部を前記位置決め部保持部に保持することで、前記ベースプレートの所定位置に対して前記バックフォイルを位置決めする工程、
前記トップフォイル位置決め工程で、前記トップフォイル位置決め部を前記位置決め部保持部に保持することで、前記ベースプレートの所定位置に対して前記トップフォイルを位置決めする工程、
の少なくとも一方を有していることを特徴とする請求項２乃至７の何れか１項に記載のスラストフォイル軸受の製造方法。

【請求項9】

円環形状のベースプレート上に、複数のバックフォイル片を円環状に配置してバックフォイルを形成し、複数の前記バックフォイル片の上に複数のトップフォイル片を円環状に配置してトップフォイルを形成し、前記ベースプレートと前記バックフォイルと前記トップフォイルとを固定して形成されるスラストフォイル軸受の製造方法であって、
前記ベースプレートと前記バックフォイル及び／又は前記トップフォイルとを固定する取付工程を有しており、
前記取付工程の前に、前記バックフォイル及び／又は前記トップフォイルの表面に被膜を施す被膜処理工程を有しており、
前記被膜処理工程において、前記ベースプレートと前記バックフォイル及び／又は前記トップフォイルとを固定する部位を避けて、被膜処理を行うことを特徴とするスラストフォイル軸受の製造方法。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

この発明は、スラストフォイル軸受の製造方法に関するものである。

【背景技術】

【0002】

従来、流体軸受の１つであるスラストフォイル軸受が知られている。このようなスラストフォイル軸受を製造する際に、ベースプレートにバックフォイルとトップフォイルの固定部を重ね、溶接等にてこれらを固定する工程を行う場合があった（例えば、特許文献１参照）。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0003】

【特許文献1】国際公開第２０２０／１４９４２１号

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0004】

しかしながら、前記した特許文献１のような従来のスラストフォイル軸受の製造方法では、ベースプレートにバックフォイルとトップフォイルの固定部を重ねたときに、これらがずれてしまい位置決めに不具合が生じる虞があった。

【0005】

本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、ベースプレートとバックフォイルとトップフォイルの位置決めを簡単かつ確実に行うことができ、効率よくスラストフォイル軸受の製造を行うことができるスラストフォイル軸受の製造方法を提供することを課題としている。

【課題を解決するための手段】

【0006】

かかる課題を達成するために、本発明は、円環形状のベースプレート上に、複数のバックフォイル片を円環状に配置してバックフォイルを形成し、複数の前記バックフォイル片の上に複数のトップフォイル片を円環状に配置してトップフォイルを形成し、前記ベースプレートと前記バックフォイルと前記トップフォイルとを固定して形成されるスラストフォイル軸受の製造方法であって、前記バックフォイル及び／又は前記トップフォイルを前記ベースプレートの所定位置に位置決めする位置決め部を有しており、前記ベースプレートの所定位置に対して、前記位置決め部を用いて前記バックフォイル及び／又は前記トップフォイルを位置決めして配置し、前記ベースプレートと前記バックフォイルと前記トップフォイルとを固定するスラストフォイル軸受の製造方法としたことを特徴とする。

【0007】

また、本発明は、前記した構成に加えて、前記位置決め部として前記バックフォイルに付加されて前記ベースプレートの所定位置に位置決めされるバックフォイル位置決め部を有し、前記ベースプレートの所定位置に対して、前記バックフォイル位置決め部を用いて前記バックフォイルを位置決めして配置するバックフォイル位置決め工程と、前記位置決め部として前記トップフォイルに付加されて前記ベースプレートの所定位置に位置決めされるトップフォイル位置決め部を有し、前記ベースプレートの所定位置に対して、前記トップフォイル位置決め部を用いて前記トップフォイルを位置決めして配置するトップフォイル位置決め工程と、の少なくとも一方を有しており、その後、前記ベースプレートと前記バックフォイルと前記トップフォイルとを固定する取付工程を有するスラストフォイル軸受の製造方法としたことを特徴とする。

【0008】

また、本発明は、前記した構成に加えて、前記位置決め部として前記バックフォイルに付加されて前記ベースプレートの所定位置に位置決めされるバックフォイル位置決め部を有し、複数の前記バックフォイル片同士を扇形状に繋ぐバックフォイル連結部を有し、前記バックフォイル連結部で結合された複数の前記バックフォイル片で構成されたバックフォイル片結合部において前記バックフォイル連結部が前記バックフォイル位置決め部を兼ねており、１又は複数の前記バックフォイル片結合部を、前記バックフォイル連結部を用いて前記ベースプレートの所定位置に位置決めして円環状に配置するバックフォイル位置決め工程と、前記位置決め部として前記トップフォイルに付加されて前記ベースプレートの所定位置に位置決めされるトップフォイル位置決め部を有し、複数の前記トップフォイル片同士を扇形状に繋ぐトップフォイル連結部を有し、前記トップフォイル連結部で結合された複数の前記トップフォイル片で構成されたトップフォイル片結合部において前記トップフォイル連結部が前記トップフォイル位置決め部を兼ねており、１又は複数の前記トップフォイル片結合部を、前記トップフォイル連結部を用いて前記ベースプレートの所定位置に位置決めして円環状に配置するトップフォイル位置決め工程と、の少なくとも一方を有しており、その後、前記ベースプレートと前記バックフォイルと前記トップフォイルとを固定する取付工程を有するスラストフォイル軸受の製造方法としたことを特徴とする。

【0009】

また、本発明は、前記した構成に加えて、前記位置決め部として前記バックフォイルに付加されて前記ベースプレートの所定位置に位置決めされるバックフォイル位置決め部を有し、前記バックフォイル位置決め部が複数の前記バックフォイル片それぞれに付加されており、複数の前記バックフォイル片をそれぞれの前記バックフォイル位置決め部を用いて前記ベースプレートの所定位置に位置決めして円環状に配置するバックフォイル位置決め工程と、前記位置決め部として前記トップフォイルに付加されて前記ベースプレートの所定位置に位置決めされるトップフォイル位置決め部を有し、前記トップフォイル位置決め部が複数の前記トップフォイル片それぞれに付加されており、複数の前記トップフォイル片をそれぞれの前記トップフォイル位置決め部を用いて前記ベースプレートの所定位置に位置決めして円環状に配置するトップフォイル位置決め工程と、の少なくとも一方を有しており、その後、前記ベースプレートと前記バックフォイルと前記トップフォイルとを固定する取付工程を有するスラストフォイル軸受の製造方法としたことを特徴とする。

【0010】

また、本発明は、前記した構成に加えて、前記バックフォイル位置決め部は、前記バックフォイルにおける前記ベースプレート及び前記トップフォイルと固定されるバックフォイル固定部に付加されており、前記トップフォイル位置決め部は、前記トップフォイルにおける前記ベースプレート及び前記バックフォイルと固定されるトップフォイル固定部に付加されているスラストフォイル軸受の製造方法としたことを特徴とする。

【0011】

また、本発明は、前記した構成に加えて、前記バックフォイル位置決め部は、前記バックフォイルから外周側及び／又は内周側に向けて突出した棒状又は板状の部材で構成されており、前記トップフォイル位置決め部は、前記トップフォイルから外周側及び／又は内周側に向けて突出した棒状又は板状の部材で構成されているスラストフォイル軸受の製造方法としたことを特徴とする。

【0012】

また、本発明は、前記した構成に加えて、前記バックフォイル位置決め部は、前記バックフォイルから斜め上方に突出するように構成されており、前記トップフォイル位置決め部は、前記トップフォイルから斜め上方に突出するように構成されているスラストフォイル軸受の製造方法としたことを特徴とする。

【0013】

また、本発明は、前記した構成に加えて、前記ベースプレートを保持する枠体を有しており、前記枠体には、前記バックフォイル位置決め部及び／又は前記トップフォイル位置決め部を所定位置に保持する位置決め部保持部を有しており、前記バックフォイル位置決め工程で、前記バックフォイル位置決め部を前記位置決め部保持部に保持することで、前記ベースプレートの所定位置に対して前記バックフォイルを位置決めする工程、前記トップフォイル位置決め工程で、前記トップフォイル位置決め部を前記位置決め部保持部に保持することで、前記ベースプレートの所定位置に対して前記トップフォイルを位置決めする工程、の少なくとも一方を有しているスラストフォイル軸受の製造方法としたことを特徴とする。

【0014】

また、本発明は、円環形状のベースプレート上に、複数のバックフォイル片を円環状に配置してバックフォイルを形成し、複数の前記バックフォイル片の上に複数のトップフォイル片を円環状に配置してトップフォイルを形成し、前記ベースプレートと前記バックフォイルと前記トップフォイルとを固定して形成されるスラストフォイル軸受の製造方法であって、前記ベースプレートと前記バックフォイル及び／又は前記トップフォイルとを固定する取付工程を有しており、前記取付工程の前に、前記バックフォイル及び／又は前記トップフォイルの表面に被膜を施す被膜処理工程を有しており、前記被膜処理工程において、前記ベースプレートと前記バックフォイル及び／又は前記トップフォイルとを固定する部位を避けて、被膜処理を行うスラストフォイル軸受の製造方法としたことを特徴とする。

【発明の効果】

【0015】

本発明によれば、位置決め部を用いてバックフォイル及び／又はトップフォイルの位置決めを行ってから、ベースプレートとバックフォイルとトップフォイルとを固定することができるため、ベースプレートとバックフォイルとトップフォイルの位置決めを簡単かつ確実に行うことができ、効率よくスラストフォイル軸受の製造を行うことができる。

【0016】

また、本発明によれば、バックフォイル連結部で結合された複数のバックフォイル片で構成された１又は複数のバックフォイル片結合部をベースプレートの所定位置に位置決めして円環状に配置する、及び／又は、トップフォイル連結部で結合された複数のトップフォイル片で構成された１又は複数のトップフォイル片結合部をベースプレートの所定位置かつバンプフォイルの所定位置に位置決めして円環状に配置するようになっているため、位置決め工程を効率化して行うことができ、ベースプレートとバックフォイルとトップフォイルの位置決めをより簡単かつ確実に行うことができる。

【0017】

また、本発明によれば、バックフォイル片それぞれにバックフォイル位置決め部が付加されており、複数のバックフォイル片をバックフォイル位置決め部を用いてベースプレートの所定位置に位置決めして円環状に配置する、及び／又は、トップフォイル片それぞれにトップフォイル位置決め部が付加されており、複数のトップフォイル片をトップフォイル位置決め部を用いてベースプレートの所定位置かつバックフォイルの所定位置に位置決めして円環状に配置するようになっているため、位置決め工程を確実に行うことができ、ベースプレートとバックフォイルとトップフォイルの位置決めを簡単かつより確実に行うことができる。

【0018】

また、本発明によれば、バックフォイル位置決め部がバックフォイルにおけるベースプレート及びトップフォイルと固定されるバンプフォイル固定部に付加されており、トップフォイル位置決め部がトップフォイルにおけるベースプレート及びバックフォイルと固定されるトップフォイル固定部に付加されているため、位置決め部を切り離す必要がある場合には、固定されていて切り離し易い位置にそれぞれの位置決め部を付加して、より効率よくスラストフォイル軸受の製造を行うことができる。

【0019】

また、本発明によれば、バックフォイル位置決め部がバックフォイルから外周側及び内周側又は何れか一方に向けて突出した棒状又は板状の部材で構成されており、トップフォイル位置決め部がトップフォイルから外周側及び内周側又は何れか一方に向けて突出した棒状又は板状の部材で構成されているため、位置決め部がそれぞれ形成しやすくかつ切り離し易いものとすることができ、より効率よくスラストフォイル軸受の製造を行うことができる。

【0020】

また、本発明によれば、バックフォイル位置決め部がバックフォイルから斜め上方に突出するように構成され、トップフォイル位置決め部がトップフォイルから斜め上方に突出するように構成されているため、それぞれの位置決め部を切り離すときに切断手段をベースプレートと異なる方向に向けて切り離すことができ、ベースプレートやバックフォイルやトップフォイルを傷付け難い状態で切り離すことができる。

【0021】

また、本発明によれば、ベースプレートを保持する枠体の所定位置にバックフォイル位置決め部及び／又はトップフォイル位置決め部を保持するようになっているため、ベースプレートに製品となった際に不必要な位置決め手段を形成することなく、ベースプレートとバックフォイル及び／又はトップフォイルを位置決めすることができる。

【0022】

また、本発明によれば、取付工程の前にバックフォイル及び／又はトップフォイルの表面に被膜を施す被膜処理工程で、ベースプレートとバックフォイル及び／又はトップフォイルとを固定する部位を避けて被膜処理を行うことで、被膜がベースプレートとバックフォイルとトップフォイルとの固定を妨げて固定部位の不安定化を引き起こすことを防止し、安定かつ確実な固定を行うことができる。

【図面の簡単な説明】

【0023】

【図1】本発明の実施の形態１，２に係るスラストフォイル軸受を示す斜視図である。

【図2】同実施の形態１，２に係るベースプレートを示す斜視図である。

【図3】同実施の形態１に係るバックフォイル片結合部を示す斜視図である。

【図4】同実施の形態１に係るトップフォイル片結合部を示す斜視図である。

【図5】同実施の形態１に係るベースプレートにバックフォイル片結合部を配置した状態を示す斜視図である。

【図6】同実施の形態１に係るベースプレートにバックフォイル片結合部とトップフォイル片結合部を配置した状態を示す斜視図である。

【図7】同実施の形態１に係る枠体に保持したベースプレートにバックフォイル片結合部とトップフォイル片結合部を配置した状態を示す斜視図である。

【図8】同実施の形態１に係るベースプレートにバックフォイル片結合部とトップフォイル片結合部を配置して固定した状態を示す概略拡大側面図である。

【図9】同実施の形態２に係るバックフォイル片を示す斜視図である。

【図10】同実施の形態２に係るトップフォイル片を示す斜視図である。

【図11】同実施の形態２に係るバックフォイル片の配置時の状態を示す斜視図である。

【図12】同実施の形態２に係るトップフォイル片の配置時の状態を示す斜視図である。

【図13】同実施の形態２に係るベースプレートにバックフォイル片とトップフォイル片を配置した状態を示す斜視図である。

【図14】同実施の形態２に係る枠体に保持したベースプレートにバックフォイル片結合部とトップフォイル片結合部を配置して位置決め治具を配置した状態を示す斜視図である。

【図15】同実施の形態２に係るバックフォイル片の変形例を示す斜視図である。

【図16】同実施の形態２に係るトップフォイル片の変形例を示す斜視図である。

【発明を実施するための形態】

【0024】

以下、本発明の実施の形態について説明する。
［発明の実施の形態１］
図１～図８には、本発明の実施の形態１を示す。

【0025】

まず、本実施の形態において製造するスラストフォイル軸受１０について説明する。本実施の形態のスラストフォイル軸受１０は、高速回転用の流体軸受の一種であり、図１に示すように、円環形状のベースプレート２０上にフォイル（金属製薄板）を有するものであり、さらに詳しくは、ベースプレート２０上にバックフォイル３０を配置し、さらにその上に、トップフォイル４０を配置して構成されている。

【0026】

このうち、ベースプレート２０は、バックフォイル３０及びトップフォイル４０を配置するベースとなる部材であり、図２に示すように、中央にシャフトを挿通する挿通孔２１を有する略円環形状に形成されている。また、バックフォイル３０を配置する配置部２２が形成されている。本実施の形態では、８枚のバックフォイルを配置するようになっており、８枚分の配置部２２が形成されている。なお、配置部２２は、製造するスラストフォイル軸受１０の構成に応じて、適宜の形状に構成されていれば良い。

【0027】

また、バックフォイル３０は、図１に示すように、略波板状のフォイルであるバンプフォイル部３２を備えた複数のバックフォイル片３１がベースプレート２０上に円環状に配置された構成となっている。また、バックフォイル片３１は、ベースプレート２０の中心から放射状に同じ回転方向に片持ちで固定されるバックフォイル固定部３３を有しており、本実施の形態では、図８に示すように、このバックフォイル固定部３３で、ベースプレート２０と後述するトップフォイル片４１のトップフォイル固定部４３に溶接で固定されるようになっている。

【0028】

また、トップフォイル４０は、図１に示すように、略平面形状の複数のトップフォイル片４１がベースプレート２０上及びバックフォイル３０上に円環状に配置された構成となっている。また、トップフォイル片４１は、ベースプレート２０の中心から放射状に同じ回転方向に片持ちで固定されるトップフォイル固定部４３を有しており、本実施の形態では、図８に示すように、このトップフォイル固定部４３で、ベースプレート２０とバックフォイル片３１のバックフォイル固定部３３に溶接で固定されるようになっている。

【0029】

また、本実施の形態では、バックフォイル片３１とトップフォイル片４１は逆向きとなるようにベースプレート２０に固定されている。すなわち、図８に示すように、１つのバックフォイル片３１の真上に配置されたトップフォイル片４１は、その隣にあるバックフォイル片３１と固定されている構成となっている。

【0030】

次に、このような構成のスラストフォイル軸受１０の製造工程について、図２～図７を用いて説明する。

【0031】

まず、図２に示す円環形状のベースプレート２０を、図７に示す枠体１内に配置する。この枠体１には、ベースプレート２０が丁度保持される形状の凹部が形成されており、また、ベースプレート２０を保持したときに、ベースプレート２０の中央の挿通孔２１と略同形状の孔部２が設けられている。また、ベースプレート２０の周縁部に複数設けられた位置決め孔２５の位置に相当する部位に孔が設けられており、ここにピン５を挿入してベースプレート２０を位置決めするようになっている。

【0032】

次に、バックフォイル３０を配置するバックフォイル位置決め工程を行う。

【0033】

本実施の形態では、図３に示すような、バックフォイル片３１を円環状に配置して、それらを繋ぎ合せたバックフォイル片結合部３０Ａを、図５に示すように、ベースプレート２０の上に配置する。バックフォイル片結合部３０Ａは、バックフォイル片３１同士を扇形状に繋ぐバックフォイル連結部を有しており、このバックフォイル連結部によって複数のバックフォイル片３１が１つに繋がって円環形状を呈するようになっている。

【0034】

具体的には、バックフォイル連結部として、バックフォイル片３１の内周側に棒状又は板状の内側突出部３８と、これが繋がる略円形状の中央部材３６を有している。また、バックフォイル連結部として、バックフォイル片３１の外周側にも棒状又は板状の外側突出部３９と、これが繋がる略円環形状の外側部材３４を有している。これらが一体となって、バックフォイル片結合部３０Ａを構成している。また、バックフォイル連結部は、バックフォイル片３１をベースプレート２０の所定位置に位置決めするバックフォイル位置決め部を兼ねており、位置決め孔部３５を前記したピン５に挿通させることで、ベースプレート２０及び枠部材１に位置決めするようになっている。

【0035】

また、中央部材３６にも孔部３７が複数設けられており、これらを後述するトップフォイル片結合部４０Ａに設けられた孔部４７と合わせてピン７を挿通させることで、バックフォイル片結合部３０Ａとトップフォイル片結合部４０Ａとを位置決めするようになっている。これらにより、バックフォイル位置決め工程を完了する。

【0036】

次に、トップフォイル４０を配置するトップフォイル位置決め工程を行う。

【0037】

本実施の形態では、図４に示すような、トップフォイル片４１を円環状に配置して、それらを繋ぎ合せたトップフォイル片結合部４０Ａを、図６に示すように、ベースプレート２０及びバックフォイル片結合部３０Ａの上に配置する。トップフォイル片結合部４０Ａは、トップフォイル片４１同士を扇形状に繋ぐトップフォイル連結部を有しており、このトップフォイル連結部によって複数のトップフォイル片４１が１つに繋がって円環形状を呈するようになっている。

【0038】

具体的には、トップフォイル連結部として、トップフォイル片４１の内周側に棒状又は板状の内側突出部４８と、これが繋がる略円形状の中央部材４６を有している。また、トップフォイル連結部として、トップフォイル片４１の外周側にも棒状又は板状の外側突出部４９と、これが繋がる略円環形状の外側部材４４を有している。これらが一体となって、トップフォイル片結合部４０Ａを構成している。また、トップフォイル連結部は、トップフォイル片４１をベースプレート２０の所定位置及びバックフォイル片結合部３０Ａの所定位置に位置決めするトップフォイル位置決め部を兼ねており、位置決め孔部４５を前記したピン５に挿通させることで、ベースプレート２０、バックフォイル片結合部３０Ａ及び枠部材１に位置決めするようになっている。

【0039】

また、中央部材４６にも孔部４７が複数設けられており、これらを前記したバックフォイル片結合部３０Ａに設けられた孔部３７と合わせてピン７を挿通させることで、バックフォイル片結合部３０Ａとトップフォイル片結合部４０Ａとを位置決めするようになっている。これらにより、トップフォイル位置決め工程を完了する。

【0040】

次に、ベースプレート２０とバックフォイル片結合部３０Ａとトップフォイル片結合部４０Ａとを固定する取付工程を行う。ここでは、ベースプレート２０の所定位置と、バックフォイル片３１のバックフォイル固定部３３と、トップフォイル片４１のトップフォイル固定部４３とを重ねて、溶接等で固定する。なお、確実に固定できれば接着等、溶接以外の固定方法を用いても良い。

【0041】

次に、バックフォイル片３１からバックフォイル位置決め部、トップフォイル片４１からトップフォイル位置決め部を切り離す位置決め部切離工程を行う。ここでは、トップフォイル片４１から内側突出部４８と外側突出部４９を切り離し、中央部材４６と外側部材４４を取り除く。同様に、バックフォイル片３１から内側突出部３８と外側突出部３９を切り離し、中央部材３６と外側部材３４を取り除く。これにより、図１に示すようなスラストフォイル軸受１０が完成する。

【0042】

なお、本実施の形態では、取付工程の前、例えばトップフォイル位置決め工程の前に、トップフォイル片４１の表面に、ＤＬＣ膜、チタンアルミナイトライド膜、二硫化モリブデン膜等の被膜を施す被膜処理工程を行うようになっている。トップフォイル片４１の表面にこのような被膜処理を行っておくと、液体での潤滑が困難なスラストフォイル軸受１０において、シャフトや軸受等の摩耗をより防止することができる。

【0043】

また、ここでは、被膜処理工程において、ベースプレート２０とバックフォイル片３１とトップフォイル片４１とを固定する部位、すなわちトップフォイル固定部４３を避けて被膜処理を行うようになっている。これは、例えば、取付工程におけるトップフォイル片４１とバックフォイル片３１やベースプレート２０との固定を溶接で行う場合、溶接箇所（トップフォイル固定部４３）の上部側にコート（被膜）を施したときに、下部側に被膜液が垂れてくる場合があり、その被膜液が溶接個所に垂れてきたときに、トップフォイル片４１とバックフォイル片３１やベースプレート２０との密着性を妨げることになり、溶接が安定せず固定不良として致命的欠陥になる場合が生じるためである。具体的には、トップフォイル固定部４３をマスクした状態にして、被膜処理（例えばスプレー等）を行うことで、トップフォイル固定部４３に被膜液が直接掛かったり、他の箇所をコートした被膜液が垂れてきてトップフォイル固定部４３に付いてしまったりすることを防止することができる。

【0044】

これにより、被膜がベースプレート２０とバックフォイル片３１とトップフォイル片４１との固定部に隙間を生じさせて、溶接等による固定の安定化を妨げることを防止することができる。

【0045】

また、本実施の形態ではトップフォイル片４１に被膜処理を行うようになっていたが、これに限るものではなく、バックフォイル片３１に被膜処理を行うようになっていても良い。そのときには、バックフォイル片３１のバックフォイル固定部３３に対しても、マスク等で被膜液が掛かったり垂れたりしないようにしておくことが好ましい。

【0046】

なお、バックフォイル片３１とトップフォイル片４１の双方に対して、バックフォイル固定部３３とトップフォイル固定部４３をマスクした状態で被膜処理を行うようになっていても良い。

【0047】

また、被覆処理工程は、取付工程の前であれば、必要な段階で適宜行うようになっていれば良い。

【0048】

以上のように、本実施の形態によれば、位置決め部を用いてバックフォイル３０及び／又はトップフォイル４０の位置決めを行ってから、ベースプレート２０とバックフォイル３０とトップフォイル４０とを固定することができるため、ベースプレート２０とバックフォイル３０とトップフォイル４０の位置決めを簡単かつ確実に行うことができ、効率よくスラストフォイル軸受１０の製造を行うことができる。

【0049】

また、本実施の形態によれば、バックフォイル連結部で結合された複数のバックフォイル片３１で構成された１又は複数のバックフォイル片結合部３０Ａをベースプレート２０の所定位置に位置決めして円環状に配置する、及び／又は、トップフォイル連結部で結合された複数のトップフォイル片４１で構成された１又は複数のトップフォイル片結合部４０Ａをベースプレート２０の所定位置かつバックフォイル３０の所定位置に位置決めして円環状に配置するようになっているため、位置決め工程を効率化して行うことができ、ベースプレート２０とバックフォイル３０とトップフォイル４０の位置決めをより簡単かつ確実に行うことができる。

【0050】

また、本実施の形態によれば、バックフォイル位置決め部がバックフォイル３０におけるベースプレート２０及びトップフォイル４０と固定されるバックフォイル固定部３３に付加されており、トップフォイル位置決め部がトップフォイル４０におけるベースプレート２０及びバックフォイル３０と固定されるトップフォイル固定部４３に付加されているため、位置決め部を切り離す必要がある場合には、固定されていて切り離し易い位置にそれぞれの位置決め部を付加して、より効率よくスラストフォイル軸受１０の製造を行うことができる。

【0051】

また、本実施の形態によれば、バックフォイル位置決め部３８，３９がバックフォイル３０から外周側及び内周側又は何れか一方に向けて突出した棒状又は板状の部材で構成されており、トップフォイル位置決め部４８，４９がトップフォイル４０から外周側及び内周側又は何れか一方に向けて突出した棒状又は板状の部材で構成されているため、位置決め部がそれぞれ形成しやすくかつ切り離し易いものとすることができ、より効率よくスラストフォイル軸受１０の製造を行うことができる。

【0052】

また、本実施の形態によれば、ベースプレート２０を保持する枠体１の所定位置にバックフォイル位置決め部及び／又はトップフォイル位置決め部を保持するようになっているため、ベースプレート２０に製品となった際に不必要な位置決め手段を形成することなく、ベースプレート２０とバックフォイル３０及び／又はトップフォイル４０を位置決めすることができる。

【0053】

また、本実施の形態によれば、取付工程の前にバックフォイル３０及び／又はトップフォイル４０の表面に被膜を施す被膜処理工程で、ベースプレート２０とバックフォイル３０及び／又はトップフォイル４０とを固定する部位（バックフォイル固定部３３及びトップフォイル固定部４３）を避けて被膜処理を行うことで、被膜がベースプレート２０とバックフォイル３０とトップフォイル４０との固定を妨げて固定部位の不安定化を引き起こすことを防止し、安定かつ確実な固定を行うことができる。
［発明の実施の形態２］
図９～図１６には、本発明の実施の形態２を示す。なお、製造後のスラストフォイル軸受１０の構成は、前記した実施の形態１と同様であるので、説明を省略する。

【0054】

以下、本実施の形態のスラストフォイル軸受１０の製造工程について、図９～図１４を用いて説明する。

【0055】

まず、前記した実施の形態と同様に、図２に示す円環形状のベースプレート２０を、図１４に示す枠体１内に配置する。この枠体１には、ベースプレート２０が丁度保持される形状の凹部が形成されており、また、ベースプレート２０を保持したときに、ベースプレート２０の中央の孔部２１と略同形状の孔部２が設けられている。また、ベースプレート２０の周縁部に複数設けられた位置決め孔２５の位置に相当する部位に孔が設けられており、ここにピン５を挿入してベースプレート２０を位置決めするようになっている。

【0056】

次に、バックフォイル３０を配置するバックフォイル位置決め工程を行う。

【0057】

本実施の形態では、図９に示すような、バックフォイル片３１Ｂを、図１１に示すような円環状に配置して、図１３に示すように、ベースプレート２０の上に配置する。

【0058】

具体的には、バックフォイル位置決め部として、バックフォイル片３１Ｂの内周側に棒状又は板状の内側突出部３８Ｂを有し、バックフォイル片３１Ｂの外周側に棒状又は板状の外側突出部３９Ｂを有している。このうち、外側突出部３９Ｂは、図１４に示すように、ベースプレート２０の周縁部の上に配置された略円環形状の位置決め治具３に、一定間隔で複数設けられたバックフォイル位置決め溝部４に嵌るように位置決めされるようになっている。また、位置決め治具３は、位置決め孔部８を前記したピン５に挿通させることで、ベースプレート２０及び枠体１に位置決めするようになっている。

【0059】

また、内側突出部３８Ｂは、図１４に示すように、中央側の位置決め治具９に一定間隔で設けられたバックフォイル位置決め溝部（図示省略）に嵌るように位置決めされるようになっている。また、この中央側の位置決め治具９に孔部が複数設けられており、これをピン７に挿通させることで、枠体１に対して位置決めするようになっている。これらにより、バックフォイル位置決め工程を完了する。

【0060】

次に、トップフォイル４０を配置するトップフォイル位置決め工程を行う。

【0061】

本実施の形態では、図１０に示すような、トップフォイル片４１Ｂを、図１２に示すような円環状に配置して、図１３に示すように、ベースプレート２０及びバックフォイル片３１Ｂの上に配置する。

【0062】

具体的には、トップフォイル位置決め部として、トップフォイル片４１Ｂの内周側に棒状又は板状の内側突出部４８Ｂを有し、トップフォイル片４１Ｂの外周側に棒状又は板状の外側突出部４９Ｂを有している。このうち、外側突出部４９Ｂは、図１４に示すように、ベースプレート２０の周縁部の上に配置された略円環形状の位置決め治具３に、一定間隔で複数設けられたトップフォイル位置決め溝部６に嵌るように位置決めされるようになっている。

【0063】

また、内側突出部４８Ｂは、図１４に示すように、中央側の位置決め治具９に一定間隔で設けられたトップフォイル位置決め溝部（図示省略）に嵌るように位置決めされるようになっている。これらにより、トップフォイル位置決め工程を完了する。

【0064】

なお、本実施の形態では、バックフォイル片３１Ｂの外側突出部３９Ｂと内側突出部３８Ｂの突出位置と、トップフォイル片４１Ｂの外側突出部４９Ｂと内側突出部４８Ｂの突出位置は互いに異なる位置となるように形成されており、異なる位置に設けられたバックフォイル位置決め溝部４とトップフォイル位置決め溝部６（それぞれ内側の位置決め溝部は図示省略）に嵌め込んで位置決めするようになっていたが、これに限るものではなく、例えば、バックフォイル片３１Ｂの外側突出部３９Ｂと内側突出部３８Ｂの突出位置と、トップフォイル片４１Ｂの外側突出部４９Ｂと内側突出部４８Ｂの突出位置が上下で重なる位置に形成されており、これらが同じ位置決め溝部に嵌るようになっていても良い。

【0065】

次に、ベースプレート２０とバックフォイル片３０Ｂとトップフォイル片４０Ｂとを固定する取付工程を行う。ここでは、ベースプレート２０の所定位置と、バックフォイル片３１Ｂのバックフォイル固定部３３Ｂと、トップフォイル片４１Ｂのトップフォイル固定部４３Ｂとを重ねて、溶接等で固定する。なお、確実に固定できれば接着等、溶接以外の固定方法を用いても良い。

【0066】

次に、バックフォイル片３１Ｂからバックフォイル位置決め部、トップフォイル片４１Ｂからトップフォイル位置決め部を切り離す位置決め部切離工程を行う。ここでは、トップフォイル片４１Ｂから内周側突出部４８Ｂと外周側突出部４９Ｂを切り離し、同様に、バックフォイル片３１Ｂから内周側突出部３８Ｂと外周側突出部３９Ｂを切り離し、位置決め治具３，９と外側部材４４を取り除く。このとき、本実施の形態では、内周側突出部３８Ｂ，４８Ｂと、外周側突出部３９Ｂ，４９Ｂがそれぞれ、斜め上方に突出するように形成されていてベースプレート２０に当接しないようになっているため、ベースプレート２０に損傷を与えずにこれらを切断することができるようになっている。これにより、図１に示すようなスラストフォイル軸受１０が完成する。

【0067】

なお、バックフォイル片とトップフォイル片の形状は、前記したものに限るものではなく、例えば、図１５，１６に示すバックフォイル片３１Ｃ及びトップフォイル片４１Ｃのように、バックフォイル片３１Ｃから内周側及び外周側にフォイルと平行に突出してその後垂直に折れ曲がる内周側突出部３８Ｃ、外側突出部３９Ｃ、トップフォイル片４１Ｃから内周側及び外周側にフォイルと平行に突出してその後垂直に折れ曲がる内周側突出部４８Ｃ、外周側突出部４９Ｃを有するように形成されていても良い。

【0068】

また、本実施の形態でも、取付工程の前、例えばトップフォイル位置決め工程の前に、トップフォイル片４１Ｂ，４１Ｃの表面に、ＤＬＣ膜、チタンアルミナイトライド膜、二硫化モリブデン膜等の被膜を施す被膜処理工程を行うようになっていても良い。また、このときも、ベースプレート２０とバックフォイル片３１Ｂ，３１Ｃとトップフォイル片４１Ｂ，４１Ｃとを固定する部位、すなわちトップフォイル固定部４３Ｂ，４３Ｃを避けて被膜処理を行うようになっていると良い。これは、例えば、取付工程におけるトップフォイル片４１Ｂ，４１Ｃとバックフォイル片３１Ｂ，３１Ｃやベースプレート２０との固定を溶接で行う場合、溶接箇所（トップフォイル固定部４３Ｂ，４３Ｃ）の上部側にコート（被膜）を施したときに、下部側に被膜液が垂れてくる場合があり、その被膜液が溶接個所に垂れてきたときに、トップフォイル片４１Ｂ，４１Ｃとバックフォイル片３１Ｂ，３１Ｃやベースプレート２０との密着性を妨げることになり、溶接が安定せず固定不良として致命的欠陥になる場合が生じるためである。具体的には、トップフォイル固定部４３Ｂ，４３Ｃをマスクした状態にして、被膜処理（例えばスプレー等）を行うことで、トップフォイル固定部４３Ｂに被膜液が直接掛かったり、他の箇所をコートした被膜液が垂れてきてトップフォイル固定部４３Ｂ，４３Ｃに付いてしまったりすることを防止することができる。

【0069】

これにより、被膜がベースプレート２０とバックフォイル片３１Ｂ，３１Ｃとトップフォイル片４１Ｂ，４１Ｃとの固定部に隙間を生じさせて、溶接等による固定の安定化を妨げることを防止することができる。

【0070】

また、被膜処理はトップフォイル片４１Ｂ，４１Ｃだけでなくバックフォイル片３１Ｂ，３１Ｃにも行うようになっていても良いし、バックフォイル片３１Ｂ，３１Ｃのみに被膜処理を行うようになっていても良い。そのときには、バックフォイル片３１Ｂ，３１Ｃのバックフォイル固定部３３Ｂ，３３Ｃに対しても、マスク等で被膜液が掛かったり垂れたりしないようにしておくことが好ましい。

【0071】

また、被覆処理工程は、取付工程の前であれば、必要な段階で適宜行うようになっていれば良い。

【0072】

以上のように、本実施の形態によれば、位置決め部を用いてバックフォイル３０及び／又はトップフォイル４０の位置決めを行ってから、ベースプレート２０とバックフォイル３０とトップフォイル４０とを固定することができるため、ベースプレート２０とバックフォイル３０とトップフォイル４０の位置決めを簡単かつ確実に行うことができ、効率よくスラストフォイル軸受１０の製造を行うことができる。

【0073】

また、本実施の形態によれば、バックフォイル片３１Ｂそれぞれにバックフォイル位置決め部３８Ｂ，３９Ｂが付加されており、複数のバックフォイル片３１Ｂをバックフォイル位置決め部３８Ｂ，３９Ｂを用いてベースプレート２０の所定位置に位置決めして円環状に配置する、及び／又は、トップフォイル片４１Ｂそれぞれにトップフォイル位置決め部４８Ｂ，４９Ｂが付加されており、複数のトップフォイル片４１Ｂをトップフォイル位置決め部４８Ｂ，４９Ｂを用いてベースプレート２０の所定位置かつバックフォイル３０の所定位置に位置決めして円環状に配置するようになっているため、位置決め工程を確実に行うことができ、ベースプレート２０とバックフォイル３０とトップフォイル４０の位置決めを簡単かつより確実に行うことができる。

【0074】

また、本実施の形態によれば、バックフォイル位置決め部３８Ｂ，３９Ｂがバックフォイル３０から外周側及び内周側又は何れか一方に向けて突出した棒状又は板状の部材で構成されており、トップフォイル位置決め部４８Ｂ，４９Ｂがトップフォイル４０から外周側及び内周側又は何れか一方に向けて突出した棒状又は板状の部材で構成されているため、位置決め部がそれぞれ形成しやすくかつ切り離し易いものとすることができ、より効率よくスラストフォイル軸受１０の製造を行うことができる。

【0075】

また、本実施の形態によれば、バックフォイル位置決め部３８Ｂ，３９Ｂがバックフォイル片３１Ｂから斜め上方に突出するように構成され、トップフォイル位置決め部４８Ｂ，４９Ｂがトップフォイル片４１Ｂから斜め上方に突出するように構成されているため、それぞれの位置決め部を切り離すときに切断手段をベースプレート２０と異なる方向に向けて切り離すことができ、ベースプレート２０やバックフォイル３０やトップフォイル４０を傷付け難い状態で切り離すことができる。

【0076】

また、本実施の形態によれば、ベースプレート２０を保持する枠体１の所定位置にバックフォイル位置決め部及び／又はトップフォイル位置決め部を保持するようになっているため、ベースプレート２０に製品となった際に不必要な位置決め手段を形成することなく、ベースプレート２０とバックフォイル３０及び／又はトップフォイル４０を位置決めすることができる。

【0077】

また、本実施の形態によれば、取付工程の前にバックフォイル３０及び／又はトップフォイル４０の表面に被膜を施す被膜処理工程で、ベースプレート２０とバックフォイル３０及び／又はトップフォイル４０とを固定する部位（バックフォイル固定部３３Ｂ，３３Ｃ及びトップフォイル固定部４３Ｂ，４３Ｃ）を避けて被膜処理を行うことで、被膜がベースプレート２０とバックフォイル３０とトップフォイル４０との固定を妨げて固定部位の不安定化を引き起こすことを防止し、安定かつ確実な固定を行うことができる。

【0078】

なお、本発明は、前記した各実施の形態のようなものに限らず、他の構成、他の使用状況にも適用できる。

【0079】

例えば、前記した実施の形態１，２では、各フォイルにおけるフォイル片は８枚のものを例にして説明したが、これに限るものではなく、必要に応じて適宜の数のフォイル片で形成するようになっていても良い。

【0080】

また、前記した実施の形態１，２では、バックフォイル位置決め部とトップフォイル位置決め部がそれぞれ内周側と外周側の双方に突出するようになっていたが、これ限るものではなく、内周側のみ、又は、外周側のみに突出形成され、内周側のみで位置決め、外周側のみで位置決めされるようになっていても良い。

【0081】

また、前記した実施の形態１では、バックフォイル片，トップフォイル片は中央部材と外側部材を介して連結されるようになっていたが、これに限るものではなく、バックフォイル片同士，トップフォイル片同士を直接連結する連結部を有していても良い。

【0082】

また、位置決め部としては、前記した実施の形態１，２のような内周側や外周側に突出する部材によるものに限るものではなく、その他の構成で位置決めされるようになっていても良い。

【0083】

また、前記した実施の形態１，２では、位置決め部はバックフォイル側とトップフォイル側に形成されていたが、これに限るものではなく、位置決め部が枠体側のみに形成されていて、バックフォイル片とトップフォイル片の位置決めがなされるようになっていいても良い。

【符号の説明】

【0084】

１ 枠体
２ 孔部
３ 位置決め治具
４ バックフォイル位置決め溝部
５，７ ピン
６ トップフォイル位置決め溝部
８ 位置決め孔部
９ 位置決め治具
１０ スラストフォイル軸受
２０ ベースプレート
２１ 挿通孔
２２ 配置部
２５ 位置決め孔
３０ バックフォイル
３０Ａ バックフォイル片結合部
３１，３１Ｂ，３１Ｃ バックフォイル片
３２，３２Ｂ，３２Ｃ バンプフォイル部
３３，３３Ｂ，３３Ｃ バックフォイル固定部
３４ 外側部材
３５ 位置決め孔部
３６ 中央部材
３７ 孔部
３８，３８Ｂ，３８Ｃ 内側突出部
３９，３９Ｂ，３９Ｃ 外側突出部
４０ トップフォイル
４０Ａ トップフォイル片結合部
４１，４１Ｂ，４１Ｃ トップフォイル片
４３，４３Ｂ，４３Ｃ トップフォイル固定部
４４ 外側部材
４５ 位置決め孔部
４６ 中央部材
４７ 孔部
４８，４８Ｂ，４８Ｃ 内側突出部
４９，４９Ｂ，４９Ｃ 外側突出部

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】