(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132122
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】ビル設備の故障復旧支援システム、ビル設備の故障復旧支援方法
(51)【国際特許分類】
G05B 23/02 20060101AFI20230914BHJP
【FI】
G05B23/02 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022037273
(22)【出願日】2022-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】五嶋 匡
(72)【発明者】
【氏名】厚沢 輝佳
(72)【発明者】
【氏名】野中 久典
【テーマコード(参考)】
3C223
【Fターム(参考)】
3C223AA21
3C223BA03
3C223CC02
3C223DD03
3C223FF04
3C223FF24
3C223FF25
3C223FF32
3C223FF43
3C223FF53
3C223GG01
3C223HH08
(57)【要約】
【課題】
故障対応にあたる保守員の経験値と故障原因機器の特定難易度に応じて保守員に提示する出力情報を変更可能なビル設備の故障復旧支援システムを提供する。
【解決手段】
ビル設備の故障復旧を支援する故障復旧支援システムであって、故障履歴データベース60と、類似故障事例検索部61と、機器対応経験判定部63と、トラブルシューティング手順書64と、故障復旧支援情報判定部65と、を備えることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
保守員が所持する保守端末を有するビル設備の故障復旧を支援する故障復旧支援システムであって、
過去に発生した故障事例に関するデータが格納された故障履歴データベースと、
前記保守端末に登録された現地故障状態情報を用いて類似する故障事例を前記故障履歴データベースから抽出する類似故障事例検索部と、
前記類似故障事例検索部から出力された各原因機器候補について、前記保守員が過去に故障対応した経験があるか否かを前記故障履歴データベースから検索して、故障対応経験が不足しているか否かを判定する機器対応経験判定部と、
前記ビル設備の仕様、および、エラーコードまたは故障状態毎に予め作成されたトラブルシューティング手順書と、
前記機器対応経験判定部によって経験が不足していないと判定された場合は、前記類似故障事例検索部で検索された類似故障事例をもとに原因機器候補を出力し、故障対応した経験が不足していると判定された場合は、当該保守員に対して前記現地故障状態情報に合致するトラブルシューティング手順書に従った故障調査を出力する故障復旧支援情報判定部と、
を備えることを特徴とするビル設備の故障復旧支援システム。
【請求項2】
請求項1に記載のビル設備の故障復旧支援システムであって、
前記類似故障事例検索部は、前記故障履歴データベースから抽出した故障事例を前記ビル設備を構成する機器毎に集計して故障事例が多い機器から順に確率付で原因機器候補群として出力することを特徴とするビル設備の故障復旧支援システム。
【請求項3】
請求項1に記載のビル設備の故障復旧支援システムであって、
前記類似故障事例検索部から出力された各原因機器候補の確率、または原因機器候補の過去の平均調査時間に基づき、故障の原因機器特定の難易度を算出する故障復旧難易度判定部を備えることを特徴とするビル設備の故障復旧支援システム。
【請求項4】
請求項3に記載のビル設備の故障復旧支援システムであって、
前記故障復旧支援情報判定部は、前記類似故障事例検索部から出力された原因機器候補群と、前記故障復旧難易度判定部が算出した原因機器特定の難易度と、前記機器対応経験判定部が集計した過去の対応経験値とに基づき、出力情報を選択することを特徴とするビル設備の故障復旧支援システム。
【請求項5】
請求項3に記載のビル設備の故障復旧支援システムであって、
前記故障復旧難易度判定部は、故障原因の確率が所定以上の原因機器候補の確率の総和に基づき、原因機器特定の難易度の高低を判定し、
前記故障復旧支援情報判定部は、前記故障復旧難易度判定部が判定した難易度が低い場合は、前記保守員に対して原因機器候補群に基づく故障調査を出力し、難易度が高い場合は、前記保守員に対して前記現地故障状態情報に合致するトラブルシューティング手順書に従った故障調査を出力することを特徴とするビル設備の故障復旧支援システム。
【請求項6】
請求項3に記載のビル設備の故障復旧支援システムであって、
前記故障復旧難易度判定部は、故障原因の確率が所定以上の原因機器候補の過去の平均調査時間の総和に基づき、原因機器特定の難易度の高低を判定し、
前記故障復旧支援情報判定部は、前記故障復旧難易度判定部が判定した難易度が低い場合は、前記保守員に対して原因機器候補群に基づく故障調査を出力し、難易度が高い場合は、前記保守員に対して前記現地故障状態情報に合致するトラブルシューティング手順書に従った故障調査を出力することを特徴とするビル設備の故障復旧支援システム。
【請求項7】
請求項1に記載のビル設備の故障復旧支援システムであって、
前記保守員は、前記保守端末を介して、自身の故障対応スキルを含む保守員情報および前記現地故障状態情報を、前記ビル設備の故障復旧支援システムへ送信することを特徴とするビル設備の故障復旧支援システム。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載のビル設備の故障復旧支援システムであって、
前記ビル設備は、昇降機、冷熱設備、入退管理システムの少なくともいずれかを含むことを特徴とするビル設備の故障復旧支援システム。
【請求項9】
ビル設備の故障復旧を支援する故障復旧支援方法であって、
(a)保守員が、現地で確認した現地故障状態情報および自身の故障対応スキルを含む保守員情報を保守端末に登録し、監視センタへ送信するステップと、
(b)前記現地故障状態情報に基づき、過去に発生した故障事例に関するデータが格納された故障履歴データベースから類似する故障事例を抽出し、当該抽出した故障事例を前記ビル設備を構成する機器毎に集計して故障事例が多い機器から順に確率付で原因機器候補群として出力するステップと、
(c)前記保守員情報に基づき、前記(b)ステップで出力された各原因機器候補について、前記保守員が過去に故障対応した経験があるか否かを前記故障履歴データベースから検索して、故障対応経験の有無を集計するステップと、
(d)前記(b)ステップで出力された各原因機器候補の確率、または原因機器候補の過去の平均調査時間に基づき、当該故障の原因機器特定の難易度を算出するステップと、
(e)前記(c)ステップで集計した過去の対応経験値に基づき、前記保守員に対して、前記原因機器候補群に基づく故障調査、または、前記現地故障状態情報に合致するトラブルシューティング手順書に従った故障調査のいずれを出力するかを判定するステップと、
を有することを特徴とするビル設備の故障復旧支援方法。
【請求項10】
請求項9に記載のビル設備の故障復旧支援方法であって、
前記(e)ステップにおいて、前記保守員が過去に故障対応した経験値がある場合は、当該保守員に対して前記原因機器候補群に基づく故障調査を出力し、故障対応した経験がない場合は、当該保守員に対して前記現地故障状態情報に合致するトラブルシューティング手順書に従った故障調査を出力することを特徴とするビル設備の故障復旧支援方法。
【請求項11】
請求項9に記載のビル設備の故障復旧支援方法であって、
前記(d)ステップにおいて、故障原因の確率が所定以上の原因機器候補の確率の総和に基づき、原因機器特定の難易度の高低を判定し、
前記(e)ステップにおいて、前記(d)ステップで算出した難易度が低い場合は、前記保守員に対して前記原因機器候補群に基づく故障調査を出力し、難易度が高い場合は、前記保守員に対して前記現地故障状態情報に合致するトラブルシューティング手順書に従った故障調査を出力することを特徴とするビル設備の故障復旧支援方法。
【請求項12】
請求項9に記載のビル設備の故障復旧支援方法であって、
前記(d)ステップにおいて、故障原因の確率が所定以上の原因機器候補の過去の平均調査時間の総和に基づき、原因機器特定の難易度の高低を判定し、
前記(e)ステップにおいて、前記(d)ステップで算出した難易度が低い場合は、前記保守員に対して前記原因機器候補群に基づく故障調査を出力し、難易度が高い場合は、前記保守員に対して前記現地故障状態情報に合致するトラブルシューティング手順書に従った故障調査を出力することを特徴とするビル設備の故障復旧支援方法。
【請求項13】
請求項9から12のいずれか1項に記載のビル設備の故障復旧支援方法であって、
前記ビル設備は、昇降機、冷熱設備、入退管理システムの少なくともいずれかを含むことを特徴とするビル設備の故障復旧支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビル管理システムの構成とその制御に係り、特に、エレベータなどの保全対象機器が故障した際の復旧を支援する故障復旧支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば複数の機器で構成される昇降機において、従来、故障発生時の早期復旧を目的として、故障状態や昇降機自身が発報するエラーコードを元にして予め作成されたトラブルシューティング手順書を故障対応にあたる保守員に提示する技術が利用されている。
【0003】
本技術分野の背景技術として、例えば、特許文献1のような技術がある。特許文献1には、過去の故障履歴の中から、エラーコードや故障状態を検索条件として、当該故障と類似する故障履歴を抽出・集計を行い、抽出した類似故障履歴の中で頻度の高い故障原因機器ほど、当該故障の原因機器である可能性が高いものとして原因機器候補別に確率を算出して故障調査の順序を決定する技術が開示されている。
【0004】
また、特許文献1には、算出した確率に対して、センサーなどで常時計測してデータベース(DB)に蓄積した部品毎の稼働データを用いて、当該故障号機の部品稼働データと、同型部品の異常モデルデータとの類似度を算出して、前述した原因機器である確率を補正して故障調査順序を入れ替えることより、故障調査の効率向上を図ることも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1では、故障対応にあたる保守員の経験値や作業難易度に基づいて適切な作業指示を行うことができていないために、経験の浅い保守員は、原因機器候補のみを提示されても故障調査手順が分からなかったり、その一方で経験豊富な保守員に対して、トラブルシューティング手順書通りに故障調査をさせることで、不必要な作業をさせてしまうなど、故障調査の効率を低下させてしまう可能性があり、改善の余地がある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、故障対応にあたる保守員の経験値と故障原因機器の特定難易度に応じて保守員に提示する出力情報を変更可能なビル設備の故障復旧支援システム及びビル設備の故障復旧支援方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、保守員が所持する保守端末を有するビル設備の故障復旧を支援する故障復旧支援システムであって、過去に発生した故障事例に関するデータが格納された故障履歴データベースと、前記保守端末に登録された現地故障状態情報を用いて類似する故障事例を前記故障履歴データベースから抽出する類似故障事例検索部と、前記類似故障事例検索部から出力された各原因機器候補について、前記保守員が過去に故障対応した経験があるか否かを前記故障履歴データベースから検索して、故障対応経験が不足しているか否かを判定する機器対応経験判定部と、前記ビル設備の仕様、および、エラーコードまたは故障状態毎に予め作成されたトラブルシューティング手順書と、前記機器対応経験判定部によって経験が不足していないと判定された場合は、前記類似故障事例検索部で検索された類似故障事例をもとに原因機器候補を出力し、故障対応した経験が不足していると判定された場合は、当該保守員に対して前記現地故障状態情報に合致するトラブルシューティング手順書に従った故障調査を出力する故障復旧支援情報判定部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、ビル設備の故障復旧を支援する故障復旧支援方法であって、(a)保守員が、現地で確認した現地故障状態情報および自身の故障対応スキルを含む保守員情報を保守端末に登録し、監視センタへ送信するステップと、(b)前記現地故障状態情報に基づき、過去に発生した故障事例に関するデータが格納された故障履歴データベースから類似する故障事例を抽出し、当該抽出した故障事例を前記ビル設備を構成する機器毎に集計して故障事例が多い機器から順に確率付で原因機器候補群として出力するステップと、(c)前記保守員情報に基づき、前記(b)ステップで出力された各原因機器候補について、前記保守員が過去に故障対応した経験があるか否かを前記故障履歴データベースから検索して、故障対応経験の有無を集計するステップと、(d)前記(b)ステップで出力された各原因機器候補の確率、または原因機器候補の過去の平均調査時間に基づき、当該故障の原因機器特定の難易度を算出するステップと、(e)前記(c)ステップで集計した過去の対応経験値に基づき、前記保守員に対して、前記原因機器候補群に基づく故障調査、または、前記現地故障状態情報に合致するトラブルシューティング手順書に従った故障調査のいずれを出力するかを判定するステップと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、故障対応にあたる保守員の経験値と故障原因機器の特定難易度に応じて保守員に提示する出力情報を変更可能なビル設備の故障復旧支援システム及びビル設備の故障復旧支援方法を実現することができる。
【0011】
これにより、ビル設備を構成する保全対象機器が故障した際の復旧作業の効率向上が図れる。
【0012】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施例1に係る昇降機故障復旧支援システムの全体概要を示す図である。
【
図2】
図1の昇降機故障復旧支援システムの動作を示すフローチャートである。
【
図3】
図1の機器対応経験判定部63による故障対応経験判定を示す図である。
【
図4】
図1の故障復旧難易度判定部62による故障原因機器の特定難易度判定を示す図である。
【
図5】
図1の故障復旧難易度判定部62による故障原因機器の特定難易度判定を示す図である。
【
図6】本発明の実施例2および実施例3に係るビル設備故障復旧支援システムの全体概要を示す図である。
【
図7】
図6の機器対応経験判定部63による故障対応経験判定を示す図である。
【
図8】
図6の故障復旧難易度判定部62による故障原因機器の特定難易度判定を示す図である。
【
図9】
図6の故障復旧難易度判定部62による故障原因機器の特定難易度判定を示す図である。
【
図10】本発明の実施例3に係るビル管理設備(入退管理システム)の機器対応経験判定部63による故障対応経験判定を示す図である。
【
図11】ビル管理設備(入退管理システム)の故障復旧難易度判定部62による故障原因機器の特定難易度判定を示す図である。
【
図12】ビル管理設備(入退管理システム)の故障復旧難易度判定部62による故障原因機器の特定難易度判定を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。なお、各図面において同一の構成については同一の符号を付し、重複する説明についてはその詳細な説明は省略する。
【実施例0015】
図1から
図5を参照して、本発明の実施例1に係るビル設備の故障復旧支援システム及びビル設備の故障復旧支援方法について説明する。本実施例では、ビル設備として、エレベータ(昇降機)の例を用いて説明する。
【0016】
図1は、本実施例の昇降機故障復旧支援システムの全体概要を示す図である。
【0017】
図1に示すように、このシステムは、異常音などの不具合を含む故障が発生した昇降機1の故障復旧を支援するためのシステムであり、昇降機1から離れている監視センタ2と、保守員3が携帯する携帯端末4とによって構成される。
【0018】
昇降機1は、昇降機1全体の運転制御を司る制御盤10と、制御盤10の異常信号出力端子に接続された遠隔監視装置11とを備え、例えば、運転制御の中で昇降機1の着床位置に狂いが生じるなどの異常が見つかれば、監視センタ2に、自機の製造番号等の識別情報と、現在の故障状態を表すエラーコードとを含む異常発報を出力する。
【0019】
監視センタ2は、昇降機1に装備される遠隔監視装置11と、専用回線やインターネット、その他の有線伝送ラインまたは無線伝送ラインによって接続されている。監視センタ2は、監視センタ通信手段20を備えており、遠隔監視装置11から送信される昇降機1の識別情報、エラーコードを含む異常発報を受信し、受電対応するオペレータ21または自動出動指示装置22によって、保守員3に携帯端末4を通じて故障対応の出動指示を行う機能を備える。
【0020】
また、異常音や振動などの緊急性の低い故障で異常発報がない場合においても、住人または管理人5などの利用客からオンコールがあった際には、監視センタ2は、住人または管理人5から入手した情報をもとに、保守員3に携帯端末4を通じて故障対応の出動指示を行う機能を備える。
【0021】
故障対応に出動した保守員3は、携帯端末4に対して、自身の故障対応スキルを含む保守員情報登録30ならびに、住人または管理人5などの利用客へのヒアリング結果および保守員3が直接確認した昇降機1の故障状態に基づく故障状態情報登録31を行うことで、携帯端末4から監視センタ2へ保守員情報および現地故障状態情報を送信することができる。
【0022】
監視センタ2には故障復旧支援部6が設置されている。故障復旧支援部6は、
図1に示すように、監視センタ2の内部に配置されていても良く、監視センタ通信手段20を含む通信手段を介して保守員3が付帯する携帯端末4と電話回線やインターネット、その他の有線伝送ラインまたは無線伝送ラインによって接続された独立したシステムとして配置されていても良い。
【0023】
故障復旧支援部6は、保守員3から送信される保守員情報および現地故障状態情報を入力として、トラブルシューティング手順書および原因機器候補などの故障復旧支援情報を携帯端末4に出力する機能を備える。
【0024】
また、故障復旧支援部6は、保守管理する全ての昇降機1において過去に発生した個々の故障事例について、少なくとも昇降機自身が発報するエラーコード、故障状態、故障原因機器、故障対応者、故障原因機器の特定に要した時間、昇降機1の仕様情報などが格納された故障履歴データベース(以下DBと記す)60を備える。
【0025】
また、故障復旧支援部6は、保守員3が現地で確認して登録した現地故障状態情報を検索条件として、類似する故障事例を故障履歴DB60から抽出し、抽出した故障事例を原因機器毎に集計して故障事例が多い機器から順に確率付で原因機器候補群として出力する機能を有する類似故障事例検索部61を備える。
【0026】
また、故障復旧支援部6は、類似故障事例検索部61が出力した各原因機器候補の確率、または原因機器候補の過去の平均調査時間を元に当該故障の原因機器特定の難易度を算定する故障復旧難易度判定部62を備える。
【0027】
また、故障復旧支援部6は、類似故障事例検索部61が出力した各原因機器候補について、保守員3が過去に故障対応した経験があるか否かを故障履歴DB60から検索して、故障対応経験の有無を集計する機器対応経験判定部63を備える。
【0028】
また、故障復旧支援部6は、昇降機1の仕様、ならびにエラーコードまたは故障状態毎に予め作成し蓄積したトラブルシューティング手順書64を備える。
【0029】
また、故障復旧支援部6は、類似故障事例検索部61が判定した原因機器候補群と、故障復旧難易度判定部62が判定した難易度と、機器対応経験判定部63が集計した過去の対応経験値と、保守員3が確認した現地故障状態情報に合致するトラブルシューティング手順書64とを入力とし、保守員3が最も効率よく故障対応できる故障復旧支援情報を携帯端末4を通じて保守員3に提供する故障復旧支援情報判定部65を備える。
【0030】
故障復旧支援情報判定部65から提供された故障復旧支援情報を元に保守員3が調査した故障原因機器調査結果32は、故障復旧支援部6に入力され、故障履歴として故障履歴DB60に格納されて、将来の故障復旧作業にフィードバックされる。
【0031】
図1の昇降機故障復旧支援システムの動作について、
図2のフローチャートに沿って説明する。
【0032】
昇降機1で故障が発生し、制御盤10が異常検知した場合、制御盤10と連係関係にある遠隔監視装置11から監視センタ2のオペレータ21または自動出動指示装置22に対して、昇降機1を識別する識別情報と、エラーコードとを含む異常発報が送信される。一方、異常音など制御盤10が異常検知しない故障の場合は、住人または管理人5からオンコールがなされる(ステップS1)。
【0033】
次に、監視センタ2は、監視センタ通信手段20を介して、前述した昇降機1の識別情報と、エラーコードとを含む異常発報を受信、或いは、住人または管理人5からのオンコールを受信し、オペレータ21または自動出動指示装置22により、最寄りの保守員3に出動を指示する(ステップS2)。
【0034】
保守員3は、昇降機1が設置されている現地に到着後すぐに、自身が故障対応することを保守員情報登録30として携帯端末4に登録して故障復旧支援部6に送信する(ステップS3)。
【0035】
次に、保守員3は、住人または管理人5などの利用客へのヒアリングと、昇降機1の停止位置や不具合内容を確認した結果を故障状態情報登録31として携帯端末4に登録して故障復旧支援部6に送信する(ステップS4)。
【0036】
類似故障事例検索部61は、入力された現地故障状態情報を検索条件として、故障履歴DB60から類似事例を検索・抽出し、原因機器毎に集計して、故障事例が多い原因機器から順に確率付で原因機器候補群として出力する(ステップS5)。
【0037】
次に、機器対応経験判定部63は、類似故障事例検索部61が出力した各原因機器候補について、保守員3が過去に故障対応した経験があるか否かを故障履歴DB60から検索して、故障対応経験の有無を集計する(ステップS6)。本処理の詳細は、
図3を用いて後述する。
【0038】
次に、故障復旧難易度判定部62は、類似故障事例検索部61が出力した各原因機器候補の確率、または原因機器候補の過去の平均調査時間を元に、当該故障の原因機器特定の難易度を算出する(ステップS7)。本処理の詳細は、
図4および
図5を用いて後述する。
【0039】
次に、故障原因の確率が所定以上の(例えば確率の高い順に上位5項目の)原因機器候補について、ステップS6において保守員3が過去に故障対応経験があるか否かを集計した結果と突合せて、5項目全ての故障対応経験があるか否かを判定する(ステップS8)。
【0040】
判定の結果、全ての故障対応経験がある場合(Y)は、原因機器候補を確率の高い順に提示した方が原因機器特定に掛かる時間が短く済むと判断して、保守員3には原因機器候補リストを確率の高い順に提示する(ステップS9)。
【0041】
次に、保守員3は、原因機器候補リストを基に、確率の高い順に原因機器特定のための故障調査を行う(ステップS10)。
【0042】
次に、ステップS10における調査開始からの経過時間を判定する(ステップS11)。本実施例では、30分以内に原因機器の特定が完了したか否かを判定し、30分以内に原因機器を特定した場合(Y)は、調査完了とする。
【0043】
一方、30分以内に原因機器特定に至らなかった場合(N)は、当該故障は、故障調査の難易度が高いと判断し、トラブルシューティング手順書64を保守員3に提示し(ステップS12)、トラブルシューティング手順書64を使用した原因機器調査に切り替える(ステップS13)。
【0044】
ステップS8における判定の結果、一部でも故障対応経験がない項目がある場合(N)は、故障復旧に対する経験が不足していると判断し、ステップS7で算出した当該故障の原因機器特定の難易度に基づいて、提示する故障復旧支援情報を判定する(ステップS14)。
【0045】
難易度が低い場合(Y)は、原因機器特定に掛かる時間が短く済むと判断して、保守員3には原因機器候補リストを確率の高い順に提示する(ステップS9)。
【0046】
一方、難易度が高い場合(N)は、トラブルシューティング手順書64を保守員3に提示し(ステップS12)、トラブルシューティング手順書64を使用した原因機器調査に切り替える(ステップS13)。
【0047】
なお、ステップS7での原因機器特定の難易度算出を省略し、ステップS14に併合して、原因機器特定の難易度算出と、保守員3に提示する故障復旧支援情報の判定を連続して実行することも可能である。この場合、ステップS6において故障対応経験の有無を集計した後、ステップS8において原因機器候補の故障対応経験があるか否かを判定することとなる。
【0048】
図3は、
図1の機器対応経験判定部63による故障対応経験判定を概念的に示す図である。
【0049】
機器対応経験判定部63は、保守員情報と、故障対応する機種などの現地故障状態情報を検索条件として、故障履歴DB60から過去に発生した故障事例を検索し、保守員3が過去に故障対応した機種別の故障履歴を昇降機1の機種および原因機器別に集計した保守員の故障対応経験値テーブル630を生成する。
【0050】
図3に示す昇降機の例では、故障原因機器として、ブレーキ,エンコーダ,主モータ,塔内プーリBrg,ドアスイッチ,レール,ガイドシュー,ポジテクタ,プリント板,コンペンロープなどを候補として抽出し、それぞれに対する故障対応実績回数を、故障履歴DB60に格納された過去に発生した故障事例に基づいて集計する。
【0051】
また、機器対応経験判定部63は、類似故障事例検索部61が出力した各原因機器候補の中で例えば上位5項目(
図3の昇降機の例では、エンコーダ,ポジテクタ,塔内プーリBrg,主モータ,コンペンロープ)の全てについて、保守員3が過去に故障対応した経験が1回以上あるか否かを判定する機能を備える。
【0052】
図4は、
図1の故障復旧難易度判定部62による故障原因機器の特定難易度判定を概念的に示す図である。
【0053】
故障復旧難易度判定部62は、類似故障事例検索部61が出力した各原因機器候補の確率に対して、例えば上位5項目の確率の総和を算出する。
【0054】
例えば、故障原因機器候補パターンA620のように、上位5項目(
図4の昇降機の例では、エンコーダ,ポジテクタ,塔内プーリBrg,主モータ,コンペンロープ)の確率の総和が一定以上(
図4の例では70%以上)の場合、上位5項目の中に故障原因機器が含まれている可能性が高く、故障対応の難易度が低いと判定する。
【0055】
一方、故障原因機器候補パターンB621のように、例えば上位5項目(
図4の昇降機の例では、エンコーダ,ポジテクタ,ブレーキ,コンタクタ,レール)の確率の総和が一定未満(
図4の例では70%未満)の場合は、1項目あたりの確率が低く、故障機器である可能性にばらつきがあるため、故障対応の難易度が高いと判定する。
【0056】
図5は、
図1の故障復旧難易度判定部62による故障原因機器の特定難易度判定を概念的に示す図である。
図5は、
図4に示す故障復旧難易度判定部62の機能の変形例であり、図示しないが
図4で説明した難易度判定結果と組み合わせて判定しても良い。
【0057】
故障復旧難易度判定部62は、故障対応する機種などの現地故障状態情報を検索条件として、故障履歴DB60から過去に発生した故障事例を検索し、機種および原因機器別に例えば平均調査時間を算出した原因機器別平均調査時間テーブル622を生成する。
【0058】
そして、故障復旧難易度判定部62は、原因機器別平均調査時間テーブル622を参照し、類似故障事例検索部61が出力した各原因機器候補別の平均調査時間を付与し、例えば上位5項目の平均調査時間の総和を算出する。
【0059】
例えば、故障原因機器候補パターンC623のように、平均調査時間の総和が一定未満(
図5の例では30分未満)の場合、上位5項目の中に調査が難しい原因機器候補は含まれていない可能性が高く、故障対応の難易度が低いと判定する。
【0060】
一方、故障原因機器候補パターンD624のように、平均調査時間の総和が一定以上(
図5の例では30分以上)の場合、上位5項目の中に調査が難しい原因機器候補が含まれている可能性が高く、故障対応の難易度が高いと判定する。
【0061】
以上説明したように、本実施例のビル設備の故障復旧支援システム及びビル設備の故障復旧支援方法によれば、故障対応にあたる保守員の経験値と故障原因機器の特定難易度に応じて保守員に提示する出力情報を変更することができる。
【0062】
これにより、エレベータ(昇降機)を構成する保全対象機器が故障した際の復旧作業の効率向上が図れる。
保守員3および携帯端末4の動作と機能、監視センタ2および故障復旧支援部6の構成と動作は、基本的に実施例1と同様であるため、以下では、実施例1と異なる点について説明する。
機器対応経験判定部63は、保守員情報と、故障対応する機種などの現地故障状態情報を検索条件として、故障履歴DB60から過去に発生した故障事例を検索し、保守員3が過去に故障対応した機種別の故障履歴を冷熱設備7の機種および原因機器別に集計した保守員の故障対応経験値テーブル630を生成する。
故障復旧難易度判定部62は、故障対応する機種などの現地故障状態情報を検索条件として、故障履歴DB60から過去に発生した故障事例を検索し、機種および原因機器別に例えば平均調査時間を算出した原因機器別平均調査時間テーブル622を生成する。
そして、故障復旧難易度判定部62は、原因機器別平均調査時間テーブル622を参照し、類似故障事例検索部61が出力した各原因機器候補別の平均調査時間を付与し、例えば上位5項目の平均調査時間の総和を算出する。