IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダイハツ工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-車両構造 図1
  • 特開-車両構造 図2
  • 特開-車両構造 図3
  • 特開-車両構造 図4
  • 特開-車両構造 図5
  • 特開-車両構造 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132141
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】車両構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20230914BHJP
   B62D 25/08 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
B62D25/20 C
B62D25/08 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022037305
(22)【出願日】2022-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106024
【弁理士】
【氏名又は名称】稗苗 秀三
(74)【代理人】
【識別番号】100167841
【弁理士】
【氏名又は名称】小羽根 孝康
(74)【代理人】
【識別番号】100168376
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 清隆
(72)【発明者】
【氏名】坂東 正樹
(72)【発明者】
【氏名】井上 大輔
(72)【発明者】
【氏名】奥村 寿男
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA02
3D203BB16
3D203BC14
3D203BC35
3D203CA23
3D203CA37
3D203CB09
3D203CB12
3D203CB19
3D203DA08
3D203DA12
(57)【要約】
【課題】制動アクチュエータの下方にあるエンジンマウント等の下方部品を着脱する際に、制動アクチュエータを作業の邪魔にならないように配置して、ブレーキ配管を取り外さなくても下方部品を容易に着脱可能とする。
【解決手段】エンジンルーム内に、制動アクチュエータ1がブラケット10を介して車体に取り付けられ、制動アクチュエータ1の下方においてエンジンマウント5が車体に締結され、車両上方視でエンジンマウント5の締結部8の一部が制動アクチュエータ1とオーバラップする。ブラケット10の一部に凹部30が形成され、締結部8は、車両上方視で制動アクチュエータ1と凹部30とで囲まれる範囲内に設定される。工具を制動アクチュエータ1とブラケット10の凹部30との間に差し込み、工具で制動アクチュエータ1をずらしながら、工具を締結部8の上方に移動させる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンルーム内に、制動アクチュエータがブラケットを介して車体に取り付けられ、制動アクチュエータの下方において下方部品が車体に締結され、車両上方視で下方部品の締結部の一部が制動アクチュエータとオーバラップする車両構造であって、ブラケットの一部に凹部が形成され、締結部は、車両上方視で制動アクチュエータと凹部とで囲まれる範囲内に設定されたことを特徴とする車両構造。
【請求項2】
制動アクチュエータはサスペンションタワーの車両前方側に配置され、制動アクチュエータの車両後方側に燃料系部品が配置され、凹部よりも車両後方側のブラケット上に燃料系部品の取付部が設けられたことを特徴とする請求項1記載の車両構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンルーム内に制動アクチュエータが配設され、その周辺に他の部品が配設された車両構造に関する。
【背景技術】
【0002】
走行する車両の不安定な挙動を抑制して走行安定性を高めるための運転支援システムとして、VSCやABSが導入されている。これらのシステムでは、ブレーキ圧を自動的に制御するために制動アクチュエータを備えている。制動アクチュエータは、エンジンルーム内に配設され、例えば特許文献1に記載のように、制動アクチュエータは、ダッシュパネルに取り付けられたブレーキブースタとエプロンパネルとサスペンションタワーとにより画成された領域に配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-318601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
制動アクチュエータの周辺には他の部品が配置されて、周辺スペースが狭いため、制動アクチュエータの配置が制約される。制動アクチュエータがエンジンマウントの上方に重ねて配置されると、工具を用いたエンジンマウントの取外し作業が困難となる。そのため、制動アクチュエータおよび制動アクチュエータに接続されたブレーキ配管を取り外す必要が生じ、作業性が悪くなる。
【0005】
そこで、本発明は、上記に鑑み、制動アクチュエータの下方にあるエンジンマウント等の下方部品を着脱する際に、制動アクチュエータを作業の邪魔にならないように配置して、ブレーキ配管を取り外さなくても下方部品を容易に着脱できる車両構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車両構造は、エンジンルーム内に、制動アクチュエータがブラケットを介して車体に取り付けられ、制動アクチュエータの下方において下方部品が車体に締結され、車両上方視で下方部品の締結部の一部が制動アクチュエータとオーバラップする。そして、ブラケットの一部に凹部が形成され、締結部は、車両上方視で制動アクチュエータと凹部とで囲まれる範囲内に設定される。
【0007】
制動アクチュエータの下方にある下方部品の締結作業は行うとき、工具を制動アクチュエータとブラケットの凹部との間に差し込み、工具で制動アクチュエータをずらしながら、工具を締結部の上方に移動させる。したがって、ブレーキ配管を外すことなく制動アクチュエータを取り付けたまま締結作業を行える。
【0008】
制動アクチュエータはサスペンションタワーの車両前方側に配置され、制動アクチュエータの後方に燃料系部品が配置され、凹部よりも車両後方側のブラケット上に燃料系部品の取付部が設けられる。燃料系部品をサスペンションタワーに取り付ける必要がなくなり、燃料系部品の取付スペースを容易に確保できる。そして、衝突などで衝撃が加わって、制動アクチュエータが車両後方側に移動するとき、凹部が変形して衝撃を吸収し、燃料系部品の車両後方側への移動が抑制される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、ブラケットに凹部を設けることにより、工具の締結部へのアクセス性が向上し、工具を用いた下方部品の着脱作業を容易に行うことができる。また、燃料系部品の取付部の前方に凹部を設けることにより、前方からの衝撃を吸収することができ、燃料系部品の破損を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態のエンジンルーム内の車両構造の斜視図
図2】制動アクチュエータの周辺を上から見た図
図3】制動アクチュエータの周辺を側方から見た図
図4】ブラケットの斜視図
図5】締結部に工具を差し込んだときの様子を示す図
図6】制動アクチュエータと凹部との間に差し込まれた工具の動きを示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態に係る車両構造を図1~3に示す。本実施形態の車両では、VSCやABSにおいてブレーキ圧を自動的に制御するための制動アクチュエータ1がエンジンルーム内のサスペンションタワー2の前方に配置された構造とされる。制動アクチュエータ1の下方には、下方部品が配置され、制動アクチュエータ1よりも車両後方側でダッシュパネル3の車両前方側に燃料系部品が配置される。そして、制動アクチュエータ1には、ワイヤハーネスおよび複数のブレーキパイプ4が接続され、各ブレーキパイプ4はマスターシリンダやホイールシリンダに接続されている。
【0012】
下方部品は、エンジンマウント5とされ、エンジンマウント5はサイドメンバ6上に設けられ、締結によってサイドメンバ6に取り付けられる。エンジンマウント5上にボルト7による締結部8が設けられ、締結部8はエンジンマウント5の後部で制動アクチュエータ1よりも下方に位置し、車両の上方から見て、締結部8の一部が制動アクチュエータ1とオーバラップし、ボルト7の頭部の一部が制動アクチュエータ1で隠れる。燃料系部品であるキャニスタ9は、サスペンションタワー2の斜め前で制動アクチュエータ1の斜め後かつ斜め下に位置し、エンジンマウント5よりも車両後方側のサイドメンバ6上に取り付けられている。
【0013】
制動アクチュエータ1は、ブラケット10を介して車体のサスペンションタワー2とエンジンマウント5に取り付けられ、このブラケット10に、キャニスタ9も取り付けられる。ブラケット10は、図4に示すように、制動アクチュエータ1を支持する支持板11と、サスペンションタワー2に取り付けられる後固定部12と、エンジンマウント5に取り付けられる前固定部13と、キャニスタ9を取り付ける取付部14とを備えている。
【0014】
支持板11には、制動アクチュエータ1の下面を支持する下支持部15と、制動アクチュエータ1の側面を支持する横支持部16と、制動アクチュエータ1の前面を支持する前支持部17とが設けられ、制動アクチュエータ1は、各支持部15~17にクッション18を介してボルト19により取り付けられる。
【0015】
後固定部12は、支持板11から斜め後に向かって延びるように、さらに上側に向かって折り曲げられた延伸板12aの先端側に形成される。ボルト孔12bが形成された後固定部12がサスペンションタワー2上にボルト20で固定される。前固定部13は、支持板11から斜め前に向かって延びた延伸板13aの先端側に形成される。ボルト孔13bが形成された前固定部13がエンジンマウント5の上部にボルト20で固定される。
【0016】
取付部14は、支持板11から立ち上がって形成された横支持部16から車両後方側かつ斜め下に向かって延びた延伸板14aの先端側に形成される。係合孔14bが形成された取付部14にキャニスタ9の上部が樹脂ピン21により係合され、キャニスタ9の下部には係合ピンが一体成形され、係合ピンがサイドメンバ6の上面の孔に差し込まれて、キャニスタ9は簡易に車体に取り付けられる。
【0017】
ブラケット10の一部に凹部30が形成される。凹部30は、制動アクチュエータ1の側面に対向する取付部14の延伸板14aの斜め下に向かって傾斜した部分に形成され、凹部30は制動アクチュエータ1から外側方向、すなわち制動アクチュエータ1から離れる方向に膨らんだ形状とされる。取付部14は凹部30よりも車両後方側のブラケット10上に設定される。凹部30は、制動アクチュエータ1とキャニスタ9との間でエンジンマウント5上の締結部8の上方に位置し、この凹部30により、取付部14の延伸板14aと制動アクチュエータ1との間の隙間が大きくなって、凹部30は締結部8の直上の位置から回避される。これにより、締結部8は、車両上方視で制動アクチュエータ1と凹部30とで囲まれる範囲内に設定される。
【0018】
キャニスタ9がブラケット10の取付部14に取り付けられることにより、キャニスタ9は制動アクチュエータ1と一体的に車体に取り付けられることになる。これにより、キャニスタ9をサスペンションタワー2に取り付ける必要がなくなり、サスペンションタワー2周辺の取付スペースを削減でき、スペース効率がよくなる。
【0019】
そして、衝突などによって、車両前方側から制動アクチュエータ1が押されると、制動アクチュエータ1は車両後方側に侵入する。なお、衝突極初期の衝撃では、ブラケット10はサスペンションタワー2に取り付けられているので、キャニスタ9は後方に変位し難い。制動アクチュエータ1はサスペンションタワー2に向かって移動するが、衝突初期に制動アクチュエータ1が車両後方側に移動する際、キャニスタ9はサイドメンバ6に取り付けられているので、ブラケット10の一部である凹部30が座屈して、衝撃が吸収され、キャニスタ9はダッシュパネル3の方向に押されない。凹部30が座屈すると、制動アクチュエータ1とキャニスタ9との間に延伸板14aが介在し、制動アクチュエータ1はキャニスタ9には接触しない。
【0020】
衝突中期から後期になると、制動アクチュエータ1は、サスペンションタワー2に当接して、サスペンションタワー2の前部を押しつぶしながら車両後方側に移動する。この移動に伴って、ブラケット10を介して制動アクチュエータ1と一体化されているキャニスタ9は、サイドメンバ6から外れ、キャニスタ9も車両後方側に移動する。
【0021】
制動アクチュエータ1とキャニスタ9が同時に移動するので、制動アクチュエータ1がキャニスタ9に干渉することを回避でき、キャニスタ9の破損を防いで、燃料漏れなどの被害をなくすことができる。このように、衝突初期にはブラケット10の一部が変形することにより、キャニスタ9の移動を抑制することができるので、衝突時のキャニスタ9の変位量が小さくなり、ダッシュパネル3に衝突することを防げる。
【0022】
上記のように、エンジンマウント5の上方に制動アクチュエータ1を重ねて配置することにより、スペースを効率よく使用することができる。ところで、エンジンマウント5を取り外すとき、工具を用いて締結部8のボルト7を外す。工具31として、先端径が大きいビットを用いた工具31が用いられる。
【0023】
締結部8の一部が制動アクチュエータ1とオーバーラップしているので、制動アクチュエータ1を作業の邪魔にならないように配置できる。すなわち、工具31を制動アクチュエータ1の上方から締結部8に向けて差し込むとき、図5に示すように、工具31を制動アクチュエータ1よりも車両後方側の斜め上方から差し込む。工具31をブラケット10の凹部30の下端側に合わせて差し込むと、制動アクチュエータ1と凹部30との間の隙間を通り、工具31が締結部8に向けてガイドされ、工具31の先端が締結部8のボルト7の頭部に差し込まれる、この隙間を工具31の先端が通れるように、制動アクチュエータ1とブラケット10の延伸板14aを互いに寄せることにより、エンジンルーム内の空きスペースを拡大できる。
【0024】
図6に示すように、斜めに差し込まれた工具31を直立するように移動させると、制動アクチュエータ1の側面とブラケット10の凹部30がガイドになって、工具31が直立した状態になる。このとき、締結部8が支点、制動アクチュエータ1が作用点、工具31の上部が力点となり、工具31に押されて制動アクチュエータ1は少し持ち上げられながら横に移動するので、工具31を容易に作業できる直立した状態まで移動させることができる。
【0025】
このように、締結部8にオーバーラップしている制動アクチュエータ1を工具31で少しずらすことにより、制動アクチュエータ1は作業の邪魔にならず、締結部8のボルト7の着脱を容易に行うことができる。しかも、制動アクチュエータ1のブレーキパイプ4を外す必要がなく、工具31を差し込むだけでよく、エンジンマウント5の着脱の作業時間を短縮でき、作業性がアップする。なお、この作業を行うとき、ブラケット10を車体から取り外す、あるいは制動アクチュエータ1をブラケット10から取り外しておくと、制動アクチュエータ1が移動しやすくなり、作業がより簡易となる。
【0026】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で上記実施形態に多くの修正および変更を加え得ることは勿論である。下方部品として、加速度センサなどのサイドメンバ6に取り付けられる電装部品であってもよい。
【符号の説明】
【0027】
1 制動アクチュエータ
2 サスペンションタワー
4 ブレーキパイプ
5 エンジンマウント
6 サイドメンバ
7 ボルト
8 締結部
9 キャニスタ
10 ブラケット
14 取付部
30 凹部
31 工具
図1
図2
図3
図4
図5
図6