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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023013209
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】化合物
(51)【国際特許分類】
   C09B 23/08 20060101AFI20230119BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20230119BHJP
   C09B 67/20 20060101ALI20230119BHJP
   C07C 255/61 20060101ALI20230119BHJP
   C07C 251/20 20060101ALI20230119BHJP
   C07D 209/14 20060101ALI20230119BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20230119BHJP
   C08K 5/16 20060101ALI20230119BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
C09B23/08
C09K3/00 104Z
C09B67/20 F
C07C255/61
C07C251/20
C07D209/14
C08L101/00
C08K5/16
C08F2/44 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021117216
(22)【出願日】2021-07-15
(71)【出願人】
【識別番号】503454506
【氏名又は名称】東友ファインケム株式会社
【氏名又は名称原語表記】DONGWOO FINE-CHEM CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】132, YAKCHON-RO, IKSAN-SI, JEOLLABUK-DO 54631, REPUBLIC OF KOREA
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】淺津 悠司
(72)【発明者】
【氏名】西上 由紀
(72)【発明者】
【氏名】久門 浩司
【テーマコード(参考)】
4H006
4J002
4J011
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AB92
4H006QN30
4J002AA001
4J002BB021
4J002BB061
4J002BB111
4J002BB221
4J002BC021
4J002BC061
4J002BD031
4J002BD101
4J002BE031
4J002BF021
4J002BF031
4J002BN151
4J002CB001
4J002CC031
4J002CC161
4J002CC181
4J002CD001
4J002CF061
4J002CF071
4J002CF211
4J002CG001
4J002CG011
4J002CK021
4J002CL001
4J002CM041
4J002CN011
4J002EN026
4J002EN066
4J002ER006
4J002ET006
4J002EU026
4J002EU166
4J002EV026
4J002EV046
4J002EV216
4J002FD096
4J002FD140
4J002GA01
4J002GB01
4J002GC00
4J002GF00
4J002GG00
4J002GH00
4J002GK00
4J002GL00
4J002GP00
4J002GP01
4J002GQ00
4J011PA36
4J011PA43
4J011PA44
4J011PA45
4J011PA48
4J011PB24
4J011PB25
4J011PC02
4J011PC08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】可視光領域の光を効率よく吸収し、かつ、良好な耐候性を有する新規化合物を提供する。
【解決手段】式(1)などのカチオンと、式(4)などのアニオンとを有する化合物。


【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I-A)で表されるカチオン及び式(I-B)で表されるカチオンから選ばれる少なくとも1つのカチオンと、アニオンとを有する化合物。
【化1】

[式(I―A)及び(I-B)中、
環W及び環Wは、それぞれ独立して、少なくとも1つの二重結合を環の構成要素として有する環構造を表す。
環W及び環Wは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい。
環W及び環Wは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい含窒素複素環基を表す。ただし、環W及び環Wは、ピロール環構造及び硫黄原子を含まない。
Ar及びArは、それぞれ独立して、芳香族基を表す。
及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は1価の置換基を表す。]
【請求項2】
前記アニオンが、有機アニオンである請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記アニオンが、メチドアニオン、アミドアニオン、スルホナートアニオン又はボレートアニオンである請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
前記アニオンが、式(c-A)で表されるアニオン、式(c-B)で表されるアニオン、式(c-C)で表されるアニオン及び式(c-D)で表されるアニオンのうちのいずれかである請求項2又は3に記載の化合物。
【化2】

[式(c-A)中、R1c、R2c及びR3cは、それぞれ独立して、1価の置換基を表す。
式(c-B)中、R4c及びR5cは、それぞれ独立して、1価の置換基を表す。
式(c-C)中、R6cは、1価の置換基を表す。
式(c-D)中、R7c、R8c、R9c及びR10cは、それぞれ独立して1価の置換基を表す。]
【請求項5】
1c、R2c、R3c、R4c、R5c、R6c、R7c、R8c、R9c及びR10cは、それぞれ独立して、フッ素原子、炭素数1~12のフルオロアルキル基、炭素数6~18のフルオロアリール基、シアノ基、ニトロ基、-SO-R11c(R11cは、フッ素原子を有していてもよい炭素数1~12の炭化水素基を表す。)である請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
前記アニオンが、式(c-A1)で表されるアニオン、式(c-B1)で表されるアニオン、式(c-C1)で表されるアニオン、式(c-D1)で表されるアニオン及び式(c-D2)で表されるアニオンのうちのいずれかである請求項4又は請求項5に記載の化合物。
【化3】

[式(c-A1)中、Rf、Rf及びRfは、それぞれ独立して、炭素数1~12のフルオロアルキル基を表す。
式(c-B1)中、Rf及びRfは、それぞれ独立して、フッ素原子又は炭素数1~12のフルオロアルキル基を表す。
式(c-C1)中、Rfは、炭素数1~12のフルオロアルキル基を表す。
式(c-D2)中、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立して、フッ素原子又は炭素数1~12のフルオロアルキル基を表す。n1~n4は、それぞれ独立して、0~5の整数を表す。]
【請求項7】
前記アニオンが、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートアニオンである請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の化合物と樹脂とを含む組成物。
【請求項9】
請求項1~7のいずれかに記載の化合物と重合性モノマーとを含む組成物。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の組成物から成形される成形体。
【請求項11】
請求項1~7のいずれかに記載の化合物によって染色された染色物。
【請求項12】
請求項1~7のいずれかに記載の化合物を含む光学層。
【請求項13】
請求項12に記載の光学層と波長変換層とが積層された積層体。
【請求項14】
下記式(M-A)で表される化合物。
【化4】

[式(M-A)中、
環W及び環Wは、それぞれ独立して、少なくとも1つの二重結合を環の構成要素として有する環構造を表す。
環W及び環Wは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい。
環Wは、置換基を有していてもよい含窒素複素環基を表す。ただし、環Wは、ピロール環構造及び硫黄原子を含まない。]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
可視光の光を吸収する色素化合物は、物体の着色や特定波長の光の透過又は吸収等の目的で、繊維、インク、塗料、容器、包材、印刷物、光学物品、メガネ、表示装置等の幅広い用途に使用されている。色素化合物の重要な特性として選択吸収性(吸収スペクトルのシャープネス)及び耐久性(とりわけ耐候性)が挙げられる。色素化合物の中でもシアニン色素は、ポリメチン骨格中のメチン炭素数をコントロールすることにより波長380nm以下の紫外線領域から波長780nm以上の近赤外線領域まで幅広く極大吸収を示す波長をコントロールすることができる点、またシアニン色素の多くは比較的高い選択吸収性を示すことから、広く用いられてきた(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6004536号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、シアニン色素は高い選択吸収性を有するものの、耐久性(なかでも耐候性)に劣るものが多く、良好な耐久性を有する化合物が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の発明を含む。
[1] 式(I-A)で表されるカチオン及び式(I-B)で表されるカチオンから選ばれる少なくとも1つのカチオンと、アニオンとを有する化合物。
【化1】

[式(I-A)及び(I-B)中、
環W及び環Wは、それぞれ独立して、少なくとも1つの二重結合を環の構成要素として有する環構造を表す。
環W及び環Wは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい。
環W及び環Wは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい含窒素複素環基を表す。ただし、環W及び環Wは、ピロール環構造及び硫黄原子を含まない。
Ar及びArは、それぞれ独立して、芳香族基を表す。
及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は1価の置換基を表す。]
[2] 前記アニオンが、有機アニオンである[1]に記載の化合物。
[3] 前記アニオンが、メチドアニオン、アミドアニオン、スルホナートアニオン又はボレートアニオンである[2]に記載の化合物。
[4] 前記アニオンが、式(c-A)で表されるアニオン、式(c-B)で表されるアニオン、式(c-C)で表されるアニオン及び式(c-D)で表されるアニオンのうちのいずれかである[2]又は[3]に記載の化合物。
【化2】

[式(c-A)中、R1c、R2c及びR3cは、それぞれ独立して、1価の置換基を表す。
式(c-B)中、R4c及びR5cは、それぞれ独立して、1価の置換基を表す。
式(c-C)中、R6cは、1価の置換基を表す。
式(c-D)中、R7c、R8c、R9c及びR10cは、それぞれ独立して1価の置換基を表す。]
[5] R1c、R2c、R3c、R4c、R5c、R6c、R7c、R8c、R9c及びR10cは、それぞれ独立して、フッ素原子、炭素数1~12のフルオロアルキル基、炭素数6~18のフルオロアリール基、シアノ基、ニトロ基、-SO-R11c(R11cは、フッ素原子を有していてもよい炭素数1~12の炭化水素基を表す。)である[4]に記載の化合物。
[6] 前記アニオンが、式(c-A1)で表されるアニオン、式(c-B1)で表されるアニオン、式(c-C1)で表されるアニオン、式(c-D1)で表されるアニオン及び式(c-D2)で表されるアニオンのうちのいずれかである[4]又は[5]に記載の化合物。
【化3】

[式(c-A1)中、Rf、Rf及びRfは、それぞれ独立して、炭素数1~12のフルオロアルキル基を表す。
式(c-B1)中、Rf及びRfは、それぞれ独立して、フッ素原子又は炭素数1~12のフルオロアルキル基を表す。
式(c-C1)中、Rfは、炭素数1~12のフルオロアルキル基を表す。
式(c-D2)中、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立して、フッ素原子又は炭素数1~12のフルオロアルキル基を表す。n1~n4は、それぞれ独立して、0~5の整数を表す。]
[7] 前記アニオンが、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートアニオンである[6]に記載の化合物。
[8] [1]~[7]のいずれかに記載の化合物と樹脂とを含む組成物。
[9] [1]~[7]のいずれかに記載の化合物と重合性モノマーとを含む組成物。
[10] [8]又は[9]に記載の組成物から成形される成形体。
[11] [1]~[7]のいずれかに記載の化合物によって染色された染色物。
[12] [1]~[7]のいずれかに記載の化合物を含む光学層。
[13] [12]に記載の光学層と波長変換層とが積層された積層体。
[14] 下記式(M-A)で表される化合物。
【化4】

[式(M-A)中、
環W及び環Wは、それぞれ独立して、少なくとも1つの二重結合を環の構成要素として有する環構造を表す。
環W及び環Wは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい。
環Wは、置換基を有していてもよい含窒素複素環基を表す。ただし、環Wは、ピロール環構造及び硫黄原子を含まない。]
【発明の効果】
【0006】
本発明は、可視光領域(波長400nm~波長750nm、好ましくは波長450nm~波長600nm)の光を効率よく吸収し、かつ、良好な耐候性を有する新規化合物を提供することを目的とする。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の化合物は、式(I-A)で表されるカチオン及び式(I-B)で表されるカチオンから選ばれる少なくとも1つのカチオンと、アニオンとを有する化合物(以下、化合物(I)という場合がある。)である。
【化5】

[式(I-A)及び(I-B)中、
環W及び環Wは、それぞれ独立して、少なくとも1つの二重結合を環の構成要素として有する環構造を表す。
環W及び環Wは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい。
環W及び環Wは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい含窒素複素環基を表す。ただし、環W及び環Wは、ピロール環構造及び硫黄原子を含まない。
Ar及びArは、それぞれ独立して、芳香族基を表す。
及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は1価の置換基を表す。]
【0008】
<カチオン>
式(I-A)で表されるカチオンは下記の共鳴構造を含む。
【化6】

また、式(I-B)で表されるカチオンは下記の共鳴構造を含む。
【化7】
【0009】
環W及び環Wは、それぞれ独立して、環の構成要素として、少なくとも1つの二重結合を有する環構造を表す。環W及び環Wは環の構成要素として二重結合を1つ以上有するが、環W及び環Wに含まれる二重結合は通常1~4であり、1~3であることが好ましく、1又は2であることがより好ましく、1つであることがさらに好ましい。
環W及び環Wは、それぞれ独立して、単環であってもよいし、多環であってもよい。環W及び環Wは、それぞれ独立して、芳香環であってもよいし、芳香族性を有さない環(脂肪族環)であってもよいが、芳香族性を有さない環であることが好ましい。芳香族性を有さない環であれば、より選択吸収性を高めることができる。
環W及び環Wは、それぞれ独立して、ヘテロ原子(例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等)を含む複素環であってもよいし、炭化水素からなる環であってもよい。環W及び環Wは、それぞれ独立して、炭化水素からなる環であることが好ましい。
環W及び環Wは、それぞれ独立して、3員環~20員環の環構造であることが好ましく、3員環~12員環であることがより好ましく、4員環~6員環であることが好ましい。
環W及び環Wは、それぞれ独立して、単環であることが好ましい。
【0010】
環Wと環Wとは縮合環を形成している。環Wと環Wとで形成される縮合環は、脂肪族炭化水素の縮合環であることが好ましく、炭素数6~40の脂肪族炭化水素の縮合環であることがより好ましい。
環Wと環Wとで形成される縮合環は、例えば、下記式(W-1)で表される縮合環~式(W-18)で表される縮合環等が挙げられる。下記式中の*は、結合手を表す。
【化8】
【0011】
環W及び環Wは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい。該置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基、プロピル基、ノルマルブチル基、イソブチル基、ターシャリーブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、2-エチルヘキシル基、4-ブチルオクチル基、エテニル基、プロぺニル基、ブテニル基、ペンテニル基、エチニル基、プロピニル基、アリル基、シクロヘキセニル基、ブタジエニル基等の炭素数1~25の脂肪族炭化水素基(好ましくは炭素数1~12のアルキル基);フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2-フルオロエチル基、2,2-ジフルオロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、1,1,2,2-テトラフルオロエチル基、1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル基、ノナフルオロブチル基等の炭素数1~25のハロゲン化アルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ターシャリーブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基、4-ブチルオクチルオキシ基等の炭素数1~25のアルコキシ基;メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基等の炭素数1~12のアルキルチオ基;モノフルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、2-フルオロエトキシ基、1,1,2,2,2-ペンタフルオロエトキシ基、ヘキサフルオロイソプロポキシ基等の炭素数1~12のフッ素化アルコキシ基;トリフルオロメタンチオアルコキシ基等の炭素数1~12のフッ素化アルコキシ基;アミノ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ピぺリジノ基、ピロリジノ基、メチルエチル等の1つ又は2つの炭素数1~25の置換基で置換されていてもよいアミノ基;カルバモイル基、N-メチルカルバモイル基、N,N-ジメチルカルバモイル基等のN-位が炭素数1~6のアルキル基で置換されていてもよいカルバモイル基;メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基等の炭素数2~12のアルキルカルボニルオキシ基;メチルスルホニル基、エチルスルホニル基等の炭素数1~12のアルキルスルホニル基;フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、アントラセニル基等の炭素数6~25の芳香族炭化水素基(好ましくは炭化水素6~18のアリール基);フェニルスルホニル基等の炭素数6~12のアリールスルホニル基;メトキシスルホニル基、エトキシスルホニル基等の炭素数1~12のアルコキシスルホニル基;トリフルオロメチルスルホニル基、ペンタフルオロエチルスルホニル基、トリフルオロエチルスルホニル基等の炭素数1~12のフルオロアルキルスルホニル基;アセチル基、エチルカルボニル基等の炭素数2~12のアシル基;アルデヒド基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基等の炭素数2~12のアルコキシカルボニル基;メトキシチオカルボニル基、エトキシチオカルボニル基等の炭素数2~12のアルコキシチオカルボニル基;シアノ基;ニトロ基;水酸基;チオール基;スルホ基;カルバモイル基;カルボキシル基;-SF;-SF等が挙げられる。
環Wと環Wとで形成される縮合環も、置換基を有していてもよく、該置換基は環W又は環Wが有していてもよい置換基が挙げられる。
【0012】
環W及び環Wは、それぞれ独立して、含窒素複素環基を表す。ただし、環W及び環Wは、ピロール環構造及び硫黄原子を含まない。なお、ピロール環構造及び硫黄原子を含まないというのは、環W及び環Wが置換基を有する場合には、置換基中にもピロール環構造及び硫黄原子を含まないことをいう。
環W及び環Wは、ピロール環構造及び硫黄原子を含まない限りは、特に限定されない。環W及び環Wとしては、例えば、ピペリジン環基、アジリジン環基、モルホリン環基、インドリン環基、イミダゾール環基、イミダゾリン環基、テトラゾール環基、オキサゾリン環基等が挙げられる。
環W及び環Wは、同じ基であることが好ましい。
環W及び環Wは、それぞれ独立して、インドリン環基、イミダゾール環基又はイミダゾリン環基であることが好ましい。
環W及び環Wは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい。該置換基としては、上記で説明した環W及び環Wが有していてもよい置換基が挙げられる。
【0013】
Ar及びArで表される芳香族基としては、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基等が挙げられる。
Ar及びArで表される芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、ビフェニル基、ターシャリーフェニル基、フェニルターシャリーフェニル基等の炭素数6~24のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、ナフチルメチル基等の炭素数7~24のアラルキル基等が挙げられる。
Ar及びArで表される芳香族複素環基としては、フラン環基、チオピロール環基、イミダゾール環基、ピリジン環基、オキサゾール環基の炭素数3~20の芳香族複素環を含む基が挙げられる。
【0014】
Ar及びArで表される芳香族基は、置換基を有していてもよい。置換基としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2-フルオロエチル基、2,2-ジフルオロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、1,1,2,2-テトラフルオロエチル基、1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル基等の炭素数1~12のハロゲン化アルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基等の炭素数1~12のアルコキシ基;メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基等の炭素数1~12のアルキルチオ基;モノフルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、2-フルオロエトキシ基、1,1,2,2,2-ペンタフルオロエトキシ基等の炭素数1~12のフッ素化アルコキシ基;トリフルオロメタンチオアルコキシ基等の炭素数1~12のフッ素化アルコキシ基;アミノ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、メチルエチル等の1つ又は2つの炭素数1~6のアルキル基で置換されていてもよいアミノ基;カルバモイル基、N-メチルカルバモイル基、N,N-ジメチルカルバモイル基等のN-位が炭素数1~6のアルキル基で置換されていてもよいカルバモイル基;メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基等の炭素数2~12のアルキルカルボニルオキシ基;メチルスルホニル基、エチルスルホニル基等の炭素数1~12のアルキルスルホニル基;フェニルスルホニル基等の炭素数6~12のアリールスルホニル基;メトキシスルホニル基、エトキシスルホニル基等の炭素数1~12のアルコキシスルホニル基;アセチル基、エチルカルボニル基等の炭素数2~12のアシル基;アルデヒド基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基等の炭素数2~12のアルコキシカルボニル基;メトキシチオカルボニル基、エトキシチオカルボニル基等の炭素数2~12のアルコキシチオカルボニル基;シアノ基;ニトロ基;水酸基;チオール基;スルホ基;カルバモイル基;カルボキシル基;-SF;-SF等が挙げられる。
【0015】
ArとArとは、同じ基であることが好ましい。
Ar及びArは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基であることが好ましい。
【0016】
及びRで表される1価の置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基等の炭素数1~12のアルコキシ基;メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基等の炭素数1~12のアルキルチオ基;モノフルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、2-フルオロエトキシ基、1,1,2,2,2-ペンタフルオロエトキシ基等の炭素数1~12のフッ素化アルコキシ基;トリフルオロメタンチオアルコキシ基等の炭素数1~12のフッ素化チオアルコキシ基;アミノ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、メチルエチル等の1つ又は2つの炭素数1~6のアルキル基で置換されていてもよいアミノ基;カルバモイル基、N-メチルカルバモイル基、N,N-ジメチルカルバモイル基等のN-位が炭素数1~6のアルキル基で置換されていてもよいカルバモイル基;メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基等の炭素数2~12のアルキルカルボニルオキシ基;メチルスルホニル基、エチルスルホニル基等の炭素数1~12のアルキルスルホニル基;フェニルスルホニル基等の炭素数6~12のアリールスルホニル基;メトキシスルホニル基、エトキシスルホニル基等の炭素数1~12のアルコキシスルホニル基;アセチル基、エチルカルボニル基等の炭素数2~12のアシル基;アルデヒド基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基等の炭素数2~12のアルコキシカルボニル基;メトキシチオカルボニル基、エトキシチオカルボニル基等の炭素数2~12のアルコキシチオカルボニル基;シアノ基;ニトロ基;水酸基;チオール基;スルホ基;カルバモイル基;カルボキシル基;-SF;-SF等が挙げられる。
【0017】
及びRで表される炭化水素基としては、炭素数1~24の脂肪族炭化水素基、炭素数6~24の芳香族炭化水素基等が挙げられる。
炭素数1~24の脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、1-メチルブチル基、3-メチルブチル基、n-オクチル基、n-デシル、2-へキシル-オクチル基、4-ブチルオクチル基、シクロヘキシル基等の直鎖状、分岐鎖状、環状の炭素数1~24のアルキル基;エテニル基、プロぺニル基、ブテニル基、ペンテニル基、エチニル基、プロピニル基、アリル基、シクロヘキセニル基、ブタジエニル基等の不飽和脂肪族炭化水素基等が挙げられる。
炭素数6~24の芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、ビフェニル基等の炭素数6~24のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、ナフチルメチル基等の炭素数7~24のアラルキル基等が挙げられる。
【0018】
及びRで表される炭化水素基は置換基を有していてもよく、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基等の炭素数1~12のアルキルチオ基;モノフルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、2-フルオロエトキシ基、1,1,2,2,2-ペンタフルオロエトキシ基等の炭素数1~12のフッ素化アルコキシ基;トリフルオロメタンチオアルコキシ基等の炭素数1~12のフッ素化アルコキシ基;アミノ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、メチルエチル等の1つ又は2つの炭素数1~6のアルキル基で置換されていてもよいアミノ基;カルバモイル基、N-メチルカルバモイル基、N,N-ジメチルカルバモイル基等のN-位が炭素数1~6のアルキル基で置換されていてもよいカルバモイル基;メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基等の炭素数2~12のアルキルカルボニルオキシ基;メチルスルホニル基、エチルスルホニル基等の炭素数1~12のアルキルスルホニル基;フェニル基、ナフチル基、ジフェニル基等の炭素数6~25の芳香族炭化水素基(好ましくは炭化水素6~18のアリール基);フェニルスルホニル基等の炭素数6~12のアリールスルホニル基;メトキシスルホニル基、エトキシスルホニル基等の炭素数1~12のアルコキシスルホニル基;アセチル基、エチルカルボニル基等の炭素数2~12のアシル基;アルデヒド基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基等の炭素数2~12のアルコキシカルボニル基;メトキシチオカルボニル基、エトキシチオカルボニル基等の炭素数2~12のアルコキシチオカルボニル基;シアノ基;ニトロ基;水酸基;チオール基;スルホ基;カルバモイル基;カルボキシル基;-SF;-SF等が挙げられる。
【0019】
及びRは、同じ基であることが好ましい。
及びRは、水素原子又は炭素数1~24の炭化水素基であることが好ましく、より好ましくは水素原子又は炭素数1~24のアルキル基である。
【0020】
式(I-A)で表されるカチオンは式(I-A-1)で表されるカチオンであることが好ましく、式(I-B)で表されるカチオンは式(I-B-1)で表されるカチオンであることが好ましい。
【化9】

[式(I-A-1)及び式(I-B-1)中、環W、環W、Ar、Ar、R及びRは、それぞれ、上記と同じ意味を表す。]
【0021】
式(I-A)で表されるカチオンは、例えば、以下に記載のカチオン等が挙げられる。
【化10】
【0022】
【化11】
【0023】
【化12】
【0024】
【化13】
【0025】
式(I-A)で表されるカチオンは、式(I-1)、式(I-2)、式(I-3)、式(I-9)、式(I-13)、式(I-17)、式(I-18)、式(I-19)、式(I-24)、式(I-26)、式(I-27)、式(I-28)、式(I-30)、式(I-32)、式(I-39)又は式(I-58)で表されるカチオンであることが好ましい。
【0026】
式(I-B)で表されるカチオンは、例えば、以下に記載のカチオン等が挙げられる。
【化14】
【0027】
【化15】
【0028】
【化16】
【0029】
【化17】

式(I-B)で表されるカチオンは、式(I-59)、式(I-60)、式(I-61)、式(I-62)、式(I-67a)、式(I-67b)、式(I-68)、式(I-69)、式(I-78)、式(I-79)、式(I-84)、式(I-85)、式(I-89)又は式(I-92)で表されるカチオンであることが好ましい。
【0030】
<アニオン>
化合物(I)は、式(I-A)で表されるカチオン及び式(I-B)で表されるカチオンから選ばれる少なくとも1つのカチオンと、アニオンとから構成される。化合物(I)を構成する式(I-A)で表されるカチオン及び式(I-B)で表されるカチオンから選ばれる少なくとも1つのカチオンと、アニオンとの組み合わせは限定されない。アニオンの価数が2以上の場合、式(I-A)で表されるカチオンを複数有していてもよいし、式(I-B)で表されるカチオンを複数有していてもよいし、式(I-A)で表されるカチオンと式(I-B)で表されるカチオンとを有していてもよい。また、アニオンの価数が2以上の場合、式(I-A)で表されるカチオン及び式(I-B)で表されるカチオン以外のカチオンを有していてもよい。
アニオンは、有機アニオンであってもよいし、無機アニオンであってもよい。
【0031】
有機アニオンとしては、例えば、アセテートアニオン、メチドアニオン、アミドアニオン、スルホナートアニオン又はボレートアニオン等が挙げられ、メチドアニオン、アミドアニオン、スルホナートアニオン又はボレートアニオンであることが好ましい。
【0032】
メチドアニオンとしては、式(c-A)で表されるアニオンであることが好ましい。
【化18】

[式(c-A)中、R1c、R2c及びR3cは、それぞれ独立して、1価の置換基を表す。]
1c、R2c及びR3cで表される1価の置換基は特に限定されないが、フッ素原子;モノフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、テトラフルオロエチル基等の炭素数1~12のフルオロアルキル基;モノフルオロフェニル基、テトラフルオロフェニル基等の炭素数6~18のフルオロアリール基;シアノ基;ニトロ基;-SO-R11c(R11cは、フッ素原子を有していてもよい炭素数1~12の炭化水素基を表す。)であることが好ましい。
【0033】
アミドアニオンとしては、式(c-B)で表されるアニオンであることが好ましい。
【化19】

[式(c-B)中、R4c及びR5cは、それぞれ独立して、1価の置換基を表す。]
4c及びR5cで表される1価の置換基は特に限定されないが、フッ素原子;モノフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、テトラフルオロエチル基等の炭素数1~12のフルオロアルキル基;モノフルオロフェニル基、テトラフルオロフェニル基等の炭素数6~18のフルオロアリール基;シアノ基;ニトロ基;-SO-R11c(R11cは、フッ素原子を有していてもよい炭素数1~12の炭化水素基を表す。)であることが好ましい。
【0034】
スルホナートアニオンとしては、式(c-C)で表されるアニオンであることが好ましい。
【化20】

[式(c-C)中、R6cは、1価の置換基を表す。]
6cで表される1価の置換基は特に限定されないが、フッ素原子;モノフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、テトラフルオロエチル基等の炭素数1~12のフルオロアルキル基;モノフルオロフェニル基、テトラフルオロフェニル基等の炭素数6~18のフルオロアリール基;シアノ基;ニトロ基;-SO-R11c(R11cは、フッ素原子を有していてもよい炭素数1~12の炭化水素基を表す。)であることが好ましい。
【0035】
ボレートアニオンとしては、式(c-D)で表されるアニオンであることが好ましい。
【化21】

[式(c-D)中、R7c、R8c、R9c及びR10cは、それぞれ独立して、1価の置換基を表す。]
7c、R8c、R9c及びR10cで表される1価の置換基は特に限定されないが、フッ素原子;モノフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、テトラフルオロエチル基等の炭素数1~12のフルオロアルキル基;モノフルオロフェニル基、テトラフルオロフェニル基等の炭素数6~18のフルオロアリール基;シアノ基;ニトロ基;-SO-R11c(R11cは、フッ素原子を有していてもよい炭素数1~12の炭化水素基を表す。)であることが好ましい。
【0036】
式(c-A)で表されるアニオンは式(c-A1)で表されるアニオンであることが好ましく、
式(c-B)で表されるアニオンは式(c-B1)で表されるアニオンであることが好ましく、
式(c-C)で表されるアニオンは式(c-C1)で表されるアニオンであることが好ましく、
式(c-D)で表されるアニオンは式(c-D1)で表されるアニオン又は式(c-D2)で表されるアニオンであることが好ましい。
【0037】
【化22】

[式(c-A1)中、Rf、Rf及びRfは、それぞれ独立して、炭素数1~12のフルオロアルキル基を表す。
式(c-B1)中、Rf及びRfは、それぞれ独立して、フッ素原子又は炭素数1~12のフルオロアルキル基を表す。
式(c-C1)中、Rfは炭素数1~12のフルオロアルキル基を表す。
式(c-D2)中、R1d、R2d、R3d及びR4dは、それぞれ独立して、フッ素原子又は炭素数1~12のフルオロアルキル基を表す。n1~n4は、それぞれ独立して、0~5の整数を表す。]
【0038】
有機アニオンとしては、例えば、アセテートアニオン〔CHCOO〕、トリフルオロアセテートアニオン〔CFCOO〕、メタンスルホネートアニオン〔CHSO 〕、トリフルオロメタンスルホネートアニオン〔CFSO 〕、p-トルエンスルホネートアニオン〔p-CHSO 〕、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン〔(CFSO〕、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メタニドアニオン〔(CFSO〕、ジメチルホスフィネートアニオン〔(CHPOO〕、パーフルオロブタンスルホネートアニオン〔CSO 〕、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドアニオン〔(CSO〕、パーフルオロブタノエートアニオン〔CCOO〕、(トリフルオロメタンスルホニル)(トリフルオロメタンカルボニル)イミドアニオン〔(CFSO)(CFCO)N〕、パーフルオロプロパン-1,3-ジスルホネートアニオン〔S(CFSO 〕、テトラキスアリールボレートアニオン(テトラキスフェニルボレート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート)、テトラシアノボレート、トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート[P(C]等が挙げられる。
【0039】
無機アニオンとしては、例えば、フルオライドアニオン、クロライドアニオン、ブロマイドアニオン、ヨーダイドアニオン、テトラクロロアルミネートアニオン〔AlCl 〕、ヘプタクロロジアルミネートアニオン〔AlCl 〕、テトラフルオロボレートアニオン〔BF 〕、ヘキサフルオロホスフェートアニオン〔PF 〕、パークロレートアニオン〔ClO 〕、ナイトレートアニオン〔NO 〕、ヘキサフルオロアーセネートアニオン〔AsF 〕、ヘキサフルオロアンチモネートアニオン〔SbF 〕、ヘキサフルオロニオベートアニオン〔NbF 〕、ヘキサフルオロタンタレートアニオン〔TaF 〕、ジシアナミドアニオン〔(CN)〕、ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオン(N(SOF))、(ポリ)ハイドロフルオロフルオライドアニオン〔F(HF)m〕(mは1以上3以下程度)、チオシアンアニオン〔SCN〕、カーボネートアニオン〔CO 2-〕等が挙げられる。
【0040】
無機アニオンとしては、ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオン(N(SOF))であることが好ましい。有機アニオンとしてはトリフルオロアセテートアニオン〔CFCOO〕、トリフルオロメタンスルホネートアニオン〔CFSO 〕、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン〔(CFSO〕、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メタニドアニオン〔(CFSO〕、パーフルオロブタンスルホネートアニオン〔CSO 〕、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドアニオン〔(CSO〕、パーフルオロブタノエートアニオン〔CCOO-〕、(トリフルオロメタンスルホニル)(トリフルオロメタンカルボニル)イミドアニオン〔(CFSO)(CFCO)N〕、パーフルオロプロパン-1,3-ジスルホネートアニオン〔S(CFSO 〕、テトラキスアリールボレートアニオン(テトラキスフェニルボレート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート)、テトラシアノボレートが好ましく、さらに好ましくはビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン〔(CFSO〕、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メタニドアニオン〔(CFSO〕、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラシアノボレートであり、特に好ましくはテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートである。
【0041】
化合物(I)としては、例えば、以下の表1~表8に記載の化合物が挙げられる。表1における化合物(1)は式(I-1)で表されるカチオンとクロライドアニオンとを有する化合物であり、以下に示す化合物である。
【化23】

【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
【表3】
【0044】
【表4】
【0045】
【表5】
【0046】
【表6】
【0047】
【表7】
【0048】
【表8】
【0049】
化合物(I)としては、化合物(3)、化合物(5)、化合物(8)、化合物(20)、化合物(24)、化合物(33)、化合物(34)、化合物(36)、化合物(37)、化合物(42)、化合物(48)、化合物(49)、化合物(50a)、化合物(50b)、化合物(52)、化合物(53)、化合物(91)、化合物(92)、化合物(94)、化合物(95)、化合物(100)、化合物(106)、化合物(107)、化合物(108a)、化合物(108b)、化合物(110)、化合物(120)、化合物(121)、化合物(123)、化合物(124)、化合物(129)、化合物(135)、化合物(136)、化合物(137a)、化合物(137b)、化合物(139)、化合物(140)、化合物(149)、化合物(150)、化合物(152)、化合物(153)、化合物(158)、化合物(164)、化合物(166a)、化合物(166b)、化合物(168)、化合物(169)、化合物(178)、化合物(179)、化合物(181)、化合物(182)、化合物(187)、化合物(193)、化合物(194)、化合物(195a)、化合物(195b)、化合物(197)、化合物(198)、化合物(206)、化合物(207)、化合物(208)、化合物(210)、化合物(211)、化合物(216)、化合物(222)、化合物(223)、化合物(224a)、化合物(224b)、化合物(226)、化合物(227)であることが好ましい。
【0050】
<化合物(I)の製造方法>
化合物(I)におけるカチオンである式(I-A)で表されるカチオンは、式(M)で表される化合物(以下、化合物(M)という場合がある。)と式(b-1)で表される化合物(以下、化合物(b-1)という場合がある。)と式(b-2)で表される化合物(以下、化合物(b-2)という場合がある。)とを反応させることにより製造することができる。
【化24】

[式中、環W、環W、環W及び環Wは、それぞれ上記と同じ意味を表す。]
【0051】
化合物(M)と化合物(b-1)と化合物(b-2)との反応は、触媒の存在下で行われることが好ましい。
触媒としては、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸等のカルボン酸;塩化アンモニウム;四塩化チタン、塩化アルミニウム、アルミニウムイソプロポキシド、三臭化ホウ素、三フッ化ホウ素、塩化鉄、塩化ガリウム、四塩化スズ、ランタノイドトリフラート等のルイス酸;メタンスルホン酸無水物、パラトルエンスルホン酸無水物、トリフルオロメタンスルホン酸無水物、ノナフルオロブタンスルホン酸無水物等のスルホン酸無水物;パラトルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、フルオロ硫酸等のスルホン酸;ジメチル硫酸、メチルトリフラート、ヨードメタン、トリメチルオキソニウムテトラフルオロボレート、フルオロ硫酸ジメチル等の求電子的アルキル化剤;パラトルエンスルホニルクロリド、トリフルオロメタンスルホニルクロリド等のスルホン酸ハロゲン化物;硝酸ビスマス;ギ酸アンモニウム、酢酸アンモニウム等のカルボン酸塩等が挙げられる。
触媒の使用量は、化合物(M)1モルに対して、通常0.0001~100モルであり、0.1~10モルであることが好ましい。
【0052】
化合物(M)と化合物(b-1)と化合物(b-2)との反応は、塩基の存在下で行われることが好ましい。
塩基としては、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、リチウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、リチウムエトキシド、ナトリウムイソプロポキシド、ナトリウムターシャリーブトキシド、カリウムターシャリーブトキシド等の金属アルコキシド(好ましくはアルカリ金属アルコキシド)等;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の金属水酸化物、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化アルミニウムリチウム、水素化ホウ素ナトリウム等の金属水素化物;炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸リチウム、炭酸水素リチウム、炭酸セシウム等の金属炭酸塩;メチルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、フェニルリチウム等の有機リチウム化合物;メチルマグネシウムブロミド、イソプロピルマグネシウムブロミド、n-ブチルマグネシウムブロミド、イソプロピルマグネシウムクロリド等のアルキル金属ハロゲン化物;リチウムジイソプロピルアミド、リチウム2,2,6,6-テトラメチルピペリジド、リチウム(ビストリメチルシリル)アミド、リチウムテトラメチルピペリジド等の金属アミド化合物;ピリジン、2,6-ジメチルピリジン、2,6-ジ-tert-ブチルピリジン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリイソプロピルアミン、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、ピペリジン、ピロリジン、プロリン、アニリン、N,N-ジメチルアニリン、エチレンジアミン等のアミン化合物;酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、ギ酸ナトリウム等の金属カルボン酸塩;酢酸アンモニウム等のカルボン酸アンモニウム塩;等が挙げられる。
塩基の使用量としては、化合物(M)1モルに対して、通常0.01~100モルであり、0.1~10モルであることが好ましい。
【0053】
化合物(M)と化合物(b-1)と化合物(b-2)との反応は、溶媒の存在下で行ってもよい。
溶媒としては、アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン、アニソールの芳香族炭化水素溶媒;n-ヘキサン、n-ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素溶媒;クロロベンゼン、オルトジクロロベンゼン、メタジクロロベンゼン、パラジクロロベンゼン、ジクロロメタン、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、テトラクロロエチレン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ノルマルプロピル等のエステル溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール等のアルコール溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、4-メチルテトラヒドロピラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシエタン、ジエトキシメタン等のエーテル溶媒;N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド等のアミド溶媒;ジメチルスルホキシド;1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン;ヘキサメチルリン酸トリアミド;水等が挙げられる。溶媒は、ニトリル溶媒、芳香族炭化水素溶媒、アルコール溶媒、ケトン系溶媒であることが好ましく、アセトニトリル、トルエン、メタノール、エタノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンであることがより好ましい。
溶媒の使用量としては、化合物(M)1質量部に対して、通常0.1~100質量部であり、1~50質量部であることが好ましい。
【0054】
化合物(M)と化合物(b-1)と化合物(b-2)との反応は、化合物(M)と化合物(b-1)と化合物(b-2)とを混合することにより実施される。
化合物(M)と化合物(b-1)と化合物(b-2)との反応は、化合物(M)、塩基及び触媒の混合物に、化合物(b-1)と化合物(b-2)とを加えることが好ましい。
化合物(M)と化合物(b-1)と化合物(b-2)との反応は、窒素雰囲気下で実施されることが好ましい。
化合物(b-1)の使用量は、化合物(M)1モルに対して、通常0.1~10モルであり、0.5~5モルであることが好ましい。
化合物(b-2)の使用量は、化合物(M)1モルに対して、通常0.1~10モルであり、0.5~5モルであることが好ましい。
【0055】
化合物(M)と化合物(b-1)と化合物(b-2)との反応時間は、通常0.01~100時間である。
化合物(M)と化合物(b-1)と化合物(b-2)との反応温度は、通常-100~150℃である。
【0056】
化合物(b-1)及び化合物(b-2)としては、例えば、インドリン、メチルインドリン、ニトロインドリン、アミノビフェニル、シアノアミノビフェニル(例えば、4-アミノ-4’-シアノビフェニル)、ジフェニルフェニルアニリン(4-(3,5-ジフェニルフェニル)アニリン等)、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、イミダゾール、トリアゾール等が挙げられる。
【0057】
化合物(M)としては、4,4a,5,6-テトラヒドロ-7-ヒドロキシ-2(3H)-ナフタレノンが挙げられる。
【0058】
また、化合物(M)と化合物(b-1)と化合物(b-2)との反応は、段階的に行ってもよい。例えば、化合物(M)と化合物(b-2)とを反応させて式(M-A)で表される化合物(以下、化合物(M-A)という場合がある。)を得、得られた化合物(M-A)と化合物(b-1)とを反応させて、式(I-A)で表されるカチオンを得てもよい。
【化25】

[式中、環W、環W、環W及び環Wは、それぞれ上記と同じ意味を表す。]
【0059】
化合物(M)と化合物(b-2)との反応は、化合物(M)と化合物(b-2)とを混合することにより実施される。
化合物(M)と化合物(b-2)との反応は、窒素雰囲気下で実施されることが好ましい。
化合物(M)と化合物(b-2)との反応は、溶媒の存在下で行ってもよい。溶媒としては、アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン、アニソールの芳香族炭化水素溶媒;n-ヘキサン、n-ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素溶媒;クロロベンゼン、オルトジクロロベンゼン、メタジクロロベンゼン、パラジクロロベンゼン、ジクロロメタン、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、テトラクロロエチレン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ノルマルプロピル等のエステル溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール等のアルコール溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、4-メチルテトラヒドロピラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシエタン、ジエトキシメタン等のエーテル溶媒;N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド等のアミド溶媒;ジメチルスルホキシド;1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン;ヘキサメチルリン酸トリアミド;水等が挙げられる。溶媒は、ニトリル溶媒、芳香族炭化水素溶媒、アルコール溶媒、ケトン系溶媒であることが好ましく、アセトニトリル、トルエン、メタノール、エタノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンであることがより好ましい。
溶媒の使用量としては、化合物(M)1質量部に対して、通常0.1~100質量部であり、1~50質量部であることが好ましい。
【0060】
化合物(b-2)の使用量は、化合物(M)1モル等量に対して、通常0.1~10モルであり、0.5~5モルであることが好ましい。
化合物(M)と化合物(b-2)との反応時間は、通常0.01~100時間である。
化合物(M)と化合物(b-2)との反応温度は、通常-100~150℃である。
【0061】
化合物(M-A)と化合物(b-1)との反応は、化合物(M-A)と化合物(b-1)とを混合することにより実施される。化合物(M-A)と化合物(b-1)との反応は、触媒の存在下で行われることが好ましい。
触媒としては、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸等のカルボン酸;塩化アンモニウム;四塩化チタン、塩化アルミニウム、アルミニウムイソプロポキシド、三臭化ホウ素、三フッ化ホウ素、塩化鉄、塩化ガリウム、四塩化スズ、ランタノイドトリフラート等のルイス酸;メタンスルホン酸無水物、パラトルエンスルホン酸無水物、トリフルオロメタンスルホン酸無水物、ノナフルオロブタンスルホン酸無水物等のスルホン酸無水物;パラトルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、フルオロ硫酸等のスルホン酸;ジメチル硫酸、メチルトリフラート、ヨードメタン、トリメチルオキソニウムテトラフルオロボレート、フルオロ硫酸ジメチル等の求電子的アルキル化剤;パラトルエンスルホニルクロリド、トリフルオロメタンスルホニルクロリド等のスルホン酸ハロゲン化物;ギ酸アンモニウム、酢酸アンモニウム等のカルボン酸塩等が挙げられる。
触媒の使用量は、化合物(M-A)1モル等量に対して、通常0.0001~100モルであり、0.1~10モルであることが好ましい。
【0062】
化合物(M-A)と化合物(b-1)との反応は、塩基の存在下で行われることが好ましい。
塩基としては、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、リチウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、リチウムエトキシド、ナトリウムイソプロポキシド、ナトリウムターシャリーブトキシド、カリウムターシャリーブトキシド等の金属アルコキシド(好ましくはアルカリ金属アルコキシド)等;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の金属水酸化物、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化アルミニウムリチウム、水素化ホウ素ナトリウム等の金属水素化物;炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸リチウム、炭酸水素リチウム、炭酸セシウム等の金属炭酸塩;メチルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、フェニルリチウム等の有機リチウム化合物;メチルマグネシウムブロミド、イソプロピルマグネシウムブロミド、n-ブチルマグネシウムブロミド、イソプロピルマグネシウムクロリド等のアルキル金属ハロゲン化物;リチウムジイソプロピルアミド、リチウム2,2,6,6-テトラメチルピペリジド、リチウム(ビストリメチルシリル)アミド、リチウムテトラメチルピペリジド等の金属アミド化合物;ピリジン、2,6-ジメチルピリジン、2,6-ジ-tert-ブチルピリジン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリイソプロピルアミン、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、ピペリジン、ピロリジン、プロリン、アニリン、N,N-ジメチルアニリン、エチレンジアミン等のアミン化合物;酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、ギ酸ナトリウム等の金属カルボン酸塩;酢酸アンモニウム等のカルボン酸アンモニウム塩;等が挙げられる。
塩基の使用量としては、化合物(M-A)1モルに対して、通常0.0001~100モルであり、0.1~10モルであることが好ましい。
【0063】
化合物(M-A)と化合物(b-1)との反応は、溶媒の存在下で行ってもよい。
溶媒としては、アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン、アニソールの芳香族炭化水素溶媒;n-ヘキサン、n-ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素溶媒;クロロベンゼン、オルトジクロロベンゼン、メタジクロロベンゼン、パラジクロロベンゼン、ジクロロメタン、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、テトラクロロエチレン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ノルマルプロピル等のエステル溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール等のアルコール溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、4-メチルテトラヒドロピラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシエタン、ジエトキシメタン等のエーテル溶媒;N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド等のアミド溶媒;ジメチルスルホキシド;1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン;ヘキサメチルリン酸トリアミド;水等が挙げられる。溶媒は、ニトリル溶媒、芳香族炭化水素溶媒、アルコール溶媒、ケトン系溶媒であることが好ましく、アセトニトリル、トルエン、メタノール、エタノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンであることがより好ましい。
溶媒の使用量としては、化合物(M-A)1質量部に対して、通常0.1~100質量部であり、1~50質量部であることが好ましい。
【0064】
化合物(b-1)の使用量は、化合物(M-A)1モルに対して、通常0.1~10モルであり、0.5~5モルであることが好ましい。
化合物(M-A)と化合物(b-1)との反応時間は、通常0.01~100時間である。化合物(M-A)と化合物(b-1)との反応温度は、通常-100~150℃である。
【0065】
化合物(M-A)としては、例えば、以下に記載の化合物が挙げられる。
【化26】
【0066】
【化27】
【0067】
式(I-B)で表されるカチオンは、化合物(M)と式(b-3)で表される化合物(以下、化合物(b-3)という場合がある。)と式(b-4)で表される化合物(以下、化合物(b-4)という場合がある。)とを反応させることにより製造することができる。
【化28】

[式中、環W、環W、Ar、Ar、R及びRは、それぞれ上記と同じ意味を表す。]
【0068】
化合物(M)と化合物(b-3)と化合物(b-4)との反応は、触媒の存在下で行われることが好ましい。
触媒としては、化合物(M)と化合物(b-1)と化合物(b-2)との反応に用いることができる触媒と同じものが挙げられる。
触媒の使用量は、化合物(M)1モルに対して、通常0.0001~100モルであり、0.1~10モルであることが好ましい。
【0069】
化合物(M)と化合物(b-3)と化合物(b-4)との反応は、塩基の存在下で行われることが好ましい。
塩基としては、化合物(M)と化合物(b-1)と化合物(b-2)との反応に用いることができる塩基と同じものが挙げられる。
塩基の使用量としては、化合物(M)1モルに対して、通常0.0001~100モルであり、0.1~10モルであることが好ましい。
【0070】
化合物(M)と化合物(b-3)と化合物(b-4)との反応は、化合物(M)と化合物(b-3)と化合物(b-4)とを混合することにより実施される。化合物(M)と化合物(b-3)と化合物(b-4)との混合は、化合物(M)と塩基とを混合した混合物に触媒と化合物(b-3)と化合物(b-4)とを混合することが好ましく、化合物(M)と塩基とを混合した混合物に触媒を加え、得られた混合物に化合物(b-3)と化合物(b-4)とを混合することがより好ましい。
化合物(b-3)の使用量は、化合物(M)1モルに対して、通常0.1~10モルであり、0.5~5モルであることが好ましい。
化合物(b-4)の使用量は、化合物(M)1モルに対して、通常0.1~10モルであり、0.5~5モルであることが好ましい。
化合物(M)と化合物(b-3)と化合物(b-4)との反応時間は、通常0.1~100時間である。
化合物(M)と化合物(b-3)と化合物(b-4)との反応温度は、通常-100~150℃である。
【0071】
化合物(I)のアニオンを所望のアニオンに交換したい場合は、化合物(I)と所望のアニオンを有する塩とを混合することによりイオン交換を行えばよい。前記イオン交換は、溶媒の存在下で行ってもよい。所望のアニオンを有する塩は、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、セシウム塩、バリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
【0072】
<化合物(I)を含む組成物>
本発明は、化合物(I)を含有する組成物も含む。
化合物(I)を含む組成物はあらゆる用途に使用可能であるが、中でも日光又は紫外線を含む光に晒される可能性のある用途に特に好適に使用できる。具体例としては、例えばガラス代替品とその表面コーティング材;住居、施設、輸送機器等の窓ガラス、採光ガラス及び光源保護ガラス用のコーティング材;住居、施設、輸送機器等のウインドウフィルム;住居、施設、輸送機器等の内外装材及び内外装用塗料及び該塗料によって形成される塗膜;アルキド樹脂ラッカー塗料及び該塗料によって形成される塗膜;アクリルラッカー塗料及び該塗料によって形成される塗膜;蛍光灯、水銀灯等の紫外線を発する光源用部材;精密機械、電子電気機器用部材、各種ディスプレイから発生する電磁波等の遮断用材;食品、化学品、薬品等の容器又は包装材;ボトル、ボックス、ブリスター、カップ、特殊包装用、コンパクトディスクコート、農工業用シート又はフィルム材;印刷物、染色物、染顔料等の退色防止剤;ポリマー支持体用(例えば、機械及び自動車部品のようなプラスチック製部品用)の保護膜;印刷物オーバーコート;インクジェット媒体被膜;積層艶消し;オプティカルライトフィルム;安全ガラス及びフロントガラスの中間層;エレクトロクロミック又はフォトクロミック用途;オーバーラミネートフィルム;太陽熱制御膜;日焼け止めクリーム、シャンプー、リンス、整髪料等の化粧品;スポーツウェア、ストッキング、帽子等の衣料用繊維製品及び繊維;カーテン、絨毯、壁紙等の家庭用内装品;プラスチックレンズ、コンタクトレンズ、義眼等の医療用器具;光学フィルタ、バックライトディスプレーフィルム、プリズム、鏡、写真材料等の光学用品;金型膜、転写式ステッカー、落書き防止膜、テープ、インク等の文房具;標示板、標示器等とその表面コーティング材等を挙げることができる。
【0073】
化合物(I)を含む組成物は、化合物(I)と樹脂とを含む樹脂組成物(以下、「樹脂組成物」という場合がある。)又は化合物(I)と重合性モノマーとを含む組成物(以下、「組成物(1)」という場合がある。)であることが好ましい。
【0074】
樹脂組成物に用いられる樹脂としては、公知の各種成形体、シート、フィルム等の製造に従来から使用されている熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂等が挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂等のオレフィン系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、スチレン-アクリロニトリル系樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、エチレン-酢酸ビニル系共重合体、エチレン-ビニルアルコール系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、液晶ポリエステル樹脂等のポリエステル系樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂及びポリフェニレンサルファイド樹脂等が挙げられる。これらの樹脂を一種又は二種以上のポリマーブレンドあるいはポリマーアロイとして使用してもよい。
【0075】
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、アルキド樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂等が挙げられる。
【0076】
樹脂組成物より形成した高分子成型品(成形体)の形状は、平膜状、粉状、球状粒子状、破砕粒子状、塊状連続体、繊維状、管状、中空糸状、粒状、板状、多孔質状等のいずれの形状であってもよい。
樹脂組成物を紫外線吸収フィルタや紫外線吸収膜として用いる場合、樹脂は透明樹脂であることが好ましい。
樹脂組成物は、化合物(I)と樹脂とを混合することにより得ることができる。化合物(I)は、所望の性能を付与するために必要な量を含有すればよく、例えば、樹脂100質量部に対して0.00001~99質量部等含有することができる。
樹脂組成物は、必要に応じて、溶剤、架橋触媒、タッキファイヤー、可塑剤、軟化剤、染料、顔料、無機フィラー等その他添加物を含んでいてもよい。
【0077】
組成物(1)に用いられる重合性モノマーとしては、特に限定されないが、ラジカル重合性モノマーであることが好ましく、光ラジカル重合性モノマーであることがより好ましく、(メタ)アクリレートであることがさらに好ましい。
(メタ)アクリレートとしては、分子内に1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単官能(メタ)アクリレートモノマー、分子内に2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する2官能(メタ)アクリレートモノマー、分子内に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。
組成物(1)は、さらに重合開始剤を含むことが好ましい。重合性モノマーがラジカル重合性モノマーである場合、重合開始剤はラジカル重合開始剤であることが好ましく、光重合開始剤であることがより好ましい。
組成物(1)は、化合物(I)と重合性モノマーとを混合することにより得ることができる。化合物(I)は、所望の性能を付与するために必要な量を含有すればよく、例えば、重合性モノマー100質量部に対して0.01~20質量部等含有することができる。
組成物(1)は、必要に応じて、溶剤、架橋触媒、タッキファイヤー、可塑剤、軟化剤、染料、顔料、無機フィラー等その他添加物を含んでいてもよい。
【0078】
<化合物(I)を含む層>
本発明は、化合物(I)を含む光学層を含む。化合物(I)を含む光学層は、例えば、有機EL素子、液晶セル等の表示素子に積層させて、有機EL表示装置や液晶表示装置等の画像表示装置(FPD:フラットパネルディスプレイ)に用いることができる。光学層は、本発明の樹脂組成物を用いて形成してもよい。本発明の樹脂組成物を画像表示装置に適用する場合、本発明の樹脂組成物から形成される光学層は、フィルム層、粘着剤層、コート層等のいずれに適用してもよく、粘着剤層又はコート層であることが好ましい。
化合物(I)を含む光学層は、上述の樹脂組成物又は組成物(1)から形成されることが好ましい。
化合物(I)を含む光学層は、化合物(I)を含む光学層のみからなってもよいし、化合物(I)を含む層と他の層とが積層された光学積層体であってもよい。他の層としては、例えば、偏光フィルム(偏光子)、位相差フィルム、熱可塑性樹脂フィルム、波長変換層等が挙げられる。光学積層体が、本発明の光学層、粘接着剤層、偏光フィルムの順に積層された積層体であれば、本発明の光学層は樹脂組成物から形成される光学層(光学フィルム)であることが好ましい。光学積層体が、本発明の光学層、熱可塑性樹脂フィルム、粘接着剤層、偏光フィルムの順に積層された積層体であれば、本発明の光学層は組成物(1)から形成される光学層(コート層)であることが好ましい。光学積層体が、位相差フィルム、本発明の光学層、位相差フィルムの順に積層された積層体であれば、本発明の光学層は樹脂組成物から形成される光学層(粘着剤層)であることが好ましい。光学積層体が波長変換層を含む場合は、波長変換層よりも視認側に本発明の光学層を配置することが好ましく、本発明の光学層は樹脂組成物から形成される光学層であってもよいし、組成物(1)から形成される光学層であってもよい。
【0079】
<粘着剤組成物>
本発明の組成物から形成される層が粘着剤層である場合、樹脂(A)、化合物(I)、架橋剤(B)及びシラン化合物(C)を含む粘着剤組成物(以下、粘着剤組成物(1)という場合がある。)から形成される。粘着剤組成物(1)は、さらに、ラジカル硬化性成分(D)、開始剤(E)、化合物(I)以外の光吸収化合物(F)(以下、光選択吸収化合物(F)という場合がある。)、帯電防止剤等を含んでいてもよく、ラジカル硬化性成分(D)、開始剤(E)及び光選択吸収化合物(F)からなる群から選ばれる少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0080】
樹脂(A)は、粘着剤組成物に使用される樹脂であれば特に限定されない。樹脂(A)は、波長300nm~波長780nmの範囲において極大吸収を示さないことが好ましい。
樹脂(A)は、ガラス転移温度(Tg)が40℃以下である樹脂であることが好ましい。樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)は、20℃以下であることがより好ましく、10℃以下であることがさらに好ましく、0℃以下であることが特に好ましい。また、樹脂(A)のガラス転移温度は通常-80℃以上であり、-70℃以上であることが好ましく、-60℃以上であることがより好ましく、-55℃以上であることがさらに好ましく、-50℃以上であることが特に好ましい。樹脂(A)のガラス転移温度が40℃以下であると、粘着剤組成物(1)から形成される粘着剤層の被着体に対する密着性の向上に有利である。また、樹脂(A)のガラス転移温度が-80℃以上であると、粘着剤組成物(1)から形成される粘着剤層の耐久性の向上に有利である。なお、ガラス転移温度は示差走査熱量計(DSC)により測定できる。
【0081】
樹脂(A)としては、(メタ)アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ゴム系樹脂、ウレタン系樹脂等が挙げられ、(メタ)アクリル系樹脂であることが好ましい。
【0082】
(メタ)アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位を主成分(好ましくは50質量%以上含む)とする重合体であることが好ましい。(メタ)アクリル系樹脂は、一種以上の(メタ)アクリル酸エステル以外の単量体に由来する構成単位(例えば、水酸基、カルボキシル基、アミノ基等の極性官能基を有する単量体に由来する構成単位)を含んでもよい。
【0083】
樹脂(A)の含有量は、粘着剤組成物(1)の固形分100質量%中、通常50質量%~99.9質量%であり、好ましくは60質量%~95質量%であり、より好ましくは70質量%~90質量%である。
化合物(I)の含有量は、樹脂(A)100質量部に対して、通常0.01~20質量部であり、好ましくは0.1~20質量部であり、より好ましくは0.2~10質量部であり、特に好ましくは0.5~5質量部である。
【0084】
架橋剤(B)としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤等が挙げられ、特に粘着剤組成物のポットライフ及び粘着剤層の耐久性、架橋速度等の観点から、イソシアネート系架橋剤であることが好ましい。
架橋剤(B)の含有量は、樹脂(A)100質量部に対して、通常0.01~25質量部であり、好ましくは0.1~15質量部であり、より好ましくは0.15~7質量部であり、さらに好ましくは0.2~5質量部であり、特に好ましくは0.25~2質量部である。
【0085】
シラン化合物(C)としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルエトキシジメチルシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
シラン化合物(C)は、シリコーンオリゴマーであってもよい。
シラン化合物(C)の含有量は、樹脂(A)100質量部に対して、通常0.01~20質量部であり、好ましくは0.1~10質量部であり、より好ましくは0.15~7質量部であり、さらに好ましくは0.2~5質量部であり、特に好ましくは0.25~2質量部である。
【0086】
ラジカル硬化性成分(D)としては、ラジカル重合反応により硬化する化合物又はオリゴマー等のラジカル硬化性成分が挙げられる。
ラジカル重合性成分(D)としては、(メタ)アクリレート系化合物、スチレン系化合物、ビニル系化合物等が挙げられる。
粘着剤組成物(1)はラジカル硬化性成分(D)を2種以上含んでいてもよい。
【0087】
(メタ)アクリレート系化合物としては、分子内に少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリレートモノマー、(メタ)アクリルアミドモノマー、及び、分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリルオリゴマー等の(メタ)アクリロイル基含有化合物を挙げることができる。(メタ)アクリルオリゴマーは好ましくは、分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリレートオリゴマーである。(メタ)アクリレート系化合物は、1種のみを単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0088】
(メタ)アクリレートモノマーとしては、分子内に1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単官能(メタ)アクリレートモノマー、分子内に2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する2官能(メタ)アクリレートモノマー、分子内に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。
(メタ)アクリレート化合物であることが好ましく、多官能(メタ)アクリレート化合物であることがより好ましい。多官能(メタ)アクリレート化合物は3官能以上であることが好ましい。
【0089】
ラジカル硬化性成分(D)の含有量は、樹脂(A)100質量部に対して、通常0.5~100質量部であり、1~70質量部であることが好ましく、3~50質量部であることがより好ましく、5~30質量部であることがさらに好ましく、7.5~25質量部であることが特に好ましい。
【0090】
開始剤(E)は熱のエネルギーを吸収することにより重合反応を引き起こす化合物(熱重合開始剤)、光のエネルギーを吸収することにより重合反応を引き起こす化合物(光重合開始剤)のいずれであってもよい。なお、ここで光とは、可視光線、紫外線、X線、又は電子線のような活性エネルギー線であることが好ましい。
【0091】
熱重合開始剤としては、加熱等によりラジカルを発生する化合物(熱ラジカル発生剤)、加熱等により酸を発生する化合物(熱酸発生剤)、加熱等により塩基を発生する化合物(熱塩基発生剤)等が挙げられる。
光重合開始剤としては、光のエネルギーを吸収することによりラジカルを発生する化合物(光ラジカル発生剤)、光のエネルギーを吸収することにより酸を発生する化合物(光酸発生剤)、光のエネルギーを吸収することにより塩基を発生する化合物(光塩基発生剤)等が挙げられる。
【0092】
開始剤(E)は、上述したラジカル硬化性成分(D)の重合反応に適したものを選択することが好ましく、ラジカル重合開始剤であることが好ましく、光ラジカル重合開始剤であることがより好ましい。
ラジカル重合開始剤は、例えば、アルキルフェノン化合物、ベンゾイン化合物、ベンゾフェノン化合物、オキシムエステル化合物、ホスフィン化合物等が挙げられる。ラジカル重合開始剤は、光ラジカル重合開始剤であることが好ましく、重合反応の反応性の観点からオキシムエステル系光ラジカル重合開始剤であることがより好ましい。オキシムエステル系光ラジカル重合開始剤を使用することで、照度又は光量の弱い硬化条件であってもラジカル硬化成分(D)の反応率を高めることができる。
【0093】
開始剤(E)の含有量は、樹脂(A)100質量部に対して、通常0.01~20質量部であり、0.3~10質量部であることが好ましく、0.5~5質量部であることがより好ましく、0.75~4質量部であることがさらに好ましく、特に好ましくは1~3質量部である。
【0094】
光選択吸収化合物(F)は、化合物(I)以外の光吸収性化合物であり、例えば、波長250nm~波長380nm(好ましくは波長250nm以上波長360nm未満)の光を吸収する化合物(紫外線吸収剤)や、波長380nm~波長780nmを吸収する化合物(色素)や、波長780nm~波長1500nmを吸収する化合物(赤外線吸収剤)である。
紫外線吸収剤は、波長250nm~波長380nmの光を吸収する化合物であれば、その構造は特に限定されないが、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、トリアジン系化合物、サリチル酸系化合物、シアノアクリレート系化合物、ベンゾオキサジン系化合物等の化合物等が好ましい。
光選択吸収化合物(F)の含有量は、樹脂(A)100質量部に対して、通常0.1~50質量部であり、好ましくは0.2~40質量部であり、より好ましくは0.5~30質量部であり、さらに好ましくは1~25質量部であり、特に好ましくは2~20質量部である。
【0095】
<化合物(I)によって染色された染色物>
本発明は、化合物(I)によって染色された染色物(例えば、繊維品、フィルム、樹脂等)を含む。化合物(I)による染色は、例えば、化合物(I)を溶剤に溶解させた溶解液に、繊維、フィルム、樹脂等の物品を浸漬させることにより実施される。
【実施例0096】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに詳細に説明する。実施例及び比較例中の「%」及び「部」は、特記しない限り、「質量%」及び「質量部」である。
【0097】
実施例1:式(1)で表される化合物の合成
【化29】

ジムロート冷却管及び温度計を設置した100mL-四ツ口フラスコ内を窒素雰囲気とし、式(m)で表される化合物(4,4a,5,6-テトラヒドロ-7-ヒドロキシ-2(3H)-ナフタレノン)3部、ジクロロメタン30部、インドリン4.8部、硝酸ビスマス0.9部を混合し、得られた混合物を温度25℃で40時間撹拌した。得られた混合物から溶媒を留去した後、塩酸及び酢酸エチルで精製し、式(1)で表される化合物1.3部を得た。
【0098】
LC-MS測定及びH-NMR解析を行い、式(1)で表される化合物が生成したことを確認した。また、エネルギー分散型X線分光法(SEM-EDX分析)によりクロライドアニオンの存在を確認した。
H-NMR(重ジメチルスルホキシド)δ:7.18~7.63(m、8H)、6.39(m、2H)、4.21~4.40(m、4H)、3.64~4.05(m、2H)、3.11~3.35(m、4H)、2.50~2.73(m、2H)、2.09(m、2H)、1.56~1.59(m、2H)、0.90(m、1H)
LC-MS;[M]=367.2
【0099】
<極大吸収波長及びグラム吸光係数ε測定>
得られた式(1)で表される化合物の2-ブタノン溶液(0.006g/L)を1cmの石英セルに入れ、石英セルを分光光度計UV-2450(株式会社島津製作所製)にセットし、ダブルビーム法により1nmステップ毎に300~800nmの波長範囲の吸光度を測定した。得られた吸光度の値と、溶液中の式(1)で表される化合物の濃度、石英セルの光路長から、波長ごとのグラム吸光係数を算出した。
ε(λ)=A(λ)/CL
[式中、ε(λ)は波長λnmにおける式(1)で表される化合物のグラム吸光係数(L/(g・cm))を表し、A(λ)は波長λnmにおける吸光度を表し、Cは濃度(g/L)を表し、Lは石英セルの光路長(m)を表す。]
得られた式(1)で表される化合物の極大吸収波長は523nmであった。得られた式(1)で表される化合物の極大吸収波長におけるグラム吸光係数ε(λmax)は309L/(g・cm)であった。
【0100】
<化合物の半値全幅の測定>
得られた式(1)で表される化合物の2-ブタノン溶液(濃度:0.006g/L)を1cmの石英セルに入れ、石英セルを分光光度計UV-2450(株式会社島津製作所製)にセットし、ダブルビーム法により1nmステップ毎に300~800nmの波長範囲の吸光度を測定した。極大吸収波長の吸光度の半分の吸光度となる、2点の波長を確認した。2点の波長のうち、長波側の波長から短波側の波長を引き、半値全幅とした。式(1)で表される化合物の半値全幅は、44nmであった。
【0101】
実施例2:式(2)で表される化合物の合成
【化30】

ジムロート冷却管及び温度計を設置した100mL-四ツ口フラスコ内を窒素雰囲気とし、式(m)で表される化合物(4,4a,5,6-テトラヒドロ-7-ヒドロキシ-2(3H)-ナフタレノン)1部、ジクロロメタン20部、メチルインドリン3.2部、硝酸ビスマス1.5部を混合し、得られた混合物を温度25℃で40時間撹拌した。得られた混合物から溶媒を留去した後、塩酸及び酢酸エチルで精製し、式(2)で表される化合物1.4部を得た。
【0102】
LC-MS測定及びH-NMR解析を行い、式(2)で表される化合物が生成したことを確認した。また、エネルギー分散型X線分光法(SEM-EDX分析)によりクロライドアニオンの存在を確認した。さらに、上述と同様にして極大吸収波長、グラム吸光係数及び半値全幅を測定したところ、式(2)で表される化合物の極大吸収波長は530nmであり、極大吸収波長におけるグラム吸光係数ε(λmax)は237L/(g・cm)、半値全幅は54nmであった。
H-NMR(重ジメチルスルホキシド)δ:1.58(m、2H)、2,31(m、2H)、2.50(s、6H)、2.66(m、1H)、3.14~3.35(m、8H)、4.20~4.30(m、4H)、6.31(m、2H)、7.09~7.45(m、6H)
LC-MS;[M]=395.5
【0103】
実施例3:式(3)で表される化合物の合成
【化31】

ジムロート冷却管及び温度計を設置した100mL-四ツ口フラスコ内を窒素雰囲気とし、式(m)で表される化合物(4,4a,5,6-テトラヒドロ-7-ヒドロキシ-2(3H)-ナフタレノン)3部、脱水アセトニトリル30部、ニトロインドリン6.6部を混合し、得られた混合物を温度80℃で8時間撹拌した。得られた混合物から溶媒を留去した後、精製し、式(m-A)で表される化合物1.7部を得た。
【化32】

ジムロート冷却管及び温度計を設置した100mL-四ツ口フラスコ内を窒素雰囲気とし、式(m-A)で表される化合物0.5部、脱水アセトニトリル5部、ジイソプロピルエチルアミン0.3部を加えて氷浴撹拌した。得られた混合物にトリフルオロメタンスルホン酸無水物0.6部を加えて15分間氷浴撹拌し、ニトロインドリン0.27部を加えて氷浴撹拌1時間した。得られた混合物から溶媒を留去した後、塩酸及び酢酸エチルで精製し、式(3)で表される化合物0.6部を得た。
【0104】
H-NMR解析を行い、式(3)で表される化合物が生成したことを確認した。また、エネルギー分散型X線分光法(SEM-EDX分析)によりクロライドアニオンの存在を確認した。さらに、上述と同様にして極大吸収波長、グラム吸光係数及び半値全幅を測定したところ、式(3)で表される化合物の極大吸収波長は521nmであり、極大吸収波長におけるグラム吸光係数ε(λmax)は192L/(g・cm)、半値全幅は52nmであった。
H-NMR(重ジメチルスルホキシド)δ:1.58(m、2H)、2.08(m、2H)、2.73(m、1H)、3.30(m、2H)、4.30(m、4H)、6.34(m、4H)、7.27~7.64(m、6H)、8.00~8.11(m、2H)
【0105】
実施例4:式(4)で表される化合物の合成
【化33】

ジムロート冷却管及び温度計を設置した100mL-四ツ口フラスコ内を窒素雰囲気とし、式(m)で表される化合物2部、脱水アセトニトリル40部、ジイソプロピルエチルアミン1.9部を加えて氷浴撹拌した。トリフルオロメタンスルホン酸無水物4.1部を加えて15分間氷浴撹拌した。得られた混合物に式(b1)で表される化合物5.2部を加え温度60℃で2時間撹拌した。得られた混合物から溶媒を留去した後、塩酸及び酢酸エチルで精製し、式(4)で表される化合物2部を得た。
【0106】
LC-MS測定及びH-NMR解析を行い、式(4)で表される化合物が生成したことを確認した。また、エネルギー分散型X線分光法(SEM-EDX分析)によりクロライドアニオンの存在を確認した。さらに、上述と同様にして極大吸収波長、グラム吸光係数及び半値全幅を測定したところ、式(4)で表される化合物の極大吸収波長は459nmであり、極大吸収波長におけるグラム吸光係数ε(λmax)は100L/(g・cm)であり、半値全幅は70nmであった。
H-NMR(重ジメチルスルホキシド)δ:11.2(m、2H)、7.44~7.95(12H)、7.44~7.46(m、4H)、6.09(s、2H)、2.69~3.00(m、5H)、2.50(m、2H)、1.56~1.59(m、2H)
LC-MS;[M]=552.5
【0107】
実施例5:式(5)で表される化合物の合成
【化34】

ジムロート冷却管及び温度計を設置した100mL-四ツ口フラスコ内を窒素雰囲気とし、式(m)で表される化合物0.2部、脱水アセトニトリル4部、ジイソプロピルエチルアミン0.2部を加えて氷浴撹拌した。得られた混合物に、トリフルオロメタンスルホン酸無水物0.4部を加えて15分間氷浴撹拌した。得られた混合物に、式(b2)で表される化合物0.9部を加えて温度60℃で2時間撹拌した。得られた混合物から溶媒を留去した後、塩酸及び酢酸エチルで精製し、式(5)で表される化合物0.3部を得た。
【0108】
H-NMR解析を行い、式(5)で表される化合物が生成したことを確認した。また、エネルギー分散型X線分光法(SEM-EDX分析)によりクロライドアニオンの存在を確認した。さらに、上述と同様にして極大吸収波長、グラム吸光係数及び半値全幅を測定したところ、式(5)で表される化合物の極大吸収波長は457nmであり、極大吸収波長におけるグラム吸光係数ε(λmax)は58L/(g・cm)であり、半値全幅は74nmであった。
H-NMR(重ジメチルスルホキシド)δ:10.9(m、2H)、7.85~8.00(m、22H)、7.42~7.48(m、12H)、6.08(s、2H)、2.61~3.00(m、5H)、2.09(m、2H)、1.60~1.65(m、2H)
【0109】
実施例6:式(6)で表される化合物の合成
【化35】

式(1)で表される化合物0.2部、メチルエチルケトン100部、アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート0.4部を加えて温度25℃で2時間撹拌した。得られた混合物から溶媒を留去した後、精製し、式(6)で表される化合物0.3部を得た。
【0110】
LC-MS測定及びH-NMR解析を行い、式(6)で表される化合物が生成したことを確認した。また、エネルギー分散型X線分光法(SEM-EDX分析)によりテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートアニオンの存在を確認した。さらに、上述と同様にして極大吸収波長、グラム吸光係数及び半値全幅を測定したところ、式(6)で表される化合物の極大吸収波長は523nmであり、極大吸収波長におけるグラム吸光係数ε(λmax)は121L/(g・cm)であり、半値全幅は48nmであった。
H-NMR(重ジメチルスルホキシド)δ:7.18~7.63(m、8H)、6.39(s、2H)、4.21~4.40(m、4H)、3.11~3.35(m、4H)、0.81~2.73(m、9H)
LC-MS;[M+H]=367.5、[Nega]=679.2
【0111】
重合例1:アクリル樹脂(A1)の調製
冷却管、窒素導入管、温度計及び撹拌機を備えた反応容器に、溶媒として酢酸エチル81.8部、アクリル酸ブチル96部、アクリル酸2-ヒドロキシエチルメチル3部、及びアクリル酸1部の混合溶液を仕込み、窒素ガスで装置内の空気を置換して酸素不含としながら内温を55℃に上げた。その後、アゾビスイソブチロニトリル(重合開始剤)0.14部を酢酸エチル10部に溶かした溶液を全量添加した。開始剤の添加した後1時間この温度で保持し、次いで内温を54~56℃に保ちながら酢酸エチルを添加速度17.3部/hrで反応容器内へ連続的に加え、アクリル樹脂の濃度が35%となった時点で酢酸エチルの添加を止め、さらに酢酸エチルの添加開始から12時間経過するまでこの温度で保温した。最後に酢酸エチルを加えてアクリル樹脂の濃度が20%となるように調節し、アクリル樹脂の酢酸エチル溶液を調製した。得られたアクリル樹脂は、GPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量Mwが140万、Mw/Mnが5.5であった。これをアクリル樹脂(A1)とする。
【0112】
実施例7:樹脂組成物(1)(粘着剤組成物(1))の調製
アクリル樹脂(A1)の酢酸エチル溶液(樹脂濃度:20%)の固形分100部に対して、架橋剤(東ソー株式会社製:商品名「コロネートL」、イソシアネート系化合物、固形分75%)0.5部、シラン化合物(信越化学工業株式会社製:商品名「KBM3066」)0.28部、式(1)で表される化合物0.5部を混合し、さらに固形分濃度が14%となるように2-ブタノンを添加して樹脂組成物(1)(粘着剤組成物)を得た。なお、上記架橋剤の配合量は、有効成分としての質量部数である。
【0113】
実施例8~18、比較例1及び2:樹脂組成物(2)~(14)の調製
表9に示すように各成分及び各成分の含有量を変えた以外は実施例7と同様にして樹脂組成物(2)~(14)を作製した。なお、架橋剤の配合量は有効成分としての質量部数であり、樹脂(A)は固形分の質量部数である。
【0114】
【表9】
【0115】
なお、表9における各略語は以下の意味を表す。
アクリル樹脂(A1):重合例1で合成したアクリル樹脂(A1)
式(1):実施例1で合成した式(1)で表される化合物
式(2):実施例2で合成した式(2)で表される化合物
式(3):実施例3で合成した式(3)で表される化合物
式(4):実施例4で合成した式(4)で表される化合物
式(5):実施例5で合成した式(5)で表される化合物
式(6):実施例6で合成した式(6)で表される化合物
コロネートL:東ソー株式会社製、商品名:コロネートL、イソシアネート系架橋剤
KBM3066:信越化学工業株式会社製、商品名:KBM3066、シランカップリング剤
式(B1):米国特許第6004536号明細書を参照して合成した下記式(B)で表される化合物(3-ブチルー2-[3-(-3-ブチル-5-フェニル-2(3H)-ベンゾリリデン)-1-プロペン-1-イル]-5-フェニル-ベンゾキサゾリウム パラトルエンスルホナート)。極大吸収波長は498nmであり、極大吸収波長におけるグラム吸光係数ε(λmax)は230L/(g・cm)であった。
【化36】

式(B2):C.I.ソルベントオレンジ15。極大吸収波長は498nmであり、極大吸収波長におけるグラム吸光係数ε(λmax)は581L/(g・cm)であった。
【0116】
<樹脂組成物(1)の成形体の評価>
〔樹脂成形体(1)の作製〕
得られた樹脂組成物(1)を、離型処理が施されたポリエチレンテレフタレートフィルムからなるセパレートフィルム〔リンテック株式会社から入手した商品名「PLR-382190」〕の離型処理面に、アプリケーターを用いて塗布し、100℃で1分間乾燥して樹脂成形体(粘着剤層)(1)を作製した。得られた樹脂成形体(1)の厚みは20μmであった。
【0117】
〔樹脂成形体(1)の吸光度保持率の測定〕
厚み8μmの偏光子の片面に接着剤層を用いて、厚み13μmのシクロオレフィンフィルムを貼合した偏光板を準備した。
偏光板の偏光子側に樹脂成形体(1)をラミネーターにより貼り合わせた後、温度23℃、相対湿度65%の条件で7日間養生し、シクロオレフィンフィルム/偏光子/樹脂成形体(1)/セパレートフィルムの積層体を得た。得られた積層体を30cm×30cmの大きさに裁断し、セパレートフィルムを剥離して、樹脂成形体(1)と無アルカリガラス〔コーニング社製の商品名“EAGLE XG”〕とを貼合し、シクロオレフィンフィルム/偏光子/樹脂成形体(1)/ガラスの積層構造を有する積層体(1-1)を得た。
得られた積層体(1-1)を温度63℃、相対湿度50%RHの条件でサンシャインウェザーメーター(スガ試験機株式会社製)に75時間投入し、耐候性試験を実施した。取り出した積層体(1-1)の吸光度を上記と同様の方法で測定した。測定した吸光度から、下記式に基づき、波長535nmにおけるサンプルの吸光度保持率を求めた。結果を表10に示す。吸光度保持率が100に近い値ほど、光選択吸収機能の劣化がなく良好な耐候性を有することを示す。
なお、吸光度保持率を評価するための吸収波長は、測定した吸光度のうち、極大吸収波長の長波側で吸光度が1~1.5になる波長を選択した。これは前記波長が分光測定装置の測定精度上、もっとも感度がよい吸光度領域であるためである。
吸光度保持率(%)
=(耐候性試験後のA(535)/耐候性試験前のA(535))×100
[式中、A(535)は積層体(1-1)の吸光度を表す。]
【0118】
樹脂組成物(1)の代わりに樹脂組成物(2)を用いて、樹脂成形体(2)、積層体(2-1)作製し、同様に吸光度保持率の評価を行った。結果を表10に示す。吸光度保持率の評価は波長560nmで行った。
【0119】
樹脂組成物(1)の代わりに樹脂組成物(3)を用いて、樹脂成形体(3)、積層体(3-1)作製し、同様に吸光度保持率の評価を行った。結果を表10に示す。吸光度保持率の評価は波長550nmで行った。
【0120】
樹脂組成物(1)の代わりに樹脂組成物(4)を用いて、樹脂成形体(4)、積層体(4-1)作製し、同様に吸光度保持率の評価を行った。結果を表10に示す。吸光度保持率の評価は波長550nmで行った。
【0121】
樹脂組成物(1)の代わりに樹脂組成物(5)を用いて、樹脂成形体(5)、積層体(5-1)作製し、同様に吸光度保持率の評価を行った。結果を表10に示す。吸光度保持率の評価は波長535nmで行った。
【0122】
樹脂組成物(1)の代わりに樹脂組成物(6)を用いて、樹脂成形体(6)、積層体(6-1)作製し、同様に吸光度保持率の評価を行った。結果を表10に示す。吸光度保持率の評価は波長570nmで行った。
【0123】
樹脂組成物(1)の代わりに樹脂組成物(7)を用いて、樹脂成形体(7)、積層体(7-1)作製し、同様に吸光度保持率の評価を行った。結果を表10に示す。吸光度保持率の評価は波長535nmで行った。
【0124】
樹脂組成物(1)の代わりに樹脂組成物(8)を用いて、樹脂成形体(8)、積層体(8-1)作製し、同様に吸光度保持率の評価を行った。結果を表10に示す。吸光度保持率の評価は波長540nmで行った。
【0125】
樹脂組成物(1)の代わりに樹脂組成物(9)を用いて、樹脂成形体(9)、積層体(9-1)作製し、同様に吸光度保持率の評価を行った。結果を表10に示す。吸光度保持率の評価は波長485nmで行った。
【0126】
樹脂組成物(1)の代わりに樹脂組成物(10)を用いて、樹脂成形体(10)、積層体(10-1)作製し、同様に吸光度保持率の評価を行った。結果を表10に示す。吸光度保持率の評価は波長485nmで行った。
【0127】
樹脂組成物(1)の代わりに樹脂組成物(11)を用いて、樹脂成形体(11)、積層体(11-1)作製し、同様に吸光度保持率の評価を行った。結果を表10に示す。吸光度保持率の評価は波長485nmで行った。
【0128】
樹脂組成物(1)の代わりに樹脂組成物(12)を用いて、樹脂成形体(12)、積層体(12-1)作製し、同様に吸光度保持率の評価を行った。結果を表10に示す。吸光度保持率の評価は波長485nmで行った。
【0129】
樹脂組成物(1)の代わりに樹脂組成物(13)を用いて、樹脂成形体(13)、積層体(13-1)作製し、同様に吸光度保持率の評価を行った。結果を表10に示す。吸光度保持率の評価は波長510nmで行った。
【0130】
樹脂組成物(1)の代わりに樹脂組成物(14)を用いて、樹脂成形体(14)、積層体(14-1)作製し、同様に吸光度保持率の評価を行った。結果を表10に示す。吸光度保持率の評価は波長485nmで行った。
【0131】
【表10】
【0132】
〔樹脂成形体(1)の耐ブリード性評価〕
得られた樹脂成形体(1)の一方の面にさらにセパレートフィルムを積層して両面セパレートフィルム付き粘着剤層を得た。得られた両面セパレートフィルム付き樹脂層(1)を温度23~25℃の空気下で1ヶ月保管した。保管後の両面セパレートフィルム付き樹脂成形体(1)について顕微鏡を用いて面内の化合物の結晶析出の有無を確認した。結晶析出がない場合をaとし、結晶析出がある場合をbとした。評価結果を表11に示す。
【0133】
樹脂成形体(2)~(14)を用いて同様に耐ブリード性評価を行った。結果を表11に示す。
【0134】
〔密着性の評価〕
(サンプルの作製)
厚み23μmの偏光子の両面に、接着剤層を用いて、厚み52μmのシクロオレフィンフィルム及び厚み80μmの(メタ)アクリル系樹脂フィルム(以下、PMMAフィルムという場合がある。)を貼合した偏光板を準備した。
偏光板のシクロオレフィンフィルム側に樹脂成形体(1)をラミネーターにより貼り合わせた後、温度23℃、相対湿度65%の条件で7日間養生し、PMMAフィルム/偏光子/シクロオレフィンフィルム/樹脂成形体(1)/セパレートフィルムの積層体を得た。得られた積層体の偏光子の吸収軸が長辺に平行となるように、150mm×25mmの大きさに裁断し、セパレートフィルムを剥離して、樹脂成型体(1)を無アルカリガラス基板〔コーニング社製の商品名“EAGLE XG”」、縦160mm、横50mm、厚さ0.7mm〕の中央部に貼り合わせた。得られた積層体を、オートクレーブ中、温度50℃、圧力5kgf/cm(490.3kPa)で、20分間加圧して、これをサンプルとした。
【0135】
(温度23℃における密着力の測定)
上記サンプルを、温度23℃、相対湿度55%RHの環境下に24時間保管した。その後、ガラス基板と粘着剤層との間にカッターの刃を入れ、長さ方向に端から30mm剥離し、その剥離部分を万能引張試験機〔(株)島津製作所製の商品名「AGS-50NX」〕のつかみ部でつかんだ。この状態のサンプルを、温度23℃、相対湿度55%RHの雰囲気中にて、JIS K 6854-2:1999「接着剤-はく離接着強さ試験方法-第2部:180度はく離」に準じて、つかみ移動速度300mm/分で180度はく離試験を行い、つかみ部の30mmを除く120mmの長さにわたる平均剥離力を求めて、これを温度23℃における密着力とした。結果を表11に示す。
【0136】
【表11】
【0137】
本発明の化合物は、極大吸収波長付近の光に対する高い吸収選択性を有する。また、本発明の化合物を含む樹脂組成物は耐候性試験後も高い吸光度保持率を有し、良好な耐候性を有する。