(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132048
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】濾過装置再生システム
(51)【国際特許分類】
B01D 53/04 20060101AFI20230914BHJP
C02F 1/28 20230101ALI20230914BHJP
B01D 53/86 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
B01D53/04 230
C02F1/28 D ZAB
C02F1/28 E
B01D53/86 280
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022037147
(22)【出願日】2022-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】大崎 和隆
【テーマコード(参考)】
4D012
4D148
4D624
【Fターム(参考)】
4D012BA01
4D012BA02
4D012BA03
4D012CA11
4D012CB12
4D012CD01
4D012CD02
4D012CE01
4D012CF02
4D012CG01
4D148AA23
4D148AB01
4D148BA30Y
4D148BA31Y
4D148DA01
4D148DA02
4D148DA05
4D148DA20
4D624AA04
4D624AB04
4D624BA02
4D624BA07
4D624BA13
4D624BB01
4D624BC01
4D624CA01
4D624DA03
4D624DA07
(57)【要約】
【課題】吸着濾材を再生する際に濾材から脱離した有機物等を効率よく処理できる濾過装置再生システムを提供すること。
【解決手段】本発明の一態様に係る濾過装置再生システム1は、濾材により気体又は液体中から有機物を除去する濾過装置10に再生用ガスを供給する再生用ガス供給ライン20と、前記濾過装置から再生排ガスを排出する再生排ガスライン30と、前記再生排ガスラインから排出される再生排ガスに燃焼空気を混合した混合ガスを予熱して触媒に接触させることにより再生排ガスに含まれる有機物を燃焼させる触媒燃焼装置60と、前記触媒燃焼装置に燃焼空気を供給する空気供給ライン70と、前記触媒での混合ガスの燃焼温度を所定範囲内に維持するよう、前記再生用ガス供給ラインにおける再生用ガスの流量及び前記空気供給ラインにおける再生用ガスの流量の少なくともいずれかを調節する制御装置80と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
濾材により気体又は液体中から有機物を除去する濾過装置に再生用ガスを供給する再生用ガス供給ラインと、
前記濾過装置から再生排ガスを排出する再生排ガスラインと、
前記再生排ガスラインから排出される再生排ガスに燃焼空気を混合した混合ガスを予熱して触媒に接触させることにより再生排ガスに含まれる有機物を燃焼させる触媒燃焼装置と、
前記触媒燃焼装置に燃焼空気を供給する空気供給ラインと、
前記触媒での混合ガスの燃焼温度を所定範囲内に維持するよう、前記再生用ガス供給ラインにおける再生用ガスの流量及び前記空気供給ラインにおける再生用ガスの流量の少なくともいずれかを調節する制御装置と、
を備える、濾過装置再生システム。
【請求項2】
前記再生用ガス供給ラインは、供給される再生用ガスの流量を調節する再生用ガス流量調節部を有し、
前記制御装置は、前記触媒での混合ガスの燃焼温度が所定のガス制限温度を超えると判断される場合に再生用ガスの流量を小さくするよう前記再生用ガス流量調節部を制御するガス流量制御部を有する、請求項1に記載の濾過装置再生システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記濾過装置の予熱完了時に再生用ガスの流量を一旦減少させ、そのた後に再生用ガスの流量を徐々に大きくするよう前記再生用ガス流量調節部を制御する初期制御部をさらに有する、請求項2に記載の濾過装置再生システム。
【請求項4】
前記再生用ガス流量調節部は、並列して設けられ、それぞれ開閉弁を有する複数の流路を含む、請求項2又は3に記載の濾過装置再生システム。
【請求項5】
前記空気供給ライン又は前記触媒燃焼装置は、燃焼空気の流量を調節する空気流量調節部を有し、
前記制御装置は、前記触媒での混合ガスの燃焼温度が所定の空気制限温度未満になると判断される場合に燃焼空気の流量を小さくするよう前記空気流量調節部を制御する空気流量制御部を有する、請求項1から4のいずれかに記載の濾過装置再生システム。
【請求項6】
前記濾材が活性炭である、請求項1から5のいずれかに記載の濾過装置再生システム。
【請求項7】
前記再生用ガスが水蒸気である、請求項1から6のいずれかに記載の濾過装置再生システム。
【請求項8】
前記再生排ガスラインは、前記濾過装置から流出する再生排ガスの凝縮液を系外に排出する排出弁を有し、
前記制御装置は、前記濾過装置から流出する再生排ガス又は凝縮液の温度がその飽和温度に達するまで再生排ガス又は凝縮液を系外に排出するよう前記排出弁を制御する予熱制御部をさらに有する、請求項1から7のいずれかに記載の濾過装置再生システム。
【請求項9】
濾材により気体又は液体中から有機物を除去する濾過装置に再生用ガスを供給する再生用ガス供給ラインと、
前記濾過装置から再生排ガスを排出する再生排ガスラインと、
前記再生排ガスラインから排出される再生排ガスを予熱して触媒に接触させることにより再生排ガスに含まれる有機物を燃焼させる触媒燃焼装置と、
前記触媒での再生排ガスの燃焼温度を所定範囲内に維持するよう、前記再生用ガス供給ラインにおける再生用ガスの流量を調節する制御装置と、
を備える、濾過装置再生システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濾過装置再生システムに関する。
【背景技術】
【0002】
気体や液体中の有機物等を除去するために活性炭やアルミナ、ゼオライトなどを吸着濾材とした濾過装置(吸着塔)が用いられている。これら濾過装置を使用する場合において、有機物等を吸着して濾過能力が低下した濾材に有機物等の沸点以上の温度を有する水蒸気や空気、窒素、各種廃ガスなどの再生用ガスを濾過装置に挿通することにより、吸着された有機物等を脱離させて吸着濾材を再生する技術が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
再生用ガスを用いて吸着濾材を再生すると、有機物等を含む再生排ガスが排出される。このような再生排ガスをそのまま大気中に開放・廃棄すると大気汚染や健康被害を招くリスクの観点で好ましくない。有機物等を含む再生排ガスを凝縮させて廃液としてから処理することもできるが、そのような廃液処理は処理コストが大きくなることも多く、水環境の汚染にもつながる。また、再生排ガス中の有機物等を焼却炉等に供給することにより酸化分解して除害する直接燃焼方式も広く利用されているが、直接燃焼方式では800℃以上に分解温度を保つ必要があり、再生排ガスは100~500℃程度であることから、有機物の燃焼分解温度まで再生排ガスを昇温し、安定的な燃焼分解を継続するためには、他の燃料との混焼が必要になって、エネルギーコストが大きくなる。特に吸着濾材の再生用ガスとして水蒸気を用いる場合は、その比熱が大きいために、再生排ガスの昇温にかかるエネルギーコストがより大きくなる。
【0005】
また、貴金属触媒等を用いて有機物等を200~400℃程度の比較的低温で酸化分解させる触媒燃焼方式も知られている。触媒燃焼方式では、直接燃焼方式に比べて低温で有機物等を燃焼させることができることから、再生排ガスの昇温にかかるエネルギーコストを抑制できる一方で、有機物の燃焼によって発生する燃焼温度が高くなり過ぎると触媒自体が熱劣化するシンタリングが生じ、安定的な酸化分解を継続できなくなる。特に触媒燃焼させるガスの主成分が水蒸気である場合、触媒のシンタリング発生温度が低くなることも知られており、吸着濾材の再生用ガスとして水蒸気を用いる場合は、その再生排ガスの分解処理に触媒燃焼方式を適用することがより一層難しくなる。
【0006】
このため、本発明は、吸着濾材を再生する際に濾材から脱離した有機物等を効率よく処理できる濾過装置再生システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る濾過装置再生システムは、濾材により気体又は液体中から有機物を除去する濾過装置に再生用ガスを供給する再生用ガス供給ラインと、前記濾過装置から再生排ガスを排出する再生排ガスラインと、前記再生排ガスラインから排出される再生排ガスに燃焼空気を混合した混合ガスを予熱して触媒に接触させることにより再生排ガスに含まれる有機物を燃焼させる触媒燃焼装置と、前記触媒燃焼装置に燃焼空気を供給する空気供給ラインと、前記触媒での混合ガスの燃焼温度を所定範囲内に維持するよう、前記再生用ガス供給ラインにおける再生用ガスの流量及び前記空気供給ラインにおける再生用ガスの流量の少なくともいずれかを調節する制御装置と、を備える。
【0008】
上述の濾過装置再生システムにおいて、前記再生用ガス供給ラインは、供給される再生用ガスの流量を調節する再生用ガス流量調節部を有し、前記制御装置は、前記触媒での混合ガスの燃焼温度が所定のガス制限温度を超えると判断される場合に再生用ガスの流量を小さくするよう前記再生用ガス流量調節部を制御するガス流量制御部を有してもよい。
【0009】
上述の濾過装置再生システムにおいて、前記制御装置は、前記濾過装置の予熱完了時に再生用ガスの流量を一旦減少させ、その後に再生用ガスの流量を徐々に大きくするよう前記再生用ガス流量調節部を制御する初期制御部をさらに有してもよい。
【0010】
上述の濾過装置再生システムにおいて、前記再生用ガス流量調節部は、並列して設けられ、それぞれ開閉弁を有する複数の流路を含んでもよい。
【0011】
上述の濾過装置再生システムにおいて、前記空気供給ライン又は前記触媒燃焼装置は、燃焼空気の流量を調節する空気流量調節部を有し、前記制御装置は、前記触媒での混合ガスの燃焼温度が所定の空気制限温度未満になると判断される場合に燃焼空気の流量を小さくするよう前記空気流量調節部を制御する空気流量制御部を有してもよい。
【0012】
上述の濾過装置再生システムにおいて、前記濾材が活性炭であってもよい。
【0013】
上述の濾過装置再生システムにおいて、前記再生用ガスが水蒸気であってもよい。
【0014】
上述の濾過装置再生システムにおいて、前記再生排ガスラインは、前記濾過装置から流出する再生排ガスの凝縮液を系外に排出する排出弁を有し、前記制御装置は、前記濾過装置から流出する再生排ガス又は凝縮液の温度がその飽和温度に達するまで再生排ガス又は凝縮液を系外に排出するよう前記排出弁を制御する予熱制御部をさらに有してもよい。
【0015】
本発明の別の態様に係る濾過装置再生システムは、濾材により気体又は液体中から有機物を除去する濾過装置に再生用ガスを供給する再生用ガス供給ラインと、前記濾過装置から再生排ガスを排出する再生排ガスラインと、前記再生排ガスラインから排出される再生排ガスを予熱して触媒に接触させることにより再生排ガスに含まれる有機物を燃焼させる触媒燃焼装置と、前記触媒での再生排ガスの燃焼温度を所定範囲内に維持するよう、前記再生用ガス供給ラインにおける再生用ガスの流量を調節する制御装置と、を備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、吸着濾材を再生する際に濾材から脱離した有機物等を効率よく処理できる濾過装置再生システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係る濾過装置再生システムの構成を示す図である。
【
図2】本発明の実施例1における触媒燃焼部の入口温度及び出口温度の測定値の変化を示すグラフである。
【
図3】本発明の実施例1における濾過装置への水蒸気供給量の変化を示すグラフである。
【
図4】本発明の実施例1における空気流量調整弁の開度の変化を示すグラフである。
【
図5】本発明の実施例1における触媒燃焼装置による排蒸気の処理量と消費電力との変化を示すグラフである。
【
図6】本発明の実施例1における活性炭濾過塔の各部の温度の変化を示すグラフである。
【
図7】本発明の実施例1における触媒燃焼装置の前後での有機物含有量の変化を示すグラフである。
【
図8】本発明の実施例2における触媒燃焼部の入口温度及び出口温度の測定値の変化を示すグラフである。
【
図9】本発明の実施例2における濾過装置への水蒸気供給量の変化を示すグラフである。
【
図10】本発明の実施例2における触媒燃焼装置による排蒸気の処理量と消費電力との変化を示すグラフである。
【
図11】本発明の実施例2における活性炭濾過塔の各部の温度の変化を示すグラフである。
【
図12】本発明の実施例2における触媒燃焼装置の前後での有機物含有量の変化を示すグラフである。
【
図13】本発明の比較例1における触媒燃焼部の入口温度及び出口温度の測定値の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明をする。
図1は、本発明の一実施形態に係る濾過装置再生システム1の構成を示す図である。
【0019】
濾過装置再生システム1は、濾材11により気体又は液体中から有機物を除去する濾過装置10の濾材11を再生する。濾過装置再生システム1は、濾過装置に再生用ガスを供給する再生用ガス供給ライン20と、濾過装置10から再生排ガスを排出する再生排ガスライン30と、濾過装置10から再生排ガスライン30に排出される再生排ガスの一部を再生用ガス供給ライン20に還流させる還流ライン40と、再生排ガスライン30に排出される再生排ガス又はその凝縮液を系外に排出するブローライン50と、再生排ガスライン30から排出される再生排ガスに燃焼空気を混合した混合ガスを予熱して触媒に接触させることにより再生排ガスに含まれる有機物を燃焼させる触媒燃焼装置60と、触媒燃焼装置60に燃焼空気を供給する空気供給ライン70と、他の構成要素を制御する制御装置80と、を備える。また、図示しないが、濾過装置10には有機物を含む気体又は液体を供給・排出するラインや濾材11を交換可能できる取り出し口を有し得る。
【0020】
濾過装置10に収容される濾材11としては、例えば活性炭、アルミナ、ゼオライト等が用いられ、典型的には安価で有機物の吸着性能に優れる活性炭が用いられる。濾材11として活性炭を用いる場合、有機物の除去から再生の一連のサイクルにおける経済効率の向上が顕著となる。濾過装置10において除去される有機物としては、各種有機溶媒や工場排水成分、色素、界面活性剤、VOC成分などが想定される。
【0021】
再生用ガス供給ライン20は、濾材11に吸着されている有機物の沸点よりも高温の再生用ガスを濾過装置10に供給する。本実施形態の再生用ガス供給ライン20は、供給される再生用ガスの流量を調節する再生用ガス流量調節部21と、還流ライン40から還流する再生排ガスを再生用ガスに導入するためのエゼクタ22と、再生用ガスを加熱するヒータ23と、を有する構成とされ得る。また、再生用ガス供給ライン20は、図示しないが、必要に応じて流量センサ、温度センサ等を有し得る。
【0022】
再生用ガス供給ライン20から供給される再生用ガスとしては、例えば水蒸気、空気、窒素、近隣設備から排出される高温排ガス等を利用することができる。中でも、比較的熱容量が大きく、取り扱いが容易であり、かつ昇温時には潜熱も利用できる水蒸気が特に好適に利用され得る。また、水蒸気は比較的不活性なガスであることから、濾材11を損傷したり、脱着した有機物と反応して一酸化炭素などの有毒生成物を発生したりするリスクも小さい。再生用ガス供給ライン20は、供給源から供給される再生用ガスの温度が不十分である場合には、ヒータ23によって濾過装置10に導入するまでに再生用ガスを加熱する。また、再生用ガスとして水蒸気を用いる場合、ボイラ等から供給される飽和蒸気をヒータ23で過熱蒸気とすることによって、濾過装置10に過度の耐圧性を要求しないようにできる。
【0023】
再生用ガス流量調節部21は、開度調整により流量を調節する単一の制御弁によって構成されてもよいが、本実施形態では、並列して配設され、それぞれ予め設定される流量の再生用ガスを通過させる複数の制限流路211を有する構成とされている。各制限流路211は、それぞれ流路を開閉する開閉弁212を有する構成とされ得る。制限流路211は、配管及び開閉弁212のサイズによって流量を設定するよう構成されてもよく、例えば図示する絞り弁213やオリフィス等の制限部材を有してもよい。制限流路211の組み合わせにより再生用ガスの供給量を調節することができる。特に、制限流路211の少なくとも一部の再生用ガスの流量が他と異なる場合には、それらの組み合わせにより多様な流量を選択できる。また、再生用ガス流量調節部21が制限流路211の組み合わせにより段階的に流量を設定する構成であることにより、流量を迅速に変更できるため、触媒燃焼装置60における燃焼温度のオーバーシュートを抑制し、触媒の熱劣化を確実に抑制できる。
【0024】
再生排ガスライン30は、濾過装置10から排出される再生排ガスを触媒燃焼装置60に案内する。特に再生用ガスとして水蒸気を用いる場合、再生排ガスライン30は、再生排ガスが凝縮水を含んでいるか否かを判定するために温度センサ31を有することが好ましい。再生排ガスの温度が飽和温度以下であれば、濾過装置10の内部で凝縮水が生じ、再生排ガスが凝縮水を含んでいる可能性があると考えられる。また、再生排ガスライン30は、再生排ガスの触媒燃焼装置60への導入を遮断する導入弁32を有する構成とされ得る。
【0025】
還流ライン40は、濾過装置10から排出される再生排ガスの一部を再生用ガス供給ライン20に還流させる。これにより、再生排ガスの熱エネルギーの一部を回収でき、再生ガスの再利用にもなるので、濾過装置10の再生に要するエネルギーコストや再生ガスの供給コストを抑制できる。還流ライン40は、逆止弁41及び再生用ガス供給ライン20への再生排ガスの還流を遮断する還流弁42を有する構成とされ得る。
【0026】
ブローライン50は、濾過装置10から流出する再生排ガスに凝縮液が含まれる場合に、触媒燃焼装置60に凝縮液を導入しないように凝縮液を系外に放出するために用いられる。ブローライン50は、再生排ガスを遮断する排出弁51を有する構成とされ得る。凝縮液が触媒燃焼装置60内に導入されると、凝縮液中に含まれる無機物の焼き付きやスケール化、突沸などの運転障害が発生してしまうおそれがあるが、ブローライン50から凝縮水を系外に放出することによって、これらの不都合を防止することができる。
【0027】
触媒燃焼装置60は、再生排ガスに燃焼空気を混合する混合部61と、再生排ガスに燃焼空気を混合した混合ガスを一定の温度まで予熱する予熱部62と、予熱した混合ガスを触媒に接触させることにより有機物を燃焼させる触媒燃焼部63と、混合ガスを燃焼させた燃焼排ガスと燃焼空気との間で熱交換する熱交換部64と、燃焼排ガスに外気を混合して温度を低下させる冷却部65と、冷却部65から外気が混合された燃焼排ガスを吸引して外部に排出する排気ファン66と、を有する構成とされ得る。
【0028】
混合部61では、再生排ガスに、再生排ガス中の有機物を燃焼させるために必要な酸素を提供する燃焼空気を混合する。燃焼空気は、燃焼に必要な酸素の供給の役割を果たすと同時に、混合ガス中の有機物濃度を調節することで燃焼排ガスの温度を抑制する希釈空気としても作用する。予熱部62では、混合ガスを触媒燃焼部63において燃焼し得る温度まで加熱する。触媒燃焼部63では、触媒の作用により混合ガス中の有機物を燃焼させる。触媒としては、例えばプラチナ、パラジウム等が用いられ得る。触媒燃焼部63の内部又は出口には、燃焼温度として燃焼直後の燃焼排ガスの温度を測定する燃焼温度センサ67が設けられる。熱交換部64では、予熱部62に導入される前の燃焼空気と燃焼排ガスとの間で熱交換を行い、予熱部62の負荷を低減する。冷却部65では、燃焼排ガスを外気で希釈することにより、排気ファン66の耐熱温度以下に燃焼排ガスの温度を低下させる。
【0029】
空気供給ライン70は、触媒燃焼装置60に供給される燃焼空気の流量を調節する空気流量調節部71を有することが好ましい。空気流量調節部71は、図示するような流量調整弁によって形成することができる他、燃焼空気を供給する不図示のファンの回転数調節機構等であってもよい。
【0030】
制御装置80は、触媒燃焼部63での混合ガスの燃焼温度を所定範囲内に維持するよう、再生用ガス及び燃焼空気の少なくともいずれかの流量を調節する。本実施形態の制御装置80は、予熱制御部81、初期制御部82、ガス流量制御部83及び空気流量制御部84を有する。制御装置80は、オン-オフ制御や比例制御、フィードバック制御、フィードフォアード制御などの一般的な制御ができるようにプロセッサ、メモリ、入出力インターフェイス等を備え、適切なプログラムを実行するコンピュータ装置等によって構成され得る。また、制御装置80は、ソフトウェアを利用しない物理回路によって構成されてもよい。予熱制御部81、初期制御部82、ガス流量制御部83及び空気流量制御部84は、制御装置80の機能を類別したものであって、物理構成及びプログラム構成において明確に区分できるものでなくてもよい。
【0031】
予熱制御部81は、濾過装置10から流出する再生排ガス又は凝縮液の温度がその飽和温度に達するまで再生排ガス又は凝縮液を系外に排出するよう排出弁51を制御する。これにより、凝縮液が触媒燃焼装置内に導入されることにより予熱部62において生じ得る無機物の焼き付きやスケール化、突沸等を防止することができる。
【0032】
初期制御部82は、濾過装置10の予熱完了時に再生用ガスの流量を一旦減少させ、その後に再生用ガスの流量を徐々に大きくするよう再生用ガス流量調節部21を制御する。濾過装置10が低沸点の有機物を多く吸着している場合には、予熱完了時、特に温度センサ31で検出される再生排ガスの温度が飽和温度に到達する際に再生排ガスが低沸点の有機物を多く含むことにより再生排ガスの触媒燃焼による発熱量が大きくなるので触媒がシンタリングを引き起こす状況になりやすい。このため、初期制御部82によって、再生用ガスの流量を抑えて再生を開始することで、運転開始直後に混合ガス中に持ち込まれる有機物量を低減し、触媒燃焼部63における燃焼温度が高くなり過ぎることを防止できる。
【0033】
ガス流量制御部83は、触媒燃焼部63における触媒での混合ガスの燃焼温度が所定のガス制限温度を超えると判断される場合に再生用ガスの流量を小さくするよう再生用ガス流量調節部21を制御する。触媒燃焼部63における燃焼排ガスの温度が高過ぎる場合には再生用ガスの流量を小さくすることによって、濾材11から脱離させる有機物の量を低減して発熱量を抑制することにより燃焼温度の上昇を抑制し、触媒のシンタリングを防止できる。
【0034】
空気流量制御部84は、触媒燃焼部63における触媒での混合ガスの燃焼温度が所定の空気制限温度未満になると判断される場合に燃焼空気の流量を小さくするよう空気流量調節部を制御する。触媒燃焼部63における燃焼排ガスの温度、つまり混合ガスの燃焼による温度上昇が低いということは再生排ガス中に含まれる有機物量が小さいことを意味し、燃焼に必要な酸素供給やシンタリングを防止するための熱吸収の役割としての空気供給は少なくて済む。そこで、燃焼排ガスの温度の低下に応じて燃焼空気の流量を小さくすることによって、予熱部62において混合ガスの予熱に必要なエネルギーを節約できる。空気制限温度は、ガス流量制御部83と空気流量制御部84が干渉しないよう、ガス制限温度以下、好ましくはある程度の差を有する温度に設定される。
【0035】
上述のような構成を有する濾過装置再生システム1は、再生用ガス供給ライン20から濾過装置10に濾材11に吸着されている有機物の沸点よりも高温の再生用ガスを供給し、揮発した有機物と再生用ガスとを含む再生排ガスを触媒燃焼装置60に導入し、燃焼茎と混合して再生排ガス中の有機物を触媒燃焼させることにより分解する。濾過装置再生システム1は、再生用ガス及び燃焼空気の少なくともいずれかの流量を調節することによって、濾材から脱離させる有機の量又は燃焼により生じた熱を吸収する燃焼空気の流量を調整し、燃焼温度を所定範囲内に維持することにより、触媒のシンタリングを防止しながら、高いエネルギー効率を達成できる。
【0036】
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、種々の変更及び変形が可能である。例として、本発明に係る濾過装置再生システムは、再生用ガス及び燃焼空気のいずれか一方の流量のみの調整により燃焼温度を制御するものであってもよい。このため、本発明に係る濾過装置再生システムは、再生用ガスが例えば空気等十分な酸素を含むガスである場合、触媒燃焼装置に燃焼空気を供給する空気供給ライン及び空気供給ラインの制御に係る構成を備えていなくてもよい。また、
図1では排気ファン66の吸引力により燃焼空気や冷却空気を触媒燃焼装置60内に取り込むように示しているが、別の例として、コンプレッサーやブロワー等によって燃焼空気や冷却空気を触媒燃焼装置に送気してもよい。
【0037】
また、再生排ガス中に含まれる有機物の種類によって触媒燃焼に必要な温度帯が変わる(一般的には200~400℃程度の範囲になる)ことから、予熱部62での予熱温度、並びにガス制限温度及び空気制限温度(つまり燃焼温度センサ67で検知される燃焼温度)を再生排ガスの処理途中で一時的又は段階的に上昇や下降をさせてもよい。再生排ガス中に含まれる有機物の燃焼性に応じて燃焼温度を制御することにより、より経済的且つ安定的な燃焼処理が行うことができたり、触媒上に吸着した未燃有機物を燃焼(触媒リセット処理、フラッシング処理等と呼ばれる)させたりすることができる。
【0038】
また、本発明に係る濾過装置再生システムは、触媒燃焼装置の内部、例えば熱交換部と混合部との間等に燃焼空気の流量を調節する空気流量調節部が設けられてもよい。触媒燃焼装置に設けられる空気流量調節部としては、排気ファンの回転数調節機構、排気ファンの風量調節ダンパ等が挙げられる。
【0039】
また、本発明に係る濾過装置再生システムにおいて、還流ライン及びブローラインは必須の構成ではない。
【実施例0040】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0041】
図1の構成を有する濾過装置再生システムを作成し、その性能を評価する試験を行った。濾過装置としては三浦工業社の活性炭濾過塔「WC-80AJ」を、触媒燃焼装置としては田端機械工業社の触媒燃焼装置「DEOCAT-2」を用いた。再生用ガス流量調節部は、水蒸気の流量がそれぞれ4kg/hr、2kg/hr、4kg/hr、5kg/hrとなるよう調整した4つの流路を有し、流路の組み合わせによって4kg/hr、6kg/hr、8kg/hr、10kg/hr又は15kg/hrのいずれかの流量を選択できるよう構成した。この濾過装置再生システムを用い、1-ブタノール(沸点118℃)及び安息香酸(沸点249℃)をそれぞれ水道水1Lあたり1000mgずつ溶解した模擬排水を調製し、これを空間速度10BV/hrで1時間通水した活性炭濾過塔を、再生用ガスとして水蒸気を用いて再生する試験を行った。
【0042】
(実施例1)
実施例1として、予熱制御部、初期制御部、ガス流量制御部及び空気流量制御部による制御を有効にして、濾過装置の再生を行った。試験中、活性炭濾過塔の状態を確認するために、ヒータ出口(活性炭濾過塔入口)における水蒸気(再生用ガス)温度、活性炭濾過塔内の上層(再生用ガス入口側)内側、上層外側、中層内側、中層外側、下層内側及び下層外側の温度、並びに活性炭濾過塔入口出口における水蒸気温度をそれぞれ測定した。また、触媒燃焼装置における有機物の分解を確認するために、触媒燃焼装置の入口から再生廃蒸気(再生排ガス)を、触媒燃焼装置の入口から燃焼排ガスを定期的にサンプリングし、これらを凝縮(ドレン化)させてTOC(全有機炭素)を測定した。
【0043】
濾過装置再生システムの運転は、予熱制御部による制御を行う期間Iと、初期制御部、ガス流量制御部及び空気流量制御部により運転を安定させるまでの期間IIと、主に1-ブタノールの燃焼を確認するための期間IIIと、主に安息香酸の燃焼を確認するための期間IVと、触媒燃焼装置の予熱器を停止して運転停止の準備を行う期間Vと、有する運転とした。また、触媒燃焼装置による再生排ガスの燃焼処理の間、2時間ごとに15分間予熱器の設定温度を短時間上昇(期間IIIでは450℃、期間IVでは500℃に設定)させることにより触媒温度を一次的に上昇させて触媒をフラッシングする処理を2回行った。なお、2回目のフラッシングまでを期間III、2回目のフラッシングの終了後を期間IVとした。触媒燃焼装置の予熱器の設定温度(触媒燃焼部入口温度設定値)は、期間IIIにおいては300℃、期間IVにおいては400℃に設定した。
【0044】
ガス流量制御部は、ガス制限温度を500℃とし、初期制御開始時の水蒸気流量を4kg/hrとして、混合ガスの燃焼温度(触媒出口温度)を確認しながら水蒸気流量を増大するものとした。空気流量制御部は空気制限温度を上限とし空気制限温度よりも50℃低い温度まで空気流量調整弁の開度を100%から40%(開度下限)まで直線的に変化させるものとし、空気制限温度を期間IIIにおいて425℃、期間IVにおいて475℃とした。
【0045】
図2に、触媒燃焼装置における触媒燃焼部の入口温度及び出口温度の測定値の変化を示す。また、
図3に濾過装置への水蒸気供給量の変化、
図4に空気流量調整弁の開度の変化を示す。これらのグラフから、特に期間IIにおいて初期制御部、ガス流量制御部により触媒温度の過度の上昇が防止され、期間III及び期間IVにおいて空気流量制御部により触媒温度の過度の低下が防止されていることが分かる。
【0046】
図5に、触媒燃焼装置における排蒸気(再生排ガス)の積算処理量と積算消費電力(電力量)の実測記録を示す。期間III及び期間IVにおいて排蒸気量(=積算処理排蒸気量グラフの傾き)は一定であるのに対し、消費電力(=積算消費電力グラフの傾き)は期間IIIよりも期間IVにおいて僅かに増大している。
【0047】
図6に、活性炭濾過塔の各部の温度の変化を示す。
図6からは、活性炭濾過塔内の濾材の温度が順番に上昇し、最終的には濾材に吸着されている有機物を蒸発させて除去できたと解釈できる。
【0048】
図7に、触媒燃焼装置の前後(排蒸気及び燃焼排ガス)における有機物含有量の変化を示す。
図7によれば、排蒸気の有機物量は再生処理開始直後に最高値を示し、徐々に低下する。また、排蒸気の有機物量は期間IVにおいて
図6に示された活性炭濾過塔に導入される蒸気温度の上昇(この温度上昇は、濾層全体が100℃以上となって、エゼクタによって一部循環される蒸気温度も100℃以上になったことによる)、及び、濾層の高温帯が広がるに伴って上昇している。
図6に示された濾層温度の上昇の仕方と活性炭に通水した模擬排水の成分が1-ブタノール(沸点118℃)及び安息香酸(沸点249℃)であることから、期間IIから期間IIIにかけて濾過塔から排出された主な有機物は1-ブタノールであり、期間IVで濾過塔から排出された主な有機物は安息香酸であると考えられる。しかしながら、このように排蒸気の有機物量や有機物種が変化しても、触媒燃焼装置において略全ての有機物を燃焼分解できていることが分かる。
【0049】
(実施例2)
実施例2として、空気流量制御部による制御を無効とした以外は、実施例1と同じ条件で濾過装置再生システムの運転を行った。
【0050】
図8に、触媒燃焼部入口温度及び出口温度の変化を、
図9に濾過装置への水蒸気供給量の変化を示す。実施例1と比較して、実施例2では、空気量を調整しないために燃焼排ガス温度の低下が緩慢となっているが、ガス流量制御部による水蒸気供給量の調整によって触媒のシンタリングを防止できる範囲内で燃焼温度を制御できている。
【0051】
図10に、触媒燃焼装置における排蒸気の処理量と消費電力との変化を示す。実施例2では、実施例1と比較して、空気流量制御部による制御を無効としたために25%程電力消費量が大きくなっている。
【0052】
図11に、活性炭濾過塔の各部の温度の変化を、
図12に、触媒燃焼装置の前後における有機物含有量の変化を示す。第2実施例のおいても、第1実施例と同様に、濾材に吸着されている有機物を蒸発させ、触媒燃焼装置において略全ての有機物を燃焼分解できていることが分かる。
【0053】
(比較例1)
比較例1として、初期制御部、空気流量制御部及び空気流量制御部による制御を無効とした以外は、実施例1と同じ条件で濾過装置再生システムの運転を試みた。
【0054】
図13に、触媒燃焼部入口温度及び出口温度の変化を示す。図示するように、比較例1では、触媒燃焼装置に再生排ガスを供給した直後に燃焼排ガス温度、つまり触媒温度が急激に上昇し、シンタリングが発生し得る600℃に達したため、運転を中止せざるを得なかった。なお、触媒燃焼装置の予熱器の設定温度を300℃設定しているにも関わらず、触媒燃焼部入口温度が上昇しているのは、触媒燃焼装置内の熱交換部で高温燃焼排ガスと供給燃焼空気との間で熱交換されたためである。
【0055】
以上のように、本発明に係る濾過装置再生システムを用いれば、比較的沸点が低い有機溶媒を多く吸着した濾過装置であっても、触媒のシンタリングを防止しつつ濾材を再生できることが確認できた。