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特開2023-132121情報処理プログラム、情報処理方法、および情報処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132121
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】情報処理プログラム、情報処理方法、および情報処理装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/26 20060101AFI20230914BHJP
   H02J 3/00 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
H02J3/26
H02J3/00 170
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022037269
(22)【出願日】2022-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104190
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】北島 弘伸
【テーマコード(参考)】
5G066
【Fターム(参考)】
5G066AA03
5G066GA01
5G066HB06
(57)【要約】
【課題】トランスを接続する接続相を切り替えることの有効性を評価可能にすること。
【解決手段】情報処理装置は、指標値として、期間内のアンバランス指標値Ujの最大値Uを利用する。情報処理装置は、指標値Uを最小化するよう、接続相xの相電流のうち、他の接続相yに移し替える相電流の割合tx yを求めるための最小化問題を設定する。情報処理装置は、設定した最小化問題を解くことにより、最小化した指標値Uと、指標値Uを最小化する割合tx yの組み合わせとを算出する。情報処理装置は、算出した指標値Uと、算出した割合tx yの組み合わせとを、作業者が参照可能に出力する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ位相が異なる線電流が流れる3つの配電線を用いて配電される複数の配電対象における需要電力の総量を取得し、
前記3つの配電線のうち、それぞれ異なる2つの配電線の組み合わせに対応する3つの接続相のそれぞれの接続相における相電流に対して、取得した前記需用電力の総量を分割することにより得られた電流値を設定し、
設定した前記それぞれの接続相における相電流の電流値に基づいて、前記3つの配電線における前記線電流間の電流値の不均衡度合いを示す指標値を評価する評価関数を用いた数理計画問題を解くことにより、前記不均衡度合いを最小化するよう、前記それぞれの接続相における相電流のうち、他の接続相に移し替える相電流の割合を算出する、
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする情報処理プログラム。
【請求項2】
前記取得する処理は、
前記3つの配電線に対して接続された複数のトランスのそれぞれのトランスについて、前記複数の配電対象のうち、前記3つの配電線を用いて当該トランスを介して配電される1以上の配電対象における需要電力の総量を取得し、
前記設定する処理は、
前記複数のトランスを前記3つの接続相に割り振り、前記それぞれの接続相における相電流に対して、当該接続相に割り振られたそれぞれのトランスについて取得した需要電力の総量を足し合わせることにより得られた電流値を設定する、ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理プログラム。
【請求項3】
前記取得する処理は、
対象期間内の時間区間ごとに、前記複数の配電対象における需要電力の総量を取得し、
前記設定する処理は、
前記時間区間ごとに、前記それぞれの接続相における相電流に対して、取得した前記需用電力の総量を分割することにより得られた電流値を設定し、
前記算出する処理は、
設定した前記それぞれの接続相における相電流の電流値に基づいて、前記3つの配電線における前記線電流間の電流値の前記対象期間における不均衡度合いを示す指標値を評価する評価関数を用いた数理計画問題を解くことにより、前記不均衡度合いを最小化するよう、前記それぞれの接続相における相電流のうち、他の接続相に移し替える相電流の割合を算出する、ことを特徴とする請求項1または2に記載の情報処理プログラム。
【請求項4】
前記評価関数は、前記指標値と、前記割合が大きいまたは小さいほど前記指標値に対する評価が悪化するよう作用するペナルティ項とを含む、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載の情報処理プログラム。
【請求項5】
それぞれ位相が異なる線電流が流れる3つの配電線を用いて配電される複数の配電対象における需要電力の総量を取得し、
前記3つの配電線のうち、それぞれ異なる2つの配電線の組み合わせに対応する3つの接続相のそれぞれの接続相における相電流に対して、取得した前記需用電力の総量を分割することにより得られた電流値を設定し、
設定した前記それぞれの接続相における相電流の電流値に基づいて、前記3つの配電線における前記線電流間の電流値の不均衡度合いを示す指標値を評価する評価関数を用いた数理計画問題を解くことにより、前記不均衡度合いを最小化するよう、前記それぞれの接続相における相電流のうち、他の接続相に移し替える相電流の割合を算出する、
処理をコンピュータが実行することを特徴とする情報処理方法。
【請求項6】
それぞれ位相が異なる線電流が流れる3つの配電線を用いて配電される複数の配電対象における需要電力の総量を取得し、
前記3つの配電線のうち、それぞれ異なる2つの配電線の組み合わせに対応する3つの接続相のそれぞれの接続相における相電流に対して、取得した前記需用電力の総量を分割することにより得られた電流値を設定し、
設定した前記それぞれの接続相における相電流の電流値に基づいて、前記3つの配電線における前記線電流間の電流値の不均衡度合いを示す指標値を評価する評価関数を用いた数理計画問題を解くことにより、前記不均衡度合いを最小化するよう、前記それぞれの接続相における相電流のうち、他の接続相に移し替える相電流の割合を算出する、
制御部を有することを特徴とする情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理プログラム、情報処理方法、および情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、それぞれ位相が異なる線電流が流れる3つの配電線を含む回線から、トランスによって変圧された単相の交流電力を取り出し、複数の配電対象に配電するという3相交流と呼ばれる配電方式がある。トランスは、具体的には、3つの配電線のいずれかの2つの配電線の組み合わせに対応する接続相に接続され、当該接続相を介して単相の交流電力を取り出す。回線は、具体的には、複数存在する。
【0003】
先行技術としては、例えば、3相の各線間の電圧不平衡率が最大になる計測時刻における3相の各線間の電圧に基づいて線間ごとの電圧の高低特性の組み合わせを作成し、当該計測時刻と当該組み合わせとに基づいて柱上変圧器の接続相を決定するものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-005893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、3つの配電線における線電流間で電流値が不均衡になるほど、配電効率が低下したり、配電線で太陽光発電の出力を受け付けられなくなったりすることがある。線電流間の電流値の不均衡を解消するため、それぞれ異なる2つの配電線の組み合わせに対応する3つの接続相のうち、トランスを接続する接続相を切り替えることが考えられる。しかしながら、従来技術では、いずれの回線において、トランスを接続する接続相を切り替えることが好ましいかを判断することができない。例えば、トランスが現在いずれの接続相に接続中であるかが不明であると、トランスを接続する接続相を切り替えることの有効性を予め評価することが難しいという問題がある。
【0006】
1つの側面では、本発明は、トランスを接続する接続相を切り替えることの有効性を評価可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの実施態様によれば、それぞれ位相が異なる線電流が流れる3つの配電線を用いて配電される複数の配電対象における需要電力の総量を取得し、前記3つの配電線のうち、それぞれ異なる2つの配電線の組み合わせに対応する3つの接続相のそれぞれの接続相における相電流に対して、取得した前記需用電力の総量を分割することにより得られた電流値を設定し、設定した前記それぞれの接続相における相電流の電流値に基づいて、前記3つの配電線における前記線電流間の電流値の不均衡度合いを示す指標値を評価する評価関数を用いた数理計画問題を解くことにより、前記不均衡度合いを最小化するよう、前記それぞれの接続相における相電流のうち、他の接続相に移し替える相電流の割合を算出する情報処理プログラム、情報処理方法、および情報処理装置が提案される。
【発明の効果】
【0008】
一態様によれば、トランスを接続する接続相を切り替えることの有効性を評価可能にすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施の形態にかかる情報処理方法の一実施例を示す説明図である。
図2図2は、配電システム200の一例を示す説明図である。
図3図3は、情報処理装置100のハードウェア構成例を示すブロック図である。
図4図4は、情報処理装置100の機能的構成例を示すブロック図である。
図5図5は、指標値の一例を示す説明図である。
図6図6は、相電流の電流値Iy,jに関する定式化の一例を示す説明図である。
図7図7は、情報処理装置100による効果の一例を示す説明図である。
図8図8は、全体処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、図面を参照して、本発明にかかる情報処理プログラム、情報処理方法、および情報処理装置の実施の形態を詳細に説明する。
【0011】
(実施の形態にかかる情報処理方法の一実施例)
図1は、実施の形態にかかる情報処理方法の一実施例を示す説明図である。情報処理装置100は、3相交流の回線を形成する3つの配電線における線電流間で電流値が不均衡になることを抑制しようと考える作業者を支援するためのコンピュータである。
【0012】
線電流間で電流値が不均衡になるほど、配電効率が低下したり、配電線で太陽光発電の出力を受け付けられなくなったりすることがあるため、線電流間で電流値が不均衡になることを抑制することが望まれる。線電流間の電流値の不均衡を解消するため、3つの接続相のうち、複数のトランスのそれぞれのトランスを接続する接続相を切り替えることが考えられる。ここで、作業者は、線電流間の電流値の不均衡を解消する目的で、トランスを接続する接続相を、どのように切り替えることが好ましいかを判断することが難しい。
【0013】
これに対し、それぞれのトランスが現在いずれの接続相に接続中であるかを示す接続相情報を利用して、線電流間の電流値の不均衡度合いを示す指標値を最小化する最小化問題を解くことにより、それぞれのトランスを接続する適切な接続相を特定する手法が考えられる。しかしながら、上記手法では、最小化問題が複雑化し易いため、トランスを接続する適切な接続相を特定するためのコストが比較的大きくなる傾向がある。コストは、例えば、人的コスト、時間的コスト、または、金銭的コストなどである。上記手法では、接続相情報を取得するためのコストが発生してしまう。
【0014】
従って、回線が複数存在する場合、すべての回線に対して上記手法を適用することが好ましくない場合がある。例えば、回線が多くなるほど、すべての回線に対して上記手法を適用した際にかかる全体のコストが増大していくため、作業者は、すべての回線に対して上記手法を適用することを望まないことがある。
【0015】
また、回線が複数存在する場合、すべての回線においてトランスを接続する接続相を切り替えることが好ましくない場合がある。例えば、実際にトランスを接続する接続相を切り替えようとする場合、回線に対してトランスを接続する接続相を切り替える工事を行うことになり、工事を行うためのコストが発生してしまう。このため、回線が多くなるほど、すべての回線においてトランスを接続する接続相を切り替える際にかかる全体のコストが増大していくため、作業者は、すべての回線においてトランスを接続する接続相を切り替えることを望まないことがある。
【0016】
これらのことから、トランスを接続する接続相を切り替えることの有効性を予め評価することが望まれる。例えば、作業者は、複数の回線のいずれの回線において、トランスを接続する接続相を切り替えることが好ましいかを判断したいと考えることがある。例えば、作業者は、複数の回線のうち、上記手法を適用する回線を絞り込みたいと考えることがある。例えば、作業者は、複数の回線のうち、トランスを接続する接続相を切り替える工事を行う回線を絞り込みたいと考えることがある。回線を絞り込む問題は、回線スクリーニング問題と呼ばれる。
【0017】
従来では、いずれの回線において、トランスを接続する接続相を切り替えることが好ましいかを判断することが難しい。例えば、いずれかの回線について、接続相情報が不明であると、当該いずれかの回線において、トランスを接続する接続相を切り替えることの有効性を予め評価することが難しいという問題がある。従って、接続相情報を利用せずとも、いずれかの回線において、トランスを接続する接続相を切り替えることの有効性を予め評価可能にすることが望まれる。
【0018】
そこで、本実施の形態では、いずれかの回線において、トランスを接続する接続相を切り替えることの有効性を評価可能にすることにより、作業者が、線電流間で電流値が不均衡になることを抑制し易くすることができる情報処理方法について説明する。
【0019】
図1において、回線110の一端が接続される配電設備120が存在する。配電設備120は、高圧の3相交流電力を生成する設備である。3相交流電力は、互いに位相が120度異なる3つの単相交流電力を含む。高圧は、例えば、6.6kVである。回線110は、それぞれ位相が異なる線電流が流され、それぞれ位相が異なる単相交流電力を配電する3つの配電線111によって形成される。
【0020】
回線110は、1以上のトランス130が接続される。トランス130は、例えば、数十個存在する。回線110は、トランス130を介して1以上の配電対象140に交流電力を供給する。トランス130は、回線110を形成する3つの配電線111のうち、2つの配電線111の組み合わせに対応するいずれかの接続相に接続される。トランス130は、接続相から、低圧の単相交流電力を取り出して、配電対象140に供給する。低圧は、例えば、105Vである。配電対象140は、住宅、ビルディング、公共施設、または、工場などである。配電対象140は、消費電力を計測する電力計141を有する。電力計141は、例えば、スマートメータである。
【0021】
3つの配電線111は、便宜上、それぞれ、a線、b線、および、c線と呼ばれることがある。a線とb線との組み合わせに対応する接続相は、ab相と呼ばれることがある。b線とc線との組み合わせに対応する接続相は、bc相と呼ばれることがある。c線とa線との組み合わせに対応する接続相は、ca相と呼ばれることがある。以下の説明では、a線の線電流の電流値を「Ia」と表記する場合がある。b線の線電流の電流値を「Ib」と表記する場合がある。c線の線電流の電流値を「Ic」と表記する場合がある。
【0022】
(1-1)情報処理装置100は、複数の配電対象140における需要電力の総量を取得する。情報処理装置100は、例えば、電力計141から、配電対象140における消費電力を、需要電力として取得し、取得した需要電力の総量を算出する。
【0023】
(1-2)情報処理装置100は、3つの接続相のそれぞれの接続相における相電流に対して、取得した需用電力の総量を分割することにより得られた電流値を設定する。情報処理装置100は、例えば、それぞれの接続相における相電流に対して、取得した需用電力の総量を3等分し、6.6kVで除算することにより得られた電流値を設定する。これにより、情報処理装置100は、接続相情報を利用せずとも、それぞれの相電流の電流値を仮定することができる。
【0024】
(1-3)情報処理装置100は、設定したそれぞれの接続相における相電流の電流値に基づいて、3つの配電線111における線電流間の電流値の不均衡度合いを示す指標値を評価する評価関数を用いた数理計画問題を設定する。数理計画問題は、例えば、線形計画問題になる。指標値は、例えば、線電流間の電流値の差分の最大値である。
【0025】
情報処理装置100は、設定した数理計画問題を解くことにより、不均衡度合いを最小化するよう、それぞれの接続相における相電流のうち、他の接続相に移し替える相電流の割合を算出する。不均衡度合いの最小化は、例えば、指標値の最小化に対応する。不均衡度合いの最小化は、具体的には、制約下で指標値を最小に近付けることである。情報処理装置100は、例えば、線形計画法のソルバーを用いて、数理計画問題を解く。これにより、情報処理装置100は、回線110においてトランス130の接続相をどの程度切り替えることが好ましいかを把握する指針となる情報を得ることができる。
【0026】
(1-4)情報処理装置100は、それぞれの接続相における相電流について算出した割合を、作業者が参照可能に出力する。これにより、情報処理装置100は、作業者が、回線110においてトランス130の接続相をどの程度切り替えることが好ましいかを把握可能にすることができ、線電流間の電流値の不均衡の解消を図る際にかかるコストを見積もり易くすることができる。このため、情報処理装置100は、接続相情報を利用せずとも、トランスを接続する接続相を切り替えることの有効性を予め評価可能にすることができる。
【0027】
情報処理装置100は、それぞれの接続相における相電流について算出した割合の組み合わせに対応する指標値を、作業者が参照可能に出力してもよい。これにより、情報処理装置100は、作業者が、線電流間の電流値の不均衡をどの程度解消可能であるかを見積もり易くすることができる。このため、情報処理装置100は、接続相情報を利用せずとも、トランスを接続する接続相を切り替えることの有効性を予め評価可能にすることができる。
【0028】
情報処理装置100は、回線110が複数存在しても、作業者が、いずれの回線110において、トランスを接続する接続相を切り替えることが好ましいかを判断可能にすることができる。情報処理装置100は、回線110が複数存在しても、トランスを接続する接続相を切り替える回線110を適切に絞り込み易くすることができる。情報処理装置100は、回線110が複数存在しても、トランスを接続する接続相を切り替える工事を実際に行う回線110を適切に絞り込み易くすることができる。
【0029】
ここでは、情報処理装置100が、複数の配電対象140における需用電力の総量を直接的に取得し、取得した需用電力の総量を3等分することにより、それぞれの接続相における相電流に対して電流値を設定する場合について説明したが、これに限らない。例えば、情報処理装置100が、トランス130ごとに、当該トランス130を介して単相交流電力が供給される1以上の配電対象140における需要電力の総量を取得し、複数の配電対象140における需用電力の総量を間接的に取得する場合があってもよい。
【0030】
この場合、情報処理装置100は、例えば、3つの接続相に複数のトランス130を割り振り、それぞれの接続相に割り振ったトランス130について取得した需要電力の総量に基づいて、当該接続相における相電流に対して電流値を設定することが考えられる。ここで、情報処理装置100が、3つの接続相に複数のトランス130を割り振ることにより、それぞれの接続相における相電流に対して電流値を設定する場合の一例については、図6を用いて後述する。
【0031】
(配電システム200の一例)
次に、図2を用いて、図1に示した情報処理装置100を適用した、配電システム200の一例について説明する。
【0032】
図2は、配電システム200の一例を示す説明図である。図2において、配電システム200は、情報処理装置100と、回線110と、配電設備120と、トランス130と、配電対象140と、電力計141と、開閉器201とを含む。
【0033】
配電システム200において、情報処理装置100と電力計141とは、有線または無線のネットワーク210を介して接続される。ネットワーク210は、例えば、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、インターネットなどである。また、配電システム200において、情報処理装置100と開閉器201とは、有線または無線のネットワーク210を介して接続される。
【0034】
情報処理装置100は、配電システム200を管理する作業者によって用いられるコンピュータである。情報処理装置100は、それぞれの配電対象140における消費電力を、当該配電対象140における需要電力として、電力計141から受信する。情報処理装置100は、それぞれの配電線における線電流の電流値を、開閉器201から受信する。
【0035】
情報処理装置100は、受信したそれぞれの配電対象140における需要電力と、受信したそれぞれの配電線における線電流の電流値とに基づいて、線形計画問題を設定する。線形計画問題は、線電流間の電流値の不均衡度合いを示す指標値を最小化するよう、それぞれの接続相における相電流のうち、他の接続相に移し替える相電流の割合を算出することを目的とする。情報処理装置100は、線形計画法のソルバーを用いて、設定した線形計画問題を解くことにより、それぞれの接続相における相電流のうち、他の接続相に移し替える相電流の割合を算出する。
【0036】
情報処理装置100は、それぞれの接続相における相電流のうち、他の接続相に移し替える相電流の割合を、作業者が参照可能に出力する。情報処理装置100は、算出した割合の組み合わせに対応する指標値を、作業者が参照可能に出力してもよい。情報処理装置100は、例えば、サーバ、または、PC(Personal Computer)などである。
【0037】
回線110は、3つの配電線を含む経路である。回線110は、一端が配電設備120に接続される。回線110は、配電設備120から、高圧の3相交流電力を受け付ける。回線110は、受け付けた高圧の3相交流電力を、トランス130を介して、配電対象140に配電する。回線110は、複数存在していてもよい。2以上の回線110が、同一の配電設備120に接続されていてもよい。2以上の回線110が、それぞれ異なる配電設備120に接続されていてもよい。3つの配電線は、それぞれ位相が異なる線電流が流されることにより、それぞれ位相が異なる単相交流電力を搬送する。回線110は、1以上のトランス130が接続される。配電設備120は、高圧の3相交流電力を生成する設備である。配電設備120は、高圧の3相交流電力を、回線110に流す。配電設備120は、複数存在していてもよい。
【0038】
トランス130は、回線110に接続される。トランス130は、例えば、回線110を形成する3つの配電線のうち、2つの配電線の組み合わせに対応するいずれかの接続相に接続される。トランス130は、1つの回線110あたり複数存在していてもよい。2以上のトランス130が、同一の接続相に接続されていてもよい。2以上のトランス130が、それぞれ異なる接続相に接続されていてもよい。トランス130は、接続相から、低圧の単相交流電力を取り出して、配電対象140に供給する。
【0039】
配電対象140は、単相交流電力を利用する利用先である。配電対象140は、例えば、住宅、ビルディング、公共施設、または、工場などである。配電対象140は、電力計141を有する。配電対象140は、複数存在していてもよい。電力計141は、消費電力を計測する。電力計141は、例えば、一定時間ごとに、消費電力を計測する。電力計141は、計測した消費電力を、情報処理装置100に送信する。電力計141は、例えば、消費電力を計測した時点に対応付けて当該消費電力を、情報処理装置100に送信する。電力計141は、例えば、スマートメータである。
【0040】
開閉器201は、回線110を形成するそれぞれの配電線における線電流の電流値を計測する。開閉器201は、回線110に接続される。開閉器201は、例えば、回線110のうち、トランス130が接続された箇所より上流に接続されることが好ましい。開閉器201は、例えば、一定時間ごとに、それぞれの配電線における線電流の電流値を計測する。開閉器201は、計測したそれぞれの配電線における線電流の電流値を、情報処理装置100に送信する。開閉器201は、例えば、それぞれの配電線における線電流の電流値を計測した時点に対応付けて当該線電流の電流値を、情報処理装置100に送信する。開閉器201は、回線110が複数存在していれば、回線110ごとに設けられていてもよい。
【0041】
(情報処理装置100の利用例)
次に、配電システム200における、情報処理装置100の利用例について説明する。ここでは、回線110は、複数存在するとする。作業者は、情報処理装置100を利用して、回線110ごとに、それぞれの接続相における相電流のうち、他の接続相に移し替える相電流の割合と、算出した割合の組み合わせに対応する指標値とを参照する。
【0042】
作業者は、参照した割合と指標値とに基づいて、トランス130の接続相を切り替える候補とする回線110を絞り込む。作業者は、例えば、指標値が最も小さくなる回線110を、トランス130の接続相を切り替える効果が比較的高い回線110であると判断し、トランス130の接続相を切り替える候補として選択する。作業者は、例えば、割合が比較的小さくなる回線110を、トランス130の接続相を切り替えるコストが比較的少ない回線110であると判断し、トランス130の接続相を切り替える候補として選択する。
【0043】
作業者は、選択した回線110を解析することにより、それぞれのトランス130が現在いずれの接続相に接続中であるかを示す接続相情報を生成する。作業者は、選択した回線110について、生成した接続相情報を利用して、線電流間の電流値の不均衡度合いを示す指標値を最小化する最小化問題を解くことにより、それぞれのトランス130を接続する適切な接続相を特定する。作業者は、特定した結果に基づいて、それぞれのトランス130を接続する接続相を実際に切り替える工事を行う。
【0044】
これにより、作業者は、接続相情報を生成しようとする回線110を絞り込むことができる。作業者は、最小化問題を解こうとする回線110を絞り込むことができる。作業者は、それぞれのトランス130を接続する接続相を実際に切り替える工事を行う回線110を絞り込むことができる。このため、作業者は、線電流間の電流値の不均衡度合いを解消する際にかかるコストの増大化を抑制することができる。
【0045】
(情報処理装置100のハードウェア構成例)
次に、図3を用いて、情報処理装置100のハードウェア構成例について説明する。
【0046】
図3は、情報処理装置100のハードウェア構成例を示すブロック図である。図3において、情報処理装置100は、CPU(Central Processing Unit)301と、メモリ302と、ネットワークI/F(Interface)303と、記録媒体I/F304と、記録媒体305とを有する。また、各構成部は、バス300によってそれぞれ接続される。
【0047】
ここで、CPU301は、情報処理装置100の全体の制御を司る。メモリ302は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)およびフラッシュROMなどを有する。具体的には、例えば、フラッシュROMやROMが各種プログラムを記憶し、RAMがCPU301のワークエリアとして使用される。メモリ302に記憶されるプログラムは、CPU301にロードされることにより、コーディングされている処理をCPU301に実行させる。
【0048】
ネットワークI/F303は、通信回線を通じてネットワーク210に接続され、ネットワーク210を介して他のコンピュータに接続される。そして、ネットワークI/F303は、ネットワーク210と内部のインターフェースを司り、他のコンピュータからのデータの入出力を制御する。ネットワークI/F303は、例えば、モデムやLANアダプタなどである。
【0049】
記録媒体I/F304は、CPU301の制御に従って記録媒体305に対するデータのリード/ライトを制御する。記録媒体I/F304は、例えば、ディスクドライブ、SSD(Solid State Drive)、USB(Universal Serial Bus)ポートなどである。記録媒体305は、記録媒体I/F304の制御で書き込まれたデータを記憶する不揮発メモリである。記録媒体305は、例えば、ディスク、半導体メモリ、USBメモリなどである。記録媒体305は、情報処理装置100から着脱可能であってもよい。
【0050】
情報処理装置100は、上述した構成部の他、例えば、キーボード、マウス、ディスプレイ、プリンタ、スキャナ、マイク、スピーカーなどを有してもよい。また、情報処理装置100は、記録媒体I/F304や記録媒体305を複数有していてもよい。また、情報処理装置100は、記録媒体I/F304や記録媒体305を有していなくてもよい。
【0051】
(情報処理装置100の機能的構成例)
次に、図4を用いて、情報処理装置100の機能的構成例について説明する。
【0052】
図4は、情報処理装置100の機能的構成例を示すブロック図である。情報処理装置100は、記憶部400と、取得部401と、設定部402と、求解部403と、出力部404とを含む。
【0053】
記憶部400は、例えば、図3に示したメモリ302や記録媒体305などの記憶領域によって実現される。以下では、記憶部400が、情報処理装置100に含まれる場合について説明するが、これに限らない。例えば、記憶部400が、情報処理装置100とは異なる装置に含まれ、記憶部400の記憶内容が情報処理装置100から参照可能である場合があってもよい。
【0054】
取得部401~出力部404は、制御部の一例として機能する。取得部401~出力部404は、具体的には、例えば、図3に示したメモリ302や記録媒体305などの記憶領域に記憶されたプログラムをCPU301に実行させることにより、または、ネットワークI/F303により、その機能を実現する。各機能部の処理結果は、例えば、図3に示したメモリ302や記録媒体305などの記憶領域に記憶される。
【0055】
記憶部400は、各機能部の処理において参照され、または更新される各種情報を記憶する。記憶部400は、例えば、それぞれ位相が異なる線電流が流れる3つの配電線を用いて配電される複数の配電対象140における需要電力の総量を記憶する。需要電力は、例えば、消費電力に対応する。需要電力の総量は、例えば、複数の配電対象140のそれぞれの配電対象140における需要電力を足し合わせることにより得られる。記憶部400は、具体的には、対象期間内の時間区間ごとに、複数の配電対象140における需要電力の総量を取得してもよい。複数の配電対象140における需要電力の総量は、例えば、取得部401によって取得される。
【0056】
記憶部400は、例えば、複数のトランス130のそれぞれのトランス130について、複数の配電対象140のうち、3つの配電線を用いて当該トランス130を介して配電される1以上の配電対象140における需要電力の総量を取得してもよい。トランス130は、3つの配電線に対して接続される。需要電力の総量は、例えば、1以上の配電対象140のそれぞれの配電対象140における需要電力を足し合わせることにより得られる。記憶部400は、具体的には、対象期間内の時間区間ごとに、それぞれのトランス130について、複数の配電対象140のうち、3つの配電線を用いて当該トランス130を介して配電される1以上の配電対象140における需要電力の総量を取得してもよい。1以上の配電対象140における需要電力の総量は、例えば、取得部401によって取得される。
【0057】
記憶部400は、3つの配電線のそれぞれの配電線における線電流の電流値を記憶する。記憶部400は、対象期間内の時間区間ごとの3つの配電線のそれぞれの配電線における線電流の電流値を記憶する。線電流の電流値は、例えば、取得部401によって取得される。
【0058】
取得部401は、各機能部の処理に用いられる各種情報を取得する。取得部401は、取得した各種情報を、記憶部400に記憶し、または、各機能部に出力する。また、取得部401は、記憶部400に記憶しておいた各種情報を、各機能部に出力してもよい。取得部401は、例えば、利用者の操作入力に基づき、各種情報を取得する。取得部401は、例えば、情報処理装置100とは異なる装置から、各種情報を受信してもよい。
【0059】
取得部401は、例えば、3つの配電線を用いて配電される複数の配電対象140における需要電力の総量を取得する。取得部401は、具体的には、それぞれの配電対象140における需要電力を、当該配電対象140に対応する電力計141から受信し、受信した需要電力を足し合わせることにより、複数の配電対象140における需要電力の総量を取得する。
【0060】
取得部401は、例えば、対象期間内の時間区間ごとに、複数の配電対象140における需要電力の総量を取得してもよい。取得部401は、具体的には、対象期間内の時間区間ごとに、それぞれの配電対象140における需要電力を、当該配電対象140に対応する電力計141から受信する。取得部401は、受信した需要電力を足し合わせることにより、複数の配電対象140における需要電力の総量を取得する。
【0061】
取得部401は、例えば、複数のトランス130のそれぞれのトランス130について、複数の配電対象140のうち、3つの配電線を用いて当該トランス130を介して配電される1以上の配電対象140における需要電力の総量を取得してもよい。
【0062】
取得部401は、具体的には、3つの配電線を用いてそれぞれのトランス130を介して配電される1以上の配電対象140のそれぞれの配電対象140における需要電力を、当該配電対象140に対応する電力計141から受信する。取得部401は、具体的には、それぞれのトランス130について受信した需要電力を足し合わせることにより、3つの配電線を用いて当該トランス130を介して配電される1以上の配電対象140における需要電力の総量を取得する。
【0063】
取得部401は、例えば、対象期間内の時間区間ごとに、それぞれのトランス130について、複数の配電対象140のうち、3つの配電線を用いて当該トランス130を介して配電される1以上の配電対象140における需要電力の総量を取得してもよい。
【0064】
取得部401は、具体的には、対象期間内の時間区間ごとに、3つの配電線を用いてそれぞれのトランス130を介して配電される1以上の配電対象140のそれぞれの配電対象140における需要電力を、当該配電対象140に対応する電力計141から受信する。取得部401は、具体的には、対象期間内の時間区間ごとに、それぞれのトランス130について受信した需要電力を足し合わせることにより、当該トランス130を介して配電される1以上の配電対象140における需要電力の総量を取得する。
【0065】
取得部401は、例えば、3つの配電線のそれぞれの配電線における線電流の電流値を取得する。取得部401は、具体的には、それぞれの配電線における線電流の電流値を、開閉器201から受信することにより取得する。
【0066】
取得部401は、対象期間内の時間区間ごとの3つの配電線のそれぞれの配電線における線電流の電流値を取得する。取得部401は、具体的には、対象期間内の時間区間ごとに、それぞれの配電線における線電流の電流値を、開閉器201から受信することにより取得する。
【0067】
取得部401は、いずれかの機能部の処理を開始する開始トリガーを受け付けてもよい。開始トリガーは、例えば、利用者による所定の操作入力があったことである。開始トリガーは、例えば、他のコンピュータから、所定の情報を受信したことであってもよい。開始トリガーは、例えば、いずれかの機能部が所定の情報を出力したことであってもよい。取得部401は、例えば、需要電力の総量と、それぞれの配電線における線電流の電流値とを取得したことを、設定部402と求解部403との処理を開始する開始トリガーとして受け付ける。
【0068】
設定部402は、3つの接続相のそれぞれの接続相における相電流の電流値を設定する。設定部402は、例えば、3つの接続相のそれぞれの接続相における相電流に対して、取得した需用電力の総量を分割することにより得られた電流値を設定する。接続相は、3つの配電線のうち、いずれか2つの配電線の組み合わせに対応する。設定部402は、具体的には、それぞれの接続相における相電流に対して、取得した需要電力の総量を、電圧で除算して3等分することにより得られた電流値を設定する。これにより、設定部402は、接続相情報を利用せずとも、それぞれの相電流の電流値を仮定することができる。
【0069】
設定部402は、例えば、時間区間ごとに、それぞれの接続相における相電流に対して、取得した需用電力の総量を分割することにより得られた電流値を設定してもよい。設定部402は、具体的には、時間区間ごとに、それぞれの接続相における相電流に対して、取得した需要電力の総量を、電圧で除算して3等分することにより得られた電流値を設定する。これにより、設定部402は、接続相情報を利用せずとも、それぞれの相電流の電流値を仮定することができる。
【0070】
設定部402は、例えば、複数のトランス130を3つの接続相に割り振ってもよい。設定部402は、例えば、それぞれの接続相における相電流に対して、当該接続相に割り振られたそれぞれのトランス130について取得した需要電力の総量を足し合わせることにより得られた電流値を設定する。
【0071】
設定部402は、具体的には、それぞれの接続相における相電流に対して、当該接続相に割り振られたそれぞれのトランス130について取得した需要電力の総量を足し合わせて、電圧で除算することにより得られた電流値を設定する。これにより、設定部402は、接続相情報を利用せずとも、それぞれの相電流の電流値を仮定することができる。設定部402は、負の需要電力が存在することを考慮して、それぞれの相電流の電流値を仮定する精度の向上を図ることができる。
【0072】
設定部402は、例えば、複数のトランス130を3つの接続相に割り振ってもよい。設定部402は、例えば、時間区間ごとに、それぞれの接続相における相電流に対して、当該接続相に割り振られたそれぞれのトランス130について取得した需要電力の総量を足し合わせることにより得られた電流値を設定する。
【0073】
設定部402は、具体的には、時間区間ごとに、それぞれの接続相における相電流に対して、当該接続相に割り振られたそれぞれのトランス130について取得した需要電力の総量を足し合わせて、電圧で除算することにより得られた電流値を設定する。これにより、設定部402は、接続相情報を利用せずとも、それぞれの相電流の電流値を仮定することができる。設定部402は、負の需要電力が存在することを考慮して、それぞれの相電流の電流値を仮定する精度の向上を図ることができる。
【0074】
設定部402は、3つの配電線における線電流間の電流値の不均衡度合いを示す指標値を評価する評価関数を用いた数理計画問題を設定する。指標値は、例えば、3つの配電線における線電流間の電流値の差分の統計値である。統計値は、例えば、最小値、最大値、平均値、中央値、または、最頻値などである。指標値は、例えば、時間区間ごとの3つの配電線における線電流間の電流値の差分の最大値に基づく対象期間における当該最大値の統計値であってもよい。
【0075】
数理計画問題は、それぞれの接続相における相電流のうち、他の接続相に移し替える相電流の割合を、パラメータとして含む。これにより、設定部402は、指標値を最小化するための数理計画問題を設定することができる。設定部402は、数理計画問題により、それぞれの接続相における相電流のうち、他の接続相に移し替える相電流の割合を算出可能にすることができる。
【0076】
設定部402は、3つの配電線における線電流間の電流値の対象期間における不均衡度合いを示す指標値を評価する評価関数を用いた数理計画問題を設定してもよい。これにより、設定部402は、不均衡度合いを最小化するための数理計画問題を設定することができる。設定部402は、数理計画問題により、それぞれの接続相における相電流のうち、他の接続相に移し替える相電流の割合を算出可能にすることができる。
【0077】
設定部402は、接続相における相電流のうち、他の接続相に移し替える相電流の割合が大きいほど、指標値に対する評価が悪化するよう作用するペナルティ項を含めた評価関数を用いて、数理計画問題を設定してもよい。これにより、設定部402は、指標値を最小化するよう、それぞれの接続相における相電流のうち、他の接続相に移し替える相電流の割合を算出可能にすることができる。設定部402は、それぞれの接続相における相電流のうち、他の接続相に移し替える相電流の割合が小さくなるようにすることができる。設定部402は、接続相における相電流のうち、他の接続相に移し替える相電流の割合が小さいほど、指標値に対する評価が悪化するよう作用するペナルティ項を含めた評価関数を用いて、数理計画問題を設定してもよい。
【0078】
求解部403は、取得したそれぞれの配電線における線電流の電流値と、設定したそれぞれの接続相における相電流の電流値に基づいて、設定した数理計画問題を解く。求解部403は、例えば、ソルバーを用いて、設定した数理計画問題を解く。
【0079】
求解部403は、数理計画問題を解くことにより、指標値を最小化するよう、それぞれの接続相における相電流のうち、他の接続相に移し替える相電流の割合を算出する。これにより、求解部403は、作業者が、指標値がどの程度まで小さくなるかを把握可能にすることができる。求解部403は、作業者が、どの程度の割合で、トランス130を接続する接続相を切り替えることが好ましいかを把握可能にすることができる。求解部403は、トランス130を接続する接続相を切り替える有効性を評価可能にすることができる。
【0080】
出力部404は、少なくともいずれかの機能部の処理結果を出力する。出力形式は、例えば、ディスプレイへの表示、プリンタへの印刷出力、ネットワークI/F303による外部装置への送信、または、メモリ302や記録媒体305などの記憶領域への記憶である。これにより、出力部404は、少なくともいずれかの機能部の処理結果を利用者に通知可能にし、情報処理装置100の利便性の向上を図ることができる。
【0081】
出力部404は、例えば、算出した割合を、作業者が参照可能に出力する。これにより、出力部404は、作業者が、どの程度の割合で、トランス130を接続する接続相を切り替えることが好ましいかを把握可能にすることができる。
【0082】
出力部404は、算出した割合の組み合わせに対応する指標値を、作業者が参照可能に出力する。これにより、出力部404は、作業者が、指標値がどの程度まで小さくなるかを把握可能にすることができる。
【0083】
(情報処理装置100の第1の動作例)
次に、情報処理装置100の第1の動作例について説明する。情報処理装置100は、期間内の区間jにおける、線電流間の電流値の不均衡度合いを示すアンバランス指標値Ujを利用する。jは、区間に割り振られた番号である。なお、区間jは、例えば、幅を持たない時刻に対応させてもよい。アンバランス指標値Ujは、例えば、下記式(1)によって定義される。
【0084】
【数1】
【0085】
x,j,x∈{a,b,c}は、区間jにおける、x線における線電流の電流値である。アンバランス指標値Ujは、下記式(2)および下記式(3)によって定義されていてもよい。
【0086】
【数2】
【0087】
【数3】
【0088】
ここでは、情報処理装置100は、上記式(2)によって定義されるアンバランス指標値Ujを利用するとする。ここで、図5の説明に移行し、アンバランス指標値Ujに基づく、最小化する指標値の一例について説明する。
【0089】
図5は、指標値の一例を示す説明図である。図5に示すように、指標値は、例えば、期間内のアンバランス指標値Ujの最大値Uである。指標値は、例えば、期間内のアンバランス指標値Ujの平均値Mであってもよい。ここでは、情報処理装置100は、指標値として、期間内のアンバランス指標値Ujの最大値Uを利用するとする。
【0090】
また、情報処理装置100は、接続相情報を利用しない。このため、情報処理装置100は、接続相xの相電流のうち、他の接続相yに移し替える相電流の割合tx y,x,y∈{ab,bc,ca}を、線電流間の電流値の不均衡度合いを抑制するための最小化問題のパラメータとして利用するとする。
【0091】
ここで、線電流の電流値Ix,jと、相電流の電流値Iy,jと、割合tx yと、残余電流の電流値Ix,j resとの関係性は、下記式(4)~下記式(9)によって定義される。
【0092】
【数4】
【0093】
【数5】
【0094】
【数6】
【0095】
【数7】
【0096】
【数8】
【0097】
【数9】
【0098】
ここで、情報処理装置100は、接続相情報を利用しない。このため、相電流の電流値Iy,jと、残余電流の電流値Ix,j resとを仮定することが望まれる。上記式(4)は、下記式(10)に変形される。ここで、下記式(11)に示すように、Hjは、一定である。
【0099】
【数10】
【0100】
【数11】
【0101】
ここで、情報処理装置100は、区間jにおける、線電流の電流値Ix,jの初期値Ix,j 0を、開閉器201から取得可能である。残余電流の電流値Ix,j resは、線電流の電流値Ix,jの初期値Ix,j 0を用いて、下記式(12)によって定義される。
【0102】
【数12】
【0103】
情報処理装置100は、電力計141から、区間jにおける、配電対象140における需要電力を取得可能であり、取得した需要電力を足し合わせることにより、区間jにおける、需要電力の総量Pj totを算出可能である。需要電力の総量Pj totに対応する電流値Ij lowが、それぞれの相電流の電流値Iy,jに均等に分割されると仮定すれば、需要電力の総量Pj totと、相電流の電流値Iy,jとの関係は、下記式(13)によって定義される。
【0104】
【数13】
【0105】
上記式(13)を、上記式(12)に適用すると、下記式(14)が成立する。
【0106】
【数14】
【0107】
情報処理装置100は、上記式(13)に従って、相電流の電流値Iy,jを仮定することができる。情報処理装置100は、上記式(14)に従って、残余電流の電流値Ix,j resを仮定することができる。残余電流の電流値Ix,j resは、トランス130の接続相を切り替える影響を受けないため、すべてのjに対して定数として扱ってよい。
【0108】
ここでは、需要電力の総量Pj totに対応する電流値Ij lowが、それぞれの相電流の電流値Iy,jに均等に分割されると仮定し、相電流の電流値Iy,jを仮定する場合について説明したが、これに限らない。例えば、需要電力の総量Pj totに対応する電流値Ij lowが、それぞれの相電流の電流値Iy,jに均等に分割されると仮定せずに、相電流の電流値Iy,jを仮定する場合があってもよい。
【0109】
次に、図6を用いて、需要電力の総量Pj totに対応する電流値Ij lowが、それぞれの相電流の電流値Iy,jに均等に分割されると仮定しない場合における、相電流の電流値Iy,jに関する定式化の一例について説明する。
【0110】
図6は、相電流の電流値Iy,jに関する定式化の一例を示す説明図である。図6に示すように、接続相に関する消費電力値Px,x∈{ab,bc,ca}の組み合わせのパターンとしては、パターンAとパターンBとパターンCとが考えられる。
【0111】
パターンAは、それぞれの接続相に関する消費電力値Pxが、正の値であるパターンである。パターンBは、それぞれの接続相に関する消費電力値Pxが、負の値であるパターンである。消費電力値Pxが負であるとは、接続相に接続されたトランス130を介して配電する1以上の配電対象140において、消費電力量の総量より発電量の総量が大きいことを示す。パターンCは、いずれかの接続相に関する消費電力値Pxが、正の値であり、他の接続相に関する消費電力値Pxが、負の値であるパターンである。
【0112】
パターンAでは、需要電力の総量Pj totに対応するそれぞれの接続相に関する消費電力値Pxの和の絶対値|Pab+Pbc+Pca|は、それぞれの接続相に関する消費電力値Pxの絶対値の和|Pab|+|Pbc|+|Pca|と一致する。
【0113】
同様に、パターンBでは、需要電力の総量Pj totに対応するそれぞれの接続相に関する消費電力値Pxの和の絶対値|Pab+Pbc+Pca|は、それぞれの接続相に関する消費電力値Pxの絶対値の和|Pab|+|Pbc|+|Pca|と一致する。
【0114】
従って、パターンAおよびパターンBでは、需要電力の総量Pj totと、それぞれの接続相における需要電力に割り振り可能な需要電力の総量=補正能力とは、一致することになる。このため、需要電力の総量Pj totに対応する電流値Ij lowが、それぞれの相電流の電流値Iy,jに均等に分割されるという仮定が成立すると考えられる。
【0115】
一方で、パターンCでは、需要電力の総量Pj totに対応するそれぞれの接続相に関する消費電力値Pxの和の絶対値|Pab+Pbc+Pca|は、それぞれの接続相に関する消費電力値Pxの絶対値の和|Pab|+|Pbc|+|Pca|より小さくなる。
【0116】
従って、パターンCでは、需要電力の総量Pj totが、それぞれの接続相における需要電力に割り振り可能な需要電力の総量=補正能力よりも小さく見積もられてしまう。このため、需要電力の総量Pj totに対応する電流値Ij lowが、それぞれの相電流の電流値Iy,jに均等に分割されるという仮定が成立するとは限らない。
【0117】
そこで、情報処理装置100は、複数のトランス130を、ランダムに、それぞれの接続相に対応するグループに分類する。情報処理装置100は、グループの要素数が設定されていれば、当該要素数に基づいて、複数のトランス130を、それぞれの接続相に対応するグループに分類する。
【0118】
情報処理装置100は、区間jにおける、線電流の電流値Ix,jの初期値Ix,j 0を、開閉器201から取得可能である。残余電流の電流値Ix,j resは、線電流の電流値Ix,jの初期値Ix,j 0を用いて、下記式(15)によって定義される。
【0119】
【数15】
【0120】
情報処理装置100は、電力計141から、区間jにおける、配電対象140における需要電力を取得可能である。情報処理装置100は、それぞれの接続相に対応するグループに分類したトランス130を介して配電する1以上の配電対象140における需要電力を足し合わせることにより、当該接続相に対応する需要電力の総量Pj y,y∈{ab,bc,ca}を算出する。
【0121】
情報処理装置100は、それぞれの接続相に対応する需要電力の総量Pj yに基づいて、それぞれの相電流の電流値Iy,jを仮定する。それぞれの接続相に対応する需要電力の総量Pj yと、それぞれの接続相に対応する相電流の電流値Iy,jとの関係は、下記式(16)によって定義される。
【0122】
【数16】
【0123】
上記式(16)を、上記式(15)に適用すると、下記式(17)が成立する。
【0124】
【数17】
【0125】
情報処理装置100は、上記式(16)に従って、相電流の電流値Iy,jを仮定することができる。情報処理装置100は、上記式(17)に従って、残余電流の電流値Ix,j resを仮定することができる。残余電流の電流値Ix,j resは、トランス130の接続相を切り替える影響を受けないため、定数として扱ってよい。
【0126】
以上より、情報処理装置100は、指標値Uを最小化するよう、割合tx yを求めるための最小化問題を設定する。最小化問題は、例えば、minimizet:Uとして、下記式(18)~下記式(25)によって定義される。
【0127】
【数18】
【0128】
なお、上記式(18)の右辺の分母が絶対値である理由は、トランス二次側に太陽光などによる発電設備が設置されている場合の電流値の扱い方によって、Hjが負の値になることが考えられるためである。Ij maxは、Ia,jと、Ib,jと、Ic,jとのうちの最大値である。Ij maxと、Ia,jと、Ib,jと、Ic,jとの関係は、下記式(19)によって定義される。Ij minは、Ia,jと、Ib,jと、Ic,jとのうちの最小値である。Ij minと、Ia,jと、Ib,jと、Ic,jとの関係は、下記式(20)によって定義される。Hjは、下記式(21)によって定義される。
【0129】
【数19】
【0130】
【数20】
【0131】
【数21】
【0132】
【数22】
【0133】
【数23】
【0134】
上記式(23)は、割合tx yに関する制約を示す。
【0135】
【数24】
【0136】
上記式(24)は、割合tx yに関する制約を示す。
【0137】
【数25】
【0138】
情報処理装置100は、設定した最小化問題を解くことにより、最小化した指標値Uと、指標値Uを最小化する割合tx yの組み合わせとを算出する。情報処理装置100は、算出した指標値Uと、算出した割合tx yの組み合わせとを、作業者が参照可能に出力する。
【0139】
これにより、情報処理装置100は、作業者が、回線110においてトランス130の接続相をどの程度切り替えることが好ましいかを把握可能にすることができ、線電流間の電流値の不均衡の解消を図る際にかかるコストを見積もり易くすることができる。情報処理装置100は、作業者が、線電流間の電流値の不均衡をどの程度解消可能であるかを見積もり易くすることができる。このため、情報処理装置100は、接続相情報を利用せずとも、トランス130を接続する接続相を切り替えることの有効性を予め評価可能にすることができる。
【0140】
情報処理装置100は、回線110が複数存在しても、作業者が、いずれの回線110において、トランス130を接続する接続相を切り替えることが好ましいかを判断可能にすることができる。情報処理装置100は、回線110が複数存在しても、トランス130を接続する接続相を切り替える回線110を適切に絞り込み易くすることができる。情報処理装置100は、回線110が複数存在しても、トランス130を接続する接続相を切り替える工事を実際に行う回線110を適切に絞り込み易くすることができる。
【0141】
(情報処理装置100の第2の動作例)
次に、情報処理装置100の第2の動作例について説明する。第2の動作例では、情報処理装置100は、指標値として、期間内のアンバランス指標値Ujの平均値Mを利用するとする。このため、情報処理装置100は、指標値Mを最小化するよう、割合tx yを求めるための最小化問題を設定する。最小化問題は、例えば、minimizet:Mとして、下記式(26)と、上記式(19)~上記式(25)によって定義される。
【0142】
【数26】
【0143】
これにより、情報処理装置100は、作業者が、回線110においてトランス130の接続相をどの程度切り替えることが好ましいかを把握可能にすることができ、線電流間の電流値の不均衡の解消を図る際にかかるコストを見積もり易くすることができる。情報処理装置100は、作業者が、線電流間の電流値の不均衡をどの程度解消可能であるかを見積もり易くすることができる。このため、情報処理装置100は、接続相情報を利用せずとも、トランス130を接続する接続相を切り替えることの有効性を予め評価可能にすることができる。
【0144】
情報処理装置100は、回線110が複数存在しても、作業者が、いずれの回線110において、トランス130を接続する接続相を切り替えることが好ましいかを判断可能にすることができる。情報処理装置100は、回線110が複数存在しても、トランス130を接続する接続相を切り替える回線110を適切に絞り込み易くすることができる。情報処理装置100は、回線110が複数存在しても、トランス130を接続する接続相を切り替える工事を実際に行う回線110を適切に絞り込み易くすることができる。
【0145】
(情報処理装置100の第3の動作例)
次に、情報処理装置100の第3の動作例について説明する。第3の動作例では、割合tx y,x=yが比較的大きくなるようにしつつ、指標値Mを最小化することが望まれる。このため、情報処理装置100は、指標値Uを最小化するよう、割合tx yを求めるための最小化問題を設定するにあたり、評価関数にペナルティ項を含めておく。最小化問題は、例えば、minimizetの対象として下記式(27)を設定した上で、上記式(18)~上記式(25)によって定義される。なお、下記式(27)のλは、ペナルティ項に与える重み係数である。
【0146】
【数27】
【0147】
これにより、情報処理装置100は、回線110においてトランス130の接続相を切り替える回数が少なくなるよう、割合tx yを算出することができる。このため、情報処理装置100は、線電流間の電流値の不均衡の解消を図る際にかかるコストを低減し易くすることができる。
【0148】
情報処理装置100は、作業者が、回線110においてトランス130の接続相をどの程度切り替えることが好ましいかを把握可能にすることができ、線電流間の電流値の不均衡の解消を図る際にかかるコストを見積もり易くすることができる。情報処理装置100は、作業者が、線電流間の電流値の不均衡をどの程度解消可能であるかを見積もり易くすることができる。このため、情報処理装置100は、接続相情報を利用せずとも、トランス130を接続する接続相を切り替えることの有効性を予め評価可能にすることができる。
【0149】
情報処理装置100は、回線110が複数存在しても、作業者が、いずれの回線110において、トランス130を接続する接続相を切り替えることが好ましいかを判断可能にすることができる。情報処理装置100は、回線110が複数存在しても、トランス130を接続する接続相を切り替える回線110を適切に絞り込み易くすることができる。情報処理装置100は、回線110が複数存在しても、トランス130を接続する接続相を切り替える工事を実際に行う回線110を適切に絞り込み易くすることができる。次に、図7の説明に移行し、情報処理装置100による効果の一例について説明する。
【0150】
図7は、情報処理装置100による効果の一例を示す説明図である。図7において、情報処理装置100は、割合tx yの許容率を設定し、最小化問題を解くとする。図7のグラフ700に示すように、情報処理装置100は、割合tx yが大きくなることを許容すれば、指標値Uを最小化することができる。
【0151】
(全体処理手順)
次に、図8を用いて、情報処理装置100が実行する、全体処理手順の一例について説明する。全体処理は、例えば、図3に示したCPU301と、メモリ302や記録媒体305などの記憶領域と、ネットワークI/F303とによって実現される。
【0152】
図8は、全体処理手順の一例を示すフローチャートである。図8において、情報処理装置100は、線電流の初期値の時系列Ia,j 0,Ib,j 0,Ic,j 0(j=1,2,3,・・・,m)を取得する(ステップS801)。次に、情報処理装置100は、低圧需要の総量の時系列Pj tot(j=1,2,3,・・・,m)を取得する(ステップS802)。
【0153】
次に、情報処理装置100は、各相電流の初期値の時系列Iab,j,Ibc,j,Ica,j(j=1,2,3,・・・,m)を算出する(ステップS803)。次に、情報処理装置100は、各残余電流の初期値の時系列Ia,j res,Ib,j res,Ic,j res(j=1,2,3,・・・,m)を算出する(ステップS804)。
【0154】
次に、情報処理装置100は、各相電流の初期値の時系列Iab,j,Ibc,j,Ica,jと、各残余電流の初期値の時系列Ia,j res,Ib,j res,Ic,j resとに基づいて、LP問題を設定する(ステップS805)。そして、情報処理装置100は、ソルバーを利用して、設定したLP問題を解く(ステップS806)。
【0155】
次に、情報処理装置100は、タイムアウトしたか否かを判定する(ステップS807)。ここで、タイムアウトした場合(ステップS807:Yes)、情報処理装置100は、解なしの通知を出力し、全体処理を終了する。一方で、タイムアウトしない場合(ステップS807:No)、情報処理装置100は、ステップS808の処理に移行する。
【0156】
ステップS808では、情報処理装置100は、求解成功したか否かを判定する(ステップS808)。ここで、求解成功していない場合(ステップS808:No)、情報処理装置100は、ステップS807の処理に戻る。一方で、求解成功した場合(ステップS808:Yes)、情報処理装置100は、ステップS809の処理に移行する。
【0157】
ステップS809では、情報処理装置100は、切替電流率tと最小化した指標値Uとを出力する(ステップS809)。そして、情報処理装置100は、全体処理を終了する。これにより、情報処理装置100は、接続相情報を利用せずとも、トランス130を接続する接続相を切り替えることの有効性を予め評価可能にすることができる。
【0158】
ここで、情報処理装置100は、図8の一部ステップの処理の順序を入れ替えて実行してもよい。例えば、ステップS801,S802の処理の順序は入れ替え可能である。
【0159】
以上説明したように、情報処理装置100によれば、それぞれ位相が異なる線電流が流れる3つの配電線を用いて配電される複数の配電対象140における需要電力の総量を取得することができる。情報処理装置100によれば、3つの配電線のうち、それぞれ異なる2つの配電線の組み合わせに対応する3つの接続相のそれぞれの接続相における相電流に対して、取得した需用電力の総量を分割することにより得られた電流値を設定することができる。情報処理装置100によれば、3つの配電線における線電流間の電流値の不均衡度合いを示す指標値を評価する評価関数を用いた数理計画問題を設定することができる。情報処理装置100によれば、それぞれの接続相における相電流の電流値に基づいて、設定した数理計画問題を解くことにより、不均衡度合いを最小化するよう、それぞれの接続相における相電流のうち、他の接続相に移し替える相電流の割合を算出することができる。これにより、情報処理装置100は、トランス130を接続する接続相を切り替えることの有効性を予め評価可能にすることができる。
【0160】
情報処理装置100によれば、複数のトランス130のそれぞれのトランス130について、複数の配電対象140のうち、3つの配電線を用いて当該トランス130を介して配電される1以上の配電対象140における需要電力の総量を取得することができる。情報処理装置100によれば、複数のトランス130を3つの接続相に割り振ることができる。情報処理装置100によれば、それぞれの接続相における相電流に対して、当該接続相に割り振られたそれぞれのトランス130について取得した需要電力の総量を足し合わせることにより得られた電流値を設定することができる。これにより、情報処理装置100は、トランス130を接続する接続相を切り替えることの有効性を予め精度よく評価可能にすることができる。
【0161】
情報処理装置100によれば、対象期間内の時間区間ごとに、複数の配電対象140における需要電力の総量を取得することができる。情報処理装置100によれば、時間区間ごとに、それぞれの接続相における相電流に対して、取得した需用電力の総量を分割することにより得られた電流値を設定することができる。情報処理装置100によれば、設定したそれぞれの接続相における相電流の電流値に基づいて、3つの配電線における線電流間の電流値の対象期間における不均衡度合いを示す指標値を評価する評価関数を用いた数理計画問題を解くことができる。情報処理装置100によれば、数理計画問題を解くことにより、不均衡度合いを最小化するよう、それぞれの接続相における相電流のうち、他の接続相に移し替える相電流の割合を算出することができる。これにより、情報処理装置100は、対象期間について、不均衡度合いを最小化することができる。
【0162】
情報処理装置100によれば、評価関数に、割合が大きい(小さい)ほど指標値に対する評価が悪化するよう作用するペナルティ項を含めることができる。これにより、情報処理装置100は、トランス130を接続する接続相を切り替える回数を低減しつつ、指標値を最小化することができる。
【0163】
情報処理装置100によれば、指標値として、時間区間ごとの3つの配電線における線電流間の電流値の差分の最大値に基づく対象期間における当該最大値の統計値を採用することができる。これにより、情報処理装置100は、対象期間における線電流間の電流値の差分の最大値の統計値を最小化することができる。
【0164】
なお、本実施の形態で説明した情報処理方法は、予め用意されたプログラムをPCやワークステーションなどのコンピュータで実行することにより実現することができる。本実施の形態で説明した情報処理プログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行される。記録媒体は、ハードディスク、フレキシブルディスク、CD(Compact Disc)-ROM、MO(Magneto Optical disc)、DVD(Digital Versatile Disc)などである。また、本実施の形態で説明した情報処理プログラムは、インターネットなどのネットワークを介して配布してもよい。
【0165】
上述した実施の形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0166】
(付記1)それぞれ位相が異なる線電流が流れる3つの配電線を用いて配電される複数の配電対象における需要電力の総量を取得し、
前記3つの配電線のうち、それぞれ異なる2つの配電線の組み合わせに対応する3つの接続相のそれぞれの接続相における相電流に対して、取得した前記需用電力の総量を分割することにより得られた電流値を設定し、
設定した前記それぞれの接続相における相電流の電流値に基づいて、前記3つの配電線における前記線電流間の電流値の不均衡度合いを示す指標値を評価する評価関数を用いた数理計画問題を解くことにより、前記不均衡度合いを最小化するよう、前記それぞれの接続相における相電流のうち、他の接続相に移し替える相電流の割合を算出する、
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする情報処理プログラム。
【0167】
(付記2)前記取得する処理は、
前記3つの配電線に対して接続された複数のトランスのそれぞれのトランスについて、前記複数の配電対象のうち、前記3つの配電線を用いて当該トランスを介して配電される1以上の配電対象における需要電力の総量を取得し、
前記設定する処理は、
前記複数のトランスを前記3つの接続相に割り振り、前記それぞれの接続相における相電流に対して、当該接続相に割り振られたそれぞれのトランスについて取得した需要電力の総量を足し合わせることにより得られた電流値を設定する、ことを特徴とする付記1に記載の情報処理プログラム。
【0168】
(付記3)前記取得する処理は、
対象期間内の時間区間ごとに、前記複数の配電対象における需要電力の総量を取得し、
前記設定する処理は、
前記時間区間ごとに、前記それぞれの接続相における相電流に対して、取得した前記需用電力の総量を分割することにより得られた電流値を設定し、
前記算出する処理は、
設定した前記それぞれの接続相における相電流の電流値に基づいて、前記3つの配電線における前記線電流間の電流値の前記対象期間における不均衡度合いを示す指標値を評価する評価関数を用いた数理計画問題を解くことにより、前記不均衡度合いを最小化するよう、前記それぞれの接続相における相電流のうち、他の接続相に移し替える相電流の割合を算出する、ことを特徴とする付記1または2に記載の情報処理プログラム。
【0169】
(付記4)前記評価関数は、前記指標値と、前記割合が大きいまたは小さいほど前記指標値に対する評価が悪化するよう作用するペナルティ項とを含む、ことを特徴とする付記1~3のいずれか一つに記載の情報処理プログラム。
【0170】
(付記5)前記指標値は、前記時間区間ごとの前記3つの配電線における前記線電流間の電流値の差分の最大値に基づく前記対象期間における当該最大値の統計値である、ことを特徴とする付記3に記載の情報処理プログラム。
【0171】
(付記6)それぞれ位相が異なる線電流が流れる3つの配電線を用いて配電される複数の配電対象における需要電力の総量を取得し、
前記3つの配電線のうち、それぞれ異なる2つの配電線の組み合わせに対応する3つの接続相のそれぞれの接続相における相電流に対して、取得した前記需用電力の総量を分割することにより得られた電流値を設定し、
設定した前記それぞれの接続相における相電流の電流値に基づいて、前記3つの配電線における前記線電流間の電流値の不均衡度合いを示す指標値を評価する評価関数を用いた数理計画問題を解くことにより、前記不均衡度合いを最小化するよう、前記それぞれの接続相における相電流のうち、他の接続相に移し替える相電流の割合を算出する、
処理をコンピュータが実行することを特徴とする情報処理方法。
【0172】
(付記7)それぞれ位相が異なる線電流が流れる3つの配電線を用いて配電される複数の配電対象における需要電力の総量を取得し、
前記3つの配電線のうち、それぞれ異なる2つの配電線の組み合わせに対応する3つの接続相のそれぞれの接続相における相電流に対して、取得した前記需用電力の総量を分割することにより得られた電流値を設定し、
設定した前記それぞれの接続相における相電流の電流値に基づいて、前記3つの配電線における前記線電流間の電流値の不均衡度合いを示す指標値を評価する評価関数を用いた数理計画問題を解くことにより、前記不均衡度合いを最小化するよう、前記それぞれの接続相における相電流のうち、他の接続相に移し替える相電流の割合を算出する、
制御部を有することを特徴とする情報処理装置。
【符号の説明】
【0173】
100 情報処理装置
110 回線
111 配電線
120 配電設備
130 トランス
140 配電対象
141 電力計
200 配電システム
201 開閉器
210 ネットワーク
300 バス
301 CPU
302 メモリ
303 ネットワークI/F
304 記録媒体I/F
305 記録媒体
400 記憶部
401 取得部
402 設定部
403 求解部
404 出力部
700 グラフ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8