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特開2023-132108眼科システム、医療情報処理装置、医療情報処理方法、プログラム、及び記録媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132108
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】眼科システム、医療情報処理装置、医療情報処理方法、プログラム、及び記録媒体
(51)【国際特許分類】
   G16H 20/00 20180101AFI20230914BHJP
【FI】
G16H20/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022037245
(22)【出願日】2022-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100124626
【弁理士】
【氏名又は名称】榎並 智和
(72)【発明者】
【氏名】竹田 徳泰
(72)【発明者】
【氏名】南出 夏奈
(72)【発明者】
【氏名】イェ シュユン
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA22
5L099AA25
(57)【要約】
【課題】薬剤使用及び検査の双方の管理を実現する。
【解決手段】例示的な実施形態に係る眼科システム1000は、点眼部1010、検査部1020、医療情報生成部1030、及び出力部1040を含む。点眼部1010は、患者の眼に薬剤を点眼する。検査部1020は、この薬剤に対応する検査を患者の眼に適用して検査データを取得する。医療情報生成部1030は、点眼部1010により実施された点眼に関する点眼データと検査部1020により取得された検査データとに基づいて、患者の医療情報を生成する。出力部1040は、医療情報生成部1030により生成された医療情報を出力する。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の眼に薬剤を点眼する点眼部と、
前記薬剤に対応する検査を前記眼に適用して検査データを取得する検査部と、
前記点眼部により実施された点眼に関する点眼データと前記検査部により取得された前記検査データとに基づいて、前記患者の医療情報を生成する医療情報生成部と、
前記医療情報生成部により生成された前記医療情報を出力する出力部と
を含む、眼科システム。
【請求項2】
前記医療情報は、受診に関する受診情報を含む、
請求項1の眼科システム。
【請求項3】
前記受診情報は、少なくとも次回受診日に関する受診予定情報を含む、
請求項2の眼科システム。
【請求項4】
前記患者の医療記録情報を受け付ける情報受付部を更に含み、
前記医療記録情報は、医療機関において予め設定された次回受診予定日を含む予定情報を含み、
前記医療情報生成部は、前記点眼データと前記検査データと前記予定情報とに基づいて、前記次回受診日を決定する、
請求項3の眼科システム。
【請求項5】
前記医療記録情報は、前記眼に対する前記薬剤の点眼条件と、前記検査の結果を評価するための検査結果評価条件とを更に含み、
前記医療情報生成部は、
前記点眼データが前記点眼条件を満足するか否か判定する点眼データ判定部と、
前記検査データが前記検査結果評価条件を満足するか否か判定する検査データ判定部と
を含み、
前記点眼データ判定部により取得された判定結果と前記検査データ判定部により取得された判定結果と前記予定情報とに基づいて、前記次回受診日を決定する、
請求項4の眼科システム。
【請求項6】
前記検査結果評価条件は、前記検査の結果の許容範囲を含み、
前記検査データ判定部は、前記検査データが前記許容範囲に含まれるか否か判定し、
前記点眼データが前記点眼条件を満足すると前記点眼データ判定部により判定され、且つ、前記検査データが前記許容範囲に含まれると前記検査データ判定部により判定された場合、前記医療情報生成部は、前記予定情報に含まれる前記次回受診予定日を前記次回受診日に指定する、
請求項5の眼科システム。
【請求項7】
前記検査結果評価条件は、前記検査の結果の許容範囲を含み、
前記検査データ判定部は、前記検査データが前記許容範囲に含まれるか否か判定し、
前記点眼データが前記点眼条件を満足すると前記点眼データ判定部により判定され、且つ、前記検査データが前記許容範囲に含まれないと前記検査データ判定部により判定された場合、前記医療情報生成部は、前記予定情報に含まれる前記次回受診予定日よりも前の受診候補日を前記次回受診日に指定する、
請求項5又は6の眼科システム。
【請求項8】
前記医療記録情報は、前記眼の治療内容に関する治療内容情報を含み、
前記医療情報生成部は、更に、前記治療内容情報に基づいて、前記眼の治療内容の変更に関する提案情報を生成する、
請求項7の眼科システム。
【請求項9】
前記治療内容情報は、前記薬剤の種類、前記薬剤の点眼量、前記薬剤の点眼頻度、及び、前記薬剤の点眼タイミングのうちの少なくとも1つを含む、
請求項8の眼科システム。
【請求項10】
前記点眼データが前記点眼条件を満足しないと前記点眼データ判定部により判定された場合、前記出力部は、前記患者に対する警告情報を出力する、
請求項5~8のいずれかの眼科システム。
【請求項11】
前記医療情報は、前記眼の治療内容の変更に関する提案情報を含む、
請求項1の眼科システム。
【請求項12】
前記患者の医療記録情報を受け付ける情報受付部を更に含み、
前記医療記録情報は、前記眼の治療内容に関する治療内容情報を含み、
前記医療情報生成部は、前記点眼データと前記検査データと前記治療内容情報とに基づいて、前記提案情報を生成する、
請求項11の眼科システム。
【請求項13】
前記医療記録情報は、前記眼に対する前記薬剤の点眼条件と、前記検査の結果の許容範囲とを含み、
前記医療情報生成部は、
前記点眼データが前記点眼条件を満足するか否か判定する点眼データ判定部と、
前記検査データが前記許容範囲に含まれるか否か判定する検査データ判定部と
を含み、
前記点眼データが前記点眼条件を満足すると前記点眼データ判定部により判定され、且つ、前記検査データが前記許容範囲に含まれないと前記検査データ判定部により判定された場合に、前記提案情報を生成する、
請求項12の眼科システム。
【請求項14】
前記医療情報は、前記患者に対する警告情報を含む、
請求項1の眼科システム。
【請求項15】
前記眼に対する前記薬剤の点眼条件を受け付ける情報受付部と、
前記点眼データが前記点眼条件を満足するか否か判定する点眼データ判定部と
を更に含み、
前記出力部は、前記点眼データが前記点眼条件を満足しないと前記点眼データ判定部により判定された場合に、前記警告情報を出力する、
請求項14の眼科システム。
【請求項16】
前記検査部は、所定の眼科検査項目の測定データを前記眼から取得する眼科測定部及び前記眼を撮影する眼科撮影部の少なくとも一方を含む、
請求項1~15のいずれかの眼科システム。
【請求項17】
前記出力部は、前記患者により予め指定された第1コンピュータ及び前記患者が受診している医療機関により予め指定された第2コンピュータの少なくとも一方に向けて前記医療情報を送信する、
請求項1~16のいずれかの眼科システム。
【請求項18】
前記医療情報生成部は、前記薬剤に関する薬剤情報及び前記検査に関する検査情報を含む訓練データを用いた機械学習により予め構築された推論モデルを含み、
前記推論モデルは、前記検査データ及び前記点眼データを含む入力データを受けて出力データを生成し、
前記医療情報は、前記出力データ及び前記出力データから生成された処理データの少なくとも一方を含む、
請求項1~17のいずれかの眼科システム。
【請求項19】
前記点眼データは、前記薬剤の種類、前記薬剤の点眼量、前記薬剤の点眼頻度、前記薬剤の点眼日時、及び、前記薬剤の点眼の成否のうちの少なくとも1つを含む、
請求項1~18のいずれかの眼科システム。
【請求項20】
前記検査データは、眼圧データ、光コヒーレンストモグラフィデータ、撮影画像データ、斜視データ、斜位データ、視力データ、深視力データ、眼屈折力データ、眼収差データ、視野データ、角膜形態データ、眼底形態データ、角膜内皮細胞データ、眼軸長データ、両眼視機能データ、及び、色覚データのうちの少なくとも1つを含む、
請求項1~19のいずれかの眼科システム。
【請求項21】
患者の眼に対する薬剤の点眼に関する点眼データと、前記薬剤に対応する検査により前記眼から取得された検査データとを受け付けるデータ受付部と、
前記点眼データと前記検査データとに基づいて、前記患者の医療情報を生成する医療情報生成部と、
前記医療情報生成部により生成された前記医療情報を出力する出力部と
を含む、医療情報処理装置。
【請求項22】
患者の眼の診療を支援するために医療情報を処理する方法であって、
患者の眼に対する薬剤の点眼に関する点眼データを生成し、
前記薬剤に対応する検査により前記眼から取得された検査データを生成し、
前記点眼データと前記検査データとに基づいて、前記患者の医療情報を生成し、
前記医療情報を出力する、
方法。
【請求項23】
請求項22の方法をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項24】
請求項23のプログラムが記録されたコンピュータ可読な非一時的記録媒体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、眼科システム、医療情報処理装置、医療情報処理方法、プログラム、及び記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
外来患者や在宅患者の多くは、自宅等において薬剤を使用したり検査を行ったりしている。そのような医療形態を支援するための技術としては、在宅で検査を行うためのシステム(例えば引用文献1を参照)や、薬剤使用を管理するためのシステム(例えば特許文献2及び3を参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-035111号公報
【特許文献2】特開2018-094440号公報
【特許文献3】特開2020-160613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の1つの目的は、薬剤使用及び検査の双方の管理を実現することで外来患者や在宅患者に対する診療効果の向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
例示的な実施形態に係る眼科システムは、患者の眼に薬剤を点眼する点眼部と、前記薬剤に対応する検査を前記眼に適用して検査データを取得する検査部と、前記点眼部により実施された点眼に関する点眼データと前記検査部により取得された前記検査データとに基づいて、前記患者の医療情報を生成する医療情報生成部と、前記医療情報生成部により生成された前記医療情報を出力する出力部とを含んでいる。前記医療情報は、受診に関する受診情報を含んでいてよい。前記受診情報は、少なくとも次回受診日に関する受診予定情報を含んでいてよい。前記眼科システムは、前記患者の医療記録情報を受け付ける情報受付部を更に含んでいてよく、前記医療記録情報は、医療機関において予め設定された次回受診予定日を含む予定情報を含んでいてよく、前記医療情報生成部は、前記点眼データと前記検査データと前記予定情報とに基づいて、前記次回受診日を決定してよい。前記医療記録情報は、前記眼に対する前記薬剤の点眼条件と、前記検査の結果を評価するための検査結果評価条件とを更に含んでいてよく、前記医療情報生成部は、前記点眼データが前記点眼条件を満足するか否か判定する点眼データ判定部と、前記検査データが前記検査結果評価条件を満足するか否か判定する検査データ判定部とを含んでいてよく、前記医療情報生成部は、前記点眼データ判定部により取得された判定結果と前記検査データ判定部により取得された判定結果と前記予定情報とに基づいて、前記次回受診日を決定してよい。前記検査結果評価条件は、前記検査の結果の許容範囲を含んでいてよく、前記検査データ判定部は、前記検査データが前記許容範囲に含まれるか否か判定してよく、前記医療情報生成部は、前記点眼データが前記点眼条件を満足すると前記点眼データ判定部により判定され、且つ、前記検査データが前記許容範囲に含まれると前記検査データ判定部により判定された場合に、前記予定情報に含まれる前記次回受診予定日を前記次回受診日に指定してよい。前記検査結果評価条件は、前記検査の結果の許容範囲を含んでいてよく、前記検査データ判定部は、前記検査データが前記許容範囲に含まれるか否か判定してよく、前記医療情報生成部は、前記点眼データが前記点眼条件を満足すると前記点眼データ判定部により判定され、且つ、前記検査データが前記許容範囲に含まれないと前記検査データ判定部により判定された場合に、前記予定情報に含まれる前記次回受診予定日よりも前の受診候補日を前記次回受診日に指定してよい。前記医療記録情報は、前記眼の治療内容に関する治療内容情報を含んでいてよく、前記医療情報生成部は、前記治療内容情報に基づいて、前記眼の治療内容の変更に関する提案情報を生成してよい。前記治療内容情報は、前記薬剤の種類、前記薬剤の点眼量、前記薬剤の点眼頻度、及び、前記薬剤の点眼タイミングのうちの少なくとも1つを含んでいてよい。前記出力部は、前記点眼データが前記点眼条件を満足しないと前記点眼データ判定部により判定された場合に、前記患者に対する警告情報を出力してよい。前記医療情報は、前記眼の治療内容の変更に関する提案情報を含んでいてよい。前記眼科システムは、前記患者の医療記録情報を受け付ける情報受付部を更に含んでいてよく、前記医療記録情報は、前記眼の治療内容に関する治療内容情報を含んでいてよく、前記医療情報生成部は、前記点眼データと前記検査データと前記治療内容情報とに基づいて、前記提案情報を生成してよい。前記医療記録情報は、前記眼に対する前記薬剤の点眼条件と、前記検査の結果の許容範囲とを含んでいてよく、前記医療情報生成部は、前記点眼データが前記点眼条件を満足するか否か判定する点眼データ判定部と、前記検査データが前記許容範囲に含まれるか否か判定する検査データ判定部とを含んでいてよく、前記医療情報生成部は、前記点眼データが前記点眼条件を満足すると前記点眼データ判定部により判定され、且つ、前記検査データが前記許容範囲に含まれないと前記検査データ判定部により判定された場合に、前記提案情報を生成してよい。前記医療情報は、前記患者に対する警告情報を含んでいてよい。前記眼科システムは、前記眼に対する前記薬剤の点眼条件を受け付ける情報受付部と、前記点眼データが前記点眼条件を満足するか否か判定する点眼データ判定部とを更に含んでいてよく、前記出力部は、前記点眼データが前記点眼条件を満足しないと前記点眼データ判定部により判定された場合に、前記警告情報を出力してよい。前記検査部は、所定の眼科検査項目の測定データを前記眼から取得する眼科測定部及び前記眼を撮影する眼科撮影部の少なくとも一方を含んでいてよい。前記出力部は、前記患者により予め指定された第1コンピュータ及び前記患者が受診している医療機関により予め指定された第2コンピュータの少なくとも一方に向けて前記医療情報を送信してよい。前記医療情報生成部は、前記薬剤に関する薬剤情報及び前記検査に関する検査情報を含む訓練データを用いた機械学習により予め構築された推論モデルを含んでいてよく、前記推論モデルは、前記検査データ及び前記点眼データを含む入力データを受けて出力データを生成してよく、前記医療情報は、前記出力データ及び前記出力データから生成された処理データの少なくとも一方を含んでいてよい。前記点眼データは、前記薬剤の種類、前記薬剤の点眼量、前記薬剤の点眼頻度、前記薬剤の点眼日時、及び、前記薬剤の点眼の成否のうちの少なくとも1つを含んでいてよい。前記検査データは、眼圧データ、光コヒーレンストモグラフィデータ、撮影画像データ、斜視データ、斜位データ、視力データ、深視力データ、眼屈折力データ、眼収差データ、視野データ、角膜形態データ、眼底形態データ、角膜内皮細胞データ、眼軸長データ、両眼視機能データ、及び、色覚データのうちの少なくとも1つを含んでいてよい。前記眼科システムは、本開示に記載されている任意の事項を含んでいてよい。
【0006】
例示的な実施形態に係る医療情報処理装置は、患者の眼に対する薬剤の点眼に関する点眼データと、前記薬剤に対応する検査により前記眼から取得された検査データとを受け付けるデータ受付部と、前記点眼データと前記検査データとに基づいて、前記患者の医療情報を生成する医療情報生成部と、前記医療情報生成部により生成された前記医療情報を出力する出力部とを含んでいる。前記医療情報処理装置は、前記眼科システムに関する任意の事項を含んでいてもよい。また、前記医療情報処理装置は、本開示に記載されている任意の事項を含んでいてよい。
【0007】
例示的な実施形態に係る医療情報処理方法は、患者の眼の診療を支援するために医療情報を(コンピュータで)処理する方法であって、(コンピュータにより)患者の眼に対する薬剤の点眼に関する点眼データを生成し、(コンピュータにより)前記薬剤に対応する検査により前記眼から取得された検査データを生成し、(コンピュータにより)前記点眼データと前記検査データとに基づいて、前記患者の医療情報を生成し、(コンピュータにより)前記医療情報を出力する。前記医療情報処理方法は、前記眼科システムに関する任意の事項を含んでいてもよい。また、前記医療情報処理方法は、本開示に記載されている任意の事項を含んでいてよい。
【0008】
例示的な実施形態に係るプログラムは、前記医療情報処理方法をコンピュータに実行させるプログラムである。前記プログラムは、前記眼科システムに関する任意の事項を含んでいてもよい。また、前記プログラムは、本開示に記載されている任意の事項を含んでいてよい。
【0009】
例示的な実施形態に係る記録媒体は、前記プログラムが記録されたコンピュータ可読な非一時的記録媒体である。前記記録媒体は、前記眼科システムに関する任意の事項を含んでいてもよい。また、前記記録媒体は、本開示に記載されている任意の事項を含んでいてよい。
【発明の効果】
【0010】
例示的な実施形態によれば、薬剤使用及び検査の双方の管理を実現することが可能になる。それにより、外来患者や在宅患者に対する診療効果の向上を図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態の例示的な態様に係る眼科システムの構成を表すブロック図である。
図2】実施形態の例示的な態様に係る眼科システムの構成を表すブロック図である。
図3】実施形態の例示的な態様に係る眼科システムの構成を表すブロック図である。
図4】実施形態の例示的な態様に係る眼科システムの構成を表すブロック図である。
図5】実施形態の例示的な態様に係る眼科システムの構成を表すブロック図である。
図6】実施形態の例示的な態様に係る眼科システムの構成を表すブロック図である。
図7】実施例に係る眼科システムの構成を表す図である。
図8】実施例に係る眼科システムが実行する処理を表すフローチャートである。
図9】実施例に係る眼科システムが実行する処理を表すフローチャートである。
図10A】実施例に係る眼科システムが実行する処理を表すフローチャートである。
図10B】実施例に係る眼科システムが実行する処理を表すフローチャートである。
図11】実施形態の例示的な態様に係る医療情報処理装置の構成を表すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示に係る例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
本開示に係る実施形態に任意の公知技術を組み合わせることができる。例えば、本開示で引用する文献に記載された任意の事項など、本開示に関連する技術分野に係る任意の公知技術を、本開示に係る実施形態に組み合わせることができる。更に、本開示に関連する技術について本願の出願人により開示された任意の事項(特許出願、論文などにおいて開示された事項)を、本開示に係る実施形態に組み合わせることができる。本開示に係る実施形態の様々な例示的態様のうちのいずれか2つ以上を組み合わせることができる。なお、幾つかの技術事項の組み合わせは、それらの技術事項の全体的な組み合わせでもよいし、部分的な組み合わせでもよい。
【0014】
本開示に係る実施形態の1つの目的は、外来患者や在宅患者に対する診療効果の向上を図るために、薬剤使用及び検査の双方の管理を実現することである。外来患者とは、入院患者の対義語であり、自宅等から医療機関に出向いて診療を受ける者を意味する。また、在宅患者とは、在宅医療を受けている者を意味する。
【0015】
外来患者や在宅患者は、自宅等(一般に、医療機関外の場所)において薬剤使用や検査を日常的に行っている。典型的な例として、高血圧患者は、降圧剤の服用や血圧測定を自宅等において日常的に行っている。
【0016】
外来患者や在宅患者に対して効果的な診療を提供するためには、薬剤使用のアドヒアランス(コンプライアンス)を向上させることが重要であるとともに、検査結果を効果的に利用することも重要であると考えられる。例えば、薬剤が適切に使用されない限り、疾患のコントロールやマネジメントを適切に行うことは困難であり、検査結果と薬剤との関係を把握することも困難である。
【0017】
より具体的には、薬剤使用アドヒアランスの状況を十分に把握できない場合、検査結果の安定又は好転が使用薬剤の効果によるものなのかどうか評価することができず、検査結果の悪化が薬剤使用アドヒアランスの悪さに起因するものなのかどうか評価することもできない。
【0018】
また、外来診療や在宅医療においては、検査結果に応じた適切なタイミングで医師による診療を受けることも重要であると考えられるが、薬剤使用アドヒアランスの状況の十分な把握と組み合わせない限り、それを達成することは難しいと考えられる。
【0019】
本開示に係る実施形態は、眼科分野においてそのような課題を解決するために適用可能な技術を提供するものであり、外来患者や在宅患者に対する眼科診療の効果の向上を図るために、薬剤の点眼の管理と眼科疾患の検査の管理とを有機的に組み合わせた技術を提供するものである。
【0020】
本開示に係る実施形態において説明される要素の機能の少なくとも一部は、回路構成(circuitry)又は処理回路構成(processing circuitry)を用いて実装される。回路構成又は処理回路構成は、開示された機能の少なくとも一部を実行するように構成及び/又はプログラムされた、汎用プロセッサ、専用プロセッサ、集積回路、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、プログラマブル論理デバイス(例えば、SPLD(Simple Programmable Logic Device)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、従来の回路構成、及びそれらの任意の組み合わせのいずれかを含む。プロセッサは、トランジスタ及び/又は他の回路構成を含む、処理回路構成又は回路構成とみなされる。本開示において、回路構成、ユニット、手段、又はこれらに類する用語は、開示された機能の少なくとも一部を実行するハードウェア、又は、開示された機能の少なくとも一部を実行するようにプログラムされたハードウェアである。ハードウェアは、本開示に係る実施形態に記載されたハードウェアであってよく、或いは、記載された機能の少なくとも一部を実行するようにプログラム及び/又は構成された既知のハードウェアであってもよい。ハードウェアが或るタイプの回路構成とみなされ得るプロセッサである場合、回路構成、ユニット、手段、又はこれらに類する用語は、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせであり、このソフトウェアはハードウェア及び/又はプロセッサを構成するために使用される。本開示に係る実施形態において説明される要素の機能の少なくとも一部は、機械学習等の人工知能技術を利用して構成されてもよい。
【0021】
本開示では、眼科システムの実施形態、医療情報処理装置の実施形態、医療情報処理方法の実施形態、プログラムの実施形態、及び記録媒体の実施形態について説明するが、実施形態はこれらのカテゴリに限定されるものではない。
【0022】
<眼科システム>
眼科システムの実施形態について、幾つかの例示的な態様を説明する。1つの例示的な態様に係る眼科システムの構成を図1に示す。本態様の眼科システム1000は、例えば眼科診療を受けている外来患者や在宅患者によって使用される。
【0023】
眼科システム1000を使用する患者は、例えば、医師により点眼剤(点眼薬、点眼液とも呼ばれる)を処方された患者である。点眼剤は、眼に投与される薬剤であり、典型的には、眼に直接に投与される液体状の薬剤である。
【0024】
点眼剤が処方される眼科疾患の代表的な例として緑内障がある。緑内障は、失明原因となり得る眼疾患であり、進行性且つ非可逆的な視神経障害及び視野障害を伴う。これらの障害は患者の自覚なしに徐々に進行するため、早期発見及び早期治療による進行の阻止又は抑制が重要である。また、緑内障の治療は長期にわたって実施されるが、「quality of life」及び「quality of vision」を考慮した適切な疾患管理を長期にわたって行うことは容易ではない。特に、日常的な薬剤投与を患者(又はその介護者。以下同様)に適切且つ継続的に行わせること、つまり良好な薬剤使用アドヒアランスを長期にわたって維持することは、容易ではない。なお、緑内障患者に処方される点眼剤は主に眼圧下降薬であり、予め設定された目標眼圧が達成されるように眼圧の測定や処方内容(投与量、投与回数、薬剤の種類など)の変更が実施される。
【0025】
本態様では、緑内障患者が眼科システム1000を使用する場合について説明する。しかしながら、実施形態が適用される疾患は緑内障に限定されず、緑内障以外の眼疾患又は眼疾患以外の疾患に実施形態を適用することも可能である。
【0026】
眼科システム1000は、例えば、点眼剤を日常的に使用している患者(外来患者又は在宅患者)の住所地及び/又は居所地に設置されていてよい。眼科システム1000の少なくとも一部は可搬型モジュールとして構成されていてもよい。
【0027】
眼科システム1000は、点眼部1010と、検査部1020と、医療情報生成部1030と、出力部1040とを含んでいる。
【0028】
<点眼部1010>
点眼部1010は、患者の眼に薬剤を点眼するように構成されている。点眼部1010は、例えば、図示しないプロセッサ(制御ユニット)の制御の下に動作する。このプロセッサは、例えば、図示しない制御プログラムによって点眼部1010の制御を実行するように構成されている。
【0029】
点眼部1010により患者の眼に投与される薬剤は、典型的には、医師により処方された薬剤であり、本例では主に眼圧下降薬(眼圧を下げる薬剤)の場合について説明する。ただし、点眼部1010により患者の眼に点眼される薬剤は、眼圧下降薬に限定されず、また、医師により処方された薬剤にも限定されない。
【0030】
点眼とは、薬剤を眼に投与することを意味する。典型的な点眼は、液体状の薬剤を眼に滴下することや注ぎ入れることによって行われる。しかしながら、本例における点眼はこのような典型的な方法に限定されない。例えば、本例の点眼は、液体状の薬剤を霧状にして眼に吹き付けることによって行われてもよいし、液体状の薬剤を噴流として眼に投射することによって行われてもよい。
【0031】
点眼部1010の少なくとも一部はディスポーザブル(使い捨て)であってもよい。例えば、眼に接触する部材や眼に近接する部材を点眼部1010が含んでいる場合には、それらの部材がディスポーザブルであってよい。また、点眼部1010の少なくとも一部は取り外し可能(分離可能)であってもよい。例えば、眼に接触する部材や眼に近接する部材を点眼部1010が含んでいる場合には、それらの部材を取り外し可能に構成することで、点眼後に当該部材を取り外して洗浄して再度使用することができる。
【0032】
点眼部1010の構成は任意であってよい。点眼部1010の幾つかの非限定的な例を以下に説明する。
【0033】
幾つかの例示的な態様において、点眼部1010は、点眼が適切に行われるように(薬剤が眼に適切に投与されるように)点眼動作を補助するための部材を含んでいてよい。この点眼補助具は、例えば、医療機関又は薬局で購入した点眼剤が格納されている容器(薬剤容器)を保持する保持部と、患者の眼の周囲に当接される当接部とを備えていてよい。本例の点眼補助具を用いることで、薬剤容器と眼との相対位置が安定した状態で点眼を行うことができる。
【0034】
幾つかの例示的な態様において、点眼部1010は、コンプレッサ、レギュレータ、ノズルなどを含んでいてよい。この構成により、点眼部1010は、例えば、霧状の薬剤を眼に吹き付けるように動作し、又は、液体状の薬剤を噴流として眼に投射するように動作する。
【0035】
点眼部1010によって投与される薬剤の種類の数は任意であってよい。幾つかの例示的な態様では、点眼部1010は、患者の眼に対して1種類の薬剤を投与するように構成又は使用される。また、幾つかの例示的な態様では、点眼部1010は、患者の眼に対して2種類以上の薬剤を投与するように構成又は使用される。2種類以上の薬剤は、例えば医師又は薬剤師の指示に応じて、別々に又は一緒に投与される。2種類以上の薬剤は、共通の作用を有していてもよいし、別々の作用を有していてもよい。
【0036】
点眼部1010は、投与される薬剤の種類を検知(認識、判別)する機能を有していてもよい。この機能は、例えば、薬剤に関する所定の情報を取得するデバイスと、このデバイスにより取得された情報に基づいてこの薬剤の種類を決定するプロセッサとを用いて実現される。このデバイスにより取得される情報は、例えば、薬剤の性質(色、光特性など)、薬剤の容器の特徴(形状、色など)、薬剤の容器に付されたラベルに提示されている識別子(文字列、バーコードなど)などであってよく、その情報を取得するための要素(カメラ、スキャナなど)がこのデバイスに設けられる。
【0037】
幾つかの例示的な態様において、点眼部1010は、点眼が適切に行われたか否か判定する機能を有していてもよい。この判定機能は、例えば、点眼時に患者の眼を撮影するカメラと、このカメラにより撮影された画像に基づいて薬剤が眼に適用されたか否か判定するプロセッサとを用いて実現される。点眼が適切に行われなかった場合、眼科システム1000は警告(例えば、視覚情報及び/又は聴覚情報)を出力することができる。また、眼科システム1000は、点眼の成功/失敗を記録及び/又は報告するように構成されていてもよいし、点眼に関する統計量(例えば、成功率、失敗率など)を算出して記録及び/又は報告するように構成されていてもよい。
【0038】
幾つかの例示的な態様において、眼科システム1000は、点眼部1010と検査部1020を組み合わせた構成を備えていてよい。このような構成については、その幾つかの例を後述する。
【0039】
<検査部1020>
検査部1020は、点眼部1010により患者の眼に点眼される薬剤に対応する検査をこの患者のこの眼に適用して検査データを取得する。検査部1020は、例えば、図示しないプロセッサ(制御ユニット)の制御の下に動作する。このプロセッサは、例えば、図示しない制御プログラムによって検査部1020の制御を実行するように構成されている。
【0040】
検査部1020によって行われる検査は任意の医学的検査であってよく、より具体的には任意の眼科検査であってよい。検査部1020により実行される眼科検査の例として、眼圧測定、前眼部検査(角膜内皮細胞検査、波面収差解析、隅角測定など)、眼底検査、視野検査、光コヒーレンストモグラフィ(OCT)、視力検査、両眼視機能検査、斜視・斜位検査、屈折検査、眼軸長測定、電気生理検査、色覚検査などがある。
【0041】
なお、検査部1020によって行われる検査は、点眼部1010により患者の眼に点眼される薬剤に対応する検査、つまり、この薬剤の効果を評価するために行われる検査である。換言すると、点眼部1010により投与される薬剤と、検査部1020により実行される検査との組は、この患者が罹患している疾患の治療のために処方された薬剤と、この疾患の状態を把握するために行われる検査との組に相当する。
【0042】
検査部1020によって実行される検査の種類の数は任意であってよい。幾つかの例示的な態様では、検査部1020は、患者の眼に対して1種類の検査を適用するように構成又は使用される。また、幾つかの例示的な態様では、検査部1020は、患者の眼に対して2種類以上の検査を適用するように構成又は使用される。2種類以上の検査は別々に又は並行して実行される。
【0043】
幾つかの例示的な態様において、2種類以上の検査は、同じ薬剤に対応した検査であってよい。本態様において、2種類以上の薬剤を別々に投与する場合には、眼科システム1000は、各薬剤の効果(検査結果)を別々に扱うように構成されていてよい。これにより、薬剤ごとの効果を評価することが可能になる。例えば、幾つかの例示的な態様の眼科システム1000は、眼圧下降薬に対応する検査として眼圧測定と視野検査とOCT(網膜層厚測定など)とを実行し、それぞれの検査の結果と眼圧下降薬のパラメータ(種類、投与量、投与回数など)とを関連付けるように構成されていてよい。
【0044】
また、幾つかの例示的な態様において、2種類以上の検査は、別々の薬剤に対応した検査であってよい。本態様の場合、つまり2種類以上の薬剤と2種類以上の検査とが扱われる場合、眼科システム1000は、薬剤と検査との対応関係に応じた薬剤と検査との複数の組をそれぞれ別々に扱うように構成されていてよい。例えば、幾つかの例示的な態様の眼科システム1000は、眼圧下降薬に対応する第1検査(眼圧測定など)と、抗炎症剤又は抗アレルギー剤に対応する第2検査(前眼部撮影など)とを実行し、第1検査の結果と眼圧下降薬のパラメータとを関連付けるとともに第2検査の結果と抗炎症剤又は抗アレルギー剤のパラメータとを関連付けるように構成されていてよい。
【0045】
前述した点眼部1010と検査部1020を組み合わせた構成について、幾つかの例を説明する。これらの例の検査部1020は眼圧測定機能(眼圧計)を備えている。一般に、眼圧計には、接触型眼圧計と非接触型眼圧計とがある。接触型眼圧計は、ゴールドマン眼圧計とも呼ばれ、プローブを角膜に接触させて眼圧を測定する眼科装置である。非接触型眼圧計は、角膜に空気を噴射して眼圧を測定する眼科装置である。接触型眼圧計の長所は正確性であるが、患者への負担が比較的大きいという短所もある。逆に、非接触型眼圧計の長所は患者への負担の軽さであるが、正確性は接触型眼圧計に劣る。なお、非接触型眼圧計の正確性を向上するための技術も各種開発されており、例えば、事前に測定した中心角膜厚によって補正を行う技術などがある。
【0046】
検査部1020が接触型眼圧計を備えている場合において、例示的な点眼部1010は、例えば、接触型眼圧計のプローブ(角膜に接触する部材)の内部に点眼剤を導き、角膜に接触している(又は、角膜に近接している)プローブの先端の孔部を介して点眼剤を眼に投与するように構成されていてよい。他の例示的な点眼部1010は、接触型眼圧計のプローブの先端から点眼剤を噴出するデバイス(例えば、無針注射器と同様又は類似のデバイス)を備えていてよい。
【0047】
検査部1020が非接触型眼圧計を備えている場合において、例示的な点眼部1010は、非接触型眼圧計により眼に吹き付けられる空気に点眼剤を混入させるように構成されていてよい。例えば、点眼部1010は、眼に吹き付けられる前の圧縮空気に点眼剤を混入させる機構、又は、圧縮から解放されて眼に向かう空気に点眼剤を混入させる機構を備えていてよい。
【0048】
なお、検査部1020に設けることが可能な眼圧計は、上記した接触型眼圧計と非接触型眼圧計に限定されるものではない。検査部1020に搭載される眼圧計は、任意の公知技術を用いたものであってよく、例えば、超音波眼圧計又は光コヒーレンスエラストグラフィ(OCE)眼圧計であってもよい。
【0049】
以上に説明したように、検査部1020は、医師等により予め決定された眼科検査項目の測定データを患者の眼から取得する眼科測定部、及び/又は、患者の眼を撮影する眼科撮影部を備えていてよい。
【0050】
眼科測定部は、所定の眼科検査項目の測定データを取得するための眼科測定装置と同様の構成を有する。
【0051】
眼科撮影部は、任意の眼科撮影装置と同様の構成を有する。なお、眼科撮影部は、任意の機器(例えば、スマートフォン、タブレットコンピュータ、ラップトップコンピュータ、デスクトップコンピュータなど)に搭載されたデジタルカメラ及び/又はデジタルビデオカメラを含んでいてもよい。眼科撮影部は、医師等により予め決定された眼科検査項目に応じた撮影法を実施可能に構成されていてよい。眼科撮影部により実施可能な撮影法の例として、所定の位置からの撮影(正面からの撮影、斜方からの撮影など)、徹照法による撮影、所定の波長の光による撮影、動画撮影(涙液動態の撮影など)などがある。
【0052】
<医療情報生成部1030>
医療情報生成部1030は、点眼部1010により患者の眼に対して実施された点眼に関する点眼データと、検査部1020により当該眼から取得された検査データとに基づいて、当該患者の医療情報を生成するように構成されている。
【0053】
医療情報生成部1030の機能は、医療情報生成プログラム等のソフトウェアと、プロセッサ等のハードウェアとの協働によって実現される。医療情報生成部1030は、例えば、図示しないプロセッサ(制御ユニット)の制御の下に動作する。このプロセッサは、例えば、図示しない制御プログラムによって医療情報生成部1030の制御を実行するように構成されている。
【0054】
点眼部1010により実施された点眼に関する点眼データは、例えば、薬剤の種類(1つ以上の種類)、薬剤の点眼量(例えば、1回の点眼量、1日の点眼量)、薬剤の点眼頻度(例えば、1日の点眼回数、点眼の時間間隔)、薬剤の点眼日時、及び、薬剤の点眼の成否(適切に点眼されたか否か)のうちの少なくとも1つを含んでいてよい。
【0055】
検査部1020により取得される検査データは、例えば、眼圧データ、OCTデータ、撮影画像データ、斜視データ、斜位データ、視力データ、深視力データ、眼屈折力データ、眼収差データ、視野データ、角膜形態データ、眼底形態データ、角膜内皮細胞データ、眼軸長データ、両眼視機能データ、及び、色覚データのうちの少なくとも1つを含んでいてよい。
【0056】
医療情報生成部1030により生成される医療情報は、受診情報を含んでいてよい。受診情報は、当該患者の受診に関する情報である。この受診の形態は任意であってよく、例えば、医療機関における受診(通院による受診)、訪問診療における受診、オンライン診療における受診などであってよい。また、この受診は、医師による診察を受けることでもよいし、コンピュータによる診察を受けることでもよい。コンピュータによる診察は、例えば、機械学習によって訓練されたコンピュータシステムを用いて実行される。
【0057】
医療情報生成部1030により生成される受診情報は、受診予定情報を含んでいてよい。受診予定情報は、当該患者の次回受診日に関する情報を含んでいてよい。つまり、本例の医療情報生成部1030は、当該患者が次回の受診をいつ行うべきかについて、点眼データ及び検査データから判断するように構成される。
【0058】
<出力部1040>
出力部1040は、医療情報生成部1030により生成された医療情報を出力するように構成されている。出力部1040は、例えば、図示しないプロセッサ(制御ユニット)の制御の下に動作する。このプロセッサは、例えば、図示しない制御プログラムによって出力部1040の制御を実行するように構成されている。
【0059】
出力部1040は、例えば、通信デバイス、表示デバイス、音声出力デバイス、印刷デバイス、及びメディアドライブのうちの少なくとも1つを含んでいる。
【0060】
通信デバイスは、モデム、ルーター、通信回路などを含んでいてよい。通信デバイスは、医療情報生成部1030により生成された医療情報を他の装置又は他のシステムに向けて送信する。通信デバイスは、所定のコンピュータの通信機能によって実現されてもよい。このコンピュータは、例えば、スマートフォン、タブレットコンピュータ、ラップトップコンピュータ、デスクトップコンピュータ、IoTデバイス(Internet of Things デバイス)などであってよい。
【0061】
表示デバイスは、液晶ディスプレイ、表示回路などを含んでいてよい。表示デバイスは、医療情報生成部1030により生成された医療情報に基づく視覚情報を表示する。
【0062】
音声出力デバイスは、アンプ、スピーカー、音声出力回路などを含んでいてよい。音声出力デバイスは、医療情報生成部1030により生成された医療情報に基づく聴覚情報を発する。
【0063】
印刷デバイスは、プリンター、印刷回路などを含んでいてよい。印刷デバイスは、医療情報生成部1030により生成された医療情報に基づく視覚情報を紙葉類上に形成する。
【0064】
メディアドライブは、コンピュータ可読な非一時的記録媒体にデータを書き込むデータライター、データ書き込み回路などを含んでいてよい。メディアドライブは、医療情報生成部1030により生成された医療情報を記録媒体に記録する。この非一時的記録媒体は任意の形態であってよく、その例として、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリなどがある。
【0065】
<眼科システム1000の第1の態様>
受診予定情報を生成することが可能な眼科システム1000の例示的な態様を図2に示す。本態様の眼科システム1001は、図1の眼科システム1000の各要素に加えて情報受付部1050を備えている。
【0066】
情報受付部1050は、患者の医療記録情報2000を受け付ける。医療記録情報2000は、当該患者に関する医療情報を記録したものであり、その形態は任意であってよい。例えば、医療記録情報2000は、個人健康記録(PHR)として管理されている情報であってもよいし、電子カルテ(EHR)として管理されている情報であってもよいし、電子医療情報(EMR)として記録されている情報であってもよいし、電子患者記録(EPR)として記録されている情報であってもよいし、これら以外の形態の情報であってもよい。
【0067】
情報受付部1050は、例えば、通信デバイス及び/又はメディアドライブを含む。この通信デバイスは、外部の装置や外部のシステムに保存されているデータを受信する。このメディアドライブは、記録媒体に記録されているデータを読み出す。情報受付部1050は、例えば、図示しないプロセッサ(制御ユニット)の制御の下に動作する。このプロセッサは、例えば、図示しない制御プログラムによって情報受付部1050の制御を実行するように構成されている。
【0068】
情報受付部1050によって外部から取得される医療記録情報2000は、医療機関において予め設定された次回受診予定日を含む予定情報を含んでいてよい。次回受診予定日は、例えば、当該患者の担当医師(又はその代替医師。以下同様)が前回受診日(過去の受診日のうち最新の日)に指定した日、又は、担当医師のスケジュールなどを考慮してコンピュータが指定した日であってよい。
【0069】
本態様の医療情報生成部1030は、点眼部1010により患者の眼に対して実施された点眼に関する点眼データ及び検査部1020により当該眼から取得された検査データに加え、情報受付部1050により取得された予定情報に基づいて、次回受診日を決定することができる。例えば、本例の医療情報生成部1030は、予定情報中の次回受診予定日をそのまま次回受診日に指定してもよいし、この次回受診予定日よりも前の日又は後の日を次回受診日に指定してもよい。
【0070】
<眼科システム1000の第2の態様>
医療記録情報中の予定情報を参照して次回受診日を決定することが可能な眼科システム1000の例示的な態様を図3に示す。本態様の眼科システム1002は、図2の眼科システム1001の医療情報生成部1030の1つの具体例を提供するものである。本態様の医療情報生成部1031は、点眼データ判定部1032と、検査データ判定部1033とを備えている。
【0071】
本態様において、医療記録情報2000は、点眼条件と、検査結果評価条件とを含んでいる。
【0072】
点眼条件は、点眼部1010によって実施される患者の眼に対する薬剤投与の条件である。点眼条件は、例えば医師や薬剤師により事前に指定された任意の条件であってよい。例えば、点眼条件は、薬剤の種類(1つ以上の種類)、薬剤の点眼量(例えば、1回の点眼量、1日の点眼量)、及び、薬剤の点眼頻度(例えば、1日の点眼回数、点眼の時間間隔)のうちの少なくとも1つを含んでいてよい。
【0073】
検査結果評価条件は、検査部1020により実施される患者の眼の検査で得られた結果を評価するための条件である。検査結果評価条件は、例えば医師により事前に指定された任意の条件であってよい。例えば、検査結果評価条件は、検査結果の許容範囲(例えば、検査結果を正常と見なせる範囲又は正常と推定できる範囲)を含んでいてよい。なお、検査結果評価条件は、検査結果の非許容範囲(例えば、検査結果を異常と見なせる範囲又は異常と推定できる範囲)を含んでいてもよいが、これは検査結果の許容範囲と同等の条件である。
【0074】
検査結果の許容範囲(又は非許容範囲)は、任意の情報に基づいて設定されてよく、例えば、対象疾患の診療ガイドラインなどの標準的な情報、特定の医師や特定の医療機関などにおいて定められた情報、患者ごとに定められた情報、及び、これら以外の情報、のうちの少なくとも1つに基づき設定されてよい。1つの具体例として、本願の出願時における緑内障に関する標準的な情報によれば、正常眼圧の上限値を欧米では21mmHgに設定することが多く、日本では20mmHgに設定することが多い。
【0075】
点眼データ判定部1032は、点眼部1010により患者の眼に対して実施された点眼に関する点眼データが、医療記録情報2000に含まれる点眼条件を満足するか否か判定を行うように構成されている。
【0076】
点眼データが示す項目と点眼条件が示す項目とは互いに比較可能であるから、互いに対応した情報である。典型的には、点眼データが示す項目と点眼条件が示す項目とは同一であってよい。なお、点眼データが示す項目と点眼条件が示す項目とは同一でなくてもよい。例えば、点眼データが示す項目及び点眼条件が示す項目のうちの一方の項目から他方の項目を(一意的に)導出できる場合、これら2つの項目を比較することが可能である。また、点眼データが示す項目と点眼条件が示す項目との間に関係(例えば、相関関係又は因果関係)がある場合、又はそのような関係があると考えられる場合においても、これらの項目を比較することが可能である。
【0077】
前述したように、本態様の例示的な点眼データは、薬剤の種類(1つ以上の種類)、薬剤の点眼量(例えば、1回の点眼量、1日の点眼量)、薬剤の点眼頻度(例えば、1日の点眼回数、点眼の時間間隔)、薬剤の点眼日時、及び、薬剤の点眼の成否(適切に点眼されたか否か)のうちの少なくとも1つを含んでいてよい。
【0078】
同じく前述したように、本態様の例示的な点眼条件は、薬剤の種類(1つ以上の種類)、薬剤の点眼量(例えば、1回の点眼量、1日の点眼量)、及び、薬剤の点眼頻度(例えば、1日の点眼回数、点眼の時間間隔)のうちの少なくとも1つを含んでいてよい。
【0079】
点眼データの取得方法の例を説明する。薬剤の種類に関する情報は、例えば、薬剤の種類を検知する機能(前述)によって取得される。薬剤の点眼量に関する情報は、例えば、薬剤の重量の変化、薬剤を格納している容器の重量の変化、投与された薬剤の量の測定データ、1回の点眼で投与される薬剤の量の標準値、点眼回数、これらのパラメータのうちの1つ以上のパラメータから算出された値などから取得される。薬剤の点眼頻度に関する情報は、例えば、眼科システム1002に設けられた図示しない計時機能(例えばリアルタイムクロック)、眼科システム1002に設けられた図示しない計数機能(例えばカウンタ)を用いて取得される。薬剤の点眼日時に関する情報は、例えば、眼科システム1002に設けられた図示しない計時機能(例えばリアルタイムクロック)を用いて取得される。薬剤の点眼の成否に関する情報は、例えば、点眼が適切に行われたか否か判定する機能(前述)によって取得される。
【0080】
点眼データ判定部1032は、点眼データに含まれる薬剤の種類に関する情報と、点眼条件に含まれる薬剤の種類とを比較(照合)することによって、薬剤の種類に関する判定結果を生成するように構成されてよい。2つ以上の薬剤の種類が点眼条件に含まれている場合、点眼データ判定部1032は、これら2つ以上の薬剤の種類の全てが点眼データに含まれているか判定するように構成されてよい。
【0081】
点眼データ判定部1032は、点眼データに含まれる薬剤の点眼量に関する情報と、点眼条件に含まれる薬剤の点眼量とを比較することによって、薬剤の点眼量に関する判定結果を生成するように構成されてよい。例えば、点眼データ判定部1032は、点眼データに示された点眼量が点眼条件に示された許容範囲に属しているか否か判定するように構成されてよい。2つ以上の薬剤の種類及びこれら薬剤種類のそれぞれの点眼量が点眼条件に含まれている場合、点眼データ判定部1032は、これら2つ以上の薬剤の種類のそれぞれについて点眼量の判定を行うように構成されてよい。
【0082】
点眼データ判定部1032は、点眼データに含まれる薬剤の点眼頻度に関する情報と、点眼条件に含まれる薬剤の点眼頻度とを比較することによって、薬剤の点眼頻度に関する判定結果を生成するように構成されてよい。例えば、点眼データ判定部1032は、点眼データに示された点眼頻度が点眼条件に示された許容範囲に属しているか否か判定するように構成されてよい。2つ以上の薬剤の種類及びこれら薬剤種類のそれぞれの点眼頻度が点眼条件に含まれている場合、点眼データ判定部1032は、これら2つ以上の薬剤の種類のそれぞれについて点眼頻度の判定を行うように構成されてよい。
【0083】
検査データ判定部1033は、検査部1020により取得された検査データが、医療記録情報2000に含まれる検査結果評価条件を満足するか否か判定するように構成されている。
【0084】
検査データが示す項目と検査結果評価条件が示す項目とは互いに比較可能であるから、互いに対応した情報である。典型的には、検査データが示す項目と検査結果評価条件が示す項目とは同一であってよい。なお、検査データが示す項目と検査結果評価条件が示す項目とは同一でなくてもよい。例えば、検査データが示す項目及び検査結果評価条件が示す項目のうちの一方の項目から他方の項目を(一意的に)導出できる場合、これら2つの項目を比較することが可能である。また、検査データが示す項目と検査結果評価条件が示す項目との間に関係(例えば、相関関係又は因果関係)がある場合、又はそのような関係があると考えられる場合においても、これらの項目を比較することが可能である。
【0085】
前述したように、本態様の例示的な検査データは、眼圧データ、OCTデータ、撮影画像データ、斜視データ、斜位データ、視力データ、深視力データ、眼屈折力データ、眼収差データ、視野データ、角膜形態データ、眼底形態データ、角膜内皮細胞データ、眼軸長データ、両眼視機能データ、及び、色覚データのうちの少なくとも1つを含んでいてよい。
【0086】
同じく前述したように、本態様の例示的な検査結果評価条件は、検査結果の許容範囲を含んでいてよい。
【0087】
検査データ判定部1033は、検査部1020により取得された検査データと、検査結果評価条件に含まれる検査結果の許容範囲とを比較することによって、この検査データに関する判定結果を生成するように構成されてよい。2種類以上の検査のそれぞれについての許容範囲が検査結果評価条件に含まれている場合、検査データ判定部1033は、これら2種類以上の検査の全てについての検査データが検査部1020により取得されたか判定する処理と、各検査データが対応する許容範囲に属しているか判定する処理とを実行するように構成されてよい。
【0088】
本態様の医療情報生成部1031は、点眼データ判定部1032により取得された判定結果と、検査データ判定部1033により取得された判定結果と、医療記録情報2000に含まれている予定情報とに基づいて、当該患者の次回受診日を決定するように構成されていてよい。前述したように、予定情報は、当該患者が通院している(又は、当該患者が在宅医療を受けている)医療機関において予め設定された次回受診予定日を含んでいる。
【0089】
次回受診日を決定するために採用可能な幾つかの例示的な態様を以下に説明する。本態様の検査結果評価条件は眼圧値の許容範囲を含み、且つ、本態様の検査データは眼圧データ(眼圧値)を含むものとする。また、本態様の点眼条件は眼圧下降薬についての点眼条件を含み、且つ、本態様の点眼データは眼圧下降薬についての点眼データを含むものとする。以下においても、特に言及しない限り、眼圧を考慮する場合について説明する。
【0090】
本態様の検査データ判定部1033は、検査部1020により取得された患者の眼の眼圧値が、検査結果評価条件における眼圧値の許容範囲に含まれているか否かについて、判定を行う。更に、本態様の点眼データ判定部1032は、点眼部1010により患者の眼に投与された眼圧下降薬についての点眼データが、眼圧下降薬についての点眼条件を満足しているか否かについて、判定を行う。
【0091】
眼圧下降薬の点眼データが眼圧下降薬の点眼条件を満足していると点眼データ判定部1032により判定され、且つ、眼圧値が許容範囲に含まれていると検査データ判定部1033により判定された場合、本態様の医療情報生成部1031は、医療記録情報2000中の予定情報に含まれている次回受診予定日を、当該患者の次回受診日として指定することができる。
【0092】
本態様によれば、眼圧下降薬の点眼状況と眼圧値の状況との双方に基づいて次回受診日を自動で決定することが可能である。より具体的には、本態様によれば、眼圧下降薬の点眼データが点眼条件を満足し、且つ、眼圧値が許容範囲に含まれている場合、つまり、点眼状況も眼圧値も問題が無い場合、医療機関において指定された次回の受診日(次回受診予定日)を早めることなく、定期的な経過観察を行うことが可能になる。眼圧以外の項目(パラメータ)を考慮する場合においても同様である。
【0093】
眼圧下降薬の点眼データが眼圧下降薬の点眼条件を満足していると点眼データ判定部1032により判定され、且つ、眼圧値が許容範囲に含まれていないと検査データ判定部1033により判定された場合、本態様の医療情報生成部1031は、医療記録情報2000中の予定情報に含まれる次回受診予定日よりも前の受診候補日を、当該患者の次回受診日として指定することができる。
【0094】
受診候補日を指定するために、本態様の医療情報生成部1031は、医療記録情報2000を管理している医療機関に問合せを行うことができる。例えば、本態様の医療情報生成部1031は、当該患者が通院している(又は、当該患者が在宅医療を受けている)医療機関に設置されたコンピュータ(例えば病院情報システム(HIS))に対して、この次回受診予定日を指定した医師のスケジュールなどについて問合せを行う。
【0095】
なお、本態様の眼科システム1002と医療機関との間の通信は、眼科システム1002に設けられた図示しない通信デバイスによって行われる。この通信デバイスは、出力部1040に設けられた前述の通信デバイス、及び/又は、情報受付部1050に設けられた前述の通信デバイスと同じものであってよい。
【0096】
問合せの第1の例は、問合せ時点から次回受診予定日までの期間における当該医師の診察可能時間を取得する処理を含む。本態様の医療情報生成部1031は、この問合せで取得された診察可能時間に基づき受診候補日を決定することができる。
【0097】
問合せの第2の例は、仮に設定された受診候補日を病院情報システム(又は他のコンピュータ)に送信する処理を含む。病院情報システムは、この仮の受診候補日を、問合せ時点から次回受診予定日までの期間における当該医師の診察可能時間と照合する。
【0098】
仮の受診候補日が診察可能時間に属する場合、病院情報システムは、仮の受診候補日は有効であることを示す情報(有効情報)を眼科システム1002に送信する。このとき、病院情報システムは、仮の受診候補日に相当する当該医師の診察可能時間を仮予約してもよい。本態様の医療情報生成部1031は、有効情報を受信すると、仮の受診候補日を正規の受診候補日として当該患者の次回受診日に指定することができる。
【0099】
仮の受診候補日が診察可能時間に属さない場合、病院情報システムは、仮の受診候補日は無効であることを示す情報(無効情報)を眼科システム1002に送信する。このとき、病院情報システムは、診察可能時間を表す情報(診察可能時間情報)を無効情報とともに眼科システム1002に送信することができる。
【0100】
本態様の医療情報生成部1031は、無効情報を受信すると、仮の受診候補日を破棄するとともに、新たな受診候補日を設定する。この新たな受診候補日は仮の受診候補日であってよく、その場合には上記した一連の処理が繰り返される。
【0101】
或いは、本態様の医療情報生成部1031は、無効情報及び診察可能時間情報に基づいて新たな受診候補日(正規の受診候補日)を設定し、この新たな受診候補日を当該患者の次回受診日に指定することができる。
【0102】
本態様によれば、眼圧下降薬の点眼状況と眼圧値の状況との双方に基づいて次回受診日を決定することが可能である。より具体的には、本態様によれば、眼圧下降薬の点眼データが点眼条件を満足し、且つ、眼圧値が許容範囲に含まれていない場合、つまり、点眼状況は良好であるが眼圧値に問題がある場合、医療機関において指定された次回の受診日(次回受診予定日)よりも前に、緊急的な経過観察を行うことが可能になる。眼圧以外の項目(パラメータ)を考慮する場合においても同様である。
【0103】
本態様において、医療記録情報2000は、治療内容情報を更に含んでいてよい。治療内容情報は、患者の眼の治療内容に関する情報であり、例えば、薬剤の種類、薬剤の点眼量、薬剤の点眼頻度、及び、薬剤の点眼タイミング(朝、夜など)のうちの少なくとも1つを含んでいてよい。なお、治療内容情報の少なくとも一部の情報と、点眼条件の少なくとも一部の情報とが共通であってもよい。
【0104】
本態様の医療情報生成部1031は、患者の眼の治療内容の変更を提案する情報(提案情報)を生成するように構成されてよい。
【0105】
例えば、本態様の医療情報生成部1031は、眼圧下降薬の点眼データが眼圧下降薬の点眼条件を満足していると点眼データ判定部1032により判定され、且つ、眼圧値が許容範囲に含まれていないと検査データ判定部1033により判定された場合に、提案情報の作成を行うように構成されてよい。
【0106】
本態様の医療情報生成部1031は、医療記録情報2000中の予定情報に含まれる次回受診予定日よりも前の日付に設定された次回受診日の情報と、提案情報とを含む医療情報を生成するように構成されていてよい。
【0107】
なお、幾つかの例示的な態様において、医療情報生成部1030(1031)は、他の次回受診日の情報と提案情報とを含む医療情報を生成するように構成されてもよいし、次回受診日以外の情報と提案情報とを含む医療情報を生成するように構成されてもよいし、次回受診日の情報と次回受診日以外の情報と提案情報とを含む医療情報を生成するように構成されてもよいし、次回受診日の情報のみを含む医療情報を生成するように構成されてもよいし、提案情報のみを含む医療情報を生成するように構成されてもよいし、これらの例以外の医療情報を生成するように構成されてもよい。
【0108】
本態様の医療情報生成部1031は、患者の眼圧値と許容範囲との差の大きさ(つまり、患者の眼圧値が許容範囲からどの程度離れているか)に応じて提案情報の内容を決定するように構成されていてよい。
【0109】
例えば、本態様の医療情報生成部1031は、患者の眼圧値IOPを正常眼圧範囲(例えば、10mmHg~21mmHg、又は、10mmHg~20mmHg)と比較する処理と、患者の眼圧値IOPが正常眼圧範囲の上限値UL(例えば、21mmHg又は20mmHg)よりも高い場合(IOP>UL)に患者の眼圧値IOPと上限値ULとの差(IOP-UL=ΔIOP)を算出する処理と、算出された差ΔIOPが既定の閾値TH以上であるか否か判定する処理と、この判定処理の結果に応じて異なる内容の提案情報を生成する処理とを実行するように構成されてよい。
【0110】
これと実質的に同一の例として、正常眼圧範囲の上限値に上記閾値を加算した値(UL+TH)を本例の閾値として準備することができる。本例の医療情報生成部1031は、眼圧値IOPが本例の閾値以上であるか判定する処理と、この判定処理の結果に応じて異なる内容の提案情報を生成する処理とを実行するように構成されてよい。
【0111】
提案情報の内容は、任意の情報に基づいて設定されてよく、例えば、対象疾患の診療ガイドラインなどの標準的な情報、特定の医師や特定の医療機関などにおいて定められた情報、患者ごとに定められた情報、及び、これら以外の情報、のうちの少なくとも1つに基づき設定されてよい。提案情報の内容は、例えば、薬剤の種類の変更、薬剤の種類の追加、薬剤の量の変更、治療の種類の変更、治療の種類の追加、手術の実施、診察の頻度の変更、医師の変更(専門医への紹介)、医療機関の変更(専門的医療機関への消化)などを含んでいてよい。
【0112】
提案情報は、現在の治療内容の変更の提案だけでなく、現在の治療内容の維持の提案を含んでいてもよい。例えば、本態様の医療情報生成部1031は、眼圧下降薬の点眼データが眼圧下降薬の点眼条件を満足していると点眼データ判定部1032により判定され、且つ、眼圧値が許容範囲に含まれていると検査データ判定部1033により判定された場合に、現在の治療内容の維持の提案を含む提案情報を生成するように構成されていてよい。
【0113】
なお、提案情報に含まれる治療内容変更提案は、現在の治療内容の一部のみを変更する提案でもよいし、現在の治療内容の全部を変更する提案でもよい。同様に、提案情報に含まれる治療内容維持提案は、現在の治療内容の一部のみを維持する提案でもよいし、現在の治療内容の全部を維持する提案でもよい。例えば、或る緑内障眼に対する例示的な提案情報は、眼圧下降薬の処方内容を維持する提案と、レーザー治療(レーザー手術)を追加する提案とを含んでいてよい。
【0114】
本態様によれば、眼圧下降薬の点眼状況と眼圧値の状況との双方に基づいて治療内容の変更を提案することが可能である。より具体的には、本態様によれば、眼圧下降薬の点眼データが点眼条件を満足し、且つ、眼圧値が許容範囲に含まれていない場合、つまり、点眼状況は良好であるが眼圧値に問題がある場合に、治療内容の変更の提案を自動で行うことが可能である。眼圧以外の項目(パラメータ)を考慮する場合においても同様である。
【0115】
本態様の眼科システム1002は、点眼データが点眼条件を満足しないと点眼データ判定部1032により判定された場合に、出力部1040によって警告情報を出力するように構成されてよい。
【0116】
警告情報は、主に患者に向けて発せられる。警告情報は、点眼が適切に行われなかったことを報知するための情報であり、及び/又は、点眼を適切に行うように指導(フォローアップ)するための情報である。警告情報は、警告音や音声アナウンスなどの聴覚的警告情報、警告表示などの視覚的警告情報などを含んでいてよい。
【0117】
出力部1040は、警告情報、及び/又は、警告情報が発せられたことを示す情報を、所定のコンピュータに向けて送信するように構成されてよい。このコンピュータは、例えば、スマートフォン、タブレットコンピュータ、ラップトップコンピュータ、デスクトップコンピュータ、IoTデバイス、サーバー、病院情報システムなどであってよい。このコンピュータのユーザーは、患者やその介護者でもよいし、担当医師や他の医療従事者であってもよいし、これら以外の者であってもよいし、他のコンピュータであってもよい。出力部1040による情報の送信先となるコンピュータは、例えば、患者により予め指定されたコンピュータ(第1コンピュータ)、及び/又は、患者が受診している医療機関により予め指定されたコンピュータ(第2コンピュータ)であってよい。
【0118】
本態様によれば、患者の眼圧下降薬の点眼状況に問題がある場合に、その患者に対する警告や指導やフォローアップを自動で行うことが可能である。この自動警告は、点眼に関する任意の問題が検知されたときに実行されてよく、例えば、患者が眼圧下降薬の投与を忘れたとき、眼圧下降薬の投与に失敗したとき、投与する眼圧下降薬の種類を間違えたとき、眼圧下降薬を投与するタイミングを間違えたときなどに実行されてよい。眼圧以外の項目(パラメータ)を考慮する場合においても同様である。
【0119】
また、本態様によれば、患者の眼圧下降薬の点眼状況に問題がある場合に、医師や介護者などにその旨を報知することが可能である。眼圧以外の項目(パラメータ)を考慮する場合においても同様である。
【0120】
幾つかの例示的な態様は、実際の点眼の前に検知できる問題については、その問題の検知の直後に(つまり、実際の点眼の前に)警告情報を出力するように構成されてもよい。例えば、投与する眼圧下降薬の種類の間違いを検知したことに対応して警告情報を出力することや、眼圧下降薬を投与するタイミングの間違いを検知したことに対応して警告情報を出力することが可能である。これにより、実際に点眼を行う前に問題の発生を報知することができる。また、このような警告情報の出力に加えて、又は、それの代わりに、点眼動作を禁止するための命令(制御信号)を点眼部1010に送るようにしてもよい。これにより、不適切な点眼が行われることを防止することができる。
【0121】
<眼科システム1000の第3の態様>
警告情報については第2の態様でも説明したが、本態様では、警告情報を出力することが可能な他の眼科システムについて説明する。図4の眼科システム1003は、第1の態様(及び/又は第2の態様)と同様の点眼部1010、検査部1020、医療情報生成部1030(1031)、及び出力部1040に加え、情報受付部1060及び点眼データ判定部1070を含んでいる。
【0122】
情報受付部1060は、患者の眼に対する薬剤の点眼条件2100を受け付ける。情報受付部1060の構成は、前述した情報受付部1050の構成と同様であってよい。本態様の点眼条件は、前述した点眼条件と同様の情報であってよい。
【0123】
点眼データ判定部1070は、点眼部1010により患者の眼に対して実施された点眼に関する点眼データが点眼条件2100を満足するか否か判定するように構成されている。本態様の点眼データは、前述した点眼データと同様の情報であってよい。点眼データ判定部1070の構成は、前述した点眼データ判定部1032の構成と同様であってよい。
【0124】
本態様の出力部1040は、点眼データが点眼条件2100を満足しないと点眼データ判定部1070により判定された場合に、警告情報を出力する。本態様の警告情報は、前述した警告情報と同様の情報であってよい。
【0125】
本態様によっても、患者の眼圧下降薬の点眼状況に問題がある場合に、その患者に対する警告や指導やフォローアップを自動で行うことができる。また、第2の態様で説明した警告情報に関する事項を組み合わせることで、患者の眼圧下降薬の点眼状況に問題がある場合に医師や介護者などにその旨を報知することや、実際に点眼を行う前に問題の発生を報知することや、不適切な点眼が行われることを防止することが可能になる。眼圧以外の項目(パラメータ)を考慮する場合においても同様である。
【0126】
<眼科システム1000の第4の態様>
前述した医療情報生成部1030(医療情報生成部1031。以下同様)は、機械学習の手法を用いて訓練された数理モデル(推論モデル)を利用して医療情報の生成を行うように構成されていてよい。
【0127】
なお、医療情報生成部1030により生成される医療情報の全てが推論モデルを利用して生成されてものであってもよいし、医療情報生成部1030により生成される医療情報の一部のみが推論モデルを利用して生成されてものであってもよい。
【0128】
図5に示す眼科システム1004は、医療情報を生成する処理の少なくとも一部に人工知能技術を利用するものである。本態様の医療情報生成部1034は、前述した医療情報生成部1030(1031)の例であり、推論モデル1035を含んでいる。本態様の眼科システム1004の医療情報生成部1034以外の要素は、他のいずれかの態様における対応要素と同様であってよい。
【0129】
推論モデル1035は、薬剤情報及び検査情報を含む訓練データを用いた機械学習によって事前に構築される。薬剤情報は、点眼部1010によって患者の眼に投与される薬剤に関する任意の情報を含んでおり、例えば、薬剤の種類、薬剤の投与量、薬剤の投与回数などの情報を含んでいてよい。検査情報は、検査部1020によって患者の眼に適用される検査に関する任意の情報を含んでおり、例えば、検査の種類、検査で取得されたデータ(検査データ)、検査データに基づき得られたデータ(検査データの評価データ、検査データの解析データなど)を含んでいてよい。
【0130】
訓練データに含まれる情報は薬剤情報及び検査情報に限定されない。例えば、訓練データは、患者に関する情報(性別、年齢、既往歴、家族歴など)、他の点眼剤に関する情報、点眼剤以外の投与薬剤に関する情報、他の検査で取得されたデータなどを含んでいてもよい。
【0131】
このように、本態様の推論モデル1035の機械学習に用いられる訓練データは、少なくとも、患者の眼に投与される薬剤及び患者の眼に適用される検査の双方を含んでいる。そして、このような訓練データを用いて構築された推論モデル1035は、点眼部1010により患者の眼に対して実施された点眼に関するデータ(点眼データ)と、検査部1020により患者の眼に適用された検査で取得されたデータ(検査データ)との双方に基づき推論を実行するものである。換言すると、推論モデル1035は、点眼データ及び検査データを含む入力データを受けて出力データを生成するように構成されている。
【0132】
推論モデル1035により生成される出力データは、医療情報に含まれる情報、及び/又は、医療情報に含まれる情報を導出するための情報を含んでいてよい。例えば、推論モデル1035により生成される出力データは、受診情報及び/又は提案情報を含んでいてもよく、また、受診情報を生成するための処理に用いられる情報及び/又は提案情報を生成するための処理に用いられる情報を含んでいてもよい。
【0133】
推論モデル1035により生成される出力データは、医療情報に含まれる情報でも医療情報に含まれる情報を導出するための情報でもない情報を含んでいてもよい。例えば、推論モデル1035により生成される出力データは、警告情報に含まれる情報及び/又は警告情報に含まれる情報を導出するための情報を含んでいてよい。なお、推論モデル1035により生成される出力データに含まれる情報は、これらの例に限定されない。
【0134】
本態様の医療情報生成部1034は、推論モデル1035により生成された出力データに基づいて医療情報を生成する。本態様の医療情報生成部1034により生成される医療情報は、推論モデル1035により生成された出力データの少なくとも一部、及び/又は、推論モデル1035により生成された出力データの少なくとも一部を処理して生成されたデータ(処理データ)を含んでいてよい。
【0135】
例えば、本態様の医療情報生成部1034は、少なくとも、点眼部1010により患者の眼に対して実施された点眼に関する点眼データ(点眼剤の種類、投与量、投与回数)と、検査部1020により取得された眼圧データ(眼圧値)とを、推論モデル1035に入力する。幾つかの例では、本態様の医療情報生成部1034は、更に、患者に関する情報、他の検査で取得されたデータ、他の投与薬剤に関する情報などを、推論モデル1035に入力してもよい。少なくとも点眼データ及び眼圧データの入力を受けた推論モデル1035は、出力データを生成する。本態様の医療情報生成部1034は、推論モデル1035により生成された出力データに基づいて医療情報を生成する。
【0136】
推論モデル1035に入力される眼圧データは、複数回の眼圧測定によって患者の眼から取得された複数の眼圧値を含んでいてよい。複数の眼圧値を含む眼圧データは、数値のリストであってよい。
【0137】
複数の眼圧値を含む眼圧データは、眼圧値の時系列変化を表すグラフであってもよい。より一般に、推論モデル1035に入力される検査データは、所定の検査パラメータの測定値の時系列変化の視覚化データ(ビジュアライゼーションデータ)であってよい。検査で得られたデータの視覚化の方式は、グラフ化に限定されるものではなく、チャート化、図表化、ダイアグラム化、マップ化など、任意の方式であってよい。
【0138】
このようなビジュアライゼーションが入力データに含まれる場合、推論モデル1035(その少なくとも一部)は、例えば、図6に示す例示的なモデル構築部2200によって構築されてよい。本例のモデル構築部2200は、学習処理部2210と、ニューラルネットワーク2220とを含んでいる。
【0139】
ニューラルネットワーク2220は、例えば、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を含んでいる。図6の符号2230は、畳み込みニューラルネットワークの構造の一例を示している。なお、ニューラルネットワーク2220は、他の種類のニューラルネットワークを含んでいてもよい。
【0140】
本例の畳み込みニューラルネットワーク2230の入力層には、視覚化データ(つまり画像)が入力される。入力層の後ろには、畳み込み層とプーリング層とのペアが複数配置されている。本例の畳み込みニューラルネットワーク2230は、畳み込み層とプーリング層とのペアを3つ含んでいるが、畳み込み層とプーリング層とのペアの個数は任意であってよい。
【0141】
畳み込み層では、画像から特徴(輪郭など)を把握するための畳み込み演算が行われる。畳み込み演算は、入力された画像に対する、この画像と同じ次元のフィルタ関数(重み係数、フィルタカーネル)の積和演算である。畳み込み層では、入力された画像の複数の部分にそれぞれ畳み込み演算を適用する。より具体的には、畳み込み層では、フィルタ関数が適用された部分画像の各ピクセルの値に、そのピクセルに対応するフィルタ関数の値(重み)を乗算して積を算出し、この部分画像の複数のピクセルにわたって積の総和を求める。このように得られた積和値は、出力される画像における対応ピクセルに代入される。フィルタ関数を適用する箇所(部分画像)を移動させながら積和演算を行うことで、入力された画像の全体についての畳み込み演算結果が得られる。このような畳み込み演算によれば、多数の重み係数を用いて様々な特徴が抽出された画像が多数得られる。つまり、平滑化画像やエッジ画像などの多数のフィルタ処理画像が得られる。畳み込み層により生成される多数の画像は特徴マップと呼ばれる。
【0142】
プーリング層では、直前の畳み込み層により生成された特徴マップの圧縮(データの間引きなど)が行われる。より具体的には、プーリング層では、特徴マップ内の注目ピクセルの所定の近傍ピクセルにおける統計値を所定のピクセル間隔ごとに算出し、入力された特徴マップよりも小さな寸法の画像を出力する。なお、プーリング演算に適用される統計値は、例えば、最大値(max pooling)又は平均値(average pooling)である。また、プーリング演算に適用されるピクセル間隔は、ストライド(stride)と呼ばれる。
【0143】
一般に、畳み込みニューラルネットワークは、畳み込み層とプーリング層との複数のペアによって処理を行うことにより、入力された画像から多くの特徴を抽出することができる。
【0144】
畳み込み層とプーリング層との最後のペアの後ろには、全結合層が設けられている。本例の畳み込みニューラルネットワーク2230は、2つの全結合層を含んでいるが、全結合層の個数は任意であってよい。全結合層では、畳み込みとプーリングとの組み合わせによって圧縮された特徴量を用いて、所定の処理(例えば、画像分類、画像セグメンテーション、回帰などの情報生成)を行う。最後の全結合層の後ろには、出力結果を提供する出力層が設けられている。
【0145】
幾つかの例示的な態様において、畳み込みニューラルネットワークは、全結合層を含まなくてもよいし(例えば、全層畳み込みネットワーク(FCN))、サポートベクターマシンや再帰型ニューラルネットワーク(RNN)などを含んでいてもよい。また、ニューラルネットワーク2220に対する機械学習は、転移学習を含んでいてもよい。つまり、ニューラルネットワーク2220は、他の訓練データ(訓練画像など)を用いた学習が既に行われてパラメータ調整が為されたニューラルネットワークを含んでいてもよい。また、モデル構築部2200(学習処理部2210)は、学習済みのニューラルネットワーク(ニューラルネットワーク2220)にファインチューニングを適用可能に構成されてもよい。ニューラルネットワーク2220は、公知のオープンソースのニューラルネットワークアーキテクチャを用いて構築されたものであってもよい。
【0146】
学習処理部2210は、訓練データを用いた機械学習をニューラルネットワーク2220に適用する。ニューラルネットワーク2220が畳み込みニューラルネットワーク(例えば、畳み込みニューラルネットワーク2230)を含んでいる場合、学習処理部2210によって調整されるパラメータは、例えば、畳み込み層のフィルタ係数と、全結合層の結合重み及びオフセットとを含む。
【0147】
推論モデル1035に含まれるニューラルネットワーク2220を構築するための訓練の手法(機械学習の手法)は任意であってよく、例えば、教師あり学習、教師なし学習、及び強化学習のいずれか、又は、いずれか2以上の組み合わせであってよい。
【0148】
ニューラルネットワーク2220の特定のユニットに処理が集中することを避けるために、学習処理部2210は、ニューラルネットワーク2220の幾つかのユニットをランダムに選んで無効化し、残りのユニットを用いて学習を実行してもよい(ドロップアウト)。
【0149】
幾つかの例示的な態様では、入力画像に対してラベルを付すアノテーションによって生成された訓練データを用いて教師あり学習が実施される。このアノテーションでは、例えば、訓練データに含まれる各画像(例えば、眼圧値の時系列変化を表すグラフ)に対して、その画像に基づき決定されたラベル(例えば、受診情報を生成するためのラベル、提案情報を生成するためのラベルなど)が付される。画像に基づくラベルの決定は、例えば、医師、コンピュータ、及び、他の推論モデルのうちの少なくとも1つによって実行されてよい。学習処理部2210は、このような訓練データを用いた教師あり学習をニューラルネットワーク2220に適用することによって、訓練されたニューラルネットワーク2220を構築することができ、この訓練されたニューラルネットワーク2220を用いて推論モデル1035を作成することができる。
【0150】
推論モデル構築に用いられる手法は、ここに示した例に限定されない。例えば、サポートベクターマシン、ベイズ分類器、ブースティング、k平均法、カーネル密度推定、主成分分析、独立成分分析、自己組織化写像、ランダムフォレスト、敵対的生成ネットワーク(GAN)といった任意の手法を、推論モデルを構築するために利用することが可能である。
【0151】
推論モデル1035に含まれる数理モデルは、畳み込みニューラルネットワークに限定されない。推論モデル1035に含まれる数理モデルは、畳み込みニューラルネットワーク、畳み込みニューラルネットワーク以外の種類のニューラルネットワーク、及び、ニューラルネットワーク以外の種類の数理モデルのうちの1つ以上の数理モデルを含んでいてよい。
【0152】
本態様によれば、患者の眼に対する点眼剤の投与状況(眼圧下降薬の点眼状況など)と、患者の眼に対して実施された検査の結果(眼圧値の状況など)との双方に基づく医療情報の生成を、機械学習を用いて訓練された数理モデルを利用して行うことが可能である。
【0153】
本態様では、機械学習を用いて訓練された数理モデルを用いた医療情報生成処理について説明したが、実施形態の医療情報生成処理の手法は、このような数理モデルを用いるものに限定されない。
【0154】
幾つかの例示的な態様の医療情報生成部1030(1031、1034)は、機械学習を用いて訓練された数理モデルを用いた医療情報生成処理、及び/又は、既定のアルゴリズムにしたがうルールベース処理を実行するためのプログラムを用いた医療情報生成処理を実行するように構成されてよい。
【0155】
ルールベースの処理は、任意の情報に基づき定義されてよい。幾つかの例示的な態様のルールベースの処理は、対象疾患の診療ガイドラインなどの標準的な情報、特定の医師や特定の医療機関などにおいて定められた情報、患者ごとに定められた情報、これら以外の情報、のうちの少なくとも1つに基づいて定義されてよい。
【0156】
<眼科システム1000の実施例>
以上において幾つかの例示的な態様を説明した実施形態に係る眼科システム1000の実施例について説明する。上記した様々な例示的な態様における任意の事項(例えば、任意の機能、任意の構成、任意の要素、任意の動作、任意の作用、任意の効果など)、それと均等な事項、実質的に同一の事項、類似の事項などを、少なくとも部分的に、本実施例に援用することや組み合わせることが可能である。
【0157】
図7に示す眼科システムは、眼科装置3100と、患者端末3200と、病院情報システム3300と、個人健康記録システム3400とを含んでいる。
【0158】
眼科装置3100、患者端末3200、病院情報システム3300、及び、個人健康記録システム3400のそれぞれは、直接的に又は間接的に通信回線3500に接続可能であり、通信回線3500を介して他の装置や他のシステムとの間でデータ通信が可能である。
【0159】
通信回線3500に用いられている通信方式は任意であってよく、例えば、インターネット、専用回線、ローカルエリアネットワーク(LAN)、近距離通信などを含んでいてよい。通信回線3500に用いられている通信方式は、有線通信及び無線通信の少なくとも一方であってよい。
【0160】
本実施例の眼科システムにおいて送受信されるデータは暗号化されていてよい。眼科装置3100、患者端末3200、病院情報システム3300、及び、個人健康記録システム3400のそれぞれは、送信されるデータを暗号化する暗号化処理部と、受信されたデータを復号化する復号化処理部とを含んでいてよい。
【0161】
本実施例の幾つかの態様では、眼科装置3100及び患者端末3200は患者の自宅等において使用されており、病院情報システム3300は当該患者が医療サービスを受けている医療機関等に設置されており、個人健康記録システム3400は同システムの管理機関等に設置されている。なお、病院情報システム3300及び/又は個人健康記録システム3400は、クラウドコンピューティングとして提供されていてもよい。このような実施例においては、眼科装置3100、患者端末3200、病院情報システム3300、及び、個人健康記録システム3400のそれぞれは、少なくとも、インターネット等のワイドエリアネットワーク(WAN)に接続可能である。
【0162】
眼科装置3100は、ベース部3110と、本体部3120と、点眼・検査部3130とを含んでいる。眼科装置3100は、前述した眼科システム1000の点眼部1010及び検査部1020を含んでいる。
【0163】
眼科装置3100は、患者眼Eの検査を行うことが可能である。本実施例の検査は眼圧測定であるが、上記した例示的な態様と同様に眼圧測定に限定されるものではない。本実施例に適用される眼圧測定方式は、典型的には、患者眼Eに接触することなく眼圧測定を行う方式(例えば、前述した非接触型眼圧計、超音波眼圧計、又は光コヒーレンスエラストグラフィ眼圧計)であるが、接触型眼圧計を本実施例に適用することも可能である。
【0164】
ベース部3110は、本体部3120及び点眼・検査部3130を保持する機能とともに、眼科装置3100に電力を供給する機能を有している。本体部3120及び点眼・検査部3130をベース部3110から取り外して使用可能である場合、本体部3120にはバッテリーや電源回路が設けられており、ベース部3110はこのバッテリーを充電するためのドックとして構成される。
【0165】
本体部3120は、点眼・検査部3130に点眼動作及び検査動作(眼圧測定動作)を行わせるための構成を含んでいる。
【0166】
眼圧測定動作のための構成の例として、非接触型眼圧計が点眼・検査部3130に適用されている場合、本体部3120は、点眼・検査部3130内の経路を介して患者眼Eに吹き付けられる圧縮空気(エアパフ)を生成するための機構と、患者眼Eの角膜の変形を検出するための光学系及び演算回路とを備えていてよい。他の眼圧測定方式が点眼・検査部3130に適用されている場合などには、本体部3120は、その方式に対応した構成を備えていてよい。
【0167】
点眼動作のための構成の例として、本体部3120は、点眼剤の容器を保持する薬剤容器保持部と、この容器から所定量の点眼剤を採取する薬剤採取機構(シリンジ/スポイト/ピペット、真空ポンプなど)と、容器から排出された所定量の薬剤を点眼・検査部3130内の経路を介して患者眼Eに投与するための薬剤投与機構とを含む。非接触型眼圧計が点眼・検査部3130に適用されている場合、薬剤投与機構は、例えば、この非接触型眼圧計により眼に吹き付けられる空気に、薬剤採取機構により容器から取り出された所定量の点眼剤を混入させるための前述の機構を備えていてよい。他の眼圧測定方式が点眼・検査部3130に適用されている場合などには、本体部3120は、その方式に対応した構成を備えていてよい。
【0168】
本体部3120は、通信回線3500に接続するための通信デバイス、眼科装置3100の操作を行うための操作デバイス、表示デバイス、制御回路(プロセッサ、記憶装置など)を備えている。制御回路は、眼科装置3100の各部の制御を実行するように構成されており、特に、点眼・検査部3130の点眼動作及び検査動作を制御するための構成を備えている。
【0169】
本体部3120は、検査データを生成するための演算回路を備えていてもよい。本実施例の当該演算回路は、例えば、従来の非接触型眼圧計が実行する演算と同様に、患者眼Eに対する気流の吹き付け圧力と患者眼Eの角膜の変形状態とに基づいて眼圧値を算出することができる。
【0170】
幾つかの例示的な態様では、操作機能の少なくとも一部、表示機能の少なくとも一部、制御機能の少なくとも一部、及び演算機能の少なくとも一部のうちのいずれかが、眼科装置3100(本体部3120)ではなく、他の装置(例えば、患者端末3200)に設けられていてもよい。また、幾つかの例示的な態様では、操作機能の少なくとも一部、表示機能の少なくとも一部、制御機能の少なくとも一部、及び演算機能の少なくとも一部のうちのいずれかが、眼科装置3100及び他の装置の双方に設けられていてもよい。
【0171】
点眼・検査部3130は、例えば、本体部3120から移送された点眼剤を患者眼Eに投与するための機能と、本体部3120から移送された空気を患者眼Eに吹き付ける機能と、患者眼Eの前眼部を撮影するための光路を形成する光学系とを含んでいる。
【0172】
点眼・検査部3130は、本体部3120に装着される装着部3131と、装着部3131の上部に取り付けられたヘッド部3132と、ヘッド部3132の側面から突出したノズル部3133とを備えている。本体部3120から移送される点眼剤及び空気(気流)は、装着部3131内の経路及びヘッド部3132内の経路を介してノズル部3133の先端から患者眼Eに投射される。
【0173】
点眼・検査部3130は、その少なくとも一部がディスポーザブルであるように構成されていてもよい。例えば、装着部3131は、本体部3120に対して着脱可能に構成されていてよい。点眼・検査部3130の少なくとも一部をディスポーザブルに構成することにより、点眼及び検査の衛生性の向上を図ることが可能になる。なお、少なくとも患者眼Eに近い部分(例えばノズル部3133)がディスポーザブルであることが望ましいと考えられる。
【0174】
患者端末3200は、患者が使用する任意のコンピュータ機器であってよく、例えば、スマートフォン、タブレットコンピュータ、ラップトップコンピュータ、デスクトップコンピュータ、専用機器などであってよい。患者端末3200は、表示部3210を備えており、音声出力部などを更に備えていてもよい。
【0175】
幾つかの例示的な態様では、本実施例の眼科システムのユーザー(各患者)に提供されているアプリケーションソフトウェアを患者端末3200により使用することが可能である。このアプリケーションソフトウェアは、例えば、様々な医療情報(例えば、点眼に関する情報、検査に関する情報、受診スケジュールに関する情報など)の表示や管理を行うための機能を備えている。
【0176】
病院情報システム3300は、眼科装置3100及び患者端末3200を使用する患者が医療サービスを受けている医療機関において使用されているコンピュータシステムである。病院情報システム3300は、患者の医療情報(電子カルテデータ、会計データなど)を管理している。図示は省略するが、医療機関では様々なコンピュータシステムが使用されており、病院情報システム3300はこれらのコンピュータシステムから情報の提供を受けることができる。
【0177】
個人健康記録システム3400は、医療に関する情報の連携基盤の1つであって、各個人の情報(医療情報、健康情報、介護情報など)を管理するシステムである。個人健康記録システム3400では、個々人による医療情報管理が図られるとともに、個々人の医療情報の医療従事者間における共有が図られる。
【0178】
本実施例の眼科システムの動作について、幾つかの例を説明する。
【0179】
図8を参照しつつ第1の動作例を説明する。まず、眼科装置3100を用いて患者眼Eに点眼剤を投与し、患者眼Eの検査(眼圧測定)を行う(S1)。
【0180】
次に、眼科装置3100又は他の装置(データ生成装置)は、ステップS1で実施された点眼剤投与に関する点眼データを生成し、ステップS1で実施された検査に基づく検査データを生成する(S2)。このデータ生成装置は、例えば、患者端末3200、病院情報システム3300、個人健康記録システム3400、通信回線3500に接続可能なコンピュータ(図示省略)、又は、患者端末3200との間で通信可能なコンピュータ(図示省略)であってよく、或いは、これら以外のコンピュータであってもよい。
【0181】
次に、眼科装置3100又は他の装置(医療情報生成装置)は、ステップS2で生成された点眼データ及び検査データに基づいて、患者の医療情報を生成する(S3)。この医療情報生成装置は、データ生成装置と同じ装置であってもよいし、データ生成装置とは別の装置であってもよい。
【0182】
次に、眼科装置3100又は他の装置(医療情報出力装置)は、ステップS3で生成された医療情報を出力する(S4)。この医療情報出力装置は、例えば、医療情報生成装置と同じ装置であってもよいし、医療情報生成装置とは別の装置であってもよい。ステップS4の医療情報の出力が医療情報の送信を含む場合、医療情報の送信先は、例えば、患者端末3200、病院情報システム3300、個人健康記録システム3400、及び、これら以外の装置のうちの1つ以上であってよい。医療情報の送信先が2つ以上ある場合、それらの装置に送信される医療情報は同一であってもよいし、少なくとも一部が異なっていてもよい。
【0183】
このような第1の動作例によれば、患者の自宅等における点眼剤の投与状況と検査結果との双方に基づいて患者眼に関する医療情報を自動で生成して提供することが可能になる。これにより、薬剤使用及び検査の双方の管理を実現することが可能になり、外来患者や在宅患者に対する診療効果の向上を図ることが可能になる。
【0184】
図9を参照しつつ第2の動作例を説明する。まず、第1の動作例と同様に、眼科装置3100を用いて患者眼Eに点眼剤を投与し、患者眼Eの検査(眼圧測定)を行い(S11)、ステップS11で実施された点眼剤投与に関する点眼データを生成するとともに、ステップS11で実施された検査に基づく検査データを生成する(S12)。
【0185】
次に、眼科装置3100又は他の装置(医療情報生成装置)は、病院情報システム3300及び/又は個人健康記録システム3400(及び/又は他のシステム)から、当該患者の医療記録情報を取得する(S13)。
【0186】
この医療記録情報には、例えば、当該患者が医療サービスを受けている医療機関において予め設定された次回受診予定日を含む予定情報が含まれている。
【0187】
次に、眼科装置3100又は医療情報生成装置は、ステップS12で生成された点眼データ及び検査データと、ステップ13で取得された予定情報(次回受診予定日)とに基づいて、当該患者の次回受診日を決定する(S14)。なお、次回受診日を決定する処理については、前述した実施形態において幾つかの例を説明した。本ステップでは、いずれかの例に係る処理を実行することによって次回受診日を決定することができる。
【0188】
次に、眼科装置3100又は医療情報生成装置は、ステップS14で決定された次回受診日を含む医療情報を生成する(S15)。
【0189】
次に、眼科装置3100又は他の装置(医療情報出力装置)は、ステップS15で生成された医療情報を、患者端末3200、病院情報システム3300、個人健康記録システム3400などに送信する(S16)。
【0190】
患者端末3200に送信される医療情報は、少なくとも次回受診日を含んでいる。これにより、本実施例の眼科システムにより自動で決定された次回受診日を患者に対して自動で報知することができる。患者端末3200に送信される医療情報は、点眼データ及び/又は検査データを含んでいてもよい。これにより、患者は、点眼の状況や検査結果などを確認することが可能になる。
【0191】
病院情報システム3300に送信される医療情報は、少なくとも次回受診日を含んでいる。これにより、本実施例の眼科システムにより自動で決定された次回受診日を医療機関に対して自動で提供することができる。次回受診日を含む医療情報を受け付けた病院情報システム3300は、この次回受診日を当該患者の電子カルテに記入することや、この次回受診日を担当医師などに報知することができる。特に、前回受診日などに指定された次回受診予定日とは異なる日を本実施例の眼科システムが次回受診日に設定した場合、病院情報システム3300は、電子カルテなどに記録されている次回受診日を自動で更新することや、次回受診日が変更されたことを担当医師などに報知することができる。
【0192】
病院情報システム3300に送信される医療情報は、点眼データ及び/又は検査データを含んでいてもよい。これにより、薬剤使用アドヒアランスの評価を医療機関において行うことが可能となり、及び/又は、医療機関の外部において実施された検査の結果の確認や記録を医療機関において行うことが可能になる。特に、薬剤使用アドヒアランスの評価や検査結果の評価などを、ほぼリアルタイムで行うことも可能になる。
【0193】
個人健康記録システム3400に送信される医療情報は、少なくとも次回受診日を含んでいる。これにより、本実施例の眼科システムにより自動で決定された次回受診日を医療機関に対して自動で提供することができる。これにより、本実施例の眼科システムにより自動で決定された次回受診日を個人健康記録システム3400に対して自動で提供することができる。次回受診日を含む医療情報を受け付けた個人健康記録システム3400は、この次回受診日を当該患者の個人健康記録に記入することや、当該患者が医療サービスを受けている各医療機関に報知することができる。
【0194】
当該患者が2以上の医療機関から医療サービスを受けている場合、個人健康記録システム3400は、各医療機関における当該患者の次回受診予定日を参照することによって、全ての医療機関における次回受診予定日とは異なる日を受診候補日として選択し、眼科装置3100、患者端末3200、及び病院情報システム3300のいずれか1つ以上にその受診候補日を提供することができる。
【0195】
個人健康記録システム3400に送信される医療情報は、点眼データ及び/又は検査データを含んでいてもよい。これにより、薬剤使用アドヒアランスの評価を個人健康記録システム3400によって行うことが可能となり、及び/又は、患者の自宅等において実施された検査の結果の確認や記録を個人健康記録システム3400によって行うことが可能になる。特に、薬剤使用アドヒアランスの評価や検査結果の評価などを、ほぼリアルタイムで行うことができる。また、当該患者が医療サービスを受けている複数の医療機関にわたる薬剤使用アドヒアランスや検査結果を総合的に評価することが可能になる。
【0196】
このような第2の動作例によれば、患者の自宅等における点眼剤の投与状況と検査結果との双方を考慮して次回受診日を自動で決定して提供することが可能になる。これにより、薬剤使用及び検査の双方の管理を実現することが可能になり、外来患者や在宅患者に対する診療効果の向上を図ることが可能になる。
【0197】
図10A及び図10Bを参照しつつ第3の動作例を説明する。まず、第1の動作例と同様に、眼科装置3100を用いて患者眼Eに点眼剤を投与し、患者眼Eの検査(眼圧測定)を行い(S21)、ステップS21で実施された点眼剤投与に関する点眼データを生成するとともに、ステップS21で実施された検査に基づく検査データを生成する(S22)。
【0198】
次に、第2の動作例と同様に、眼科装置3100又は他の装置(医療情報生成装置)は、病院情報システム3300及び/又は個人健康記録システム3400(及び/又は他のシステム)から、当該患者の医療記録情報を取得する(S23)。
【0199】
この医療記録情報には、例えば、当該患者が医療サービスを受けている医療機関において予め設定された次回受診予定日を含む予定情報と、患者眼Eに対する薬剤の点眼条件と、患者眼Eの検査の結果を評価するための検査結果評価条件と、患者眼Eの治療内容に関する治療内容情報とが含まれている。本動作例の検査結果評価条件には、検査の結果の許容範囲の情報が含まれている。
【0200】
次に、眼科装置3100又は医療情報生成装置は、ステップS22で生成された点眼データが、ステップS23で取得された点眼条件を満足するか否か判定する(S24:点眼データ判定部)。点眼データが点眼条件を満足していないと判定された場合(S24:No)、処理はステップS25に移行する。他方、点眼データが点眼条件を満足していると判定された場合(S24:Yes)、処理はステップS26に移行する。
【0201】
点眼データが点眼条件を満足していないと判定された場合(S24:No)、例えば、眼科装置3100又は患者端末3200は、警告情報を出力する(S25)。本動作例では、警告情報の出力後に処理はステップS31に移行するが、これに限定されない。例えば、ステップS21(点眼剤投与のみ、又は、点眼剤投与及び眼圧測定)
【0202】
点眼データが点眼条件を満足していると判定された場合(S24:Yes)、眼科装置3100又は医療情報生成装置は、ステップS22で生成された検査データが、ステップS23で取得された検査結果評価条件を満足するか否か判定する(S26:検査データ判定部)。ステップS26の判定は、例えば、ステップS22で取得された眼圧値が、検査結果評価条件の上記許容範囲に属しているか否か判定する処理を含んでいる。検査データが検査結果評価条件を満足していないと判定された場合(S26:No)、処理はステップS28に移行する。他方、検査データが点眼条件を満足していると判定された場合(S26:Yes)、処理はステップS27に移行する。
【0203】
検査データが検査結果評価条件を満足していると判定された場合(S26:Yes)、眼科装置3100又は医療情報生成装置は、ステップS23で取得された予定情報に含まれている次回受診予定日を次回受診日に指定する(S27)。続いて、処理は、ステップS30に移行する。
【0204】
検査データが検査結果評価条件を満足していないと判定された場合(S26:No)、眼科装置3100又は医療情報生成装置は、ステップS23で取得された予定情報に含まれている次回受診予定日よりも前の受診候補日を次回受診日に指定する(S28)。
【0205】
次に、眼科装置3100又は医療情報生成装置は、ステップS23で取得された治療内容情報に基づいて、患者眼Eの治療内容の変更に関する提案情報を生成する(S29)。
【0206】
ステップS30において、眼科装置3100又は医療情報生成装置は、医療情報を生成する(S30)。
【0207】
ステップS27からステップS30に移行した場合、眼科装置3100又は医療情報生成装置は、例えば、ステップS27で指定された次回受診日(予定情報に含まれている次回受診予定日)を含む医療情報を生成する。或いは、眼科装置3100又は医療情報生成装置は、次回受診予定日の変更は無い旨の情報を含む医療情報を生成してもよい。
【0208】
ステップS29からステップS30に移行した場合、眼科装置3100又は医療情報生成装置は、ステップS28で指定された次回受診日(予定情報に含まれている次回受診予定日よりも前の日)と、ステップS29で生成された提案情報とを含む医療情報を生成する。このとき、次回受診予定日が変更された旨の注意情報を医療情報に含めてもよい。
【0209】
次に、眼科装置3100又は他の装置(医療情報出力装置)は、ステップS30で生成された医療情報を、患者端末3200、病院情報システム3300、個人健康記録システム3400などに送信する(S31)。
【0210】
このような第3の動作例によれば、第2の動作例と同様に、患者の自宅等における点眼剤の投与状況と検査結果との双方を考慮して次回受診日を自動で決定して提供することが可能になる。特に、所定の点眼条件を基準とした点眼剤の投与状況の評価と、所定の検査結果評価条件を基準とした検査結果の評価とを組み合わせることによって、薬剤使用及び検査の双方を考慮した管理の品質向上を図ることが可能になり、外来患者や在宅患者に対する診療効果の更なる向上を図ることが可能になる。
【0211】
また、第3の動作例によれば、点眼データが点眼条件を満足し、且つ、検査データが検査結果評価条件を満足しない場合に、眼の治療内容の変更に関する提案情報を自動で生成することが可能である。これにより、診断支援を行うことが可能になる。例えば診療ガイドラインなどの標準的な情報を参照して提案情報を生成することで、診断支援の品質向上を図ることが可能になる。また、治療内容が変更されること、又は、その可能性があることを、(例えば次回受診日よりも前に)患者に報知することが可能になる。
【0212】
第3の動作例によれば、例えば次のような管理を行うことができる。まず、点眼状況に問題が有る場合には、患者に向けて警告を発して注意を促すことができる。また、医療機関(担当医師など)に情報を提供することで、薬剤使用アドヒアランス向上のための指導やフォローアップを当該患者に対して行うべきことを報知することができる。
【0213】
点眼状況に問題が無い場合には、診察スケジュールの管理、病状コントロール(病状マネジメント)の評価、治療内容の管理(提案)などを、検査結果に応じて行うことができる。その例を以下に説明する。
【0214】
患者眼Eの眼圧値が少し下がった場合、本動作例の眼科システムは、眼圧コントロールは良好であると判断し、診察スケジュール(次回受診予定日など)の変更も治療内容の変更も行わない。
【0215】
患者眼Eの眼圧値に変化が無い場合にも同様に、本動作例の眼科システムは、眼圧コントロールは良好であると判断し、診察スケジュール(次回受診予定日など)の変更も治療内容の変更も行わない。
【0216】
患者眼Eの眼圧値が少し上がった場合(眼圧値の上昇が所定の閾値未満である場合)、本動作例の眼科システムは、眼圧コントロールは良好ではないと判断し、診察スケジュールを変更するとともに、治療内容を変更することができる。診察スケジュールの変更は、例えば、次回受診予定日よりも前の日を次回受診日に指定する処理を含む。治療内容の変更は、例えば、医療機関での精密検査の提案、薬剤の種類の変更の提案、薬剤の種類の追加(多剤投薬)の提案、薬剤の投与量の増加の提案、薬剤の投与回数の増加の提案などを含む。また、眼圧コントロールの目標値の変更など、眼圧コントロールの条件の変更を提案してもよい。
【0217】
患者眼Eの眼圧値が大きく上がった場合(眼圧値の上昇が所定の閾値以上である場合)、本動作例の眼科システムは、眼圧コントロールは不良であると判断し、診察スケジュールを変更するとともに、治療内容を変更することができる。診察スケジュールの変更は、例えば、次回受診予定日よりも前の日を次回受診日に指定する処理を含む。治療内容の変更は、例えば、医療機関での精密検査の提案、薬剤の種類の変更の提案、薬剤の種類の追加(多剤投薬)の提案、薬剤の投与量の増加の提案、薬剤の投与回数の増加の提案、レーザー治療の提案、手術の提案などを含む。また、眼圧コントロールの目標値の変更など、眼圧コントロールの条件の変更を提案してもよい。
【0218】
<医療情報処理装置>
医療情報処理装置の実施形態について説明する。1つの例示的な態様に係る医療情報処理装置の構成を図11に示す。本態様の医療情報処理装置4000は、データ受付部4010と、医療情報生成部4020と、出力部4030とを含んでいる。
【0219】
データ受付部4010は、患者の眼に対する薬剤の点眼に関する点眼データと、この薬剤に対応する検査により患者の眼から取得された検査データとを受け付ける。データ受付部4010は、例えば、通信デバイス及び/又はメディアドライブを含む。この通信デバイスは、外部の装置や外部のシステムに保存されている点眼データ及び/又は検査データを受信する。このメディアドライブは、記録媒体に記録されている点眼データ及び/又は検査データを読み出す。実施形態の眼科システム及び/又はその例示的な態様において説明した任意の事項を本実施形態のデータ受付部4010に援用することや組み合わせることが可能である。
【0220】
医療情報生成部4020は、データ受付部4010により受け付けられた点眼データ及び検査データに基づいて当該患者の医療情報を生成するように構成されている。医療情報生成部4020の機能は、医療情報生成プログラム等のソフトウェアと、プロセッサ等のハードウェアとの協働によって実現される。医療情報生成部4020は、例えば、図示しないプロセッサ(制御ユニット)の制御の下に動作する。このプロセッサは、例えば、図示しない制御プログラムによって医療情報生成部4020の制御を実行するように構成されている。実施形態の眼科システム及び/又はその例示的な態様において説明した任意の事項を本実施形態の医療情報生成部4020に援用することや組み合わせることが可能である。
【0221】
出力部4030は、医療情報生成部4020により生成された医療情報を出力するように構成されている。出力部4030は、例えば、図示しないプロセッサ(制御ユニット)の制御の下に動作する。このプロセッサは、例えば、図示しない制御プログラムによって出力部4030の制御を実行するように構成されている。出力部4030は、例えば、通信デバイス、表示デバイス、音声出力デバイス、印刷デバイス、及びメディアドライブのうちの少なくとも1つを含んでいる。実施形態の眼科システム及び/又はその例示的な態様において説明した任意の事項を本実施形態の出力部4030に援用することや組み合わせることが可能である。
【0222】
このような医療情報処理装置4000によれば、実施形態の眼科システムと同様に、薬剤使用及び検査の双方の管理を実現することが可能になり、外来患者や在宅患者に対する診療効果の向上を図ることが可能になる。
【0223】
実施形態の眼科システム及び/又はその例示的な態様において説明した任意の事項を本実施形態の医療情報処理装置4000に組み合わせることで、組み合わせた事項に応じた効果が奏される。
【0224】
<医療情報処理方法>
実施形態の眼科システム、その例示的な態様、実施形態の医療情報処理装置、その例示的な態様などによれば、次のような医療情報処理方法を実現することが可能である。
【0225】
本方法は、患者の眼の診療を支援するために医療情報を1以上のコンピュータによって処理する方法である。本方法は、次の工程を含んでいる。第1の工程では、コンピュータが、患者の眼に対する薬剤の点眼に関する点眼データを生成する。第2の工程では、コンピュータが、この薬剤に対応する検査により患者の眼から取得された検査データを生成する。第3の工程では、コンピュータが、第1の工程で生成された点眼データと、第2の工程で生成された検査データとに基づいて、この患者の医療情報を生成する。第4の工程では、コンピュータが、第3の工程で生成された医療情報を出力する。
【0226】
実施形態の眼科システム及び/又はその例示的な態様において説明した任意の事項を本実施形態の医療情報処理方法に援用することや組み合わせることが可能である。
【0227】
このような医療情報処理方法によれば、実施形態の眼科システムと同様に、薬剤使用及び検査の双方の管理を実現することが可能になり、外来患者や在宅患者に対する診療効果の向上を図ることが可能になる。
【0228】
実施形態の眼科システム及び/又はその例示的な態様において説明した任意の事項を本実施形態の医療情報処理方法に組み合わせることで、組み合わせた事項に応じた効果が奏される。
【0229】
<プログラム・記録媒体>
本開示で説明された任意の1つ以上の処理をコンピュータに実行させるプログラムを構成することが可能である。また、そのようなプログラムを記録した記録媒体を作成することが可能である。記録媒体は、コンピュータによって読み取り可能な非一時的記録媒体である。このような記録媒体の形態は任意であり、その例として、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリなどがある。
【0230】
本開示は、実施形態の幾つかの例示的な態様を提示するものである。これらの態様は、本発明の例示に過ぎない。したがって、本発明の要旨の範囲内における任意の変形(省略、置換、付加など)を本開示に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0231】
1000 眼科システム
1010 点眼部
1020 検査部
1030 医療情報生成部
1040 出力部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11