(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132158
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】多管型ヒートパイプ
(51)【国際特許分類】
F24T 10/10 20180101AFI20230914BHJP
F28D 15/06 20060101ALI20230914BHJP
F28D 15/02 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
F24T10/10
F28D15/06 B
F28D15/02 101Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022037328
(22)【出願日】2022-03-10
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】511169999
【氏名又は名称】石川県公立大学法人
(71)【出願人】
【識別番号】300038424
【氏名又は名称】松村物産株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591040236
【氏名又は名称】石川県
(74)【代理人】
【識別番号】100149098
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149102
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 習
(72)【発明者】
【氏名】百瀬 年彦
(72)【発明者】
【氏名】喜多 剛士
(72)【発明者】
【氏名】村濱 稔
(72)【発明者】
【氏名】奥谷内 文子
(72)【発明者】
【氏名】加藤 亜矢子
(72)【発明者】
【氏名】三谷 典夫
(57)【要約】
【課題】熱交換能力を向上可能な多管型ヒートパイプを提供する。
【解決手段】多管型ヒートパイプ30は、作動液34を貯留する外管31と、作動液34内に配置される各第1内管32と、作動液34外に配置される各第2内管33とを備える。各第1内管32のうち少なくとも1つ、又は、各第2内管33のうち少なくとも1つの内部には熱媒液40が流れる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動液を貯留する外管と、
前記外管に貯留された前記作動液内にそれぞれ配置される複数の第1内管と、
前記外管に貯留された前記作動液外にそれぞれ配置される複数の第2内管と、
を備え、
前記複数の第1内管のうち少なくとも1つ、又は、前記複数の第2内管のうち少なくとも1つの内部には熱媒液が流れる、
多管型ヒートパイプ。
【請求項2】
前記複数の第1内管それぞれの内部における前記熱媒液の流通と遮断とを切り換え可能な複数の第1遮断弁と、
前記複数の第2内管それぞれの内部における前記熱媒液の流通と遮断とを切り換え可能な複数の第2遮断弁と、
を更に備える請求項1に記載の多管型ヒートパイプ。
【請求項3】
前記複数の第1内管それぞれの第1端部は、前記外管の第1端面に挿通され、
前記複数の第1内管それぞれの第2端部は、前記外管の第2端面に挿通され、
前記複数の第2内管それぞれの第1端部は、前記外管の前記第1端面に挿通され、
前記複数の第2内管それぞれの第2端部は、前記外管の前記第2端面に挿通される、
請求項1又は2に記載の多管型ヒートパイプ。
【請求項4】
前記複数の第1内管それぞれの第1端部は、前記外管の第1端面に挿通され、
前記複数の第1内管それぞれの第2端部は、前記外管の前記第1端面に挿通され、
前記複数の第2内管それぞれの第1端部は、前記外管の第2端面に挿通され、
前記複数の第2内管それぞれの第2端部は、前記外管の前記第2端面に挿通される、
請求項1又は2に記載の多管型ヒートパイプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多管型ヒートパイプに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、地中に埋設された熱交換パイプに外気を導入し、熱交換パイプ内で熱交換された外気を室内に取り込む熱交換システムが提案されている。特許文献1に記載の熱交換システムによれば、夏季には地層を冷熱源として利用することで外気から地層に熱を放出でき、冬季には地層を温熱源として利用することで地層から外気に熱を取り込むことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の熱交換システムでは、熱交換パイプが地中に直接埋設されており、外気と地層との間で熱交換が行われるため、熱交換能力を向上させるにも限界がある。
【0005】
また、特許文献1に記載の熱交換システムでは、熱交換パイプ内における外気の流量を変動させることで熱交換能力を調整できるが、外気の流量を変動させてしまうと熱交換対象を所望の温度に維持できなくなるおそれがある。
【0006】
本発明は、上述した状況に鑑みてなされたものであり、熱交換能力を向上可能な多管型ヒートパイプの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る多管型ヒートパイプは、作動液を貯留する外管と、外管に貯留された作動液内にそれぞれ配置される複数の第1内管と、外管に貯留された作動液外にそれぞれ配置される複数の第2内管とを備える。複数の第1内管のうち少なくとも1つ、又は、複数の第2内管のうち少なくとも1つの内部には熱媒液が流れる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、熱交換能力を向上可能な多管型ヒートパイプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る熱交換システムの模式図である。
【
図2】第1実施形態に係る多管型ヒートパイプの斜視図である。
【
図4】第2実施形態に係る多管型ヒートパイプの断面図である。
【
図5】変形例3に係る多管型ヒートパイプの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本実施形態に係る多管型ヒートパイプについて図面を参照して説明する。図面では、同一の構成要素又は対応する構成要素には同一又は類似の符号を付し、説明の便宜上、構成を省略又は簡略化している部分がある。
【0011】
1.第1実施形態
(熱交換システム10)
図1は、第1実施形態に係る熱交換システム10の全体構成を示す模式図である。
【0012】
本実施形態に係る熱交換システム10は、栽培室1内に設置された栽培ベッド2の温度を調節するために利用される。栽培ベッド2の温度を調節することによって、栽培ベッド2に植えられた植物3の根域を生育に適した温度にすることができる。例えば植物3がトマトである場合、トマトの根域を生育に適した温度(例えば、25℃程度)にすることによって、その生育を促進させることができる。
【0013】
夏季には栽培室1の室温が30℃以上になる場合があるため、熱交換システム10を用いて栽培ベッド2を冷却することによって、植物3の根域を生育に適した温度に維持できる。冬季には栽培室1の室温が10℃以下になる場合があるため、熱交換システム10を用いて栽培ベッド2を加温することによって、植物3の根域を生育に適した温度に維持できる。
【0014】
熱交換システム10は、循環パイプ20及び多管型ヒートパイプ30を備える。
【0015】
循環パイプ20は、多管型ヒートパイプ30との間で熱媒液40を循環可能に構成される。循環パイプ20の両端部は、多管型ヒートパイプ30の両端部に接続される。これによって、循環パイプ20と多管型ヒートパイプ30とによって熱媒液40の循環路が形成される。循環パイプ20の内部には熱媒液40が流れる。熱媒液40としては、水や不凍液などを用いることができる。なお、
図1では、夏季における熱媒液40の流れが図示されている。
【0016】
循環パイプ20は、メインパイプ21、4本の第1入口側分岐管22、4本の第2入口側分岐管23、4つの第1遮断弁24、4つの第2遮断弁25、4本の第1出口側分岐管26、4本の第2出口側分岐管27及び循環ポンプ28を有する。なお、
図1では、メインパイプ21以外の部材が2つずつ図示されている。
【0017】
メインパイプ21は、栽培ベッド2の内部に挿通される。夏季には、栽培ベッド2の熱がメインパイプ21の内部を流れる熱媒液40に取り込まれることによって、栽培ベッド2が冷却されるとともに、熱媒液40が加温される。冬季には、メインパイプ21の内部を流れる熱媒液40の熱が栽培ベッド2に放出されることによって、栽培ベッド2が加温されるとともに、熱媒液40が冷却される。
【0018】
メインパイプ21の下流側端部は、4つの第1遮断弁24を介して4本の第1入口側分岐管22に接続されるとともに、4つの第2遮断弁25を介して4本の第2入口側分岐管23に接続される。メインパイプ21の上流側端部は、4本の第1出口側分岐管26と4本の第2出口側分岐管27とに接続される。
【0019】
各第1入口側分岐管22は、各第1遮断弁24と多管型ヒートパイプ30(具体的には、各第1内管32の第1端部32a)とに接続される。各第1遮断弁24は、メインパイプ21から各第1入口側分岐管22への熱媒液40の流通と遮断とを切り換え可能である。本実施形態において、各第1遮断弁24は、手動により流通状態と遮断状態とに切り換えられる。
図1では、各第1遮断弁24が流通状態に切り換えられた場合が図示されている。
【0020】
各第2入口側分岐管23は、各第2遮断弁25と多管型ヒートパイプ30(具体的には、各第2内管33の第1端部33a)とに接続される。各第2遮断弁25は、メインパイプ21から各第2入口側分岐管23への熱媒液40の流通と遮断とを切り換え可能である。本実施形態において、各第2遮断弁25は、手動により流通状態と遮断状態とに切り換えられる。
図1では、各第2遮断弁25が遮断状態に切り換えられた場合が図示されている。
【0021】
各第1出口側分岐管26は、メインパイプ21と多管型ヒートパイプ30(具体的には、各第1内管32の第2端部32b)とに接続される。各第2出口側分岐管27は、メインパイプ21と多管型ヒートパイプ30(具体的には、各第2内管33の第2端部33b)とに接続される。
【0022】
循環ポンプ28は、メインパイプ21に設置される。循環ポンプ28は、熱媒液40を循環パイプ20内に循環させる。本実施形態では、
図1に示すように、循環ポンプ28は、栽培ベッド2の下流側に配置される。循環ポンプ28は、栽培ベッド2側から吸入した熱媒液40を多管型ヒートパイプ30側に吐出する。ただし、循環ポンプ28は、栽培ベッド2の上流側に配置されていてもよい。この場合、循環ポンプ28は、多管型ヒートパイプ30側から吸入した熱媒液40を栽培ベッド2側に吐出する。
【0023】
本実施形態において、多管型ヒートパイプ30は、栽培室1付近又は栽培室1直下の地中に埋設される。多管型ヒートパイプ30は、夏季には地熱を冷熱源として利用することによって熱媒液40を冷却し、冬季には地熱を温熱源として利用することによって熱媒液40を加温する。
【0024】
多管型ヒートパイプ30は、夏季において栽培室1の室温より冷たく、かつ、冬季において栽培室1の室温より暖かい深さに埋設される。地面4から深さ1~2m付近の地温は夏季及び冬季を通じて15~20℃程度で安定しているため、多管型ヒートパイプ30の地面4からの深さは例えば1~2mとすることができる。
【0025】
(多管型ヒートパイプ30)
図2は、第1実施形態に係る横置き型の多管型ヒートパイプ30の斜視図である。
図3は、
図2のA-A断面図である。
【0026】
多管型ヒートパイプ30は、外管31、4本の第1内管32及び4本の第2内管33を備える。
【0027】
外管31は、熱伝導率が高く、土に対する耐腐食性を有する金属(例えば、ステンレスなど)によって構成される。外管31は、中空柱状に形成される。本実施形態において、外管31は、中空円柱状に形成されているがこれに限られず、中空多角柱状や中空楕円柱状であってもよい。本実施形態において、外管31は横置きされる。
【0028】
外管31は、第1端面S1及び第2端面S2を有する。第1端面S1は、第2端面S2の反対側に設けられる。第1端面S1は熱媒液40の入口側に位置し、第2端面S2は熱媒液40の出口側に位置する。
【0029】
外管31は、作動液34を貯留するための貯留空間31Aを内部に有する。貯留空間31Aは、脱気された状態で密封されている。本実施形態において、作動液34の液面は、鉛直方向において貯留空間31Aの中央付近に位置しているがこれに限られない。作動液34の液面は、鉛直方向において各第1内管32及び各第2内管33の間に位置していればよい。作動液34としては、メタノール、エタノール、代替フロン(例えば、ハイドロクロロフルオロカーボン類やハイドロフルオロカーボン類など)を用いることができる。
【0030】
各第1内管32は、熱媒液40を冷却するために用いられる。各第1内管32は、熱伝導率が高く、作動液34及び熱媒液40に対する耐腐食性を有する金属(例えば、銅など)によって構成される。各第1内管32は、作動液34内に配置される。すなわち、各第1内管32は、鉛直方向において作動液34の液面より下に配置される。本実施形態において、各第1内管32は略水平に延びているが、水平方向に対して若干傾斜していてもよい。
【0031】
各第1内管32の第1端部32aは、外管31の第1端面S1に挿通される。各第1内管32の第1端部32aは、上述した循環パイプ20の各第1入口側分岐管22に接続される。各第1内管32の第2端部32bは、外管31の第2端面S2に挿通される。各第1内管32の第2端部32bは、上述した循環パイプ20の各第1出口側分岐管26に接続される。このように、本実施形態では、各第1内管32が、第1端面S1から第2端面S2まで外管31を貫通している。
【0032】
各第2内管33は、熱媒液40を加温するために用いられる。各第2内管33は、熱伝導率が高く、作動液34及び熱媒液40に対する耐腐食性を有する金属(例えば、銅など)によって構成される。各第2内管33は、作動液34外に配置される。すなわち、各第2内管33は、鉛直方向において作動液34の液面より上に配置される。本実施形態において、各第2内管33は略水平に延びているが、水平方向に対して若干傾斜していてもよい。
【0033】
各第2内管33の第1端部33aは、外管31の第1端面S1に挿通される。各第2内管33の第1端部33aは、上述した循環パイプ20の各第2入口側分岐管23に接続される。各第2内管33の第2端部33bは、外管31の第2端面S2に挿通される。各第2内管33の第2端部33bは、上述した循環パイプ20の各第2出口側分岐管27に接続される。このように、本実施形態では、各第2内管33が、第1端面S1から第2端面S2まで外管31を貫通している。
【0034】
図1に示したように、夏季において熱媒液40を冷却する場合、各第1内管32のうち少なくとも1つの内部に熱媒液40が流され、各第2内管33の内部には熱媒液40が流されない。この場合、第1内管32の内部を流れる熱媒液40の熱が作動液34内に放出されると、作動液34が液面から気化熱を奪いながら蒸発する。作動液34の蒸気は、地温によって冷やされた外管31の内表面において凝縮した後、重力作用によって作動液34の液面に滴下する。このような作用によって、第1内管32が地中に直接埋設される場合に比べて、第1内管32の内部を流れる熱媒液40を効率的に冷却することができる。
【0035】
本実施形態に係る多管型ヒートパイプ30によれば、次の条件において、第1内管32の総延長長さ5m当たり約1kW相当の冷却能力を発揮できることを実験的に確認済みである。
・外管31の内径:165mm
・外管31の温度:20℃
・各第1内管32の内径:25mm
・各第1内管32に流入する熱媒液40の温度:30℃
・各第1内管32における熱媒液40の流量:3L/分
【0036】
図1では示されていないが、冬季において熱媒液40を加温する場合、各第1内管32の内部には熱媒液40が流されず、各第2内管33のうち少なくとも1つの内部に熱媒液40が流される。この場合、地温によって温められた作動液34が液面から気化熱を奪いながら蒸発する。作動液34の蒸気は、第2内管33の内部を流れる熱媒液40によって冷却された第2内管33の外表面において放熱しながら凝縮した後、重力作用によって作動液34の液面に滴下する。このような作用によって、第2内管33が地中に直接埋設される場合に比べて、第2内管33の内部を流れる熱媒液40を効率的に加温することができる。
【0037】
本実施形態に係る多管型ヒートパイプ30によれば、次の条件において、第2内管33の総延長長さ3m当たり約0.3kW相当の加温能力を発揮できることを実験的に確認済みである。
・外管31の内径:165mm
・外管31の温度:20℃
・各第1内管32の内径:25mm
・各第1内管32に流入する熱媒液40の温度:15℃
・各第1内管32における熱媒液40の流量:3L/分
【0038】
また、多管型ヒートパイプ30の熱交換能力(冷却能力又は加温能力)は、熱媒液40が流される内管(第1内管32又は第2内管33)の本数を変更することによって多段階式に調整可能である。そのため、熱媒液40が流される内管の本数を変更することによって、熱媒液40の総循環流量を維持しながら、熱交換対象(本実施形態では、栽培ベッド2)の熱量に応じて熱交換能力を適宜選択することができる。従って、熱媒液40の総循環流量を変動させることで熱交換能力を調整する場合に比べて、熱交換対象を所望の温度に維持しやすくなる。
【0039】
なお、熱媒液40が流される内管の本数は、各第1遮断弁24及び各第2遮断弁25それぞれを遮断状態に切り換えることによって簡便に変更することができる。
【0040】
2.第2実施形態
第2実施形態に係る多管型ヒートパイプ50について説明する。以下の説明では、上記第1実施形態との相違点について主に説明する。
【0041】
図4は、第2実施形態に係る縦置き型の多管型ヒートパイプ50の断面図である。
【0042】
多管型ヒートパイプ50は、外管51、2本の第1内管52及び2本の第2内管53を備える。
【0043】
外管51は、中空柱状に形成される。本実施形態において、外管51は縦置きされている。そのため、上記第1実施形態のように外管を横置きする場合に比べて、多管型ヒートパイプ50を設置する際の施工を簡便に行うことができる。
【0044】
外管51は、第1端面T1及び第2端面T2を有する。第1端面T1は、第2端面T2の反対側に設けられる。第1端面T1は外管51の下面であり、第2端面T2は外管51の上面である。
【0045】
外管51は、作動液34を貯留するための貯留空間51Aを内部に有する。貯留空間51Aは、脱気された状態で密封されている。本実施形態において、作動液34の液面は、鉛直方向において貯留空間51Aの中央付近に位置しているがこれに限られない。作動液34の液面は、鉛直方向において各第1内管52及び各第2内管53の間に位置していればよい。
【0046】
各第1内管52は、熱媒液40を冷却するために用いられる。各第1内管52は、作動液34内に配置される。すなわち、各第1内管52は、鉛直方向において作動液34の液面より下に配置される。
【0047】
各第1内管52の第1端部52aは、外管51の第1端面T1に挿通される。各第1内管52の第1端部52aは、循環パイプ20の各第1入口側分岐管22(
図1参照)に接続される。各第1内管52の第2端部52bは、外管51の第1端面T1に挿通される。各第1内管52の第2端部52bは、循環パイプ20の各第1出口側分岐管26(
図2参照)に接続される。各第1内管52は、全長の調整のため作動液34内において複数回巻き回されている。このように、本実施形態では、各第1内管52が、外管51の下面側に配置されている。
【0048】
各第2内管53は、熱媒液40を加温するために用いられる。各第2内管53は、作動液34外に配置される。すなわち、各第2内管53は、鉛直方向において作動液34の液面より上に配置される。
【0049】
各第2内管53の第1端部53aは、外管51の第2端面T2に挿通される。各第2内管53の第1端部53aは、循環パイプ20の各第2入口側分岐管23(
図1参照)に接続される。各第2内管53の第2端部53bは、外管51の第2端面T2に挿通される。各第2内管53の第2端部53bは、循環パイプ20の各第2出口側分岐管27(
図1参照)に接続される。各第2内管53は、全長の調整のため作動液34外において複数回巻き回されている。このように、本実施形態では、各第2内管53が、外管51の上面側に配置されている。
【0050】
夏季において熱媒液40を冷却する場合、各第1内管52のうち少なくとも1つの内部に熱媒液40が流され、各第2内管53の内部には熱媒液40が流されない。この場合、第1内管52の内部を流れる熱媒液40の熱が作動液34内に放出されると、作動液34が液面から気化熱を奪いながら蒸発する。作動液34の蒸気は、地温によって冷やされた外管51の内表面において凝縮した後、重力作用によって作動液34の液面に滴下する。このような作用によって、第1内管52が地中に直接埋設される場合に比べて、第1内管52の内部を流れる熱媒液40を効率的に冷却することができる。
【0051】
冬季において熱媒液40を加温する場合、各第1内管52の内部には熱媒液40が流されず、各第2内管53のうち少なくとも1つの内部に熱媒液40が流される。この場合、地温によって温められた作動液34が液面から気化熱を奪いながら蒸発する。作動液34の蒸気は、第2内管53の内部を流れる熱媒液40によって冷やされた第2内管53の外表面において放熱しながら凝縮した後、重力作用によって作動液34の液面に滴下する。このような作用によって、第2内管53が地中に直接埋設される場合に比べて、第2内管53の内部を流れる熱媒液40を効率的に加温することができる。
【0052】
また、多管型ヒートパイプ50の熱交換能力(冷却能力又は加温能力)は、熱媒液40が流される内管(第1内管52又は第2内管53)の本数を変更することによって多段階式に調整可能である。そのため、熱媒液40が流される内管の本数を変更することによって、熱媒液40の総循環流量を維持しながら、熱交換対象の熱量に応じて熱交換能力を調整できる。従って、熱媒液40の総循環流量を変動させることで熱交換能力を調整する場合に比べて、熱交換対象を所望の温度に維持しやすくなる。
【0053】
なお、熱媒液40が流される内管の本数は、各第1遮断弁24及び各第2遮断弁25(
図1参照)それぞれを遮断状態に切り換えることによって簡便に変更することができる。
【0054】
(実施形態の変形例)
本発明は以上のような実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない範囲で種々の変形又は変更が可能である。
【0055】
[変形例1]
上記第1及び第2実施形態では、本発明に係る多管型ヒートパイプを植物の栽培に利用することとしたが、本発明に係る多管型ヒートパイプは、例えば住宅や畜舎などの室内冷暖房装置、液体(例えば、水など)の冷却又は加温を補助する装置など幅広く適用することができる。
【0056】
[変形例2]
上記第1及び第2実施形態では、本発明に係る多管型ヒートパイプを地中に埋設することとしたが、本発明に係る多管型ヒートパイプは、流水中(例えば、用水路内や地下水脈内)に浸漬させてもよい。これによって、多管型ヒートパイプからの放熱性を高めることができるため、多管型ヒートパイプの熱変換能力をより向上させることができる。
【0057】
さらに、本発明に係る多管型ヒートパイプは、栽培ベッドに埋設してもよい。これによって、栽培ベッドでの吸熱性や放熱性を高めることができるため、栽培ベッドの温度制御範囲をより広げることができる。
【0058】
[変形例3]
上記第2実施形態では、各第1内管52を外管51の下面側に配置し、かつ、各第2内管53を外管51の上面側に配置することとしたが、これに限られない。
図5に示すように、外管51を横置きしたうえで、各第1内管52を外管51の一側面である第1端面U1側に配置し、かつ、各第2内管53を外管51の他の側面である第2端面U2側に配置してもよい。この場合であっても、上記第2実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0059】
[変形例4]
上記第1実施形態では、多管型ヒートパイプ30が第1内管32及び第2内管33それぞれを4本ずつ備えることとしたが、第1内管32及び第2内管33それぞれの本数は適宜変更可能である。また、上記第1実施形態では、第1内管32及び第2内管33それぞれを外管31の内壁に沿って並べることとしたが、第1内管32及び第2内管33それぞれの位置も適宜変更可能である。
【0060】
同様に、上記第2実施形態では、多管型ヒートパイプ50が第1内管52及び第2内管53それぞれを2本ずつ備えることとしたが、第1内管52及び第2内管53それぞれの本数は適宜変更可能である。また、第1内管52及び第2内管53それぞれの位置も適宜変更可能である。
【0061】
[変形例5]
上記第1実施形態では、各第1遮断弁24及び各第2遮断弁25それぞれは、手動により流通状態と遮断状態とに切り換えられることとしたが、栽培ベッド2の温度に応じて自動開閉することとしてもよい。
【符号の説明】
【0062】
10 熱交換システム
20 循環パイプ
30 多管型ヒートパイプ
31,51 外管
32,52 第1内管
32a,52a 第1内管の第1端部
32b,52b 第1内管の第2端部
33,53 第2内管
33a,53a 第2内管の第1端部
33b,53b 第2内管の第2端部
34 作動液
40 熱媒液
S1,T1,U1 第1端面
S2,T2,U2 第2端面