(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132155
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】パイプと金属部品とのアッセンブリ品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B23K 1/14 20060101AFI20230914BHJP
【FI】
B23K1/14 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022037323
(22)【出願日】2022-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】岡野 詢
(72)【発明者】
【氏名】瀬田 典幸
(57)【要約】
【課題】ロウ付けによってパイプと金属部品とを良好に一体化できるパイプと金属部品とのアッセンブリ品の製造方法を提供する。
【解決手段】外周面2aにフラックスFを塗布したパイプ2の一端部をヘッド部3の他端面側から嵌合凹部3aに嵌合し、パイプ2の一端面2bを嵌合凹部3aの対向する端面3bに当接させ、ヘッド部3の他端面に隣接させて外周面2aにロウ付け材料Wを配置して、外周面2aを嵌合凹部3aの内周面および端面3bにより囲んで形成した閉鎖空間Sの内部に位置する外周面2aの範囲に設けた面取り部2cよりガス溜め部Cを形成し、ロウ付け材料Wを加熱溶融させて閉鎖空間Sに充填し、固化したロウ付け材料Wを介してパイプ2の一端部とヘッド部3とを一体化し、フラックスFから発生したガスgをガス溜め部Cに貯留する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプと金属部品とがロウ付けにより一体化されているパイプと金属部品とのアッセンブリ品の製造方法において、
外周面にフラックスを塗布した前記パイプの一端部を前記金属部品の他端面側から前記金属部品の嵌合凹部に嵌合して、前記パイプの一端面を前記嵌合凹部の対向する端面に当接させ、前記金属部品の前記他端面に隣接させて前記パイプの外周面にロウ付け材料を配置して、前記嵌合凹部に嵌合した前記パイプの前記一端部の外周面を前記対向する端面および前記嵌合凹部の内周面により囲んで閉鎖空間を形成するとともに、前記閉鎖空間の内部に位置する前記パイプの外周面または前記金属部品の嵌合凹部の少なくとも一方の範囲に設けた切欠きまたは凹部によりガス溜め部を形成しておき、
前記ロウ付け材料を加熱して溶融させて、前記閉鎖空間に充填させて固化させることにより、前記パイプの前記一端部と前記金属部品とを固化した前記ロウ付け材料を介して一体化し、前記加熱により前記フラックスから発生したガスを、前記ガス溜め部に貯留させるパイプと金属部品とのアッセンブリ品の製造方法。
【請求項2】
前記パイプの前記一端部を上端部にして、この上端部に前記嵌合凹部が嵌合している状態で、前記ロウ付け材料を加熱して溶融させる請求項1に記載のパイプと金属部品とのアッセンブリ品の製造方法。
【請求項3】
前記ガス溜め部を、前記パイプの前記一端部に面取り部を設けることで形成する請求項1または2に記載のパイプと金属部品とのアッセンブリ品の製造方法。
【請求項4】
前記ガス溜め部を、前記対向する端面に前記パイプの前記一端面の環状に沿った環状溝を設けることで形成する請求項1~3のいずれかに記載のパイプと金属部品とのアッセンブリ品の製造方法。
【請求項5】
前記ガス溜め部を、前記パイプの前記外周面に周方向に連続する環状溝を設けることで形成する請求項1~4のいずれかに記載のパイプと金属部品とのアッセンブリ品の製造方法。
【請求項6】
前記嵌合凹部に対する前記パイプの前記一端部の嵌合深さが20mm以上である請求項1~5のいずれかに記載のパイプと金属部品とのアッセンブリ品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイプと金属部品とのアッセンブリ品の製造方法に関し、さらに詳しくは、ロウ付けによってパイプと金属部品とを良好に一体化できるアッセンブリ品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パイプと金属部品とをロウ付けによって一体化させる方法が種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。ロウ付けするパイプの外周面の酸化被膜を除去や、ロウ付け材料のぬれ性の向上のために、パイプの外周面には予めフラックスが塗布される。ロウ付け材料を加熱溶融させてフラックスが活性温度に達すると、酸化被膜が分解する際にガスが発生する。
【0003】
パイプの一端部を金属部品に嵌合させた状態でロウ付けを行う際に、例えばパイプの一端が金属部品の対向する端面に当接して、フラックスが塗布された範囲が嵌合部分に囲まれて外気と連通し難くなる構造の場合がある。このような構造の場合、ロウ付け材料を加熱溶融した際にフラックスから発生したガスの逃げ場がなくなり、ロウ付け部分にボイド(気泡)として残留する。ボイドが存在している部分は、ロウ付けされていない不良部分になるため、パイプと金属部品とを十分強固に一体化させるには障害になる。それ故、ロウ付けによりパイプと金属部品とを一体化する際に、ロウ付け部分に発生するボイドを抑制させて良好に一体化するには改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、ロウ付けによってパイプと金属部品とを良好に一体化できるパイプと金属部品とのアッセンブリ品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明のパイプと金属部品とのアッセンブリ品の製造方法は、パイプと金属部品とがロウ付けにより一体化されているパイプと金属部品とのアッセンブリ品の製造方法において、外周面にフラックスを塗布した前記パイプの一端部を前記金属部品の他端面側から前記金属部品の嵌合凹部に嵌合して、前記パイプの一端面を前記嵌合凹部の対向する端面に当接させ、前記金属部品の前記他端面に隣接させて前記パイプの外周面にロウ付け材料を配置して、前記嵌合凹部に嵌合した前記パイプの前記一端部の外周面を前記対向する端面および前記嵌合凹部の内周面により囲んで閉鎖空間を形成するとともに、前記閉鎖空間の内部に位置する前記パイプの外周面または前記金属部品の嵌合凹部の少なくとも一方の範囲に設けた切欠きまたは凹部によりガス溜め部を形成しておき、前記ロウ付け材料を加熱して溶融させて、前記閉鎖空間に充填させて固化させることにより、前記パイプの前記一端部と前記金属部品とを固化した前記ロウ付け材料を介して一体化し、前記加熱により前記フラックスから発生したガスを、前記ガス溜め部に貯留させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、前記嵌合凹部に嵌合した前記パイプの前記一端部の外周面が前記対向する端面および前記嵌合凹部の内周面により囲まれて閉鎖空間が形成されるような前記パイプと前記金属部品との嵌合構造であっても、前記閉鎖空間の内部には前記ガス溜め部が形成されている。したがって、前記ロウ付け材料を加熱して溶融させた際に、前記フラックスから発生したガスは前記ガス溜め部に貯留させることができる。即ち、意図した位置に予め形成されている前記ガス溜め部に前記ガスを貯留することで、固化した前記ロウ付け材料によるロウ付け部分の任意の位置に前記ガスが残留することを回避できる。それ故、ロウ付けによってパイプと金属部品とを良好に一体化するには有利になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明により製造されるアッセンブリ品を縦断面視で例示する説明図である。
【
図4】
図1のアッセンブリ品を構成するそれぞれの部品を一体化する前の状態で例示する説明図である。
【
図5】
図4のパイプの一端部をヘッド部の篏合凹部に嵌合した状態を縦断面視で例示する説明図である。
【
図6】
図5のヘッド部の下端面に隣接させてパイプの外周面にロウ付け材料を配置した状態を拡大して例示する説明図である。
【
図7】
図6のロウ付け材料を加熱溶融させてヘッド部の嵌合凹部とパイプの外周面とのすき間に充填する状態を例示する説明図である。
【
図8】
図7の充填したロウ付け材料によりヘッド部とパイプとをロウ付けして一体化させた状態を例示する説明図である。
【
図9】
図4のパイプの他端部をニップルの篏合凹部に嵌合した状態を縦断面視で例示する説明図である。
【
図10】アッセンブル品の製造方法の別の実施形態において、パイプの一端部をヘッド部の篏合凹部に嵌合する状態を縦断面視で例示する説明図である。
【
図11】
図10のヘッド部の下端面に隣接させてパイプの外周面にロウ付け材料を配置した状態を例示する説明図である。
【
図12】
図11のロウ付け材料によりヘッド部とパイプとをロウ付けして一体化させた状態を例示する説明図である。
【
図13】アッセンブル品の製造方法の別の実施形態において、パイプの一端部を篏合凹部に篏合させた状態のヘッド部の下端面に隣接させてパイプの外周面にロウ付け材料を配置した状態を例示する説明図である。
【
図14】
図13のロウ付け材料によりヘッド部とパイプとをロウ付けして一体化させた状態を例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のパイプと金属部品とのアッセンブリ品の製造方法を、図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0010】
図1~
図3に例示するパイプ2と金属部品3、4とのアッセンブリ品1が本発明により製造される。このアッセンブリ品1は、
図4に例示するように、パイプ2と金属部品であるヘッド部3およびニップル4とを有し、パイプ2とヘッド部3およびニップル4とがロウ付けにより接合されて一体化されている。この実施形態ではアッセンブリ品1はパイプ2の一端部にヘッド部3が接合され、パイプ2の他端部にニップル4が接合されているが、アッセンブリ品1は、パイプ2の両端部の少なくとも一方に金属部品3、4が接合されたものであればよい。
【0011】
パイプ2、ヘッド部3、ニップル4はそれぞれ金属製であり、炭素鋼、ステンレス鋼、アルミニウム合金などの汎用的な公知の材質で形成されている。パイプ2とヘッド部3およびニップル4とは、接合されるこれら材質に適した公知のロウ付け材料Wを用いてロウ付けされている。例えば、銀ロウ付け、銅ロウ付けなどにより、パイプ2とヘッド部3およびニップル4とは接合されている。
【0012】
この実施形態ではパイプ2は、内径が一定の直管であるが、屈曲した屈曲管の場合も、内径が変化している場合もあり、形状は特に限定されない。
図4に例示するように、このパイプ2は長手方向両端部に面取り部2cを有している。そのため、このパイプ2は、面取り部2cを有していない場合に比して、長手方向の両端のそれぞれの円環状の端面2bの面積は小さくなっている。
【0013】
ヘッド部3は筒状体であり、一方端部(
図4では左側端部)の内径はテーパ状に拡径している。ヘッド部3は他方端部(
図4では右側端部)に、内径がパイプ2の外径と概ね同じサイズ(僅かに大きい程度)の篏合凹部3aを有している。この篏合凹部3aの一方端部側に、より内径が小さい円筒部が連接されている。したがって、篏合凹部3aの一方端部側には、ヘッド部3の内周側に突出する円環状の端面3bが形成されている。
【0014】
アッセンブリ品1では、ヘッド部3の他方端部にある篏合凹部3aには、パイプ2の一方端部が内挿されて嵌合されている。篏合凹部3aの内周面とパイプ2の一方端部の外周面2aとのすき間には、固化したロウ付け材料Wが充填されている。このすき間は例えば1mm以下である。このロウ付け材料Wによって、篏合凹部3aとパイプ2の一方端部とが接合されている。ヘッド部3の一方端部は、種々の機器やジョイント部品などに接続される。
【0015】
ニップル4は筒状体であり、一方端部(
図4では左側端部)に、内径がパイプ2の外径と概ね同じサイズ(僅かに大きい程度)の篏合凹部4aを有している。この篏合凹部4aの他方端部(
図4では右側端部)側に、より内径が小さい円筒部が連接されている。したがって、篏合凹部4aの他方端部側には、ニップル4の内周側に突出する円環状の端面4bが形成されている。ニップル4の他方端部側にはホースが外嵌めされるため、その外周面に多数の抜け止め突起が形成されている。
【0016】
アッセンブリ品1では、ニップル4の一方端部にある篏合凹部4aには、パイプ2の他方端部が内挿されて嵌合されている。篏合凹部4aの内周面とパイプ2の他方端部の外周面2aとのすき間には、固化したロウ付け材料Wが充填されている。このすき間は例えば1mm以下である。このロウ付け材料Wによって、篏合凹部4aとパイプ2の他方端部とが接合されている。ニップル4の他方端部側にはホースが外嵌され、このホースは種々の機器やジョイント部品などに接続される。
【0017】
以下、このアッセンブリ品1を製造する本発明の製造方法の手順の一例を説明する。
【0018】
図5に例示するように、外周面2aにフラックスFを塗布したパイプ2の一端部をヘッド部3の他端面側(
図5では下端面側)から嵌合凹部3aに内挿して嵌合させる。嵌合凹部3aに対するパイプ2の一端部の嵌合深さhは例えば15mm以上である。フラックスFは、ロウ付けするパイプ2の外周面2aの酸化被膜を除去や、ロウ付け材料Wのぬれ性の向上のために使用され、公知のものを用いればよい。嵌合凹部3bに篏合させたパイプ2の一端面2bは、嵌合凹部3bの対向する端面3bに当接させる。これにより、嵌合凹部3aに嵌合したパイプ2の一端部の外周面2aを嵌合凹部3aの内周面および端面3bより囲んで、袋小路になった閉鎖空間Sが形成される。
【0019】
そして、
図6に例示するように、ヘッド部3の他端面(
図6では下端面)に隣接させてパイプ2の外周面2aに、公知のロウ付け材料Wを配置する。ロウ付け材料Wは、パイプ2の外周面2aに沿って円環状に配置する。これにより、袋小路の閉鎖空間Sが一段と外部と連通し難くなる。
【0020】
パイプ2の一端部には面取り部2cが形成されている。したがって、閉鎖空間Sの内部に位置するパイプ2の外周面2aには面取り部2cが存在していて、面取り部2cが無い場合に比して閉鎖空間Sの容積が大きくなっている。この容積が大きくなっている領域がガス溜め部Cとして機能する。即ち、この実施形態では、篏合凹部3aの内周面および端面3bと面取り部2cとで囲まれる領域がガス溜め部Cになっている。
【0021】
次いで、ロウ付け材料Wを例えば、高周波加熱などの公知の方法により加熱して溶融させる。
図7に例示するように、溶融したロウ付け材料Wは、毛細管現象によって、篏合凹部3aの内周面とパイプ2の一方端部の外周面2aとのすき間に浸透拡散して閉鎖空間Sに充填される。閉鎖空間Sに充填されたロウ付け材料Wが冷却して固化することにより、
図8に例示するようにパイプ2の一端部とヘッド部3(篏合凹部3a)とが、固化したロウ付け材料Wを介して接合されて一体化する。
【0022】
ここで、ロウ付け材料Wの加熱に伴い、フラックスFも加熱されて活性温度に達すると、外周面2aの酸化被膜が分解する際にガスgが発生する。このパイプ2の一端部とヘッド部3との篏合構造では、閉鎖空間Sが形成されているため、発生したガスgを閉鎖空間Sの外部に排出させることできない。しかしながら、閉鎖空間Sにはガス溜め部Cが存在しているので、
図8に例示するように、発生したガスgをガス溜め部Cに貯留させることができる。
【0023】
発生したガスgをガス溜め部Cに貯留させることで、篏合凹部3aの内周面とパイプ2の一方端部の外周面2aとの狭いすき間で固化したロウ付け材料Wによるロウ付け部分にガスgがボイドとして残留することを抑制できる。これに伴い、この狭いすき間でのロウ付け面積の減少を抑えることができるので、パイプ2の一端部とヘッド部3とをより強固に接合して良好に一体化するには有利になる。
【0024】
このように本発明では、閉鎖空間Sの意図した位置(接合強度に影響が少ない位置)に予めガス溜め部Cを形成している。それ故、発生したガスgが、ロウ付け部分のパイプ2の一端部とヘッド部3との接合強度の低下に大きく影響する位置にボイドとして残留することが回避されるので、ロウ付けによってパイプ2とヘッド部3とを良好に一体化するには有利になっている。
【0025】
従来技術では、嵌合凹部3aに対するパイプ2の一端部の嵌合深さhが20mm以上であると、発生するガスgの量が多くなるとともに、ガスgが閉鎖空間Sに残留する割合が高くなる。これに伴い、発生したガスgが、ロウ付け部分のパイプ2の一端部とヘッド部3との接合強度の低下に大きく影響する位置に残留易くなるため、パイプ2の一端部とヘッド部3とを強固に接合して良好に一体化することが困難になる。しかしながら、本発明によれば、閉鎖空間Sにガス溜め部Cを設けることで、篏合深さhが20mm以上であっても、パイプ2の一端部とヘッド部3とを強固に接合することが可能になる。
【0026】
図6~
図8に例示するように、この実施形態ではパイプ2の一端部を上端部にして、この上端部に嵌合凹部3aが嵌合している状態で、ロウ付け材料Wを加熱して溶融させている。したがって、ガス溜め部Cは閉鎖空間Sの上方に位置している。発生するガスgは自然に上方に移動してガス溜め部Cに向かうので、ガスgをガス溜め部Cに円滑に貯留させるには一段と有利になっている。
【0027】
上述した説明では、パイプ2の一端部をヘッド部3の篏合凹部3aに篏合させて両者をロウ付けする場合を例にしたが、
図9に例示するように、パイプ2の他端部をニップル4の篏合凹部4aに篏合させて両者をロウ付けする場合も同様の手順で行う。この場合も、篏合凹部4aの内周面および端面4bとパイプ2の他端部の面取り部2cとで囲まれる領域がガス溜め部Cになる。そして、発生したガスgをガス溜め部Cに貯留させることで、篏合凹部4aの内周面とパイプ2の他方端部の外周面2aとの狭いすき間で固化したロウ付け材料Wの中にガスgがボイドとして残留することを抑制できる。これに伴い、この狭いすき間でのロウ付け面積の減少を抑えることができるので、パイプ2の他端部とニップル4とをより強固に接合して良好に一体化するには有利になる。
【0028】
上述した実施形態では、パイプ2の長手方向両端部に面取り部2cを設けることでガス溜め部Cが形成されるので、ガス溜め部Cのためにヘッド部3を加工する必要がない。ガス溜め部Cはこの形態に限らず、その他の形態を採用することができる。
【0029】
図10に別の形態のガス溜め部Cを有するアッセンブリ品1の実施形態を例示する。この実施形態では、篏合凹部3aのパイプ2の一端面2bに対向する端面3bに、パイプ2の一端面2bの環状に沿った環状溝3cが設けられている。一端面2bと対向するこの環状溝3cがガス溜め部Cになっている。このパイプ2は、一端部に面取り部2cを有していない単純な直管である。
【0030】
この実施形態では、外周面2aにフラックスFを塗布したパイプ2の一端部をヘッド部3の他端面側(
図10では下端面側)から嵌合凹部3aに嵌合して、パイプ2の一端面2bを対向する端面3bに当接させる。次いで、
図11に例示するように、ヘッド部3の他端面(
図11では下端面)に隣接させてパイプ2の外周面2aにロウ付け材料Wを配置し、嵌合凹部3aに嵌合したパイプ2の一端部の外周面2aを、篏合凹部3aの内周面および端面3bにより囲んで閉鎖空間Sが形成される。
【0031】
嵌合凹部3aには環状溝3cが形成されている。したがって、閉鎖空間Sの内部に位置する嵌合凹部3aには環状溝3cが存在していて、環状溝3cが無い場合に比して閉鎖空間Sの容積が大きくなっている。この容積が大きくなっている領域がガス溜め部Cとして機能する。
【0032】
次いで、ロウ付け材料Wを加熱して溶融させて、閉鎖空間Sに充填させて固化させることにより、パイプ2の一端部とヘッド部3(篏合凹部3a)とが、固化したロウ付け材料Wを介して一体化される。
図12に例示するように、ロウ付け材料Wの加熱に伴い、フラックスFから発生したガスgはガス溜め部Cに貯留させる。
【0033】
この実施形態では、ガス溜め部Cを設けるためにヘッド部3に環状溝3cを形成すればよいので、ガス溜め部Cのためにパイプ2を加工する(面取り部2cを設ける)必要がない。環状溝3cによるガス溜め部Cに加えて、上述した面取り部2cによるガス溜め部Cを用いてもよい。
【0034】
図13に別の形態のガス溜め部Cを有するアッセンブリ品1の実施形態を例示する。
【0035】
この実施形態では、パイプ2の一方端部の外周面2aに周方向に連続する環状溝2dが設けられている。この環状溝2dがガス溜め部Cになっている。
【0036】
この実施形態では、外周面2aにフラックスFを塗布したパイプ2の一端部をヘッド部3の他端面側(
図13では下端面側)から嵌合凹部3aに嵌合して、パイプ2の一端面2bを対向する端面3bに当接させる。次いで、ヘッド部3の他端面(
図13では下端面)に隣接させてパイプ2の外周面2aにロウ付け材料Wを配置し、嵌合凹部3aに嵌合したパイプ2の一端部の外周面2aを、嵌合凹部3aの内周面および端面3bにより囲んで閉鎖空間Sが形成される。
【0037】
パイプ2の一方端部の外周面2aには環状溝2dが形成されている。したがって、閉鎖空間Sの内部に位置するパイプ2の外周面2aには環状溝2dが存在していて、環状溝2dが無い場合に比して閉鎖空間Sの容積が大きくなっている。この容積が大きくなっている領域がガス溜め部Cとして機能する。
【0038】
次いで、ロウ付け材料Wを加熱して溶融させて、閉鎖空間Sに充填させて固化させることにより、パイプ2の一端部とヘッド部3(篏合凹部3a)とは、固化したロウ付け材料Wを介して一体化される。
図14に例示するように、ロウ付け材料Wの加熱に伴い、フラックスFから発生したガスgはガス溜め部Cに貯留させる。
【0039】
この実施形態では、ガス溜め部Cを設けるためにパイプ2の外周面2aに環状溝2dを形成すればよいので、ガス溜め部Cのためにヘッド部3を加工する(面取り部2cを設ける)必要がない。環状溝2dによるガス溜め部Cに加えて、上述した面取り部2cによるガス溜め部Cおよび環状溝3cによるガス溜め部Cの少なくとも一方を用いてもよい。
【実施例0040】
図5に例示するパイプとヘッド部との篏合構造において、パイプの一端部に設けた面取り部の大きさのみを表1のように異ならせ、他の条件は共通にして、炭素鋼製のパイプの一端部と炭素鋼製のヘッド部とを銀ロウ付けにより接合して一体化した10種類のアッセンブリ品を製造した。パイプの外周面にはフッ化カリウム、ホウ酸、水を主成分とするフラックスを塗布し、篏合深さhは9mmである。製造したそれぞれのアッセンブリ品を分解してパイプの一端部の外周面とヘッド部の篏合凹部の内周面とのすき間のロウ付け部分に残留したボイドの面積を測定し、その結果を表1に示す。
【0041】
表1中の「ロウ付け体積」は、篏合したパイプの一端部の外周面と、ヘッド部の篏合凹部の内周面および端面とで囲まれた部分(円筒部分)の体積であり、上述した閉鎖空間Sの体積に相当する。すべてのアッセンブリ品で「ロウ付け体積」は40.03mm3に統一した。「面取り部寸法」は、切り欠いた面取り部の一辺の寸法であり、直交する一辺どうしの隅部を45度の角度で面取りした。「すき間体積」は、篏合したパイプの一端部の外周面と、ヘッド部の篏合凹部の内周面および端面とで囲まれた部分(円筒部分)において、面取り部を設けない場合に比して面取り部を設けることにより増加した容積であり、上述したガス溜め部の体積に相当する。「ロウ付け面積」は、ロウ付け体積に対応するパイプの一端部の外周面におけるロウ付け部分の面積である。ボイド面積はこのロウ付け部分におけるボイドの総面積である。
【0042】
【0043】
表1の結果から、「ボイド面積/ロウ付け面積」により算出されるロウ付け部分に残留するボイドの割合を抑制するには、「すき間体積/ロウ付け体積」を概ね10%以上にすることが望ましいことが分かる。「すき間体積/ロウ付け体積」を15%~40%程度にすると、「ボイド面積/ロウ付け面積」を極小範囲にすることができ、パイプの一端部とヘッド部を強固に接合するには一段と有利になる。