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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132137
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】シート化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/02 20060101AFI20230914BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20230914BHJP
   A61K 8/36 20060101ALI20230914BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20230914BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
A61K8/02
A61K8/34
A61K8/36
A61K8/37
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022037299
(22)【出願日】2022-03-10
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】390011442
【氏名又は名称】株式会社マンダム
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森野 修
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 美幸
(72)【発明者】
【氏名】武藤 謙
(72)【発明者】
【氏名】藤本 俊樹
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA122
4C083AB282
4C083AC171
4C083AC172
4C083AC302
4C083AC311
4C083AC312
4C083AC432
4C083AC531
4C083AC532
4C083AC712
4C083AC902
4C083AD042
4C083AD352
4C083BB01
4C083BB04
4C083DD12
4C083EE06
4C083EE07
(57)【要約】
【課題】低級アルコールおよび多価アルコールの含有量が少ないにもかかわらず、防腐性を有するシート化粧料を提供すること。
【解決手段】シート基材と、シート基材に含浸された化粧料組成物を含むシート化粧料であって、化粧料組成物が、成分(A)~(D)を含有し、成分(A)の含有量が0.2~1.2質量%であり、成分(B)の含有量が0.005~0.5質量%であり、成分(C)に対する成分(A)の質量含有比が0.68以上であり、化粧料組成物のpHが4.0~6.5であり、化粧料組成物の低級アルコールおよび炭素数2~10の多価アルコールの合計含有量が5.0質量%以下である、シート化粧料。
成分(A):フェノキシエタノール
成分(B):安息香酸および/またはその塩
成分(C):界面活性剤
成分(D):水
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート基材と、前記シート基材に含浸された化粧料組成物を含むシート化粧料であって、
前記化粧料組成物が、下記成分(A)、(B)、(C)および(D)を含有し、
下記成分(A)の含有量が0.2~1.2質量%であり、
下記成分(B)の含有量が0.005~0.5質量%であり、
下記成分(C)に対する下記成分(A)の質量含有比が0.68以上であり、
前記化粧料組成物のpHが4.0~6.5であり、
前記化粧料組成物の低級アルコールおよび炭素数2~10の多価アルコールの合計含有量が5.0質量%以下である、シート化粧料。
成分(A):フェノキシエタノール
成分(B):安息香酸および/またはその塩
成分(C):界面活性剤
成分(D):水
【請求項2】
前記化粧料組成物が、さらに下記成分(E)を含有する、請求項1記載のシート化粧料。
成分(E):エデト酸ナトリウム塩
【請求項3】
前記成分(C)がノニオン性界面活性剤を含む、請求項1または2に記載のシート化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
シート化粧料に含浸する化粧料組成物には、主に速乾性や清涼感を向上させる目的でエタノールを配合することが一般的である(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-158429号公報
【0004】
化粧料組成物にエタノールを高配合することにより、化粧料組成物に防腐性を付与することができる。
【0005】
一方、エタノールは脱脂力が強く、皮膚刺激性があるため、肌刺激に敏感な使用者がいる場合や、刺激に敏感な箇所に使用する場合には、使用が忌避されるという問題がある。また、文化や宗教上の理由から、エタノールを配合することが好まれない国もある。さらに、宇宙空間など水溶性揮発成分の使用が制限されている場面でも使用できるシート化粧料の開発が求められている。
【0006】
他方、シート化粧料は、シート基材として不織布等が存在することに起因し、液体化粧料と比較して、抗菌力が低下する傾向があり、エタノールの配合量が少ないにもかかわらず防腐性を有するシート化粧料を得ることは困難であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、低級アルコールおよび多価アルコールの含有量が少ないにもかかわらず、防腐性を有するシート化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討した結果、成分(A)フェノキシエタノール、成分(B)安息香酸および/またはその塩、および成分(C)界面活性剤を所定量含有し、所定のpHを有する水性化粧料組成物を含浸させたシート化粧料が、上記課題を解決することができることを見出し、発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は
〔1〕シート基材と、前記シート基材に含浸された化粧料組成物を含むシート化粧料であって、
前記化粧料組成物が、下記成分(A)、(B)、(C)および(D)を含有し、
下記成分(A)の含有量が0.2~1.2質量%であり、
下記成分(B)の含有量が0.005~0.5質量%であり、
下記成分(C)に対する下記成分(A)の質量含有比が0.68以上であり、
前記化粧料組成物のpHが4.0~6.5であり、
前記化粧料組成物の低級アルコールおよび炭素数2~10の多価アルコールの合計含有量が5.0質量%以下である、シート化粧料。
成分(A):フェノキシエタノール
成分(B):安息香酸および/またはその塩
成分(C):界面活性剤
成分(D):水
〔2〕前記化粧料組成物が、さらに下記成分(E)を含有する、上記〔1〕記載のシート化粧料。
成分(E):エデト酸ナトリウム塩
〔3〕前記成分(C)がノニオン性界面活性剤を含む、上記〔1〕または〔2〕に記載のシート化粧料、に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、化粧料組成物中の低級アルコールおよび多価アルコールの含有量が少ないにもかかわらず、高い防腐性を有するシート化粧料が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態のシート化粧料は、シート基材と、前記シート基材に含浸された化粧料組成物を含む。
【0012】
理論に拘束されることは意図しないが、本実施形態のシート化粧料は、含浸された化粧料組成物が、フェノキシエタノール、および安息香酸および/またはその塩を含有するため細菌の発育や増殖を抑制する作用を有し、前記化粧料組成物のフェノキシエタノールと界面活性剤の含有量比を所定の範囲とし、pHが所定の範囲であることで、前記化粧料組成物の製剤化が可能となり、製品の品質を担保できるため、低級アルコールおよび多価アルコールの含有量が少ないにもかかわらず防腐性を有する。
【0013】
[シート基材]
シート基材は、本実施形態の化粧料組成物が含浸可能なシート状の支持体であれば特に制限されないが、不織布が好適に用いられる。
【0014】
不織布を構成する繊維(材質)としては、特に制限されず、例えば、天然繊維、化学繊維などが挙げられる。天然繊維としては、例えば、綿(コットン)、パルプ、セルロース、麻などの植物繊維;毛(ウール)、絹(シルク)などの動物繊維が挙げられる。化学繊維としては、例えば、金属繊維などの無機繊維;リヨセル(テンセル)などの精製繊維;レーヨン、カゼイン繊維などの再生繊維;アセテートなどの半合成繊維;ナイロン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタンなどの合成繊維が挙げられる。上記繊維はそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0015】
不織布の構造は、積層構造を有するものであっても、積層構造を有さないものであってもよく、例えば、スパンボンド不織布、スパンレース不織布、サーマルボンド不織布、ニードルパンチ不織布、スティッチボンド不織布などが挙げられる。また、不織布表面にエンボス加工処理が施されていても良い。エンボス加工処理としては特に制限されず、例えば、裏面を押し上げて浮かす(裏面は凹む)方式や、表面に特殊なインクを付着することで凸部を形成する(裏面は凹まない)方式などが挙げられる。
【0016】
不織布の厚さは、肌に多くの化粧料組成物を供給する観点から、150μm以上が好ましく、200μm以上がより好ましく、250μm以上がさらに好ましい。一方、不織布の厚さは、使用時にたれ落ちが発生する等使用感が低下することを防止する観点から、1200μm以下が好ましく、1100μm以下がより好ましく、1050μm以下がさらに好ましい。なお、本明細書において、不織布の厚さは、JIS L 1913に記載の測定方法に準拠して測定される値である。
【0017】
不織布の目付は、保水性を保持する観点から、30g/m2以上が好ましく、35g/m2以上がより好ましく、40g/m2以上がさらに好ましい。一方、使用感の観点からは、80g/m2以下が好ましく、70g/m2以下がより好ましく、60g/m2以下がさらに好ましい。
【0018】
本実施形態に係る不織布は、公知慣用の製造方法により製造することができる。また、本実施形態に係る不織布は市販品を用いることもできる。
【0019】
本実施形態のシート基材における、含浸された本実施形態の化粧料組成物の質量割合(含浸量)は、特に限定されないが、シート基材100質量部に対して、100~1000質量部であることが好ましく、より好ましくは150~700質量部である。
【0020】
[化粧料組成物]
本実施形態の化粧料組成物は、フェノキシエタノール、安息香酸および/またはその塩、界面活性剤、および水を必須の成分として含有する。また、エデト酸ナトリウム塩を任意成分として含有することが好ましい。なお、本明細書において、「~」を用いて数値範囲を示す場合、その両端の数値を含むものとする。
【0021】
なお、本明細書においては、上記フェノキシエタノールを「成分(A)」;上記安息香酸および/またはその塩を「成分(B)」;上記界面活性剤を「成分(C)」;上記水を「成分(D)」;上記エデト酸ナトリウム塩を「成分(E)」と称する場合がある。各成分の含有量は、合計100質量%となるように適宜選択することができる。
【0022】
<成分(A):フェノキシエタノール>
本実施形態の化粧料組成物は、防腐性を高める観点および低刺激性の観点から、フェノキシエタノールを必須の成分として含有する。成分(A)としては、市販品を用いてもよく、適宜製造して取得したものを用いてもよい。
【0023】
成分(A)の化粧料組成物100質量%中の含有量は、防腐性の観点から、0.20質量%以上であり、0.30質量%以上が好ましく、0.40質量%以上がより好ましく、0.45質量%以上がさらに好ましく、0.50質量%以上がさらに好ましく、0.55質量%以上がさらに好ましく、0.60質量%以上が特に好ましい。また、成分(A)の化粧料組成物100質量%に対する含有量は、低刺激性の観点から、1.20質量%以下であり、1.10質量%以下が好ましく、1.00質量%以下がより好ましい。
【0024】
<成分(B):安息香酸および/またはその塩>
安息香酸および/またはその塩は、水溶性の抗菌剤であり、ヒトの皮膚に対する安全性が高い。安息香酸の塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩や、カルシウム塩やマグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩等の金属塩が挙げられ、ナトリウム塩またはカリウム塩が好ましく、ナトリウム塩がより好ましい。これらの安息香酸および/またはその塩は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
成分(B)としては、市販品を用いてもよく、適宜製造して取得したものを用いてもよい。
【0026】
成分(B)の化粧料組成物100質量%中の含有量は、防腐性の観点から、0.005質量%以上であり、0.050質量%以上が好ましく、0.080質量%以上がより好ましく、0.100質量%以上がさらに好ましい。また、成分(B)の化粧料組成物100質量%に対する含有量は、低刺激性の観点から、0.50質量%以下であり、0.45質量%以下がより好ましく、0.40質量%以下がさらに好ましい。
【0027】
<成分(C):界面活性剤>
本実施形態の化粧料組成物は、洗浄力および製剤化の観点から、界面活性剤を必須の構成成分として含有する。界面活性剤としては、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、および両性界面活性剤からなる群から選ばれる少なくとも1種以上を含むことが好ましく、ノニオン性界面活性剤を含むことがより好ましく、ノニオン性界面活性剤であることがさらに好ましい。界面活性剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
ノニオン性界面活性剤としては、イソステアリン酸ソルビタン、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油、ポリオキシアルキレンヒマシ油、グリセリン脂肪酸エステル、グリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、シリコーン界面活性剤、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェノール、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルホルムアルデヒド縮合物、ポリオキシエチレンステロールおよびその誘導体、ポリオキシエチレンラノリンおよびその誘導体、ポリオキシエチレンミツロウ誘導体、シュガーエステル類等が挙げられる。
【0029】
カチオン界面活性剤としては、モノアルキル型4級アンモニウム塩、ジアルキル型4級アンモニウム塩、トリアルキル型4級アンモニウム塩、モノアルキルエーテル型4級アンモニウム塩、その他の4級アンモニウム塩、アルキルアミン、および脂肪酸アミドアミン等が挙げられる。
【0030】
両性界面活性剤としては、アルキルグリシン塩、カルボキシメチルグリシン塩、N-アシルアミノエチル-N-2-ヒドロキシエチルグリシン塩などのグリシン型両性界面活性剤、アルキルアミノプロピオン酸塩、アルキルイミノジプロピオン酸塩などのアミノプロピオン酸型両性界面活性剤、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタインなどのアミノ酢酸ベタイン型両性界面活性剤、アルキルヒドロキシスルホベタインなどのスルホベタイン型両性界面活性剤などが挙げられる。
【0031】
成分(C)としては、市販品を用いてもよく、適宜製造して取得したものを用いてもよい。
【0032】
成分(C)の化粧料組成物100質量%に対する合計含有量は、成分(A)の溶解性および製剤化の観点から、0.10質量%以上が好ましく、0.15質量%以上がより好ましく、0.20質量%以上がさらに好ましく、0.25質量%以上がさらに好ましく、0.30質量%以上が特に好ましい。また、成分(C)の化粧料組成物100質量%に対する含有量は、防腐性低下を防ぐ観点から、3.0質量%以下が好ましく、2,5質量%以下がより好ましく、2.0質量%以下がさらに好ましく、2.5質量%以下がさらに好ましく、1.0質量%以下が特に好ましい。
【0033】
成分(C)に対する成分(A)の含有量の比(A/C)は、防腐性の観点から、0.68以上であり、0.70以上が好ましく、0.75以上がさらに好ましい。また、A/Cは、成分(A)の溶解性の観点から、10.0以下が好ましく、8.0以下がより好ましく、6.0以下がさらに好ましく、4.0以下が特に好ましい。
【0034】
成分(C)に対する成分(B)の含有量の比(B/C)は、防腐性の観点から、0.2以上が好ましく、0.25以上がより好ましく、0.30以上がさらに好ましい。また、B/Cは、製剤の安定性の観点から、10以下が好ましく、8以下がより好ましく、6以下がさらに好ましく、4以下が特に好ましい。
【0035】
<成分(D):水>
本実施形態において使用する水としては、例えば、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、超純水等が挙げられる。
【0036】
本実施形態に係る化粧料組成物100質量%中の成分(D)の含有量は、成分(A)、成分(B)、成分(C)およびその他の成分を除いた残部とすることができる。成分(D)の含有量は、低刺激性の観点から、55.0質量%以上が好ましく、60.0質量%以上がより好ましく、70.0質量%以上がさらに好ましく、80.0質量%以上がさらに好ましく、85.0質量%以上が特に好ましい。また、成分(D)の含有量は、製剤化の観点から、99.0質量%以下が好ましく、98.0質量%以下がより好ましく、97.0質量%以下がさらに好ましい。
【0037】
<低級アルコールおよび炭素数2~10の多価アルコール>
本実施形態に係る化粧料組成物100質量%中の低級アルコールおよび炭素数2~10の多価アルコールの含有量は、本発明の効果の観点から、5.0質量%以下であり、2.5質量%以下が好ましく、1.0質量%以下がさらに好ましく、0.5質量%以下が特に好ましく、低級アルコールおよび炭素数2~10の多価アルコールを含まないことが最も好ましい。
【0038】
低級アルコールとしては、例えば、炭素数2~5の直鎖または分岐鎖のアルコールが挙げられる。具体的には、エタノール、イソプロパノール等が挙げられる。炭素数2~10の多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール、1,2-デカンジオール、エチレングリコール等が挙げられる。
【0039】
<pH>
本実施形態に係る化粧料組成物のpHは、成分(B)の安定性の観点から、4.0以上であり、4.5以上が好ましく、4.6以上がより好ましく、4.8以上がさらに好ましい。また、本実施形態に係る化粧料組成物のpHは、低刺激性の観点から、6.5以下であり、6.4以下が好ましく、6.2以下がより好ましく、6.0以下がさらに好ましい。pHは下記のpH調整剤等を用いて調節することができる。
【0040】
<成分(E):エデト酸ナトリウム塩>
本実施形態に係る化粧料組成物は、さらにエデト酸ナトリウム塩を含有することが好ましい。成分(E)としては、エデト酸二ナトリウム塩(EDTA-2Na)、エデト酸三ナトリウム塩(EDTA-3Na)、エデト酸四ナトリウム塩(EDTA-4Na)が挙げられ、EDTA-2Naが好ましい。また、エデト酸ナトリウム塩は、その水和物も含むものとする。成分(E)を、成分(A)や成分(B)と併用することで、防腐性がさらに向上すると考えられる。成分(E)としては、市販品を用いてもよく、適宜製造して取得したものを用いてもよい。
【0041】
本実施形態に係る化粧料組成物が成分(E)を含有する場合の化粧料組成物100質量%中の含有量は、防腐性向上の観点から、0.01質量%以上が好ましく、0.02質量%以上がより好ましく、0.04質量%以上がさらに好ましい。また、成分(E)を含有する場合の化粧料組成物100質量%中の含有量は、品質の安定性の観点から、0.20質量%以下が好ましく、0.10質量%以下がより好ましく、0.08質量%以下がさらに好ましい。
【0042】
<その他の成分>
本実施形態に係る化粧料組成物は、成分(A)、成分(B)、成分(C)、成分(D)、および成分(E)以外の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、例えば、清涼化剤、増粘剤、pH調整剤、香料、色素、酸化防止剤、ビタミン類、動植物抽出物、成分(E)以外の金属イオン封鎖剤等が挙げられる。
【0043】
上記清涼化剤としては、特に限定されないが、例えば、l-メントール、メンチルグリセリルエーテル、乳酸メンチル、ハッカ油、ペパーミント油、カンファー、イシリン等が挙げられる。上記酸化防止剤としては、特に限定されないが、例えば、トコフェロールおよびその誘導体、アスコルビン酸およびその誘導体等が挙げられる。
【0044】
上記増粘剤としては、特に限定されないが、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、キサンタンガム等が挙げられる。
【0045】
成分(E)以外の金属イオン封鎖剤(キレート剤)としては、特に限定されないが、例えば、エデト酸、エデト酸カリウム塩、リン酸、グルコン酸、コハク酸、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸3ナトリウム、ヘキサメタリン酸ソーダ、1-ヒドロキシエタン,1‐ジフォスホン酸、1-ヒドロキシエタン-1,1‐ジフォスホン酸四ナトリウム塩、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、などが挙げられる。
【0046】
pH調整剤としては、特に限定されないが、例えば、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酒石酸等が挙げられる。
【0047】
本実施形態に係る化粧料組成物の製剤化は、一般に知られている製造方法により行うことができる。例えば、上記各成分を混合し、ディスパーミキサー、パドルミキサー等の公知の撹拌装置を用いて撹拌する方法等が挙げられる。
【0048】
本実施形態の化粧料組成物のシート基材への含浸は一般に知られている方法により行うことができる。例えば、密閉容器に充填された化粧料組成物に、シート基材を浸してシート基材全体に化粧料組成物を湿潤させる方法等が挙げられる。
【0049】
本実施形態に係るシート化粧料は、皮膚(肌)を拭くために用いられる。本実施形態に係るシート化粧料の拭き取り部位としては、特に限定されず、例えば、顔面(例えば、額、目元、目じり、頬、口元等)や、腕、肘、手の甲、指先、足、膝、かかと、首、脇、背中等が挙げられる。本実施形態に係るシート化粧料の用途としては、例えば、洗顔シート、ボディ用拭き取りシート、ウェットティッシュ、使い捨ておしぼり、お尻拭きシート、メイク落としシートなどが挙げられる。なかでもでも、顔面拭き取り用、ボディ拭き取り用に用いられることが好ましい。拭き取った後は、肌に塗布された本実施形態に係る化粧料組成物を洗い流してもよいし、洗い流さなくてもよい。なお、本実施形態に係るシート化粧料は、化粧品、医薬部外品、医薬品、雑貨のいずれであってもよい。
【実施例0050】
以下、本実施形態を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本実施形態はこれら実施例にのみ限定されるものではない。なお、配合量は、特記しない限り、有効成分の配合量であり、「質量%」で表す。
【0051】
以下、実施例および比較例において用いた各種材料をまとめて示す。
フェノキシエタノール:四日市合成(株)製の「フェノキシエタノール-S」
安息香酸ナトリウム:東亞合成(株)製の「安息香酸ナトリウム」
界面活性剤:日本エマルジョン(株)製のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油「EMALEX HC-60」(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(60E.O.)
三リン酸5ナトリウム:米山化学工業(株)製の「トリポリリン酸ナトリウム」
EDTA-2Na:ライオン(株)製の「ディゾルビンNA-2」
クエン酸:扶桑化学工業(株)製の「精製クエン酸M(結晶)」
クエン酸ナトリウム:昭和化工(株)製の「クエン酸三ナトリウム(結晶)S」
水:精製水
【0052】
表1および表2に記した各成分を常法に従い混合し、実施例および比較例の各化粧料組成物を調製した。得られた各皮膚化粧料組成物をそれぞれ不織布(大きさ20cm×25cm、目付45g/m2、厚さ250μm、重さ2.25g)に含浸させ、各シート化粧料を得た。得られた各シート化粧料について、下記の通り防腐性試験を行い、防腐性を評価した。
【0053】
<接種用菌液の調整>
寒天培地を用いて35℃で培養した緑膿菌を液体培地に移し、緑膿菌が約108CFU/mLになるまで培養し、接種用菌液とした。
【0054】
<防腐性試験>
各シート化粧料1枚を、滅菌処理済みのバイアル(容積100mL)に投入し、接種用菌液を均一に接種してバイアルを密閉し、各試験試料を得た。接種用菌液の接種量は、シート化粧料1枚に対して化粧料組成物の含浸量の1/100量とした。得られた各試験試料は35℃で恒温槽内に保存した。1日間または7日間保存後、バイアルからシート化粧料を取り出し、2%Tween80を添加した生理食塩水10mLをシート化粧料に添加して十分に撹拌した。懸濁液を回収し、懸濁液を寒天培地に混釈して2日間培養し、コロニー数を計測した。防腐性は、懸濁液中のコロニー形成単位(CFU/mL)により下記の通り評価した。
+(良好):1日後および7日後の生菌数が10CFU/mL未満
-(不良):1日後および/または7日後の生菌数が10CFU/mL以上
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
表1および表2の結果より、本実施形態に係るシート化粧料は、高い防腐性を有することがわかる。
【0058】
下表に処方例を記載する。なお、配合量は「質量%」で表す。
【0059】
処方例1
不織布(大きさ20cm×25cm、目付45g/m2、重さ2.25g)100質量部に下記組成からなる化粧料組成物400質量部を含浸させて、シート化粧料とした。
フェノキシエタノール 0.50質量%
安息香酸ナトリウム 0.20質量%
ハッカ油 0.10質量%
PEG-50水添ヒマシ油 0.50質量%
メントキシプロパンジオール 0.10質量%
ベタイン 0.50質量%
クエン酸 0.10質量%
クエン酸ナトリウム 0.05質量%
香料 0.02質量%
精製水 残部
合計 100.00質量%
【0060】
処方例2
不織布(大きさ20cm×25cm、目付45g/m2、重さ2.25g)100質量部に下記組成からなる化粧料組成物550質量部を含浸させて、シート化粧料とした。
フェノキシエタノール 0.70質量%
安息香酸ナトリウム 0.10質量%
PPG-6デシルテトラデセス-20 0.90質量%
EDTA-2Na 0.10質量%
ラベンダー油 0.01質量%
クエン酸 0.10質量%
クエン酸ナトリウム 0.05質量%
フィチン酸 0.01質量%
ジプロピレングリコール 2.00質量%
キサンタンガム 0.02質量%
精製水 残部
合計 100.00質量%
【産業上の利用可能性】
【0061】
本実施形態に係るシート化粧料は、低級アルコールおよび多価アルコールの含有量が少ないにもかかわらず、高い防腐性を有するので、肌刺激に敏感な使用者がいる場合や、刺激に敏感な箇所に使用する場合にも有用であり、さらに宇宙空間など水溶性揮発成分の使用が制限されている場面でも、有用である。