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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132095
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】クリップ
(51)【国際特許分類】
   F16B 19/00 20060101AFI20230914BHJP
【FI】
F16B19/00 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022037223
(22)【出願日】2022-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】308011351
【氏名又は名称】大和化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131048
【弁理士】
【氏名又は名称】張川 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100174377
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100215038
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 友子
(72)【発明者】
【氏名】加藤 誠
(72)【発明者】
【氏名】山下 祥史
【テーマコード(参考)】
3J036
【Fターム(参考)】
3J036AA03
3J036BA01
3J036BB03
3J036DA06
3J036DB04
(57)【要約】
【課題】自動取付装置によって軸部に肉抜き部が設けられたクリップをクリップ座の取付孔に押し付ける形で挿入して自動取り付けするときに、軸部の挿入開始位置が挿入口に対しずれていても、挿入口から取付孔への挿入が継続しやすいクリップ及びクリップの取付構造を提供する。
【解決手段】 クリップ1の軸部20は円柱状に形成され、その軸線Z2の方向(軸線方向)の両端側には、径方向外側から内側に向けて凹む肉抜き部2Bがその軸線Z2の周りに3以上形成され、その軸線Z2の周りにて隣接する肉抜き部2Bの間に径方向内側から外側に向けて突出する突出部2Cが形成される。軸部20の軸線方向Z2から見て、各々の突出部2Cは、軸部20の周方向両側に突出側壁面2c、2cを有し、隣接する突出部2C、2Cにおいて、隣接する突出側壁面2c、2c間に鈍角(θ2)が形成される。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に貫通する取付孔と、前記取付孔と連通し、周方向の所定位置において径方向に開口する挿入口とを有したクリップ座に対し、柱状の軸部が前記挿入口から前記取付孔に挿入されることにより取り付けられるクリップであって、
前記クリップの軸部には、当該軸部の径方向外側から内側に向けて凹む肉抜き部が当該軸部の軸線周りに3以上形成されることにより、当該軸線周りにて隣接する前記肉抜き部の間に当該軸部の径方向内側から外側に向けて突出する突出部が形成されており、
前記軸部の軸線方向から見て、各々の前記突出部は、前記軸部の径方向の両側に突出側壁面を有し、隣接する前記突出部において、隣接する前記突出側壁面間に鈍角が形成されることを特徴とするクリップ。
【請求項2】
前記突出部は、前記軸部の径方向外側に十字状に突出し、かつ各々の周方向両側の前記突出側壁面が周方向において対称な先細り形状をなす請求項1に記載のクリップ。
【請求項3】
前記突出部は、前記軸部の径方向外側に突出する形でその軸線周りにおいて等間隔おきに3つ形成される請求項1に記載のクリップ。
【請求項4】
前記クリップの軸部は、前記突出部を第一突出部とすると、径方向内側から外側に突出し、前記軸線方向において隣接する前記肉抜き部の間を通過する形で前記軸線周りを螺旋状に延びる第二突出部を有する請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のクリップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はクリップに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示すように、例えば自動車部品等において2部材を組付ける場合、一方の部材に設けられたクリップ座に対し、他方の部材を保持したクリップを取り付けることがある。クリップ座は、図18に示すように、軸線方向Z1’に貫通する取付孔202hと、取付孔202hと連通し、その周方向の所定位置において径方向Y1’に開口する挿入口202iと、を有する(クリップ座220)。他方、クリップ1’は、取付孔202hに取り付けるための円柱状の軸部20’を有しており、その軸部20’が挿入口202iから取付孔202hへと挿入されることによって、取付孔202hに取り付けられる。
【0003】
こうしたクリップ1’では軸部20’が円柱状に形成される。ただし、クリップ1’を樹脂成形する際の冷却の効率化や材料節約のため、軸部20’には、例えば図18に示すように、径方向外側から内側へと凹む肉抜き部2B’を軸線Z2’周りに複数形成することが予定されている。
【0004】
一方、近年では、こうしたクリップ1’をクリップ座220に取り付けるときに、自動取付装置を用いる(特許文献1参照)。この自動取付装置は、クリップ1’の軸部20’を押付手段502(押付部材)で押し出すことによって挿入口202iから取付孔202hへと挿入し、これによりクリップ1’をクリップ座220に取り付ける。ところが、こうした自動取付装置による取り付けは、押付手段502による軸部20’の押付位置が図18に示すように通常位置(図18の破線円の位置)から大きくずれることがある。通常位置からのずれがわずかであれば、軸部20’は、入り口側が広く形成された挿入口202i(対向面202g、202gの間)によってガイドされる形で、挿入口202iから取付孔202hに向かう挿入が継続する。しかしながら、図18に示すように通常位置から大きくずれた場合には、クリップ座220の挿入口202i側の先端が、軸部20’に形成された肉抜き部2B’内へと入り込み、軸部20’の各突出部2C’が、挿入口202iを形成する対向面202g、202gや挿入口先端面202a、202aが当接することがある。そして、こうした当接が生じるときに、自動取付装置による軸部20’の挿入が継続しなくなってクリップ1’の取り付けがストップしてしまう可能性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-147199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、軸部に肉抜き部が設けられたクリップを自動取付装置によってクリップ座の取付孔に押し付ける形で挿入して自動取り付けするときに、軸部の挿入開始位置が挿入口に対しずれていても、挿入口から取付孔への挿入が継続しやすいクリップを提供する。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0007】
上記課題を解決するためのクリップは、
軸線方向に貫通する取付孔と、前記取付孔と連通し、周方向の所定位置において径方向に開口する挿入口とを有したクリップ座に対し、柱状の軸部が前記挿入口から前記取付孔に挿入されることにより取り付けられるクリップであって、
前記クリップの軸部には、当該軸部の径方向外側から内側に向けて凹む肉抜き部が当該軸部の軸線周りに3以上形成されることにより、当該軸線周りにて隣接する前記肉抜き部の間に当該軸部の径方向内側から外側に向けて突出する突出部が形成されており、
前記軸部の軸線方向から見て、各々の前記突出部は、前記軸部の径方向の両側に突出側壁面を有し、隣接する前記突出部において、隣接する前記突出側壁面間に鈍角が形成される(隣接する前記突出側壁面が鈍角をなす)ことを特徴とする。
【0008】
クリップの軸部に肉抜きを設ける場合、軸部の周方向には複数の突出部が形成される。そのクリップの軸部をクリップ座に挿入して取り付けるにあたって、図18に示すように自動取付装置502を用いる場合は、軸部20’をクリップ座220の挿入口202iから取付孔202hへと挿入していくことになる。このとき、軸部20’の突出部2C’(挿入突出部)の1つが挿入口202iを形成する対向面202gと接触し、これと同時に他の突出部2C’の1つが挿入口202iの入り口を形成する挿入口先端面202aと面接触することで、クリップ1’の挿入が行き止まる可能性が高いことが分かった。上記本発明のクリップにおいては、軸部の周方向に隣接する両突出部において、周方向に対向する位置関係となる互いの側壁面(突出側壁面)間が鈍角(図10の角度θ2)をなすことにより、軸部がそうした同時接触状態を避けやすくなり、取付孔への無理のない挿入継続が可能になる。
【0009】
なお、上記において「隣接する前記突出部において、隣接する前記突出側壁面間に鈍角が形成される」とは、双方の突出側壁面が平面の場合はそれら両平面のなす角度が鈍角であることを意味し、双方の突出側壁面が曲面の場合はそれら両曲面の、突出部先端側の端における接線のなす角度が鈍角であることを意味するものとする。また、一方の突出側壁面が平面、他方の突出側壁面が曲面の場合は、一方の平面と他方の曲面の接線(突出部先端側の端における接線)とのなす角度が鈍角であることを意味するものとする。
【0010】
前記突出部は、前記軸部の径方向外側に十字状に突出し、かつ各々の周方向両側の前記突出側壁面が周方向において対称な先細り形状をなすように形成できる。この構成によれば、クリップの挿入時において、クリップの挿入が行き止まるような接触を避けやすくなる。また、肉抜きも大きく確保できる。
【0011】
前記突出部は、前記軸部の径方向外側に突出する形でその軸線周りにおいて等間隔おきに3つ形成できる。3つの突出部を有する構成とすることにより、突出側壁面を上記の十字状の場合のような先細り形状としなくても、隣接する突出側壁面間に鈍角が形成できる。よって、クリップの挿入時において、クリップの挿入が行き止まるような接触を避けやすくなる。一方で、肉抜きについては、上記の十字状の場合よりも大きく確保できる。
【0012】
前記クリップの軸部は、前記突出部を第一突出部とすると、径方向内側から外側に突出し、前記軸線方向において隣接する前記肉抜き部の間を通過する形で前記軸線周りを螺旋状に延びる第二突出部を有するように形成できる。円柱状の軸部において周方向に肉抜き部が形成される構成の場合には、クリップの軸部を押し付ける形の自動取付装置において、その押付手段は、肉抜き部とは当接できないので、周方向において小幅となる突出部のみを押し付けることになる。この場合、押付面積(接触面積)が小となるため、押し付けが不安定になりやすい。上記構成によれば、自動取付装置の押付手段は、螺旋状の第二突出部に対して軸部の周方向に広く接触して押し付けることができるから、安定した押し付けが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係るクリップにより第一部材と第二部材を組付けた状態を、クリップの正面から見た断面図。
図2図1のクリップの正面図。
図3図1のクリップのクリップ座への取り付けを説明するための斜視図。
図4図1のクリップのクリップ座への取り付けを説明するための断面図。
図5図2のA-A断面図。
図6図4のB-B断面図。
図7図6に続く図。
図8図7に続く図。
図9図1のクリップが取付孔に対するずれを修正しつつ挿入される状態を示した断面図。
図10図9の拡大図。
図11図1のクリップの第一変形例の、クリップ座への取り付けを示した断面図。
図12図1のクリップの第二変形例の、クリップ座への取り付けを示した断面図。
図13図1のクリップの第三変形例の、クリップ座への取り付けを示した断面図。
図14図1のクリップの第四変形例を示した正面図。
図15図14のC-C断面図。
図16図1のクリップの第五変形例の軸部を拡大した正面図。
図17図2の部分拡大図。
図18】自動取付装置を用いたクリップ座へのクリップの取り付け課題を説明する断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施例を、図面を参照して説明する。
【0015】
図1に示すように、本実施例のクリップ1を用いた取付構造100は、軸線Z1の方向(孔軸線方向:以下、軸線方向Z1ともいう)に貫通する取付孔201hと、取付孔201hと連通し、該取付孔201hの周方向の所定位置において径方向Y1(孔径方向)に開口する挿入口201iとを有したクリップ座210に対し、クリップ1の柱状の軸部20が挿入口201iから取付孔201hに挿入される(図3及び図4参照)ことにより取り付けられる構造である。
【0016】
クリップ1は、2つの部材を連結する部品であり、図1及び図2に示すように、ここでは板状の第一部材300(図1参照)に形成された貫通孔301に対し挿入することにより取り付けられる第一取付部3と、第一部材300とは異なる第二部材200に設けられたクリップ座210(図1参照)に対し取り付けられる第二取付部2と、を有する。クリップ1は、ここでは樹脂射出成形体であり、それら取付部2、3が一体に形成される。
【0017】
なお、連結対象となっている2つの部材300、200のうちの第一部材300は、例えばドアパネルとすることができ、第二部材200は、例えばドアトリムとすることができる。ただし、第一部材300及び第二部材200はドアパネルやドアトリムに限るものではない。
【0018】
第一取付部3は、軸線Z2の方向(軸部軸線方向:以下、軸線方向Z2ともいう)に延びる支柱31と、支柱31の先端から基端側に向けて延び出し、支柱31に対し接近する弾性変形が可能な弾性片32と、弾性片32の先端に設けられた係止部33と、支柱31の基端側から先端側に向けて皿状に広がる押上部34と、を一体に有する。図1に示すように、第一取付部3は、第一部材300の貫通孔301に対し、支柱31の先端から挿入し、弾性片32に支柱31に接近する弾性変形を生じさせる形で通過させる。そして、通過後の弾性片32の弾性復帰により、係止部33が貫通孔301の挿入方向の奥側(図1の上側)に回り込んで貫通孔301の開口周辺部302に係止した抜け止め状態となる。他方、皿状の押上部34は、貫通孔301に対し挿入されず、挿入方向の手前側(図1の下側)から貫通孔301の開口周辺部302に対し当接する。このように取付部3は、第一部材300に対し貫通孔301に挿入され、開口周辺部302を係止部33と押上部34とで挟む形で第一部材300に対し組付けられる。
【0019】
なお、第一取付部3は、第一部材300に取り付けるための部位であればよく、上記のようなものに限るものではない。貫通孔301についてもこれに限るものではなく、取付部3に対応するものであればよい。
【0020】
第二取付部2は、図1及び図2に示すように、軸線方向Z2に延びる円柱状の軸部20と、軸部20の軸線方向Z2の両端にて径方向(軸部径方向)の外側(外周側)に広がるフランジ状の挟持部21、22と、を有する。挟持部21、22は、クリップ座210の取付孔201hに取り付けられた時に、後述するクリップ座210の板状の座面部201を、軸線方向Z2において挟み込んで挟圧保持する部位(図1参照)である。他方、軸部20は、クリップ座210の挿入口201iから取付孔201h内へと進入し(図3及び図4参照)、進入した後に当該取付孔201hから抜けないよう抜け止め状態で保持される部位である。
【0021】
軸部20は、ここでは円柱状に形成される。ただし、図5に示すように、軸部20には、当該軸部20の径方向外側から内側に向けて凹む肉抜き部2Bが当該軸部20の軸線Z2の周り(軸線周り・周方向)に3以上形成される。これにより、当該軸線Z2の周りにて隣接する肉抜き部2Bの間には、当該軸部20の径方向内側から外側に向けて突出する突出部2Cが形成される。ここでの突出部2Cは、肉抜き部2Bと同数形成され、軸部20の径方向外側に十字状に突出している。各々の突出部2Cは、周方向(軸線Z2の周り)の両側に突出側壁面2c、2cを有し、それら突出側壁面2c、2cが当該周方向において対称な先細り形状(図5のように突出先端側ほど突出側壁面2c、2c間が小幅となる形状)をなす。
【0022】
このように軸部20には、軸線Z2の周り(周方向)において肉抜き部2Bと突出部2Cとが1ずつ交互に並んで形成されている。軸線Z2の周り(周方向)に並ぶ肉抜き部2Bと突出部2Cの組は、ここでは軸部20における軸線方向Z2の中間部には非形成であり、軸線方向Z2の両端側(挟持部21側と挟持部22側)のそれぞれに形成されている。
【0023】
また、図1及び図2に示すように、この突出部2Cを第一突出部2Cとしたとき、軸部20には、軸線方向Z2の中間部に、当該軸部20の径方向内側から外側に突出する形で軸線Z2の周り(周方向)に延びる環状の第二突出部2Dを有する。第二突出部2Dは、軸線方向Z2の一端側と他端側(挟持部21側と挟持部22側)にそれぞれ形成される肉抜き部2Bと第一突出部2Cとの組の間を通過するとともに、それら一端側と他端側において軸線方向Z2の延びる第一突出部2Cに対して直交するように接続する。ここでは図2に示すように、一端側と他端側における肉抜き部2B同士及び第一突出部2C同士が、軸線方向Z2において第二突出部2Dを挟んで隣接するように形成される。
【0024】
このように形成された円柱状の軸部20は、図5に示すように、円柱状の最外表面(円柱外周面)が、それら第一突出部2C及び第二突出部2Dの突出先端面として形成されており、残余部分は肉抜き部2Bとして当該最外表面から陥没した形状をなしている。
【0025】
クリップ座210は、図3及び図4に示すように、ここでは第二部材200の板状部(図示省略)から突出形成される部位である。クリップ座210は、板状の第二部材200の上方に位置する板状の座面部201と、板状の第二部材200から上方に立ち上がって座面部201と接続する立壁部211と、を有する。ここでの第二部材200は樹脂製であり、クリップ座210と一体に成形される。
【0026】
座面部201には、軸線方向Z1に貫通する取付孔201h(ここでは円筒状の取付孔)と、取付孔201hと連通し、周方向の所定位置において径方向Y1に開口する挿入口201iと、が形成される。図6に示すように、挿入口201iは、クリップ1の挿入方向Iを規定することとなる基準線Yを挟んで互いに対向する対向壁部201G、201Gにより形成され、それら対向壁部201G、201Gの各々は、互いの対向幅d1が、径方向Y1の内側(径方向内側:図6の左側)においてクリップ1の軸部20の軸径d2と同等以下であり、かつ径方向Y1の外側(径方向外側:図6の右側)ほど広がる対向面201g、201gと、それら対向面201g、201gの径方向Y1の外側端において挿入方向Iに対し直交する方向側に連接される挿入口先端面201a、201aと、を有する。
【0027】
このように、対向面201g、201gが径方向Y1の外側(径方向外側)ほど広がる形状をなすことで、軸部20の挿入口201i(対向壁部201G、201Gの対向間)への進入が容易になる。また、座面部201の対向壁部201G、201Gは、径方向Y1の外側ほど軸線方向Z2の厚みが薄くなる先細り形状を有する。ここでの対向壁部201G、201Gは、上面201s、201s(図3及び図4参照)を径方向Y1の外側に向けて下る斜面とすることにより先細り形状を形成している。この先細り形状により、座面部201の対向壁部201G、201Gは、挟持部21、22の対向間への進入が容易になる。
【0028】
なお、対向面201g、201gは、挿入口201iに進入した軸部20を摺動させる形で取付孔201h側へと案内することが可能なガイド面であればよい。ここでの対向面201g、201gは、軸線方向Z1の直交断面において直線状に現れる面である。また、挿入口先端面201a、201aは、対向面201g、201gの径方向Y1の外側端において挿入方向Iに対し直交する方向側に連接される面である。ここでの挿入口先端面201a、201aは、対向面201g、201gの径方向Y1の外側端において挿入方向Iに対し直交する方向に延びる面であり、径方向Y1軸線方向Z1の直交断面において少なくとも互いが同一直線上に位置する形、あるいは互いが平行をなす形でそれぞれが直線状に現れる面である。ここでの対向面201gと挿入口先端面201aの接続部には湾曲する面取り部が形成されている。
【0029】
ここでクリップ自動取付装置によってクリップ1をクリップ座210に取り付ける手順について説明する。
【0030】
図6に示すように、クリップ自動取付装置は、所定位置に配置されたクリップ座210の挿入口201iの径方向Y1側に、クリップ1を配置する。このときクリップ1は、クリップ自動取付装置によって、軸部20の軸線方向Z2と、クリップ座210の取付孔201hの軸線方向Z1とが平行とされる(図4参照)。
【0031】
その上で、クリップ自動取付装置は、押付手段500(ここでは板状の押付部材を径方向Y1の逆向きに押し出す手段)によって軸部20を挿入口201i側へと押し付ける。これにより、図3及び図4に示すように、クリップ座210の対向壁部201G、201Gの双方がクリップ1の挟持部21、22の対向間に進入していくとともに、図6及び図7に示すように、クリップ1の軸部20がクリップ座210の対向壁部201G、201Gの対向間、即ち挿入口201i内へと進入していく。
【0032】
挿入口201i内へと進入した軸部20は、押付手段500によって継続して押し付けられてさらに奥へと進入するが、図7に示すように、クリップ1の軸部20の軸径d2と同等以下となるように形成された、対向壁部201G、201Gの取付孔201h側の端部によって、取付孔201h内への進入を妨げられる。ただし、押付手段500による押し付けの継続により、進入を妨げる対向壁部201G、201Gを押し広げる、ないしは自身が圧縮されるといった弾性変形を伴う形でこれを乗り越え、取付孔201h内に進入する。乗り越えた後には弾性変形が解除(弾性復帰)され、図8に示すように、軸部20は、取付孔201h内に抜け止め状態で保持される。さらに、このときのクリップ1は、図1に示すように、挟持部21、22がクリップ座210の座面部201を軸線方向Z2において挟圧保持した状態にもなっている。これらによりクリップ1は、クリップ座210の取付孔201hに取り付けられた取付状態となり、取付構造100が形成される(図1及び図8参照)。
【0033】
ところで、自動取付装置によってクリップ1の軸部20をクリップ座210の挿入口201iから取付孔201h内へと挿入するとき、軸部20の位置は、図6に示すように、挿入口201iに対し径方向Y1側で、基準線Y上に軸線Z2が位置することが基本となる。ところが、自動取付装置においては、挿入口201i対する軸部20の位置が、図9に示すように、対向面201g、201gの開口幅方向(挿入方向Iに対し直交する方向:図6の上下方向)にずれる可能性がある。わずかなずれであれば、入り口側が広く形成された対向面201g、201gによって摺動ガイドされる形で、軸部20は挿入口201i内への進入が継続し、取付孔201hに向かう挿入が継続する。しかしながら、大きくずれた場合、例えば図18に示すようなクリップ1’では、挿入が継続せず、ストップしてしまうことがあった。
【0034】
即ち、図18に示すクリップ1’は、軸部20’が挿入口202iに進入するとき、いずれかの突出部2C’(図18の左側の突出部2C1’)が挿入口202iに向けて挿入される。このとき、挿入口202iに対する軸部20’の位置が大きくずれていると、軸部20’の肉抜き部2B’内にクリップ座220の挿入口先端面202a側の端部が進入する。そしてその進入が進むと、挿入口202iに進入した上記突出部2C’(2C1’)に対し軸部20の周方向において隣接するいずれか一方の突出部2C’(図18の上側の突出部2C2’)の突出側壁面2c’が挿入口先端面202aと接触する可能性がある。さらに、その接触と同時に、挿入口202iに進入した上記突出部2C’(2C1’)の突出側壁面2c’が対向面202gと接触する可能性がある。これら双方の同時接触が生じる時、挿入口202iから取付孔202hへの軸部20’の挿入はストップしやすい。さらにいえば、この同時接触の際に、突出部2C’(突出部2C2’)の突出側壁面2c’が、挿入口先端面202aと面接触しているときには、その挿入がより高い確率でストップする。
【0035】
このため本実施例のクリップ1は、図5に示すように、軸部20の軸線方向Z2から見て、軸部20の径方向外側に十字状に突出する各突出部2Cは、それぞれが軸部20の周方向両側に突出側壁面2c、2cを有し、隣接する突出部2C、2Cにおいて、隣接する突出側壁面2c、2c間の角度θ2が鈍角をなすように、各突出部2Cが先細り形状をなして形成されている。これにより、図9に示すように、いずれかの突出部2Cが挿入突出部2C1として挿入口201iに向けて挿入され、その突出部2C(挿入突出部2C1)に軸部20の周方向において隣接するいずれか一方の突出部2C(隣接突出部2C2)の突出側壁面2cが挿入口先端面201aと接触したとき、挿入突出部2C1は、対向壁部201G、201Gのいずれの対向面201g、201gとも接触しにくい。このため、押付手段500による軸部20への押し付けが継続していれば、軸部20は、軸線Z2の周りの回転を伴う形で挿入口201iの内部へと進入していき、挿入が継続する。
【0036】
さらにいえば、本実施例のクリップ座210は、図10に示すように、対向壁部201G、201Gの対向面201g、201gとそれに連接される挿入口先端面201aとのなす角度θ1が、クリップ1の軸部20の周り(周方向)にて隣接する突出部2C、2Cにおいて鈍角をなして隣接する突出側壁面2c、2c間の角度θ2以下(θ1≦θ2:ここではθ1<θ2)となっている。これにより、挿入口201iに向けて挿入された突出部2C(挿入突出部2C1)が対向面201gと接触し、同時にこれと軸部20の周方向において隣接するいずれか一方の突出部2C(隣接突出部2C2)の突出側壁面2cが挿入口先端面201aと面接触することがない。このため、高確率で挿入継続をストップさせていた、突出部2Cの1つと挿入口先端面201aとの面接触と対向面201g、201gとの接触との同時発生を回避することができるから、軸部20の取付孔202hへの挿入をより確実に継続できるようになる。
【0037】
なお、対向面201gとそれに連接される挿入口先端面201aとのなす角度θ1は、対向面201gと挿入口先端面201aとの主部同士のなす角度とする。例えば、対向面201gと挿入口先端面201aとの接続部分に、それら両面201g、201aを滑らかに接続する面取り部のような接続部があった場合には、この部分を除外した面領域同士のなす角度とする。
【0038】
また、鈍角をなして隣接する突出側壁面2c、2c間の角度θ2は、双方の突出側壁面2c、2cが平面の場合はそれら両平面のなす角度であり、双方の突出側壁面2c、2cが曲面の場合はそれら両曲面の、突出先端側の端における接線同士のなす角度であり、一方の突出側壁面2cが平面、他方の突出側壁面2cが曲面の場合は、一方の平面と、他方の曲面の、突出先端側の端における接線とのなす角度との角度である。これらの場合においても、角度θ2を形成する両面の接続部分に、それら両面を滑らかに接続する面取り部のような接続部があった場合には、この部分を除外した面領域同士のなす角度とする。
【0039】
以上、本発明の一実施例を説明したが、これはあくまでも例示にすぎず、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、追加及び省略等の種々の変更が可能である。
【0040】
以下、上記した実施例とは別の実施例や変形例について説明する。なお、上記実施例と共通の機能を有する部位には同一符号を付して詳細な説明を省略する。また、上記実施例と、下記変形例及び別実施例とは、技術的な矛盾を生じない範囲において適宜組み合わせて実施できる。
【0041】
上記実施例において、軸部20の軸線方向Z2から見て、各々の突出部2Cは、軸部20の周方向両側に突出側壁面2c、2cを有し、隣接する突出部2C、2Cにおいて、隣接する突出側壁面2c、2c間に鈍角が形成されていればよく、軸線Z2の周りにおいて突出部2Cが3以上形成されていればよい。上記実施例では4つ形成されているが、例えば図11図13に示すように、3つや5つでもよい。なお、クリップ1が樹脂成形体である場合には、金型構造の単純化等を考慮すると3つ又は4つが望ましい。
【0042】
図11に示す突出部2Cは、軸部20の径方向の内側(径方向内側)から外側(径方向外側)に突出する形で、その軸線Z2の周りにおいて等間隔おきに3つ形成されている。3つの突出部2Cを有する構成とすることにより、突出部2Cを上記実施例のような先細り形状(図9及び図10参照)としなくても、図11に示すように、隣接する突出側壁面2c、2c間に鈍角を形成できる。肉抜き部2Bを大きく形成することも可能であり、樹脂材料の節約や、冷却効率化の効果を大きく得ることができる。
【0043】
ところで、図1図9に示す上記実施例、及び図11図13に示す各種変形例において、押付手段500は、先端をなす押付面500pが円柱形状の外表面に密着して押し付けることができるよう、当該外表面に対応する円弧状の湾曲面として形成されている。これにより押付手段500の押付面500pは、軸部20の軸線方向Z2における中央部に設けられた環状の第二突出部2Dに対し幅全体が密着するから、安定して押し付けることができる。図17の符号PA(ドット領域)は、押付面500pと第二突出部2Dとの接触領域(密着領域)を示している。
【0044】
しかしながら、押付手段500による軸部20の押付位置が軸線方向Z1にずれてしまった場合、押付面500pは、軸部20のうち肉抜き部2Bや突出部2Cが形成された部分を押し付けることになる。この場合、例えば図17の符号PB(ドット領域)に示すように、押付面500pは、突出部2Cの先端のみを接触領域(PB)とし、幅方向の両端側が肉抜き部2Bと対面して非接触となるから、安定した押し付けが難しい。そこで図14図16に示す実施例のように、第二突出部2Dを、軸部20の径方向内側から外側に突出し、軸線Z2の方向(軸線方向)において隣接する肉抜き部2Bの間を通過する形で軸線Z2周りを螺旋状(図14参照)に延びるように形成してもよい。
【0045】
図14図16に示す実施例の場合、第二突出部2Dは、上記実施例のように軸線Z2の方向の中央にのみ形成されるのではなく、軸線Z2の方向において螺旋状に形成されるから、図16の符号PC(ドット領域)に示すように、押付面500pに対し軸部20を幅広く接触しやすくなる。ここでの第二突出部2Dは、軸線Z2の方向の一端から他端にかけて螺旋状に連なるようにして形成されている。具体的にいえば、第二突出部2Dは、2つの螺旋が平行をなす二重螺旋状に形成され、それぞれの一端側(上側)が挟持部21と接続し、他端側(下側)が挟持部22と接続している。
【0046】
なお、図15に示すように、この場合の肉抜き部2Bも、対向壁部201G、201Gの対向面201g、201gとそれに連接される挿入口先端面201aとのなす角度θ1が、クリップ1の軸部20の隣接する突出部2Cにおいて鈍角をなして隣接する突出側壁面2c、2c間の角度θ2以下(ここではθ2より小さい)となっている。
【符号の説明】
【0047】
100 クリップの取付構造
1 クリップ
2 第二取付部
20 軸部
2B 肉抜き部
2C 第一突出部(突出部)
2c 突出側壁面
2D 第二突出部
3 第一取付部
210 クリップ座
201 座面部
201h 取付孔
201i 挿入口
201G 対向壁部
201g 対向面
201a 挿入口先端面
Z1 取付孔の軸線
Z2 軸部の軸線
Y 基準線
Y1 取付孔において周方向の所定位置を通過する径方向
I 挿入方向
d1 対向面間の対向幅
d2 軸部の軸径
θ1 対向面とそれに連接される挿入口先端面とのなす角度
θ2 隣接する突出側壁面間の角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図18