IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ホシザキ電機株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-冷却貯蔵庫 図1
  • 特開-冷却貯蔵庫 図2
  • 特開-冷却貯蔵庫 図3
  • 特開-冷却貯蔵庫 図4
  • 特開-冷却貯蔵庫 図5
  • 特開-冷却貯蔵庫 図6
  • 特開-冷却貯蔵庫 図7
  • 特開-冷却貯蔵庫 図8
  • 特開-冷却貯蔵庫 図9
  • 特開-冷却貯蔵庫 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132052
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】冷却貯蔵庫
(51)【国際特許分類】
   F25D 21/08 20060101AFI20230914BHJP
   F25D 11/00 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
F25D21/08 A
F25D11/00 101B
F25D21/08 D
F25D21/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022037154
(22)【出願日】2022-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000194893
【氏名又は名称】ホシザキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】保坂 靖基
【テーマコード(参考)】
3L045
3L046
【Fターム(参考)】
3L045AA02
3L045BA01
3L045CA02
3L045DA02
3L045EA01
3L045GA04
3L045LA14
3L045MA02
3L045MA16
3L045NA15
3L045NA22
3L045PA01
3L045PA02
3L045PA03
3L045PA04
3L046AA02
3L046BA01
3L046BA09
3L046CA06
3L046GB01
3L046JA11
3L046KA02
3L046MA01
3L046MA02
3L046MA03
3L046MA04
(57)【要約】
【課題】冷却器および冷却ダクトの除氷を確実に行いつつ、除霜運転による貯蔵室の温度上昇を抑制することが可能な冷却貯蔵庫を提供する。
【解決手段】制御部60は、冷却器加熱部50およびダクト加熱部52を作動させて冷却ダクト40内の霜を取り除く除霜運転を実行する除霜運転実行部80を有し、除霜運転において、冷却器加熱部50を停止した後、ダクト加熱部52を継続して作動させるように制御するものとされ、除霜運転実行部80が、冷却器36への着霜量を指標する指標値である着霜量指標値を取得する着霜量指標値取得部82と、冷却器加熱部50を停止させた時点からダクト加熱部52を停止させるまでの時間である継続運転時間tを、着霜量指標値に基づいて変更する継続運転時間変更部110と、を有する構成とする。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯蔵室と前記貯蔵室を開閉可能な扉とを有する貯蔵庫本体と、
前記貯蔵室を冷却するための冷却器を有する冷却装置と、
前記冷却器を下方から覆い、前記冷却器からの水滴を排出するとともに、前記冷却器が配される空間と前記貯蔵室との間で空気を循環させる経路を構成する冷却ダクトと、
前記冷却器に設けられ、前記冷却器を加熱する冷却器加熱部と、
前記冷却ダクトに設けられ、前記冷却ダクトを加熱するダクト加熱部と、
前記冷却装置,前記冷却器加熱部および前記ダクト加熱部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記冷却器加熱部および前記ダクト加熱部を作動させて前記冷却ダクト内の霜を取り除く除霜運転を実行する除霜運転実行部を有し、前記除霜運転において、前記冷却器加熱部を停止した後、前記ダクト加熱部を継続して作動させるように制御するものとされ、
前記除霜運転実行部は、
前記冷却器への着霜量を指標する指標値である着霜量指標値を取得する着霜量指標値取得部と、
前記冷却器加熱部を停止させた時点から前記ダクト加熱部を停止させるまでの時間である継続運転時間を、前記着霜量指標値に基づいて変更する継続運転時間変更部と、を有する冷却貯蔵庫。
【請求項2】
前記継続運転時間変更部は、前記着霜量指標値が着霜量が多い場合に対する値であるほど、予め設定されている設定継続運転時間に対して付加する延長時間を大きくすることで、前記継続運転時間を変更する請求項1に記載の冷却貯蔵庫。
【請求項3】
当該冷却貯蔵庫は、前記貯蔵庫本体内に設けられた温度センサを備え、
前記除霜運転実行部は、前記温度センサの検出値が閾温度以上となった場合に前記冷却器加熱部を停止するように構成されており、
前記着霜量指標値取得部は、前記着霜量指標値として、前記冷却器加熱部を停止させるまでの時間である冷却器加熱時間を取得する冷却器加熱時間取得部を有し、
前記継続運転時間変更部は、前記冷却器加熱時間に基づいて、前記継続運転時間を変更する請求項1または請求項2に記載の冷却貯蔵庫。
【請求項4】
当該冷却貯蔵庫は、前記貯蔵庫本体内に設けられた温度センサを備え、
前記除霜運転実行部は、前記温度センサの検出値が閾温度以上となった場合に前記冷却器加熱部を停止するように構成されており、
前記着霜量指標値取得部は、前記着霜量指標値として、前記冷却器加熱部を停止させるまでの間における前記温度センサによって検出された温度の上昇勾配を取得する温度上昇勾配取得部を有し、
前記継続運転時間変更部は、前記温度の上昇勾配に基づいて、前記継続運転時間を変更する請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の冷却貯蔵庫。
【請求項5】
前記着霜量指標値取得部は、前記着霜量指標値として、前記貯蔵室を保持する温度として設定されている設定庫内温度を取得する設定庫内温度取得部を有し、
前記継続運転時間変更部は、前記設定庫内温度に基づいて、前記継続運転時間を変更する請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の冷却貯蔵庫。
【請求項6】
前記着霜量指標値取得部は、前記着霜量指標値として、前回の前記除霜運転の終了後から今回の前記除霜運転が開始されるまでに前記扉が開閉された回数である扉開閉回数を取得する扉開閉回数取得部を有し、
前記継続運転時間変更部は、前記扉開閉回数に基づいて、前記継続運転時間を変更する請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の冷却貯蔵庫。
【請求項7】
前記ダクト加熱部は、前記冷却器における空気が流入する側の端部と鉛直方向において重畳する位置に設けられている請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の冷却貯蔵庫。
【請求項8】
当該冷却貯蔵庫は、前記冷却ダクトに設けられて前記貯蔵室から前記冷却ダクト内へ空気を吸引する庫内ファンと、前記冷却ダクトにおける前記庫内ファンの周囲に設けられて前記庫内ファンの近傍を加熱する庫内ファン加熱部と、を備え、
前記継続運転時間変更部は、前記冷却器加熱部を停止させた時点から前記庫内ファン加熱部を停止させるまでの時間を、前記着霜量指標値に基づいて変更する請求項7に記載の冷却貯蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却貯蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、冷却貯蔵庫においては、冷却器に付着した霜を取り除くために、ヒータ等の加熱部によって冷却器を加熱することで除霜を行う技術(除霜運転)が知られている。冷却器に付着した霜が多い場合、その霜は、加熱部が冷却器に直接触れている部分のみが溶かされ、霜が塊となって冷却器を覆っている冷却ダクト(ドレンパンとして機能する)の上に落下する場合がある。下記特許文献1に記載の冷却貯蔵庫は、冷却ダクトに補助ヒータを設け、その補助ヒータは、冷却器加熱用のヒータへの通電が解除された後、設定された時間内は通電が継続される構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3086181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献に記載の冷却貯蔵庫においては、落下した氷塊を設定した時間内で溶かすことができなかった場合には、冷却運転中にその氷塊の残氷を起点として氷が成長してしまうという問題がある。一方で、落下した氷塊が小さい場合には、冷却ダクトが貯蔵室を区画する部材となっているため、冷却ダクトの加熱は、貯蔵室の温度上昇に直結しており、貯蔵室内の貯蔵物に熱の影響を与えてしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、冷却器および冷却ダクトの除氷を確実に行いつつ、除霜運転による貯蔵室の温度上昇を抑制することが可能な冷却貯蔵庫を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明の冷却貯蔵庫は、
貯蔵室と前記貯蔵室を開閉可能な扉とを有する貯蔵庫本体と、
前記貯蔵室を冷却するための冷却器を有する冷却装置と、
前記冷却器を下方から覆い、前記冷却器からの水滴を排出するとともに、前記冷却器が配される空間と前記貯蔵室との間で空気を循環させる経路を構成する冷却ダクトと、
前記冷却器に設けられ、前記冷却器を加熱する冷却器加熱部と、
前記冷却ダクトに設けられ、前記冷却ダクトを加熱するダクト加熱部と、
前記冷却装置,前記冷却器加熱部および前記ダクト加熱部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記冷却器加熱部および前記ダクト加熱部を作動させて前記冷却ダクト内の霜を取り除く除霜運転を実行する除霜運転実行部を有し、前記除霜運転において、前記冷却器加熱部を停止した後、前記ダクト加熱部を継続して作動させるように制御するものとされ、
前記除霜運転実行部は、
前記冷却器への着霜量を指標する指標値である着霜量指標値を取得する着霜量指標値取得部と、
前記冷却器加熱部を停止させた時点から前記ダクト加熱部を停止させるまでの時間である継続運転時間を、前記着霜量指標値に基づいて変更する継続運転時間変更部と、を有することを特徴とする。
【0007】
冷却器への着霜量が多いほど、冷却器に付着した霜が、塊のまま冷却ダクトの上に落下する可能性が高いと考えられる。この構成の冷却貯蔵庫は、冷却器加熱部の停止後にダクト加熱部が継続して作動させられることで、冷却ダクト上の氷塊が融解される。この構成の冷却貯蔵庫によれば、冷却器加熱部を停止させた時点から前記ダクト加熱部を停止させるまでの継続運転時間(水切り時間)を調整することが可能とされており、冷却器および冷却ダクトの除氷を確実に行いつつ、除霜運転による貯蔵室の温度上昇を抑制することができる。
【0008】
なお、継続運転時間を変更する態様としては、例えば、着霜量指標値と継続運転時間との関係を、マップデータや関係式で定めておき、着霜量指標値に応じて継続運転時間を決定するような態様とすることができる。また、例えば、着霜量指標値に基づいて着霜量が多いか否かを判断して、着霜量が多いと判断された場合に、予め設定されている継続運転時間を延長するような態様とすることもできる。なお、着霜量指標値としては、後に詳しく説明するが、当該冷却貯蔵庫が設置されている環境や運転状態、当該冷却貯蔵庫に設けられている各種センサの検出結果等に基づいて推定できる種々の指標値を採用することができる。また、冷却器加熱部およびダクト加熱部は、通電により作動させるヒータが一般的であるが、ホットガスを送り込むことによって加熱する構成を採用することもできる。
【0009】
上記構成において、前記継続運転時間変更部は、前記着霜量指標値が着霜量が多い場合に対する値であるほど、予め設定されている設定継続運転時間に対して付加する延長時間を大きくすることで、前記継続運転時間を変更する構成とすることができる。
【0010】
この構成の冷却貯蔵庫は、冷却器加熱部の停止後から少なくとも設定継続運転時間は、ダクト加熱部を作動させるように構成されており、その設定継続運転時間に対して、着霜量に応じた延長時間を付加するようになっている。この構成の冷却貯蔵庫によれば、冷却ダクト上に氷塊を確実に融解しつつ、ダクト加熱部の運転時間を短時間に留めて、貯蔵室の温度上昇を最小限に抑えることができる。
【0011】
上記構成において、当該冷却貯蔵庫は、前記貯蔵庫本体内に設けられた温度センサを備え、前記除霜運転実行部は、前記温度センサの検出値が閾温度以上となった場合に前記冷却器加熱部を停止するように構成されており、前記着霜量指標値取得部は、前記着霜量指標値として、前記冷却器加熱部を停止させるまでの時間である冷却器加熱時間を取得する冷却器加熱時間取得部を有し、前記継続運転時間変更部は、前記冷却器加熱時間に基づいて、前記継続運転時間を変更する構成とすることができる。
【0012】
この構成の冷却貯蔵庫における「温度センサ」は、例えば、冷却器に供給される空気の温度を検出するものであってもよく、冷却器内の空気温度を検出するものであってもよい。従来から、そのような温度センサの温度が閾値より高くなった場合に、冷却器の除霜が終了したと判断される制御が行われている。そして、この構成の冷却貯蔵庫においては、除霜運転が開始されてから温度センサが閾値を検出するまでの時間(冷却器加熱時間)が長いほど、冷却器への着霜量が多いと考えられる。したがって、この冷却器加熱時間に基づいて、継続運転時間を変更することで、継続運転時間をより確実に変更することができる。なお、この冷却器加熱時間に基づいて着霜量が多いか否かを判断する場合には、例えば、前回の除霜運転時における冷却器加熱時間と比較する構成や、閾値や累積した平均値等と比較する構成とすることができる。
【0013】
上記構成において、当該冷却貯蔵庫は、前記貯蔵庫本体内に設けられた温度センサを備え、前記除霜運転実行部は、前記温度センサの検出値が閾温度以上となった場合に前記冷却器加熱部を停止するように構成されており、前記着霜量指標値取得部は、前記着霜量指標値として、前記冷却器加熱部を停止させるまでの間における前記温度センサによって検出された温度の上昇勾配を取得する温度上昇勾配取得部を有し、前記継続運転時間変更部は、前記温度の上昇勾配に基づいて、前記継続運転時間を変更する構成とすることができる。
【0014】
この構成の冷却貯蔵庫は、先にも述べた温度センサの検出結果を用いるが、除霜運転が開始されてから温度センサが閾値を検出するまでの温度の上昇勾配を、着霜量指標値として利用する。温度の上昇勾配は、着霜量が多いほど緩やかになると考えられる。したがって、この構成の冷却貯蔵庫においては、温度の上昇勾配が小さいほど、継続運転時間が長くなるようにすることで、冷却器および冷却ダクトの除氷を確実に行いつつ、除霜運転による貯蔵室の温度上昇を抑制することができる。
【0015】
上記構成おいて、前記着霜量指標値取得部は、前記着霜量指標値として、前記貯蔵室を保持する温度として設定されている設定庫内温度を取得する設定庫内温度取得部を有し、 前記継続運転時間変更部は、前記設定庫内温度に基づいて、前記継続運転時間を変更する構成とすることができる。
【0016】
一般的に、冷蔵庫より冷凍庫の方が、冷却器への着霜量が大きくなる。つまり、貯蔵室内の設定された温度が低いほど、冷却器への着霜量が多くなる。この構成の冷却貯蔵庫においては、設定庫内温度が低くなるほど、継続運転時間が長くなるようにすることで、冷却器および冷却ダクトの除氷を確実に行いつつ、除霜運転による貯蔵室の温度上昇を抑制することができる。
【0017】
上記構成において、前記着霜量指標値取得部は、前記着霜量指標値として、前回の前記除霜運転の終了後から今回の前記除霜運転が開始されるまでに前記扉が開閉された回数である扉開閉回数を取得する扉開閉回数取得部を有し、前記継続運転時間変更部は、前記扉開閉回数に基づいて、前記継続運転時間を変更する構成とすることができる
【0018】
扉が開かれると、貯蔵室内には外気が取り込まれる。通常、外気は庫内の空気に比べて湿気が多く、扉を開閉すると冷却器への着霜量が多くなる。また、扉が開閉される回数が多いほど、着霜量は多くなると考えられる。したがって、この構成の冷却貯蔵庫においては、扉の開閉回数が多いほど、継続運転時間が長くなるようにすることで、冷却器および冷却ダクトの除氷を確実に行いつつ、除霜運転による貯蔵室の温度上昇を抑制することができる。
【0019】
上記構成において、前記ダクト加熱部は、前記冷却器における空気が流入する側の端部と鉛直方向において重畳する位置に設けられている構成とすることができる。
【0020】
例えば扉が開かれて、湿気を多く持った空気が貯蔵室内に入り込むと、その空気は、冷却器を通って庫内を循環することで冷却される。そして、その湿気を多く持った空気は、冷却器に流入する際に、その湿気が固化して、冷却器に着霜し易い。つまり、冷却器における空気が流入する側の端部は、最も霜が成長し易い。つまり、除霜運転によって、冷却ダクトには、冷却器における空気が流入する側の端部の下方に位置する箇所に、氷塊が落下し易いのである。この構成の冷却貯蔵庫によれば、その氷塊が落下し易い箇所に、ダクト加熱部が設けられているため、効率的に冷却ダクトの除氷を行うことができる。
【0021】
上記構成において、当該冷却貯蔵庫は、前記冷却ダクトに設けられて前記貯蔵室から前記冷却ダクト内へ空気を吸引する庫内ファンと、前記冷却ダクトにおける前記庫内ファンの周囲に設けられて前記庫内ファンの近傍を加熱する庫内ファン加熱部と、を備え、前記継続運転時間変更部は、前記冷却器加熱部を停止させた時点から前記庫内ファン加熱部を停止させるまでの時間を、前記着霜量指標値に基づいて変更する構成とすることができる。
【0022】
この構成の冷却貯蔵庫は、庫内ファンによって、貯蔵室の空気を冷却ダクトに吸引する構成となっている。したがって、庫内ファンや庫内ファンを覆うカバー等には、湿気を多く含む空気が触れるため、庫内ファンの周囲に着霜しやい。この構成の冷却貯蔵庫は、庫内ファン加熱部によって、庫内ファンの近傍を加熱することで、庫内ファンおよびその周辺の霜を融解することが可能である。そして、この庫内ファンへの着霜量も、冷却器の着霜量と、同じように増減すると考えられる。したがって、この構成の冷却貯蔵庫によれば、庫内ファン加熱部も、ダクト加熱部と同様に、着霜量指標値に基づいて作動時間が変更されるため、庫内ファンの除氷を確実に行いつつ、除霜運転による貯蔵室の温度上昇を抑制することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、冷却器および冷却ダクトの除氷を確実に行いつつ、除霜運転による貯蔵室の温度上昇を抑制することが可能な冷却貯蔵庫を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態の冷却貯蔵庫(冷凍庫)の正面図
図2】冷却貯蔵庫の側面断面図
図3】冷却ユニットおよびその周辺の構成を示す部分断面図
図4】冷却ダクトの内部を示す平面図
図5】冷却貯蔵庫が備える制御部の機能ブロック図
図6】除霜運転において継続運転時間を延長する場合のタイミングチャート
図7】除霜運転において
図8図5に示す制御部によって実行される除霜運転プログラムのフローチャート
図9】庫内ファン着霜状態判断処理サブルーチンのフローチャート
図10】延長時間決定処理サブルーチンのフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0025】
<冷却貯蔵庫の構成>
本発明の実施形態である冷却貯蔵庫10について、図1から図10に基づいて説明する。本実施形態の冷却貯蔵庫10は、図1に示すように、4ドア式の冷凍庫であり、飲食店等の調理場において主に使用される業務用のものである。以下、冷凍庫10と呼ぶ場合がある。なお、図面の一部には、符号Fr,Rr,L,R,U,Dを用いて方向を示しており、それぞれ、冷却貯蔵庫10を正面から視たときの手前側(前側),奥側(後側),左側,右側,上側,下側を表している。
【0026】
図1および図2に示すように、本実施形態の冷凍庫10は、上下方向に長い略直方体形状をなす貯蔵庫本体12を主体として構成されている。その貯蔵庫本体12は、外箱12Aと2つの内箱12B(図2に一方のみ図示)との間に断熱材が発泡充填されてなる断熱箱体である。各内箱12Bには、上下方向の概ね中央において左右方向に延びる角柱状の前面枠12Cが設けられている。それにより、各内箱12Bの開口13が上下に仕切られ、貯蔵庫本体12は、前面側に4つの開口13を有するものとなる。貯蔵庫本体12は、それら4つの開口13を開閉する4つの断熱扉14が取り付けられている。また、この貯蔵庫本体12の内部の大部分は、貯蔵室R1となっている。
【0027】
図2に示すように、貯蔵庫本体12の上には上側が開放された機械室16が設けられている。機械室16には冷却装置18、電装箱20およびオペレーションボックス22(図1参照)等が収容されている。冷凍庫10の使用者は、そのオペレーションボックス22が有する操作部22Aを操作して庫内の目標温度の設定などの各種の操作を行うことができる。以降の説明において、設定された目標温度のことを設定庫内温度Tという。
【0028】
図3を参照して、冷却ユニット18及びその周辺の構成について説明する。冷却ユニット18は、断熱性のユニット台30に冷却装置32を取り付けたものである。ユニット台30は、貯蔵庫本体12の天井壁12Dに形成されている開口12Eより一回り大きい形に形成されており、開口12Eを塞ぐように天井壁12Dの上に配置されている。
【0029】
冷却装置32は、圧縮機33、凝縮器34、凝縮器ファン35、冷却器である蒸発器36などを含んで構成される。なお、圧縮機33は、単位時間当たりの回転数が可変なインバータ圧縮機であってもよいし、回転数が一定の一定速圧縮機であってもよい。蒸発器36は、ユニット台30の下側に取り付けられており、天井(天井壁12Dおよびユニット台30)と、次に説明する冷却ダクト40とによって構成される冷却器室R2に収容されている。なお、この冷却ダクト40は、貯蔵室R1と、冷却器室R2とを区画するものとなっている。
【0030】
冷却ダクト40は、天井との間に冷却器室R2を形成するものであるとともに、蒸発器36を下方から覆って、蒸発器36に付着した霜が溶けた水である除霜水を受けるドレンパンとしても機能する。冷却ダクト40は、図3および図4に示すように、後側に向かって下方に傾斜する略平板状の底壁40A、底壁40Aの左右の縁部から上側に立ち上がっている側壁40B、および、底壁40Aの後側の縁部から上側に僅かに立ち上がっている後壁40Cを有している。
【0031】
図3に示すように、底壁40Aの前側部分には、冷却器室R1内に空気を吸い込むための円形の吸込口40Dが3つ形成されている。後壁40Cは、貯蔵庫本体12の背面壁12Fから前側に離間しており、後壁40Cと貯蔵庫本体12の背面壁12Fとの間に吹出口40Eが形成されている。また、後壁40Cには、左右方向の概ね中央から後側に向かって延びる断面U字状の排水溝40Fが一体的に形成されている。貯蔵庫本体12の背面壁12Fの内部には排水管42が設けられており、排水溝40Fは後側の端部が排水管42に接続されている。冷却ダクト40が受けた除霜水は、排水溝40Fから排水管42を介して庫外に排出される。
【0032】
冷却ダクト40の吸込口40Dの上側には、庫内ファン44が取り付けられている。庫内ファン44が作動させられると、貯蔵室R1内の空気が吸込口40Dから冷却器室R2に吸い込まれ、その吸い込まれた空気が蒸発器36によって冷却されて吹出口40Eから貯蔵室R1に吹き出される。つまり、冷却ダクト40は、貯蔵室R1と冷却器室R2との間で空気を循環させる経路を構成するものとなっている。
【0033】
図3に示すように、蒸発器36には、その下端側に除霜ヒータ50が設けられている。この除霜ヒータ50は、冷却器である蒸発器36を加熱する冷却器加熱部として機能するものであり、蒸発器36に付着した霜を溶かすためのもの、換言すれば、除霜するためのものである。また、図3および図4に示すように、冷却ダクト40には、この冷却ダクト40を加熱する第1融氷ヒータ52および第2融氷ヒータ54が設けられている。第1融氷ヒータ52は、冷却ダクト40を加熱するダクト加熱部として機能するものである。蒸発器36の着霜した霜が比較的大きな場合、蒸発器36が除霜ヒータ50によって加熱されると、その大きな霜は蒸発器36に直接触れている部分のみが溶かされ、他の部分が氷の塊となって冷却ダクト40上に落下することがある。第1融氷ヒータ52は、主に、その冷却ダクト40上に落下した氷塊を融解するために設けられている。
【0034】
例えば、断熱扉14が開かれると、貯蔵室R1内には外気が取り込まれる。通常、外気は貯蔵庫本体12内の空気に比べて湿気が多く、断熱扉14が開閉されると冷却器室R2近傍は着霜量が多くなる。特に、湿気を多く持った外気は、特に、蒸発器36に流入する際に、その湿気が固化して、蒸発器36に着霜し易い。つまり、蒸発器36における空気が流入する側(前方側)の端部は、最も霜が成長し易い。つまり、冷却ダクト40には、蒸発器36の前方側の端部から氷塊が落下し易いのである。第1融氷ヒータ52は、図3に示すように、蒸発器36の前方側の端部に対して、鉛直方向において重畳する下方側の位置、つまり、氷塊が最も落下し易い位置に設けられており、効率的に除霜を行うことができるようになっている。
【0035】
また、第2融氷ヒータ54は、図3および図4に示すように、冷却ダクト40における庫内ファン44の前方側に設けられている。上述したように、断熱扉14の開閉によって、湿気を多く含んだ外気が貯蔵室R1内に入り込むと、その外気は、庫内ファン44が冷却器室R2に吸引するため、庫内ファン44、および、冷却ダクト40における庫内ファン44の周囲に触れることになる。そのため、この庫内ファン44の周囲にも着霜し易い。つまり、第2融氷ヒータ54は、この庫内ファン44の周囲に付着した霜を融解するものであり、庫内ファン加熱部として機能するものとなっている。
【0036】
<冷却貯蔵庫における制御>
機械室16に収容された電装箱20には、当該冷凍庫10の制御を司る制御装置(制御部)60(図5参照)が収容されている。制御装置60は、CPU,ROM,RAMを有するコンピュータを主体とするものであり、冷却装置32の圧縮機33および凝縮器ファン35,庫内ファン44等が接続されており、ROM内に記憶された種々のプログラムを実行することによって、それらの接続された機器が制御されるようになっている。なお、本実施形態の冷凍庫10は、図5に示すように、オペレーションボックス22内に制御基板上に実装されて当該冷却貯蔵庫10の周囲温度TOUTを検出する外部温度センサ(サーミスタ)62と、蒸発器36内に設けられて蒸発器36内の空気温度である蒸発器温度Tを検出する除霜サーミスタ64と、断熱扉14の開閉状態を検出するドアスイッチ66と、を備えており、それらは、制御装置60に接続されている。
【0037】
(1)冷却運転
まず、制御装置60によって実行される冷却運転について説明する。冷却運転は、圧縮機33および凝縮器ファン35の運転/停止を切り替えることによって貯蔵室R1の温度である庫内温度を、操作部22Aから使用者によって設定可能な温度である設定庫内温度Tに対して所定の冷却温度範囲内に維持するものである。この冷却運転では、制御装置60は、圧縮機33,凝縮器ファン35および庫内ファン44を運転し、庫内温度が冷却温度範囲の下限温度まで低下すると、圧縮機33および凝縮器ファン35を停止させる。これにより、庫内温度は徐々に上昇するが、制御装置60は、庫内温度が冷却温度範囲の上限温度まで上昇すると、圧縮機33および凝縮器ファン35の運転を再開し、庫内温度を低下させる。制御装置60は、これを繰り返すことによって庫内温度を概ね冷却温度範囲内に維持するようになっている。
【0038】
(2)除霜運転
上記の冷却運転が実行されると、蒸発器36や冷却ダクト40に霜が付着する。そこで、制御装置60は、冷却運転が6時間行われるごとに、それら蒸発器36や冷却ダクト40を除霜する除霜運転を行うようになっている。この除霜運転は、いわゆるヒータデフロスト方式であり、上述した除霜ヒータ50,第1融氷ヒータ52および第2融氷ヒータ54を用いて除霜する方式である。そして、この除霜運転が開始されると、図6のタイミングチャートに示すように、制御装置60は、通常、圧縮機33,凝縮器ファン35および庫内ファン44を停止させ、除霜ヒータ50,第1融氷ヒータ52および第2融氷ヒータ54に通電して、蒸発器36,冷却ダクト40を加熱する。そして、制御装置60は、除霜サーミスタ64によって検出された蒸発器温度Tが閾温度T以上となると、蒸発器36の除霜が終了したとして、除霜ヒータ50への通電を終了する。ただし、制御装置60は、除霜ヒータ50への通電を終了しても、蒸発器36の水切りや、冷却ダクト40上に落下した氷塊を融解するために、第1融氷ヒータ52および第2融氷ヒータ54への通電を継続する。そして、制御装置60は、除霜ヒータ50の停止させた時点から継続運転時間tの間だけ、第1融氷ヒータ52および第2融氷ヒータ54への通電を継続するようになっている。
【0039】
例えば、継続運転時間が一定であると、冷却ダクト40上に落下した氷塊をその時間内で溶かすことができなかった場合に、冷却運転中にその氷塊の残氷を起点として氷が成長してしまうという問題がある。一方で、落下した氷塊が小さい場合には、冷却ダクト40が貯蔵室R1を区画する部材となっているため、冷却ダクト40の加熱は、貯蔵室R1の温度上昇に直結しており、貯蔵室R1内の貯蔵物に熱の影響を与えてしまうという問題がある。そこで、本実施圭太の冷凍庫10は、制御装置60が、第1融氷ヒータ52,第2融氷ヒータ54の各々の継続運転時間tを変更可能とされている。
【0040】
制御装置60は、蒸発器36の着霜量を指標する指標値である着霜量指標値を取得して、その着霜量指標値に基づいて、継続運転時間tを変更するようになっている。制御装置60は、後に詳しく説明する複数の着霜量指標値(本実施形態においては4つ)を取得可能とされており、それらのうちの1つにおいて着霜量が多いと判断された場合において、継続運転時間tを長くするように変更する。具体的には、制御装置60は、着霜量指標値が着霜量が多い場合に対する値であるほど、予め設定されている設定継続運転時間t(例えば、蒸発器36の水切りに必要な時間として設定することができる。)に対して付加する延長時間tを大きくすることで、継続運転時間t(=t+t)を変更するようになっている。
【0041】
ちなみに、この延長時間は、固定値であってもよいが、本実施形態においては、着霜量の多さに応じて、延長時間tが決定されるようになっており、蒸発器36および冷却ダクト40の除氷を確実に行いつつ、除霜運転による貯蔵室R1の温度上昇を効果的に抑制することができる。
【0042】
また、本実施形態の冷凍庫10は、除霜運転において、3つのヒータ50,52,54を作動させるため、貯蔵室R1の温度が上昇し易く、また、多くの電力を必要とする。そこで、本実施形態の冷凍庫10は、庫内ファン44の周囲の着霜量が少ない状況下においては、蒸発器36の除霜と同じ時間で、庫内ファン44近傍の除霜も行えると判断し、図7に示すように、除霜サーミスタ64によって検出された蒸発器温度Tが閾温度T以上となった場合に、除霜ヒータ50と同時に、第2融氷ヒータ54も停止するようになっている。これにより、貯蔵室R1内の温度上昇を抑制するとともに、第2融氷ヒータ54における電力消費を抑えて、省エネ化を図ることができる。なお、庫内ファン44の周囲の着霜量が少ない状況下にあるか否かの判断については、特に限定されるものではなく、後に具体例を挙げて説明する種々の方法に基づいて判断することができる。
【0043】
上述した除霜運転は、例えば図8にフローチャートを示す除霜運転プログラムが実行されることによって行われる。この除霜運転プログラムは、冷却運転が6時間行われた後、実行される。この除霜運転プログラムでは、まず、ステップ1(以下「S1」と略す場合がある。他のステップも同様である。)において、圧縮機33,凝縮器ファン35および庫内ファン44がOFF状態とされて冷却運転が停止され、S2において、除霜ヒータ50,第1融氷ヒータ52および第2融氷ヒータ54がON状態とされて、除霜運転が開始される。次いで、S3において、除霜サーミスタ64によって検出された蒸発器温度Tが閾温度T以上か否かが判断される。蒸発器温度Tが閾温度T以上となると、S4において、除霜運転が開始される前の冷却運転時における庫内ファンの着霜状態を判断する庫内ファン着霜状態判断処理が行われる。
【0044】
この庫内ファン着霜状態判断処理は、例えば図9にフローチャートを示す庫内ファン着霜状態判断処理サブルーチンが実行されることによって行われる。このサブルーチンは、庫内ファン44の着霜量が少ない状況下か否かを判断するものであり、庫内ファン44の着霜量が少ない状況下にない場合に、着霜状態フラグFLのフラグ値が0とされ、庫内ファンの着霜量が少ない状況下にある場合に、着霜状態フラグFLのフラグ値が1とされる。
【0045】
このサブルーチンでは、まず、S21において、除霜運転開始から現時点までの時間、つまり、除霜ヒータ50によって蒸発器36を加熱した時である冷却器加熱時間tが取得され、S22において、その取得した冷却器加熱時間tが前回の冷却器加熱時間t’より短いか否かの判定が行われる。蒸発器36内の空気温度Tが閾温度Tまで上昇するのにかかった時間が長くなればなるほど、蒸発器36の着霜量が多かったと推定できるとともに、蒸発器36の着霜量に比例して、庫内ファン44の着霜量も多かったと推定することができる。したがって、冷却器加熱時間tが前回の冷却器加熱時間t’より短かった場合には、庫内ファン44の着霜量が少ない状況下にあると判断して、S30において、着霜状態フラグFLのフラグ値が1とされる。
【0046】
S22において、庫内ファン44の着霜量が少ない状況下にはないと判断された場合には、S23,24において、また別の判断が行われる。ここでは、S23において、冷却運転中における外部温度センサ62によって検出された外部温度TOUTが取得され、S34において、その外部温度TOUTが、常時閾温度T(例えば、15℃)以下であったか否かの判定が行われる。外部温度TOUTが常時低かった場合には、外気の湿気が低くなるため、断熱扉14の開閉があったとしても、庫内へ侵入した水分は少なく、庫内ファン44への着霜量も少ないと推定することができる。したがって、S24において、外部温度TOUTが、常時閾温度T以下であった場合には、庫内ファン44の着霜量が少ない状況下にあると判断して、S30において、着霜状態フラグFLのフラグ値が1とされる。
【0047】
S24において、庫内ファン44の着霜量が少ない状況下にはないと判断された場合には、S25,26において、また別の判断が行われる。S25においては、冷却運転中における設定庫内温度Tが取得され、S26において、その設定庫内温度Tが、常時閾温度T(例えば、出荷時の設定庫内温度である-18℃)より大きかったか否かの判定が行われる。設定庫内温度Tが高いほど、庫内ファン44への着霜量は少なくなるため、設定庫内温度Tが閾温度Tより高い場合には、庫内ファン44への着霜量も少ないと推定することができる。したがって、S25において、設定庫内温度Tが常時閾温度Tより高かった場合には、庫内ファン44の着霜量が少ない状況下にあると判断して、S30において、着霜状態フラグFLのフラグ値が1とされる。
【0048】
S26において、庫内ファン44の着霜量が少ない状況下にはないと判断された場合には、S27,28において、また別の判断が行われる。S27においては、ドアスイッチ66の検出結果に基づいて、冷却運転中に断熱扉14が開閉された回数Nが取得され、S28において、扉開閉回数Nが0回であったか否かの判定が行われる。断熱扉14が開かれると、貯蔵室R1内には外気が取り込まれる。通常、外気は庫内の空気に比べて湿気が多く。断熱扉14を開閉すると蒸発器36や庫内ファン44への着霜量が多くなる。そして、断熱扉14が開閉される回数が多いほど、着霜量は多くなると考えられる。つまり、断熱扉14の開閉が無かった場合には、庫内の空気を循環させているのみであるため、庫内ファン44への着霜量が少ないと考えられる。したがって、S28において、扉開閉回数Nが0回であっ場合には、庫内ファン44の着霜量が少ない状況下にあると判断して、S30において、着霜状態フラグFLのフラグ値が1とされる。一方で、上述したいずれの判断においても、庫内ファン44の着霜量が少ない状況下にはないと判断された場合に、S29において、着霜状態フラグFLのフラグ値が0とされる。
【0049】
庫内ファン着霜状態判断処理サブルーチンが終了すると、除霜運転プログラムのS5において、延長時間決定処理が行われる。この延長時間決定処理は、蒸発器36への着霜量が多い場合には、冷却ダクト40上へ落下した氷塊も多いと推定し、継続運転時間tを長くするためのものであり、例えば図10にフローチャートを示す延長時間決定処理サブルーチンが実行されることによって行われる。このサブルーチンは、簡単に説明すれば、種々の着霜量指標値を取得して、それら着霜指標値が蒸発器36への着霜量が多いことを示した場合に、継続運転時間tを長くすべく、先に説明した延長時間tを決定するものである。
【0050】
この延長時間決定処理サブルーチンでは、まず、S31において、先に取得した冷却器加熱時間tが閾時間t以上であるか否かの判定が行われ、冷却器加熱時間tが前回の除霜運転時の冷却器加熱時間t’以上である場合には、S32において、それらの差分(t-t’)に基づいて、延長時間tが決定される。冷却器加熱時間が長いほど、蒸発器36の着霜量も多いと推定することができるため、それらの差分が大きいほど、延長時間tも大きくされるようになっている。
【0051】
また、S31において、冷却器加熱時間tが前回の冷却器加熱時間t’未満である場合には、S33において、除霜運転が開始された時点から現時点までの蒸発器温度Tの上昇勾配α(ΔT/t)が取得される。その温度上昇勾配αは、着霜量が多いほど緩やかになると考えられる。したがって、S34において、その上昇勾配αが閾値α以下であったか否かの判定が行われ、温度上昇勾配αが閾値α以下である場合には、S35において、それらの差分(α-α)に基づいて、延長時間tが決定される。
【0052】
また、S34において、温度上昇勾配αが閾値αより大きい場合には、S36において、先に取得した設定庫内温度Tが閾温度T(例えば-22℃)以下か否かの判定が行われる。先にも説明したように設定庫内温度Tが低いほど、蒸発器36への着霜量は多くなるため、設定庫内温度Tが閾温度T以下である場合には、S37において、それらの差分(T-T)が大きいほど、延長時間tも大きくされるようになっている。
【0053】
また、S36において、設定庫内温度Tが閾温度Tより大きい場合には、S38において、先に取得した扉開閉回数Nが閾回数N以上か否かの判定が行われる。先にも説明したように扉開閉回数Nが大きいほど、蒸発器36への着霜量は多くなるため、扉開閉回数Nが閾回数N以上である場合には、S39において、それらの差分(N-N)が大きいほど、延長時間tも大きくされるようになっている。なお、S38において、扉開閉回数Nが閾回数Nより小さい場合には、継続運転時間tは、設定継続運転時間tで十分であるため、S40において、tは0とされる。
【0054】
延長時間決定処理サブルーチンにおいて延長時間tが決定されると、除霜運転プログラムのS6において、着霜状態フラグFLのフラグ値が確認され、フラグ値が0で、庫内ファン44への着霜量が少ない状況下にはない場合には、S7以降が行われ、フラグ値が1で、庫内ファン44への着霜量が少ない状況下にある場合には、S10以降が行われる。
【0055】
着霜状態フラグFLのフラグ値が0である場合には、まず、S7において、除霜ヒータ50のみを停止させる。そして、S8において、その停止からの時間である継続運転時間tが、設定継続運転時間tと決定された延長時間tを足し合わせた時間(t+t)を経過するまで待機し、その時間を経過すると、S9において、第1融氷ヒータ52と第2融氷ヒータ54とを停止させる。一方、着霜状態フラグFLのフラグ値が1である場合には、S10において、除霜ヒータ50と第2融氷ヒータ54を停止させる。そして、S11において、その停止からの時間である継続運転時間tが、設定継続運転時間tを経過するまで待機し、その時間を経過すると、S12において、第1融氷ヒータ52を停止させる。以上で、除霜運転が終了し、S13において、圧縮機33,凝縮器ファン35および庫内ファン44を作動させ、冷却運転を再開させて、1回の除霜運プログラムが終了する。
【0056】
上述した制御を行う制御装置60は、図5にブロック図で示すような機能構成のものとされ、種々の機能部を有するものとなっている。詳しく言えば、制御装置60は、上述し除霜運転プログラムを実行することで除霜運転を行う部分を含んで構成される除霜運転実行部80を備えている。この除霜運転実行部80は、蒸発器36への着霜量を指標する指標値である着霜量指標値を取得する着霜量指標値取得部82と、庫内ファン44の周囲への着霜量が少ない状況下か否かを判断する庫内ファン着霜状態判断部84と、それら着霜量指標値取得部82および庫内ファン着霜状態判断部84からの情報に基づいて、3つの加熱部である除霜ヒータ50,第1融氷ヒータ52および第2融氷ヒータ54を制御する加熱部制御部86と、を備えている。
【0057】
また、着霜量指標値取得部82は、着霜量指標値として除霜ヒータ50を停止させるまでの時間である冷却器加熱時間tを取得する冷却器加熱時間取得部90と、霜量指標値として除霜ヒータ50を停止させるまでの間における除霜サーミスタ64によって検出された温度の上昇勾配αを取得する温度上昇勾配取得部92と、着霜量指標値として貯蔵室R1を保持する温度として設定されている設定庫内温度Tを取得する設定庫内温度取得部94と、着霜量指標値として前回の除霜運転の終了後から今回の除霜運転が開始されるまでに断熱扉14が開閉された回数である扉開閉回数Nを取得する扉開閉回数取得部96と、を有している。なお、本実施形態においては、冷却器加熱時間取得部90は、庫内ファン着霜状態判断処理サブルーチンのS21を実行する部分を含んで構成され、温度上昇勾配取得部92は、延長時間決定処理サブルーチンのS33を実行する部分を含んで構成され、設定庫内温度取得部94は、庫内ファン着霜状態判断処理サブルーチンのS25を実行する部分を含んで構成され、扉開閉回数取得部96は、庫内ファン着霜状態判断処理サブルーチンのS27を実行する部分を含んで構成されていると考えることができる。
【0058】
また、庫内ファン着霜状態判断部84は、今回の除霜運転において取得した冷却器加熱時間tが前回の除霜運転時における冷却器加熱時間t’より短い場合に、庫内ファン44の周囲への着霜量が少ない状況下にあると判断する冷却器加熱時間依拠判断部100と、前回の除霜運転終了後から今回の除霜運転開始前までにおける外部温度センサ62の検出結果に基づいて、庫内ファン44の周囲への着霜量が少ない状況下か否かを判断する外部温度依拠判断部102と、設定庫内温度Tに基づいて庫内ファン44の周囲への着霜量が少ない状況下か否かを判断する設定庫内温度依拠判断部104と、前回の除霜運転終了後から今回の除霜運転開始前までにおいて断熱扉14の開閉が無かった場合に、庫内ファン44の周囲への着霜量が少ない状況下にあると判断する扉開閉回数依拠判断部106と、を有しいている。なお、本実施形態においては、冷却器加熱時間依拠判断部100は、庫内ファン着霜状態判断処理サブルーチンのS22を実行する部分を含んで構成され、外部温度依拠判断部102は、庫内ファン着霜状態判断処理サブルーチンのS24を実行する部分を含んで構成され、設定庫内温度依拠判断部104は、庫内ファン着霜状態判断処理サブルーチンのS26を実行する部分を含んで構成され、扉開閉回数依拠判断部106は、庫内ファン着霜状態判断処理サブルーチンのS28を実行する部分を含んで構成されていると考えることができる。
【0059】
また、加熱部制御部86は、庫内ファン44の周囲への着霜量が少ない状況下にないと判断された場合に、除霜ヒータ50を停止した後、第1融氷ヒータ52および第2融氷ヒータ54を継続して作動させ、庫内ファン44の周囲への着霜量が少ない状況下にあると判断された場合に、除霜ヒータ50とともに第2融氷ヒータ54を停止し、第1融氷ヒータ52のみを継続して作動させる制御を行う部分、つまり、除霜運転プログラムのS6~S12を実行する部分を含んで構成されていると考えることができる。なお、この加熱部制御部86は、庫内ファン44の周囲への着霜量が少ない状況下にないと判断された場合において、除霜ヒータ50を停止させた時点から第1融氷ヒータ52および第2融氷ヒータ54を停止させるまでの時間である継続運転時間tを、着霜量指標値に基づいて変更する継続運転時間変更部110を有している。
【0060】
<冷却貯蔵庫の効果>
以上のように構成された本実施形態の冷却貯蔵庫10は、除霜運転実行部80が、着霜量指標値取得部82と、継続運転時間変更部110と、を有する構成とされていることで、冷却器加熱部である除霜ヒータ50を停止させた時点からダクト加熱部である第1融氷ヒータ52および庫内ファン加熱部である第2融氷ヒータ54を停止させるまでの継続運転時間(水切り時間)tを調整することが可能とされており、蒸発器36および冷却ダクト40の除氷を確実に行いつつ、除霜運転による貯蔵室R1の温度上昇を抑制することができる。また、本実施形態の冷却貯蔵庫10は、除霜運転実行部80が、庫内ファン着霜状態判断部84と、その判断に基づいて3つの加熱部を制御する加熱部制御部86と、を有する構成とされていることで、貯蔵室R1内の温度上昇を抑制するとともに、庫内ファン加熱部である第2融氷ヒータ54における電力消費を抑えて、省エネ化を図ることができる。
【0061】
<他の実施形態>
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。例えば、次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0062】
(1)本実施形態の冷却貯蔵庫10は、複数の着霜量指標値を取得するように構成されていたが、それらのうちのいずれか1つであってもよい。
【0063】
(2)本実施形態の冷却貯蔵庫10は、それら複数の着霜量指標値のうちいずれか1つに基づいて、延長時間tを決定するように構成されていたが、それに限定されず、着霜量が多いこと指標する指標値のすべて、あるいは、それらの2以上のものに基づいて延長時間tEを決定するような構成、例えば、複数の着霜量指標値に基づいて得られた延長時間を平均して算出したり、それらのうちで最大の値を採用したりする構成とすることができる。
【0064】
(3)本実施形態の冷却貯蔵庫10は、ダクト加熱部である第1融氷ヒータ52とともに、庫内ファン加熱部である第2融氷ヒータ54も、継続運転時間を変更するように構成されていたが、省エネ化という観点からすれば、第2融氷ヒータ54の継続運転時間は延長せず、少なくとも第1融氷ヒータ52の継続運転時間を延長可能な構成であればよい。換言すれば、第1融氷ヒータ52の継続運転時間と、第2融氷ヒータ54の継続運転時間とを、別々に決定する構成とすることもできる。
【符号の説明】
【0065】
10…冷却貯蔵庫(冷凍庫)、12…貯蔵庫本体、13…開口、14…断熱扉、R1…貯蔵室、R2…冷却器室、16…機械室、32…冷却装置、33…圧縮機、34…凝縮器、35…凝縮器ファン、36…蒸発器〔冷却器〕、40…冷却ダクト、44…庫内ファン、50…除霜ヒータ〔冷却器加熱部〕、52…第1融氷ヒータ〔ダクト加熱部〕、54…第2融氷ヒータ〔庫内ファン加熱部〕、60…制御装置〔制御部〕、62…外部温度センサ、64…除霜サーミスタ〔温度センサ〕、66…ドアスイッチ、80…除霜運転実行部、82…着霜量指標値取得部、84…庫内ファン着霜状態判断部、86…加熱部制御部、90…冷却器加熱時間取得部、92…温度上昇勾配取得部、94…設定庫内温度取得部、96…扉開閉回数取得部、100…冷却器加熱時間依拠判断部、102…外部温度依拠判断部、104…設定庫内温度依拠判断部、106…扉開閉回数依拠判断部、110…継続運転時間変更部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10