(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132112
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】水性樹脂組成物、塗膜、および、塗装積層体
(51)【国際特許分類】
C08L 33/14 20060101AFI20230914BHJP
C08L 61/28 20060101ALI20230914BHJP
C08K 3/28 20060101ALI20230914BHJP
C08J 7/043 20200101ALI20230914BHJP
C08J 3/03 20060101ALI20230914BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
C08L33/14
C08L61/28
C08K3/28
C08J7/043 Z CES
C08J7/043 CFD
C08J3/03 CEY
B32B27/30 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022037254
(22)【出願日】2022-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】市原 有人
(72)【発明者】
【氏名】浅野 陽介
【テーマコード(参考)】
4F006
4F070
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
4F006AA12
4F006AA22
4F006AA35
4F006AB24
4F006AB33
4F006AB72
4F006BA15
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4F070AA32
4F070AA45
4F070AB02
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4F070CB03
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4J002BG07W
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4J002DJ047
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4J002FD097
4J002FD156
4J002GH00
4J002HA07
(57)【要約】 (修正有)
【課題】耐溶剤性および低温硬化性に優れる水性樹脂組成物、その水性樹脂組成物の塗布物である塗膜、および、その塗膜の硬化物を備える塗装積層体を提供すること。
【解決手段】水性樹脂組成物は、水酸基を含有するアクリル樹脂と、アルキルエーテル化メラミン樹脂と、硝酸亜鉛およびアンモニアを含む硬化促進剤と、水とを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基を含有するアクリル樹脂と、
アルキルエーテル化メラミン樹脂と、
硝酸亜鉛およびアンモニアを含む硬化促進剤と、
水とを含む、水性樹脂組成物。
【請求項2】
前記アンモニアに対する前記硝酸亜鉛の質量比率(硝酸亜鉛/アンモニア)が、1.0以上5.0以下である、請求項1に記載の水性樹脂組成物。
【請求項3】
前記アルキルエーテル化メラミン樹脂が、メチルエーテル化メラミン樹脂である、請求項1または2に記載の水性樹脂組成物。
【請求項4】
前記アルキルエーテル化メラミン樹脂に対する前記水酸基を含有するアクリル樹脂の質量比率(水酸基を含有するアクリル樹脂/アルキルエーテル化メラミン樹脂)が、1.0以上99.0以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の水性樹脂組成物。
【請求項5】
前記水酸基を含有するアクリル樹脂の、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)により測定されたポリスチレン換算の重量平均分子量が、300000以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載の水性樹脂組成物。
【請求項6】
さらに、顔料を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の水性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の水性樹脂組成物の塗布物である、塗膜。
【請求項8】
被塗装体と、請求項7に記載の塗膜の硬化物からなるコーティング層とを順に備える、塗装積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性樹脂組成物、塗膜、および、塗装積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用塗料および家電用塗料の分野において、ポリオールとアルキルエーテル化メラミン樹脂とを含む熱硬化性樹脂組成物が使用されている。
【0003】
近年は環境負荷低減を目的として80℃以下での低温硬化性および、水を希釈溶媒に使用する水性塗料のニーズが強くなっている。
【0004】
アミノ樹脂硬化系は140℃以上の高温加熱が必要であり、また、水は脱水縮合により架橋するアミノ樹脂硬化系の硬化阻害因子になり得ることから、アミノ樹脂硬化系を上記ニーズに対応させることは非常に困難であった。
【0005】
このような熱硬化性樹脂組成物として、例えば、アクリル樹脂(水酸基を有する樹脂)と、アルキルエーテル化メラミン樹脂と、ルイス酸触媒(硝酸カルシウム四水和物)とを含む水性樹脂組成物が、提案されている(例えば、特許文献1の実施例11参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方、このような熱硬化性樹脂組成物から形成される塗膜の硬化物には、より一層、耐溶剤性および低温硬化性が要求される。
【0008】
本発明は、耐溶剤性および低温硬化性に優れる水性樹脂組成物、その水性樹脂組成物の塗布物である塗膜、および、その塗膜の硬化物を備える塗装積層体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明[1]は、水酸基を含有するアクリル樹脂と、アルキルエーテル化メラミン樹脂と、硝酸亜鉛およびアンモニアを含む硬化促進剤と、水とを含む、水性樹脂組成物である。
【0010】
本発明[2]は、前記アンモニアに対する前記硝酸亜鉛の質量比率(硝酸亜鉛/アンモニア)が、1.0以上5.0以下である、上記[1]に記載の水性樹脂組成物を含んでいる。
【0011】
本発明[3]は、前記アルキルエーテル化メラミン樹脂が、メチルエーテル化メラミン樹脂である、上記[1]または[2]に記載の水性樹脂組成物を含んでいる。
【0012】
本発明[4]は、前記アルキルエーテル化メラミン樹脂に対する前記水酸基を含有するアクリル樹脂の質量比率(水酸基を含有するアクリル樹脂/アルキルエーテル化メラミン樹脂)が、1.0以上99.0以下である、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載の水性樹脂組成物を含んでいる。
【0013】
本発明[5]は、前記水酸基を含有するアクリル樹脂の、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)により測定されたポリスチレン換算の重量平均分子量が、300000以上である、上記[1]~[4]のいずれか一項に記載の水性樹脂組成物を含んでいる。
【0014】
本発明[6]は、さらに、顔料を含む、上記[1]~[5]のいずれか一項に記載の水性樹脂組成物を含んでいる。
【0015】
本発明[7]は、上記[1]~[6]のいずれか一項に記載の水性樹脂組成物の塗布物である、塗膜を含んでいる。
【0016】
本発明[8]は、被塗装体と、上記[7]に記載の塗膜の硬化物からなるコーティング層とを順に備える、塗装積層体を含んでいる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の水性樹脂組成物は、水酸基を含有するアクリル樹脂およびアルキルエーテル化メラミン樹脂とともに、硝酸亜鉛およびアンモニアを含む硬化促進剤を含む。そのため、耐溶剤性および低温硬化性に優れる。
【0018】
本発明の塗膜は、本発明の水性樹脂組成物の塗布物である。そのため、耐溶剤性および低温硬化性に優れる。
【0019】
本発明の塗装積層体は、本発明の塗膜の硬化物を備える。そのため、耐溶剤性および生産性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本発明の塗装積層体の製造方法の一実施形態を示す。
図1Aは、被塗装体を準備する第1工程を示す。
図1Bは、被塗装体の表面(厚み方向一方面)に、水性樹脂組成物を塗布し、塗膜を形成する第2工程を示す。
図1Cは、塗膜を加熱して、コーティング層を形成する第3工程を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
水性樹脂組成物は、水酸基を含有するアクリル樹脂と、アルキルエーテル化メラミン樹脂と、硬化促進剤と、水とを含む。
【0022】
<水酸基を含有するアクリル樹脂>
水酸基を含有するアクリル樹脂は、例えば、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートと、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートと共重合可能な共重合性ビニルモノマーとを共重合させることによって得られる共重合体である。
【0023】
ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートは、ヒドロキシル基含有メタクリレートおよび/またはヒドロキシル基含有アクリレートである。ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートとして、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2,2-ジヒドロキシメチルブチル(メタ)アクリレート、ポリヒドロキシアルキルマレエート、および、ポリヒドロキシアルキルフマレートが挙げられる。
【0024】
共重合性ビニルモノマーとしては、例えば、アルキル(メタ)アクリレート、芳香族ビニルモノマー、シアノ基含有ビニルモノマー、および、カルボキシル基含有ビニルモノマーが挙げられる。アルキル(メタ)アクリレートとして、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、および、シクロヘキシルアクリレートが挙げられる。芳香族ビニルモノマーとしては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、および、α-メチルスチレンが挙げられる。シアノ基含有ビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリロニトリルが挙げられる。カルボキシル基含有ビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸、および、イタコン酸が挙げられる。
【0025】
共重合性ビニルモノマーは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0026】
そして、水酸基を含有するアクリル樹脂は、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートと共重合性ビニルモノマー(好ましくは、アルキル(メタ)アクリレート)とを共重合させることによって得られる。
【0027】
重合方法は、特に限定されない。重合方法としては、例えば、バルク重合、および、溶液重合が挙げられる。
【0028】
重合方法として、溶液重合を採用する場合には、溶剤に、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートと、共重合性ビニルモノマーと、必要により、重合開始剤とを配合し、重合する。
【0029】
これにより、水酸基を含有するアクリル樹脂(水酸基を含有するアクリル樹脂の溶液)が得られる。
【0030】
水酸基を含有するアクリル樹脂を含む溶液において、水酸基を含有するアクリル樹脂の固形分濃度は、例えば、20質量%以上、好ましくは、35質量%以上、また、例えば、50質量%以下である。
【0031】
また、水酸基を含有するアクリル樹脂として、市販品を用いることもできる。このような市販品として、例えば、NeoCrylシリーズ(例えば、NeoCryl XK-102、NeoCryl XK-103、および、NeoCryl XK-104、以上DSM社製)が挙げられる。
【0032】
また、水酸基を含有するアクリル樹脂の水酸基価は、例えば、1mgKOH/g以上、好ましくは、5mgKOH/g以上、より好ましくは、10mgKOH/g以上、さらに好ましくは、30mgKOH/g以上、とりわけ好ましくは、50mgKOH/g以上、最も好ましくは、80mgKOH/g以上、さらには、90mgKOH/g以上、また、例えば、200mgKOH/g以下、好ましくは、150mgKOH/g以下、より好ましくは、110mgKOH/g以下である。
【0033】
水酸基価が、上記下限以上および上記上限以下であれば、低温硬化性(後述)を向上できる(ゲル分率を高くできる。)。
【0034】
なお、水酸基価は、例えば、JIS K 0070-1992(アセチル化法)により求めることができる。
【0035】
また、水酸基を含有するアクリル樹脂の、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)により測定されたポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、例えば、50000以上、好ましくは、100000以上、より好ましくは、150000以上、さらに好ましくは、250000以上、とりわけ好ましくは、低温硬化性(後述)を向上させる観点から、300000以上、また、例えば、500000以下、好ましくは、400000以下である。
【0036】
なお、2種類以上の水酸基を含有するアクリル樹脂を併用する場合には、それらの水酸基を含有するアクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)の平均値が、上記した範囲内になるように調整する。
【0037】
水酸基を含有するアクリル樹脂は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0038】
水酸基を含有するアクリル樹脂の配合割合は、水酸基を含有するアクリル樹脂とアルキルエーテル化メラミン樹脂と硬化促進剤との総量100質量部に対して、例えば、55質量部以上、好ましくは、65質量部以上、また、例えば、95質量部以下、好ましくは、80質量部以下である。
【0039】
<アルキルエーテル化メラミン樹脂>
アルキルエーテル化メラミン樹脂は、メラミンとホルムアルデヒドとから得られるメラミン樹脂のメチロール基の少なくとも一部を、アルコールで変性(アルキルエーテル化)させることにより得られる。
【0040】
ホルムアルデヒドは、水溶液として調製できる。また、ホルムアルデヒドとして、固形のパラホルムアルデヒドをそのまま用いることもできる。
【0041】
ホルムアルデヒドを、水溶液として調製する場合には、その濃度は、例えば、80%以上、また、例えば、99%以下である。
【0042】
アルコールとしては、例えば、炭素数1以上6以下のアルコールが挙げられる。炭素数1以上6以下のアルコールとしては、例えば、炭素数1以上6以下の直鎖状の1価アルコール、および、炭素数1以上6以下の分岐状の1価アルコールが挙げられる。炭素数1以上6以下の直鎖状の1価アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、n-ブタノール、n-ペンタノール、および、n-ヘキサノールが挙げられる。炭素数1以上6以下の分岐状の1価アルコールとしては、例えば、イソプロパノール、イソブタノール、sec-ブタノール、および、tert-ブタノールが挙げられる。
【0043】
アルコールとして、好ましくは、炭素数1以上6以下の直鎖状の1価アルコールが挙げられる。アルコールとして、より好ましくは、炭素数1以上4以下の直鎖状の1価アルコールが挙げられる。アルコールとして、さらに好ましくは、メタノール、エタノール、および、n-ブタノールが挙げられる。アルコールとして、とりわけ好ましくは、メタノールが挙げられる。
【0044】
アルコールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0045】
そして、アルキルエーテル化メラミン樹脂を得るには、まず、メラミンと、ホルムアルデヒドとをメチロール化反応させ、メラミン樹脂を得る。
【0046】
メラミンと、ホルムアルデヒドとをメチロール化反応させるには、メラミンと、ホルムアルデヒドとを配合する。具体的には、ホルムアルデヒドを、メラミン1molに対するホルムアルデヒドの平均付加数が、3mol以上、好ましくは、4mol以上、また、6mol以下となるよう、配合する。
【0047】
上記平均付加数は、例えば、13C-NMRによる分析で算出することができる(以下同様。)。
【0048】
なお、メラミンの3つのアミノ基のすべてに、ホルムアルデヒドが付加した場合、ホルムアルデヒドの平均付加数は、6molである。
【0049】
また、上記メチロール化反応において、メラミンおよびホルムアルデヒドとともに、予め、アルコール(アルキルエーテル化に供するアルコール)を配合する。アルコールの配合割合は、メラミン1molに対して、例えば、4mol以上、好ましくは、6mol以上、また、例えば、7mol以下である。
【0050】
メチロール化反応の後、酸触媒を配合し、メラミン樹脂のメチロール基の少なくとも一部を、アルコールで変性(アルキルエーテル化)する。
【0051】
酸触媒としては、例えば、有機酸、および、無機酸が挙げられる。有機酸としては、例えば、蟻酸、蓚酸、および、パラトルエンスルホン酸が挙げられる。無機酸としては、例えば、燐酸、塩酸、硫酸、および、硝酸が挙げられる。酸触媒として、好ましくは、有機酸が挙げられる。酸触媒として、より好ましくは、パラトルエンスルホン酸が挙げられる。
【0052】
酸触媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0053】
酸触媒の配合割合は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0054】
反応条件として、反応温度は、例えば、60℃以上、また、例えば、120℃以下である。また、反応時間は、例えば、1時間以上、また、例えば、12時間以下である。
【0055】
その後、中和剤(例えば、水酸化ナトリウム)を配合し、反応生成物を中和する。
【0056】
これにより、アルキルエーテル化メラミン樹脂が得られる。
【0057】
また、アルキルエーテル化メラミン樹脂は、公知の溶剤(例えば、イソブタノール、イソブタノール、および、キシレン)で希釈して、アルキルエーテル化メラミン樹脂溶液として調製することもできる。
【0058】
アルキルエーテル化メラミン樹脂溶液において、アルキルエーテル化メラミン樹脂の固形分濃度は、例えば、30質量%以上、好ましくは、40質量%以上、また、例えば、80質量%以下である。
【0059】
このようなアルキルエーテル化メラミン樹脂として、好ましくは、メラミン樹脂のメチロール基の少なくとも一部を、メタノールで変性(アルキルエーテル化)させるメチルエーテル化メラミン樹脂、メラミン樹脂のメチロール基の少なくとも一部を、エタノールで変性(アルキルエーテル化)させるエチルエーテル化メラミン樹脂、および、メラミン樹脂のメチロール基の少なくとも一部を、n-ブタノールで変性(アルキルエーテル化)させるブチルエーテル化メラミン樹脂が挙げられる。アルキルエーテル化メラミン樹脂として、より好ましくは、耐溶剤性および低温硬化性(後述)を向上させる観点から、メチルエーテル化メラミン樹脂が挙げられる。
【0060】
アルキルエーテル化メラミン樹脂の、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)により測定されたポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、例えば、800以上、好ましくは、1000、より好ましくは、1300以上、また、例えば、10000以下、好ましくは、6000以下、より好ましくは、3000以下、さらに好ましくは、2000以下である。
【0061】
上記重量平均分子量が、上記下限以上および上記上限以下であれば、耐溶剤性および低温硬化性(後述)を向上させることができる。
【0062】
アルキルエーテル化メラミン樹脂は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0063】
アルキルエーテル化メラミン樹脂の配合割合は、水酸基を含有するアクリル樹脂とアルキルエーテル化メラミン樹脂と硬化促進剤との総量100質量部に対して、例えば、5質量部以上、好ましくは、15質量部以上、より好ましくは、25質量部以上、また、例えば、45質量部以下、好ましくは、35質量部以下である。
【0064】
また、アルキルエーテル化メラミン樹脂に対する水酸基を含有するアクリル樹脂の質量比率(水酸基を含有するアクリル樹脂/アルキルエーテル化メラミン樹脂)は、耐溶剤性および低温硬化性(後述)を向上させる観点から、例えば、1.0以上、好ましくは、2.0以上、また、耐溶剤性および低温硬化性(後述)を向上させる観点から、例えば、99.0以下、好ましくは、50.0以下、より好ましくは、19.0以下、さらに好ましくは、9.0以下、耐溶剤性および低温硬化性(後述)をより一層向上させる観点から、とりわけ好ましくは、5.0以下、最も好ましくは、3.0以下である。
【0065】
<硬化促進剤>
硬化促進剤は、硝酸亜鉛およびアンモニアを含む。硬化促進剤は、好ましくは、硝酸亜鉛およびアンモニアからなる。硬化促進剤が、硝酸亜鉛およびアンモニアを含むと、水酸基を含有するアクリル樹脂とアルキルエーテル化メラミン樹脂との架橋反応を効率的に進行させることができる。その結果、耐溶剤性および低温硬化性(後述)を向上させることができる。
【0066】
硬化促進剤は、硝酸亜鉛水溶液と、アンモニア水溶液との混合液(硬化促進剤水溶液)として調製される。
【0067】
硝酸亜鉛には、水和物も含まれる。硝酸亜鉛の水和物として、例えば、硝酸亜鉛六水和物が挙げられる。
【0068】
硝酸亜鉛水溶液の固形分濃度は、例えば、3質量%以上、好ましくは、5質量%以上、より好ましくは、8質量%以上、また、例えば、20質量%以下、好ましくは、10質量%以下である。
【0069】
アンモニア水溶液の固形分濃度は、例えば、10質量%以上、好ましくは、20質量%以上、また、例えば、40質量%以下、好ましくは、30質量%以下である。
【0070】
そして、硬化促進剤(硬化促進剤水溶液)を調製するには、硝酸亜鉛水溶液に、アンモニア水溶液を添加する。
【0071】
これにより、硬化促進剤(硬化促進剤水溶液)を調製する。
【0072】
得られた硬化促進剤(硬化促進剤水溶液)は、好ましくは、透明である。
【0073】
また、硬化促進剤(硬化促進剤水溶液)における、硝酸亜鉛およびアンモニアの総量の濃度は、例えば、3質量%以上、好ましくは、5質量%以上、また、例えば、20質量%以下、好ましくは、15質量%以下である。
【0074】
また、硬化促進剤(硬化促進剤水溶液)において、アンモニアに対する硝酸亜鉛の質量比率(硝酸亜鉛/アンモニア)は、例えば、1.0以上、好ましくは、1.5以上、より好ましくは2.0以上、さらに好ましくは、3.0以上、また、例えば、5.0以下、好ましくは、4.5以下である。
【0075】
上記質量比率が、上記下限以上および上記上限以下であれば、耐溶剤性および低温硬化性(後述)を向上させることができる。
【0076】
硬化促進剤の配合割合は、水酸基を含有するアクリル樹脂とアルキルエーテル化メラミン樹脂と硬化促進剤との総量100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、0.7質量部以上、また、例えば、5.0質量部以下、好ましくは、3.0質量部以下、より好ましくは、1.5質量部以下である。
【0077】
硬化促進剤の配合割合が、上記下限以上および上記上限以下であれば、耐溶剤性および低温硬化性(後述)を向上させることができる。
【0078】
水酸基を含有するアクリル樹脂およびアルキルエーテル化メラミン樹脂の総量に対する硬化促進剤(硬化促進剤/水酸基を含有するアクリル樹脂およびアルキルエーテル化メラミン樹脂)の質量比率は、例えば、0.001以上、好ましくは、0.005以上、より好ましくは、0.007以上、また、例えば、0.10以下、好ましくは、0.05以下、より好ましくは、0.02以下、さらに好ましくは、0.015以下である。
【0079】
上記質量比率が、上記下限以上および上記上限以下であれば、耐溶剤性および低温硬化性(後述)を向上させることができる。
【0080】
<水性樹脂組成物の調製方法>
水性樹脂組成物は、水酸基を含有するアクリル樹脂と、アルキルエーテル化メラミン樹脂と、硬化促進剤と、水と混合することにより調製される。
【0081】
具体的には、水酸基を含有するアクリル樹脂と、アルキルエーテル化メラミン樹脂と、水と、硬化促進剤とを順に混合する。
【0082】
また、上記混合において、アルキルエーテル化メラミン樹脂を乳化させる観点から、必要により、乳化剤および有機溶剤を配合することもできる。このような場合には、水性樹脂組成物は、乳化剤および有機溶剤を含む。
【0083】
有機溶剤は、アルキルエーテル化メラミン樹脂を乳化させることができる有機溶剤であれば特に限定されない。このような有機溶剤のうち、好ましくは、沸点が50℃以上200℃であり、かつ、20℃における水への溶解度が、10g/100ml以下である有機溶剤が挙げられる。このような有機溶剤として、例えば、酢酸n-プロピル(沸点101℃、水溶解度1.6g/100ml)、酢酸イソブチル(沸点118℃、水溶解度0.67g/100ml)、酢酸n-ブチル(沸点126℃、水溶解度0.70g/100ml)、イソブチルメチルケトン(MIBK)(沸点116℃、水溶解度1.7g/100ml)、シクロヘキサノン(沸点156℃、水溶解度10g/100ml)、1-ヘキサノール(沸点157℃、水溶解度0.58g/100ml)、2-エチル-1-ヘキサノール(沸点185℃、水溶解度0.07g/100ml)、シクロヘキサン(沸点81℃、水溶解度0.006g/100ml)、および、トルエン(沸点110℃、水溶解度0.05g/100ml)が挙げられる。有機溶剤として、好ましくは、2-エチル-1-ヘキサノールが挙げられる。
【0084】
有機溶剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0085】
有機溶剤の配合割合は、水性樹脂組成物に対して、例えば、0.1質量%以上、好ましくは、0.2質量%以上、より好ましくは、0.5質量%以上、また、例えば、30質量%以下、好ましくは、25質量%以下、より好ましくは、20質量%以下である。
【0086】
有機溶剤の配合割合が、上記下限以上および上記上限以下であれば、低温硬化性(後述)および貯蔵安定性に優れる。
【0087】
乳化剤は、アルキルエーテル化メラミン樹脂を乳化させることができる乳化剤であれば限定されない。このような乳化剤としては、例えば、特開2020-084099号公報に記載されたアニオン系界面活性剤が挙げられる。乳化剤として、好ましくは、アルキルスルホコハク酸ナトリウムが挙げられる。
【0088】
乳化剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0089】
乳化剤の配合割合は、水性樹脂組成物に対して、例えば、0.01質量%以上、好ましくは、0.02質量%以上、より好ましくは、0.05質量%以上、また、例えば、20.0質量%以下、好ましくは、10.0質量%以下、より好ましくは5.0質量%以下である。
【0090】
乳化剤の配合割合が、上記下限以上および上記上限以下であれば、低温硬化性(後述)および貯蔵安定性に優れる。
【0091】
そして、このような水性樹脂組成物を調製するには、まず、アルキルエーテル化メラミン樹脂に、乳化剤および有機溶剤を添加し混合物を得る。そして、この混合物を、水酸基を含有するアクリル樹脂に配合して、攪拌した後、水と、硬化促進剤とを順に配合する。
【0092】
また、上記混合において、意匠性や塗膜硬度向上の観点から、必要により、顔料を配合することもできる。このような場合には、水性樹脂組成物は、顔料を含む。
【0093】
顔料としては、例えば、着色顔料、光輝性顔料、および、体質顔料が挙げられる。
【0094】
着色顔料としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、カドミウムレッド、モリブデンレッド、クロムエロー、酸化クロム、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリン顔料、スレン系顔料、および、ペリレン顔料が挙げられる。
【0095】
光輝性顔料としては、例えば、アルミニウム粉末、アルミニウムペースト、雲母粉末、および、酸化チタンで被覆した雲母粉末が挙げられる。
【0096】
体質顔料としては、例えば、タルク、クレー、カオリン、バリタ、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、および、アルミナホワイトが挙げられる。
【0097】
顔料として、好ましくは、着色顔料が挙げられる。
【0098】
顔料は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0099】
顔料の配合割合は、水酸基を含有するアクリル樹脂とアルキルエーテル化メラミン樹脂と硬化促進剤との総量100質量部に対して、例えば、50質量部以上、好ましくは、80質量部以上、また、例えば、150質量部以下、好ましくは、120質量部以下である。
【0100】
また、上記混合において、必要により、添加剤を適宜の割合で配合することもできる。このような場合には、水性樹脂組成物は、添加剤を含む。
【0101】
添加剤としては、例えば、染料、レベリング剤、安定向上剤、発泡抑制剤、ワキ防止剤、酸化防止剤、分散剤および紫外線吸収剤が挙げられる。
【0102】
添加剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0103】
以上により、水性樹脂組成物(水性樹脂組成物の溶液)を調製する。
【0104】
水性樹脂組成物の固形分濃度は、例えば、10質量%、好ましくは、20質量%以上、より好ましくは、25質量%以上、さらに好ましくは、30質量%以上、また、例えば、95質量%以下、好ましくは、90質量%以下、より好ましくは、50質量%以下、さらに好ましくは、40質量%以下である。
【0105】
水性樹脂組成物の固形分濃度が、上記下限以上および上記上限以下であれば、貯蔵安定性に優れ、かつ、環境負荷を低減できる。
【0106】
水性樹脂組成物は、水酸基を含有するアクリル樹脂およびアルキルエーテル化メラミン樹脂とともに、硝酸亜鉛およびアンモニアを含む硬化促進剤を含む。そのため、耐溶剤性および低温硬化性に優れる。
【0107】
また、低温硬化性とは、低温(例えば、120℃以下、好ましくは、90℃以下、また、例えば、60℃以上)であっても、硬化させることができることを意味する。
【0108】
そして、この水性樹脂組成物は、耐溶剤性および低温硬化性に優れるため、低温での硬化が要求されるコーティング剤として好適に用いることができる。
【0109】
<塗膜および塗装積層体の製造方法(水性樹脂組成物の使用方法)>
水性樹脂組成物は、例えば、被塗装体の表面をコーティングするために用いられる。被塗装体を、コーティングすることにより、塗装積層体が製造される。
【0110】
図1~
図1Cを参照して、塗膜および塗装積層体の製造方法の一実施形態を説明する。
【0111】
図1A~
図1Cにおいて、紙面上下方向は、上下方向(厚み方向)であって、紙面上側が、上側(厚み方向一方側)、紙面下側が、下側(厚み方向他方側)である。また、紙面左右方向および奥行き方向は、上下方向に直交する面方向である。具体的には、各図の方向矢印に準拠する。
【0112】
塗装積層体1の製造方法は、被塗装体2を準備する第1工程と、被塗装体2の表面(厚み方向一方面)に、水性樹脂組成物を塗布し、塗膜3を形成する第2工程と、塗膜3を加熱して、コーティング層4を形成する第3工程とを備える。
【0113】
[第1工程]
第1工程では、
図1Aに示すように、まず、被塗装体2を準備する。
【0114】
被塗装体2は、コーティング層4によって、その表面(厚み方向一方面)に、各種物性が付与される被塗装体である。
【0115】
なお、
図1Aにおいて、被塗装体2は、平板形状を有するが、被塗装体2の形状は、特に限定されず、種々の形状が選択される。
【0116】
被塗装体2としては、例えば、樹脂、および、金属が挙げられる。
【0117】
樹脂として、例えば、ポリエスエル樹脂、(メタ)アクリル樹脂(アクリル樹脂および/またはメタクリル樹脂を含む)、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、アクリロニトリル・スチレン・ブタジエン共重合樹脂(ABS樹脂)、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニリデン、スチレン・アクリロニトリル共重合体樹脂、および、酢酸セルロースが挙げられる。ポリエスエル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、および、ポリエチレンナフタレートが挙げられる。(メタ)アクリル樹脂としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)が挙げられる。ポリオレフィン樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂、および、ポリプロピレン樹脂が挙げられる。
【0118】
金属としては、例えば、鉄、アルミ、亜鉛、鋼板、および、ステンレスが挙げられる。
【0119】
とりわけ、詳しくは後述するが、塗膜3は、低温硬化性に優れる水性樹脂組成物から形成されるため、低温で硬化させることができる。そのため、耐熱性の低い樹脂であっても、被塗装体2として選択することができる。
【0120】
また、被塗装体2には、必要により、表面処理が施されていてもよい。また、被塗装体2には、必要により、予め、プライマーが形成されていてもよい。
【0121】
[第2工程]
第2工程では、
図1Bに示すように、被塗装体2の表面(厚み方向一方面)に、水性樹脂組成物を塗布し、塗膜3を形成する。
【0122】
塗布方法として、例えば、スプレーコート法、ディップコート法、ロールコート法、グラビアコート法、スピンコート法、バーコーター法、および、ドクターブレード法が挙げられる。塗布方法として、好ましくは、バーコーター法が挙げられる。
【0123】
これにより、被塗装体2の表面(厚み方向一方面)に、水性樹脂組成物の塗布物である塗膜3を形成する。
【0124】
[第3工程]
第3工程では、
図1Cに示すように、塗膜3を加熱して、コーティング層4を形成する。
【0125】
加熱条件として、加熱温度は、例えば、120℃以下、好ましくは、90℃以下、また、例えば、60℃以上である。また、加熱時間は、例えば、1分以上、好ましくは、5分以上、より好ましくは、10分以上、また、例えば、60分以下、好ましくは、40分以下、より好ましくは、30分以下である。
【0126】
なお、加熱は、2段階以上で実施することもできる。また、加熱は、減圧下、不活性雰囲気下で実施することもできる。
【0127】
これにより、塗膜3が、乾燥および硬化して、塗膜3の硬化物からなるコーティング層4が形成される。
【0128】
コーティング層4の厚みは、5μm以上、好ましくは、10μm以上、また、例えば、50μm以下、好ましくは、20μm以下である。
【0129】
以上より、被塗装体2と、コーティング層4とを順に備える塗装積層体1を製造する。
【0130】
そして、コーティング層4のゲル分率は、例えば、75%以上、好ましくは、81%以上、より好ましくは、91%以上である。
【0131】
ゲル分率が、上記下限以上であれば、低温であっても、アルキルエーテル化メラミン樹脂が、十分に硬化(架橋)反応するため、低温硬化性に優れる。
【0132】
なお、ゲル分率の測定方法は、後述する実施例において詳述する。
【0133】
<作用効果>
水性樹脂組成物は、水酸基を含有するアクリル樹脂およびアルキルエーテル化メラミン樹脂とともに、硝酸亜鉛およびアンモニアを含む硬化促進剤を含む。そのため、耐溶剤性および低温硬化性に優れる。
【0134】
塗膜は、上記水性樹脂組成物の塗布物である。そのため、耐溶剤性および低温硬化性に優れる。
【0135】
塗装積層体は、上記塗膜の硬化物を備える。そのため、耐溶剤性に優れる。また、塗装積層体は、低温硬化性に優れる水性樹脂組成物を用いて得られる。そのため、生産性に優れる。
【実施例0136】
次に、本発明を、実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は、下記の実施例によって限定されるものではない。なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0137】
<成分の詳細>
各製造例、各調製例、各実施例、および、各比較例で用いた成分の、商品名および略語について、詳述する。
【0138】
XK-104:水酸基を含有するアクリル樹脂、固形分濃度40質量%、重量平均分子量100000、水酸基価40mgKOH/g、商品名「NeoCryl XK-104」、DSM社製
XK-102:水酸基を含有するアクリル樹脂、固形分濃度40質量%、重量平均分子量200000、水酸基価52mgKOH/g、商品名「NeoCryl XK-102」、DSM社製
XK-103:水酸基を含有するアクリル樹脂、固形分濃度45質量%、重量平均分子量430000、水酸基価106mgKOH/g、商品名「NeoCryl XK-103」、DSM社製
ブチルエーテル化メラミン樹脂:アルキルエーテル化メラミン樹脂、固形分濃度50質量%(希釈溶剤:キシレンおよびn-ブタノールの混合溶剤)、重量平均分子量5500、商品名「ユーバン20SB」、三井化学株式会社社製
硝酸亜鉛六水和物:富士フィルム和光純薬株式会社製
硝酸ニッケル六水和物:富士フィルム和光純薬株式会社製
硝酸カルシウム四水和物:富士フィルム和光純薬株式会社製
25%アンモニア水溶液:富士フィルム和光純薬株式会社製
トリエチルアミン:富士フィルム和光純薬株式会社製
トリエタノールアミン:富士フィルム和光純薬株式会社製
ペレックスTR:アルキルスルホコハク酸ナトリウム、固形分濃度70質量%(希釈溶剤:メタノール)、商品名「ペレックスTR」、花王株式会社製
GPホワイト#101コンク:着色顔料、固形分濃度70質量%(希釈溶剤:水)、商品名「GPホワイト#101コンク」、御国色素社製
【0139】
<アルキルエーテル化メラミン樹脂の製造>
製造例1(メチルエーテル化メラミン樹脂)
撹拌機、温度計、還流コンデンサーおよび窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、メラミン126g(1.0モル)、ホルマリン濃度が92%のパラホルムアルデヒド196g(6.0モル)およびメタノール192g(6.0モル)を仕込み、還流温度まで昇温した。そして、還流温度で1時間メチロール化反応を実施した。これにより、メラミン樹脂を得た。
【0140】
その後、パラトルエンスルホン酸の50%水溶液0.180g(0.53ミリモル)を加え、還流状態にてメチルエーテル化反応を3時間実施した。その後、20%水酸化ナトリウム溶液0.160g(0.80ミリモル)で反応生成物を中和した。次いで、減圧下で、メタノールおよび水を留去した後、イソブタノールで固形分濃度70質量%となるまで希釈した。これにより、メチルエーテル化メラミン樹脂の溶液を製造した。メチルエーテル化メラミン樹脂の重量平均分子量は、1500であった。
【0141】
製造例2(エチルエーテル化メラミン樹脂)
撹拌機、温度計、還流コンデンサーおよび窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、メラミン126g(1.0モル)、ホルマリン濃度が92%のパラホルムアルデヒド196g(6.0モル)およびエタノール276g(6.0モル)を仕込み、還流温度まで昇温した。そして、還流温度で1時間メチロール化反応を実施した。これにより、メラミン樹脂を得た。
【0142】
その後、パラトルエンスルホン酸の50%水溶液0.180g(0.53ミリモル)を加え、還流状態にてエチルエーテル化反応を3時間実施した。その後、20%水酸化ナトリウム溶液0.160g(0.80ミリモル)で反応生成物を中和した。次いで、減圧下でエタノールおよび水を留去した後、イソブタノールで固形分濃度60重量%となるまで希釈した。これにより、エチルエーテル化メラミン樹脂の溶液を製造した。エチルエーテル化メラミン樹脂の重量平均分子量は、2500であった。
【0143】
<硬化促進剤(硬化促進剤水溶液)の調製>
調製例1
200mlフラスコに、硝酸亜鉛六水和物10g、および、水105gを仕込み、室温で撹拌し溶解させた後、撹拌を継続しながら、25%アンモニア水溶液10gを徐々に添加した。これにより、硬化促進剤(硬化促進剤水溶液)を調製した。
【0144】
調製例2~調製例7
調製例1と同様の手順に基づいて、硬化促進剤(硬化促進剤水溶液)を調製した。但し、表1に記載に基づいて配合処方を変更した。詳しくは、調製例3では、25%アンモニア水溶液に代えて、トリエチルアミンを用いた。また、調製例4では、25%アンモニア水溶液に代えて、トリエタノールアミンを用いた。また、調製例5では、硝酸亜鉛六水和物に代えて、硝酸ニッケル六水和物を用いた。また、調製例6では、硝酸亜鉛六水和物に代えて、硝酸カルシウム四水和物を用いた。
【0145】
<水性樹脂組成物の調製>
実施例1~実施例3、実施例6~実施例12、実施例15~実施例18、比較例1、および、比較例3~比較例7、比較例9~比較例12
1000mlフラスコに、水酸基を含有するアクリル樹脂と、アルキルエーテル化メラミン樹脂と、水と、硬化促進剤と、顔料とを順に、表2および表3に記載の配合処方に基づいて、混合した。これにより、水性樹脂組成物を調製した。
【0146】
実施例4、実施例5、実施例13、実施例14、比較例2、および、比較例8
100mlフラスコに、アルキルエーテル化メラミン樹脂と、乳化剤と、有機溶剤を表2および表3に記載の配合処方に基づいて、混合し、混合物を得た。次いで、500mlフラスコに、表2および表3に記載の配合処方に基づいて、水酸基を含有するアクリル樹脂を配合し、2,000rpmで撹拌した。次いで、このフラスコに、上記混合物と、水と、硬化促進剤と、顔料とを順に、表2および表3に記載の配合処方に基づいて、混合した。これにより、水性樹脂組成物を調製した。
【0147】
なお、実施例1~実施例9および比較例1~比較例6は、顔料を配合する点以外は、
実施例10~実施例18および比較例7~比較例12と同一処方である。
【0148】
<塗膜および塗装積層体の製造>
実施例1~実施例9および比較例1~比較例6
[第1工程]
被塗装体として、鋼板(150mm×70mm×厚さ0.8mm)を準備した。
【0149】
[第2工程]
被塗装体の表面(厚み方向一方面)に、各実施例および各比較例の水性樹脂組成物を、バーコーターを用いて塗布し、塗膜を形成した。
【0150】
[第3工程]
塗膜を、80℃で30分間加熱して硬化させることにより、コーティング層(厚み:15μm)を形成した。これにより、塗装積層体を製造した。
【0151】
実施例10~実施例18および比較例7~比較例12
[第1工程]
被塗装体として、アルミ箔(厚み:13μm)を準備した。
【0152】
[第2工程]
被塗装体の表面(厚み方向一方面)に、各実施例および各比較例の水性樹脂組成物を、バーコーターを用いて塗布し、塗膜を形成した。
【0153】
[第3工程]
塗膜を、80℃で30分間加熱して硬化させることにより、コーティング層(厚み:15μm)を形成した。これにより、塗装積層体を製造した。
【0154】
<評価>
[重量平均分子量]
各製造例のアルキルエーテル化メラミン樹脂について、GPC法に基づき、以下の測定条件に基づき、重量平均分子量を測定した。
検出器:示差屈折計(RI)
カラム:TSKgel G7000×1、TSKgel G4000×2、TSKgel G2000×1(何れも東ソー社製)
移動層:テトラヒドロフラン(THF)
カラム温度:25℃
流量:0.6ml/分
サンプルの濃度:20mg/mL(テトラヒドロフラン溶液)
注入量:10μl
【0155】
[外観]
実施例1~実施例9および比較例1~比較例6のコーティング層を目視で観察した。外観について、以下の基準に基づいて評価した。その結果を表2および表3に示す。
{基準}
○:異物がなく、表面が平滑であった。
×:全面に異物が観測された、または、表面に凹凸が観測された、または、光沢が損なわれていた。
【0156】
[耐溶剤性]
実施例1~実施例9および比較例1~比較例6のコーティング層に対して、キシレン(XY)またはメチルエチルケトン(MEK)を浸したガーゼで、荷重500gの条件で擦った(ラビングした。)。ラビングによって、コーティング層が剥がれ、被塗装体の表面が現れるまでの往復回数を測定した。なお、往復回数は、一の位を四捨五入した。キシレンラビング(XYラビング)およびメチルエチルケトンラビング(MEKラビング)について、以下の基準に基づいて評価した。その結果を表2および表3に示す。
{XYラビングの基準}
〇:往復回数が200回以上であった。
×:往復回数が0回以上199回以下であった。
{MEKラビングの基準}
◎:往復回数が80回以上であった。
〇:往復回数が50回以上79回以下であった。
△:往復回数が20回以上49回以下であった。
×:往復回数が0回以上19回以下であった。
【0157】
なお、MEKラビングは、XYラビングよりも、より高度な耐溶剤性を測定できる試験である。
【0158】
[低温硬化性(ゲル分率の測定)]
実施例10~実施例18および比較例7~比較例12の塗装積層体を、ソックスレー脂肪抽出器で還流させたアセトン中に、4時間浸漬した。その後、加熱によりアセトンを乾燥させた。アセトン浸漬前後の塗装積層体の質量を測定し、下記の式を用いてゲル分率を算出した。また、低温硬化性について、以下の基準に基づいて評価した。その結果を表3に示す。ゲル分率が高ければ、水性樹脂組成物から形成される塗膜が硬化するときに、アルキルエーテル化メラミン樹脂が、十分に硬化(架橋)反応するため、低温硬化性に優れることがわかる。
【0159】
G=100×(m2/m1)
G:ゲル分率(%)
m1:アセトン浸漬前の試験片の質量(mg)
m2:アセトン浸漬後の残留物の質量(mg)
{基準}
◎:ゲル分率が、91%以上であった。
〇:ゲル分率が、81%以上90%以下であった。
△:ゲル分率が、75%以上80%以下であった。
×:ゲル分率が、0%以上74%であった。
【0160】
【0161】
【0162】