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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132127
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】磁性楔の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/02 20060101AFI20230914BHJP
   H02K 3/493 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
H02K15/02 Z
H02K3/493
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022037283
(22)【出願日】2022-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】390002473
【氏名又は名称】TOWA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】押田 裕己
(72)【発明者】
【氏名】木場 裕一
【テーマコード(参考)】
5H604
5H615
【Fターム(参考)】
5H604AA08
5H604BB01
5H604BB08
5H604BB14
5H604CC01
5H604CC05
5H604CC14
5H604QC01
5H604QC09
5H615AA01
5H615BB01
5H615BB05
5H615BB14
5H615PP01
5H615PP19
5H615SS44
5H615TT04
(57)【要約】
【課題】生産性を高めることが可能な磁性楔の製造方法を提供する。
【解決手段】互いに対向する上型及び下型の少なくとも一方に形成された複数のキャビティ、及び、複数の前記キャビティの間かつ前記上型と前記下型との間に形成されて前記キャビティの隣接部分の深さよりも狭い隙間に、磁性体粉を含有する樹脂材料が充填された状態で、複数の製品を一括成形するように、圧縮成形により樹脂成形する樹脂成形工程と、前記隙間での樹脂成形により形成された樹脂層を除去する樹脂層除去工程と、を含む。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する上型及び下型の少なくとも一方に形成された複数のキャビティ、及び、複数の前記キャビティの間かつ前記上型と前記下型との間に形成されて前記キャビティの隣接部分の深さよりも狭い隙間に、磁性体粉を含有する樹脂材料が充填された状態で、複数の製品を一括成形するように、圧縮成形により樹脂成形する樹脂成形工程と、
前記隙間での樹脂成形により形成された樹脂層を除去する樹脂層除去工程と、
を含む磁性楔の製造方法。
【請求項2】
前記隙間の間隔は、前記樹脂材料に含まれる前記磁性体粉の最大粒径よりも大きい、
請求項1に記載の磁性楔の製造方法。
【請求項3】
前記磁性楔には、長手方向一端側に向かって先細り形状に形成された先細り形状部が形成され、
前記樹脂層除去工程では、前記先細り形状部と隣接する前記樹脂層をレーザ加工によって除去する、
請求項1又は請求項2に記載の磁性楔の製造方法。
【請求項4】
前記磁性楔には、長手方向に平行な直線状に形成された直線状部が形成され、
前記樹脂層除去工程では、前記直線状部と隣接する前記樹脂層を回転ブレードを用いた切断加工によって除去する、
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の磁性楔の製造方法。
【請求項5】
前記磁性楔には、長手方向に平行な直線状に形成された直線状部が形成され、
前記樹脂層除去工程では、前記直線状部に隣接する前記樹脂層にレーザ加工によって溝を形成し、前記溝に沿って前記樹脂層を折ることで、前記樹脂層を除去する、
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の磁性楔の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性楔の製造方法の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、モータのステータ(鉄心)のスロットにコイルを固定するための磁性楔が開示されている。この磁性楔には、ステータのスロットに挿入しやすいように、先端に向かうに従って細くなるテーパ面が形成されている。
【0003】
特許文献1に記載された技術では、磁性楔の成形方法として、上型と下型とによって形成されるキャビティ内にゲート部を介して樹脂を流し込んで成形する、いわゆる射出成形を用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭56-116852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のような射出成形では、1回の樹脂成形で成形可能な磁性楔の数量を多く確保することは困難であり、生産性に劣る点で改善の余地があった。
【0006】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、生産性を高めることが可能な磁性楔の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、この課題を解決するため、本発明に係る磁性楔の製造方法は、互いに対向する上型及び下型の少なくとも一方に形成された複数のキャビティ、及び、複数の前記キャビティの間かつ前記上型と前記下型との間に形成されて前記キャビティの隣接部分の深さよりも狭い隙間に、磁性体粉を含有する樹脂材料が充填された状態で、複数の製品を一括成形するように、圧縮成形により樹脂成形する樹脂成形工程と、前記隙間での樹脂成形により形成された樹脂層を除去する樹脂層除去工程と、を含むものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、磁性楔の生産性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】(a)本発明の一実施形態に係る磁性楔が用いられるモータの構成を示した斜視図。(b)モータの一部拡大正面図。
図2】(a)磁性楔を示した斜視図。(b)磁性楔を示した平面図。(c)X1-X1断面図。
図3】樹脂成形装置の全体的な構成を示した正面断面図。
図4】底面部材を示した平面図。
図5】上型及び下型、並びに樹脂成形される樹脂材料の様子を模式的に示した正面断面図。
図6】磁性楔の製造方法を示したフローチャート。
図7】(a)成形品を模式的に示した平面図。(b)X2-X2断面図。
図8】(a)レーザ切断工程において切断される不要部分を示した図。(b)回転ブレード切断工程において切断される不要部分を示した図。
図9】上型に凹部を形成した変形例を示した正面断面図。
図10】(a)成形品にレーザ加工によって溝が形成される様子を示した正面断面図。(b)磁性楔を折り取る様子を示した正面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<モータ1、磁性楔13>
まず、図1及び図2を用いて、磁性楔13を用いたモータ1の一例について説明する。
【0011】
モータ1は、円筒状のステータ10と、ステータ10の内側に配置され、ステータ10に対して相対的に回転可能なロータ20を具備する。ステータ10に形成されたスロット11にはコイル12が巻回されている。またスロット11の開口部には、コイル12を固定するための磁性楔13が配置されている。
【0012】
図2に示すように、本実施形態に係る磁性楔13は矩形板状に形成される。磁性楔13は、図2(c)に示すように、長手方向断面視において台形状に形成される。磁性楔13には、先細り形状部13a及び直線状部13bが形成される。
【0013】
先細り形状部13aは、磁性楔13の長手方向一端側に向かって先細り形状に形成された部分である。本実施形態において、先細り形状部13aは、磁性楔13の長手方向両端部のうち一方にのみ形成される。先細り形状部13aにおいて、磁性楔13の短手方向両側面は、先端に向かって互いに近接するような傾斜状に形成されている。このように磁性楔13に先細り形状部13aを形成することによって、磁性楔13をステータ10のスロット11に差し込み易くすることができる。
【0014】
直線状部13bは、磁性楔13の長手方向に平行な直線状に形成された部分である。本実施形態において、磁性楔13のうち、先細り形状部13a以外の部分が直線状部13bとして形成されている。直線状部13bにおいて、磁性楔13の短手方向両側面は、互いに平行に形成されている。
【0015】
磁性楔13は、例えば鉄系や鉄シリコン系の粒状の軟磁性体粉と、例えばエポキシ樹脂等の合成樹脂と、を混合して成形することで製造される。このように樹脂に軟磁性体粉を含ませることで、磁性を有する磁性楔13を形成することができる。磁性を有する磁性楔13をモータ1に用いることで、磁束密度の粗密が発生するのを抑制することができ、モータ1の効率の向上を図ることができる。
【0016】
<樹脂成形装置100>
次に、磁性楔13の製造に用いられる樹脂成形装置100の一例について説明する。
【0017】
図3に示す樹脂成形装置100は、圧縮成形法による樹脂成形が可能な装置である。樹脂成形装置100は、主として成形型110(下型110D及び上型110U)及び型締め機構120等を具備する。
【0018】
成形型110は、下型110D及び上型110Uから構成され、樹脂材料Rを成形するためのキャビティCを形成するものである。
【0019】
下型110Dは、主として下型ベース部材111、底面部材112、側面部材113及び弾性部材114等を具備する。
【0020】
下型ベース部材111は、後述する底面部材112及び側面部材113等を支持するものである。
【0021】
図3から図5に示す底面部材112は、キャビティCの底面を形成するものである。底面部材112は、平面視矩形状に形成される。底面部材112は、適宜の上下幅を有するように形成される。底面部材112は、下型ベース部材111の上面に載せられた状態で配置される。
【0022】
図4及び図5に示すように、底面部材112の上面には磁性楔13の形状に対応する凹部112aが複数形成される。具体的には、凹部112aは、磁性楔13の外形と同様に、平面視矩形状に形成される。また凹部112aの長手方向一端部は、磁性楔13の先細り形状部13aに対応する先細り形状に形成される。凹部112aは、前後方向及び左右方向に整列された状態で複数形成される。隣接する凹部112aの間には、若干の隙間が形成される。この凹部112a及び後述する上型110Uによって、磁性楔13を成形するためのキャビティCが規定される。なお、図3及び図5では、説明の便宜のために凹部112aを誇張して図示している。
【0023】
図3に示す側面部材113は、底面部材112を側方から囲むものである。側面部材113は、適宜の上下幅を有するように形成される。側面部材113は、主として中空部113aを具備する。
【0024】
中空部113aは、側面部材113の中央を上下に貫通するように形成される。中空部113aは、平面視矩形状に形成される。中空部113aは、平面視において、底面部材112の外形と概ね一致するような形状に形成される。
【0025】
このように側面部材113は、平面視矩形状の枠状に形成される。側面部材113の中空部113aには底面部材112が配置される。側面部材113は、後述する弾性部材114を介して、下型ベース部材111の上面に載せられた状態で配置される。側面部材113の上面は、底面部材112の上面よりも上方に位置する。
【0026】
弾性部材114は、側面部材113と下型ベース部材111との間に配置される。弾性部材114は、例えば上下に伸縮可能な圧縮コイルばね等により形成される。
【0027】
なお、下型110D(底面部材112及び側面部材113)の上面には、離型フィルムFを吸着して保持するための吸着孔(不図示)が適宜形成される。この吸着孔を真空ポンプ等(不図示)によって負圧にすることで、離型フィルムFを吸着して保持することができる。
【0028】
上型110Uは、適宜の上下幅を有するように形成される。上型110Uの底面は、凹凸のない平面状に形成される。上型110Uの底面には、離型フィルムFを吸着して保持するための吸着孔(不図示)が適宜形成される。この吸着孔を真空ポンプ等(不図示)によって負圧にすることで、離型フィルムFを吸着して保持することができる。
【0029】
型締め機構120は、下型110Dを昇降させて型締め及び型開き等を行うものである。型締め機構120は、主として基台121及び駆動機構122等を具備する。
【0030】
基台121は、成形型110等を支持するものである。基台121は、成形型110(下型110D)の下方に配置される。
【0031】
駆動機構122は、下型110Dを昇降させるためのものである。駆動機構122としては、ボールねじ機構、油圧シリンダ、トグル機構等を用いることができる。駆動機構122は、基台121と下型ベース部材111との間に配置される。
【0032】
なお、上述の樹脂成形装置100の各部の動作は、図示せぬ制御装置によって適宜制御される。
【0033】
<磁性楔13の製造方法>
次に、樹脂成形品である磁性楔13の製造方法の一例について説明する。
【0034】
図6に示すように、本実施形態に係る磁性楔13の製造方法は、主としてフィルム配置工程S10、搬入工程S20、型締め工程S30、樹脂成形工程S40、型開き工程S50、搬出工程S60及び樹脂層除去工程S70を含む。以下、順に説明する。
【0035】
フィルム配置工程S10は、下型110D及び上型110Uに離型フィルムF(図3参照)を配置する工程である。
【0036】
具体的には、フィルム配置工程S10において、所定の搬送装置によって2枚の離型フィルムFが成形型110に搬入される。2枚の離型フィルムFは、下型110Dの上面及び上型110Uの底面にそれぞれ吸着されて保持される。これによって、離型フィルムFが下型110Dの上面及び上型110Uの底面の形状に沿うように配置される。
【0037】
なお、下型110D及び上型110Uのいずれに対しても先に離型フィルムFを配置することが可能であり、下型110D及び上型110Uの両方同時に離型フィルムFを配置することも可能である。
【0038】
離型フィルムFが下型110D及び上型110Uに吸着された後、フィルム配置工程S10から搬入工程S20に移行する。
【0039】
搬入工程S20は、成形型110に樹脂材料Rを搬入する工程である。
【0040】
具体的には、搬入工程S20において、樹脂材料Rは、所定の搬送装置によって成形型110に搬入される。樹脂材料Rは、下型110D内(側面部材113の内側)に収容される。なお、樹脂材料Rとしては、固体状の粉粒体状樹脂(顆粒状樹脂含む)、液体状の液状樹脂など、各種状態の樹脂を用いることができる。また、樹脂材料Rには、鉄系や鉄シリコン系の粒状の軟磁性体粉が含有される。
【0041】
樹脂材料Rの搬入が完了した後、搬入工程S20から型締め工程S30に移行する。
【0042】
型締め工程S30は、成形型110(下型110D及び上型110U)を閉める(型締めする)工程である。
【0043】
具体的には、型締め工程S30において、まず下型110Dに設けられた加熱機構(不図示)によって、キャビティC内に収容された樹脂材料Rが、固体状であれば溶融され、液体状であれば低粘度化される。次に、駆動機構122が駆動されることで、下型110Dが上型110Uに向かって上昇する。下型110Dが所定の位置まで上昇すると、側面部材113の上面が上型110Uの底面と接触し、下型110D(樹脂材料Rが収容された空間)が上型110Uによって上方から塞がれる。
【0044】
なお、型締めを行う際には、成形型110内の空気を吸引して減圧を行うことが好ましい。これによって、樹脂材料R中の空気(気泡)を排出することができる。
【0045】
型締めが完了した後、型締め工程S30から樹脂成形工程S40に移行する。
【0046】
樹脂成形工程S40は、樹脂材料Rを圧縮して樹脂成形を行う工程である。
【0047】
具体的には、樹脂成形工程S40において、駆動機構122が駆動されることで、下型110Dの底面部材112が上型110Uに向かってさらに上昇する。この際、側面部材113は上型110Uに接しているため、上昇することはない。すなわち、底面部材112は側面部材113に対して相対的に上昇する。
【0048】
図5に示すように、下型110Dの底面部材112の上面と、上型110Uの底面と、が直接接することがないように、底面部材112と上型110Uとの間には所定の隙間が空けられる。このようにして、上型110Uと下型110Dとの間には、樹脂材料Rを成形するための空間が確保される。隣接する2つのキャビティC(凹部112a)の間には、キャビティCの深さよりも狭い隙間G1が形成される。
【0049】
より詳細には、隙間G1は、凹部112aによって形成されたキャビティCのうち、隙間G1と隣接する部分(隙間G1のすぐ隣の部分)の深さG2よりも狭くなるように設定されている。また隙間G1は、樹脂材料Rに含まれる磁性体粉の最大粒径よりも大きくなるように設定されている。最大粒径とは、単一の磁性体粉を投影的に見た場合において、その磁性体粉が有する径のうち最大の径を意味する。例えば、最大粒径が100μmの磁性体粉に対して、隙間G1の大きさは100μmよりも大きい値(例えば、300μm等)に設定される。
【0050】
底面部材112が上昇すると、下型110Dに収容された樹脂材料Rが加圧され、樹脂成形される。この際、磁性体粉を含む樹脂材料Rは隙間G1を介してキャビティC間を流動し、上型110Uと下型110Dの間に均一に充填される。これによって、均質な製品(すなわち、磁性楔13)を製造することができる。樹脂材料Rが加圧された状態で所定時間待つことで、樹脂材料Rが硬化する。このように樹脂材料Rを成形することで、複数の凹部112a(キャビティC)によって、複数の製品(すなわち、磁性楔13)に相当する部分が一括して成形される。また、隣接する磁性楔13の間には、隣接する磁性楔13同士を接続する樹脂層14が成形される(図7参照)。樹脂層14の厚さは、磁性楔13の厚さよりも薄く形成される。なお、以下では、一体的に成形された磁性楔13及び樹脂層14を、成形品Mと称する場合がある。
【0051】
樹脂材料Rが硬化した後、樹脂成形工程S40から型開き工程S50に移行する。
【0052】
型開き工程S50は、成形型110(下型110D及び上型110U)を開く(型開きする)工程である。
【0053】
具体的には、型開き工程S50において、駆動機構122が駆動されることで、下型110Dが上型110Uから離れるように下降する。これによって、下型110Dが上型110Uの底面から離れる。
【0054】
型開きが完了した後、型開き工程S50から搬出工程S60に移行する。
【0055】
搬出工程S60は、成形品Mを成形型110から搬出する工程である。搬出工程S60において、成形品Mは、所定の搬送装置によって成形型110から搬出される。
【0056】
成形品Mの搬出が完了した後、搬出工程S60から樹脂層除去工程S70に移行する。
【0057】
樹脂層除去工程S70は、成形品Mから樹脂層14を除去することによって、製品部分である磁性楔13を得る工程である。樹脂層除去工程S70は、レーザ切断工程S71及び回転ブレード切断工程S72を含む。
【0058】
レーザ切断工程S71は、樹脂層14のうち、磁性楔13の先細り形状部13aと隣接する部分をレーザ加工によって除去する工程である。
【0059】
具体的には、樹脂層14のうち、先細り形状部13aの傾斜部分(磁性楔13の長手方向に対して傾斜する部分)と隣接する部分が、レーザ加工によって除去される。図8(a)には、樹脂層14のうち、レーザ切断工程S71で切断される不要部分14aをハッチングで示している。
【0060】
レーザ切断工程S71で用いられるレーザ光としては、パルスレーザとして、レーザ光発振装置にYAGレーザやYVO4レーザ又はこれらから発せられたレーザ光を第2高調波発生(SHG:Second Harmonic Generation)材料により波長変換するグリーンレーザを利用することができる。また、走査光学系により走査することにより、レーザ光の照射領域を変化させることができる。レーザ切断工程S71で用いられるレーザ光の波長、出力、レーザ径、照射時間等は、樹脂層14の材質や樹脂層14のサイズ(切除する部分の厚さ及び大きさ等)に応じて、樹脂層14を効率良く除去できるように最適化することができる。
【0061】
レーザ加工によって不要部分14aが除去された後、レーザ切断工程S71から回転ブレード切断工程S72に移行する。
【0062】
回転ブレード切断工程S72は、レーザ切断工程S71で除去されなかった樹脂層14を、回転ブレードを用いた切断加工によって除去する工程である。
【0063】
図8(b)には、樹脂層14のうち、回転ブレード切断工程S72で切断される不要部分14bをハッチングで示している。不要部分14bには、直線状部13bの直線部分と隣接する部分が含まれている。具体的には、回転ブレード切断工程S72において、磁性楔13の短手方向両側に形成された樹脂層14、及び、磁性楔13の長手方向両側に形成された樹脂層14が、回転ブレードによって切断されて除去される。
【0064】
回転ブレード切断工程S72で用いられる回転ブレードとしては、種々の樹脂成形品(例えば、半導体チップが装着された基板を樹脂封止した封止済基板等)を切断するための回転ブレード(スピンドル)を用いることができる。
【0065】
レーザ切断工程S71及び回転ブレード切断工程S72によって樹脂層14を除去することによって、成形品Mを複数の磁性楔13に個片化することができる。
【0066】
このようにして、本実施形態では、一度の圧縮成形によって複数の磁性楔13を製造することができる。なお必要に応じて、樹脂層除去工程S70の後に、磁性楔13の後処理(バリの除去、清掃等)を行う工程を実施することも可能である。
【0067】
以上の如く、本実施形態に係る磁性楔13の製造方法は、互いに対向する上型110U及び下型110Dの少なくとも一方に形成された複数のキャビティC、及び、複数の前記キャビティCの間かつ前記上型110Uと前記下型110Dとの間に形成されて前記キャビティCの隣接部分の深さよりも狭い隙間G1に、磁性体粉を含有する樹脂材料Rが充填された状態で、複数の製品(磁性楔13)を一括成形するように、圧縮成形により樹脂成形する樹脂成形工程S40と、前記隙間G1での樹脂成形により形成された樹脂層14を除去する樹脂層除去工程S70と、を含むものである。
このように構成することにより、磁性楔13の生産性を高めることができる。すなわち、圧縮成形によって複数の磁性楔13を樹脂成形することができるため、磁性楔13の生産性を高めることができる。また、樹脂材料Rが、隙間G1を介してキャビティC間を流動可能であるため、均質な磁性楔13を製造することができる。また、キャビティC間(隙間G1)において成形された樹脂層14は比較的薄いため、樹脂層除去工程S70において容易に除去することができる。また、圧縮成形法を採用することで、他の樹脂成形法(例えば、トランスファ成形法等)と比較して、設備のコンパクト化を図ることができる。また、他の樹脂成形法と比較して、樹脂成形時に生じる廃棄部分の削減(歩留まりの向上)を図ることができる。
【0068】
また、前記隙間G1の間隔は、前記樹脂材料Rに含まれる前記磁性体粉の最大粒径よりも大きいものである。
このように構成することにより、樹脂材料Rが、隙間G1を介してキャビティC間を流動し易くなるため、均質な磁性楔13を製造することができる。
【0069】
また、前記磁性楔13には、長手方向一端側に向かって先細り形状に形成された先細り形状部13aが形成され、前記樹脂層除去工程S70では、前記先細り形状部13aと隣接する前記樹脂層14をレーザ加工によって除去するものである。
このように構成することにより、樹脂層14を除去した部分のバリの発生を抑制することができる。また、回転ブレードでは切断し難い先細り形状部13aを、比較的容易にかつ精密に切断することができる。
【0070】
また、前記磁性楔13には、長手方向に平行な直線状に形成された直線状部13bが形成され、前記樹脂層除去工程S70では、前記直線状部13bと隣接する前記樹脂層14を回転ブレードを用いた切断加工によって除去するものである。
このように構成することにより、樹脂層14を低コストで容易に除去することができる。
【0071】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の技術的思想の範囲内で適宜の変更が可能である。
【0072】
例えば、本実施形態では、磁性楔13の長手方向の一端部にのみ先細り形状部13aを形成した例を示したが、本発明はこれに限るものではない。例えば、磁性楔13の長手方向両端部にそれぞれ先細り形状部13aを形成することも可能である。その他にも、磁性楔13の形状は任意に変更することが可能である。
【0073】
また、本実施形態では、複数の凹部112aが底面部材112の上面に前後方向及び左右方向に整列された状態で形成された例(図4参照)を示したが、凹部112aの形成箇所(整列方法)や個数は任意に変更することが可能である。
【0074】
また、本実施形態では、底面部材112に形成された凹部112aと上型110Uの底面(平面部分)とによってキャビティCが規定される例を示したが、キャビティCの規定方法はこれに限るものではなく、任意に変更することが可能である。例えば図9に示すように、110Uの底面にも磁性楔13に対応する凹部110aを形成し、凹部112a及び凹部110aによってキャビティCを規定することも可能である。また、凹部112a及び凹部110aの形状は、製品の形状に応じて任意に変更することが可能である。
【0075】
また、本実施形態では、隙間G1(図5参照)は、樹脂材料Rに含まれる磁性体粉の最大粒径よりも大きくなるように設定されるものとしたが、隙間G1の設定は任意に変更することが可能である。例えば隙間G1の大きさを、磁性体粉の最大粒径の2倍以上、3倍以上等に設定することも可能である。また、隙間G1の大きさを、磁性体粉の平均粒径を基準として設定することも可能である。例えば隙間G1の大きさを、磁性体粉の平均粒径の2倍以上、3倍以上等に設定することも可能である。
【0076】
また、本実施形態では、下型110D及び上型110Uに離型フィルムFを配置した後に樹脂材料Rを搬入する例(図6参照)を示したが、下型110Dに配置する離型フィルムF上に樹脂材料Rを配置してから、樹脂材料Rと共に離型フィルムFを下型110Dに配置することも可能である。この場合、下型110Dに配置された後に、上方に樹脂材料Rが配置された状態の離型フィルムFを吸着することが可能である。また、下型110Dに離型フィルムFを配置した後に上型110Uに離型フィルムFを配置することも、上型110Uに離型フィルムFを配置した後に下型110Dに離型フィルムFを配置することも、下型110D及び上型110Uに同時に離型フィルムFを配置することも可能である。
【0077】
また、本実施形態では、樹脂層除去工程S70において、レーザ加工及び回転ブレードを用いた切断加工によって樹脂層14を除去する例を示したが、本発明はこれに限定するものではない。例えば、レーザ加工のみによって樹脂層14を除去することや、回転ブレードを用いた切断加工のみによって樹脂層14を除去することも可能である。また、抜き型を用いたプレス加工によって樹脂層14を除去することも可能である。また、製品部分(磁性楔13)を保持し、樹脂層14部分で折り曲げて樹脂層14の境界部分を折った後で、適宜の器具(スクレーパ等)によって磁性楔13の表面を削って樹脂層14を除去する仕上げ加工を施すことも可能である。このように、樹脂層14の除去方法としては、各種の加工方法を用いることが可能であり、また、複数の加工方法を組み合わせて適用することも可能である。
【0078】
以下では、樹脂層除去工程S70の一変形例を具体的に説明する。
【0079】
本変形例に係る樹脂層除去工程S70では、不要部分14b(図8(b)参照)を除去する場合に、まずレーザ加工によって樹脂層14に溝14cが形成される(図10(a)参照)。例えば溝14cは、磁性楔13の直線状部13bと隣接する樹脂層14に、磁性楔13の長手方向と平行に延びるように形成される。溝14cを形成することによって、樹脂層14の厚さがさらに薄くなる。
【0080】
次に、溝14cの両側に位置する製品部分(磁性楔13)を保持し、溝14cに沿って折り曲げる。これによって、樹脂層14のうち、厚さが薄い溝14c部分に応力が集中し、溝14cに沿って磁性楔13を折り取ることができる(図10(b)参照)。この際、不要な樹脂層14が磁性楔13に残っている場合には、適宜の器具(スクレーパ等)によって磁性楔13の表面を削って樹脂層14を除去する仕上げ加工を施すことも可能である。またレーザ光の出力等を調整することで、折り取った磁性楔13に樹脂層14が残留しないように調整することも可能である。このように構成すれば、仕上げ加工が不要となり、磁性楔13の生産性をさらに向上させることができる。
【0081】
以上の如く、本変形例に係る磁性楔13の製造方法において、前記磁性楔13には、長手方向に平行な直線状に形成された直線状部13bが形成され、前記樹脂層除去工程S70では、前記直線状部13bに隣接する前記樹脂層14にレーザ加工によって溝14cを形成し、前記溝14cに沿って前記樹脂層14を折ることで、前記樹脂層14を除去するものである。
このように構成することにより、比較的容易に樹脂層14を除去することができ、磁性楔13の生産性を高めることができる。
【符号の説明】
【0082】
13 磁性楔
13a 先細り形状部
13b 直線状部
14 樹脂層
14a 溝
110U 上型
110D 下型
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10