(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132035
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】踵刺激装置
(51)【国際特許分類】
A61H 23/02 20060101AFI20230914BHJP
【FI】
A61H23/02 355
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022037126
(22)【出願日】2022-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】304030475
【氏名又は名称】株式会社小沢医科器械
(74)【代理人】
【識別番号】100187838
【弁理士】
【氏名又は名称】黒住 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100220892
【弁理士】
【氏名又は名称】舘 佳耶
(74)【代理人】
【識別番号】100205589
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 和将
(71)【出願人】
【識別番号】519389373
【氏名又は名称】松岡 順治
(74)【代理人】
【識別番号】100187838
【弁理士】
【氏名又は名称】黒住 智彦
(72)【発明者】
【氏名】小澤 直人
【テーマコード(参考)】
4C074
【Fターム(参考)】
4C074AA03
4C074BB10
4C074DD01
4C074EE01
4C074GG08
(57)【要約】
【課題】
ランニング等の運動を行わなくても、ランニング等を行っているときと同様の刺激を踵に与えることのできるだけでなく、ハンマによる打撃力を強くしても、大きな音を生じない踵刺激装置を提供する。
【解決手段】
その上面が足載せ面とされた筐体10と、筐体10の足載せ面における踵を載せる部分に設けられた打撃穴11aを通じて下側から踵を打撃するハンマ20と、筐体10内に設けられ、ハンマ20を上下方向に振動させるハンマ振動機構30と、を備えた踵刺激装置において、ハンマ振動機構30を、上下方向に移動可能な昇降部材50に支持するとともに、昇降部材50を、ダンパ部材40を介して筐体10に取り付けた。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
その上面が足載せ面とされた筐体と、
筐体の足載せ面における踵を載せる部分に設けられた打撃穴を通じて下側から踵を打撃するハンマと、
筐体内に設けられ、ハンマを上下方向に振動させるハンマ振動機構と、
を備えた踵刺激装置であって、
ハンマ振動機構が、上下方向に移動可能な昇降部材に支持されるとともに、
昇降部材が、ダンパ部材を介して筐体に取り付けられた
ことを特徴とする踵刺激装置。
【請求項2】
ハンマ振動機構が、
回転力を出力する回転駆動装置と、
回転駆動装置により生じた回転運動を上下運動に変換する運動方向変換機構と、
で構成された請求項1記載の踵刺激装置。
【請求項3】
運動方向変換機構が、
回転駆動装置の出力軸とともに回転する回転部材と、
ハンマと回転部材との間に介在され、一端側がハンマに軸支されて、他端側が回転部材における回転中心から外れた箇所に軸支された連結部材と、
で構成された請求項1記載の踵刺激装置。
【請求項4】
回転駆動装置が電気モータとされた請求項2又は3記載の踵刺激装置。
【請求項5】
ダンパ部材が、
筐体の内底面から上向きに立設され、上端側が昇降部材に取り付けられた伸縮部材と、
伸縮部材に外挿又は内挿された弾性部材と
で構成された請求項1~4いずれか記載の踵刺激装置。
【請求項6】
ダンパ部材における弾性部材の弾性力を調節するための弾性力調節手段を備えた請求項5記載の踵刺激装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、踵を打撃することによって踵に刺激を与える踵刺激装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アスリートの中には、自身が行っている競技に必要のない余分な筋肉がつくことを嫌って、ランニングの代わりに、自転車によるトレーニングを行う者もいる。しかし、近年の研究では、ランニングを殆ど行わずに自転車によるトレーニングばかりを行っている人は、ランニングを継続的に行っている人よりも骨量が少なくなることが報告されている。その理由としては、自転車によるトレーニングばかりを行っていると、骨量を増やすために必要な衝撃が骨に加わらず、骨芽細胞(骨を作る細胞)の数を減らす「スクレロスチン」と呼ばれる物質が大量に発生するようになることが指摘されている。骨量の減少を防ぐためには、ランニング等、踵に刺激が加わる運動を日常的に行うことが効果的であると言われている。
【0003】
ところが、踵に刺激を与える運動を日常的に行うことは、必ずしも容易ではない。というのも、上記のアスリートにとって、ランニング等を行うことは、競技能力を低下させることにも繋がりかねないし、かといって、効率的に踵に刺激を与えることのできる運動は、ランニング以外には特に見当たらないからである。また、アスリートではない一般人であっても、忙しい人や、足腰が弱い人にとっては、ランニングを日常的に行うことは難しい。このようにランニングを日常的に行うことができない人が踵に刺激を与えるためにできることと言えば、金槌等で踵を叩くくらいである。しかし、金槌等で踵を叩く作業は、単調であるし、億劫になり勝ちである。
【0004】
ところで、これまでには、足裏を刺激するための突起を備えた履物(例えば特許文献1の第1図を参照。)や、靴の中に収容して使用する器具であって足裏を刺激するための突起を備えたもの(例えば、特許文献2の第1図及び第2図を参照。)が提案されている。これらの履物や器具を使用することによって、「歩行」という日常動作の中で足裏に刺激を与えることができるようになり、健康を促進することが可能になるとされている。しかし、この種の履物や器具は、足裏に指圧様の刺激を与えることで、血行を良好にすることを目的としたものであり、骨量の減少の抑制を目的としたものとはなっていない。このため、この種の履物や器具を用いても、骨量の減少を抑制できるかについては疑義がある。そもそも、これらの履物や器具を用いたとしても、足裏に刺激を与えるためには、歩行やランニング等の運動を行う必要がある。
【0005】
このような実状に鑑みて、本出願人は、特許文献3の
図2に示す踵刺激装置を開発した。この踵刺激装置は、足を載せる天板11と、天板11における踵を載せる部分に設けられた打撃穴11aを通じて踵を打撃するハンマ20と、ハンマ20を上下動させるためのハンマ振動機構30とを備えている。この踵刺激装置では、天板11の上側に足を載せた状態でハンマ振動機構30を駆動すれば、ハンマ20によって踵が打撃される。このため、椅子に座った状態や、ベッドに寝た状態であっても、ランニング等を行っているときと同様の刺激を踵に与えることが可能である。しかし、この踵刺激装置は、ハンマ20の打撃力を強くすると、大きな音を発生しやすいという課題を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭55-001859号公報
【特許文献2】実開平02-010838号公報
【特許文献3】特開2021-069668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために為されたものであり、ランニング等の運動を行わなくても、ランニング等を行っているときと同様の刺激を踵に与えることのできるだけでなく、ハンマによる打撃力を強くしても、大きな音を生じない踵刺激装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、
その上面が足載せ面とされた筐体と、
筐体の足載せ面における踵を載せる部分に設けられた打撃穴を通じて下側から踵を打撃するハンマと、
筐体内に設けられ、ハンマを上下方向に振動させるハンマ振動機構と、
を備えた踵刺激装置であって、
ハンマ振動機構が、上下方向に移動可能な昇降部材に支持されるとともに、
昇降部材が、ダンパ部材を介して筐体に取り付けられた
ことを特徴とする踵刺激装置
を提供することによって解決される。
【0009】
本発明の踵刺激装置では、足載せ面に足を載せた状態でハンマを振動すれば、ハンマによって踵が打撃される。このため、特許文献3の踵刺激装置と同様、椅子に座った状態や、ベッドに寝た状態であっても、ランニング等を行っているときと同様の刺激を踵に与えることが可能である。また、本発明の踵刺激装置は、ダンパ部材を備えているため、ハンマの振動に伴う騒音の発生を抑えることができる。このため、ハンマによる打撃力を強めることができる。加えて、踵に当たったハンマが踵に深く食い込んでしまうと、踵刺激装置の使用者が強い痛みを感じるおそれがあるところ、本発明の踵刺激装置では、踵に当たった後のハンマによる衝撃をダンパ部材で吸収することができる。このため、踵刺激装置の使用者が強い痛みを感じにくくすることもできる。また、ハンマによって踵に加えられる刺激を、ランニング等を行っているときに踵に加えられる刺激と同程度とすることもできる。したがって、骨量の減少を効果的に抑えることができる。
【0010】
本発明の踵刺激装置において、ハンマ振動機構は、ハンマを上下方向に振動できるものであれば特に限定されないが、回転力を出力する回転駆動装置と、回転駆動装置により生じた回転運動を上下運動に変換する運動方向変換機構とで構成することが好ましい。このときの回転駆動機構としては、電気モータを用いることが好適である。また、運動方向変換機構としては、回転駆動装置の出力軸とともに回転する回転部材と、ハンマと回転部材との間に介在され、一端側がハンマに軸支されて、他端側が回転部材における回転中心から外れた箇所に軸支された連結部材とで構成されたものを用いることが好適である。これにより、シンプルな機構でハンマ振動機構を実現することができる。このため、踵刺激装置を、動作の信頼性が高いものとしながらも、その製造コストを抑えることが可能になる。
【0011】
ダンパ部材としては、通常、バネ材やゴム等の弾性部材を用いたものが用いられる。例えば、ダンパ部材を、筐体の内底面から上向きに立設され、上端側が昇降部材に取り付けられた伸縮部材と、伸縮部材に外挿又は内挿された弾性部材とで構成されたものを用いることができる。これにより、シンプルな機構でダンパ部材を実現することができる。このため、踵刺激装置を、動作の信頼性が高いものとしながらも、その製造コストを抑えることが可能になる。弾性部材には、ガススプリング等、流体圧により弾性力を発揮するものを使用することもできる。
【0012】
本発明の踵刺激装置において、上記の弾性部材を用いる場合には、ダンパ部材における弾性部材の弾性力を調節するための弾性力調節手段を設けることが好ましい。というのも、同じ刺激であっても、踵刺激装置の使用者によっては強く感じたり弱く感じたりする可能性がある。このため、ハンマによる刺激は、踵刺激装置の使用者の好み等に応じて調節できるようにすることが好ましいところ、ダンパ部材の弾性力を調節することで、ハンマから踵に加えられる刺激を調整することが可能になるからである。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明によって、ランニング等の運動を行わなくても、ランニング等を行っているときと同様の刺激を踵に与えることのできるだけでなく、ハンマによる打撃力を強くしても、大きな音を生じない踵刺激装置を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第一実施形態の踵刺激装置を示した一部破断斜視図である。
【
図2】第一実施形態の踵刺激装置におけるA部(
図1)を拡大した状態を示した一部破断斜視図である。
【
図3】第一実施形態の踵刺激装置におけるハンマ及びハンマ振動機構の周辺を前後方向に垂直な平面で切断した断面図である。
【
図4】第一実施形態の踵刺激装置におけるハンマ及びハンマ振動機構の動作を説明する図であって、各状態におけるハンマ及びハンマ振動機構の周辺を前後方向に垂直な平面で切断した断面図である。
【
図5】第二実施形態の踵刺激装置におけるハンマ及びハンマ振動機構の周辺を前後方向に垂直な平面で切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の踵刺激装置の好適な実施形態について、図面を用いてより具体的に説明する。本発明の踵刺激装置は、踵を打撃することによって踵に刺激を与えるものである。以下においては、2つの実施形態(第一実施形態及び第二実施形態)を例に挙げて本発明の踵刺激装置を説明するが、本発明の踵刺激装置の技術的範囲は、これらの実施形態に限定されない。本発明の踵刺激装置は、発明の趣旨を損なわない限り、適宜変更を施すことができる。
【0016】
1.第一実施形態の踵刺激装置
まず、第一実施形態の踵刺激装置について説明する。
図1は、第一実施形態の踵刺激装置を示した一部破断斜視図である。
図2は、第一実施形態の踵刺激装置におけるA部(
図1)を拡大した状態を示した一部破断斜視図である。
図3は、第一実施形態の踵刺激装置におけるハンマ20及びハンマ振動機構30の周辺を前後方向に垂直な平面で切断した断面図である。
【0017】
第一実施形態の踵刺激装置は、
図1に示すように、筐体10の内部に、ハンマ20と、ハンマ振動機構30と、昇降部材50と、ダンパ部材40とを収容したものとなっている。この踵刺激装置は、通常、床面等の設置面に置いた状態で使用される。筐体10の足載せ面(天板11の上面)に足を載せ、ハンマ20を振動させると、使用者の踵がハンマ20によって打撃される。これにより、ランニング等の運動を行わなくても、ランニング等を行っているときと同様の刺激を踵に与えることが可能となる。例えば、椅子に座った状態や、ベッドに寝た状態であっても、踵に刺激を与えることができる。この踵刺激装置で踵を打撃することによって、骨量の減少を抑える効果が期待される。
【0018】
筐体10は、ハンマ20等の各部材を収容できるものであれば、その形態を特に限定されない。第一実施形態の踵刺激装置では、筐体10を、天板11と、複数枚(
図1の例では4枚)の側板12と、底板13とで構成している。この筐体10は、床面等に設置される。筐体10は、床面等に直置きしてもよいが、その下側(底板13の下面側)に脚部を設けることで、設置安定性を高めることができる。
【0019】
筐体10における天板11は、踵刺激装置の使用者が足を載せるための部分となっている。
図1の矢印A
1側が爪先側となるように、天板11の上面に左右の足を載せる。天板11における、踵を載せる箇所には、打撃穴11aが設けられている。後述するハンマ20は、この打撃穴11aを通じて、筐体10の内側(天板11の下側)から使用者の踵を打撃する。この打撃穴11aは、左足の踵を打撃するハンマ20用のものと、右足の踵を打撃するハンマ20用のものとで、左右一対に設けられている。
【0020】
図1に示す例では、打撃穴11aが外部に露出した状態となっているが、天板11の上面に緩衝シート(図示省略)を貼り、その緩衝シートで打撃穴11aを覆ってもよい。これにより、踵刺激装置の見た目を良くすることができるだけでなく、打撃穴11aから筐体10の内部に埃等が侵入しないようにすることもできる。加えて、ハンマ20が踵を直接的に打撃しないようにして、踵に痛みを生じないようにすることもできる。緩衝シートとしては、ゴムシート等を好適に用いることができる。
【0021】
図2及び
図3に示すように、天板11における打撃穴11aの下側に位置する部分には、ハンマガイド11bを設けている。このハンマガイド11bは、ハンマ20が上下方向に振動するように案内するためのものとなっている。第一実施形態の踵刺激装置においては、ハンマガイド11bを、打撃穴11aを囲むようにスリーブ状に設けている。
【0022】
ハンマ20は、天板11に載せられた足の踵を下側から打撃するためのものとなっている。ハンマ20は、左足の踵用のものと、右足の踵用のものとで、左右一対に設けられている。それぞれのハンマ20は、ある程度大きな質量を有している。ハンマ20の形態は、特に限定されない。しかし、ハンマ20を角張った形態とすると、踵刺激装置の使用者が痛みを感じるおそれがある。このため、第一実施形態の踵刺激装置では、それぞれのハンマ20を、上面(踵を打撃する麺)が丸みを帯びた円盤状に形成している。ハンマ20の素材としては、金属、樹脂、ゴム又は木等が例示される。
【0023】
ハンマ振動機構30は、天板11の下側空間(筐体10の内部)でハンマ20を上下方向(
図2における矢印A
3の方向)に振動させるためのものとなっている。ハンマ振動機構30は、左足用のものと右足用のものとで共通化してもよいが、第一実施形態の踵刺激装置では、
図1に示すように、左足用のものと右足用のものとを別々に設けている。このため、左足用のハンマ20の振動と、右足用のハンマ20の振動とを独立して制御することが可能となっている。それぞれのハンマ振動機構30は、筐体10の内部における、打撃穴11aの下側付近に配される。
【0024】
ハンマ振動機構30は、ハンマ20を上下方向に振動できるものであれば特に限定されない。第一実施形態の踵刺激装置においては、
図2に示すように、ハンマ振動機構30を、回転駆動装置31と、運動変換機構32とで構成している。
【0025】
回転駆動装置31は、その出力軸31aを中心線L
1回りに回転させる(
図2における矢印A
2を参照。)ものとなっている。回転駆動装置31は、通常、電気モータとされる。回転駆動装置31と出力軸31との間には、通常、ギアボックス(図示省略)が設けられる。このギアボックスによって、中心線L
1回りのトルクが増大されるようになっている。
【0026】
運動方向変換機構32は、回転駆動装置31により生じた回転運動(出力軸31aの回転運動)を上下運動に変換するものとなっている。これにより、ハンマ20が上下方向(
図2における矢印A
3を参照。)に振動される。運動方向変換機構32は、リンク機構等を採用することもできるが、第一実施形態の踵刺激装置においては、
図2に示すように、回転部材32aと、連結部材32bとで構成している。
【0027】
回転部材32aは、回転駆動装置31の出力軸31aと一体的に固定されている。このため、出力軸31aが中心線L1回りに回転すると、この回転部材32aも中心線L1回りに回転するようになっている。第一実施形態の踵刺激装置においては、回転部材32aを円盤状に形成しており、出力軸31aに鍔状に取り付けている。
【0028】
連結部材32bは、
図3に示すように、ハンマ20と回転部材32aとの間に介在され、ハンマ20と回転部材32aとを連結する。連結部材32bの一端側(上端側)は、軸線L
3において、ハンマ20の連結基部20aに対して軸支され、連結部材32bの他端側(下端側)は、軸線L
2において、回転部材32aに対して軸支されている。連結部材32bを軸支する軸線L
2は、回転部材32aの中心線L
1から外れた箇所に配されている。
【0029】
図4は、第一実施形態の踵刺激装置におけるハンマ20及びハンマ振動機構30の動作を説明する図であって、各状態におけるハンマ20及びハンマ振動機構30の周辺を前後方向に垂直な平面で切断した断面図である。回転駆動装置31を回転駆動し、出力軸31a及び回転部材32aを中心線L
1回りに矢印A
2の向きに回転させると、
図4(a)~(d)に示すように、軸線L
3(連結部材32bの下端部)も、中心線L
1回りに矢印A
2の向きに回転する。
【0030】
このため、
図4(a)から
図4(b)を経て
図4(c)の状態となる区間では、連結部材32bが、回転部材32aによって下側に引っ張られる。このため、ハンマ20がハンマガイド11b内を下側に移動する。また、
図4(c)から
図4(d)を経て再び
図4(a)の状態となる区間では、連結部材32bが、回転部材32aによって上側に押し上げられる。このため、ハンマ20がハンマガイド11b内を上側に移動する。以下、このサイクルを繰り返すことによって、ハンマ20は、上下方向に振動を繰り返す。
【0031】
ハンマ20が上死点位置(
図4(a)の位置)にあるときには、ハンマ20の上面が打撃穴11aよりも上側に突出した状態となる。これにより、踵刺激装置の使用者の踵がハンマ20によって打撃される。踵の打撃を行う周期は、回転駆動装置31の回転速度を変化させることによって、調節することができる。第一実施形態の踵刺激装置では、コントローラ(図示省略)によって回転駆動装置31の回転速度(踵の打撃を行う周期)を調節することができるようにしている。コントローラは、筐体10(
図1)に一体的に設けてもよいし、筐体10とは別個に設けてもよい。コントローラを筐体10とは別個に設ける場合、そのコントローラは、筐体10内に収容された制御手段(図示省略)に対し、有線又は無線により接続される。
【0032】
以上で述べたハンマ20及びハンマ振動機構30によって、踵刺激装置の使用者の踵を強く打撃することができる。このため、骨量の減少をより効果的に抑えることが期待される。ただし、ハンマ20の打撃力を強くしたり、ハンマ20による踵の打撃の周期を短くしたりすると、大きな騒音が発生するおそれがある。したがって、病院やリハビリ施設等、静寂さが要求される環境では、使用しにくくなるおそれがある。この点、本発明の踵刺激装置では、昇降部材50とダンパ部材40によって、大きな騒音が生じないようにしている。
【0033】
すなわち、上述したハンマ振動機構30を、筐体10に対して直接的に固定するのではなく、
図2に示すように、筐体10内に上下方向に移動可能(同図における矢印A
4を参照。)な状態で設けた昇降部材50に対してハンマ振動機構30を固定するとともに、その昇降部材50を、ダンパ部材40を介して筐体10に取り付けている。ハンマ振動機構30には、ハンマ20が踵を打撃した際の反力が伝わるだけでなく、回転駆動装置31自体も振動するところ、ハンマ20の反力や回転駆動装置31の振動等をダンパ部材40で吸収することで、騒音を抑えることが可能となっている。また、踵に当たったハンマ20が踵に深く食い込みすぎないようにすることで、踵刺激装置の使用者が痛みを感じにくくすることも可能となっている。
【0034】
第一実施形態の踵刺激装置では、昇降部材50を板状に形成しており、この昇降部材50の上面に、上記のハンマ振動機構30を固定している。また、ダンパ部材40は、筐体10の内底面(底板13の上面)から上向きに立設しており、ダンパ部材40の上端部に昇降部材50を取り付けている。ダンパ部材40は、1つの昇降部材50に対して少なくとも1箇所に設けていればよい。1つの昇降部材50に対して1箇所のみに設ける場合には、昇降部材50における、ハンマ20からの反力を最も受けるハンマ20の真下にダンパ部材40を設けるか、昇降部材50の重心(ハンマ振動機構30の重量も含めた重心)にダンパ部材40を設けるとよい。とは言え、昇降部材50をダンパ部材40でバランスよく支持することを考慮すると、1つの昇降部材50に対して複数箇所に設けることが好ましい。第一実施形態の踵刺激装置では、矩形状を為す昇降部材50の四隅部の計4箇所にダンパ部材40を設けている。
【0035】
ダンパ部材40は、振動を吸収する機能を有するものであれば、特に限定されない。第一実施形態の踵刺激装置では、
図3に示すように、それぞれのダンパ部材40を、伸縮部材41と、弾性部材42とで構成している。
【0036】
伸縮部材41は、上下方向に伸縮可能な柱状の部材となっている。第一実施形態の踵刺激装置では、伸縮部材41を、柱状部材41aと筒状部材41bとで構成している。柱状部材41aは、筐体10の内底面(底板13の上面)に固定され、筒状部材41bは、昇降部材50の下面に固定されている。柱状部材41aの上端側は、筒状部材41bの下端側から筒状部材41b内に挿入された状態となっている。柱状部材41aに対して筒状部材41bが上下方向にスライドすることで、伸縮部材41が上下方向に伸縮することができるようになっている。
【0037】
一方、弾性部材42は、伸縮部材41の伸縮動作に抵抗を付与するものとなっている。弾性部材42は、底板13と昇降部材50との間に介在されている。弾性部材42の下端部は、底板13に当接しており、弾性部材42の上端部は、昇降部材50に当接している。この弾性部材42の弾性力によって、ハンマ振動機構30から昇降部材50に伝わった振動が吸収される。第一実施形態の踵刺激装置では、弾性部材42として、コイルバネを用いている。このコイルバネを伸縮部材41に外挿している。これにより、シンプルな機構でダンパ部材40を実現することができる。このため、踵刺激装置を、動作の信頼性が高いものとしながらも、その製造コストを抑えることができる。
【0038】
このように、第一実施形態の踵刺激装置は、ハンマ振動機構30等が生じた振動を、昇降部材50及びダンパ部材40によって吸収することで、騒音を抑えることが可能なものとなっている。このため、病院やリハビリ施設等、静寂さが要求される施設等でも、踵刺激装置を使用することが可能である。第一実施形態の踵刺激装置には、さらなる騒音対策を施すこともできる。例えば、筐体10の内面に、吸音材を貼ったり、筐体10の脚部をゴム製のものとしたりすることもできる。
【0039】
2.第二実施形態の踵刺激装置
続いて、第二実施形態の踵刺激装置について説明する。第二実施形態の踵刺激装置については、上述した第一実施形態の踵刺激装置と異なる部分に絞って説明する。第二実施形態の踵刺激装置で特に言及しない構成については、第一実施形態の踵刺激装置と同様の構成を採用することができる。
図5は、第二実施形態の踵刺激装置におけるハンマ20及びハンマ振動機構30の周辺を前後方向に垂直な平面で切断した断面図である。
【0040】
既に述べたように、ダンパ部材40の弾性部材42は、踵に当たったハンマ20が踵に深く食い込みすぎないようにする機能も有している。この点、上記の第一実施形態の踵刺激装置では、ダンパ部材40の弾性部材42の弾性力を調節することができず、踵に加えられる刺激を調節することができなかった。これに対し、第二実施形態の踵刺激装置では、弾性力調節手段を設けており、弾性部材42の弾性力を調節することで、踵に加えられる刺激を調節することができるようになっている。
【0041】
具体的には、
図5に示すように、底板13と昇降部材50との間に、調節部材60を配しており、図示省略の操作手段で調節部材60の上下位置を変化させることで、弾性部材42の弾性力を調節することができるようにしている。弾性部材42は、調節部材60と昇降部材50との間に介在されている。弾性部材42の下端部は、調節部材60に当接しており、弾性部材42の上端部は、昇降部材50に当接している。第二実施形態の踵刺激装置において、調節部材60は、板状に形成している。調節部材60には、上下方向の貫通孔が設けられており、この貫通孔に伸縮部材41が挿通された状態となっている。
【0042】
調節部材60を上方に移動させると、弾性部材42が押し縮められ、弾性部材42の弾性力が強くなる。これにより、踵に加えられる刺激を強くすることができる。逆に、調節部材60を下方に移動させると、弾性部材42が伸びて、弾性部材42の弾性力が弱くなる。これにより、踵に加えられる刺激を弱くすることができる。
【0043】
このように、第二実施形態の踵刺激装置では、踵に加えられる刺激を、使用者の好みに応じて調節することができるようになっている。また、騒音の発生具合を制御することもできるようになっている。すなわち、弾性部材42がハンマ振動機構30に共振してしまうと、騒音が大きくなるおそれがあるところ、弾性部材42の弾性力を、そのような共振が生じない範囲に調節することも可能となっている。
【符号の説明】
【0044】
10 筐体
11 天板
11a 打撃穴
11b ハンマガイド
12 側板
13 底板
20 ハンマ
20a 連結基部
30 ハンマ振動機構
31 回転駆動装置
31a 出力軸
32 運動変換機構
32a 回転部材
32b 連結部材
40 ダンパ部材
41 伸縮部材
41a 柱状部材
41b 筒状部材
42 弾性部材
50 昇降部材
60 調節部材(弾性力調節手段)