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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132084
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】ディスク装置用サスペンション
(51)【国際特許分類】
   G11B 21/21 20060101AFI20230914BHJP
【FI】
G11B21/21 D
G11B21/21 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022037205
(22)【出願日】2022-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】瀧川 健一
(72)【発明者】
【氏名】安藤 利樹
(57)【要約】
【課題】アウトリガー部のプロファイルを適正化することができるディスク装置用サスペンションを提供する。
【解決手段】ロードビーム12の長さ方向の一部に、厚さ方向に曲がるサグ曲げ部55が形成されている。ロードビーム12は、サグ曲げ部55を境に第1の部分12Aと、第2の部分12Bとを含んでいる。アウトリガー部33の根元部33aが溶接部41によってロードビーム12に固定されている。溶接部41の周りにスリット部60が形成されている。スリット部60は、円弧形スリット61と、一対の延長スリット62,63とを含んでいる。スリット部60の内側にアウトリガー支持部70が形成されている。アウトリガー支持部70は、ロードビーム12の厚さ方向の断面に関し、ロードビーム12の第2の部分12Bとは異なる方向に延びている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部と先端部とを有したロードビームと、
前記ロードビームに固定され、前記ロードビームの長さ方向に延びるアウトリガー部を有したフレキシャと、
を備えたディスク装置用サスペンションであって、
前記ロードビームの前記基部と前記先端部との間に形成され、前記ロードビームの厚さ方向に曲がるサグ曲げ部と、
前記サグ曲げ部を境に前記基部に近い側の第1の部分と、
前記サグ曲げ部を境に前記先端部に近い側の第2の部分と、
前記ロードビームと前記フレキシャとを互いに固定するとともに前記アウトリガー部の根元部を支持する溶接部と、
前記ロードビームの前記溶接部の周りに形成され、前記溶接部を半周以上囲むスリット部と、
前記スリット部の内側に存し、前記ロードビームの厚さ方向の断面に関し、前記第2の部分とは異なる方向に延びるアウトリガー支持部と、
を具備したことを特徴とするディスク装置用サスペンション。
【請求項2】
請求項1に記載のディスク装置用サスペンションにおいて、
前記スリット部が、
前記溶接部の周りを半周以上に形成された円弧形スリットと、前記円弧形スリットの両端に連なり前記溶接部から離れる方向に延びる一対の延長スリットとからなり、前記スリット部がU形をなしているディスク装置用サスペンション。
【請求項3】
請求項1に記載のディスク装置用サスペンションにおいて、
前記フレキシャの表面に前記溶接部の表ナゲットが露出し、前記溶接部の中心から前記スリット部までの距離が前記表ナゲットの径の1倍以上、3倍以下であるディスク装置用サスペンション。
【請求項4】
請求項1または2に記載のディスク装置用サスペンションにおいて、
前記ロードビームの側部に該ロードビームの長さ方向に沿うフランジ曲げ部を有し、
前記フランジ曲げ部と前記スリット部との間に、前記ロードビームの一部で、前記フランジ曲げ部に沿って前記ロードビームの長さ方向に延びる幅狭部を有したディスク装置用サスペンション。
【請求項5】
請求項2に記載のディスク装置用サスペンションにおいて、
前記円弧形スリットが前記ロードビームの前記第2の部分に形成され、前記延長スリットが前記サグ曲げ部を横切り前記第1の部分まで延びたディスク装置用サスペンション。
【請求項6】
請求項5に記載のディスク装置用サスペンションにおいて、
前記ロードビームの長さ方向に沿う断面に関し、前記第1の部分を前記長さ方向に延長した仮想の線分に対して、前記アウトリガー支持部の角度が前記第2の部分の角度よりも小さいディスク装置用サスペンション。
【請求項7】
請求項2に記載のディスク装置用サスペンションにおいて、
前記円弧形スリットが前記ロードビームの前記第1の部分に形成され、前記延長スリットが前記サグ曲げ部を横切り前記第2の部分まで延びたディスク装置用サスペンション。
【請求項8】
請求項1に記載のディスク装置用サスペンションにおいて、
前記スリット部が、
前記第1の部分に形成された第1スリットと、
前記第2の部分に形成された第2スリットとを含み、
前記第1スリットと前記第2スリットとが前記サグ曲げ部を境に互いに対称形であるディスク装置用サスペンション。
【請求項9】
請求項2に記載のディスク装置用サスペンションにおいて、
前記スリット部が前記ロードビームの前記第1の部分に形成され、前記延長スリットが前記ロードビームの幅方向に延びたディスク装置用サスペンション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロードビームとフレキシャとが互いに溶接部によって固定されたディスク装置用サスペンションに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばパーソナルコンピュータ等の情報処理装置に使用されるディスク装置は、スピンドルを中心に回転する磁気ディスクと、ピボット軸を中心に旋回するキャリッジなどを含んでいる。キャリッジのアームにディスク装置用サスペンションが設けられている。
【0003】
ディスク装置用サスペンション(これ以降はサスペンションと称す)は、ベースプレートと、ロードビーム(load beam)と、ロードビームに沿って配置されたフレキシャ(flexure)などを備えている。フレキシャの先端付近に形成されたジンバル部に、スライダが設けられている。スライダには、磁気ディスクに記録されたデータの読取りや書込み等のアクセスを行なうための素子が設けられている。従来のサスペンションの一例が特許文献1あるいは特許文献2に記載されている。
【0004】
前記ロードビームはステンレス鋼などの金属板からなる。前記フレキシャの一例は、メタルベースと、メタルベースに沿って形成された配線部とを含んでいる。前記メタルベースは、ロードビームよりも薄いステンレス鋼などの金属板からなる。前記ジンバル部の両側にアウトリガー部が形成されている。
【0005】
アウトリガー部は、前記メタルベースの一部からなり、前記ジンバル部を弾性的に支持している。前記メタルベースは、レーザスポット溶接等の溶接部によって前記ロードビームに固定されている。サスペンションの仕様によっては、前記溶接部がアウトリガー部の根元付近に形成されることがある。
【0006】
特許文献3に記載されたように、サスペンションの仕様によっては、ロードビームの長さ方向の中間部(基部と先端部との間)に、厚さ方向に小さな角度で曲がる曲げ部が形成されている。当業界ではこの曲げ部をサグ(sag)曲げ部と称している。サグ曲げ部は、ロードビームの長さ方向の一部を金型によってロードビームの厚さ方向に曲げることにより形成される。サグ曲げ部を有したロードビームは、サグ曲げ部を境に、ロードビームの基部に近い側の第1の部分と、ロードビームの先端部に近い側の第2の部分とを含んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2003/0086207号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2014/0268427号明細書
【特許文献3】特開2021-190151号公報
【特許文献4】米国特許第5,748,409号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ディスクの回転速度が大きくなり、しかもディスクの高密度化、高精度化に伴ない、ジンバル部付近の振動モードをコントロールすることがますます重要視されている。ジンバル部の振動モードを抑制するには、前記アウトリガー部のプロファイル(profile)を適正にコントロールする必要がある。
【0009】
この明細書で言う“アウトリガー部のプロファイル”とは、ロードビームを側面方向から見た時のアウトリガー部の形状や、ロードビームに対するアウトリガー部の角度等である。アウトリガー部のプロファイルが適正に保たれていないと、ジンバル部の振動を制御する上で悪影響が生じることがある。
【0010】
フレキシャの前記メタルベース(金属基板とも称す)は、複数の溶接部によってロードビームに固定されている。これら溶接部は、例えばレーザスポット溶接によって形成されるのが通例である。サスペンションによっては、複数の溶接部のうち一部の溶接部がアウトリガー部の根元付近に形成されている。前記溶接部が前記サグ曲げ部の近くに形成されることもある。
【0011】
アウトリガー部の根元付近を支持する溶接部が前記サグ曲げ部の近くに存在すると、アウトリガー部のプロファイルがサグ曲げ部の影響を受けることがある。前記第2の部分が前記第1の部分に対して厚さ方向に曲がるため、アウトリガー部の根元付近がサグ曲げの影響を受ける。場合によってはジンバル部の振動特性が悪くなる原因となる。
【0012】
特許文献4に、ロードビームとフレキシャとを互いに固定する溶接部が記載されている。溶接部を溶接する際に生じた熱応力を緩和させるために、溶接部のほぼ全周を囲む円形のスリットが形成されている。そのスリットは平らなロードビームの幅方向の中央寄りの位置に形成されている。しかも特許文献4はロードビームのサグ曲げ部やアウトリガー支持部について触れていない。
【0013】
本発明は、溶接部がアウトリガー部の根元付近に形成されかつ前記溶接部がサグ曲げ部の近くに設けられていても、アウトリガー部のプロファイルを適正に保つことができるディスク装置用サスペンションを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
ディスク装置用サスペンションの1つの実施形態は、基部と先端部とを有したロードビームと、前記ロードビームに溶接部によって固定されたフレキシャとを有している。前記ロードビームの前記基部と前記先端部との間に、厚さ方向に曲がるサグ曲げ部が形成されている。前記ロードビームは、前記サグ曲げ部を境に、前記基部に近い側の第1の部分と、前記先端部に近い側の第2の部分とを有している。前記フレキシャは、前記ロードビームの長さ方向に延びるアウトリガー部を有している。
【0015】
前記ロードビームの前記溶接部の周りに、前記溶接部を半周以上囲むスリット部が形成されている。前記スリット部の内側にアウトリガー支持部が形成されている。前記アウトリガー支持部は、前記ロードビームの厚さ方向の断面に関し、前記第2の部分とは異なる方向に延びている。
【0016】
前記スリット部の一例は、前記溶接部の周りに半周以上に形成された円弧形スリットと、前記円弧形スリットの両端に連なり、前記溶接部から離れる方向に延びる一対の延長スリットとからなり、U形をなしている。前記実施形態において、前記溶接部の表ナゲットが前記フレキシャの表面に露出し、前記溶接部の中心から前記スリット部までの距離が前記表ナゲットの径の1倍以上、3倍以下であるとよい。
【0017】
前記実施形態において、ロードビームの側部に該ロードビームの長さ方向に沿うフランジ曲げ部を有してもよい。前記フランジ曲げ部と前記スリット部との間に、前記ロードビームの一部で、前記フランジ曲げ部に沿って前記ロードビームの長さ方向に延びる幅狭部を有してもよい。
【0018】
前記円弧形スリットが前記ロードビームの前記第2の部分に形成され、前記延長スリットが前記サグ曲げ部を横切り前記第1の部分まで延びていてもよい。前記ロードビームの長さ方向に沿う断面において、前記第1の部分を前記長さ方向に延長した仮想の線分に対して、前記アウトリガー支持部の角度が前記第2の部分の角度よりも小さくてもよい。前記円弧形スリットが前記ロードビームの前記第1の部分に形成され、前記延長スリットが前記サグ曲げ部を横切り前記第2の部分まで延びていてもよい。
【0019】
他の実施形態では、前記スリット部が、前記第1の部分に形成された第1スリットと、前記第2の部分に形成された第2スリットとを含み、前記第1スリットと前記第2スリットとが前記サグ曲げ部を境に互いに対称形である。さらの別の実施形態では、前記スリット部が前記ロードビームの前記第1の部分に形成され、前記延長スリットが前記ロードビームの幅方向に延びている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1の実施形態に係るディスク装置用サスペンションをロードビームの側から見た平面図。
図2図1に示されたサスペンションをフレキシャの側から見た平面図。
図3図1に示されたサスペンションの一部を拡大した平面図。
図4図2に示されたサスペンションの一部を拡大した平面図。
図5図4に示されたサスペンションのアウトリガー部と溶接部等を拡大して示した平面図。
図6図5中のF6-F6線に沿うサスペンションの一部の断面図。
図7図5中のF7-F7線に沿うサスペンションの一部の断面図。
図8図1に示されたサスペンションのロードビームの斜視図。
図9】ディスク装置の一例を示す断面図。
図10図4に示されたサスペンションの一部を左右を逆にして表した平面図。
図11図10に示された線分L1,L2,L3に沿う位置と高さとの関係を示した図。
図12】第2の実施形態に係るサスペンションのアウトリガー部の根元部と溶接部等を示した断面図。
図13図12に示されたサスペンションにおいて、図10に示された線分L1,L2,L3に沿う位置と高さとの関係を示した図。
図14】第3の実施形態に係るサスペンションのアウトリガー部の根元部と溶接部等を示した断面図。
図15】第4の実施形態に係るサスペンションの一部の平面図。
図16】第5の実施形態に係るサスペンションの一部の平面図。
図17】第6の実施形態に係るサスペンションの一部の平面図。
図18図17中のF18-F18線に沿うサスペンションの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[第1の実施形態]
以下に第1の実施形態に係るディスク装置用サスペンション(これ以降はサスペンション10と称す)について、図1から図11を参照して説明する。
図1に示されたサスペンション10は、ベースプレート11と、ロードビーム12と、フレキシャ(flexure)13などを含んでいる。図1はサスペンション10をロードビーム12の側から見た平面図である。図2は、サスペンション10をフレキシャ13の側から見た平面図である。
【0022】
ロードビーム12はステンレス鋼の板からなり、サスペンション10の長さ方向に延びている。図1に両方向矢印X1で示す方向がロードビーム12の長さ方向である。図1に両方向矢印Y1で示す方向がロードビーム12の幅方向である。ロードビーム12の基部12a(図2に示す)がベースプレート11に固定されている。ロードビーム12の厚さは、例えば20~40μmであるが、それ以外の厚さでもよい。
【0023】
ロードビーム12の基部12aの近くに第1の圧電素子15a,15b(図1に示す)が配置されている。サスペンション10の先端部12bの近くに第2の圧電素子16a,16b(図2に示す)が配置されている。これらの圧電素子15a,15b,16a,16bは、サスペンション10の先端部12bをスウェイ方向(図1に両方向矢印S1で示す方向)に移動させる機能を有している。
【0024】
フレキシャ13は、ステンレス鋼の薄い板からなる金属基板(メタルベース)20と、金属基板20に沿って配置された配線部21とを含んでいる。金属基板20の厚さは、例えば20μm(12~25μm)であるが、それ以外の厚さでもよい。金属基板20の厚さはロードビーム12の厚さよりも小さい。
【0025】
図2に示されたようにフレキシャ13は、ロードビーム12に固定されたフレキシャ本体部30と、ベースプレート11の後方(図1にR1で示す方向)に延びるフレキシャテール31と、ジンバル部32と、一対のアウトリガー部33,34などを含んでいる。ジンバル部32は、フレキシャ13の先端13a付近に形成されている。ジンバル部32に設けられたタング35に、磁気ヘッドとして機能するスライダ36が配置されている。
【0026】
アウトリガー部33,34は金属基板20の一部からなる。アウトリガー部33,34は、フレキシャ本体部30の両側部からジンバル部32の両側部に向かって、フレキシャ13の長さ方向(ロードビーム12の長さ方向)に延びている。アウトリガー部33,34は、それぞれ細長い形状であり、ジンバル部32のタング35などを弾性的に支持している。アウトリガー部33,34の根元部33a,34aはフレキシャ本体部30に連なっている。
【0027】
フレキシャ13の金属基板20は、複数の溶接部41,42,43によって、ロードビーム12に固定されている。これら溶接部41,42,43は、レーザスポット溶接によって形成されている。第1の溶接部41は、アウトリガー部33,34の根元部33a,34aの近傍に形成されている。第2の溶接部42は、フレキシャ本体部30をロードビーム12に固定している。第3の溶接部43は、フレキシャ13の先端13aをロードビーム12に固定している。
【0028】
図3は、図1に示されたサスペンション10の一部を拡大した平面図である。図4は、図2に示されたサスペンション10の一部を拡大した平面図である。図5は、一方のアウトリガー部33の根元部33aと、溶接部41などを拡大して示した平面図である。アウトリガー部33の根元部33aは、溶接部41によって支持されている。
【0029】
図6は、図5中のF6-F6線に沿うサスペンション10の一部(溶接部41付近)の断面図である。図6はロードビーム12の長さ方向に沿う断面を示している。図7は、図5中のF7-F7線に沿う溶接部41付近の断面図である。図7はロードビーム12の幅方向に沿う断面を示している。
【0030】
図6図7とは、一対のアウトリガー部33,34のうち一方のアウトリガー部33の根元部33aと溶接部41とを示している。他方のアウトリガー部34の根元部34aと溶接部41は、一方のアウトリガー部33の根元部33aと溶接部41と同様に構成されている。このためこれ以降は、一方のアウトリガー部33と溶接部41を代表して説明する。
【0031】
図8はロードビーム12の斜視図である。ロードビーム12の両側部にフランジ曲げ部51,52が形成されている。フランジ曲げ部51,52はロードビーム12の長さ方向に延びている。図8中に両方向矢印X1で示された方向がロードビーム12の長さ方向である。図8中に両方向矢印Y1で示された方向がロードビーム12の幅方向である。
【0032】
ロードビーム12の長さ方向の一部(基部12aと先端部12bとの間)にサグ曲げ部55が形成されている。図6に示されたようにサグ曲げ部55は、ロードビーム12の長さ方向の一部を厚さ方向に角度θ1で曲げることにより形成されている。図8に示されたように、サグ曲げ部55はロードビーム12の幅方向に延びている。
【0033】
サグ曲げ部55を有したロードビーム12は、サグ曲げ部55を境に、基部12aに近い側の第1の部分12Aと、先端部12bに近い側の第2の部分12Bとを含んでいる。溶接部41は、サグ曲げ部55の近傍でロードビーム12の第2の部分12Bに形成されている。溶接部41は、アウトリガー部33の根元部33aをロードビーム12に固定するとともに、アウトリガー部33の根元部33aをロードビーム12に支持している。
【0034】
ロードビーム12にU形のスリット部60が形成されている。スリット部60は、ロードビーム12の平面視において、溶接部41を含む領域W1(図3に示す)に形成されている。この明細書で言う「溶接部41を含む領域W1」とは、アウトリガー部33の根元部33aと、溶接部41と、サグ曲げ部55の一部とを含むロードビーム12の一部である。
【0035】
スリット部60は、溶接部41のほぼ半周を囲む円弧形スリット61と、円弧形スリット61の両端に連なる一対の延長スリット62,63とを含んでいる。スリット部60の内側にアウトリガー支持部70が形成されている。アウトリガー支持部70に溶接部41が形成されている。
【0036】
円弧形スリット61はロードビーム12の第2の部分12Bに形成されている。本実施形態の円弧形スリット61は、溶接部41の周りにほぼ半円形に形成されている。延長スリット62,63は、円弧形スリット61の両端から、ロードビーム12の長さ方向に沿って、溶接部41から離れる方向に延びている。これら延長スリット62,63は、ロードビーム12の第2の部分12Bからサグ曲げ部55を横切り、ロードビーム12の第1の部分12Aまで延びている。
【0037】
フランジ曲げ部51とスリット部60との間に幅狭部71が形成されている。幅狭部71はロードビーム12の一部であり、フランジ曲げ部51に沿ってロードビーム12の長さ方向に延びている。ロードビーム12にスリット部60が形成されているため、ロードビーム12の曲げ剛性がスリット部60の付近で小さくなる。しかしフランジ曲げ部51が幅狭部71の近傍に設けられているため、ロードビーム12として必要な剛性が得られている。
【0038】
溶接部41は、レーザ照射装置によってレーザ光をフレキシャ13の側から照射することにより形成される。レーザ光が集光された箇所が溶融し硬化することにより、溶接部41が形成される。溶接部41は、フレキシャ13の表面に露出する概ね円形の表ナゲット41aと、ロードビーム12の裏面に露出する概ね円形の裏ナゲット41bとを有している。他の実施形態では、レーザ光をロードビーム12の側から照射してもよい。
【0039】
図5に示された溶接部41の表ナゲット41aの径D1は、裏ナゲット41b(図6に示す)の径よりも大きい。表ナゲット41aの径D1は、例えば0.13~0.16mmである。溶接部41の中心C1からスリット部60までの距離D2が小さすぎると、溶接時に使用する押さえ治具の当接面を確保することが難しくなる。
【0040】
溶接部41の中心C1からスリット部60までの距離D2が大きすぎると、スリット部60の一部がフランジ曲げ部51に達する可能性があるため好ましくない。また溶接部41の中心C1からスリット部60までの距離D2が大きいほど、アウトリガー支持部70の面積が大きくなるため、アウトリガー支持部70の剛性が過剰となる。溶接部41の中心C1からスリット部60までの距離D2は、表ナゲット41aの径D1の1倍以上、3倍以下が望ましい。
【0041】
図6に示されたように、ロードビーム12を側面方向から見て、第2の部分12Bは第1の部分12Aに対し、ロードビーム12の厚さ方向に曲がっている。すなわち第2の部分12Bは、サグ曲げ部55を境にロードビーム12の厚さ方向に角度θ1をなして曲がっている。これに対しアウトリガー支持部70は、ロードビーム12の第2の部分12Bと同じ側に、角度θ2をなして曲がっている。
【0042】
図6に示されたように、アウトリガー支持部70は、ロードビーム12の第2の部分12Bとは異なる方向に延びている。ここで第1の部分12Aをロードビーム12の長さ方向に延長した仮想の線分をX2(図6に示す)とする。この線分X2に対してアウトリガー支持部70がなす角度θ2は、線分X2に対して第2の部分12Bがなす角度θ1よりも小さい。
【0043】
アウトリガー部33の根元部33aは、アウトリガー支持部70に溶接部41によって固定されている。このためアウトリガー部33の根元部33aは、アウトリガー支持部70と対応した角度θ2で曲がっている。図7に示されたように、アウトリガー支持部70は、ロードビーム12に対して厚さ方向に異なる高さに存している。
【0044】
図9はディスク装置80の一例を模式的に示した断面図である。ディスク装置80は、ケース81(一部のみ示す)と、スピンドルを中心に回転するディスク82と、ピボット軸83を中心に旋回するキャリッジ84と、キャリッジ84を駆動するためのポジショニング用のモータ85などを有している。ケース81は蓋によって密閉される。キャリッジ84の複数のアーム部86の先端に、それぞれサスペンション10のベースプレート11が固定されている。
【0045】
ディスク82が回転すると、スライダ36とディスク82との間にエアベアリングが形成される。ポジショニング用のモータ85よってキャリッジ84が旋回すると、サスペンション10がディスク82の径方向に移動する。これによりスライダ36がディスク82の所望位置に移動する。
【0046】
図10は、アウトリガー部33を含むサスペンション10の一部を拡大した平面図である。説明の都合上、図10図4とは左右を逆にして表わしている。図11は、図10に示された線分L1,L2,L3に沿う位置と高さとの関係を示している。図11中の線分L3で示されたように、アウトリガー部33のプロファイルは、アウトリガー支持部70の角度θ2(図6に示す)に応じて適正化されている。
【0047】
[第2の実施形態]
図12は、第2の実施形態に係るサスペンション10Aのアウトリガー支持部70付近の断面図である。このサスペンション10Aのアウトリガー支持部70は、ロードビーム12の長さ方向に沿う断面に関して、第1の部分12Aと同じ方向に延びている。アウトリガー支持部70は、ロードビーム12の第2の部分12Bに対し、角度θ1をなして第2の部分12Bとは異なる方向に延びている。
【0048】
図13は、図10に示された線分L1,L2,L3に相当する箇所の位置と高さとの関係を示している。第2の実施形態のサスペンション10A(図12に示す)のアウトリガー部33は、図13中の線分L3で示されたように、アウトリガー支持部70に応じたプロファイルとなっている。本実施形態では、線分L1,L2に対応した箇所の高さがロードビーム12の裏面を基準に測定され、図13上で方向と高さとを合わせている。それ以外の構成と作用について、第2の実施形態のサスペンション10Aは、第1の実施形態のサスペンション10(図1から図8に示す)と共通であるため、両者に共通の箇所に共通の符号を付して説明を省略する。
【0049】
[第3の実施形態]
図14は、第3の実施形態に係るサスペンション10Bのアウトリガー支持部70付近の断面図である。このサスペンション10Bのアウトリガー支持部70は、ロードビーム12の長さ方向に沿う断面に関して、第2の部分12Bの反対側に、負の角度θ3をなして曲がっている。このサスペンション10Bのアウトリガー部33は、負の角度θ3で曲がるアウトリガー支持部70に応じたプロファイルとなる。それ以外の構成と作用について、第3の実施形態のサスペンション10Bは、第1の実施形態のサスペンション10と共通であるため、両者に共通の箇所に共通の符号を付して説明を省略する。
【0050】
[第4の実施形態]
図15は、第4の実施形態に係るサスペンション10Cを示す平面図である。このサスペンション10Cのスリット部60の円弧形スリット61は、ロードビーム12の第1の部分12Aに形成されている。延長スリット62,63は、第1の部分12Aからサグ曲げ部55を横切って第2の部分12Bまで延びている。それ以外の構成と作用について、第4の実施形態のサスペンション10Cは、第1の実施形態のサスペンション10と共通であるため、両者に共通の箇所に共通の符号を付して説明を省略する。
【0051】
[第5の実施形態]
図16は、第5の実施形態に係るサスペンション10Dを示す平面図である。このサスペンション10Dのスリット部60は、サグ曲げ部55を対称軸として、互いに対称形の第1スリット60Aと第2スリット60Bとを有している。第1スリット60Aは、ロードビーム12の第1の部分12Aに形成されている。第2スリット60Bは、ロードビーム12の第2の部分12Bに形成されている。
【0052】
第1スリット60Aと第2スリット60Bとからなるスリット部60の内側に、溶接部41を有したアウトリガー支持部70が形成されている。なお、第1スリット60Aと第2スリット60Bとが完全に対称形である必要はない。例えば第1スリット60Aと第2スリット60Bとが、サグ曲げ部55を境に多少非対称であってもよい。これら以外の構成と作用について、第5の実施形態のサスペンション10Dは、第1の実施形態のサスペンション10と共通であるため、両者に共通の箇所に共通の符号を付して説明を省略する。
【0053】
[第6の実施形態]
図17は、第6の実施形態に係るサスペンション10Eを示す平面図である。図18図17中のF18-F18線に沿うサスペンション10Eの断面図である。このサスペンション10Eは、ロードビーム12の長さ方向に延びる軸線X3を対称軸として、線対称の一対のスリット部60を有している。これらスリット部60は、ロードビーム12の第1の部分12Aに形成されている。延長スリット62,63はロードビーム12の幅方向に延びている。スリット部60の内側に、溶接部41を有したアウトリガー支持部70が形成されている。
【0054】
図18に示されたように、サスペンション10Eのロードビーム12の断面(幅方向の断面)は、中央部分がフランジ曲げ部51,52とは反対側にやや凸の湾曲した形状である。一対のアウトリガー支持部70がそれぞれロードビーム12の幅方向に延びている。それ以外の構成と作用について、第6の実施形態のサスペンション10Eは、第1の実施形態のサスペンション10と共通であるため、両者に共通の箇所に共通の符号を付して説明を省略する。
【0055】
本発明を実施するに当たり、サスペンションを構成するロードビームやフレキシャの具体的な形状や構成をはじめとして、サグ曲げ部や、アウトリガー部、スリット部、アウトリガー支持部の形状や配置等を必要に応じて変更して実施できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0056】
10,10A,10B,10C,10D,10E…ディスク装置用サスペンション、12…ロードビーム、12a…基部、12b…先端部、12A…第1の部分、12B…第2の部分、13…フレキシャ、20…金属基板、30…フレキシャ本体部、32…ジンバル部、33,34…アウトリガー部、33a,34a…根元部、41…溶接部、41a…表ナゲット、41b…裏ナゲット、51,52…フランジ曲げ部、55…サグ曲げ部、60…スリット部、61…円弧形スリット、62,63…延長スリット、70…アウトリガー支持部、71…幅狭部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18